JP3957089B2 - 封止構造 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固定ハウジングと回転シャフトとの間の封止を行うための封止構造に関する。
【０００２】
回転するシャフトを封止することは重要である。軸受に用いられた潤滑剤が軸受ハウジングから漏れるのを防止するためにも、また、周辺環境における汚染物質が軸受の潤滑剤に侵入するのを防ぐためにも重要である。
【０００３】
【従来の技術】
米国特許第４,７０６,９６８号およびその審査において引用された従来技術の文献には、ラビリンス・シール（ラビリンス封止装置）についての開示がある。開示されたこれらの封止装置は、複数のリング間にラビリンスを有するものである。少なくとも一つのリングは固定されており、一つのリングがシャフトとともに回転する。米国特許第４,７０６,９６８号および米国特許第５,１７４,５８３号においては、第３のリング部材を設けることが開示されている。この第３のリング部材は、ラビリンス境界部の封止作用を改善するとともに、固定ないし静止リングと回転リングとが封止状態を維持しつつ軸方向に互いに分離することを可能としている。かかる封止装置は、シャフトが軸方向に変位する際の封止に関する多くの問題点を解決してきた。しかしながら、シャフトの軸方向変位に対応した封止装置を利用して長期にわたり適当な封止状態を維持する、という点は、今も継続する課題である。このような封止装置（封止ユニット）は、最も一般的には、軸方向および回転方向に同時に動くシャフトに適応されることを要求されている。軸方向および回転方向への同時移動は、スリーブ軸受モータや、一端が固定軸受に連結され他端が浮動状態とされている長いシャフトにおいて生じ得る。
【０００４】
従来は、軸受絶縁体（ベアリング・アイソレータ）の固定子（ステータ）および回転子（ロータ）は、軸方向に互いに分離しないように係止（ロック）されていた。回転部材と固定リング部材との間に生じる軸方向の推力は、固定子および回転子の軸方向を向いた面によって吸収されなければならない。この推力と、軸方向に変位しようとする動きとが、別個の内部係止装置によって軸方向に関して一体状に係止された軸受絶縁体を損傷することがあった。また、例えば米国特許第５,１７４,５８３号に開示されているように、軸受絶縁体が、その設計上、一体部分としての相互係止手段とともに構成されている場合にも、軸受絶縁体は軸方向に関して一体状に係止されていることになるので、同様にして損傷を受けることがあった。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シャフトが軸方向に動くときに回転部材および固定部材間の摩擦係合により回転子および固定子の面上に生じる推力、破壊的な推力を軽減するようになされている。本発明の目的は、回転するシャフトとそれに関連するハウジングとの周囲に連続的な封止を与えることにより、ハウジングから潤滑剤が漏れることを防止するとともに、汚染物質がハウジング内に入ることを防ぐことにある。本発明は、特にシャフトが軸方向に移動ないし変位する場合のことを意識している。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明による封止構造は、固定部材に位置づけられ且つ回転部材の凹所ないしキャビティ内に挿入された複数のピンを備えている。ツーピース（ｔｗｏ ｐｉｅｃｅ）・ラビリンスによる機械的な封止がラビリンスの構造に基づいて機能し、潤滑剤および／または汚染物質が出たり入ったりするのを防ぐ。通常は、シャフトに取り付けられたラビリンス封止装置の一つのリングと、封止されるべきハウジングに取り付けられた一つのリングとが設けられている。本発明は、従来のツーピース・ラビリンスまたはスリーピース・ラビリンスによる機械的な封止構造であって、シャフトの軸方向移動の影響を受けるものの改良である。
【０００７】
本発明の改良点は、複数のピンを、静止部材すなわち固定子またはリングを貫通させて、回転リングまたは回転部材における、ラビリンスから軸方向に離れた領域に形成された凹所内に挿入するようにしたことである。ラビリンスはまた、フランジおよび溝の組み合わせどうしが互いに当接することなしに、リング部材の軸方向移動を可能とするようになされている。ラビリンスのチャンネル、フランジおよび溝の組み合わせの移動は、回転部材の軸方向の係合によって制限されている。この制限は、凹所の軸方向の幅およびピンの直径によって決定される。回転部材は、所定の軸方向距離だけシャフトとともに動くことを許されている。この動きは、固定部材または固定子におけるピンが回転部材におけるキャビティまたは凹所の壁に当接するまで許容される。ピンの挿入により、回転リングは所定量だけ自由に軸方向移動することが許される。この軸方向移動は、回転部材におけるキャビティの半径方向面にピンが当たることによって軸方向推力が吸収されるまで許容される。
【０００８】
また、本発明によれば、ピンと凹所の壁との間の境界部に潤滑剤が与えられ、それによって、シャフトの軸方向移動時の推力によって引き起こされるであろう摩耗がさらに減じられることになる。リングおよび固定子間の推力に起因して生じる、かかる摩耗は、壁とピンとの間が点接触であることによっても、減じられる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
図１を参照する。図１には、本発明の封止の構造が典型的な封止状況のもとに示されている。図１において、シャフト１０に装架された封止リングは断面で示されている。シャフト１０は軸受ハウジング４０を通して延びている。軸受自体は図示していないが、ハウジング４０内でシャフト１０に通例のごとく嵌合しているか、またはスリーブ軸受モータの場合のように回転子に隣接している。ハウジング４０から外部に潤滑剤が漏出したり、外部の物質や汚染物質がハウジング４０内の潤滑剤に入り込むような事態は、本発明の封止装置の構造によって防止される。また、スリーブ軸受の場合においては、潤滑剤がシャフトに沿ってハウジング４０内へと移動することも防止される。
【００１０】
この新規な封止構造は、ハウジング４０に固定された第１のリング２０を含む。このリング２０は、通常、固定子リングと呼ばれる。リング２０は、複数の内方に延びるフランジおよび溝の組み合わせ２１を有している。フランジおよび溝の組み合わせ２１から軸方向に間隔をおかれて、複数の半径方向の孔２２が固定子リング２０に穿孔されている。該孔２２には、複数のピン２３が挿入されて堅固に嵌合されている。ピン２２は、固定子２０の孔２２の深さよりも長い。必須のものではないが、ザーク・ニップル（ｚｅｒｋ ｆｉｔｔｉｎｇ）すなわちグリース・ニップル２５およびリング２０に形成されるチャンネル２６を設けてもよい。チャンネル２６は、ピン２３間において固定子リング２０に形成された溝２４内のグリースおよび／または潤滑剤のためのリザーバを提供する。溝２４は、ピン２３の列の中心線に沿って形成されている。こうすることにより、ピン２３の位置に潤滑剤が供給され、ピン２３と半径方向面３２ａ、３２ｂとの間の境界面が潤滑にされる。
【００１１】
第２のリング部材３０は、内方に延びる複数のフランジおよび溝の組み合わせ３１を有している。これらは、固定子リング２０のフランジおよび溝の組み合わせ２１と補完的に対面する。第２のリング部材３０はまた、凹所３２を備えている。該凹所３２は、封止構造の内方側すなわちハウジング側であって、回転リング部材３０の軸方向極限位置の近くに位置付けられている。この凹所ないしキャビティ３２は、係止ピン２３の直径よりも僅かに大きな軸方向幅を有するように設計されている。シャフトの軸方向移動は、該シャフトが磁力中心（ｍａｇｎｅｔｉｃ ｃｅｎｔｅｒ）を求めるときに作動中に生じる。第２のリング部材３０は、該リング部材３０内に堅固に嵌合された弾性材料からなるＯリング６０を備えている。このＯリング６０は、該Ｏリング６０とシャフト１０との間に摩擦係合を与え、リング部材３０の回転を可能にさせる。
【００１２】
好ましいラビリンス封止構造においては、回転リング部材２０と固定リング部材３０との間にチャンネルまたはスロット７０が形成されており、該スロット７０は、大気または外部環境とハウジング４０の内部とを連通させている。このラビリンスは、固定されたリング部材に対する回転リング部材の軸方向の移動量に対応して大きさを変えるようにしてもよい。この軸方向の移動量とラビリンスの大きさとの関係は、次のようである。すなわち、軸方向移動があっても、フランジおよび溝の組み合わせ２１とフランジおよび溝の組み合わせ３１とが互いに接触せず、連続したラビリンスを維持し続ける、というものである。回転リング部材３０は、ピン２３がキャビティすなわち凹所３２の側壁に接触するまで、シャフト１０とともに軸方向に移動する。図２において、シャフト１０は右方向に軸方向移動しており、回転リング部材３０も軸方向に移動して、凹所３２の側壁３２ａがピン２３に接触している。これらのピン２３は、通常は、テフロン（登録商標）またはテフロンの派生物のような滑性材料から作られる。ピン２３と回転リング部材３０との接触は、回転リング部材３０のキャビティすなわち凹所３２の平坦な側壁３２ａと対面するピン２３の円柱面上における点接触に限定される。シャフト１０および回転リング部材３０が左方向へ軸方向移動するときにも、同様の作用がなされる。
【００１３】
軸方向の推力は、ピン２３および側壁３２ａまたは３２ｂによって吸収される。ピン２３および側壁３２ａ、３２ｂ間の摩擦係合によっては、比較的わずかな摩耗や発熱しか生じない。
【００１４】
図示したように、ザーク・ニップルすなわちグリース・ニップル２５からチャンネル２６を通して固定子リング部材２０の溝２４内へと、付加的な潤滑剤を供給するようにしてもよい。この潤滑剤またはグリースは、ピン２３とキャビティすなわち凹所３２の壁との間の境界部を滑らかにする。キャビティすなわち凹所３２内の潤滑剤またはグリースは、回転リング部材３０により遠心作用を受ける。キャビティすなわち凹所３２内の潤滑剤またはグリースは、潤滑が必要でないときには、固定子リング部材２０の溝２４内へと戻されるようにしてもよい。このような場合は、ピン２３が壁３２ａおよび３２ｂのいずれにも接触していないときに生じる。
【００１５】
さらに、シャフト１０の軸方向移動が十分に大きいがために封止装置の付加的な軸方向移動が要求されるならば、米国特許第５,１７４,５８３号に説明されているような、可撓性の駆動手段（Ｏリング６０）を軸方向に越えてシャフトがスリップするという手法を利用して、封止装置のこの付加的な軸方向移動を為さしめるようにしてもよい。
【００１６】
以上、本発明の望ましい実施例について説明してきたが、寸法変更などのさまざまな変形例および他の実施例が、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想の範囲に含まれることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の封止装置の一実施例の構造を水平シャフトとともに示す断面図
【図２】本発明の封止装置の一実施例の構造の一部を、シャフトおよび回転部材が極限の軸方向位置にある状態で示す、拡大断面図。
【図３】本発明の封止装置におけるさまざまな部材とシャフトとの関係を示す端面図。
【符号の説明】
１０ シャフト、２０ 第１のリング部材、２１ 第１のリング部材のフランジおよび溝、２２ 孔、２３ ピン、２４ 環状の溝、２６ リザーバ・チャンネル、３０ 第２のリング部材、３１ 第２のリング部材のフランジおよび溝、３２ 環状の凹所、４０ ハウジング。

Claims (8)

1. 固定されたハウジングと回転するシャフトとの間の封止構造であって、
   ａ）固定されたハウジングと、
   ｂ）シャフトと、
   ｃ）前記シャフトを囲繞し且つ前記ハウ ジングに取り付けられた第１のリング部材と、
   ｄ）前記第１のリング部材の第１の部分にて軸方向に延びる、複数の環状のフランジおよび溝の組み合わせと、
   ｅ）前記第１のリング部材の前記第１の部分から軸方向に離れた第２の部分に設けられた半径方向の複数の孔と、
   ｆ）前記シャフトとともに回転可能な第２のリ ング部材と、
   ｇ）前記第２のリング部材の第１の軸方向部分にて軸方向に延びる複数の環状のフランジおよび溝の組み合わせにして、前記第１のリング部材の前記フランジおよび溝の組み合わせと補完的に対応して前記第１のリング部材および第２のリング部材間にラビリンス・チャンネルを形成するフランジおよび溝の組み合わせと、
   ｈ）前記第２のリング部材の第２の軸方向部分に設けた環状の凹所にして、前記第１のリング部材の前記孔に対向している凹所と、ｉ）複数のピンと、を備え、
   ｊ）前記ピンが、前記第１のリング部材の前記孔内に挿入されて前記第２のリング部材の前記凹所内に突出している、ことを特徴とする封止構造。
2. 前記第２のリング部材の前記凹所の軸方向寸法が、前記ピンの軸方向寸法よりも、軸方向で見て大きく、それによって、前記第２のリング部材が、前記第１のリング部材に対して相対的に制限された量の軸方向移動を許容されており、前記凹所の軸方向寸法と前記ピンの軸方向寸法との差が、前記第１のリング部材および第２のリング部材間の前記ラビリンス・チャンネルの軸方向寸法よりも小さくなされている、請求項１記載の封止構造。
3. 前記ピンが円柱状である、請求項２記載の封止構造。
4. 前記ピンが、それ自体が滑性を有する材料で作られている、請求項３記載の封止構造。
5. 前記第２のリング部材の前記環状の凹所が矩形断面である、請求項１記載の封止構造。
6. 前記孔の中心線上にて前記第１のリング部材に環状の溝が形成されている、請求項１記載の封止構造。
7. 前記第１のリング部材にリザーバ・チャンネルが形成されており、該リザーバ・チャンネルに前記環状の溝内の潤滑剤を蓄積するようになされている、請求項６記載の封止構造。
8. 前記第１のリング部材の前記フランジおよび溝の組み合わせと、前記第２のリング部材の前記フランジおよび溝の組み合わせとのそれぞれが、前記シャフトが前記第１のリング部材および前記第２のリング部材に相対的に軸方向に移動する際に、互いに相対的に限定された軸方向量だけ移動可能となされている、請求項１記載の封止構造。

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