JP3958132B2 - 工作機械のハイブリッド案内装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械のテーブルなどの直線運動を案内する案内装置に係り、特に、すべり案内と転がり案内を組み合わせた案内機構からなるハイブリッド案内装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
工作機械において、コラムや、主軸頭、テーブル等の移動体の案内機構に採用されているのは、すべり案内と転がり案内である。すべり案内は、案内面との接触形式が滑り接触であり、静剛性が高く、またビビリの原因となる振動に対する減衰性が転がり案内に比べて優れている。
【0003】
他方、転がり案内は、案内面との接触形式が転がり接触となり、振動に対する減衰性は低いが、摩擦抵抗が小さく高速性や運動精度に関しては、すべり案内よりも優れている。要するに、すべり案内と転がり案内とでは、お互いに他方の長所とするところを短所とし、他方の短所とするところを長所としている。
【0004】
近年では、すべり案内と転がり案内のそれぞれの特徴を活用するために、すべり案内と転がり案内とを組み合わせたハイブリッド型の案内機構が開発されている。このようなハイブリッド型の案内装置の従来技術としては、例えば、特開平9−131634号や特開2001−9655に開示されているものを挙げることができる。
【0005】
特開平9−131634号の案内装置をはじめとする従来のハイブリッド型の案内装置は、すべり案内を主体として減衰性を確保した上で、すべり案内の欠点である浮き上がりを抑え、高速適応性を付加するためすべり案内を補完するものとして転がり案内を使用するというのが基本的な設計上の考え方である。
【0006】
例えば、上記特開平9−131634号の案内装置では、主体となる案内はすべり案内であり、転がり案内を従として転がり案内の役割分担の相対的な割合を変えられるようにするために、転がり案内と移動体との間に油圧シリンダを介在させ、低速送り時には、油圧シリンダに低圧の圧油を供給して転がり案内の分担割合を下げ、高速送り時に転がり案内の分担割合を高めるときには油圧シリンダに高圧の圧油を供給するようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、転がり案内は高速性に優れる反面、ローラまたはボールの出入りによる脈動に起因するウェービングが生じ、周期的にうねりが生じるという問題がある。
【0008】
従来のハイブリッド案内では、すべり案内特有の浮き上がりを転がり案内を用いて抑制するということは行われていたが、ウェービングに対しては有効といえる対策が講じられていなかった。
【0009】
さらに、従来のハイブリッド案内装置では、減衰性を高める機構に極僅かでもガタが存在すると、その方向での微少変位を抑制できないため、必要な減衰性が得られないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、高速性を保つための転がり案内を常設した上で、複雑な機構を要することなく、ウェービングを抑制し、必要な減衰性を増すことができるようにした工作機械のハイブリッド案内装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、工作機械における移動体の基台上での直線運動の基準となる主たる案内を構成する転がり案内と、前記転がり案内を補完する従たる案内としてのすべり案内と、の組み合わせからなり、前記すべり案内は、基台に設けられた、前記ころがり案内の案内面に対して垂直なすべり面を摺動するスライダと、前記スライダを保持し移動体に取り付けられる案内本体部とから構成され、前記案内本体部に前記スライダをすべり面に垂直に押圧するばね作用を発生する切欠部を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
前記案内本体部には、押圧力を厚さの変化で調整する調整ライナを移動体との間に挟んで取り付けるようにしてもよい。
また、前記押圧力を前記切欠部の切欠形状により変化させるようにすることもできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による工作機械のハイブリッド案内装置の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明によるハイブリッド案内装置をマシニングセンタのテーブル送りの案内機構に適用した実施の形態を示し、テーブルを移動方向正面から見た図である。
【0014】
図1において、参照符号10はベッドを示す。このベッド10はベース11上に固定されている。ベッド10の上には、移動体としてテーブル12が設置されている。13は、テーブル12の送り機構を構成するボールねじであり、ベッド10の長手方向に延びている。
【0015】
ベッド10の上面には、左右両側に一組のガイドレール14a、14bがボールねじ13と平行に敷設されている。テーブル12の下面には、転がり案内ユニット15a、15bが取り付けられており、それぞれガイドレール14a、14bに係合するようになっている。この場合、テーブル12の自重は、転がり案内ユニット15a、15bを介してガイドレール14a、14bにかかるようになっている。転がり案内ユニット15a、15bは図示しないローラを内蔵し、このローラがガイドレール14a、14bを転動する。
【0016】
本発明のハイブリッド案内装置では、転がり案内が主体の案内としてベッド10上でのテーブル12の直線運動の基準となる案内面を構成している。この案内面は、ベッド10の上面と平行である。
【0017】
上記転がり案内を補完するため、以下のような従たる案内としてのすべり案内が転がり案内と組み合わされ、本発明のハイブリッド案内装置が構成されている。
テーブル10の送り方向に向かって左右両側のベッド10の側面部には、それぞれすべり面16a、16bが形成されており、これらのすべり面16a、16bは、ガイドレール14a、14bと平行に延びるようになっている。転がり案内により構成される主体となる案内面との関係では、この案内面に対してすべり面16a、16bは垂直である。
【0018】
参照符号18a、18bは、それぞれすべり案内ユニットを示す。すべり案内ユニット18a、18bは、本体部19a、19bと、すべり面16a、16bをそれぞれ摺動するスライダ20a、20bとから構成されている。この実施形態では、本体部19a、19bは、断面L字形のブロック体で、直角に屈曲した下端部にスライダ20a、20bが固着されている。
【0019】
また、本体部19a、19bの外側側面には、断面が急に減少する切欠部としてU溝21a、21bが形成されている。このU溝21a、21bは、スライダ20a、20bのあるところよりも上の位置に形成され、溝の深さ方向は、すべり面16a、16bに対して垂直であり、本体部19a、19bの全幅に亘って延びるようになっている。
【0020】
このような切欠部を有する本体部19a、19bは、テーブル12の左右両側面にそれぞれ調整ライナ22を介してボルト23を用いて固定されており、テーブル12の左右両側からベッド10を挟み込むように取り付けられている。
【0021】
テーブル12の自重は、すべり面16a、16bにかからないため、スライダ20a、20bとすべり面16a、16bとの間に、所定の大きさの摩擦力を発生させるには、スライダ20a、20bをすべり面16a、16bに押し付ける押圧力が必要であるが、本実施形態のすべり案内ユニット18a、18bでは、次のようにして、上述した切欠部のばね作用を利用して押圧力を発生させている。
【0022】
すなわち、本体部19a、19bを固定するときに、厚さを調整した調整ライナ22を間に挟むことにより、U溝21a、21bにより断面が減少した切欠部がわずかに撓んだ状態を保つようにして取り付ければよい。なお、本体部19a、19bは、ボルト23を抜き取ることで、テーブル12から簡単に取り外すことができる。
【0023】
図2に示すように、この実施形態では、すべり案内ユニット18a、18bは、テーブル12の片側側面に2個、両側で都合4個配置されている。この場合、テーブル送り系に適正な減衰性を付与するために、すべり案内ユニット18a、18bの配置数、その本体部19a、19bの幅寸法や、U溝21a、21bの深さや幅など、必要な押圧力を発生するような切欠形状が設定される。
【0024】
図3に示すように、すべり案内ユニット18a、18bの本体部19a、19bには、V溝24a、24bにより切欠部を構成するようにしてもよい。
【0025】
本実施形態による工作機械のハイブリッド案内装置は、以上のように構成されるものであり、次に、その作用並びに効果について説明する。
【0026】
工作物に面精度や形状精度が求められる仕上げ加工を行う場合には、図1に示されるように、テーブル12にすべり案内ユニット18a、18bを取り付けた状態では、転がり案内と滑り案内の両方を持つハイブリッド案内となる。
【0027】
加工中にテーブル12が送られるときには、転がり案内ユニット15a、15bのローラがガイドレール14a、14bを転動し、テーブル12 の直線運動は転がり案内により主として案内される。すべり面16a、16bにはテーブル12の自重はかからず、後述のように減衰性を高めるためのもので、転がり案内の高速性を阻害するものではない。このため、転がり案内の特徴である高速性を活用して早送りに対応することができる。しかも、テーブル12が運動している間、すべり案内を構成するすべり面16a、16bとスライダ20a、20bとの間には適正な摩擦力が生じ、これにより送り方向の減衰性が増えるので、加工中に生じる切削振動を減衰させることができる。そして、すべり面16a、16bにうねりがある場合でも、そのうねりをすべり案内ユニット18a、18bの本体部19a、19bに設けた切欠部が吸収するとともに、そのばね作用によりスライダ20a、20bを一定の力で押し付けるので、減衰性を低下させることなく高い減衰性を維持することができる。しかも、切欠部はU溝21a、21b、V溝24a、24bというような単純な切欠形状を利用し、従来のようなガタが生じうる複雑な機械的構造を持たないようにすることができるので、耐久性、確実性において優れたものにできる。
【0028】
また、転がり案内に生じるテーブル12の移動方向に対して左右方向へのウェービングは、すべり案内ユニット18a、18bによって抑制することができるので、工作物に必要な面精度や形状精度を確保することができ、さらに、振動から工具を守り、工具寿命を向上させることが可能となる。
【0029】
以上、本発明によるハイブリッド案内装置についてマシニングセンタのテーブルの案内に適用した好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は、工作機械の主軸頭や、サドル、クロスレール等の種々の移動体の案内に適用できる。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、高速性を保つための転がり案内を常設した上で、複雑な機構を要することなく、ウェービングを抑制し、必要な減衰性を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による工作機械のハイブリッド案内装置を示す正面図。
【図2】同実施形態による工作機械のハイブリッド案内装置を示す側面図。
【図3】同実施形態による工作機械のハイブリッド案内装置において、すべり案内本体部の変形例を示す正面図。
【符号の説明】
10 ベッド
11 ベース
12 テーブル
13 ボールねじ
14a、14b ガイドレール
15a、15b 転がり案内ユニット
16a、16b すべり面
18a、18b すべり案内ユニット
20a、20b スライダ
21a、21b U溝
22 調整ライナ
24a、24b V溝
Claims (3)
- 工作機械における移動体の基台上での直線運動の基準となる主たる案内を構成する転がり案内と、前記転がり案内を補完する従たる案内としてのすべり案内と、の組み合わせからなり、
前記すべり案内は、基台に設けられた、前記ころがり案内の案内面に対して垂直なすべり面を摺動するスライダと、前記スライダを保持し移動体に取り付けられる案内本体部とから構成され、前記案内本体部に前記スライダをすべり面に垂直に押圧するばね作用を発生する切欠部を設けたことを特徴とする工作機械のハイブリッド案内装置。 - 前記案内本体部は、押圧力を厚さの変化で調整する調整ライナを移動体との間に挟んで取り付けることを特徴とする請求項1に記載の工作機械のハイブリッド案内装置。
- 前記押圧力を前記切欠部の切欠形状により変化させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の工作機械のハイブリッド案内装置。
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