JP3960049B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子および表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下有機ELとも略記する)素子および表示装置に関するものである。詳しくいえば、本発明は発光輝度に優れ、駆動電圧の低下した有機エレクトロルミネッセンス素子、および該有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子や有機エレクトロルミネッセンス素子が挙げられる。無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光する化合物を含有する発光層を、陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、さらに、自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
【0003】
しかしながら、今後の実用化に向けた有機EL素子においては、さらに低消費電力で効率よく高輝度に発光する有機EL素子の開発が望まれている。
【0004】
現在、PDA(Personal Digital Assistants :携帯型情報通信機器)、携帯電話、電子手帳、ページャ等の表示部には液晶表示装置が用いられているが、有機EL素子の上述の利点や特性を活かして、液晶表示装置を備えた携帯用機器における前記液晶表示装置のバックライトとして有機EL素子を用いること、あるいは、表示装置を備えた携帯用機器における前記の表示装置として有機EL表示装置を用いることが検討されている。さらに、携帯用機器への適用に限らず、有機EL素子や有機EL表示装置を種々の用途に適用することが検討されている。
【0005】
このような携帯情報機器としての用途では、特に、有機EL素子に対する低駆動電圧化の要望が高まっている。このため、正孔注入層や正孔輸送層の改良により駆動電圧を低下させる試みが行われているが、満足な結果が得られていない。
【0006】
特公平7−119407号及び特許第2774654号には、スチリル系の材料を用いた有機EL素子についての記載があり、高輝度、高効率の発光が得られるとしているが、駆動電圧の低下という観点ではその性能は十分とは言いがたい。
【0007】
また、特開2000−7604においては、低駆動電圧化のため耐熱性の高いジスチリルアリーレン誘導体を使用しているが、発光輝度と低駆動電圧を両立させるには不十分である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、発光輝度と低駆動電圧化を目的になされたものであり、高輝度で低駆動電圧化の達成できる有機エレクトロルミネッセンス素子、および本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた低消費電力、高輝度な表示装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下(1)〜(3)の手段によって達成される。
【0010】
(1) 下記一般式(4)で表される化合物を含有し、且つ発光層に燐光性化合物を含有しないことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化B】
(式中、Ar11はフェニレン基、またはビフェニレン基を表し、R11、R12、R13、R14は水素原子または置換基を表し、R15、R16は水素原子又は置換基を表すが、R15、R16の少なくともいずれか一方は脂環式炭化水素の残基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、またはハロゲン原子を表す。ここにおいて、R 15 、R 16 の少なくともいずれか一方が脂環式炭化水素の残基、アリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基である場合、R 12 とR 14 、R 11 とR 13 、R 12 またはR 14 とR 16 、R 11 またはR 13 とR 15 が脂環式の或いは複素環式の環を形成しても良い。)
(2) 前記一般式(4)においてR11、R12、R13、R14が、それぞれアリール基を表すことを特徴とする前記(1)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(3) 前記(1)または(2)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする表示装置。
尚、以下は参考手段としてあげられる。
1.下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化C】
(式中、X1、X2はアリール基または複素環基を表し、R1、R2はアリール基、複素環基、脂環式炭化水素の残基またはシクロアルコキシ基を表し、かつ、R1、R2のいずれか一方は脂環式炭化水素の残基またはシクロアルコキシ基を表す。また、R1、R2は脂環式或いは複素環式の環を形成してもよい。)
【0011】
2.下記一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化D】
(式中、X 3 、X 4 はアリール基または複素環基を表し、R 3 、R 4 はアリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基を表し、かつ、R 3 、R 4 のいずれか一方はアリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基を表す。)
【0012】
3.下記一般式(3)で表される化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化E】
(式中、X 5 、X 6 はアリール基または複素環基を表し、R 5 、R 6 はアリール基、複素環基、ハロゲン原子を表し、かつ、R 5 、R 6 のいずれか一方はハロゲン原子を表す。)
【0017】
8.前記1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする表示装置。
【0018】
以下に、本発明を詳細に説明する。
我々は、発光輝度の向上と低駆動電圧化の両立を目的として、有機EL素子材料について鋭意検討した。その結果、本発明の一般式(4)で表される化合物を有機EL素子に使用することにより、目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の化合物は、有機EL素子のどの層に含有されていても良いが、発光層に含有されていることが好ましい。尚、一般式(1)〜(3)で表される化合物は参考として挙げられる。
【0019】
以下、本発明に用いられる化合物について説明する。
一般式(1)中、X1、X2はアリール基または複素環基を表し、R1、R2はアリール基、複素環基、脂環式炭化水素の残基またはシクロアルコキシ基を表し、かつ、R1、R2のいずれか一方は脂環式炭化水素の残基またはシクロアルコキシ基を表す。また、R1、R2は脂環式或いは複素環式の環を形成してもよい。また、X1、X2が環を形成しても良い。
【0020】
アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基、フルオレニル基等がある。複素環基としては、ピロリル基、ピロリジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、トリアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、フリル基、チエニル基、チアゾリル基、等がある。脂環式炭化水素の残基としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の残基があり、脂環式炭化水素の残基として特に好ましくはシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)である。シクロアルコキシ基としては例えばシクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等である。また、R1、R2により形成される脂環式或いは複素環式の環としてはシクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン等の脂環式の環、ジオキサジエン等のヘテロ環式の環があげられる。
【0021】
一般式(2)中、X3、X4はアリール基または複素環基を表し、R3、R4はアリール基、複素環基、アリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基を表し、かつ、R3、R4のいずれか一方はアリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基を表す。また、X3、X4が環を形成しても良い。
【0022】
アリール基、複素環基としては、一般式(1)においてX1、X2についてあげられたものと同様の基を表し、アリールオキシ基、アリールチオ基におけるアリール基も前記アリール基と同様の基を表す。アルキルチオ基としては例えばメチルチオ基等の基を表す。
【0023】
一般式(3)中、X5、X6はアリール基または複素環基を表し、R5、R6はアリール基、複素環基、ハロゲン原子を表し、かつ、R5、R6のいずれか一方はハロゲン原子を表す。また、X5、X6が環を形成しても良い。
【0024】
X5、X6のアリール基、複素環基としては、一般式(1)においてX1、X2についてあげられたものと同様の基を表し、ハロゲン原子としてはフッ素、塩素等を表す。特に好ましくはフッ素原子である。
【0025】
一般式(4)中、Ar11はフェニレン基、またはビフェニレン基を表し、R11、R12、R13、R14は水素原子または置換基を表し、R15、R16は水素原子又は置換基を表すが、R15、R16の少なくともいずれか一方は脂環式炭化水素の残基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、またはハロゲン原子を表す。R15、R16の少なくともいずれか一方が脂環式炭化水素の残基である場合、R12とR14、R11とR13、R12またはR14とR16、R11またはR13とR15が脂環式の或いは複素環式の環を形成しても良い。
【0026】
Ar11で表される基としては、フェニレン基、ビフェニレン基等の2価の基を表し、R15、R16は水素原子又は置換基を表すが、脂環式炭化水素の残基としてはシクロアルキル基、シクロアルケニル基等の残基があり、脂環式炭化水素の残基として特に好ましくはシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、アダマンチル基等)である。特にR15、R16の両方が脂環式炭化水素の残基である場合が好ましい。また、R12とR14、R11とR13、R12またはR14とR16、R11またはR13とR15で4員〜7員の脂環式の或いは複素環式の環、例えば、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、フルオレン環等を形成してもよい。
【0027】
一般式(4)中、R 15 、R 16 の少なくともいずれか一方はアリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基を表すとき、R 12 とR 14 、R 11 とR 13 、R 12 またはR 14 とR 16 、R 11 またはR 13 とR 15 が環を形成しても良い。
【0028】
R 15 、R 16 におけるアリールオキシ基、アリールチオ基のアリール基については、一般式(1)においてX1、X2についてあげられたものと同様の基を表し、アルキルチオ基についてはメチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ基等の基を表す。但し、R 15 、R 16 の少なくともいずれか一方はアリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基であり、好ましくはR 15 、R 16 の両方がアリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基である。R 12 とR 14 、R 11 とR 13 、R 12 またはR 14 とR 16 、R 11 またはR 13 とR 15 とのうち特にR 12 とR 14 またはR 11 とR 13 は協同してフルオレン環等を形成してもよい。
【0029】
一般式(4)中、R 15 、R 16 の少なくともいずれか一方はハロゲン原子であるとき、又、R 12 とR 14 、R 11 とR 13 、R 12 またはR 14 とR 16 、R 11 またはR 13 とR 15 が環を形成しても良い。
【0030】
R 15 、R 16 のいずれか一方はハロゲン原子であるとき、好ましくは両方がハロゲン原子である。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素等を表す。特に好ましくはフッ素原子である。また、特にR 12 とR 14 またはR 11 とR 13 は協同してフルオレン環等を形成してもよい。
【0031】
一般式(4)において、R11、R12、R13、R14、R15、R16 、が置換基を表す場合、それらの置換基の具体例としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−t−ブチル基、t−ブチル基、ベンジル基等)、又脂環式炭化水素の残基、例えばシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)及びシクロアルケニル基(例えばシクロヘキセニル基、シクロペンテニル基)等が、更に、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基、フルオレニル基等)、アルコキシ基(例えばエトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基、ナフチルチオ基、p−トリルチオ基、p−クロロフェニルチオ基)、ヒドロキシル基、アミノ基(ジメチルアミノ基、ジアリールアミノ基)、アルケニル基(例えばアリル基、1−エテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−オクタデセニル基等)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等が挙げられる。これらの基はさらに置換されていてもよく、前記置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基等が挙げられる。
【0032】
以下に、具体的化合物例を示すが、化合物例4−1〜4−36、5−1〜5−24、6−1〜6−17が本発明化合物である。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
【化10】
【0037】
【化11】
【0038】
【化12】
【0039】
【化13】
【0040】
【化14】
【0041】
【化15】
【0042】
【化16】
【0043】
【化17】
【0044】
【化18】
【0045】
【化19】
【0046】
【化20】
【0047】
【化21】
【0048】
【化22】
【0049】
【化23】
【0050】
【化24】
【0051】
【化25】
【0052】
【化26】
【0053】
【化27】
【0054】
以下に、本発明の化合物及び参考化合物の具体的な合成例を示す。
合成例1〈化合物(1−1)の合成〉
【0055】
【化28】
【0056】
反応容器を脱気後、窒素雰囲気下で、化合物(A1)10gを脱水テトラヒドロフラン50mlに溶解した。その後、反応液を−5℃〜0℃に保ちながら、シクロヘキシルマグネシウムブロミドをテトラヒドロフラン溶液で化合物(A1)に対して等モルとなる分だけ滴下した。反応液は0℃で1時間攪拌後、室温で30分攪拌した。その後、反応液を水にあけ、酢酸エチルにて抽出した。有機層を5%炭酸ナトリウム水溶液で洗った後、3回水洗し有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルとテトラヒドロフランを減圧留去した。カラムクロマトグラフィーで精製した後、アセトニトリルで再結晶を行い、目的の化合物(1−1)を9.3g(収率75%)得た。
【0057】
NMRおよびマススペクトルにより、目的化合物(1−1)であることを確認した。
【0058】
合成例2〈化合物(4−8)の合成〉
【0059】
【化29】
【0060】
反応容器を脱気後、窒素雰囲気下で、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンニッケル(II)クロリドを0.05gと化合物(B1)5gを脱水テトラヒドロフラン50mlに溶解した。その後、反応液を−5℃〜0℃に保ちながら、シクロヘキシルマグネシウムブロミドをテトラヒドロフラン溶液で化合物(B1)に対して2倍モルとなる分だけ滴下した。反応液は0℃で1時間攪拌後、室温で30分攪拌した。その後、反応液を水あけし、酢酸エチルにて抽出した。有機層を5%炭酸ナトリウム水溶液で洗った後、3回水洗し有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルとテトラヒドロフランを減圧留去した。カラムクロマトグラフィーで精製した後、アセトニトリルで再結晶を行い、化合物(B2)を4.7g(収率65%)得た。
【0061】
脱気後、窒素雰囲気下で、化合物(B2)を4.0g、ベンゾフェノン12.3gを脱水テトラヒドロフラン50mlに溶解した。さらに、四塩化チタンを3.0ml反応液に投入した後、亜鉛のテトラヒドロフラン溶液100mlを懸濁のまま、ゆっくり滴下した。反応液を3時間リフラックスした。その後、3%塩酸水溶液を50ml滴下し、2時間攪拌した後、反応液を水あけし、酢酸エチルにて抽出した。有機層を3回水洗し有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルとテトラヒドロフランを減圧留去した。カラムクロマトグラフィーで精製した後、メタノールで再結晶を行い、化合物(4−8)を4.1g(収率51%)得た。
【0062】
NMRおよびマススペクトルにより、目的化合物(4−8)であることを確認した。
【0063】
合成例3〈化合物(6−2)の合成〉
【0064】
【化30】
【0065】
反応容器を脱気後、窒素雰囲気下で、テレフタルアルデヒド10gと亜リン酸ジエチル10gとトリエチルアミン15gを添加し室温で10分攪拌した。析出物をろ過して、ジクロロメタンで洗浄することにより(C1)を24g得た(収率80%)。次いで、脱気後、窒素雰囲気下で(C1)3.2gをジクロロメタン50mlに懸濁溶解した溶液に、室温でジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(DAST)5gを添加した。滴下後は、黄色溶液となった。この溶液を20分攪拌後、5%の炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、反応をクエンチした。反応液を水あけし、ジクロロメタンの有機層を抽出した。有機層を2回水洗してから硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去することで(C2)を2.3g得た(収率78%)。更に、(C2)2.0gを窒素雰囲気下で100mlの脱水テトラヒドロフランに溶解し、ドライアイス/アセトンで−78度に冷却した。この反応液に、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液10mlをゆっくり滴下した。1時間撹拌後、ベンゾフェノンを2.0gを添加し、しばらく撹拌した後、室温にしてさらに3時間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し、酢酸エチルと水を添加し有機層を抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを減圧留去し、カラムクロマトグラフィーにより精製して、1.6gの目的物を得た(収率70%)。NMRおよびマススペクトルにより、目的化合物(6−2)であることを確認した。
【0066】
合成例4〈化合物(5−2)の合成〉
【0067】
【化31】
【0068】
従来公知の方法で化合物(D1)を合成した。(D1)5.0gを窒素雰囲気下で200mlの脱水テトラヒドロフランに溶解し、ドライアイス/アセトンで−78度に冷却した。この反応液に、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液25mlをゆっくり滴下した。1時間撹拌後、メチルジスルファニルメタンを3.0g添加し、しばらく撹拌した後、室温にしてさらに3時間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し、酢酸エチルと水を添加し有機層を抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを減圧留去し、カラムクロマトグラフィーで精製し(D2)を4.6g得た(収率74%)。(D2)を4.0gとベンゾフェノン4.0gを、ジメチルスルホキシド100mlに溶解し、これにカリウムt−ブトキシド2.0gを加え、窒素気流下9時間加熱攪拌した後、一晩放置した。得られた混合物にメタノール100mlを加え、析出した結晶を濾過した。濾過した結晶を水100mlで3回、続いてメタノール100mlで3回洗浄し、カラム精製を行って目的物を2.9gを得た(収率65%)。NMRおよびマススペクトルにより、目的化合物(5−2)であることを確認した。
【0069】
本発明の化合物は、固体状態において強い蛍光をもつ化合物であり、電場発光性にも優れており、発光材料として有効に使用できる。
【0070】
本発明の有機EL素子は、必要に応じ発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、陽極バッファー層および陰極バッファー層等を有し、陰極と陽極で狭持された構造をとる。
【0071】
具体的には、
(i)陽極/発光層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(iii)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極などの構造がある。
【0072】
本発明の化合物は、いずれの層中に含有されていてもかまわないが、発光材料として発光層に含有されていることが好ましい。
【0073】
上記発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子および正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であっても良い。
【0074】
発光材料は、発光性能の他に、正孔輸送機能や電子輸送機能を併せもっていても良く、正孔輸送材料や電子輸送材料の殆どが発光材料としても使用できる。
【0075】
この発光層は、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。発光層としての膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この発光層は、これらの発光材料一種又は二種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0076】
また、この発光層は、特開昭57−51781号公報に記載されているように、樹脂などの結着材と共に上記発光材料を溶剤に溶かして溶液としたのち、これをスピンコート法などにより薄膜化して形成することができる。このようにして形成された発光層の膜厚については、特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm〜5μmの範囲である。
【0077】
次に正孔輸送層および電子輸送層について説明する。
正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔輸送層を陽極と発光層の間に介在させることにより、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入され、そのうえ、発光層に陰極、陰極バッファー層又は電子輸送層より注入された電子は、発光層と正孔輸送層の界面に存在する電子の障壁により、発光層内の界面に累積され発光効率が向上するなど発光性能の優れた素子となる。この正孔輸送層の材料(以下、正孔注入材料、正孔輸送材料という)については、前記の好ましい性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0078】
上記正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物,無機物のいずれであってもよい。この正孔輸送材料としては、例えばトリアゾール誘導体,オキサジアゾール誘導体,イミダゾール誘導体,ポリアリールアルカン誘導体,ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体,フェニレンジアミン誘導体,アリールアミン誘導体,アミノ置換カルコン誘導体,オキサゾール誘導体,スチリルアントラセン誘導体,フルオレノン誘導体,ヒドラゾン誘導体,スチルベン誘導体,シラザン誘導体,アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマーなどが挙げられる。正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物,芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0079】
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
【0080】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0081】
また、p型−Si、p型−SiCなどの無機化合物も正孔輸送材料として使用することができる。この正孔輸送層は、上記正孔正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度である。この正孔輸送層は、上記材料の一種又は二種以上からなる一層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。さらに、必要に応じて用いられる電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0082】
この電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体などが挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0083】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0084】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として用いられるジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0085】
この電子輸送層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。電子輸送層としての膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この電子輸送層は、これらの電子輸送材料一種又は二種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0086】
さらに、陽極と発光層または正孔注入層の間、および、陰極と発光層または電子注入層との間にはバッファー層(電極界面層)を存在させてもよい。
【0087】
バッファー層とは、駆動電圧低下や発光効率向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(第123頁〜第166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファー層と陰極バッファー層とがある。
【0088】
陽極バッファー層は、特開平9−45479号、同9−260062号、同8−288069号等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0089】
陰極バッファー層は、特開平6−325871号、同9−17574号、同10−74586号等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウム、酸化リチウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0090】
特に、本発明の有機EL素子において、陰極バッファー層が存在した場合、駆動電圧低下や発光効率向上が大きく得られた。
【0091】
上記バッファー層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1〜100nmの範囲が好ましい。
【0092】
さらに上記基本構成層の他に必要に応じてその他の機能を有する層を積層してもよく、例えば特開平11−204258号、同11−204359号、および「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層などのような機能層を有していても良い。
【0093】
次に有機EL素子の電極について説明する。有機EL素子の電極は、陰極と陽極からなる。
【0094】
この有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAuなどの金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnOなどの導電性透明材料が挙げられる。
【0095】
上記陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
【0096】
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属などが挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化などに対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物などが好適である。
【0097】
更に本発明の有機EL素子に用いる陰極としては、アルミニウム合金が好ましく、特にアルミニウム含有量が90質量%以上100質量%未満であることが好ましく、最も好ましくは95質量%以上100質量%未満である。これにより、有機EL素子の発光寿命や、最高到達輝度を非常に向上させることができる。
【0098】
上記陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により、薄膜を形成させることにより作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が、透明又は半透明であれば発光効率が向上し好都合である。
【0099】
本発明の有機EL素子に好ましく用いられる基板は、ガラス、プラスチックなどの種類には特に限定はなく、また、透明のものであれば特に制限はない。本発明のエレクトロルミネッセンス素子に好ましく用いられる基板としては例えばガラス、石英、光透過性プラスチックフィルムを挙げることができる。
【0100】
光透過性プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
【0101】
次に、該有機EL素子を作製する好適な例として、前記の陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極からなるEL素子の作製法について説明する。
【0102】
まず適当な基板上に、所望の電極物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させ、陽極を作製する。次に、この上に陽極バッファー層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極バッファー層の材料からなる薄膜を形成させる。
【0103】
この有機薄膜層の薄膜化の方法としては、前記の如くスピンコート法、キャスト法、蒸着法などがあるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくいなどの点から、真空蒸着法またはスピンコート法が特に好ましい。さらに層ごとに異なる製膜法を適用しても良い。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類、分子堆積膜の目的とする結晶構造、会合構造などにより異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10-6〜10-2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0104】
これらの層の形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望のEL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施してもかまわないが、その際には作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
【0105】
また作製順序を逆にして、陰極、陰極バッファー層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、陽極バッファー層、陽極の順に作製することも可能である。このようにして得られたEL素子に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧5〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0106】
本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用しても良いし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用しても良い。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでも良い。また、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作成することが可能である。
【0107】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0108】
実施例1
〈有機EL素子の作製〉
陽極としてガラス上にITOを150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製:NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をi−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、m−MTDATA、TPD、DPVBi、Alq3をそれぞれ入れ真空蒸着装置に取付けた。
【0109】
【化32】
【0110】
次いで、真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、m−MTDATAの入った加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/secで透明支持基板に膜厚60nmの厚さになるように蒸着し、正孔注入層を設けた。次に、TPDの入った前記加熱ボートに通電して、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで透明支持基板に蒸着し、膜厚60nmの正孔輸送層を設けた。さらに、DPVBiの入った前記加熱ボートに通電して、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで前記正孔輸送層上に蒸着して膜厚40nmの発光層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。さらに、Alq3の入った前記加熱ボートに通電して、蒸着速度0.1nm/secで前記発光層の上に蒸着して膜厚20nmの電子輸送層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。
【0111】
次に、真空槽をあけ、電子注入層の上にステンレス鋼製の長方形穴あきマスクを設置し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにマグネシウム3gを入れ、タングステン製の蒸着用バスケットに銀を0.5g入れ、再び真空槽を2×10-4Paまで減圧した後、マグネシウム入りのボートに通電して蒸着速度1.5〜2.0nm/secでマグネシウムを蒸着し、この際、同時に銀のバスケットを加熱し、蒸着速度0.1nm/secで銀を蒸着し、前記マグネシウムと銀との混合物からなる対向電極とすることにより、比較用の有機EL素子1−1を作製した。
【0112】
上記において、発光層のDPVBiを表1に示す化合物に置き換えた以外は全く同じ方法で、本発明の有機EL素子1−2〜1−18を作製した。
【0113】
有機EL素子No.1−1の発光輝度を100とした時の有機EL素子試料それぞれの発光輝度の比の値(相対値)を表1に示す。発光輝度は、ミノルタ製CS−1000で測定した。また、発光開始の駆動電圧は、50[cd/m2]の輝度が得られた時の電圧とした。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【化33】
【0116】
表1から明らかなように、本発明の化合物を発光層に用いたエレクトロルミネッセンス素子は、発光輝度が高く、低電圧での駆動が可能であり有機EL素子として非常に有用であることが判明した。
【0117】
実施例2
陽極としてガラス上にITOを150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製:NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をi−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、m−MTDATA、TPD、DPVBi、BCzVBi、Alq3をそれぞれ入れ真空蒸着装置に取付けた。
【0118】
次いで、真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、m−MTDATAの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/secで透明支持基板に膜厚60nmの厚さになるように蒸着し、正孔注入層を設けた。次に、TPDの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/secで透明支持基板に膜厚40nmの厚さになるように蒸着し、正孔輸送層を設けた。さらに、DPVBiの入った前記加熱ボートとBCzVBiの入ったボートをそれぞれ独立に通電してDPVBiとBCzVBiの蒸着速度が100:1になるように調節し膜厚40nmの厚さになるように蒸着し、発光層を設けた。次いで、Alq3の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/secで厚さ20nmの電子注入/輸送層を設けた。
【0119】
次に、真空槽をあけ、電子注入層の上にステンレス鋼製の長方形穴あきマスクを設置し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにマグネシウム3gを入れ、タングステン製の蒸着用バスケットに銀を0.5g入れ、再び真空槽を2×10-4Paまで減圧した後、マグネシウム入りのボートに通電して蒸着速度1.5〜2.0nm/secでマグネシウムを蒸着し、この際、同時に銀のバスケットを加熱し、蒸着速度0.1nm/secで銀を蒸着し、前記マグネシウムと銀との混合物から成る陰極とすることにより、有機EL素子OLED2−1を作製した。
【0120】
上記有機EL素子OLED2−1のDPVBiを表2に記載の化合物に替えた以外は有機エレクトロルミネッセンス素子OLED2−1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子OLED2−2〜2−18を作製した。
【0121】
【化34】
【0122】
有機EL素子No.2−1の発光輝度を100とした時の有機EL素子試料それぞれの発光輝度の比の値(相対値)を表2に示す。発光輝度は、ミノルタ製CS−1000で測定した。また、発光開始の駆動電圧は、50[cd/m2]の輝度が得られた時の電圧とした。結果を表2に示す。
【0123】
【表2】
【0124】
表2から明らかなように、本発明の化合物を発光層に用いたエレクトロルミネッセンス素子は、発光輝度が高く、低電圧で駆動することから、有機EL素子として非常に有用であることが判明した。なお、発光色はいずれも青色だった。
【0125】
上記有機エレクトロルミネッセンス素子において、OLED2−6〜2−18の素子においてBCzVBiをQd−2またはDCMに替えることによって、それぞれ、緑色または赤色の発光が得られた。以上から、本発明の化合物は、蛍光性ドーパントのホスト化合物としても有効であることが分かった。
【0126】
実施例3
実施例2で作製したそれぞれ赤色、緑色、青色発光有機エレクトロルミネッセンス素子を同一基板上に並置し、図1に示すアクティブマトリクス方式フルカラー表示装置を作製した。
【0127】
図1には作製したフルカラー表示装置の表示部Aの模式図のみを示した。即ち同一基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、並置した複数の画素3(発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素等)とを有し、配線部の走査線5及び複数のデータ線6は、それぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。前記複数画素3は、それぞれの発光色に対応した有機EL素子、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタと駆動トランジスタそれぞれが設けられたアクティブマトリクス方式で駆動されており、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。この様に各赤、緑、青の画素を適宜、並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0128】
該フルカラー表示装置を駆動することにより、輝度の高い鮮明なフルカラー動画表示が得られた。
【0129】
【発明の効果】
発光輝度が高く、低電圧で駆動する有機エレクトロルミネッセンス素子、および該有機エレクトロルミネッセンス素子を有する表示装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】フルカラー表示装置の表示部Aの模式図。
【符号の説明】
A 表示部
3 画素
5 走査線
6 データ線
Claims (3)
- 下記一般式(4)で表される化合物を含有し、且つ発光層に燐光性化合物を含有しないことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記一般式(4)においてR11、R12、R13、R14が、それぞれアリール基を表すことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする表示装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002003363A JP3960049B2 (ja) | 2002-01-10 | 2002-01-10 | 有機エレクトロルミネッセンス素子および表示装置 |
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