JP3958617B2 - 燃料噴射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、シリンダの燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射装置に関し、特に燃料の微粒子化を促進するとともに、この燃料がシリンダに付着することを防止することができるものである。
【0002】
【従来の技術】
図11は例えば特開平5−60036号公報に示された従来の燃料噴射装置の構成を示す図である。図において、1は高電圧制御装置、2は噴射ポンプとの同期信号線、3は噴射ポンプ、4は噴射管、5は高電圧制御装置1と噴射ノズル7とを結ぶ高電圧用ケーブル、6は絶縁型ノズルホルダ、8はニールドバルブ、9はノズルスプリング、10は調整スクリュである。
【0003】
上記のように構成された従来の燃料噴射装置の動作について説明する。まず、噴射ノズル7が燃料を噴射する際に、噴射ノズル7の先端に、燃料噴射に同期したパルスまたはインパルス状の高電圧を印加する。そして、燃料噴射に同期した放電を発生させる。よって、噴霧される燃料は帯電し、燃料の霧化の促進が行なわれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように構成された従来の燃料噴射装置は、燃料がシリンダ内に噴射されると、この燃料が帯電しているためシリンダに付着しやすく、付着したままの燃料は燃焼せずに未燃のまま排出されたりし、燃焼効率が低下するという問題点があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、燃料の微粒子化を促進すると共に、燃焼効率を向上することができる燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る請求項1の燃料噴射装置は、燃料を燃焼するための燃焼室を形成するシリンダと、シリンダの燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁とを備えた燃料噴射装置において、燃焼噴射弁から噴射される燃料を帯電する帯電手段としての数kVから数十kVの直流電圧または交流電圧を発生する電圧印加手段と、燃料噴射後に帯電された燃料の電位とシリンダの電位とが同極性と成るように制御する制御手段と、シリンダと燃料噴射弁とを電気的に絶縁する絶縁部材とを備え、帯電手段は、燃料噴射弁とシリンダとの間に電圧を印加する電圧印加手段から成り、制御手段は、燃料噴射後、電圧印加手段から燃料噴射弁とシリンダとの間に印加する電圧の極性を反転して印加する切換手段にて成るものである。
【0007】
また、この発明に係る請求項2の燃料噴射装置は、請求項1において、帯電手段は、燃料噴射弁と接地点との間に電圧を印加する電圧印加手段にて成り、制御手段は、燃料噴射弁とシリンダとを電気的に導通する導通手段にて成るものである。
【0008】
また、この発明に係る請求項3の燃料噴射装置は、請求項2において、接地点は、燃料噴射弁またはシリンダに形成された電極にて成るものである。
【0009】
また、この発明に係る請求項4の燃料噴射装置は、請求項2において、接地点として、シリンダの燃焼室内の燃料に点火するための点火プラグの中心電極を用いるものである。
【0010】
また、この発明に係る請求項5の燃料噴射装置は、請求項1において、シリンダと燃料噴射弁とを電気的に絶縁する絶縁部材を備え、帯電手段および制御手段は、燃料噴射弁およびシリンダと接地点との間に電圧を印加する電圧印加手段にて成るものである。
【0011】
また、この発明に係る請求項6の燃料噴射装置は、請求項1ないし請求項5のいずれかにおいて、燃料噴射弁は、スワールノズル、ファンスプレーノズル、単一噴孔ノズル、マルチ噴孔ノズル、噴流衝突式ノズルのいずれかにて成るものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1である燃料噴射装置の構成を示す図である、図2は図1に示した燃料噴射装置の燃料噴射状態を示した図である。図において、11は燃料噴射弁本体で、高圧に昇圧された燃料が通過する流路12を構成している。13はエンジンのシリンダで、燃料を燃焼するための燃焼室13aを構成し、この燃焼室13aを往復運動するピストン(図示せず)を備えている。そして、燃料噴射弁本体11の先端が燃焼室13aに到達するように配設されている。燃料噴射弁本体11とシリンダ13とはいずれも導体部材にて形成され、互いに接触する導通箇所A(制御手段としての導通手段)を有している。
【0013】
14は燃料噴射弁本体11の先端部に配設され噴孔15を有するバルブシート、16はバルブシート14に隣接して噴孔15を開閉する弁体であるニードル、17は中心にこのニードル16を囲んで成る燃料旋回素子、18は外周にコイル19が配設されたコアで、その内部が燃料の流路12と成るように中空円筒形状になっており、その中空部にはスプリング20が配設されている。
【0014】
21はニードル16の他端部に、コア18の先端側に対向するように配設されたアマチュア、22は燃料噴射弁本体11と接地点23との間に電圧を印加する帯電手段としての電圧印加手段である。
【0015】
次に上記のように構成された実施の形態1の燃料噴射装置の動作について説明する。まず、数MPa以上に昇圧された燃料24が燃料噴射弁本体11の流路12を通って流入される。そして燃料24は、スプリング20によりアマーチュア21を介してニードル16がバルブシート14に押し付けられているため、せき止められている。次に、コイル19に通電すると、コア18が磁化され、アマーチュア21が上方に吸引される。そして、ニードル16がバルブシート14から離れ、隙間が生じる。
【0016】
そして燃料24は、燃料旋回素子17を通り、旋回力が与えられ、遠心力により噴孔15内では中空の円筒状の液膜が形成され、図2に示すように、噴孔15から円錐状に噴射される。そして、燃料24は燃料粒子24aのような小さな粒子として燃焼室13a内に噴射される。そしてこのコイル19への通電と同時に、電圧印加手段22により燃料噴射弁本体11と接地点23との間に例えば数kVから数十kVのDC電圧が印加される。
【0017】
すると、噴孔15から噴射される燃料24即ち、燃料粒子24aが帯電する。燃料粒子24aが帯電することにより、燃料粒子24aに電気力が働き、この電気力が燃料粒子24aの表面張力に打ち勝ち、燃料粒子24aは不安定となり分裂し、さらに小さな燃料粒子24aとなる。そして、このように分裂して帯電した燃料粒子24a同士は、それぞれが同電位に帯電しているため、燃料粒子24a内部に働く電気力と同様の反発力が作用し、燃料粒子24a同士の衝突を抑制するとともに、たとえ衝突したとしても燃料粒子24a同士の合体も防止することができる。
【0018】
そしてこの際、燃料噴射弁本体11に導通箇所Aにて導通しているシリンダ13は、帯電した燃料粒子24aと同電位すなわち同極性となるように制御されている。よって、帯電した燃料粒子24aがシリンダ13に衝突付着することが防止され、未燃焼燃料のまま排出される燃料が低減する。
【0019】
上記のように構成された実施の形態1の燃料噴射装置は、燃料の微粒子化を促進すると共に、その燃料がシリンダに付着するのを防止するため、燃焼効率を向上させることができる。
【0020】
実施の形態2.
上記実施の形態1では接地点23を燃料噴射装置の外部に備える例を示したがこれに限られることはなく、図3に示すように、燃料噴射弁本体11に絶縁部材25にて燃料噴射弁本体11から絶縁され、接地電位を有する電極26を備え、この電極26と燃料噴射弁本体11との間に電圧印加手段22にて所定の電圧を印加するようにしてもよい。
【0021】
また、図4に示すように、シリンダ13に絶縁部材27にてシリンダ13から絶縁され、接地電位を有する電極28を備え、この電極28と燃料噴射弁本体11との間に電圧印加手段22にて所定の電圧を印加してもよい。
【0022】
また、図5に示すように、シリンダ13の燃焼室13aの燃料に点火するため点火プラグ29の接地電位にある中心電極30を用い、この中心電極30と燃料噴射弁本体11との間に電圧印加手段22にて所定の電圧を印加してもよい。
【0023】
上記のように構成された実施の形態2の燃料噴射装置によれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、燃料噴射弁本体、または、シリンダの所望箇所に接地点を確保することができ、また、中心電極30を用いる場合には新たに接地点を確保すること無く、燃料噴射弁本体およびシリンダに容易に同電位を印加することができる。
【0024】
実施の形態3.
上記各実施の形態では、燃料噴射弁本体11とシリンダ13とが導通箇所Aにて導通している場合について説明したが、ここでは、図6に示すように燃料噴射弁本体11とシリンダ13とを絶縁部材31により電気的に絶縁する。そして燃料噴射弁本体11と接地点23とおよびシリンダ13と接地点23との間に電圧を印加する電圧印加手段32を備える。33はシリンダ13と接地点23との間に形成されたスイッチである。
【0025】
上記のように構成された実施の形態3の燃料噴射装置は、燃料の噴射時に、燃料噴射弁本体11と接地点23との間に所定の電圧を印加すると共に、シリンダ13と接地点23との間のスイッチ33をONすることにより、同一の所定の電圧を印加する。このことにより、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0026】
またこの場合は、スイッチ33をON、OFFすることにより、シリンダ13と接地点23との間の電圧は、印加するまたは印加しないことを選択することができる。但し、帯電した燃料粒子が噴射された後には、必ずスイッチ33をONにし、帯電した燃料粒子と、シリンダとを同極性にしておく必要があることは言うまでもない。
【0027】
実施の形態4.
図7はこの発明の実施の形態4の燃料噴射装置の構成を示す断面図である。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。34は燃料噴射弁本体11とシリンダ13との間に電圧を印加する帯電手段としての電圧印加手段、35a、35bはこの電圧印加手段34に接続された切換手段で、各状態の場合を示した図である。切換手段35aは燃料噴射時の状態を示したもので、切換手段35bは燃料噴射後の状態を示したものである。切換手段35bの11側は燃料噴射弁本体11と、13側はシリンダ13と接続されていることを示すものである。
【0028】
次に上記のように構成された実施の形態4の燃料噴射装置の動作について説明する。燃料の噴射時には、燃料噴射弁本体11とシリンダ13との間に所定の電圧を印加する。そして、上記各実施の形態と同様に、帯電した燃料粒子が燃焼室13a内に噴射されることとなる。そして、この燃料の噴射後に、切換手段35bの状態として、燃料噴射弁本体11とシリンダ13との間に印加する電圧の極性を反転して印加する。よって、上記各実施の形態と同様に、シリンダ13の極性は帯電した燃料粒子と同極性を有することとなり、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0029】
尚、上記各実施の形態では電圧印加手段として直流発生手段により電圧を印加する例を示したがこれに限られることはなく、例えば、図8に示すように、電圧印加手段36として交流の電圧を発生して印加するようにしてもよい。尚、図においては、上記実施の形態1と同様の場合について説明したが、これに限られることはなく他の実施の形態においても同様に形成することができることは言うまでもない。
【0030】
また、上記各実施の形態では、燃料噴射弁本体11として、スワールノズルの場合の例について説明したがこれに限られることはなく、例えば、燃料の微粒子化に適した、図9に示したように、ファンスプレーノズル110や、図10に示すように、単一噴孔ノズル111等においても同様に行うことができる。尚、各図においては、上記実施の形態1と同様の場合について説明したが、これに限られることはなく他の実施の形態においても同様に形成することができることは言うまでもない。また、マルチ噴孔ノズル、噴流衝突式ノズル等においても同様に行うことができる。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、この発明の請求項1によれば、燃料を燃焼するための燃焼室を形成するシリンダと、シリンダの燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁とを備えた燃料噴射装置において、燃焼噴射弁から噴射される燃料を帯電する帯電手段としての数kVから数十kVの直流電圧または交流電圧を発生する電圧印加手段と、燃料噴射後に帯電された燃料の電位とシリンダの電位とが同極性と成るように制御する制御手段と、シリンダと燃料噴射弁とを電気的に絶縁する絶縁部材とを備え、帯電手段は、燃料噴射弁とシリンダとの間に電圧を印加する電圧印加手段から成り、制御手段は、燃料噴射後、電圧印加手段から燃料噴射弁とシリンダとの間に印加する電圧の極性を反転して印加する切換手段にて成るので、燃料の微粒子化を促進するとともに、帯電した燃料がシリンダに付着するのが防止され、燃焼効率に優れた燃料噴射装置を提供することが可能となる。
さらに、燃料の微粒子化を確実に行うことができる燃料噴射装置を提供することが可能となる。
さらに、帯電された燃料の電位とシリンダの電位とを容易に同極性となるよう制御することができる燃料噴射装置を提供することが可能となる。
【0032】
また、この発明の請求項2によれば、請求項1において、帯電手段は、燃料噴射弁と接地点との間に電圧を印加する電圧印加手段にて成り、制御手段は、燃料噴射弁とシリンダとを電気的に導通する導通手段にて成るので、帯電された燃料の電位とシリンダの電位とを容易に同極性となるよう制御することができる燃料噴射装置を提供することが可能となる。
【0033】
また、この発明の請求項3によれば、請求項2において、接地点は、燃料噴射弁またはシリンダに形成された電極にて成るので、接地点を所望の箇所にて確保することができる燃料噴射装置を提供することが可能となる。
【0034】
また、この発明の請求項4によれば、請求項2において、接地点として、シリンダの燃焼室内の燃料に点火するための点火プラグの中心電極を用いるので、接地点を新たに設ける必要がない燃料噴射装置を提供することが可能となる。
【0035】
また、この発明の請求項5によれば、請求項1において、シリンダと燃料噴射弁とを電気的に絶縁する絶縁部材を備え、帯電手段および制御手段は、燃料噴射弁およびシリンダと接地点との間に電圧を印加する電圧印加手段にて成るので、帯電された燃料の電位とシリンダの電位とを容易に同極性となるよう制御することができる燃料噴射装置を提供することが可能となる。
【0036】
また、この発明の請求項6によれば、請求項1ないし請求項5のいずれかにおいて、燃料噴射弁は、スワールノズル、ファンスプレーノズル、単一噴孔ノズル、マルチ噴孔ノズル、噴流衝突式ノズルのいずれかにて成るので、燃料の微粒子化を確実に行うことができる燃料噴射装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1の燃料噴射装置の構成を示す断面図である。
【図2】 図1に示した燃料噴射装置の燃料噴射状態を示す断面図である。
【図3】 この発明の実施の形態2の燃料噴射装置の構成を示す断面図である。
【図4】 この発明の実施の形態2の燃料噴射装置の構成を示す断面図である。
【図5】 この発明の実施の形態2の燃料噴射装置の構成を示す断面図である。
【図6】 この発明の実施の形態3の燃料噴射装置の構成を示す断面図である。
【図7】 この発明の実施の形態4の燃料噴射装置の構成を示す断面図である。
【図8】 この発明の実施の形態4の燃料噴射装置の構成を示す断面図である。
【図9】 この発明の実施の形態4の燃料噴射装置の構成を示す断面図である。
【図10】 この発明の実施の形態4の燃料噴射装置の構成を示す断面図である。
【図11】 従来の燃料噴射装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
11 燃料噴射弁本体、13 シリンダ、15 噴孔、
22,32,34,36 電圧印加手段、23 接地点、24 燃料、
24a 燃料粒子、25,27,31 絶縁部材、26,28 電極、
29 点火プラグ、30 中心電極、33 スイッチ、35a,35b 切換手段、
110 ファンスプレーノズル、111 単一噴孔ノズル、A 導通箇所。
Claims (6)
- 燃料を燃焼するための燃焼室を形成するシリンダと、上記シリンダの上記燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁とを備えた燃料噴射装置において、燃焼噴射弁から噴射される燃料を帯電する帯電手段としての数kVから数十kVの直流電圧または交流電圧を発生する電圧印加手段と、上記燃料噴射後に上記帯電された燃料の電位と上記シリンダの電位とが同極性と成るように制御する制御手段と、上記シリンダと上記燃料噴射弁とを電気的に絶縁する絶縁部材とを備え、上記帯電手段は、上記燃料噴射弁と上記シリンダとの間に電圧を印加する電圧印加手段から成り、上記制御手段は、燃料噴射後、上記電圧印加手段から上記燃料噴射弁と上記シリンダとの間に印加する電圧の極性を反転して印加する切換手段にて成るをことを特徴とする燃料噴射装置。
- 帯電手段は、燃料噴射弁と接地点との間に電圧を印加する電圧印加手段にて成り、制御手段は、上記燃料噴射弁とシリンダとを電気的に導通する導通手段にて成ることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射装置。
- 接地点は、燃料噴射弁またはシリンダに形成された電極にて成ることを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射装置。
- 接地点として、シリンダの燃焼室内の燃料に点火するための点火プラグの中心電極を用いることを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射装置。
- シリンダと燃料噴射弁とを電気的に絶縁する絶縁部材を備え、帯電手段および制御手段は、上記燃料噴射弁および上記シリンダと接地点との間に電圧を印加する電圧印加手段にて成ることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射装置。
- 燃料噴射弁は、スワールノズル、ファンスプレーノズル、単一噴孔ノズル、マルチ噴孔ノズル、噴流衝突式ノズルのいずれかにて成ることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の燃料噴射装置。
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