JP3954538B2 - 受注予測システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は受注予測システム、受注予測方法及び受注予測プログラムに関し、需要者である顧客から与えられるフォーキャスト情報に基づき受注予測を行うための受注予測システム、受注予測方法及び受注予測プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、主に製造業や流通業では、資材の調達や在庫管理、さらには製品の配送に亘る一連の事業活動を企業や組織の壁を越えて統合的に管理し、これによって業務効率を改善する手法が注目されている。このような取り組みは、一般に「サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)」と呼ばれ、主として納期の短縮や欠品の削減、在庫の圧縮などに大きな効果があるとされている。
【0003】
サプライ・チェーン・マネジメントの効果を十分に発揮させるためには、供給者と需要者との間の密接な情報交換が不可欠である。例えば、需要者が将来の細かな発注見込みを供給者に通知すれば、供給者はこれに基づいて将来の生産計画を立てることができ、過剰在庫や欠品の発生を抑制することが可能となる。このような将来の発注見込み、つまり供給者から見た将来の受注見込みについての情報は、「フォーキャスト情報」と呼ばれ、サプライ・チェーン・マネジメントを十分に機能させるためには必須の情報であると言える。
【0004】
ここで、供給者から見た受注の種類とその性質について説明する。供給者から見れば需要者は「顧客」であることから、以下の説明においては、需要者を「顧客」と表記する。
【0005】
供給者から見た受注の種類としては、「確定受注」及び「予約受注」の2つに分けることができる。「確定受注」とは、納入日及び数量が確定した受注を指す。確定受注は、顧客から見れば確定発注であるため、供給者が確定受注を受けた後は顧客側に製品の引き取り義務が生じる。一方「予約受注」とは、数量は確定しているが納入日が未確定である受注を指す。予約受注は、納入日は未確定ながら顧客側が所定数の製品確保を求める発注であることから、一般に予約受注を受けた後は顧客側に製品の引き取り義務が生じる。この点において、予約受注は確定受注と同様の性質を有する。
【0006】
これらに対し、上述した「フォーキャスト情報」はいわゆる受注ではなく、将来の受注に関する見込み情報である。したがって、納入日や数量は未確定であり、納入予定日ごとの所要数が与えられるにすぎない。フォーキャスト情報は、通常顧客側から与えられるものであるが、これによって顧客側に製品の引き取り義務が生じるものではなく、あくまでサプライ・チェーン・マネジメントを円滑に機能させるための見込み情報として取り扱われる。
【0007】
図21は、受注と生産の時間的関係の一例を示す図であり、確定受注から納入日までの期間よりも生産に要する期間(以下、「製品リードタイム」という)が短い(又は等しい)場合を示している。図21に示すように、確定受注から納入日までの期間をT1とし、当該製品の製品リードタイムをT0とした場合、本例では
T1≧T0
であることから、確定受注を受けた後に生産を開始すればよい。つまり、確定受注を受けた後、納入日まで残り期間がT0となった時点で生産を開始すれば納入日に生産を完了させることができるので、供給者は在庫を持たずに済む。したがってこのようなケースでは、製品ごと(或いは品名ごと)の生産計画に対して予約受注やフォーキャスト情報は大きな意味をもたない。
【0008】
図22は、受注と生産の時間的関係の他の例を示す図であり、確定受注から納入日までの期間よりも製品リードタイムが長く、予約受注から納入予定日までの期間よりも製品リードタイムが短い(又は等しい)場合を示している。図22に示すように、本例では
T1<T0、
であることから、確定受注を受けてから生産を開始したのでは納入日に製品を完成させることはできないが、予約受注から納入予定日までの期間をT2とした場合、
T2≧T0
であることから、予約受注を受けた後に生産を開始すればよい。この場合は、予約受注を受けた後、納入予定日まで残り期間がT0となった時点で生産を開始すれば、納入予定日に生産を完了させることができる。但し、予約受注においては正式な納入日が確定していないことから、確定受注の内容によっては実際に納入すべき日が前後するおそれがある。このため、欠品を発生させないためには、納入予定日まで残り期間がT0となった時点よりも前に実際の生産を開始する必要があり、その結果、多少の在庫が生じることがある。
【0009】
図23は、受注と生産の時間的関係のさらに他の例を示す図であり、予約受注から納入予定日までの期間よりも製品リードタイムが長い場合を示している。図23に示すように、本例では
T2<T0
であることから、予約受注を受けてから生産を開始したのでは納入予定日に製品を完成させることができず、欠品を生じさせてしまう。欠品を防ぐためには、フォーキャスト情報に基づいて見込み生産を行う必要があるが、上述の通りフォーキャスト情報による納入日や納入数量は未確定であり変動の可能性があるばかりでなく、顧客側には製品の引き取り義務がないことから、供給者側が全てのリスク(欠品による納期リスクや滞留による在庫リスク)を負うことになる。このようなリスクは、カスタム品の見込み生産において特に深刻であると言える。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−140110号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
近年、製品のライフサイクルはますます短くなる傾向があり、このような市場環境下において企業が確実に利益を上げるためには、製品をタイミング良く市場に投入したり、供給量をすばやく調整することが非常に重要となってくる。これを達成するためには、確定受注から納入日までの期間(T1)や、予約受注から納入予定日までの期間(T2)を短縮する必要が生じ、図23に示す例のように、予約受注から納入予定日までの期間(T2)よりも製品リードタイム(T0)の方が長いというケースが非常に増えている。このような傾向は、汎用品のみならずカスタム品においても同様であり、見込み生産による供給者のリスクはますます増大するばかりである。
【0012】
このため、供給者にとってはフォーキャスト情報の正確性が非常に重要となってくるが、市場の需要動向は刻々と変動するため、顧客側も供給者に正確なフォーキャスト情報を与えることは困難である。したがって、供給者側において納期リスクや在庫リスクを低減するためには、顧客から与えられるフォーキャスト情報に基づいて高精度な受注予測を行うことが重要となってくる。
【0013】
したがって、本発明の目的は、フォーキャスト情報に基づいて高精度な受注予測を行うことが可能な受注予測システム、受注予測方法及び受注予測プログラムを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、フォーキャスト情報を用いた受注予測に関し鋭意研究を重ねた結果、フォーキャスト情報とこれに対応する受注実績との間には、顧客(乃至は顧客群)ごと及び製品(乃至は製品群)ごとに、特有の相関が存在することが判明した。つまり、全体的に見れば、フォーキャスト情報と受注実績との関係はまちまちであり、一定の傾向はほとんど見いだせないものの、ある顧客(乃至は顧客群)のある製品(乃至は製品群)に絞って見れば、フォーキャスト情報と受注実績との間に一定の関係を見いだすことができ、このような関係は顧客(乃至は顧客群)ごと及び製品(乃至は製品群)ごとに異なることが明らかになったのである。
【0015】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明による受注予測システムは、複数の納入予定日又は納入予定期間ごとの所要数を示すフォーキャスト情報に基づいて受注数量を予測する受注予測システムであって、受信日の異なる過去の複数のフォーキャスト情報を格納するフォーキャスト格納部と、納入日又は納入期間ごとの受注実績を格納する受注実績格納部と、前記フォーキャスト格納部に格納された前記過去のフォーキャスト情報及び前記受注実績格納部に格納された前記受注実績に基づき、予測対象である新しいフォーキャスト情報内の所要数を補正することによって受注予測数量を計算する処理部とを備え、前記処理部は、前記過去のフォーキャスト情報に含まれる1又は2以上の所要数とこれに対応する1又は2以上の受注実績との比である変換係数を計算し、フォーキャスト受信日から納入予定日までの期間であるフォーキャストリードタイムが互いに等しい複数の変換係数の標準偏差を計算し、前記標準偏差又はこれに基づいて得られた値が所定のしきい値を超えていないフォーキャストリードタイムを有効なフォーキャストリードタイムと判定し、前記新しいフォーキャスト情報に含まれる所要数のうち、前記有効なフォーキャストリードタイムに対応する所要数と、これに対応する変換係数を用いた演算を行い、これによって受注予測数量を算出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明による受注予測方法は、複数の納入予定日又は納入予定期間ごとの所要数を示すフォーキャスト情報に基づいて受注数量を予測する受注予測方法であって、受信日の異なる過去の複数のフォーキャスト情報をフォーキャスト格納部に格納し、納入日又は納入期間ごとの受注実績を受注実績格納部に格納し、前記フォーキャスト格納部に格納された過去のフォーキャスト情報に含まれる1又は2以上の所要数と、前記受注実績格納部に格納された受注実績のうち、対応する1又は2以上の受注実績との比によって変換係数を計算し、フォーキャスト受信日から納入予定日までの期間であるフォーキャストリードタイムが互いに等しい複数の変換係数の標準偏差を計算し、前記標準偏差又はこれに基づいて得られた値が所定のしきい値を超えていないフォーキャストリードタイムを有効なフォーキャストリードタイムと判定し、新しいフォーキャスト情報に含まれる所要数のうち、前記有効なフォーキャストリードタイムに対応する所要数と、これに対応する変換係数を用いた演算を行い、これによって受注予測数量を算出することを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明による受注予測プログラムは、コンピュータに、過去のフォーキャスト情報に含まれる1又は2以上の所要数とこれに対応する1又は2以上の受注実績との比によって変換係数を計算するステップと、フォーキャスト受信日から納入予定日までの期間であるフォーキャストリードタイムが互いに等しい複数の変換係数の標準偏差を計算するステップと、前記標準偏差又はこれに基づいて得られた値と所定のしきい値とをフォーキャストリードタイムごとに比較し、前記所定のしきい値を超えていないフォーキャストリードタイムを有効なフォーキャストリードタイムと判定するステップと、新しいフォーキャスト情報に含まれる所要数のうち、前記有効なフォーキャストリードタイムに対応する所要数と、これに対応する変換係数を用いた演算を行い、これによって受注予測数量を算出するステップとを実行させることを特徴とする。
【0018】
上記の処理を顧客(乃至は顧客群)ごと及び製品(乃至は製品群)ごとに行えば、得られる予測受注数は、各顧客(乃至は顧客群)の各製品(乃至は製品群)に関するフォーキャスト情報と受注実績との相関を考慮した値となることから、フォーキャスト情報内の所要数に比べて実際の確定受注量に近い確率が非常に高い。これにより、本発明によれば、見込み生産によるリスク(欠品による納期リスクや滞留による在庫リスク)を低減することが可能となる。受注予測数量を算出方法としては、新しいフォーキャスト情報に含まれる所要数と、これに対応する複数の変換係数の平均値とを乗じればよい。
【0019】
本発明においては、過去のフォーキャスト情報に含まれる所要数のうち、フォーキャストリードタイムが連続する2以上の所要数と、これに対応する2以上の受注実績との比によって変換係数を計算することが好ましい。このようにして変換係数を算出すれば、過去に納期が変更となったケースをも考慮した受注予測がなされるので、見込み生産によるリスクがいっそう低減される。この場合変換係数は、連続する2以上のフォーキャストリードタイムのうち、期間が最も短いフォーキャストリードタイムに対応する変換係数として取り扱うことが好ましい。このように取り扱えば、最も重要性の高い直近の納入予定日又は納入予定期間に関する予測受注数を得ることができる。
【0020】
本発明においては、標準偏差とこれに対応する複数の変換係数の平均値との比が所定のしきい値を超えていないフォーキャストリードタイムを有効なフォーキャストリードタイムと判定することもまた好ましい。このような判定基準を用いれば、最終的に得られた予測受注数に基づいて見込み生産を行う場合のリスクをいっそう低減することが可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、一般的なフォーキャスト情報のデータ構造を示す図である。図1に示すように、フォーキャスト情報10は複数の単位データ11、11・・・によって構成されており、各単位データ11、11・・・は、納入予定日(又は納入予定期間)12と各納入予定日(又は納入予定期間)に納入すべき製品の数量、つまり、所要数13によって構成されている。
【0023】
本発明による受注予測では、このようなフォーキャスト情報10を集計することによって、まずフォーキャスト遷移表が作成される。しかしながら、フォーキャスト情報10に含まれる納入予定日の間隔や納入予定期間の長さ(本明細書においては「タイムバケット」と呼ぶ)は顧客及び製品によってまちまちであり、また、フォーキャスト情報10の発行間隔、つまり供給者から見たフォーキャスト情報10の受信間隔(本明細書においては「フォーキャスト受信間隔」と呼ぶ)も顧客及び製品によってまちまちである。したがって、フォーキャスト遷移表の作成は、タイムバケットとフォーキャスト受信間隔が一致している場合とそうでない場合に分けて行う必要がある。
【0024】
図2はフォーキャスト遷移表の一例を示す図であり、フォーキャスト受信間隔とタイムバケットとが一致している場合を示している。図2に示すように、フォーキャスト遷移表20は、列に納入予定日(又は納入予定期間)が割り当てられ、行にフォーキャスト情報を受信した日(本明細書においては「フォーキャスト受信日」と呼ぶ)が割り当てられた構造を有している。図2に示す例においては、フォーキャスト受信間隔及びタイムバケットがいずれも1週間であり、例えば、第1週に受信したフォーキャスト情報10−1は、第2週から第5週までの各週における所要数データによって構成され、第2週に受信したフォーキャスト情報10−2は、第3週から第6週までの各週における所要数データによって構成されている。第3週乃至第5週に受信したフォーキャスト情報10−3〜10−5についても同様であり、それぞれ第4週から第7週まで、第5週から第8週まで、第6週から第9週までの各週における所要数データによって構成されている。
【0025】
図2に示すように、各所要数データは、フォーキャスト受信日(本例では受信した週)を「a」、納入予定日(本例では納入予定週)を「b」とした場合、
F(a,b)
で表される。例えば、第2週に受信したフォーキャスト情報10−2に含まれる所要数データのうち、第5週に納入すべき数量は、
F(2,5)
と表記されている。
【0026】
図2に示す例では、各フォーキャスト情報10−1〜10−5にはそれぞれフォーキャスト受信日から見て1週間後から4週間後の所要数が示されている。したがって、フォーキャスト受信日(本例では受信した週)から各納入予定日までの期間を「フォーキャストリードタイム(以下、「フォーキャストLT」と表記する)」と定義し、その値を「c」とすると、フォーキャストLTは、
c=b−a
で与えられることになる。例えば、所要数データF(2,5)のフォーキャストLTは
c=5−2=3(3週間)
である。
【0027】
図3はフォーキャスト遷移表の他の例を示す図であり、フォーキャスト受信間隔とタイムバケットとが一致していない場合を示している。図3に示すように、フォーキャスト遷移表30は、タイムバケットが1週間、フォーキャスト受信間隔が2週間である場合を示しており、各フォーキャスト情報10−11〜10−14にはそれぞれフォーキャスト受信日から見て1週間後から6週間後の所要数が示されている(c=1〜6)。
【0028】
尚、図2及び図3に示す例では、全てのフォーキャスト情報にフォーキャストLTが1週間(c=1)である所要数データが含まれているが、各フォーキャスト情報にフォーキャストLTが2週間(c=2)以降である所要数データしか含まれていないケースもある。逆に、フォーキャストLTが0週間(c=0)の所要数データ(例えば、F(1,1))が含まれているケースもある。例えば、月曜日に受信したフォーキャスト情報にその週の金曜日に納品すべき製品の所要数データが含まれている場合などである。つまり、図2及び図3に示すフォーキャスト遷移表はあくまで一例であり、受信したフォーキャスト情報に含まれる所要数データのフォーキャストLTに応じて、適切なフォーキャスト遷移表を作成すればよい。
【0029】
本発明による受注予測においては、上述したフォーキャスト遷移表20(30)と併せて、タイムバケットごとの受注実績を示す受注実績表が用いられる。図4は受注実績表40の構造を示す図であり、タイムバケットごとに受注実績(確定受注における数量)が表示される。図4に示すように、各受注実績は納入日(本例では納入週)を「d」とした場合、
QTY(d)
で表される。例えば、第3週の受注実績は、
QTY(3)
と表記されている。当然ながら、フォーキャスト情報の所要数データと受注実績とが一致するとは限らない。
【0030】
本発明では、このようなフォーキャスト遷移表20(30)と受注実績表40を解析することによって実際に受注予測を行う。以下、本発明の好ましい実施形態による受注予測の手順について、フローチャートを用いて詳細に説明する。
【0031】
図5は、本発明の好ましい実施形態による受注予測方法を示すフローチャートである。
【0032】
図5に示すように、本実施形態による受注予測においては、まず上述したフォーキャスト遷移表20(30)及び受注実績表40を作成する(ステップS1)。上述の通り、フォーキャスト遷移表20(30)の作成は、受信したフォーキャスト情報10を納入予定日(又は納入予定期間)が揃うよう時間順に並べることによって行う。
【0033】
次に、フォーキャスト遷移表20(30)及び受注実績表40からフォーキャスト変換係数表を作成する(ステップS2)。フォーキャスト変換係数(以下、単に「変換係数」という)とは、フォーキャスト遷移表20(30)に含まれる所要数データと、受注実績表40に含まれる受注実績との比(QTY/F)によって定義され、フォーキャスト変換係数表は、フォーキャストLTを揃えてフォーキャスト受信日ごとに変換係数を示すものである。変換係数は、受注実績に対して所要数データがどの程度乖離しているかを示す値であり、これが100%を超えて大きくなるほど、受注実績に対して所要数データが過小であることを意味し、100%を下回って小さくなるほど、受注実績に対して所要数データが過大であることを意味する。
【0034】
図6は、フォーキャスト変換係数表の一例を示す図である。図6に示すように、フォーキャスト変換係数表50には各フォーキャストLT及びフォーキャスト受信日(本例では受信した週)ごとに変換係数が示されており、その元データとしては、図2に示したフォーキャスト遷移表20と受注実績表40が用いられている。
【0035】
フォーキャスト変換係数表50における列はフォーキャストLTを表しており、例えばc=1の列にはフォーキャストLTが「1(1週間)」である所要数データ、つまり、
b−a=1
である所要数データと、これに対応する受注実績、つまり、
d=b
である受注実績との比が割り当てられている。一方、フォーキャスト変換係数表50における行はフォーキャスト受信日を表しており、例えばa=1の行にはフォーキャスト受信日が「1(第1週)」である所要数データと、これに対応する受注実績、つまり、
d=b
である受注実績との比が割り当てられている。
【0036】
したがって、例えばc=1の列及びa=1の行に該当する欄51には、第1週に受信したフォーキャスト情報のうち、フォーキャストLTが「1」である所要数データF(1,2)とこれに対応する受注実績QTY(2)との比
QTY(2)/F(1,2)
が割り当てられており、c=4の列及びa=3の行に該当する欄52には、第3週に受信したフォーキャスト情報のうち、フォーキャストLTが「4」である所要数データF(3,7)と当該納入日の受注実績QTY(7)との比
QTY(7)/F(3,7)
が割り当てられている。
【0037】
図7は、フォーキャスト変換係数表の他の例を示す図である。
【0038】
図7に示すフォーキャスト変換係数表60の元データとしては、上述したフォーキャスト変換係数表50と同様、フォーキャスト遷移表20と受注実績表40が用いられているが、フォーキャスト変換係数表60を構成する各欄には、フォーキャストLTが連続する2つの所要数データの合計と、これに対応する受注実績の合計の比が割り当てられている。例えば、c=1及び2の列にはフォーキャストLTが「1(1週間)」である所要数データ及び「2(2週間)」である所要数データの和と、これらに対応する2つの受注実績の和との比が割り当てられている。これにより、例えばc=1及び2の列を構成する欄61〜65は、図2に示す所要数データ群21〜25にそれぞれ対応することになる。
【0039】
図8は、フォーキャスト変換係数表のさらに他の例を示す図である。
【0040】
図8に示すフォーキャスト変換係数表70は、元データとして図3に示すフォーキャスト遷移表30と受注実績表40が用いられており、フォーキャスト変換係数表70を構成する各欄には、フォーキャストLTが連続する4つの所要数データの合計と、これに対応する受注実績の合計の比が割り当てられている。例えば、c=1〜4の列にはフォーキャストLTが「1(1週間)」乃至「4(4週間)」である所要数データの合計と、これらに対応する4つの受注実績の合計との比が割り当てられている。これにより、例えばc=1〜4の列を構成する欄71〜74は、図3に示す所要数データ群31〜34にそれぞれ対応することになる。
【0041】
以上は、あくまでフォーキャスト変換係数表のいくつかの例である。つまり、所要数データと受注実績との比(変換係数)を、図6に示すフォーキャスト変換係数表50ではフォーキャストLTごとに計算し、図7に示すフォーキャスト変換係数表60では連続する2つのフォーキャストLTにまとめて計算し、図8に示すフォーキャスト変換係数表70では連続する4つのフォーキャストLTにまとめて計算しているが、フォーキャスト変換係数表においてフォーキャストLTのまとめ数(=e)としては上記の例(図6ではe=1、図7ではe=2、図8ではe=4)に限定されず、e=6やe=8であっても構わない。具体的には、フォーキャスト情報と確定受注との間において、数量のずれは多いものの納期のずれが少ない場合にはフォーキャストLTのまとめ数eを小さく(e=1、e=2等)設定することが好ましく、数量のずれは少ないものの納期のずれが多い場合にはフォーキャストLTのまとめ数eをある程度大きく(e=6、e=8等)設定することが好ましい。実際には、顧客(乃至は顧客群)及び製品(乃至は製品群)の性質に応じて決定すればよい。
【0042】
図5に戻って、次に、フォーキャスト変換係数表を用いてフォーキャストLTごと又はフォーキャストLT群ごとに変換係数の標準偏差を求める(ステップS3)。上述の通り、各変換係数はフォーキャスト受信日ごとに算出されることから、標準偏差が大きいと言うことはフォーキャスト受信日ごとの変換係数のばらつきが大きいことを意味し、標準偏差が小さいと言うことはフォーキャスト受信日ごとの変換係数のばらつきが小さいことを意味する。
【0043】
図9は、図6に示したフォーキャスト変換係数表50を元に作成した標準偏差表80であり、フォーキャストLTごとの標準偏差によって構成されている。つまり、標準偏差表80における標準偏差s(1)は、図6に示すc=1の列を構成する各値の標準偏差を示しており、同様に、標準偏差s(2)、s(3)及びs(4)は、それぞれc=2、c=3及びc=4の列を構成する各値の標準偏差を示している。
【0044】
図10は、図7に示したフォーキャスト変換係数表60を元に作成した標準偏差表90であり、連続する2つのフォーキャストLT群ごとの標準偏差によって構成されている。つまり、標準偏差表90における標準偏差s(1−2)は、図7に示すc=1及び2の列を構成する各値の標準偏差を示しており、同様に、標準偏差s(2−3)及びs(3−4)は、それぞれc=2及び3並びにc=3及び4の列を構成する各値の標準偏差を示している。
【0045】
図11は、図8に示したフォーキャスト変換係数表70を元に作成した標準偏差表100であり、連続する4つのフォーキャストLT群ごとの標準偏差によって構成されている。つまり、標準偏差表100における標準偏差s(1−4)は、図8に示すc=1〜4の列を構成する各値の標準偏差を示しており、同様に、標準偏差s(2−5)及びs(3−6)は、それぞれc=2〜5及び3〜6の列を構成する各値の標準偏差を示している。
【0046】
ステップS3において標準偏差を求める際、各フォーキャストLT又はフォーキャストLT群に含まれる全ての変換係数を用いる必要はなく、変換係数の数が多い場合、つまり、長期に亘ってフォーキャスト情報10を集計している場合においては、直近のフォーキャスト受信日に対応する変換係数を含むいくつかの変換係数のみを用いることが好ましい。これは、変換係数の数が非常に多い場合において全ての変換係数を用いると、古いフォーキャスト情報や古い受注実績に対応する変換係数が含まれる結果、フォーキャスト情報と実際の受注内容との相関の変動に対し、感度が悪くなるからである。これに対し、直近のフォーキャスト受信日に対応する変換係数を含むいくつかの変換係数のみを用いれば、フォーキャスト情報と実際の受注内容との相関が変動している場合でも、これに連動してより精度の高い受注予測を行うことが可能となる。標準偏差の算出に用いる変換係数の数については特に限定されるものではなく、むしろ、フォーキャスト受信日の古さによって規定することが好ましい。例えば、受信日が最近3ヶ月以内であるフォーキャスト情報より得られた変換係数のみを用いる等である。このような基準を用いれば、フォーキャスト受信間隔やタイムバケットの長さにかかわらず、上記相関の変動に対する感度を一定とすることが可能となる。
【0047】
次に、ステップS3で得られた標準偏差が所定のしきい値以下であるか否かをフォーキャストLTごと又はフォーキャストLT群ごとに判断する(ステップS4)。これは、フォーキャスト受信日ごとの変換係数のばらつきが許容範囲内であるか否かを判断するものであり、標準偏差がしきい値を超えている場合、つまり、変換係数のばらつきが許容範囲を超えている場合には、フォーキャスト情報と実際の受注内容との間に特定の相関が見られないことを意味し、この場合には、受注予測が不可能であると判断する。一方、標準偏差がしきい値以下である場合には、フォーキャスト情報と実際の受注内容との間に特定の相関が存在することを意味し、この場合には受注予測が可能であると判断して次のステップ(後述)に進む。
【0048】
上記しきい値の具体的な値については特に限定されないが、10%以上、30%未満に設定することが好ましく、20%程度に設定することが特に好ましい。これは、上記しきい値を10%未満に設定すると、フォーキャスト情報と実際の受注内容との相関が非常に強い場合にしか受注予測を行うことができず、本来受注予測が可能なケースまでも予測不可能と取り扱われるおそれがあるためであり、逆に、上記しきい値を30%超に設定すると、フォーキャスト情報と実際の受注内容との相関が弱い(或いはほとんど無い)ケースまで受注予測の対象に含まれることとなり、予測結果が非常に不正確となるおそれが生じるためである。これらに対し、上記しきい値を20%程度に設定すれば、多くのケースについて精度の高い受注予測を行うことが可能となる。
【0049】
標準偏差と所定のしきい値との比較は、フォーキャストLTごと又はフォーキャストLT群ごとに行うため、一部のフォーキャストLT又は一部のフォーキャストLT群についてのみ、標準偏差がしきい値を超えるケースが想定される。この場合には、しきい値以下であったフォーキャストLT又はフォーキャストLT群に関してのみ受注予測が可能であると判断して次のステップに進めばよい。但し、より精度の高い受注予測を行うためには、全てのフォーキャストLT又は全てのフォーキャストLT群について標準偏差がしきい値以下とならないない限り、受注予測が不可能であると判断しても構わない。
【0050】
ステップS4において標準偏差がしきい値以下であると判断された場合、次に、フォーキャストLTごと又はフォーキャストLT群ごとに変換係数の平均値を求める(ステップS5)。ここで、ステップS3において標準偏差を求める際に、全ての変換係数ではなくいくつかの変換係数のみを用いた場合には、平均値の算出においても、標準偏差の算出対象となった変換係数のみを対象とすることが好ましい。また、ステップS4において一部のフォーキャストLT又は一部のフォーキャストLT群について標準偏差がしきい値を超えている場合には、標準偏差がしきい値以下であるフォーキャストLTごと又はフォーキャストLT群についてのみ平均値を求めればよい。
【0051】
図12は、図6に示したフォーキャスト変換係数表50を元に作成した平均値表110であり、フォーキャストLTごとの平均値によって構成されている。つまり、平均値表110における平均値Ave(1)は、図6に示すc=1の列を構成する各値の平均値を示しており、同様に、平均値Ave(2)、Ave(3)及びAve(4)は、それぞれc=2、c=3及びc=4の列を構成する各値の平均値を示している。
【0052】
図13は、図7に示したフォーキャスト変換係数表60を元に作成した平均値表120であり、連続する2つのフォーキャストLT群ごとの平均値によって構成されている。つまり、平均値表120における平均値Ave(1−2)は、図7に示すc=1及び2の列を構成する各値の平均値を示しており、同様に、平均値Ave(2−3)及びs(3−4)は、それぞれc=2及び3並びにc=3及び4の列を構成する各値の平均値を示している。
【0053】
図14は、図8に示したフォーキャスト変換係数表70を元に作成した平均値表130であり、連続する4つのフォーキャストLT群ごとの平均値によって構成されている。つまり、平均値表130における平均値Ave(1−4)は、図8に示すc=1〜4の列を構成する各値の平均値を示しており、同様に、平均値Ave(2−5)及びAve(3−6)は、それぞれc=2〜5及び3〜6の列を構成する各値の平均値を示している。
【0054】
次に、ステップS5において作成した平均値表110(120、130)と最新のフォーキャスト情報10を用いて、実際に受注数の予測計算を行う(ステップS6)。ステップS6における受注数の予測計算は、原則として、最新のフォーキャスト情報10に含まれる受注予定数量とこれに対応する平均値とを乗じることにより行う。以下、具体的な受注数の予測計算の方法について説明する。
【0055】
図15は、図12に示す平均値表110を用いて最新のフォーキャスト情報10−6から受注数の予測計算を行う方法を説明するための図である。ここで、最新のフォーキャスト情報10−6とは、図2に示したフォーキャスト情報10−5の次に受信したフォーキャスト情報であり、フォーキャスト受信日(a)は第6週である(a=6)。
【0056】
図15に示すように、平均値表110を用いた受注数の予測計算は、最新のフォーキャスト情報10−6に含まれる各所要数データ(F(6,7)、F(6,8)、F(6,9)、F(6,10))と、平均値表110を構成する平均値(Ave(1)〜Ave(4))のうちフォーキャストLTが等しいもの同士をそれぞれ乗じることにより行う。例えば、フォーキャストLTが1週間(c=1)である所要数データF(6,7)については、フォーキャストLTが1週間(c=1)である平均値Ave(1)を乗じることによってその値が補正され、予測受注数RD(7)が得られる。同様にして、フォーキャストLTが2週間〜4週間(c=2〜4)である所要数データF(6,8)、F(6,9)及びF(6,10)については、対応する平均値Ave(2)、Ave(3)及びAve(4)をそれぞれ乗じることによって値が補正され、予測受注数RD(8)、RD(9)及びRD(10)が得られる。
【0057】
このようにして得られた予測受注数RD(7)〜RD(10)は、それぞれ対応する所要数データ(F(6,7)、F(6,8)、F(6,9)、F(6,10))を補正した値であり、現在のフォーキャスト受信日(a=6)からそれぞれ1週間後〜4週間後の予測受注数として利用することができる。つまり、予測受注数RD(7)は第7週(b=7)の納入予定日における予測受注数、予測受注数RD(8)は第8週(b=8)の納入予定日における予測受注数、予測受注数RD(9)は第9週(b=9)の納入予定日における予測受注数、予測受注数RD(10)は第10週(b=10)の納入予定日における予測受注数としてそれぞれ利用することができる。これらの予測受注数は、当該顧客(乃至は顧客群)の当該製品(乃至は製品群)に関するフォーキャスト情報と受注実績との相関を考慮した値であることから、フォーキャスト情報10−6に含まれる所要数データに比べて実際の確定受注量に近い確率が非常に高く、これにより、見込み生産によるリスク(欠品による納期リスクや滞留による在庫リスク)を低減することが可能となる。
【0058】
図16は、図13に示す平均値表120を用いて最新のフォーキャスト情報10−6から受注数の予測計算を行う好ましい方法を説明するための図である。上述の通り、最新のフォーキャスト情報10−6とは、フォーキャスト情報10−5の次に受信したフォーキャスト情報である。
【0059】
図16に示すように、平均値表120を用いた受注数の予測計算は、最新のフォーキャスト情報10−6に含まれる各所要数データ(F(6,7)、F(6,8)、F(6,9)、F(6,10))と、平均値表120を構成する平均値(Ave(1−2)、Ave(2−3)、Ave(3−4))のうち、先頭のフォーキャストLTが等しいもの同士をそれぞれ乗じることにより行う。例えば、フォーキャストLTが1週間(c=1)である所要数データF(6,7)については、フォーキャストLTの先頭が1週間(c=1)である平均値Ave(1−2)を乗じることによってその値が補正され、予測受注数RD(7)が得られる。同様にして、先頭のフォーキャストLTが2週間及び3週間(c=2及び3)である所要数データF(6,8)及びF(6,9)については、対応する平均値Ave(2−3)及びAve(3−4)をそれぞれ乗じることによって値が補正され、予測受注数RD(8)及びRD(9)が得られる。本例では、平均値表120内に先頭のフォーキャストLTが4週間である平均値が含まれていないことから、所要数データF(6,10)に対応する予測受注数RD(10)を得ることはできない。
【0060】
上述の通り、得られた予測受注数RD(7)〜RD(9)は、それぞれ対応する所要数データ(F(6,7)、F(6,8)、F(6,9))を補正した値であり、現在のフォーキャスト受信日(a=6)からそれぞれ1週間後〜3週間後の予測受注数として利用することができる。
【0061】
ここでは、各所要数データの補正において、当該フォーキャストLTよりも長いフォーキャストLTに関する成分が関与している点が重要である。例えば、フォーキャストLTが1週間(c=1)である所要数データF(6,7)の補正においては、フォーキャストLTが1週間(c=1)である成分(所要数データF(1,2)や所要数データF(2,3)等)のみならず、フォーキャストLTが2週間(c=2)である成分(所要数データF(1,3)や所要数データF(2,4)等)が関与している。これにより、過去に納期が変更となったケースをも考慮した受注予測がなされるので、見込み生産によるリスクをいっそう低減することが可能となる。
【0062】
図17は、図13に示す平均値表120を用いて最新のフォーキャスト情報10−6から受注数の予測計算を行う別の方法を説明するための図である。
【0063】
図17に示す方法では、図16に示す方法とは異なり、各所要数データの補正において、当該フォーキャストLTよりも短いフォーキャストLTに関する成分が関与している。例えば、フォーキャストLTが2週間(c=2)である所要数データF(6,8)の補正においては、フォーキャストLTが2週間(c=2)である成分(所要数データF(1,3)や所要数データF(2,4)等)のみならず、フォーキャストLTが1週間(c=1)である成分(所要数データF(1,2)や所要数データF(2,3)等)が関与している。このような方法によっても、過去に納期が変更となったケースを考慮した受注予測を行うことが可能となるが、この方法では、最も重要性の高い直近の納入予定日(本例では第7週)に関する予測受注数が得られないことから、この点を考慮すれば、図16に示した方法により受注予測を行う方がより好ましいと言える。
【0064】
図18は、図14に示す平均値表130を用いて最新のフォーキャスト情報10−15から受注数の予測計算を行う好ましい方法を説明するための図である。ここで、最新のフォーキャスト情報10−15とは、図3に示したフォーキャスト情報10−14の次に受信したフォーキャスト情報であり、フォーキャスト受信日(a)は第9週である(a=9)。
【0065】
図18に示すように、平均値表130を用いた受注数の予測計算は、図16に示した計算方法と同様であり、最新のフォーキャスト情報10−15に含まれる各所要数データ(F(9,10)、F(9,11)、F(9,12)、F(9,13)、F(9,14)、F(9,15))と、平均値表130を構成する平均値(Ave(1−4)、Ave(2−5)、Ave(3−6))のうち、先頭のフォーキャストLTが等しいもの同士をそれぞれ乗じることにより行う。例えば、フォーキャストLTが1週間(c=1)である所要数データF(9,10)については、フォーキャストLTの先頭が1週間(c=1)である平均値Ave(1−4)を乗じることによってその値が補正され、予測受注数RD(10)が得られる。同様にして、先頭のフォーキャストLTが2週間及び3週間(c=2及び3)である所要数データF(9,11)及びF(9,12)については、対応する平均値Ave(2−5)及びAve(3−6)をそれぞれ乗じることによって値が補正され、予測受注数RD(11)及びRD(12)が得られる。本例では、平均値表130内に先頭のフォーキャストLTが4週間以上である平均値が含まれていないことから、所要数データF(9,13)、F(9,14)及びF(9,15)に対応する予測受注数RD(13)、RD(14)及びRD(15)を得ることはできない。
【0066】
ここでも、各所要数データの補正において、当該フォーキャストLTよりも長いフォーキャストLTに関する成分が関与している点が重要であり、これにより過去に納期が変更となったケースを考慮した受注予測がなされることから、見込み生産によるリスクをいっそう低減することが可能となる。
【0067】
図19は、図14に示す平均値表130を用いて最新のフォーキャスト情報10−15から受注数の予測計算を行う別の方法を説明するための図である。
【0068】
図19に示す方法は、図17に示す方法と類似しており、各所要数データの補正において、当該フォーキャストLTよりも長いフォーキャストLTに関する成分と短いフォーキャストLTに関する成分が関与している。例えば、フォーキャストLTが2週間(c=2)である所要数データF(9,11)の補正においては、フォーキャストLTが2週間(c=2)である成分(所要数データF(1,3)等)のみならず、フォーキャストLTが1週間(c=1)である成分(所要数データF(1,2)等)、並びに、フォーキャストLTが3週間(c=3)及び4週間(c=4)である成分(所要数データF(1,4)や所要数データF(1,5)等)が関与している。このような方法によっても、過去に納期が変更となったケースを考慮した受注予測を行うことが可能となるが、すでに説明したように、この方法では最も重要である直近の納入予定日(本例では第10週)についての予測受注数が得られないことから、この点を考慮すれば、図18に示した方法により受注予測を行う方がより好ましいと言える。
【0069】
以上が、本発明の好ましい実施形態による受注予測方法である。
【0070】
次に、上述した受注予測の手順を実行するための受注予測システムについて説明する。
【0071】
図20は、本発明の好ましい実施形態による受注予測システムの構成を示すブロック図である。
【0072】
図20に示すように、実施形態による受注予測システム200は、受注予測システム200全体の動作を制御する処理部210と、後述する各種データ等格納する記憶部220と、受注予測に必要なデータを入力するための入力部230と、受注予測結果を表示する表示部240とを備えて構成されている。記憶部220は、受注予測プログラムを格納するプログラム格納部221と、フォーキャスト遷移表(20,30)を格納するフォーキャスト格納部222と、受注実績表(40)を格納する受注実績格納部223と、フォーキャスト変換係数表(50,60,70)を格納する変換係数格納部224と、標準偏差表(80,90,100)を格納する標準偏差格納部225と、平均値表(110,120,130)を格納する平均値格納部226とを備えている。但し、これら格納部221〜226は、それぞれ物理的に独立したハードウェア資源である必要はなく、1又は2以上の記録装置(ハードディスク装置や半導体メモリ等)の記憶領域の一部をそれぞれ割り当てれば足り、割り当てられる領域が動的に変化しても構わない。
【0073】
プログラム格納部221に格納される受注予測プログラムは、図5に示す手順を処理部210に実行させるためのプログラムである。したがって、入力部230を介して操作者によりフォーキャスト情報及び受注実績が入力されると、処理部210はプログラム格納部221に格納された受注予測プログラムに従い、図5に示した手順を実行する。具体的な手順については上述の通りであり重複する説明は省略するが、最終的に得られた予測受注数が表示部240に表示され、これにより操作者は納入予定日(又は納入予定期間)ごとの予測受注数を確認することができる。
【0074】
尚、フォーキャスト情報及び受注実績の入力は、入力部230を介して操作者が行うのではなく、電子データ交換(EDI:Electronic Data Interchange)により顧客からオンラインで送られてきたものをそのまま用いても構わない。この場合、新たなフォーキャスト情報がオンラインで送られてくるたびに受注予測プログラムを自動的に実行し、これにより自動的に受注予測を行うよう構成することも可能である。
【0075】
以上説明したように、本実施形態では過去に受信したフォーキャスト情報とこれに対応する受注実績から顧客(乃至は顧客群)ごと及び製品(乃至は製品群)ごとにフォーキャスト情報と受注実績との相関を調べ、これに基づいて受注予測を行っていることから、実際の確定受注量に近い数値が得られる確率が非常に高い。つまり、精度の良い受注予測を行うことが可能となり、見込み生産によるリスク(欠品による納期リスクや滞留による在庫リスク)を低減することが可能となる。
【0076】
特に、フォーキャスト変換係数表の作成において、フォーキャストLTのまとめ数(=e)を2以上、特に4程度に設定すれば、過去に納期が変更となったケースをも考慮した受注予測を行うことができるので、見込み生産によるリスクをいっそう低減することが可能となる。
【0077】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0078】
例えば、上記実施形態においては、標準偏差が所定のしきい値以下であるか否かによって受注予測が可能であるか否かを判定しているが(ステップS4参照)、判定の方法としてはこれに限定されず、例えば、標準偏差とこれに対応する変換係数の平均値との比(s/Ave)をパラメータとして用い、これがしきい値を超えている場合には受注予測が不可能であると判定しても構わない。このような判定基準を用いれば、最終的に得られた予測受注数に基づいて見込み生産を行う場合のリスクをいっそう低減することが可能となる。これは、標準偏差と平均値との比(s/Ave)が大きい場合には、予測値の誤差範囲(絶対値)が大きくなることから、標準偏差自体が同じ値であっても、標準偏差と平均値との比が小さい場合に比べて予測値に基づく見込み生産のリスクが大きくなるためである。
【0079】
また、ある納入予定日(又は納入予定期間)における所要数が欠けているフォーキャスト情報が存在する場合には、フォーキャスト変換係数表の該当する欄を空欄としても構わないし、前回或いは次回受信したフォーキャスト情報の同じ納入予定日(又は納入予定期間)に対応する所要数を補完データとして利用しても構わない。さらに、フォーキャストLTのまとめ数(=e)が2以上である場合には(図7、図8参照)、該当する変換係数の計算において、所要数データの平均値と受注実績の平均値との比を求め、これを変換係数として用いても構わない。
【0080】
さらに、上記実施形態においては、標準偏差がしきい値以下であるか否かを判断(ステップS4)した後に平均値の計算(ステップS5)を行っているが、かかる判断に先だってあらかじめ平均値の計算を行っておいても構わない。
【0081】
さらに、変換係数の平均値を計算する際、他の変換係数に比べて値が大きくかけ離れている変換係数(異常値)が存在する場合には、これを除いて平均値を求めても構わない。その基準としては標準偏差を利用すれば良く、例えば、異常値と見られる変換係数を含んで得られた平均値との差が標準偏差の2倍以上であるものは異常値として取り扱う等の処理をすればよい。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では顧客(乃至は顧客群)ごと及び製品(乃至は製品群)ごとにフォーキャスト情報と受注実績との相関を調べ、これに基づいた受注予測を行っていることから、精度の良い受注予測を行うことが可能となり、見込み生産による供給者のリスクを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フォーキャスト情報のデータ構造を示す図である。
【図2】フォーキャスト遷移表20の構造を示す図である。
【図3】フォーキャスト遷移表30の構造を示す図である。
【図4】受注実績表40の構造を示す図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態による受注予測方法を示すフローチャートである。
【図6】フォーキャスト変換係数表50の構造を示す図である。
【図7】フォーキャスト変換係数表60の構造を示す図である。
【図8】フォーキャスト変換係数表70の構造を示す図である。
【図9】標準偏差表80の構造を示す図である。
【図10】標準偏差表90の構造を示す図である。
【図11】標準偏差表100の構造を示す図である。
【図12】平均値表110の構造を示す図である。
【図13】平均値表120の構造を示す図である。
【図14】平均値表130の構造を示す図である。
【図15】平均値表110を用いて最新のフォーキャスト情報から受注数の予測計算を行う方法を説明するための図である。
【図16】平均値表120を用いて最新のフォーキャスト情報から受注数の予測計算を行う方法の一例を説明するための図である。
【図17】平均値表120を用いて最新のフォーキャスト情報から受注数の予測計算を行う方法の他の例を説明するための図である。
【図18】平均値表130を用いて最新のフォーキャスト情報から受注数の予測計算を行う方法の一例を説明するための図である。
【図19】平均値表130を用いて最新のフォーキャスト情報から受注数の予測計算を行う方法の他の例を説明するための図である。
【図20】本発明の好ましい実施形態による受注予測システムの構成を示すブロック図である。
【図21】受注と生産の時間的関係の一例を示す図である。
【図22】受注と生産の時間的関係の他の一例を示す図である。
【図23】受注と生産の時間的関係のさらに他の一例を示す図である。
【符号の説明】
10 フォーキャスト情報
11 単位データ
12 納入予定日(又は納入予定期間)
13 所要数
20,30 フォーキャスト遷移表
21〜25,31〜34 所要数データ群
40 受注実績表
50,60,70 フォーキャスト変換係数表
51,52,61〜65,71〜74 欄
80,90,100 標準偏差表
110,120,130 平均値表
200 受注予測システム
210 処理部
220 記録部
221 プログラム格納部
222 フォーキャスト格納部
223 受注実績格納部
224 変換係数格納部
225 標準偏差格納部
226 平均値格納部
230 入力部
240 表示部

Claims (5)

  1. 複数の納入予定日又は納入予定期間ごとの所要数を示すフォーキャスト情報に基づいて受注数量を予測する受注予測システムであって、
    受信日の異なる過去の複数のフォーキャスト情報を格納するフォーキャスト格納部と、納入日又は納入期間ごとの受注実績を格納する受注実績格納部と、前記フォーキャスト格納部に格納された前記過去のフォーキャスト情報及び前記受注実績格納部に格納された前記受注実績に基づき、予測対象である新しいフォーキャスト情報内の所要数を補正することによって受注予測数量を計算する処理部とを備え、
    前記処理部は、前記過去のフォーキャスト情報に含まれる1又は2以上の所要数とこれに対応する1又は2以上の受注実績との比である変換係数を計算し、フォーキャスト受信日から納入予定日までの期間であるフォーキャストリードタイムが互いに等しい複数の変換係数の標準偏差を計算し、前記標準偏差又はこれに基づいて得られた値が所定のしきい値を超えていないフォーキャストリードタイムを有効なフォーキャストリードタイムと判定し、前記新しいフォーキャスト情報に含まれる所要数のうち、前記有効なフォーキャストリードタイムに対応する所要数と、これに対応する変換係数を用いた演算を行い、これによって受注予測数量を算出することを特徴とする受注予測システム。
  2. 前記新しいフォーキャスト情報に含まれる所要数と、これに対応する複数の変換係数の平均値とを乗じることによって前記受注予測数量を算出することを特徴とする請求項1に記載の受注予測システム。
  3. 前記過去のフォーキャスト情報に含まれる所要数のうち、フォーキャストリードタイムが連続する2以上の所要数と、これに対応する2以上の受注実績との比によって前記変換係数を計算することを特徴とする請求項1又は2に記載の受注予測システム。
  4. 前記変換係数は、連続する2以上のフォーキャストリードタイムのうち、期間が最も短いフォーキャストリードタイムに対応する変換係数として取り扱うことを特徴とする請求項3に記載の受注予測システム。
  5. 前記標準偏差とこれに対応する複数の変換係数の平均値との比が所定のしきい値を超えていないフォーキャストリードタイムを有効なフォーキャストリードタイムと判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の受注予測システム。
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