JP3959188B2 - ストリップ電極型放射線検出装置 - Google Patents

ストリップ電極型放射線検出装置 Download PDF

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    • Y02E30/00Energy generation of nuclear origin
    • Y02E30/30Nuclear fission reactors

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線検出媒体に電圧を印加し、放射線によって生じる電荷信号を収集することによって放射線を検出するストリップ電極型放射線検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ストリップ電極型検出器は、放射線検出媒体として半導体を用いており、核医学診断の分野において通常使用されているシンチレーションカメラやエミッションCT装置(コンピュータ断層撮影装置)などに見られるように、この検出器を複数ならべることにより特定のエネルギーの放射線分布を測定する手段として用いられている。
【0003】
一方、検出媒体に気体を用いるものとしては、放射線検出で一般的に用いられる電離箱が該当するが、その構造が簡単なため原子炉内で放射線(出力)分布を測定するインコアモニタに使用されている。
【0004】
ところで、γ線のエネルギー分布測定には、エネルギー分解能の高いシリコンやゲルマニウムなどの半導体を用いた半導体検出器が用いられる。しかし、ゲルマニウム半導体検出器は熱雑音を押さえるために液体窒素温度程度まで冷却する必要があり、冷却装置や付属装置が必要になるために大型化してしまうという欠点がある。そこで、常温で使用可能な半導体を用い、しかも、シリコンやゲルマニウムなどの半導体を用いた場合よりも検出効率の高く且つ小型化が可能な常温半導体検出器が開発されている。
【0005】
常温半導体検出器は、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化カドミウム鉛(CdZnTe)など種々の半導体を用いたものについて開発が行われており、核医学分野等においてはX線透過量の画像化、手荷物検査の透過像の計測などに用いられはじめている。
【0006】
図11は従来の一般的な半導体検出器の構成図である。この図に示すように、常温半導体結晶49の両面に金52が蒸着されており、さらに陽電極及び陰電極50,51が貼付されている。これらの電極には電圧印加装置53により電圧が印加され、放射線によって結晶内に生成する電子およびイオンが収集されて、測定装置54により電流パルスが観測されるようになっている。
【0007】
また、原子炉内出力分布計測は、電離箱の原理を用いた炉内中性子モニタ、あるいは放射線による発熱を測定するγサーモメータなどにより行われている。このうち、炉内中性子モニタの構成は図12に示すようになっている。すなわち、中性子により核分裂を起こすウラン55が負電極56に塗布されており、核分裂によって電離する電極間ガス中のイオン・電子が陽電極57に印加される電界によって収集され、これによって中性子強度つまり原子炉出力が測定されるようになっている。
【0008】
これらの電極間はセラミックス58で絶縁されている。通常、電荷の収集を行う正負電極間の間隔は数mm程度であり、放射線が強く電極間のイオン密度が高くなる条件においても、生成イオンを収集できるようになっている。そして、電極間の間隔が狭いほど、バックグラウンドとなるガンマ線に起因する信号電流の中性子信号に対する割合が減少するため、計測性能上がより有効になる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の常温半導体検出器は以下のような欠点を有するものであった。まず、 1 の欠点として、結晶を大型化した場合のエネルギー分解能の低下である。すなわち、通常、γ線のエネルギーを測定するには、半導体結晶の検出体積内でγ線のすべてのエネルギーが吸収される必要があるが、高いエネルギーを持つγ線は透過力が高く、しかも、結晶内で反応する効率が低いため、これらのエネルギーを測定するには大型の検出体が必要となる。そして、原子炉等では構造材に中性子が吸収された場合にγ線が発生するが、この時発生するγ線エネルギーは、数MeV 〜10MeV であり、実用化されている常温半導体検出器の検出エネルギー範囲(X線領域〜数100keV程度) より高いために、製品化されている常温半導体
検出器よりも大型化するなどの構造的な工夫が必要となる。
【0010】
従来はこのような大型の常温半導体結晶を作ることは困難であるとされてきたが、最近、CdZnTe等については1cm角以上の結晶ができるなど、10MeVの電子(γ線で生成)でもほとんど結晶内で吸収できるサイズまで開発がすすんでいる。しかし、結晶を大型化した場合の問題点として、γ線によって生じた電子および正孔が結晶内で捕獲されて電極まで収集できないケースが生じ、γ線の入射位置によってその割合が変わり、単一エネルギーのγ線であっても、過小評価されたり、されなかったりという現象が生じるということがある。つまり、半導体検出器の特徴である高いエネルギー分解能を実現できないという致命的な問題点が生じることになる。
【0011】
この対策として、主に2つの方策が考えられている。まず第1の方策は、個々の出力波形の形状が半導体結晶内でγ線が反応を起こした位置により異なることを利用し、波形の形状を信号処理で処理し、反応位置による減衰量を補正するというものである(例えば、R.Redus,et.a1.,“E1ectronics for high resolution spectroscopy with compound semiconductor”,Nucl.Instr.and Meth.A380(1996)312-317, T.Takahasi,et.al., Nucl.Instr.and Meth.A380(1996)381)。しかし、この方策は、γ線によって生じた正孔と電子の比率の違いを用いており、約1cmになる結晶では正孔が電極まで収集されないケースがほとんどであるため、そのまま適用することは困難であると推測できる。
【0012】
第2の方策は、結晶内に電界強度分布を持たせることで、電子および正孔の捕獲による減少量を補正する方策である。結晶内で電界強度分布を持たせる方法としては、球状の2重電極、2重円筒電極、ストリップ状の電極などを使用することが考えられている(例えば、P.N.Luke ,“Electrode configuration and energy resolution in gamma-ray detectors ” ,Nucl.Instr. and Meth. A380 232-237, B.E.Patt, et.al. ,“New gamma-ray detector structures for e1ectron on1y carrier co11ection uti1izing high-Z compound semiconductors”,Nuc1.Instr. and Meth-A380(1996)276-281)。しかし、この場合、非常に壊れやすい半導体結晶を均一厚さで加工したり、1cm以下の結晶に微細なストリップ状電極を貼り付けるなどの、高度な加工、製作技術が必要となる。
【0013】
常温半導体検出器の第2の欠点は、上記の第1の欠点に関連するものであるが、2 次元のγ線位置検出を行う場合は、大面積の半導体結晶が必要になるというものである。通常、核医学分野で開発が進んでいるX 線の画像化では、常温半導体結晶を複数ならべ、それぞれから信号を取り出すか、あるいは、結晶にストリップ状の電極を直交する形で設けることにより2 次元の放射線位置検出を可能にしている。しかし、この場合も、微細な結晶に電極を貼り付ける高度な作業が必要となり、また、大面積化するにはこれら電極を貼り付けたものを複数個製作した後ならべる必要がある。そして、結晶にストリップ電極を設けたものについては、結晶毎にストリップ電極の信号線を取り出す構造が必要となるため、非常に複雑な形状となるという問題がある。
【0014】
また、従来の炉内中性子モニタも次のような課題を有するものであった。まず、第1の課題は、現在の炉内中性子モニタは、一方の電極にウランを塗布しているという点である。ウランを塗布した電極は、中性子照射によるウランの核分裂により高温となり、次第に電極表面に凹凸が生じ、また、同様の原因により一部のウランが剥離する場合がある。そのため、電極間に放電が発生し、一時的に検出器出力が増加するなどの誤動作が発生することがある。通常の原子炉監視装置においては、信号処理によってこれらの誤動作を防止して原子炉監視には影響のでないようにしている。例えば、特開平6-194452号公報に開示されている「中性子束監視システム」では、異常信号を閾値で検出し、その異常信号数により検出器の劣化を判断するようにしている。しかし、このような異常信号は、本来、検出器の信頼性を向上させることによって検出器自体で防止することが望ましい。つまり、ウラン塗布面に起因する放電を防止できる電極構造が望まれている。
【0015】
炉内中性子モニタの第2の課題は、電極間隔に関するものである。すなわち、ガンマ線感度を低減するため電極間隔を狭くすることが望ましいが、通常の炉内中性子モニタは2重の円筒を正負の電極としているため、その円筒の加工精度によって電極間隔が制限されている。また、上記第1の課題における放電も狭くすることで発生しやすくなる。つまり、電極間隔を狭くできる電極構造が望まれている。
【0016】
炉内中性子モニタの第3の課題は、炉内中性子モニタによって複数の情報を取得したいという要求があるため、複数の電極をセンサ内に格納する傾向にあるが、現状の円筒電極では構造が複雑になってしまうという問題である。例えば、特開平6-235771号公報に開示された「多素子型中性子検出装置」では、2組の円筒電極が一つのセンサ内に格納されている。この二つの電極に同じ設計のものを用いた場合はセンサの多重化となり、一方、電極間隔及び塗布ウラン量を異なるものにした場合は、双方の電極からの信号を用いることで計測可能範囲を異ならせることができるため、広いレンジでの監視が可能となる。しかし、このような電極構造は複雑なものとなるため、更なる単純化が望まれている。
【0018】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電離箱の原理を用いた炉内中性子モニタを用いたものにおいて、ウラン塗布面の突起物に起因する放電を発生させないようにし、また、複数の情報を取得できるように複数の電極構造を有するようにした電極型放射線検出装置を提供することを目的としている。
【0028】
【問題点を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段として、請求項1記載の発明は、電離ガスが封入された空間内を放射線が通過したときに発生するイオン電荷を陽電極又は陰電極のいずれかの電極が収集し、この収集した電荷に基づき放射線の検出を行う放射線検出器を有する放射線検出装置において、前記放射線検出器は、核分裂物質が塗布され放射線入射電極及びこの放射線入射電極に対向する位置に配置される複数のストリップ状電極に分けて形成された前記陽電極及び陰電極のうちの一方の極性の電極と、前記一方の極性のストリップ状電極に対して交互に接近した状態で配設され、複数のストリップ状電極に分割された前記陽電極及び陰電極のうちの他方の極性の電極と、前記交互に接近した状態で配置された一方の極性の複数のストリップ状電極及び他方の極性の複数のストリップ状電極が形成された絶縁性基板と、を備え、しかも、前記一方の極性の複数のストリップ状電極及び他方の極性の複数のストリップ状電極との間の各間隔の中には、空間電荷効果に起因してイオン・電子の収集が不可能にならないように、他の間隔より狭くした間隔が含まれている、ことを特徴とする。
【0029】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記放射線入射電極は円筒形状であって、この円筒内周面に前記核分裂物質が塗布されており、前記円筒形状の放射線入射電極の内側に円筒形状の前記絶縁性基板が配設されると共に、この絶縁性基板の円筒外周面に前記一方の極性の複数のストリップ状電極及び他方の極性の複数のストリップ状電極が形成されており、前記放射線入射電極の円筒内周面と前記絶縁性基板の円筒外周面との間に形成される空間に前記電離ガスが封入されている、ことを特徴とする。
【0030】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記放射線検出器の前記絶縁性基板に形成された前記他方の極性の複数のストリップ状電極からの電流を計測する電流計測手段と、前記電流計測手段の計測に基づき、前記陽電極及び前記陰電極間に電圧を印加する電圧印加手段と、を備えたことを特徴とする。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の参考例及び実施形態を図面に基づき説明する。図1は、第1の参考例に係るストリップ電極型放射線検出装置の構成図であり、図2は、図1におけるストリップ状電極部材の配置方向を示す説明図である。これらの図において、放射線検出器1Aは、絶縁性基板2と、この絶縁性基板2上に交互に接近した状態で配設された複数のストリップ状陽電極3a 〜3e 及びストリップ状補助陰電極4a 〜4f と、これらストリップ状陽電極3a 〜3e 及びストリップ状補助陰電極4a 〜4f に対向する位置に配設された主陰電極5と、この主陰電極5とストリップ状陽電極3a 〜3e 及びストリップ状補助陰電極4a 〜4f との間に配設された半導体結晶6と、主陰電極5と絶縁性基板2との間に押圧力を加えた状態で、これら主陰電極5、半導体結晶6、及び絶縁性基板2の端部を固定する電極固定手段7と、から構成されている。
【0032】
ストリップ状陽電極3a〜3eは、配線材8、信号増幅器9a〜9e、及び配線材10を介して電圧印加手段13に接続されており、また、ストリップ状補助陰電極4a〜4f及び主陰電極5は、それぞれ配線材11,12を介して電圧印加手段13に接続されている。そして、この電圧印加手段13により、ストリップ状陽電極3a〜3e、ストリップ状補助陰電極4a〜4f、及び主陰電極5に対して電圧が印加されるようになっている。なお、この実施形態では、電圧印加手段13は、ストリップ状陽電極3a〜3eとストリップ状補助陰電極4a〜4fとの間の電圧と、ストリップ状陽電極3a〜3eと主陰電極5との間の電圧とを調節することができるようになっている。また、ストリップ状陽電極3a〜3eの幅は細く、ストリップ状補助陰電極4a〜4fの幅はそれより太く形成されている。
【0033】
信号増幅器9a〜9eの出力側は、更に、配線材14を介して波形分析手段15に接続されており、ストリップ状陽電極3a〜3eからの信号がこの波形分析手段15に送られるようになっている。波形分析手段15は、この信号の波形の種々の特徴量(本実施形態では、例えば、波高とする。)を分析し、その分析結果を印加電圧評価手段16に出力するようになっている。印加電圧評価手段16は、この分析結果に基づき、電圧印加手段13が現在印加している電圧の適否を評価し、電圧印加手段13は、この評価に基づき印加電圧の調整を行うようになっている。
【0034】
絶縁性基板2は、プリント基板等として用いられる樹脂製の基板であり、この基板上にストリップ状陽電極3a〜3e及びストリップ状補助陰電極4a〜4fが露光エッチング技術により形成されている。これらの電極の材料としては、例えば、金、パラジウム、白金、アルミニウム、ニッケル等の比較的柔らかな金属が用いられる。
【0035】
主陰電極5は、放射線の入射側に配置されるものであり、この参考例では、比較的低いエネルギーのγ線、あるいはα線やβ線などの荷電粒子が透過し易いように、メッシュ状にして孔を多く設けた金属薄膜により構成されている。この金属としては、ベリリウムアルミニウム等の軽い元素の金属が用いられる。
【0036】
主陰電極5と、ストリップ状陽電極3a 〜3e 及びストリップ状補助陰電極4a 〜4f との間に配設される半導体結晶6として、本実施形態では、テルル化カドミウム(CdTe)の結晶が用いられているが、その他、常温半導体として適用が考えられているダイヤモンド(C) 、砒化ガリウム(GaAs)、沃化鉛(PbI2)、あるいは最近大きな結晶が作られるようになってきたテルル化カドミウム鉛(CdZnTe)等を用いることも可能である。ただし、これらの結晶は現在の製造技術では1cm四方程度が限界であることから、本参考例では検出面積を稼ぐために3個の結晶を並べて用いている。
【0037】
次に、第1の参考例の作用を説明する。半導体結晶6内の電界は、主としてストリップ状陽電極3a 〜3e と主陰電極5との間の電圧の印加によって形成されるが、図1の構成では、ストリップ状陽電極3a 〜3e に接近してストリップ状補助陰電極4a 〜4f が配設されているので、このストリップ状陽電極3a 〜3e 付近には他の場所よりも強い電界が形成されている。
【0038】
いま、主陰電極5からγ線が入射すると、このγ線により半導体結晶6内で反応が起こり、半導体結晶6内に正孔及び電子が生成する。生成した正孔は主陰電極5及びストリップ状補助陰電極4a〜4fに収集され、電子はストリップ状陽電極3a〜3eに収集される。そして、ストリップ状陽電極3a〜3eが収集した電子に基づく信号が信号増幅器9a〜9eを介して波形分析手段15に送られる。
【0039】
ところで、正孔は非常に移動速度が遅いため、半導体結晶が大きな場合は、電極に移動するまでに殆どが消滅する。そして、電極に誘導される電流は、正孔及び電子の移動によって生じるが、大きな半導体結晶では途中で正孔が消滅するため、この誘導電流が減少することになる。そして、全体の誘導電流は、電荷の移動距離、電荷量、及び移動速度で決まるため、一般には、陽電極から遠い位置で反応した場合には大きな信号となり、陽電極に近い位置で反応した場合には小さな信号となる。つまり、γ線の入射位置や入射方向によって、異なるレベルの信号が発生してしまい、前述したように、エネルギーの分解能の低下が起こるのである。
【0040】
しかし、図1の構成では、ストリップ状陽電極3a〜3eの付近にストリップ状補助陰電極4a〜4fを設けて、この付近の電界強度を高くしているので、この付近の電子の移動速度を速くすることでエネルギー分解能の低下を抑えることができる。すなわち、主陰電極5の近傍で生じた電子は、ストリップ状陽電極3a〜3eまで長い距離を移動するので、その間の移動距離にほぼ比例した信号が得られ、一方、ストリップ状陽電極3a〜3eの近傍で生じた電子は、その移動距離が短いものであるため、そのままでは得られる信号が小さなものとなる。しかし、ストリップ状陽電極3a〜3eの近傍で生じた電子の移動速度は速くなっているので、結果として主陰電極5の近傍で生じた電子の場合とほぼ同じ信号が得られる。
【0041】
そして、電圧印加手段13は、このときの電子の移動速度を適正に調節するためストリップ状陽電極3a 〜3e 及びストリップ状補助陰電極4a 〜4f 間の電圧を調整する。このときの電圧印加手段13の電圧調整は、印加電圧評価手段16の評価に基づいており、また、印加電圧評価手段16の評価は、波形分析手段15の分析結果に基づいている。ここで、電圧印加手段13、波形分析手段15、及び印加電圧評価手段16は、それぞれ、γ線が正規の(又は理想的な)入射位置、入射方向で入射された場合の基準データを内部に予め記憶しており、この基準データを参照することにより、分析、評価、及び調整を行う。そして、本参考例では、ストリップ状陽電極3a 〜3e の幅を細く、ストリップ状補助陰電極4a 〜4f の幅を太く形成しているので、ストリップ状陽電極3a 〜3e 付近の電圧勾配を印加電圧によって大きく変化させることが可能である。
【0042】
ところで、波形分析手段15が入力する信号は、通常、ストリップ状陽電極3a 〜3e のうちのいずれか一つからの信号であるが、γ線のエネルギーやγ線の入射方向等によって、2以上の陽電極から信号を入力すること(同時計測)がある。本参考例では、このような現象についても監視し、その現象の発生原因を推定できるようにしている。すなわち、「同時計測」が発生する原因としては、入射したγ線のエネルギーが高いために半導体結晶6内で電子対生成反応が起こり、これにより隣接する陽電極の双方が信号を出力する場合と、高エネルギーγ線の入射方向が斜めであるために複数の陽電極が信号を出力する場合とがある。前者の電子対生成の場合は、約0.5MeV程度のエネルギーを吸収することが分かっているので、このエネルギーの値を基準にして、前者の場合の同時計測であるのか後者の場合の同時計測であるのかを弁別することができる。
【0043】
上記したように、図1の構成では、ストリップ状陽電極3a〜3eの付近にストリップ状補助陰電極4a〜4fを交互に配置しているので、この付近の電界強度を適正に調節することができ、γ線の入射位置や入射方向等によるストリップ状陽電極3a〜3eの収集電荷量の変動を抑制することが可能となっている。そして、この電界強度を適正に調節できることから、半導体結晶6として1cm程度の厚い結晶を用いた場合でも、高いエネルギー分解能を持った状態での測定が可能となる。つまり、100keV〜10MeVの高エネルギーγ線が衝突した場合には、殆どのエネルギーが半導体結晶6内で消費され、そのエネルギーを測定することが可能となる。なお、図1の構成では、主陰電極5がメッシュ状の金属薄膜により形成されているので、低エネルギーのγ線や、α線やβ線の測定も可能となっている。
【0044】
また、図1の構成では、まず、絶縁性基板2上にストリップ状陽電極3a〜3e及びストリップ状補助陰電極4a〜4fを形成しておき、主陰電極5とこれらストリップ状陽電極3a〜3e及びストリップ状補助陰電極4a〜4fとの間に半導体結晶6を配設した後、これらの部材を電極固定手段7により共に固定する構造としているので、大型の放射線検出器を安価に製作することが可能になっている(なお、電極と半導体結晶との間の接触を補強するため、電極表面に導電性接着剤を塗布することは有効である。)。つまり、従来技術では半導体結晶の表面に金蒸着を行い、その上に陽電極及陰電極を接着していたが、このような方法ではストリップ状に形成した複数の陽電極及び陰電極を半導体結晶の表面に配設するのは困難である。しかし、図1の構成では、絶縁性基板2を用いているので、このようなストリップ状の陽電極及び陰電極でも容易に形成することができ、さらに、その上に複数の半導体結晶6を平面的に並べることができるので、大面積を有する放射線検出器を容易に製造することができる。ここで、複数個の半導体結晶を用いた場合に、結晶の不連続面の存在が問題となるが、不連続面をストリップ状陽電極3a〜3e又はストリップ状補助陰電極4a〜4fの中心位置に配置することにより、この不連続面を横切る電荷を低減することができる。
【0045】
なお、上記した第1の参考例では、主陰電極5は1つとなっているが、この主陰電極5についても、複数のストリップ状電極により形成するようにするようにして、電圧調整をよりきめ細かく行うようにしてもよい。
【0046】
また、電圧印加手段13、波形分析手段15、及び印加電圧評価手段16に学習機能をもたせるようにし、現在の電圧でのエネルギー分解能に関する情報を経時的に記録させることによって、電圧印加手段13が最適な電圧を印加できるように構成することもできる。
【0047】
さらに、図1の構成では、ストリップ状陽電極3a〜3eからの信号を波形分析手段15が入力するようになっているが、波形分析手段15はストリップ状補助陰電極4a〜4fからの信号を入力し、この信号の波形を分析するようにしてもよい(この場合は、主陰電極5は「主陽電極5」となる。)。
【0048】
図3は、第2の参考例に係るストリップ電極型放射線検出装置の構成図であり、図4は、図3におけるストリップ状電極部材の配置方向を示す説明図である。これらの図において、図1及び図2に示した構成要素と同様の構成要素には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0049】
図3の放射線検出器1Bが図1の放射線検出器1Aと異なる点は、絶縁性基板2とストリップ状陽電極3a〜3e及びストリップ状補助陰電極4a〜4fとの間に複数のバックストリップ電極17a〜17e及び薄膜絶縁体18(例えば、ポリイミドなどの絶縁体)が形成されている点である。そして、バックストリップ電極17a〜17eからの各信号は、配線材19、信号増幅器20a〜20e、及び配線材21を介して波形分析手段15に送られるようになっている。
【0050】
バックストリップ電極17a〜17eは、図4に示されているように、その長手方向がストリップ状陽電極3a〜3e及びストリップ状補助陰電極4a〜4fと直交するように配設されている。このように、バックストリップ電極17a〜17eを配設することにより、半導体結晶6におけるγ線の2次元上の入射位置を検出することができる。
【0051】
次に、上記のように構成される第2の参考例の作用を説明する。主陰電極5からγ線が入射すると、その結晶内部で生じた電子はストリップ状陽電極3a 〜3e により収集される。この場合、ストリップ状陽電極3a 〜3e 周辺の電界はストリップ状補助陰電極4a 〜4f が設けられているので強くなっており、ストリップ状陽電極3a 〜3e に収集された電子によりバックストリップ電極17a 〜17e のいずれかに信号が誘起され、この信号が信号増幅器20a 〜20e のいずれかを通って波形分析手段15に送られる。そして、上記したように、ストリップ状陽電極3a 〜3e とバックストリップ電極17a 〜17e とは、その長手方向が互いに直交するように配設されているので、ストリップ状陽電極3a 〜3e 及びバックストリップ電極17a 〜17e のうちのどの電極から信号が送られてきたかを特定することにより、波形分析手段15は半導体結晶6におけるγ線のX方向及びY方向の位置すなわち2次元上の入射位置を知ることができる。
【0052】
図5は、第3の参考例に係るストリップ電極型放射線検出装置の構成図であり、図6は、図5におけるストリップ状電極部材の配置方向を示す説明図である。これらの図において、図1乃至図4に示した放射線検出器1A,1B以外の構成要素と同様の構成要素には同一符号を付して重複した説明を省略する。また、以下の参考例及び実施形態においては、説明及び図示の簡単化のため、配線材の符号を省略する。
【0053】
図5において、放射線検出器1Cは、第1の絶縁性基板22と、この第1の絶縁性基板22の放射線進行方向側(図5の右方向へ進む側)の面上に交互に接近した状態で配設されたストリップ状第1の陽電極23a〜23e及びストリップ状第1の陰電極24a〜24fと、これらストリップ状第1の陽電極23a〜23e及びストリップ状第1の陰電極24a〜24fの放射線進行方向側の面に接して配設された複数の第1の半導体結晶25と、この第1の半導体結晶25の放射線進行方向側の面に接して配設された中間陰電極26と、この中間陰電極26の放射線進行方向側の面に接して配設された複数の第2の第2の半導体結晶27と、この第2の半導体結晶27の放射線進行方向側の面に接して交互に接近した状態で配設された複数のストリップ状第2の陽電極28a〜28e及びストリップ状第2の陰電極29a〜29fと、これらストリップ状第2の陽電極28a〜28e及びストリップ状第2の陰電極29a〜29fの放射線進行方向側の面に接して、これらの電極を支持する第2の絶縁性基板30と、第1及び第2の絶縁性基板22,30間に押圧力を加えた状態で第1の絶縁性基板22、第1の半導体結晶25、中間陰電極26、第2の半導体結晶27、及び第2の絶縁性基板30を共に固定する電極固定手段31とから構成されている。
【0054】
なお、第1及び第2の絶縁性基板22,30は図1の絶縁性基板2と同様の構造であり、ストリップ状第1の陽電極23a〜23e及びストリップ状第2の陽電極28a〜28eは図1のストリップ状陽電極3a〜3eと同様の構造であり、第1の半導体結晶25及び第2の半導体結晶27は図1の半導体結晶6と同様の構造であり、中間陰電極26は図1の主陰電極5と同様の構造であり、電極固定手段31は図1の電極固定手段7と同様の構造である。
【0055】
そして、ストリップ状第1の陽電極23a〜23eからの信号は信号増幅器9a〜9eを介して波形分析手段15Aに送られ、ストリップ状第2の陽電極28a〜28eからの信号は信号増幅器9a〜9eを介して波形分析手段15Bに送られるようになっている。印加電圧評価手段16は、これら波形分析手段15A,Bからの分析結果に基づき、電圧印加手段13が現在印加している電圧の適否を評価し、電圧印加手段13は、この評価に基づき印加電圧の調整を行うようになっている。
【0056】
また、図6に示すように、ストリップ状第1の陽電極23a〜23e及びストリップ状第1の陰電極24a〜24fと、ストリップ状第2の陽電極28a〜28e及びストリップ状第2の陰電極29a〜29fとは互いに、その長手方向が直交するように配設されている。したがって、印加電圧評価手段16は、波形分析手段15A,Bからの分析結果から、いずれの電極が信号を出力したかを調べることにより第1及び第2の半導体結晶25,27における2次元上の入射位置を知ることができる。
【0057】
次に、上記のように構成される第3の参考例の作用につき説明する。第1の絶縁性基板22側から高エネルギーのγ線が入射すると、このγ線により生じた第1の半導体結晶25及び第2の半導体結晶27内での電子はストリップ状第1の陽電極23a 〜23e 及びストリップ状第2の陽電極28a 〜28e により収集される。そして、この電子の収集に基づき、ストリップ状第1の陽電極23a 〜23e 及びストリップ状第2の陽電極28a 〜28e は、波形分析手段15A,Bに信号増幅器9a 〜9e を介して信号を出力する。
【0058】
波形分析手段15A,Bは、入力した信号に基づき波形分析を行い、その分析結果を印加電圧評価手段16に出力する。印加電圧評価手段16は、この分析結果に基づき印加電圧の評価を行う。そして、この評価に基づいて電圧印加手段13は印加電圧の調整を行う。ここで、印加電圧評価手段16は、波形分析手段15A,Bがそれぞれどの電極からの信号を入力したかについての情報を把握できるようになっており、これにより印加電圧評価手段16は、導体結晶25,27における2次元上の入射位置を知ることができる。また、印加電圧評価手段16は、波形分析手段15A,Bからの信号の和をγ線のトータルエネルギーとして評価するようになっている。
【0059】
本参考例では、第1の半導体結晶25及び第2の半導体結晶27をγ線の進行方向に重ねて配設しているので、大面積で且つ大きな厚さの半導体結晶を持つ放射線検出器を実現することができる。そして、上記したように、ストリップ状第2の陽電極28a 〜28e 及びストリップ状第2の陰電極29a 〜29f とは互いに、その長手方向が直交するように配設されているので、半導体結晶25,27における2次元上の入射位置を知ることができる。なお、本参考例では、γ線が第1の絶縁性基板22を通って第1の半導体結晶25及び第2の半導体結晶27に入る構成となっており、第1及び第2の参考例のように、γ線が透過し易いメッシュ状部材を入射側に配設しているわけではないので、比較的高エネルギーのγ線の検出を行う場合に適しているものといえる。
【0060】
図7は、第4の参考例に係るストリップ電極型放射線検出装置の構成図である。この参考例は、図3及び図4に示した第2の参考例の構成に中性子コンバータを付加することにより、中性子エネルギーの大まかな識別を可能としたものである。
【0061】
図7が図3と異なる点は、放射線検出器1Dが主陰電極5の放射線入射側の面上に取り付けられた中性子コンバータ32を有している点である。この中性子コンバータ32は、ポリエチレン、ボロン、あるいはウラン等の材料により形成されたものであり、入射した中性子33のエネルギーにより核分裂または反跳した荷電粒子34を発生させるものである。
【0062】
次に、この第4の参考例の作用につき説明する。中性子コンバータ32に中性子33が入射すると荷電粒子34が発生する。この荷電粒子34は、メッシュ状の主陰電極5を殆ど遮蔽されずに通過して半導体結晶6内に入る。その後の、動作は図3における説明と同様であるため、重複した説明を省略する。
【0063】
この第4の参考例の構成によれば、中性子コンバータ32において中性子33のエネルギーにより反跳した荷電粒子34のエネルギーも変化するため、この荷電粒子34のエネルギーを測定、弁別することにより中性子のエネルギー分布の監視を行うことができる。また、この荷電粒子34の検出位置に基づいて、中性子コンバータ32の反応位置すなわち中性子の強度分布を1次元的又は2次元的にリアルタイムで評価することが可能となっている。
【0064】
図8は、第4の参考例に係るストリップ電極型放射線検出装置を用いて構成した原子炉炉心監視装置の構成図である。この図において、ストリップ電極型放射線検出装置35は、図7に示した第4の参考例の構成と同様の構成を有するものであり、このストリップ電極型放射線検出装置35が原子炉圧力容器36の周囲に複数台設置され、炉心から発せられる中性子37を検出できるようになっている。
【0065】
各ストリップ電極型放射線検出装置35からの信号は中性子弁別手段38に出力されるようになっている。中性子弁別手段38は、ストリップ電極型放射線検出装置35からの信号の波形(例えば、波高)を分析し、検出された中性子37が高速中性子又は熱中性子のうちいずれの中性子であるかを弁別するものである。そして、中性子弁別手段38の弁別結果は、中性子エネルギー分布監視手段39に送られ、中性子エネルギー分布監視手段39は高速中性子及び熱中性子の2種類の中性子の比率の変化を監視するようになっている。
【0066】
次に、上記の原子炉炉心監視装置の動作につき説明する。原子炉圧力容器36の炉心から発せられる中性子37は、周囲のストリップ電極型放射線検出装置35により検出され、各ストリップ電極型放射線検出装置35は、中性子検出信号を中性子弁別手段38に出力する。中性子弁別手段38は、各ストリップ電極型放射線検出装置35からの検出信号を入力し、この検出信号の波高を分析することにより検出された中性子37が高速中性子又は熱中性子のいずれであるかを弁別する。
【0067】
中性子エネルギー分布監視手段39は、中性子弁別手段38の弁別結果を連続的に監視しており、高速中性子と熱中性子との比率が一定以上変化した場合に原子炉に異常が発生しているものと判断する。つまり、原子炉は、その水位の変動や、燃焼割合の変化等によって、高速中性子と熱中性子との比率(中性子のエネルギー分布)が変化することが知られているので、この比率を監視することによって、原子炉の異常を早期に検知することが可能となる。
【0068】
図9は、本発明の実施形態に係るストリップ電極型放射線検出装置の構成図であり、図10は、図9におけるストリップ状電極部材の配置方向を示す説明図である。この実施形態は、電離箱の原理に基づく放射線検出装置の電極をストリップ状に形成したものである。
【0069】
図9において、円筒状に形成された放射線入射陰電極40の内周面にウラン41が塗布されている。そして、放射線入射陰電極40の内側に、例えばアルミナセラミックスで形成された電極支持部材42を介して円筒状絶縁性基板43が配設されている。この円筒状絶縁性基板43は、例えば、アルミナ、シリコンなどで形成されており、その表面には円筒軸方向に沿って複数のストリップ状陽電極44a〜44c及びストリップ状陰電極45a〜45cが化学蒸着等により塗布されている(図示の都合上、44a〜44c及び45a〜45cの電極のみを示している。)。
【0070】
上記の各電極は、例えば、陽電極44aと陰電極45a,45bとが対電極となり、また、陽電極44cと陰電極45a,45cとが対電極となっている。そして、図10に示すように、陽電極44aと陰電極45a,45bとの間の間隔は広く、一方、陽電極44cと陰電極45a,45cとの間の間隔は狭くなっている。
【0071】
円筒状絶縁性基板43の表面に上記のストリップ状陽電極及び陰電極を形成する場合、既に円筒状に加工されている基板上に電極を形成する場合と、平板上の基板に電極を形成した後に、この基板を円筒状に変形させる場合との2通りが考えられるが、いずれの方法を採用してもよい。また、本実施形態では、これらの電極が基板の円筒軸方向に沿って形成された場合を示しているが、径方向に沿って形成することとしてもよい。
【0072】
放射線入射陰電極40の円筒内周面と円筒状絶縁性基板43の円筒外周面との間に形成される密閉空間には、例えばアルゴンなどの電離ガス46が封入されている。そして、この電離ガス46の電離によって生じたイオン・電子は、ストリップ状陽電極44及びストリップ状陰電極45により収集され、ストリップ状陽電極44を流れる電流が電流計測手段47により計測されるようになっている。
【0073】
陽電極及び陰電極間の電圧は電圧印加手段48によって印加されるが、ストリップ状陽電極44とストリップ状陰電極45との間の電圧は数百ボルト、ストリップ状陽電極44と放射線入射陰電極40との間の電圧は数ボルト(あるいはゼロボルトであってもよい)程度となっている。
【0074】
次に、上記のように構成される本発明の実施形態の作用につき説明する。外部から放射線検出器1E内に中性子が飛び込むと、放射線入射陰電極40の内周面に形成されているウラン41内で核分裂が生じ、そのときの核分裂片によって電離ガス46が電離する。この電離によって生じたイオン・電子は、その大部分が数百ボルトの電圧が印加されているストリップ状陽電極44及びストリップ状陰電極45により収集される。そして、ストリップ状陽電極44を流れる電流が電流計測手段47により計測され、これにより放射線検出器1E内の中性子束に比例する信号を得ることができる。なお、ストリップ状陽電極44と放射線入射陰電極40との間に印加される電圧はゼロボルトから数ボルトの低い電圧であるため、これらの電極間に放電が発生することはなく、したがって、従来装置のように、ウラン41に凹凸や剥離が生じたりすることはない。
【0075】
ところで、中性子束が弱くガス中のイオン・電子密度が低い場合、陽電極44c及び陰電極45a,45cの対電極は、それらの電極間隔が狭く、電極間に存在するイオン・電子量が少ないため、SN比の関係上、中性子束に比例した信号を得ることができない。しかし、陽電極44a及び陰電極45a,45bの対電極は、それらの電極間隔が広くなっているので、電極間のすべてのイオン・電子を収集することにより中性子束に比例した信号を得ることができる。
【0076】
また、中性子束が強くガス中のイオン・電子密度が高い場合、陽電極44a及び陰電極45a,45bの対電極は、それらの電極間隔が広くなっているが故に、その空間イオンの電界によって電極間の電界が逆転する所謂「空間電荷効果」が発生し、イオン・電子を収集できなくなる。しかし、陽電極44c及び陰電極45a,45cの対電極は、それらの電極間隔が狭く電界強度が強くなっているため、電極間のイオン・電子を全て収集することができ、中性子束に比例した信号を得ることができる。
【0077】
このように、図9の構成では、円筒状絶縁性基板43の表面に形成されるストリップ状陽電極44及びストリップ状陰電極45間の間隔が位置によって異なっているので、中性子束が弱い場合又は強い場合のいずれにおいても中性子束に比例した信号を得ることができ、広いレンジでの測定が可能となっている。
【0078】
そして、ストリップ状陽電極44及びストリップ状陰電極45は、微細加工技術を用いて円筒状絶縁性基板43の表面に形成することが可能であるため、機械加工で形成した場合に比べて電極間隔をはるかに狭く(例えば、数μm)することができる。また、この電極間隔は計測中の熱応力によっても、均一に変化するのみで、一部のみが狭くなるような現象が起こることはない。
【0079】
なお、ストリップ状陽電極44及びストリップ状陰電極45間に所謂「ガード電極」を設け、陽電極及び陰電極間のリーク電流を補償する構成とすることは、従来の電離箱と同様に可能である。
【0082】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、電離箱の原理を用いた炉内中性子モニタを用いたものにおいて、ウラン塗布面の突起物に起因する放電を発生させないようにすると共に、異なる電極間隔を持たせた複数の電極構造とすることにより複数の情報を取得できるようにしたストリップ電極型放射線検出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の参考例に係るストリップ電極型放射線検出装置の構成図。
【図2】 図1におけるストリップ状電極部材の配置方向を示す説明図。
【図3】 第2の参考例に係るストリップ電極型放射線検出装置の構成図。
【図4】 図3におけるストリップ状電極部材の配置方向を示す説明図。
【図5】 第3の参考例に係るストリップ電極型放射線検出装置の構成図。
【図6】 図5におけるストリップ状電極部材の配置方向を示す説明図。
【図7】 第4の参考例に係るストリップ電極型放射線検出装置の構成図。
【図8】 第4の参考例に係るストリップ電極型放射線検出装置を用いて構成した原子炉炉心監視装置の構成図。
【図9】 本発明の実施形態に係るストリップ電極型放射線検出装置の構成図。
【図10】 図5におけるストリップ状電極部材の配置方向を示す説明図。
【図11】 従来の一般的な常温半導体検出器の構成図。
【図12】 電離箱の原理を用いた従来の炉内中性子モニタの構成図。
【符号の説明】
1A〜1E 放射線検出器
2 絶縁性基板
3a 〜3e ストリップ状陽電極
4a 〜4f ストリップ状補助陰電極
5 主陰電極
6 半導体結晶
7 電極固定手段
8 配線材
9a 〜9e 信号増幅器
10 配線材
11 配線材
12 配線材
13 電圧印加手段
14 配線材
15 波形分析手段
16 印加電圧評価手段
17a 〜17e バックストリップ電極
18 薄膜絶縁体
19 配線材
20a 〜20e 信号増幅器
21 配線材
22 第1の絶縁性基板
23a 〜23e ストリップ状第1の陽電極
24a 〜24f ストリップ状第1の陰電極
25 第1の半導体結晶
26 中間陰電極
27 第2の半導体結晶
28a 〜28e ストリップ状第2の陽電極
29a 〜29f ストリップ状第2の陰電極
30 第2の絶縁性基板
31 電極固定手段
32 中性子コンバータ
33 中性子
34 荷電粒子
35 ストリップ電極型放射線検出装置
36 原子炉圧力容器
37 中性子
38 中性子弁別手段
39 中性子エネルギー分布監視手段
40 放射線入射陰電極
41 ウラン
42 電極支持部材
43 円筒状絶縁性基板
44a 〜44c ストリップ状陽電極
45a 〜45c ストリップ状陰電極
46 電離ガス
47 電流計測手段
48 電圧印加手段
49 常温半導体結晶
50 電極
51 電極
52 金
53 電圧印加装置
54 測定装置
55 ウラン
56 負電極
57 陽電極
58 セラミックス

Claims (3)

  1. 電離ガスが封入された空間内を放射線が通過したときに発生するイオン電荷を陽電極又は陰電極のいずれかの電極が収集し、この収集した電荷に基づき放射線の検出を行う放射線検出器を有する放射線検出装置において、
    前記放射線検出器は、
    核分裂物質が塗布され放射線入射電極及びこの放射線入射電極に対向する位置に配置される複数のストリップ状電極に分けて形成された前記陽電極及び陰電極のうちの一方の極性の電極と、
    前記一方の極性のストリップ状電極に対して交互に接近した状態で配設され、複数のストリップ状電極に分割された前記陽電極及び陰電極のうちの他方の極性の電極と、
    前記交互に接近した状態で配置された一方の極性の複数のストリップ状電極及び他方の極性の複数のストリップ状電極が形成された絶縁性基板と、
    を備え、しかも、前記一方の極性の複数のストリップ状電極及び他方の極性の複数のストリップ状電極との間の各間隔の中には、空間電荷効果に起因してイオン・電子の収集が不可能にならないように、他の間隔より狭くした間隔が含まれている、
    ことを特徴とするストリップ電極型放射線検出装置。
  2. 前記放射線入射電極は円筒形状であって、この円筒内周面に前記核分裂物質が塗布されており、
    前記円筒形状の放射線入射電極の内側に円筒形状の前記絶縁性基板が配設されると共に、この絶縁性基板の円筒外周面に前記一方の極性の複数のストリップ状電極及び他方の極性の複数のストリップ状電極が形成されており、
    前記放射線入射電極の円筒内周面と前記絶縁性基板の円筒外周面との間に形成される空間に前記電離ガスが封入されている、
    ことを特徴とする請求項1記載のストリップ電極型放射線検出装置。
  3. 前記放射線検出器の前記絶縁性基板に形成された前記他方の極性の複数のストリップ状電極からの電流を計測する電流計測手段と、
    前記電流計測手段の計測に基づき、前記陽電極及び前記陰電極間に電圧を印加する電圧印加手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のストリップ電極型放射線検出装置。
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