以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る加熱調理器の構成例を示す概略ブロック図、図2は概略断面図である。
この加熱調理器100は、被加熱物Mを収容する加熱室11に給電により発熱する加熱源からの熱と、給電により加熱する蒸気供給部からの蒸気との少なくとも一方を供給して被加熱物を加熱処理する加熱調理器であって、主に、加熱源である高周波発生部13、熱風供給部15、及び輻射熱供給部17と、蒸気供給部19と、蒸気供給操作手段である蒸気供給スイッチ(SW)21と、加熱室温度検出手段である加熱室温度センサ25と、各種情報を表示する表示部27と、電源部28と、加熱調理器100全体を制御する制御部29とを備えている。
蒸気供給スイッチ21及び表示部27は、操作パネル23上に設けられている。蒸気供給スイッチ21が押下されると、その情報が蒸気供給の要求として制御部29に入力される。表示部27には、動作モード(オーブン、グリル、スチーム等)、設定温度、時間(設定時間、経過時間)等の情報が表示される。
加熱室温度センサ25は、サーミスタや赤外線センサ等で構成され、加熱室11の温度
を測定する。加熱室温度センサ25による温度検出値は制御部29に入力される。
制御部29は、図示しないCPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)とを備えている。CPUは、ROMに格納されているプログラム及びデータに従
って制御を行う。この制御には、表1に例示するように、各種条件A〜Kに応じて、加熱源(高周波発生部13、熱風供給部15、輻射熱供給部17)と蒸気供給部19のうちいずれか一方へ、電源部28からの給電量を優先して確保する制御が含まれる。
詳細は後述するが、ここで上記制御の概略的な内容を簡単に説明する。表1中の条件Aでは、加熱源の加熱温度設定値が所定温度以上(高)のときに蒸気供給を行う場合は、蒸気供給部19への給電量を優先して確保する。
条件Bでは、加熱源の加熱温度設定値が所定温度未満(低)のときに蒸気供給を行う場合は、加熱源への給電量を優先して確保する。
条件Cでは、加熱室の温度が所定温度以上(高)のときに蒸気供給を行う場合は、蒸気供給部19への給電量を優先して確保する。
条件Dでは、加熱室の温度が所定温度未満(低)のときに蒸気供給を行う場合は、加熱室の昇温を促進させるため加熱源への給電量を優先して確保する。
条件Eでは、オーブン調理の予熱を行わない場合であって、加熱調理開始初期に蒸気供給を行う場合は、加熱室の昇温を促進させるため加熱源への給電量を優先して確保する。
条件Fでは、オーブン調理の予熱を行わない場合であって、加熱調理開始時から所定時間経過後、又は所定温度到達後に蒸気供給を行う場合は、蒸気供給部19への給電量を優先して確保する。
条件Gでは、オーブン調理の予熱を行う場合であって、予熱後の加熱調理開始初期のときに蒸気供給を行う場合は、蒸気供給部19への給電量を優先して確保する。
条件Hでは、オーブン調理の予熱を行う場合であって、予熱後の加熱調理開始初期で、所定温度までさらに加熱を行うときの所定温度到達前に蒸気供給を行う場合は、加熱源への給電量を優先して確保する。
条件Iでは、オーブン調理の予熱を行う場合であって、予熱後の加熱調理開始時から所定時間経過後、又は所定温度到達後に蒸気供給を行う場合は、加熱源への給電量を優先して確保する。
条件Jでは、オーブン調理の予熱を行う場合であって、予熱後に所定温度までさらに加熱を行うときの、加熱調理開始時から所定時間経過後、又は所定温度到達後に蒸気供給を行う場合は、蒸気供給部19への給電量を優先して確保する。
条件Kでは、加熱源の一つである輻射熱供給部17による加熱処理時に蒸気供給を行う場合は、蒸気供給部19への給電量を優先して確保する。
また、図2に示すように、本加熱調理器100の熱風供給部15は、加熱室11内の空気を撹拌・循環させる循環ファン31と、加熱室11内を循環する空気を加熱するコンベクションヒータ33とを有する。高周波発生部13は、マグネトロン35と、マグネトロン35から出力された高周波を加熱室11全体に分散させる電波撹拌用のスタラー羽根37とを有する。輻射熱供給部17は、電熱ヒータからなる輻射ヒータ39を有する。なお、被加熱物Mが載置される受け皿32は、高周波吸収体34を備えた構成としてもよく、その場合には、照射された高周波により高周波吸収体34が発熱し、この熱が被加熱物Mに伝熱されるようになる。高周波吸収体34がない構成では、被加熱物Mが高周波により加熱されることになる。
図示の例では、熱風供給部15は加熱室11の奥側に、高周波発生部13は加熱室11の底面下方に、輻射熱供給部17は加熱室11の上面側にそれぞれ配置されているが、これ以外の配置としてもよい。また、スタラー羽根37の代わりにターンテーブルを備えた構成としてもよい。
図3に蒸気供給部19の一構成例を示した。図2には、加熱室外に蒸気供給部を配置した例を示したが、加熱室内に蒸気供給部を配置することで、蒸気供給部19の構成の小型簡略化や、手が届き易くなるためメンテナンス性が向上する等の効果が得られる。図3に示す蒸気供給部19は、加熱により蒸気を発生する水溜部41aを有する加熱ブロック41を備えている。加熱ブロック41は、水溜部41aの下側に蒸気発生用ヒータ(シーズヒータ)45を内蔵しており、その水溜部41aには、加熱室11の側方に設けた給水タンク42から水が供給されるように構成されている。
ここで、蒸気供給部19により蒸気を発生させる仕組みについて説明する。
給水タンク42に貯留された水は、逆止弁43を通して給水管44に供給される。給水管44の中間部配管44aでは、加熱ブロック41の蒸気発生用ヒータ45からの発生熱が伝熱されることで、中間部配管44a内の水が加熱される。そして、加熱された水の一部は、沸騰して気泡を発生し、急激に体積膨張する。このとき、給水管44の給水タンク42側の逆止弁43は閉止され、給水タンク42側への逆流が阻止される。従って、体積膨張した水は吐出側配管46へ間欠的に供給される。これにより、吐出側配管46内では水位が上昇し、上部に形成されたエア抜き孔47から余分な蒸気が排出されるとともに、加熱された水が吐出口48から加熱ブロック41の水溜部41aに間欠的に供給される。
一方、水溜部41aも蒸気発生用ヒータ45により加熱されており、滴下された加熱水はここで蒸発して加熱室11に供給される。つまり、加熱ブロック41の蒸気発生用ヒータ45の発熱により、水溜部41aへ加熱した水を供給するとともに、水溜部41aを加熱する構成となっている。このように、加熱された水が水溜部41aに供給されるので、蒸気発生を一層短時間で行うことができる。
上記一例として挙げた蒸気供給部19の構成を、より具体的に説明する。
図4に加熱ブロックの外観斜視図を示す。(a)は上面側で(b)は裏面側である。
加熱ブロック41は、軽量で熱伝導性の高いアルミのダイキャスト成形品である。加熱ブロック41には、ブロック本体50の内部に蒸発部加熱ヒータとしてU字形の蒸気発生用ヒータ45が埋設されており、この蒸気発生用ヒータ45に沿った上面側に水溜部41aが形成され、下面側に給水管44の中間部配管44aを被覆する加熱部41bが形成されている。これら水溜部41a及び加熱部41bはダイキャストにより一体に形成されており、接続面等が存在しないため、高効率で蒸気発生用ヒータ45の発熱を伝導可能にしている。
即ち、蒸気発生用ヒータ45の少なくとも一部が加熱ブロック41内に埋設されて、蒸気供給部19と蒸気発生用ヒータ45とが一体構造となることで、接続面等が存在せず、高効率で蒸気発生用ヒータ45の発熱が加熱ブロック41に伝導され、水溜部41aでの高い蒸発効果が得られるようになる。また、加熱ブロック41が、アルミダイキャストにより形成され、熱伝導性の高い金属材料で一体化されることで、蒸気発生用ヒータ45の熱が高効率で水溜部41aに伝熱可能となっている。
また、水溜部41aの下側に位置する収容穴52には、温度を検知する蒸発皿温度センサとしてのサーミスタ53が挿入されて、ブロック本体50の蒸気発生用ヒータ45付近の温度を測定する。水溜部41aの一端側には開口孔54が形成されて、前記吐出口48(図3参照)からの水が水溜部41a内に供給される。なお、蒸気発生用ヒータ45や加熱部41b等の形状や取り付け位置等は、必要とする加熱量や加熱調理器100の筐体内への設置スペース等に応じて適宜変更され得るものである。なお、蒸気発生用ヒータ45は、線ヒータ、セラミックヒータ等の他種類のヒータであっても構わない。
上記構成の蒸気供給部19では、加熱室11の底面から蒸気を供給して加熱室11内で効率良く蒸気拡散する構成となっている。また、加熱ブロック41の水溜部41aの表面は、珪酸(SiO2)等を含む親水材料で処理していることで、水が球状になることなく
、大きな接触面積が確保でき、より多くの蒸気を発生させやすくしている。そして、仮に汚れが付着しても簡単に除去できるようにしている。例えば、蒸気発生の過程では、水分
中のカルシウムやマグネシウム、塩素化合物等が濃縮されて水溜部41a底部に沈殿固着することがあるが、水溜部41aが加熱室11内に開放されているため、水溜部41aを布等で拭き取るだけで、きれいにこのような汚れを払拭することができる。
このように構成された蒸気供給部19は、蒸気供給スイッチ21が押下されることによって動作する。即ち、蒸気供給スイッチ21が押下されると、蒸気発生用ヒータ45が加熱されるとともに、給水タンク42から加熱ブロック41の水溜部41aへ加熱された水が供給される。その結果、水溜部41aに供給された水が瞬時に沸騰し、発生した蒸気が加熱室11内に供給される。蒸気供給スイッチ21のワンタッチ操作により、加熱室11への蒸気供給がなされるため、微妙な調理タンミングを逃がさなくできる。
従って、この加熱調理器100では、予熱の必要なボイラ等を用いずに蒸気供給が可能になるとともに、任意のタイミングで、しかも応答性良く加熱室内への蒸気の供給を可能にすることができる。この構成によれば、低電力でしかも小型の構成で蒸気供給が可能になるとともに、任意のタイミングで蒸気の供給が可能となって、調理の自由度を高めることができる。本実施形態においては、上記構成の蒸気発生部の構成を一例として説明しているが、本発明はこれに限らず、例えば、加熱容器内で蒸気を発生させるボイラ式、加熱ヒータ面に水を滴下して蒸気を発生させる滴下式IHスチーマ式、超音波振動によりミスト状の水滴を生成する超音波式等の種々の蒸気発生手段であってもよい。
図5に加熱調理器100の前面部の構成例を示す。
加熱調理器100の前面には、加熱室11内を視認するための透光窓55と、操作パネル23とが設けられている。操作パネル23には、蒸気供給スイッチ21や表示部27の他、加熱の開始を指示するスタートスイッチ、予め用意されている調理プログラムを選定する自動調理スイッチやマニュアル操作を行うためのマニュアルスイッチ等が設けられている。このように、加熱室11内を視認しやすい位置に操作パネル23が設けられ、これにより、加熱室11内及び表示部27の表示内容を確認しながら蒸気供給スイッチ21等のスイッチ類を操作することが容易に行える。
自動調理モードには、オーブン調理モードとグリル調理モードとがある。オーブン調理モードには、例えばシュー皮、スポンジケーキ、フランスパンといった具体的な調理内容が用意されている。また、グリル調理モードには、例えばハンバーグ、照り焼き、スペアリブ、焼き豚といった具体的な調理内容が用意されている。自動調理モードでは、いずれかのモードを選択して調理内容を選択した後、スタートスイッチを押圧すると、選択された調理内容に適した調理プログラムに従って自動調理が実施されるようになっている。オーブン調理では、加熱源として主に輻射熱供給部17を使用して熱処理が行われる。グリル調理では、加熱源として主に輻射熱供給部17が使用され、場合によっては高周波供給部13が併用される。
上記の自動調理モードの調理中に蒸気供給スイッチ21が押下されると、その押下されたタイミングで加熱室内に蒸気が供給される。また、マニュアルモードにおいても同様に任意のタイミングで蒸気が供給されることとなる。
次に、本実施形態の加熱調理器100による作用を説明する。
この加熱調理器100を使用して調理を行う場合、被加熱物Mを加熱室11内に置き、自動調理スイッチやマニュアル調理スイッチを押下して所望の調理内容に設定し、スタートスイッチを押下する。
この場合における加熱源と蒸気供給部への給電量の優先度設定動作の一例を図6にフローチャートで示した。この例では、加熱調理器100は、スタートスイッチが押下されると、選択されている調理モードとその内容に応じて給電量の優先度が設定される。即ち、調理モードを確認して(St.1)、グリル調理モードが選択されていれば、加熱調理中に蒸気供給スイッチ21が押下され、且つ加熱源への給電量及び蒸気供給部19への想定される給電量の和がこの加熱調理器100の定格電力を超える場合に、蒸気供給部への給電量が加熱源(輻射熱供給部17)への給電量より優先して確保されるように制御される(St.2)。この場合が前述した条件Kの制御に相当する。
上記の制御により、蒸気供給部19が優先的に加熱され、加熱調理器100の定格電力を超えない範囲で蒸気の供給を確保しながら、加熱効果を最大限に高められる。その際、輻射熱供給部17の輻射ヒータ39への給電停止時間は短時間であるので、加熱室11の温度や被加熱物Mの温度はそれほど変わらない。この制御は、このことを利用して優先的に蒸気供給部19を加熱し、より迅速な蒸気の発生を狙うものである。
一方、オーブン調理が選択されていれば、加熱調理中に蒸気供給スイッチ21が押下され、且つ加熱源への給電量及び蒸気供給部19への想定される給電量の和がこの加熱調理器100の定格電力を超える場合に、加熱設定温度が予め設定した所定値以上であるか否かを判断する(St.3)。そして、加熱設定温度が所定値以上であれば、蒸気供給部19への給電量を優先して確保し、オーブン調理で使用される加熱源である熱風供給部15或いは輻射熱供給部17への給電量を制限するように電力配分を制御する(St.4)。この場合が前述した条件Aの制御に相当する。また、加熱設定温度が所定値未満であれば、加熱源への給電量を優先して確保し、蒸気供給部19への給電量を制限するように電力配分を制御する(St.5)。この場合が前述した条件Bの制御に相当する。
上記の制御により、オーブン調理時における加熱設定温度が所定値以上であれば、蒸気供給部19が優先的に加熱され、加熱調理器100の定格電力を超えない範囲で蒸気の供給を確保しながら、加熱効果を最大限に高められる。この場合も、熱風供給部15と輻射熱供給部17への給電停止時間は短時間、或いはいずれか一方は給電したままであるので、加熱室11の温度や被加熱物Mの温度はそれほど変わらない。また、オーブン調理時における加熱設定温度が所定値未満であれば、加熱源への給電が優先され、加熱調理器100の定格電力を超えない範囲で温風と輻射熱とによる高温加熱調理を優先して実施することができる。
図7はオーブン調理時の表示部27の表示例を示している。オーブン調理時には、(a)に示すようなオーブン調理表示画面が表示部27に表示される。この画面には、オーブン調理であることを示す「オーブン」というステータス表示がなされるとともに、設定温度や残り時間が表示される。オーブン調理中に蒸気供給スイッチ21を押下すると、(b)に示すように蒸気供給を示す「スチーム」というステータス表示がなされるとともに、蒸気供給の設定時間(残り時間)が表示される。その後カウントダウンが開始され、(c)に示すように蒸気供給の残り時間が0になった時点で、蒸気供給終了となり、オーブン調理表示画面に戻る。
また、図8はグリル調理時の表示例を示している。グリル調理時には、(a)に示すようなグリル調理表示画面が表示部27に表示される。この画面には、グリル調理であることを示す「グリル」というステータス表示がなされるとともに、残り時間が表示される。グリル調理中に蒸気供給スイッチ21を押下すると、(b)に示すように蒸気供給を示す「スチーム」というステータス表示がなされるとともに、蒸気供給の設定時間(残り時間)が表示される。その後カウントダウンが開始され、(c)に示すように蒸気供給の残り時間が0になった時点で、蒸気供給終了となり、グリル調理表示画面に戻る。
オーブン調理及びグリル調理時における蒸気供給の設定時間は、蒸気供給スイッチ21を押下した回数によって変化する。即ち、蒸気供給スイッチ21は、蒸気供給時間を設定するためのトグルスイッチにもなっており、このスイッチを押下する度に、図9に示すように、設定時間が初期値(0分)から所定時間(この例では1分)増大し、最大値(n分、例えばn=9)を超えると初期値に戻る。
ここで、蒸気供給スイッチ21の種々の動作例を説明する。蒸気供給スイッチ21は、基本的にワンタッチ操作で蒸気の発生が可能となるスイッチであるが、その詳細な動作例としては、次のバリエーションを挙げることができる。図10にはスイッチ操作に応じた動作例を(a)〜(c)で示した。
蒸気供給スイッチ21は、図10(a)に示すように、一回の押下により所定時間連続して蒸気供給を行うスイッチとすることができる。このようなスイッチとすることで、一回押下されると、予め定めた所定時間tのみ連続して蒸気が供給され、蒸気がワンタッチで簡便に供給可能となる。
また、蒸気供給スイッチ21は、図10(b)に示すように、押下の度に蒸気供給開始と蒸気供給停止とが切り替わるスイッチとすることができる。このようなスイッチとすることで、押下の度に蒸気供給開始と蒸気供給停止とが切り替わり、任意期間の蒸気供給が簡単に行えるようになる。
また、蒸気供給スイッチ21は、図10(c)に示すように、押下している間だけ蒸気供給を行うスイッチとすることができる。このようなスイッチとすることで、押下されている間だけ蒸気供給が行われ、ワンタッチで任意期間の蒸気供給が簡単に行えるようになる。
この他にも、蒸気供給スイッチ21を押下した後の一定期間のみ、蒸気供給時間の設定を行えるようにしてもよい。具体的には、蒸気供給スイッチ21を押下すると、押下後の一定期間のみ蒸気供給時間入力モードとして、操作パネル23のつまみ59(図5参照)を操作することにより、蒸気供給時間を任意に指定し、一定期間経過後に、この指定された蒸気供給時間が入力値として設定されるようにする。これによれば、蒸気供給時間を調理に応じた任意の時間に簡単に設定でき、使い勝手が向上する。
次に、調理内容(加熱処理内容)の具体例と、前述した給電制御の条件A〜Eの対応について説明する。
図11〜図13はオーブン調理における加熱部及び蒸気供給部への給電パターンを例示したタイミング図であり、図11は調理内容がフランスパンの場合、図12は調理内容がスポンジケーキの場合、図13は調理内容がシュー皮の場合をそれぞれ示している。図中の記号Sは蒸気を、記号Hは加熱源をそれぞれ示している(以下同様)。
フランスパンを焼く場合の加熱温度は、230℃〜250℃と高温に設定され、調理開始前に予め加熱室を加熱する予熱を行う。このように加熱温度の設定値が200℃以上の条件においては、図11に示すように、加熱調理開始直後から所定時間t1の間は給電を
スチーム優先とし、蒸気供給スイッチ21が押下されると、蒸気発生用ヒータ45を最大出力で動作させ、その間は輻射ヒータ39及びコンベクションヒータ33への給電を停止する(条件A)。そして、加熱処理開始直後から所定時間t1を経過した後は給電をヒー
タ優先とし、蒸気供給スイッチ21が押下されると、輻射ヒータ39への給電停+止時に蒸気発生用ヒータ45への給電を行う(条件I)。または、ヒータが連続で最大電力で稼
動している場合は、蒸気供給スイッチが押下されると、ヒータ停止時間を設けたスチームモード用ヒータデューティ制御に切り替え、ヒータ給電停止時に蒸気発生用ヒータ45へ給電を行う。ここで、スチームモード用ヒータデューティ制御とは、加熱源用ヒータに設定される出力のデューティ制御である。詳しくは、例えば3機以上ヒータを搭載する場合や、2機のヒータでも1機のヒータの稼動で定格電力いっぱいにする場合には、スチームを使用するときに、それぞれのヒータに対して、ヒータへの出力デューティを予め設定しておいて、それを加熱モード等に応じて適宜選択し、実施する制御方法である。
上記の制御により、加熱調理開始直後から所定時間t1の間は蒸気発生用ヒータ45が
優先的に加熱されるので、加熱調理器100の定格電力を超えない範囲で加熱室11内に蒸気を急速に供給し、加熱室11内をフランスパン調理に適した雰囲気とすることができる。また、輻射ヒータ39及びコンベクションヒータ33による加熱調理開始後は、任意のタイミングで蒸気供給スイッチ21を押下することにより、輻射ヒータ39及びコンベクションヒータ33による加熱を妨げることなく、加熱室11内に蒸気を供給することができる。蒸気を供給するタイミングや量(時間)は、透光窓55を通して生地の状態を目視しながら調理者が経験に基づいて決定することができる。
また、スポンジケーキの場合の加熱温度は160℃程度、シュー皮の場合の加熱温度は190℃程度にそれぞれ設定される。このように加熱温度の設定値が200℃未満の条件においては、図12及び図13に示すように、給電はヒータ優先とし、蒸気供給スイッチ21が押下されると、輻射ヒータ39への給電停止時に蒸気発生用ヒータ45への給電を行う(条件B)。
上記の制御により、任意のタイミングで蒸気供給スイッチ21を押下することで、輻射ヒータ39及びコンベクションヒータ33による加熱を全く妨げることなく、加熱室11内に蒸気を供給することができる。この場合も、蒸気を供給するタイミングや量(時間)は、透光窓55を通してパンの状態を目視しながら調理者が経験に基づいて決定することができる。
例えば、スポンジケーキの場合は、生地が膨らみ始めたら蒸気を供給することにより、生地の膨らみを助けることができ、生地の表面に焼き色が付き始めたら蒸気を供給することにより、生地中の水分を適度に放出させて乾燥を助けることができる。
また、シュー皮の場合は、加熱処理開始直後に蒸気を供給することにより、生地の表面を結露させて、生地の伸びを良くすることができ、生地が膨らみ始めたら蒸気を供給することにより、生地の膨らみを助けることができる。
ところで、蒸気供給スイッチ21が任意のタイミングで押下された場合、加熱ブロック41の水溜部41aが水を蒸発させる程に加熱されていないときには、蒸気供給量をいち早く増加させるため、所定時間は連続して加熱ブロック41の蒸気発生用ヒータ45を加熱することが好ましい。そこで、図14に示すように、ヒータ加熱開始後の任意のタイミングで蒸気供給スイッチ21を押下したときに、蒸気発生用ヒータ45へ所定時間ta連続給電する。この所定時間taの間は、例えば輻射ヒータ39の出力を停止又は出力レベルを下げて許容電力値を超えないように合計電力を設定する。その後、停止又は出力レベルを下げていた輻射ヒータ39の出力を交互給電の出力制御に切り替えて同時加熱を行う。そして、蒸気供給を完了した後は、ヒータ加熱開始時と同様に輻射ヒータ39及びコンベクション33を連続出力制御する。なお、所定時間taの長さは、前述した加熱ブロック41の蒸気発生用ヒータ45への給電量の増減制御と同様に、加熱室11の温度や被加熱物の温度に応じて、温度が低い場合には長く、高い場合には短く設定する。
上述したオーブン調理の場合には、予熱モードがあり、この予熱の有無に応じて加熱室11の温度の立上がり特性が異なる。そこで、予熱の有無に応じた給電の優先対象の設定について説明する。
図15に予熱なしの場合の加熱室の温度変化を示すように、基本的には加熱室11が室温の状態から調理が開始されることになる。この場合には、加熱室11の温度をいち早く調理の設定温度に昇温させる必要があるので、所定温度未満の立上げ期間においては、加熱源への給電を優先して確保する(条件E)。また、所定温度以上に達した後は、蒸気供給の要求があった場合に蒸気供給部19への給電を優先して確保する(条件F)。なお、所定温度以上に達することに代えて、所定時間経過後としてもよい。
一方、予熱を行う場合には、図16に設定温度のそれぞれ異なるメニューA、Bに対する加熱室の温度変化を示すように、予熱の完了後に調理が開始される。まず、メニューAでは、予熱による設定温度到達後に、加熱源のオンオフ制御によって、加熱室温度がこの設定温度付近になるように加熱制御される。設定温度に加熱された後は、加熱室が設定温度に到達しているので、蒸気供給の供給があった場合には、蒸気供給部19への給電を優先して確保する(条件G)。また、メニューBは、設定温度到達後に、ある所定温度にまでさらに昇温させる加熱制御とされる。このメニューBの場合には、図17に示すように各加熱源と蒸気発生部への給電パターンを制御する。即ち、予熱後の調理開始時に加熱室が所定温度未満であるとき、加熱室を昇温させるため、加熱源への給電を優先して確保する(条件H)。そして、所定温度到達後、蒸気供給の要求があった場合には、蒸気供給部19への給電を優先して確保する(条件J)。
なお、予熱完了後に被加熱物Mを加熱室11に載置するときに、加熱室11を一旦開放するために加熱室11の温度が一時的に低くなり、設定温度を下回ることがある。この場合には、加熱室11を設定温度に維持させるため、加熱室温度が設定温度に到達するまでは、加熱源への給電を優先して確保する(条件D)。
図18はグリル調理における加熱部及び蒸気供給部への給電パターンを例示したタイミング図である。
グリル調理は、輻射ヒータ39からの輻射熱により被加熱物Mに焦げ目を付けるように加熱する調理方法であり、まず高周波供給部13を動作させて受け皿32の高周波吸収体34を発熱させて加熱室11を所定時間予熱処理した後、輻射ヒータ39による加熱処理が開始される。この場合、ヒータ優先とし、輻射ヒータ39への給電を連続的に行う。そして、蒸気供給スイッチ21が押下される度に、わずかな時間だけ輻射ヒータ39への給電を停止し、その間に蒸気発生用ヒータ45への給電を行う(条件K)。
上記の制御により、グリル調理中に任意のタイミングで加熱室11内に蒸気を供給することができるので、被加熱物Mの表面と内部との温度差を小さく抑えつつ加熱処理を行うことができる。
即ち、図19に示すように、輻射ヒータ39による加熱処理の途中で加熱室11内に任意のタイミングで蒸気を供給することにより、被加熱物Mの表面温度より低い蒸気が被加熱物Mに供給されるため、被加熱物Mの表面の温度を一時的に下げる(ΔT1の降温)こ
とができる。一方、被加熱物Mの内部では、熱容量が加熱室11の空気よりも約2倍大きく被加熱物Mの内部より高温の蒸気が被加熱物Mに当てられることで、被加熱物Mの内部に蒸気の熱量が効率良く伝熱されて、被加熱物Mの昇温を加速させる(ΔT2の昇温)こ
とができる。これにより、グリル調理時における被加熱物Mの表面と内部との温度差を小さく抑えることができる。
加熱中の蒸気供給は、加熱調理の前半で供給する場合には、被加熱物Mに水分を与えてしっとり柔らかくする効果があり、加熱調理の後半で供給する場合には、被加熱物Mの内部の火通りを良くし、焼き色を均一化する効果がある。蒸気は、被加熱物Mの表面に凸凹があっても、この凹凸に蒸気が入り込むことで被加熱物Mに局所的な焼きムラを生じさせることを防ぎ、焼き具合を均一にできる。輻射ヒータ17で加熱する場合は、凹凸の影となった部位に対して加熱量が小さくなるが、蒸気加熱を併用することでこのようなムラが生じにくくなる。さらには、輻射ヒータ17の加熱室11に対する加熱ムラ、即ち、加熱室11の中央では加熱量が多くなり、加熱室11の隅部では加熱量が少なくなるといった加熱ムラにより、加熱室11の中央に位置する被加熱物Mが過剰に加熱されて焦げ、加熱室11の隅部に位置する被加熱物Mが加熱不十分な状態で仕上がることを防止できる。
なお、上記の実施形態では、オーブン調理の際、加熱設定温度が所定温度未満のときに、加熱源への給電量を優先して確保するとともに蒸気供給部19への給電量を制限することとしたが、加熱室温度センサ25による温度検出値が所定温度未満のときに、加熱源への給電量を優先して確保するするとともに蒸気供給部19への給電量を制限ようにしてもよい(条件D)。また、温度検出値が所定温度以上のときに、蒸気供給部19への給電量を優先して確保するするとともに加熱源への給電量を制限ようにしてもよい(条件C)。
また、本実施形態ではオーブン調理とグリル調理について詳細に説明したが、高周波加熱の場合も同様であって、必要に応じて蒸気供給が任意のタイミングがなされる。そのときの給電量の優先設定も、オーブン調理やグリル調理と同様に、加熱内容に応じて任意に設定できる。
また、蒸気供給部と加熱源への給電は優先するいずれか一方のみに給電する例を示してきたが、これに限らず、加熱調理器の定格電力を超えない範囲で優先するいずれか一方の給電量を増加させ、いずれか他方の給電量を減少させ、双方を同時に動作させる制御としてもよい。この場合には、休止される側による温度低下を最小限に抑えることができる。