JP3957473B2 - グリップ高さ調整機能付き松葉杖 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高さ調整可能なグリップを備えた松葉杖に関するものであり、更に詳しくは、グリップの高さ調整用の孔を松葉杖本体枠に形成する必要がなく、しかも、グリップの高さ調整を簡単に行うことのできる松葉杖に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
松葉杖としては、使用する人の体格に合った高さ位置にグリップを調整できる高さ調整機構が備わったものが提案されている。例えば、特開平6−86795号公報および特開2000−237253号公報には、松葉杖を構成している一対の支持パイプに沿ってグリップを昇降可能に取り付けると共に、当該グリップの高さを、グリップ側に取り付けたピンを支持パイプ側に形成した複数のピン孔のひとつに差し込むことにより調整可能な機構が提案されている。これらの公開公報に記載されている高さ調整機構では、グリップの高さ調整用のピンを着脱するための操作を簡単に行うための工夫がなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の公開公報に記載されているグリップの高さ調整機構を含め、従来におけるグリップの高さ調整機構は、松葉杖本体を構成している支持パイプに高さ調整用の孔を複数の箇所に形成した構成が基本となっている。
【0004】
このために、松葉杖本体の強度、特に、曲げ強度などが低下してしまう。また、一対の支持パイプのそれぞれに孔を形成する必要があるので、製作もその分、面倒になる等の問題がある。さらには、グリップの両端がピンによって各支持パイプに固定されているので、高さ調整時には、グリップの両端を各支持パイプに対して着脱する操作が必要なので、高さ調整操作が面倒である。
【0005】
本発明の課題は、松葉杖本体を構成している支持枠にグリップの高さ調整用の孔を形成する必要の無いグリップの高さ調整機構を備えた松葉杖を提案することにある。
【0006】
また、本発明の課題は、簡単な操作により、グリップの高さ調整を行うことのできる松葉杖を提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、一対の垂直支持枠と、これら垂直支持枠に架け渡されている高さ調整可能な水平グリップとを有している松葉杖において、前記水平グリップを支持していると共に、前記垂直支持枠に沿ってスライド可能な状態で当該垂直支持枠に取付られている昇降スライダと、この昇降スライダを、前記垂直支持枠の所定の高さ位置に固定しているスライダ支持機構とを有している。
【0008】
また、このスライダ支持機構は、下端部が前記一対の垂直支持枠に固定されている垂直固定パイプと、上端部に前記昇降スライダが取り付けられている垂直昇降パイプとを備えている。
【0009】
さらには、前記垂直昇降パイプの下端部は、前記垂直固定パイプの上端開口からスライド可能な状態で当該垂直パイプに差し込まれていると共に、水平方向にばね力によって常に押し出されている固定ピンを備えており、前記垂直固定パイプの上端部には、その軸線方向に沿って所定の間隔で、前記固定ピンが突出可能な複数の高さ調整孔が形成されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の松葉杖においては、グリップの高さ調整用のピン孔が、昇降スライダを支持している垂直固定パイプに形成されている。従って、松葉杖の垂直支持枠にピン孔を形成する必要がないので、松葉杖自体の強度低下を抑制できる。また、垂直支持枠の製作が容易になる。
【0011】
さらに、グリップの高さ調整時には、垂直昇降パイプに取り付けられている固定ピンを操作するのみでよい。よって、従来のようにグリップ両端のピンを着脱する場合に比べて、操作が簡単になる。
【0012】
ここで、前記垂直昇降パイプを、その軸線を中心として所定の角度だけ回転可能な状態で、前記昇降スライダに取り付けるようにしてもよい。このようにすれば、高さ調整時に、当該垂直昇降パイプを回転させると、この垂直昇降パイプに取り付けられている固定ピンを、垂直固定パイプ側に形成されているピン孔から円周方向にオフセットさせることができる。このため、希望するピン孔の位置で垂直昇降パイプを元に戻せば、希望する高さ位置のピン孔に固定ピンが差し込まれるので、グリップの高さ調整操作が簡単になり便利である。
【0013】
また、前記水平グリップと前記昇降スライダは、例えば、樹脂成形品とする場合には、単一部品として成形することができる。
【0014】
なお、固定ピンを垂直固定パイプに取り付け、複数のピン孔を垂直昇降パイプに形成することも可能である。
【0015】
次に、グリップを所定の高さ位置に固定するための固定ピンは、円柱形状のものを用いる代わりに、先細りの円錐台形状のものを用いると、固定した状態において、ピン孔との間に隙間ができないので、がたつかないという利点がある。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したグリップ高さ調整機能付きの松葉杖の一例を説明する。
【0017】
図1は、本例のグリップ高さ調整機能付き松葉杖を示す平面図である。この図に示すように、本例の松葉杖1は、松葉杖本体を構成している左右一対の垂直支持パイプ2、3を有し、これら垂直支持パイプ2、3の上端には脇当て4が水平に取り付けられている。垂直支持パイプ2、3の下端部分は、それらの間に連結用垂直パイプ5を挟み、当該連結用垂直パイプ5の上下端位置において、相互に連結金具6、7によって固定されている。連結用パイプ5の下端からは同軸状態にスティック8が垂直に延びており、当該スティック8の下端には滑り止め9が取り付けられている。
【0018】
また、左右一対の垂直支持パイプ2、3の上半部分2a、3aは一定の間隔で平行に延びており、これらの部分2a、3aの間には、これらの部分に沿ってスライド可能な昇降スライダ10が取り付けられており、この昇降スライダ10にはグリップ11が水平に取りつけられている。昇降スライダ10は、垂直支持パイプ2、3の上半部分2a、3における所定の高さの所に、スライダ支持機構12によって保持されている。本例では、グリップ11が、スライダ支持機構12によって、その高さ位置を調整可能となっている。
【0019】
図2(a)および(b)は、グリップ高さ調整用のスライダ支持機構12を示す部分平面図および部分断面図である。これらの図も参照して、スライダ10およびスライダ支持機構12を説明する。
【0020】
まず、本例のスライダ10は、樹脂成形品であり、各垂直支持パイプ2、3の上半部分2a、3aがスライド自在の状態で挿し通されている左右の筒状部分21、22と、これらの下端部を相互に連結している連結部分23とを備えている。筒状部分21、22の上端部の間には、グリップ11が水平に架け渡されている。
【0021】
このスライダ10を支持しているスライダ支持機構12は、同軸状態に配置された垂直昇降パイプ31と垂直固定パイプ32とを備えており、上側に位置している垂直昇降パイプ31の上端部31aは、昇降スライダ10の連結部分23に取り付けられ、その下端部31bは、垂直固定パイプ32の上端開口32aからスライド可能な状態で当該垂直固定パイプ32に差し込まれている。この垂直固定パイプ32の下端部32bは、連結用垂直パイプ5に差し込まれ、連結ピン7によって当該連結用垂直パイプ5に固定されている。
【0022】
垂直固定パイプ32に差し込まれている垂直昇降パイプ31の下端部31bには、水平方向にばね力によって常に押し出されている固定ピン33が取り付けられている。垂直固定パイプ32の上端部32cには、その軸線方向に沿って所定の間隔で、固定ピン33が突出可能な複数の高さ調整孔、例えば5個の高さ調整孔34(1)ないし34(5)が形成されている。
【0023】
ここで、垂直昇降パイプ31の上端部31aが取りつけられている昇降スライダ10の連結部分23は、すり割り付きのパイプ差込用の盲孔23aが形成されており、ここに差し込まれた垂直昇降パイプ31の上端部31aが、当該連結部分23およびパイプ上端部31aを水平に貫通して延びる連結ピン35によって連結されている。
【0024】
また、本例では、パイプ上端部31aに形成されている連結ピン35のピン孔36は、パイプ円周方向に長い長孔とされている。この結果、垂直昇降パイプ31をその軸線を中心として、左右に一定角度だけ回転させることが可能となっている。図2に示すように、連結ピン35がピン孔36の中央に位置している状態では、垂直昇降パイプ31の下端部31bに取り付けられている固定ピン33を、各高さ調整孔34(1)ないし34(5)に差込可能な円周方向の位置にある。この位置から垂直昇降パイプ31を左右に回転させると、固定ピン33が高さ調整孔34(1)ないし34(5)に対して円周方向にオフセットした位置となる。
【0025】
このように構成した本例の松葉杖1において、グリップ11の高さを調整する場合には次のように行えばよい。例えば、図2に示すように、固定ピン33が最も上の高さ調整孔34(1)に差し込まれた状態にあるとする。この状態において、固定ピン33を指などで押し込み、高さ調整孔34(1)から外すと、垂直昇降パイプ31を上下に自由に移動させることが可能になる。従って、この垂直昇降パイプ31の上端に連結されているスライダ10を左右の垂直支持パイプ2、3に沿って上下にスライドさせることが可能なり、当該スライダ10に取り付けられているグリップ11の高さを調整可能になる。
【0026】
グリップ11を一段低い位置に調整するために、グリップ11を下方に押すと、これが取りつけられているスライダ10が垂直支持パイプ2、3に沿って下方にスライドし、そこに連結されている垂直昇降パイプ31が降下して、その下端部31bがより深く垂直固定パイプ32に差し込まれる。押し込まれた状態にある固定ピン33が、高さ調整孔34(2)に一致する位置まで差し込まれると、当該固定ピン33がばね力によって高さ調整孔34(2)から外部に突出して、当該調整孔に係合する。この結果、グリップ11は、高さ調整孔34(2)によって規定されて一段低い高さ位置に調整される。
【0027】
ここで、グリップ11を、最も高い位置にある高さ調整孔34(1)から二段低い高さ調整孔34(3)の位置まで下げる場合には、垂直昇降パイプ31をその軸線周りに回転させて、固定ピン33を各高さ調整孔34(1)ないし34(5)から円周方向にオフセットさせ、この状態で降下させればよい。このようにすれば、押し込まれた状態にある固定ピン33が、高さ調整孔34(2)にはまり込むことなく、その下側の高さ調整孔34(3)の位置まで移動する。この高さ調整孔34(3)の高さ位置となったところで、垂直昇降パイプ31を元の位置となるように回せば、固定ピン33が高さ調整孔34(3)に一致し、ここから突出して、グリップ11が目標とする高さ位置に固定される。
【0028】
このように、本例の松葉杖1においては、松葉杖本体を構成している左右の垂直支持パイプ2、3に、グリップ高さ調整用のピン孔を複数形成する必要がない。よって、松葉杖本体の強度、特に曲げ強度の低下を抑制でき、また、孔をあける必要がないので、これら垂直支持パイプの製作も簡単になる。
【0029】
また、グリップ高さの調整時には、1本の固定ピン33を操作するのみでよいので、従来のように、グリップ両端に取り付けられている固定ピンの着脱操作を行う場合に比べて、グリップ高さ調整操作が簡単になる。
【0030】
なお、本例では、スライダ10とグリップ11を別部品として構成しているが、例えば、これらを単一部品として形成することもできる。また、本例では、垂直昇降パイプ31をその軸線回りに回転可能としたが、この構成を省略しても良いことは勿論である。さらに、本例では、垂直昇降パイプ31に固定ピン33を取りつけ、垂直固定パイプ32に多数の高さ調整孔34(1)ないし34(5)を形成しているが、これとは逆に、垂直昇降パイプ31に高さ調整孔を形成し、垂直固定パイプ32に固定ピンを取り付ける構成を採用することも可能である。
【0031】
(固定ピンの形状について)
ここで、上記の例では固定ピン33について詳細には触れなかったが、一般的に使用されている固定ピンは先端が半球状の円柱形状をしている。この場合、固定ピンの外径寸法に対して、ピン孔の直径は0.1mm程度大きくなるように設定している。この隙間があるので、固定ピンで固定した状態では、隙間分だけがた付きが発生する。隙間を無くすと、固定ピンをピン孔に通すことが困難になってしまう。
【0032】
固定ピンにより固定した時のがた付きを無くすためには、次のような形状の固定ピンを用いることが望ましい。図3を参照して説明すると、固定ピン33Aとして、先端部分331が半球状であり、そのつば広のベース332と当該先端部分331との間の胴部333が僅かに先細りの円錐台形状となっているものを用いることが望ましい。換言すると、テーパ付きの外周面を備えた固定ピンを用いることが望ましい。この固定ピン33Aは、例えば、そのベース背面の中心に一端が固定されたV形の押さえばね334によって、常に、ピン孔32dから水平方向に押し出されている。この形状の固定ピン33Aを、パイプ32の側に形成されているピン孔34に差し込むと、その胴部333がテーパ状になっているので、当該ピン孔34の直径を適切に設定しておけば、がた付きの状態を形成可能である。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のグリップ高さ調整機能付き松葉杖においては、グリップを一対の垂直支持枠に沿ってスライド可能なスライダに取りつけ、このスライダを支持しているスライダ支持機構を、垂直固定パイプと、ここに差し込まれた垂直昇降パイプから構成し、この垂直昇降パイプの上端にスライダを取りつけ、垂直昇降パイプの差し込み量を調整することにより、グリップの高さ調整を行うようにしている。
【0034】
従って、本発明によれば、松葉杖本体を構成している一対の垂直支持枠に、グリップ高さ調整用の孔を多数形成する必要がなくなる。よって、松葉杖本体の強度、特に曲げ強度の低下を抑制でき、また、これら垂直支持枠の製作も簡単になる。
【0035】
さらに、垂直昇降パイプを昇降させるための1本の固定ピンを操作するだけで、グリップの高さ調整を行うことができるので、従来のようにグリップの両端に取り付けられている固定ピンの着脱を行う場合に比べて、グリップの高さ調整操作が簡単になる。
【0036】
一方、本発明ではグリップ高さ設定用の固定ピンとして、円錐台形状のものを使用しているので、従来のような円柱状の固定ピンを用いる場合のようながた付きを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したグリップ高さ調整機能付き松葉杖の一例を示す平面図である。
【図2】図1の松葉杖におけるグリップ高さ調整用のスライダ支持機構を示す部分平面図および部分断面図である。
【図3】図1の固定ピンの望ましい例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 松葉杖
2、3 垂直支持パイプ
2a、3a 垂直支持パイプの上半部分
4 脇当て
5 連結用垂直パイプ
6、7 連結ピン
8 スティック
9 滑り止め
10 スライダ
11 グリップ
12 スライダ支持機構
21、22 筒状部
23 連結部
23a 盲孔
31 垂直昇降パイプ
31a 上端部
31b 下端部
32 垂直固定パイプ
32a 上端開口
32b 下端部
32c 上端部
33、33A 固定ピン
333 先細りの胴部
34、34(1)ないし34(5) 高さ調整孔
35 連結ピン
36 ピン孔

Claims (5)

  1. 一対の垂直支持枠(2、3)と、これら垂直支持枠(2、3)に架け渡されている高さ調整可能な水平グリップ(11)とを有している松葉杖(1)において、
    前記水平グリップ(11)を支持していると共に、前記垂直支持枠(2、3)に沿ってスライド可能な状態で当該垂直支持枠(2、3)に取り付けられている昇降スライダ(10)と、
    この昇降スライダ(10)を、前記垂直支持枠(2、3)の所定の高さ位置に固定しているスライダ支持機構(12)とを有し、
    前記一対の垂直支持枠(2、3)の下端部分は、連結用垂直パイプ(5)を挟み、相互に固定されており、
    前記連結用垂直パイプ(5)の下端からはスティック(8)が同軸状態に延びており、
    前記スライダ支持機構(12)は、
    前記連結用垂直パイプ(5)の上端部に、同軸状態に下端部が固定されている垂直固定パイプ(32)と、
    前記昇降スライダ(10)が上端部(31a)に取り付けられている垂直昇降パイプ(31)とを備え、
    前記垂直昇降パイプ(31)の下端部(31b)は、前記垂直固定パイプ(32)の上端開口(32a)からスライド可能な状態で当該垂直固定パイプ(32)に差し込まれていると共に、水平方向にばね力によって常に押し出されている固定ピン(33)を備えており、
    前記垂直固定パイプ(32)の上端部(32c)には、その軸線方向に沿って所定の間隔で、前記固定ピン(33)が突出可能な複数の高さ調整孔(34)が形成されていることを特徴とする松葉杖。
  2. 請求項1において、
    前記垂直昇降パイプはその軸線を中心として所定の角度だけ回転可能な状態で、前記昇降スライダに取り付けられていることを特徴とする松葉杖。
  3. 請求項1において、
    前記水平グリップと前記昇降スライダは、単一部品からなることを特徴とする松葉杖。
  4. 請求項1において、
    前記固定ピンは、前記垂直昇降パイプに取り付ける代わりに、前記垂直固定パイプに取付られており、
    前記ピン孔は、前記垂直固定パイプに形成する代わりに、前記垂直昇降パイプに形成されていることを特徴とする松葉杖。
  5. 請求項1において、
    前記固定ピンは、先細りの円錐台形状をしていることを特徴とする松葉杖。
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