JP3957443B2 - スピーカ装置のドライバユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スピーカ装置のドライバユニットに関し、特に、動電(ダイナミック)形のドライバユニット等のように、振動板と共に振動する可動コイルを備えたドライバユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
上記動電形のドライバユニットとして、従来、例えば図4に示すようなホーンスピーカ装置用のドライバユニットが知られている。なお、同図のうち、(a)は、当該ドライバユニットの中央縦断面図、(b)は、(a)において点線Dで囲む部分を拡大して示す図である。
【0003】
同図に示すように、このドライバユニットは、その土台ともなる磁気回路1と、この磁気回路1上に載置されたパッキン2と、このパッキン2に固定されたダイヤフラム3と、から成る。このうち、磁気回路1は、円盤状のボトムプレート11と、このボトムプレート11の上面の中央部分に結合された円柱状のポールピース12と、このポールピース12の外周壁12aから間隔を隔てて当該ポールピース12の周囲を包囲するように上記ボトムプレート11の上面に設けられた円筒状のマグネット13と、このマグネット13の上面に結合された環状のプレート14と、から成る。プレート14は、その上面をポールピース12の上面の位置に略一致させた状態で、上記マグネット13と同様、ポールピース12の外周壁12aから間隔を隔てて当該ポールピース12の周囲を包囲するように配置されている。これにより、ポールピース12の外周壁12aとプレート14の内周壁14aとの間に、円筒状の狭い空隙15が形成され、この空隙15にマグネット13の磁束が集中し、即ち磁気空隙が形成される。
【0004】
そして、上記プレート14の上面に、例えばプラスチック製のパッキン2が、載置されている。このパッキン2の外観図を、図5に示す。同図に示すように、このパッキン2は、概略環状のもので、その内径は、プレート14の内径よりも大きく、換言すれば、このパッキン2の内周壁2aは、プレート14の内周壁14aよりも外方に位置する。そして、パッキン2の底面には、この底面側の外周縁に沿って当該底面から垂直に突出する状態に、複数の嵌合壁21、21、・・・が設けられている。パッキン2は、これら各嵌合壁21、21、・・・の内側に、上記プレート14の上方部を嵌合させた状態で、当該プレート14の上面に載置されている。
【0005】
また、パッキン2は、その上面に、後述する引出線31を収容して、この引出線31をパッキン2の中空部内から外部に引き出すための溝部22を、2つ有している。これら各溝部22、22は、それぞれ、パッキン2の中空部を介して互いに対向する状態に即ち180度間隔で設けられており、このパッキン2の内周壁2aから当該パッキン2の半径方向に沿って外周壁2b付近にまで直線的に形成されている。なお、これら各溝部22、22は、それぞれ上記引出線31をすっぽりと収容できる程度の大きさとされており、具体的には、各溝部22、22の各幅寸法及び深さ寸法は、それぞれ引出線31の直径よりもやや大きめの寸法とされている。また、各溝部22、22の各深さ寸法は、それぞれの長さ方向における略中間付近から外方に向かうに従って、徐々に浅くなるように形成されている。更に、このパッキン2の外周壁2bにおける上記各溝部22、22が位置する部分に対応する部分には、それぞれ、外方に突出する突出部23、23が設けられている。そして、後述する中継端子4、4を取り付けるための端子取付孔24、24が、それぞれの上面から底面に貫通する状態に設けられている。
【0006】
ダイヤフラム3は、振動板32と、この振動板32に結合されたボビン33と、このボビン33に捲着された可動コイル、所謂ボイスコイル34と、このボイスコイル34の両端にそれぞれ接続された上記引出線31、31と、で構成されている。このうち、振動板32は、ポールピース12の上面を略すっぽり覆う程度の大きさのドーム状の部分32aと、このドーム状部分32aの周縁部分に結合された複数の同心円状の山部と谷部とを有するサスペンション32bと、から成る。そして、このサスペンション32bの周縁部分の裏面(図4において下方の面)が、例えば接着剤等により、パッキン2の上面の全周にわたって接着されている。これによって、上記ドーム状部分32aは、サスペンション32bの弾性作用により、ポールピース12の上面に対して略垂直な方向に沿って、振動可能な状態となる。なお、このドライバユニットには、ダイヤフラム3全体を覆う状態に、図示しないホーンを結合するためのホーン結合部材5が、結合される。このホーン結合部材5は、ダイヤフラム3を覆う側の表面に円筒状の突出部51を有しており、上記サスペンション32bの周縁部分は、当該突出部51によっても、パッキン2の上面に押圧固定されるよう構成されている。
【0007】
ボビン33は、厚さの薄い例えば樹脂製の絶縁体物質を円筒形に形成したもので、その一端が、上記ドーム状部分32aの裏面側周縁部分に、例えば接着固定されている。これにより、ボビン33の他端側は、上記磁気空隙15内に懸垂された状態とされている。そして、このボビン33の外周壁であって、磁気空隙15内に位置する部分に、上記ボイスコイル34が捲着されている。
【0008】
上記ボイスコイル34の両端は、それぞれ、上記各引出線31、31の各一端に、例えば半田付けされている(この半田付け部分については図示せず)。これら各引出線31、31は、それぞれ、上記パッキン2の中空部内においては、サスペンション32bの裏面とプレート14の上面との間の空間を介して、配線される。そして、パッキン2の内壁面2aからパッキン2の外側に至る部分においては、各引出線31、31は、それぞれ、図6に示すように、上記溝部22内を介して配線される。そして、これら各引出線31、31の各他端側は、パッキン2の上記端子取付孔24、24に嵌合された中継端子4、4に、それぞれ例えば半田付けされる。なお、各中継端子4、4は、それぞれパッキン2の底面側に突出した部分を有しており、これら各突出部分に、図示しないアンプ装置からの信号線が、例えば端子接続される。
【0009】
ところで、上記のように構成されたドライバユニットによれば、上記アンプ装置から、中継端子4、4及び引出線31、31を介して、ボイスコイル34にオーディオ信号が供給されると、ボイスコイル34は、フレミングの左手の法則に従って、上記磁気空隙15内の磁界の方向を横切る方向、即ちポールピース12の上面に垂直な方向に沿って、振動する。そして、このボイスコイル34の振動に伴って、図4(b)に矢印6で示すように、振動板32が振動し、この振動が空気に伝播し、これによって、上記オーディオ信号が音波に変換される。なお、このボイスコイル34の振動に伴って、このボイスコイル34に接続された引出線31、31も一緒に振動することは、言うまでもない。
【0010】
ところが、上記のような動電形のドライバユニットでは、その寸法や性能等の関係上、一般に、サスペンション32bの裏面とプレート14の上面との間隔が極力短く設定される。よって、上記振動の振幅が大きいと、各引出線31、31がプレート14に接触することがある。ここで、各引出線31、31は、例えば、耐熱樹脂繊維を芯材とし、その周りに銅箔線を網状に編成した構成の所謂銅糸線、により形成されている。軽量かつ柔軟性、屈曲性の高い銅糸線を用いることによって、振動板32の振動を阻害せずかつ断線し難い引出線31、31を実現するためである。一方、プレート14は、効率的に上記磁気空隙15を形成するために鉄製とされている。従って、上記のように各引出線31、31とプレート14とが接触すると、各引出線31、31は、短絡状態となり、場合によっては、上記アンプ装置を破損する恐れがある。
【0011】
また、磁気回路1と振動板32とで包囲された空間内(所謂ドライバユニット内)に粉塵等の異物が混入すのを防止するために、これら両者間にパッキン2を介在させているが、このパッキン2に形成された上記溝部22、22内の各引出線31、31との間の隙間を介して、上記異物が混入する場合がある。このように、ドライバユニット内に異物が混入すると、例えば振動板32の振幅特性等のドライバユニットの性能が劣化し、ひいては当該ドライバユニットの損傷に至る場合がある。
【0012】
そこで、上記のような不具合を解消すべく、従来は、例えば図4(b)に示すように、パッキン2の中空部内の空間において、各引出線31、31の周囲を例えばシリコーン樹脂系の軟質部材7で覆うことにより、上記のような各引出線31、31とプレート14との電気的接触を防止していた。これと同時に、上記軟質部材7により、パッキン2の各溝部22、22の内周壁2a側の端部を全体的に覆うことにより、ドライバユニット内の気密状態を確保して、当該ドライバユニット内への上記異物の混入を防止していた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術によれば、引出線31、31に軟質部材7を塗布することにより、これら引出線31、31を含む振動系全体の重量が重くなり、所期の所謂設計値通りの性能が得られなくなる、という問題がある。また、場合によっては、図4(b)に示すように、振動板32(サスペンション32b)にも上記軟質部材7が付着することがある。この場合、振動板32の振動作用が直接阻害されるために、上記問題が、より顕著になる。
【0014】
上記問題を回避するために、例えば図4(b)に点線8で示すように、プレート14の上面に絶縁テープを貼着することもある。しかしながら、この場合でも、上記異物の混入を防ぐために、上記軟質部材7により各溝部22、22のパッキン内周壁2a側の端部を塞ぐ必要があるので、上記問題を完全に解決するには至らない。
【0015】
更に、上記軟質部材7を塗布する際には、磁気回路1にダイヤフラム3を取り付ける以前に、例えば図7に示すように、ダイヤフラム3をパッキン2に固定した状態で、当該ダイヤフラム3の裏面側から上記軟質部材7を塗布する必要がある。従って、この軟質部材7の塗布作業が必要になる、という問題がある。特に、この作業では、軟質部材7の塗布量を極力少量に抑えることや、軟質部材7が極力振動板32に付着しないようにすること等、が要求されるので、当該作業に熟練した者でなければ、高い生産性を期待できない。また、如何に熟練した作業者でも、常に同一の仕上がりを期待することは無理なので、完成品の性能(品質)にバラツキが生じる、という問題もある。
【0016】
そこで、本発明は、上記のような性能の劣化を招いたり、熟練者による特別な作業を必要とすることなく、各引出線31、31の短絡を防止すると共に、上記異物の混入を防止できるドライバユニット、を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、概略円柱状の第1の磁極部と、
この第1の磁極部の外周壁から間隔を隔てて該第1の磁極部の周囲を包囲する状態に設けられた概略環状の第2の磁極部と、
上記第1の磁極部の外周壁と上記第2の磁極部の内周壁との間に形成される磁気空隙内に配置され、外部から供給されるオーディオ信号に従って該磁気空隙内の磁界の方向を横切る方向に沿って振動する可動コイルと、
この可動コイルに接続され、上記第1及び第2の各磁極部のそれぞれ同一方向に位置する各端面から間隔を隔ててこれら各端面と略対向する状態に設けられた振動板と、
外部から、上記振動板と上記第2の磁極部の上記端面との間の空間を介して、上記可動コイルに配線され、この可動コイルに上記オーディオ信号を供給する引出線と、
この引出線と上記第2の磁極部の上記端面との間に介在しこれら両者間を絶縁する絶縁部を備え、上記振動板が上記可動コイルと共に振動可能な状態に該振動板を支持する支持部と、
を具備するものである。
【0018】
本発明によれば、外部にあるアンプ装置等から引出線を介して可動コイルにオーディオ信号が供給されると、可動コイルは、当該オーディオ信号に従って、磁気空隙内の磁界の方向を横切る方向、換言すれば、第1及び第2の各磁極部の上記各端面に略垂直な方向、に沿って、振動する。そして、この可動コイルの振動に伴い、当該振動方向と同一の方向に沿って、振動板が振動し、この振動が空気に伝播することにより、上記オーディオ信号が音波に変換される。
【0019】
上記可動コイルの振動に伴って、この可動コイルに接続された引出線も、上記振動方向と同一方向に沿って、振動する。従って、この振動の振幅が大きいと、引出線が、第2の磁極部の上記端面側に当接する場合がある。しかし、本発明によれば、引出線と第2の磁極部の上記端面との間に、これら両者間を絶縁する絶縁部が介在しているので、これら両者が電気的に接触することはない。この絶縁部は、例えば樹脂製の板状のものにより構成できる。また、この絶縁部は、上記振動板を支持する支持部に設けられているので、これら両者を結合するのに、例えば接着剤等を用いたとしても、これが引出線や振動板等に付着する恐れはない。よって、上述した従来技術とは異なり、熟練作業者による特別な作業を必要としない。
【0020】
なお、上記絶縁部及び支持部は、これらを例えば硬質樹脂により一体に形成してもよい。このようにすれば、これら両者を取り付ける作業自体を省略できる。
【0021】
また、上記支持部は、第2の磁極部の内周壁よりも外方に位置する内周壁を有し、その一方の端面を第2の磁極部の上記端面に対向させた状態で該第2の磁極部の端面上に配置された概略環状のパッキン部材、であってもよい。この場合、上記支持部の中空部を覆って、この中空部内を密閉する状態に、当該支持部の他方の端面上に、上記振動板を結合する。ただし、このように支持部の中空部内を密閉した場合には、当該中空部内から外部に上記引出線を引き出さなければならないので、そのための部分、例えば上述した溝部22、22のような溝や貫通孔等を、支持部に設ける。そして、この支持部の内周壁であって、上記引出線を引き出すための部分の近傍、具体的には例えばこの引出部分と上記第2の磁極部の端面との間の部分に、上記絶縁部を結合する。
【0022】
ところで、上記のように支持部をパッキン部材構成とした場合、上記可動コイルの振動に伴い引出線が振動したときに、当該支持部の内周壁側の上記引出線を引き出すための部分の端部において、当該引出線に曲げ応力が作用して、当該引出線が屈曲疲労(ストレス)により破断する可能性がある。そこで、本発明においては、上記支持部の内周壁側における上記引出線を引き出すための部分の端部、特に引出線の振動方向に位置する端部を、滑らかな形状とするのが望ましい。このようにすれば、上記引出線に作用する曲げ応力が分散して、上記屈曲疲労が緩和し、当該引出線の破断を防止できる。
【0023】
また、上記のように支持部をパッキン部材構成とした場合には、次のように構成してもよい。即ち、支持部の他方の端面(第2の磁極部の位置する側とは反対側の面)に、その内周縁から外方に向かって伸延すると共に上記引出線を収容してこの引出線を当該支持部の中空部内から外部に引き出すための溝部、を形成する。そして、この溝部の伸延方向における少なくとも一部分に、当該伸延方向を横切る各方向において上記引出線よりも寸法の大きい空間とされた溝拡大部、を形成する。なお、この溝拡大部には、上記引出線を収容している状態で、例えばシリコーン樹脂系等の所定の軟質部材が充填されている。そして、支持部の中空部を覆う状態に、上記溝拡大部を含む支持部の他方の端面全周にわたって、振動板を結合する。
【0024】
この構成によれば、引出線は、支持部に設けられた溝部を介して、外方に引き出される。そして、この溝部中には、引出線の断面寸法よりも十分に大きい寸法の溝拡大部が設けられており、この溝拡大部内には、引出線が収容された状態で軟質部材が充填されている。これにより、溝部内については、溝拡大部を境に、支持部の中空部側と外側との間で、気密状態が保たれる。そして、この溝拡大部を含む支持部の他方の端面の全周にわたって、当該支持部の中空部を覆う状態に、振動板が結合されるので、この振動板に覆われた中空部内(即ちドライバユニット内)の気密状態が確実に確保される。なお、上記溝拡大部は、十分に大きい寸法とされているので、これに軟質部材を充填する際の作業は、比較的に容易である。
【0025】
上記溝拡大部は、上記支持部の内周縁部分に形成するのが望ましい。即ち、上述したように、引出線の配線経路のうち、上記支持部の内周壁側の部分においては、当該引出線に曲げ応力が作用する。従って、極力、この曲げ応力を緩和するのが望ましい。そこで、上記のように、引出線を収容する空間が十分に大きくかつ軟質部材が充填される溝拡大部を、支持部の内周縁部分に設ければ、当該軟質部材の弾性作用により、上記引出線に影響する曲げ応力を大きく緩和できる。
【0026】
なお、本発明において、上記溝拡大部を設けた場合であって、上述した引出線と第2の磁極部との間を絶縁する必要が特にない場合には、絶縁部を設ける必要はない。勿論、上記引出線と第2の磁極部との間を絶縁する必要があり、かつ、ドライバユニット内の気密状態を保つ必要がある場合には、上記絶縁部と溝拡大部との両方を設けるのが望ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明を例えば上述した従来技術と同様のホーンスピーカ装置用のドライバユニットに応用する場合について、その一実施の形態を、図1から図3を参照して説明する。なお、本実施の形態は、主にパッキン2の構造に特徴を有しており、他の部分の構造については、上記従来技術と略同等である。従って、これら同等部分については、上記従来技術を示す各図と同一符号を付して、それらの詳細な説明を省略する。
【0028】
本実施の形態に係るパッキン2を、図2に示す。同図に示すように、本実施の形態は、上記従来技術におけるパッキン2の各溝部22、22の内周壁2a側端部に、それぞれ、当該溝部22、22の幅寸法を拡大した溝拡大部25、25、を設けたものである。そして、パッキン2の内周壁2aにおける上記各溝拡大部25、25の端部が位置する部分の下方に、それぞれ概略平板状の絶縁板26、26、を設けたものである。
【0029】
各溝拡大部25、25は、これらをパッキン2の上方側から見ると、それぞれ、パッキン2の内周壁2aに位置する部分を最大寸法とする概略半円状の形状をしている。この最大寸法(所謂最大幅寸法)は、例えば溝部22、22の幅寸法の3倍乃至5倍程度と、引出線31、31の直径に比べて十分に大きい寸法とされている。具体的には、当該引出線31、31の直径やドライバユニットの大きさ等にもよるが、例えば、引出線31、31の直径がおよそ1mmである場合には、上記溝拡大部25、25の最大幅寸法は、3mm乃至5mm程度とされる。そして、これら各溝拡大部25、25の深さ寸法は、各溝部22、22の深さ寸法と略同等とされており、即ち少なくとも引出線31、31の直径よりも大きい寸法とされている。例えば、引出線31、31の直径がおよそ1mmである場合、上記溝拡大部25、25(溝部22、22)の深さ寸法は、約1.5mm程度とされる。なお、これら溝拡大部25、25は、それぞれの幅寸法及び深さ寸法が、引出線31、31の直径よりも十分に大きければ足り、その他形状等については、本実施の形態のような半円状に限らない。また、各溝部22、22の伸延方向に沿う方向においては、上記溝拡大部25、25として、或る程度の寸法、例えば少なくとも溝部25、25の幅寸法と同程度の2mm乃至5mm程度の寸法を確保する。
【0030】
一方、絶縁板26、26は、それぞれの底面(同図における下方の面)をパッキン2の底面位置に沿わせた状態で、パッキン2の内周壁2aにおける上記各溝拡大部25、25の下方の部分から、パッキン2の中心に向かって突出する状態に設けられている。そして、これら各絶縁板26、26の各先端縁間の距離は、プレート14の内径と略同等とされている。また、各絶縁板26、26の上面は、それぞれの厚さ寸法がパッキン2の中心に向かって徐々に小さくなる(薄くなる)状態に、略直線的に傾斜している。更に、パッキン2の内周壁2a部分において、それぞれの絶縁板26の上面と上記溝拡大部25の端部とを結ぶ部分27は、円弧状に形成されており、即ち滑らかな形状とされている。なお、本実施の形態では、これら各絶縁部26、26とパッキン2とを、一体に形成している。ただし、これら各絶縁部26、26とパッキン2とは、それぞれ別々に形成し、組立時において、これらを例えば接着剤やネジ等の所定の結合手段により結合してもよい。
【0031】
上記のような構造のパッキン2に、ダイヤフラム3を取り付けた状態を、図3に示す。同図に示すように、各引出線31、31が、パッキン2の中空部内から上記各溝部22、22内を介して外部に引き出される部分については、上述した従来技術と同様である。ただし、パッキン2の中空部内においては、各引出線31、31は、それぞれ上記各絶縁板26、26の上面に沿って配線される。また、上記各溝拡大部25、25内には、それぞれ引出線31、31が収容された状態で、例えばシリコーン樹脂系の軟質部材9が略一杯に充填されている。そして、この状態で、各溝拡大部25、25を含むパッキン2の上面全周にわたって、振動板32(サスペンション32b)の周縁部分が、例えば接着剤等により接着されている。
【0032】
そして、上記のようにパッキン2とダイヤフラム3とを組み合わせたものを磁気回路1に取り付けて、ドライバユニットを構成した状態を、図1に示す。同図に示すように、本実施の形態によれば、各引出線31、31とプレート14の上面との間に、上記各絶縁板26、26が介在する。また、上述したように、各絶縁板26、26の各先端縁間の距離は、プレート14の内径と略同等とされているので、各絶縁板26、26の各先端縁は、それぞれプレート14の内周壁14aに略一致する。従って、ボイスコイル34の振動に伴い、引出線31、31が大きく振動したとしても、これら各引出線31、31がプレート14に接触して短絡するのを防止できる。
【0033】
また、上記各溝拡大部25、25には、それぞれ軟質部材9が充填されているので、これら各溝拡大部25、25を介して、外部からドライバユニット(詳しくは、磁気回路1と振動板32とによって包囲された空間)内に粉塵等の異物が混入するのを防止できる。そして、各溝拡大部25、25は、上述したように比較的に大きい寸法とされているので、これらに上記軟質部材9を充填する際の作業は、比較的に容易であり、上述したような熟練作業者でなくても十分に当該作業を全うできる。また、この軟質部材9の充填作業は、パッキン2にダイヤフラム3を取り付ける際に、同時に行うことができるので、上記従来技術におけるダイヤフラム3の裏面側からの軟質部材7の塗布作業や絶縁テープ8の貼着作業等の余計な作業が、不要となる。更に、上述した従来技術とは異なり、軟質部材9がサスペンション32bに付着するようなこともないので、ドライバユニットとして設計値通りの性能を期待できる。
【0034】
なお、例えば図1(b)からも明らかなように、同図に矢印6で示す方向に沿って、引出線31が振動するとき、この引出線31は、所謂パッキン2の中空部内への引出部分である当該パッキン2の内周壁2aの部分を支点として、振動する。従って、この支点部分において、引出線31に曲げ応力が作用して、当該引出線31が屈曲疲労することが、懸念される。しかし、本実施の形態においては、この支点部分に、十分余裕を持って引出線31を収容しかつ軟質部材9が充填された溝拡大部25、が形成されているので、当該軟質部材9の弾性作用により、上記引出線31に影響する曲げ応力を大きく緩和できる。また、この溝拡大部25と絶縁部26の上面とを結ぶ部分、即ち上記振動方向に位置する部分27は、円弧状の滑らかな形状とされている。従って、この円弧状の部分27の形状によっても、上記引出線31に作用する曲げ応力を緩和できる。
【0035】
そして、本実施の形態によれば、上述した従来技術のものとパッキン2を変更するだけで、上記のような多大な効果を得ることができる。従って、磁気回路1やダイヤフラム3等のパッキン2以外の既存の部品を、有効に利用できるという効果もある。
【0036】
本実施の形態においては、本発明をホーンスピーカ装置用のドライバユニットに応用する場合について説明したが、これに限らない。例えば、コーン形やドーム形等の他の構造のスピーカ装置にも、本発明を応用できる。
【0037】
また、上記溝拡大部25、25の形状は、例えば概略方形状等としてもよい。ただし、この溝拡大部25、25内に、軟質部材9を充填することを鑑みると、、当該溝拡大部25、25は、極力角部が少ない形状とするのが、望ましい。
【0039】
また、絶縁部26、26は、各引出線31、31とプレート14との間を絶縁するというそれ本来の機能を奏するのであれば、本実施の形態で説明したような形状でなくてもよい。例えば、極端には、パッキン2の内周壁2aの全周にわたって、絶縁部26を設けてもよい。また、パッキン2の厚さ寸法に応じて、これら各絶縁部26、26の取付位置(高さ)を変えてもよい。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、引出線と第2の磁極部との間を絶縁するための絶縁部が、予め支持部に設けられているので、上述した従来技術とは異なり、引出線31、31に軟質部材7を塗布するというような熟練作業者による特別な作業を必要としない。従って、上記従来技術よりも高い生産性を期待できるという効果がある。
【0041】
また、ドライバユニット内の気密を保つために、溝拡大部に軟質部材を充填する必要があるが、この溝拡大部は十分に大きい寸法とされているので、当該軟質部材の充填作業は然程困難ではない。従って、この熟練者でなくても、当該作業を十分に全うできるという効果がある。また、この軟質部材の充填作業は、支持部に振動板を取り付ける際に、同時に行うことができるので、上記従来技術におけるダイヤフラム3の裏面側からの軟質部材7の塗布作業や絶縁テープ8の貼着作業等の余計な作業が、不要となる。更に、この軟質部材の充填作業は、パッキンの端面に形成された溝拡大部に対して成されるので、当該軟質部材が振動板に付着するようなことはない。よって、軟質部材7が振動板32に付着することにドライバユニットの性能が劣化するというような上記従来技術における不具合を防止できると共に、完成品の性能の均一性を確保できる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るドライバユニットの概略構成を示す図で、(a)は、中央縦断面図、(b)は、(a)における点線Aの部分を拡大した図である。
【図2】同実施の形態におけるパッキンの構造を示す図で、(a)は、その全体を斜め上方から見た斜視図、(b)は、(a)における点線Bの部分を拡大した図である。
【図3】同実施の形態において、パッキンにダイヤフラムを固定した状態を示す図で、(a)は、その全体を斜め上方から見た斜視図、(b)は、(a)における点線Cの部分を拡大した図である。
【図4】従来のドライバユニットの概略構成を示す図で、(a)は、中央縦断面図、(b)は、(a)における点線Dの部分を拡大した図である。
【図5】従来のドライバユニットにおけるパッキンの構造を示す図で、(a)は、その全体を斜め上方から見た斜視図、(b)は、(a)におけるEの部分を拡大した図である。
【図6】従来のドライバユニットにおいて、パッキンにダイヤフラムを固定した状態を示す図で、(a)は、その全体を斜め上方から見た斜視図、(b)は、(a)におけるFの部分を拡大した図である。
【図7】従来のドライバユニットにおいて、ダイヤフラムの裏側に軟質部材を塗布する状態を示す図で、(a)は、その全体を斜め上方から見た斜視図、(b)は、(a)におけるGの部分を拡大した図である。
【符号の説明】
1 磁気回路
2 パッキン
3 ダイヤフラム
12 ポールピース(第1の磁極部)
13 マグネット
14 プレート(第2の磁極部)
15 磁気空隙
25 溝拡大部
26 絶縁板(絶縁部)
31 引出線
32 振動板
32a ドーム状部分
32b サスペンション
34 ボイスコイル(可動コイル)
Claims (5)
- 概略柱状の第1の磁極部と、
この第1の磁極部の外周壁から間隔を隔てて該第1の磁極部の周囲を包囲する状態に設けられた概略環状の第2の磁極部と、
上記第1の磁極部の外周壁と上記第2の磁極部の内周壁との間に形成される磁気空隙内に配置され、外部から供給される信号に従って該磁気空隙内の磁界の方向を横切る方向に沿って振動する可動コイルと、
この可動コイルに接続され、上記第1及び第2の各磁極部のそれぞれ同一方向に位置する各端面から間隔を隔ててこれら各端面と略対向する状態に設けられた振動板と、
外部から、上記振動板と上記第2の磁極部の上記端面との間の空間を介して、上記可動コイルに配線され、この可動コイルに上記信号を供給する引出線と、
上記振動板が上記可動コイルと共に振動可能な状態に該振動板を支持する支持部と、
を具備し、
上記支持部は、上記第2の磁極部の内周壁よりも外方に位置する内周壁を有し、その一方の端面を上記第2の磁極部の上記端面に対向させた状態で該第2の磁極部の該端面上に配置された概略環状のパッキン部材であって、その他方の端面に、該支持部の内周縁から外方に向かって伸延すると共に上記引出線を収容してこの引出線を該支持部の中空部内から外部に引き出すための溝部を有し、
上記溝部は、上記支持部の内周縁部分において幅寸法が拡大されると共に上記引出線を収容している状態で所定の軟質部材が充填される溝拡大部を有し、
上記振動板は、上記支持部の中空部を覆う状態に、上記溝拡大部を含む該支持部の上記他方の端面上の全周にわたって結合された、
スピーカ装置のドライバユニット。 - 上記支持部の上記内周壁であって上記溝拡大部が形成された部分の近傍に、上記引出線と上記第2の磁極部の上記端面との間を絶縁する絶縁部を結合した、請求項1に記載のスピーカ装置のドライバユニット。
- 上記絶縁部は、上記溝拡大部が形成された部分よりも上記支持部の上記一方の端面側の位置に結合され、その一方の面を上記第2の磁極部の上記端面に沿わせ、かつ該支持部の中心に向かって突出する状態に設けられた、概略平板状の絶縁板である、請求項2に記載のスピーカ装置のドライバユニット。
- 上記絶縁部は、上記支持部と一体に形成された、請求項2または3に記載のスピーカ装置のドライバユニット。
- 上記可動コイルの振動に伴って上記引出線が振動したときに、上記支持部の内周壁の該引出線の引き出し部分となる上記溝拡大部が形成された部分において、該引出線に作用する応力を緩和させる状態に、該溝拡大部が形成された部分を滑らかな形状とした、請求項1ないし4のいずれかに記載のスピーカ装置のドライバユニット。
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