JP3953300B2 - エアバッグ用ガス発生器のリテーナー及びこれを用いたエアバッグ用ガス発生器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に設置されて、衝撃から乗員を保護するエアバッグ装置に於いて好適に使用されるエアバッグ用ガス発生器及びそれを用いたエアバッグ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エアバッグ装置は、衝突時の衝撃から乗員を保護する目的で自動車等に装着されており、これはエアバッグ用ガス発生器の作動によって急速にガスを生じさせ、これによりエアバッグ(袋体)を膨張させるものとして形成されている。
【0003】
一般的なガス発生器は、衝撃によって点火手段が作動すると、これがガス発生剤を着火・燃焼させて高温・高圧のガスを生じさせ、この発生したガスがガス排出口からエアバッグ(袋体)内に噴出するものとして形成されている。
【0004】
また従前に於いてこの点火手段は、作動信号によって作動する点火器だけで構成する場合の他、更にこの点火器に、作動した点火器により着火して燃焼する伝火薬を組み合わせて使用することもある。
【0005】
一方、ガス発生剤が収容される燃焼室は、ハウジングの形状や必要な構成部材の配置等によって種々設計されており、またその中に充填されるガス発生剤の形状や組成等も種々のものが使用されている。
【0006】
そして、ガス発生器の作動性能を調整する上では、このガス発生剤の燃焼具合も重要な設計要素となり得る。従って、燃焼室内に充填されたガス発生剤は、点火手段の作動によって、効果的に、且つ確実に着火・燃焼されることが望ましい。
【0007】
しかしながら、従来提供されているガス発生器は、ガス発生剤の着火性を向上させる観点では、未だ改良の余地を有するものとなっている。
【0008】
またガス発生器に使用されるガス発生剤の量もガス発生器の作動性能を調整する上で重要な設計要素となる。通常、このガス発生剤は、ハウジング内に設けられた燃焼室内に充填されていることから、ガス発生剤の使用量を調整する為には、この燃焼室容積の調整が必要となる。
【0009】
更に、エアバッグ用ガス発生器を設置する場面を考慮すれば、更なる小型化の要請についても解決する必要がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
依って、本発明は、ガス発生器の小型化を実現し、更にガス発生剤を収容する燃焼室容積を簡易且つ確実に調整することもできるエアバッグ用ガス発生器及びその為のリテーナー、並びに当該ガス発生器を用いたエアバッグ装置を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るエアバッグ用ガス発生器のリテーナーは、ガス排出口を有する筒状ハウジング内に、貫通孔を設けた筒状周壁を有する内筒部材を配置し、該内筒部材の内側に点火手段及びガス発生器の少なくとも何れかを配置してなるエアバッグ用ガス発生器に使用されるリテーナーであって、該リテーナーは、前記筒状周壁の外周面から離間し且つ外周面と対向して配置される筒状部と、この筒状部に一体形成されたフランジ状の隔壁部とを有しており、該筒状部及び隔壁部の少なくとも何れかは、筒状周壁に形成された貫通孔から噴出するガスの流れを変えると共に、当該ガス中に含まれる、気体以外の燃焼生成物を捕集することを特徴とするものである。このガス中に含まれる燃焼生成物とは、貫通孔から噴出するガス中に含まれる、流動体、半流動体又は固体等、気体以外の燃焼生成物のことである。
【0012】
上記筒状周壁に設けられた貫通孔から噴出するガスは、リテーナーの筒状部により流れ方向が変えられることとなるが、その際、当該ガス中に含まれる流動体、半流動体又は固体等、ガス以外の燃焼生成物は該リテーナーの筒状部及び/又は隔壁部に衝突することになる。これにより燃焼生成物は筒状部及び/又は隔壁部に付着するか、或いは落下し、ガス中から除去されることになる。リテーナーの筒状部及び/又は隔壁部により燃焼生成物が捕集されることから、改めてこの貫通孔から噴出するガス中の燃焼生成物を除去又は減じる為のクーラント手段やフィルター手段を配置するする必要がなく、その結果、製造コスト及びガス発生器容積を減じることができる。
【0013】
上記の如く本発明のリテーナは、その筒状部及び/又は隔壁部で貫通孔から噴出するガス中の燃焼生成物を捕集するものである。この内、筒状部で貫通孔から噴出するガス中の燃焼生成物を捕集する場合、この筒状部は、当該燃焼生成物を捕集し得る大きさ及び形状に形成され、且つ貫通孔方噴出するガスとの交差角が調整される。またこのリテーナーは、燃焼生成物の捕集をより確実にする為に、当該筒状部が、少なくとも前記内筒部材の連通孔を覆う大きさ及び形状に形成されることが望ましい。
【0014】
そして本発明のエアバッグ用ガス発生器のリテーナーは、筒状部と、この筒状部に一体形成されたフランジ状の隔壁部とを含んで形成され、望ましくは、該隔壁部は、少なくとも第一燃焼室の軸方向端部を画定する形状及び大きさに形成される。従って、この場合、リテーナーの隔壁部は、少なくとも第一燃焼室軸方向端部を塞ぐような形状及び大きさに形成されていなければならない。但し、このリテーナーが燃焼室の半径方向外側に配置されるクーラント手段をも分離する形状及び大きさに形成するか否か、及びハウジング内であって内筒部材の外側全ての空間を上下に分離する形状及び大きさに形成するか否かは、ガス発生器内の全体構成との兼ね合い等により任意に選択することができる。クーラント手段は、金網やエキスパンデッドメタル等を積層して形成されたものであり、ガス発生剤の燃焼により生じた作動ガスを浄化又は冷却する機能を果たす。
【0015】
前記筒状部は、その一部が、前記内筒部材に外嵌する形状及び大きさに形成されることが望ましく、またハウジング内に環状のクーラント手段を収容するガス発生器に使用する場合には、この筒状部は、その一部が、当該クーラント手段の内周面又は外周面、若しくはハウジング周壁の内周面に嵌合する形状及び大きさに形成することもできる。
【0016】
このリテーナーは、少なくとも筒状部を含んで構成され、隔壁部をも含んで構成することができる。筒状部は大凡円筒状に形成され、隔壁部は環状に形成されて、前記筒状部の軸方向一端部に外向きフランジ状又は内向きフランジ状に設けられている。このリテーナーは、当該筒状部の他端側に、ハウジング内の内筒部材に係止する係止部を内向きフランジ状に形成することもできる。そして、このリテーナーが、連通孔を有する内筒部材に外嵌する場合には、当該筒状部は、内筒部材の連通孔と対向し、且つこの連通孔を覆う大きさに形成することが望ましい。つまりこの筒状部は、少なくとも貫通孔近傍において内筒部材から離間し、且つ当該貫通孔を塞ぐことなく対向するように設けられる。
【0017】
また、本発明では、前記リテーナーを用いたエアバッグ用ガス発生器も提供する。即ち、本発明のエアバッグ用ガス発生器は、ガス排出口を有する筒状ハウジング内に、貫通孔を設けた筒状周壁を有する内筒部材を配置し、該内筒部材の内側に点火手段及びガス発生剤の少なくとも何れかを配置すると共に、該内筒部材の外側にはその一部を包囲する筒状部と、この筒状部に一体形成されたフランジ状の隔壁部とを備えたリテーナーを配置してなるエアバッグ用ガス発生器であって、前記リテーナーの筒状部は、前記筒状周壁の外周面から離間して該外周面と対向しており、当該筒状部及び隔壁部の少なくとも何れかは、前記内筒部材の筒状周壁に形成された貫通孔から噴出するガスの流れを変えると共に、当該ガス中に含まれる燃焼生成物を捕集することを特徴とする。
【0018】
また前記内筒部材の半径方向外側に、ガス発生剤を収容する第一燃焼室を設けてなるエアバッグ用ガス発生器にあっては、該リテーナーの隔壁部は、少なくとも該第一燃焼室の軸方向端部を画定する形状及び大きさに形成される事が望ましく、且つ筒状部は、前記内筒部材に外嵌する形状及び大きさに形成される。
【0019】
このガス発生器に於いて、内筒部材のクロージャシェル側外周面を段欠き状に切り欠いて段欠き部を形成し、またリテーナーの筒状部の端部に内向きフランジ状の係止部を形成した場合には、この段欠き部に当該係止部を係止させて、内筒部材とリテーナーと組み合わせることができる。この場合、リテーナーは、ガス発生器の作動時に第一燃焼室内で発生する作動ガスの圧力を受けて、確実に内筒部材に支持・固定されることになる。依って、このリテーナーにより、簡易且つ確実に第一燃焼室の軸方向長さを調整することができる。
【0020】
本発明は、ハウジング内に内筒部材を配置して、その内側に点火手段を配置すると共に、その半径方向外側に第一燃焼室を設け、内筒部材の内側に配置された点火手段の火炎が、内筒部材の筒状周壁に設けられた貫通孔を通って第一燃焼室内に噴出するガス発生器で有れば実施することができる。従って、他の構成、例えばハウジング内に燃焼室が2つ区画されているか否かや、その配置、或いは点火手段の数等とは無関係に実施するととができる。即ち、本発明は、ガス発生剤を収容する燃焼室が内筒部材の半径方向外側にだけであって、該内筒部材の内側には設けられていないガス発生器であっても実施することができる。この場合、内筒部材の内側には、点火手段を収容することができる。
【0021】
本発明のガス発生器は、一般的な実施の態様においては、内筒部材の内側には点火手段を配置し、内筒部材の半径方向外側にはガス発生剤を充填する第一燃焼室が設けられる。そして該内筒部材の筒状周壁には、専ら点火手段の作動によって生じる火炎を第一燃焼室内に噴出させるための貫通孔(以下、かかる貫通孔を特に「伝火孔」とする)も形成されており、第一燃焼室内のガス発生剤(以下、「第一ガス発生剤」とする)は、この伝火孔から噴出する火炎によって着火・燃焼されることとなる。
【0022】
特に隔壁部を有するリテーナーを用いた本発明のガス発生器では、このリテーナーに依って燃焼室の軸方向長さを調整することができる為、リテーナーの形状やその配置場所を適宜調整すれば、該第一燃焼室の軸方向長さを短くすることもできる。その結果、伝火孔から噴出する火炎を第一燃焼室の全体に行き渡らせることができ、第一燃焼室内に収容される第一ガス発生剤を効果的に着火させることができる。また、第一燃焼室の軸方向端部にリテーナーを配置するに際しては、このリテーナーの第一燃焼室とは反対側に、作動ガスを通す為の流路を形成することもできる。
【0023】
上記の如く、リテーナーを配置して第一燃焼室の軸方向長さを調整し、該第一燃焼室内に収容される第一ガス発生剤の着火性を向上させた場合、そのガス発生器に使用される第一ガス発生剤の着火性が劣るものであっても、当該ガス発生剤の着火性を補うことができる。即ち、第一燃焼室の形状や伝火孔の形成位置を調整することで、十分な着火性能を有しないガス発生剤であっても第一ガス発生剤として使用することができる。ガス発生剤の着火性が向上したか否かは、例えば、ガス発生器が作動した時のガス発生器内の圧力が最大になる時間、或いは60Lタンクテスト(タンク燃焼試験)で得られるタンクカーブ(60Lタンク内の圧力時間曲線)によっても判断することができる。
【0024】
また上記ガス発生器は、衝撃を感知して前記ガス発生器を作動させる衝撃センサと、ガス発生器で発生するガスを導入して膨張するエアバッグと、エアバッグを収容するモジュールケースとを含んでエアバッグ装置とすることができる。
【0025】
ガス発生器は、発生するガスを導入して膨張するエアバッグ(袋体)と共にモジュールケース内に収容され、パッドモジュールとして提供される。
【0026】
このエアバッグ装置は、衝撃センサが衝撃を感知することに起因してガス発生器が作動し、ハウジングのガス排出口から作動ガスを排出する。この作動ガスはエアバッグ内に流入し、これによりエアバッグはモジュールカバーを破って膨出し、車両中の硬い構造物と乗員との間に衝撃を吸収するクッションを形成する。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のエアバッグ用ガス発生器を、好ましい実施形態を示す図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本発明に係るエアバッグ用ガス発生器の一実施の形態を示す縦断面図である。
【0029】
この実施の形態に示すガス発生器は、ハウジング内に2つの燃焼室を設け、且つそれぞれの燃焼室に対応する点火手段を合計2つ配置したガス発生器である。より具体的には、ガス排出口26を有するディフューザシェル1と、ディフューザシェル1と共に内部収容空間を形成するクロージャシェル2とを接合してなるハウジング3内に、略円筒形状の内筒部材4を配置して、その外側を第一燃焼室5aとしている。また、内筒部材4の内側は、隔壁7によって2室に画成されており、そのディフューザシェル側を第二燃焼室5b、クロージャシェル側を点火手段収容室12としている。隔壁7は内筒部材4内面の段欠き部6に係止している。本実施の形態でも、内筒部材4の筒状に形成された周壁(即ち、筒状周壁)には、貫通孔が形成されている、本実施の形態では、特にこの貫通孔の内、第二燃焼室に開口している貫通孔を連通孔10とし、点火手段収容室12に開口する貫通孔を第一伝火孔17aとする。
【0030】
ハウジング3内に区画される2つの燃焼室5a,5bには、各燃焼室毎にガス発生剤9a,9bが充填されており、第一燃焼室5aには第一ガス発生剤9aが、第二燃焼室5bには第二ガス発生剤9bがそれぞれ充填されている。このガス発生剤は、点火手段の作動によって着火・燃焼し、エアバッグを膨張させるための作動ガスを生じさせる。第一及び第二ガス発生剤9a,9bは、各燃焼室毎に、その形状、組成、組成比及び量などを異ならせる事もできる。特に、本実施の形態では、第一ガス発生剤9aとして、燃料と酸化剤とを含有して形成されたガス発生剤であって、燃料としてグアニジン誘導体又はそれらの混合物が使用され、酸化剤として塩基性硝酸銅が使用されたガス発生剤が使用されている。また第二ガス発生剤9bも第1ガス発生剤と同じものが使用されている
第一燃焼室5aに於けるディフューザシェル1側の軸方向端部には、内筒部材の筒状周壁を囲む形状の筒状部51と環状の隔壁部52とを具備するリテーナー50を配置しており、隔壁部52は第一燃焼室5aの軸方向長さを確定している。即ちこのリテーナー50は、内筒部材と所定の間隔をおいて対向配置される筒状部51と、この筒状部51から外向きフランジ状に曲折する環状の隔壁部52とを含んで構成されており、更に筒状部51の隔壁部52が形成された側とは反対側に、内向きフランジ状の係止部56が形成されている。そして内筒部材の外周には、クロージャシェル2側を段欠き状に切り欠いた段欠き部53が形成されており、当該リテーナー50は、その係止部56をこの段欠き部53に係止して配置・固定されている。この図1に示すリテーナー50は、ガス発生器の作動時において、第一ガス発生剤が燃焼すると、その燃焼圧力によって段欠き部53による支持方向に押圧され、その固定状態及び着火状態が一層確実なものとなる。
【0031】
また、本実施の形態に示すリテーナー50では、筒状部51は、連通孔10を閉塞することなく且つ対向する様に配置されていることから、当該連通孔10から排出される第二ガス発生剤9bの燃焼による作動ガスは、一旦リテーナーの筒状部51に衝突することとなる。従って、例えば第二ガス発生剤9bが、燃焼時に於いて流動体又は半流動体等の固形燃焼生成物を生じさせる場合には、これら固形燃焼生成物は当該筒状部51に衝突して作動ガス中から除去される。その結果、このような固形燃焼生成物を生じさせるガス発生剤を第二ガス発生剤9bとして使用する場合には、固形燃焼生成物は筒状部51により大凡除去されることから、後述する第二クーラント手段22bの量や半径方向の厚みなどを減じることもできる。
【0032】
このリテーナー50は、その配置個所や隔壁部52の位置等を調整する事により、第一燃焼室5aの内部形状や容積等を調整することができることから、リテーナー50の形状や配置場所を調整することによっても、当該第一燃焼室5aの軸方向平均長さ(L)に対する、同燃焼室5aの半径方向平均距離(D)の割合(D/L)を、0.2〜2.0、望ましくは0.4〜1.0に調整することができる。本実施の形態では、第一燃焼室5aのクロージャシェル側2端面は、クロージャシェル2の内面で画定され、且つ当該燃焼室5a内のガス発生剤9aはアンダープレート54によって支持されている。
【0033】
また、本実施の形態に示すリテーナー50は、第一燃焼室5aとは反対側に、第二ガス発生剤9bの燃焼によって生じた作動ガスを通過させる為の流路55を画成している。この流路55と第二燃焼室5bとは、内筒部材4の周壁に形成された連通孔10により連通可能となっている。
【0034】
点火手段収容室12には、2つの点火器23a,23bとアルミニウム製カップに充填された伝火薬16とを含む点火手段が収容されている。2つの点火器23a,23bは、カラー集合体31に固定されており、このカラー集合体31は、内筒部材4の下端部4aのかしめによって固定されている。第一点火器23aと第二点火器23bとは、それぞれ、内筒部材4内に於いて隔壁7によって区画された空間内に収容されており、前記伝火薬16は、第一点火器23aが収容される空間内に於いて、該第一点火器23aの上方に配置されている。点火手段収容室12内に収容された2つの点火器23a,23b同士は、第一点火器23aの作動により生じる火炎と、第二点火器23bの作動により生じる火炎とが相互に混ざり合うことがないように配置されている。
【0035】
第一点火器23aが収容されている空間と第一燃焼室5aとは、内筒部材4の周壁に形成された伝火孔17aによって連通可能に形成されており、図1に於いて、この伝火孔17aは、第一燃焼室5aの軸方向平均長さの中央から伝火孔17aの中心迄の距離L1が、第一燃焼室の軸方向平均長さLの1/4以下の範囲に形成されている。望ましくは当該伝火孔17aは、第一燃焼室5aの軸方向中央に形成される。これにより伝火薬16の燃焼による火炎は、第一燃焼室5aの略中央に噴出することとなり、該第一燃焼室5aの全体に伝火薬16の火炎を行き渡らせることができる。
【0036】
一方、第二点火器23bが収容されている空間は、第二燃焼室5bに通じる如く形成されており、第二燃焼室5bは、内筒部材4に形成された連通孔10を介して、前記リテーナー50によって確保された流路55と連通可能に形成されている。
【0037】
第一ガス発生剤9a及び第二ガス発生剤9bの燃焼によって生じた作動ガスは、何れも金網やエキスパンデッドメタルなどを積層してなる環状のクーラント手段22を通過してガス排出口26から排出されるものとして形成されており、特に本実施の形態では、各ガス発生剤9a,9bから生じる作動ガスは、それぞれ異なるクーラント手段22a,22bを通過するものとして形成されている。具体的には、第一燃焼室5aの半径方向外側には第一クーラント手段22aを配置し、第二燃焼室5bの半径方向外側には流路55を介して第二クーラント手段22bを配置し、両クーラント手段22a,22b同士を、前記リテーナー50によって分離している。
【0038】
従って、この実施の形態に示すガス発生器では、第一点火器23aの作動によって伝火薬16が燃焼し、その火炎は第一伝火孔17aを通って第一燃焼室5a内に噴出する。これにより第一ガス発生剤9aは着火・燃焼して作動ガスを生じさせ、これは第一クーラント手段22aを通過して、間隙25に至り、その後シールテープ27を破ってガス排出口26から排出される。一方、第二点火器23bが作動すると、その火炎は第二燃焼室5b内に噴出して第二ガス発生剤9bを着火・燃焼させる。第二ガス発生剤9bの燃焼によって生じた作動ガスは連通孔10から半径方向外側に向かって噴出し、リテーナー50の筒状部51によりその流れる向きが変えられ、同時に当該作動ガス中に含まれる燃焼生成物が当該筒状部51に衝突する。これにより第二ガス発生剤9bの燃焼によって生じた作動ガス中に含まれる燃焼生成物の殆どが除去又は削減される。筒状部51により流れの向きが変えられた作動ガスはその後流路55に出てこれを通り、第二クーラント手段22bに至る。そして、第二クーラント手段22bを通過する間に冷却されると共に、更に浄化されて間隙25を通ってガス排出口26から排出される。このように 各燃焼室で生じる作動ガス毎に異なるクーラント手段を使用する場合には、各クーラント手段は独立していることから、ガス発生器の作動出力の調整は行い易いものとなる。
【0039】
また、この図に示すガス発生器では、2つのクーラント手段22a,22bを別々に配置していることから、各燃焼室5a,5bで生じる作動ガスの発生量に対応して、それぞれのクーラント手段22a,22bの浄化/冷却能力を調整することができる。そして、第二ガス発生剤9bの燃焼で生じた作動ガスの冷却を第二クーラント手段22bに分担させれば、第一クーラント手段22aの内径を大きく確保することもでき、これにより、第一燃焼室5aの半径方向平均距離(D)を拡大することもできる。
【0040】
図1中、符号11は連通孔10を閉塞するシールテープを、符号18は第一伝火孔17aを閉塞するシールテープを、符号27はガス排出口26を閉塞するシールテープをそれぞれ示す。これらシールテープは各孔又は口を火炎やガスが通過する際に破裂することとなる。
【0041】
上記図1に示す実施の形態に於いて、リテーナー50は、第一燃焼室5aの軸方向端部を確定すると共に、流路55を画成し、更にクーラント手段22a,22bをも分離する様に形成されている。
【0042】
前記リテーナー50は、更に図2(a)〜(f)に示す態様とすることができ、また単に第一燃焼室の軸方向平均長さ(L)を規定する場合には図2(g)(h)に示す態様とすることができる。即ち、図2(a)〜(h)に示す各態様は、リテーナー50により、第一燃焼室の軸方向平均長さ(L)を規定し、第一燃焼室の軸方向平均長さの中央から伝火孔17aの中心迄の距離L1が、第一燃焼室5aの軸方向平均長さLの1/4以下となるように調整している。
【0043】
これら図2(a)〜(f)に示すリテーナー50は、その筒状部51の一部が内筒部材4に外嵌するか、クーラント手段22aの内周面又は外周面に嵌合するか、或いは又はハウジング3の内周面に内嵌することによりハウジング内に支持・固定されている。
【0044】
特に図2(a)〜(f)に示す態様のリテーナー50は、何れも内筒部51及び隔壁部を含んで構成されている。図2(a)(c)(d)(f)の態様では、連通孔10から噴出したガスは筒状部51に衝突して、当該筒状部51によりガス中の燃焼生成物が捕集され、図2(e)の態様では、連通孔10から噴出したガスは隔壁部52に衝突して、当該隔壁部52によりガス中の燃焼生成物が捕集される。但し、図2(e)に示す態様では、予め第二クーラント手段22bを通過したガスが連通孔10から噴出する。この為、筒状部51で更に燃焼生成物を捕集すれば、より浄化されたガスがガス排出口26から排出されることになる。また図2(b)に示す態様では、連通孔10から噴出したガスは予め第二クーラント手段22bに浄化されながら筒状部51に衝突する。これによって、より確実に燃焼生成物を除去することができる。
【0045】
また図2(a)及び(b)に示す態様では、リテーナー50は、筒状部51が、内筒部材4に外嵌する部分と、連通孔10に対向する部分とに分けて形成されており、両部分間には隔壁部52が設けられている。即ち、本発明に関するリテーナー50に於いて、筒状部51は必ずしも一箇所とする必要はなく、リテーナー50をハウジング内に支持・固定する部分と連通孔10を覆う部分とをそれぞれ別の箇所に形成することもできる。図2(a)及び(b)に示す態様では、貫通孔10から噴出するガスはリテーナー50の連通孔10に対向する部分により流れの向きが変えられると共に、燃焼生成物が捕集される。
【0046】
そして図2(h)に示すリテーナー50では、隔壁部52は、内筒部材4に外嵌する筒状部51から外向きフランジ状に傾斜すると共にしており、筒状部51先端と隔壁部52先端とは繋げられている。これにより当該リテーナー50の軸方向断面形状は、大凡直角三角形となっており、その斜辺部分が隔壁部52となっている。そしてこの図2(h)に示すリテーナー50は、第一燃焼室5aの軸方向長さを規定するだけで、第一燃焼室の反対側に流路を形成しない態様となっている。
【0047】
図2に示す態様中、(a)〜(g)に示す態様では、該リテーナー50は、第一燃焼室5aの反対側に流路55を設けている。
【0048】
この図2(a)〜(h)中、図1に示したガス発生器に於ける部材及び部分と機能上同一の部材及び部分については、同一の符号を付して、その説明を省略する。なお、図2中、符号22はフィルター手段を示している。
【0049】
本発明のエアバッグ用ガス発生器は、更に図3又は図4に示す実施形態にすることもできる。図3、図4中、図1に示したガス発生器に於ける部材及び部分と機能上同一の部材及び部分については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
図3では、リテーナー50は、第一燃焼室5aの軸方向端部を確定し、第一燃焼室5aの軸方向平均長さを調整している。しかしながら、このリテーナー50はクーラント手段22までも分割するものではない。従って、第二燃焼室5b内で生じた作動ガスは、連通孔10を通って流通空間55に流入し、これは第一燃焼室5a内で生じた作動ガスと同じクーラント手段22を通過して、間隙25を通り、ガス排出口26から排出される。この場合、仮に第一燃焼室5a内でのみ作動ガスが発生し、第二燃焼室5b内のガス発生剤は未着火の場合であっても、当該第一燃焼室5a内で生じた作動ガスはガス排出口26を開口させることから、このガスがクーラント手段22を介して流通空間55に流入し、更に連通孔10を閉塞するシールテープ11を破裂させることはない。
【0051】
図4では、リテーナー50は、第一燃焼室5aの軸方向端部を確定し、第一燃焼室5aの軸方向平均長さ(L)を調整している。更に、リテーナー50は、その外壁端面がディフュザーシェル1の内壁面に当接され、第一燃焼室5a内で生じた作動ガスと、第二燃焼室5b内で生じた作動ガスの流路を分離している。このため、第一燃焼室5a内で生じた作動ガスはガス排出口26aから排出され、第二燃焼室5b内で生じた作動ガスはガス排出口26bから排出される。
【0052】
図5は、特に内筒部材とリテーナーとの係合部分に特徴を有するガス発生器を示している。即ち、この図に示すガス発生器では、リテーナー50の筒状部(又は内筒部)51には、その一部を半径方向外側に膨らませた膨出部63が形成されており、この膨出部63と内筒部材との間にはO−リング64が配置されている。これにより内筒部材4とリテーナー50(特に、膨出部63)との間はO−リング64によってシールされ、第一ガス発生剤9aが燃焼した場合であっても、その作動ガスは流通空間(又は流路)55側に侵入することはない。また、第一ガス発生剤9aと第二ガス発生剤9bとが同時に燃焼した場合、第一燃焼室5a内は第一ガス発生剤9aの燃焼によって十分に圧力が高まることから、当該第二ガス発生剤9bの燃焼により生じた作動ガスが第一燃焼室5a内に流入することもない。従って、内筒部材とリテーナーとの係合構造を図5に示す如く形成した場合、リテーナー50の筒状部(又は内筒部)51は、内筒部材50に外嵌する大きさに調整する必要はなく、両者間には間隙を設けて配置することもできる。
【0053】
特に図5に示すような内筒部材とリテーナーとの係合構造とした場合、リテーナー50は第二クーラント手段22bによって支持されることからハウジング軸方向への移動が阻止される。そして、内筒部材の外周面(即ち、筒状周壁の外周面)に対する切削加工などをなくすことができることから、製造上及びコスト上有利なものとなる。
【0054】
なお、内筒部材とリテーナーとの係合構造に関し、図1に示したガス発生器では、筒状部(又は内筒部)51の端部に設けた係止部56を内筒部材の段欠き部53に係止して、リテーナー50をハウジング内に配置・固定しており、また図2(a)〜(d)及び(f)に示したガス発生器では、筒状部51の一部を内筒部材4の筒状周壁に外嵌する大きさに形成し、内筒部材の外側にリテーナー50を圧入し、当該リテーナー50をハウジング内に配置・固定している。
【0055】
図5に示す部材中、図1に示したガス発生器の部材と同じ機能を果たすものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
上記エアバッグ用ガス発生器を用いた本発明のエアバッグシステムは、衝撃センサ及びコントロールユニットからなる作動信号出力手段と、エアバッグ用ガス発生器とエアバッグが収容されたモジュールケースとを備えたものである。エアバッグ用ガス発生器は、第一及び第二点火器23a,23b側において作動信号出力手段(衝撃センサ及びコントロールユニット)に接続している。そして、かかる構成のエアバッグシステムにおいて、作動信号出力手段における作動信号出力条件を適宜設定することにより、衝撃の程度に応じてガス発生量を調整し、エアバッグの膨張速度を調整することができる。このエアバッグシステムに於けるガス発生器以外の構成に就いては、例えば特開平11-334517号に開示のものからも容易に理解できるであろう。
【0057】
【発明の効果】
本発明のガス発生器に於いて、第二ガス発生剤が、燃焼時に於いて流動体又は半流動体等の固形燃焼生成物を生じさせる場合には、本発明に係るリテーナーを内筒部材の連通孔と対向させて配置することにより、当該リテーナーで固形燃焼生成物を捕集することができる。そして、このようにリテーナーで固形燃焼生成物を捕集することにより、当該第二ガス発生剤の燃焼によって生じる作動ガスの熱量が少なくなり、その結果当該作動ガスを冷却するために使用されるクーラント手段の量や冷却能力などを減じることができる。
【0058】
また、当該リテーナーを、インナーチューブの段部への引っかけと、第一及び第二クーラント手段による挟み込みで固定する場合には、それぞれの燃焼室で生じた作動ガスは、相互に漏洩しないものとなる。そしてこの場合、リテーナーは圧入することなく組み付ける事ができるため、その組立が容易となる。更にこのリテーナーは、第一ガス発生剤の燃焼圧力で内筒部材の段欠き部側に押圧されることから、両者はより強く密着することができる。
【0059】
更に、本発明のリテーナーでクーラント手段も分離して、各燃焼室で生じる作動ガスが、それぞれ異なるクーラント手段を通過するガス発生器とした場合には、各クーラント手段は独立していることから、ガス発生器の作動出力の調整を行いやすいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一の実施の形態に於けるエアバッグ用ガス発生器を示す縦断面図。
【図2】 リテーナーの他の態様を示す要部縦断面図。
【図3】 他の実施の形態に於けるエアバッグ用ガス発生器を示す縦断面図。
【図4】 他の実施の形態に於けるエアバッグ用ガス発生器を示す縦断面図。
【図5】 他の実施の形態に於けるエアバッグ用ガス発生器を示す縦断面図。
【符号の説明】
3 ハウジング
4 内筒部材
5a,5b 燃焼室
7 隔壁
9a,9b ガス発生剤
12 点火手段収容室
16 伝火薬
17a,17b 伝火孔
22a,22b クーラント手段
23a,23b 点火器
25 間隙
26 ガス排出口
50 リテーナー
51 筒状部
52 隔壁部
54 アンダープレート
55 流路
Claims (11)
- ガス排出口を有する筒状ハウジング内に、貫通孔を設けた筒状周壁を有する内筒部材を配置し、該内筒部材の内側に点火手段及びガス発生剤の少なくとも何れかを配置すると共に、該内筒部材の外側にはその一部を包囲する筒状部と、この筒状部に一体形成されたフランジ状の隔壁部とを備えたリテーナーを配置してなるエアバッグ用ガス発生器であって、
前記内筒部材の半径方向外側には、ガス発生剤を収容する第一ガス発生剤が充填された第一燃焼室が設けられており、
前記内筒部材の内側は、隔壁によって点火手段収容室と第二ガス発生剤が充填された第二燃焼室とに画成されており、
前記ハウジング内には、更にハウジング内に収容されたガス発生剤の燃焼によって生じたガスを浄化又は冷却する環状のクーラント手段を収容してなり、
前記リテーナが前記第一燃焼室内に配置されており、前記リテーナーの筒状部は、前記筒状周壁の外周面から離間して該外周面と対向しており、当該筒状部及び前記隔壁部の少なくとも何れかは、前記内筒部材の筒状周壁に形成された貫通孔から噴出する第二ガス発生剤の燃焼により発生する作動ガスの流れを変えると共に、第二ガス発生剤の燃焼により発生する、気体以外の燃焼生成物を捕集することを特徴とするエアバッグ用ガス発生器。 - 前記内筒部材の筒状周壁に設けられた第二燃焼室と連通する貫通孔の水平投影位置には、前記リテーナーの筒状部が存在する請求項1記載のエアバッグ用ガス発生器。
- 前記リテーナーは、その筒状部が前記内筒部材の第二燃焼室と連通する貫通孔を塞ぐことなく且つ対向して配置されている請求項1又は2記載のエアバッグ用ガス発生器。
- 前記リテーナーは、その筒状部の一部が前記内筒部材の筒状周壁に外嵌している請求項1〜3の何れか一項記載のエアバッグ用ガス発生器。
- 前記ハウジング内には、更にハウジング内に収容されたガス発生剤の燃焼によって生じたガスを浄化又は冷却する環状のクーラント手段を収容してなり、
前記リテーナーは、その筒状部の全部又は一部が、当該クーラント手段の内周面及び外周面、並びにハウジング周壁の内周面の少なくとも何れかに嵌合している請求項1〜4の何れか一項記載のエアバッグ用ガス発生器。 - 前記筒状部の端部開口には、内筒部材の筒状周壁に係止する係止部が内向きフランジ状に一体形成されている請求項1〜5の何れか一項記載のエアバッグ用ガス発生器。
- 前記ハウジングはガス排出口を有するディフューザシェルと、該ディフューザシェルと共に内部空間を形成するクロージャシェルとで形成されており、前記内筒部材は、その外周面のクロージャシェル側を段欠き状に切り欠いた段欠き部を備えており、当該段欠き部には、前記リテーナーの係止部が係止している請求項6記載の記載のエアバッグ用ガス発生器。
- 前記内筒部材の半径方向外側には、ガス発生剤を収容する第一燃焼室が設けられており、前記リテーナーの隔壁部は、少なくとも該第一燃焼室の軸方向端部を画定する形状及び大きさに形成されて、第一燃焼室の軸方向端部に設けられている請求項1〜7の何れか一項記載のエアバッグ用ガス発生器。
- 前記リテーナーは、隔壁部が第一燃焼室内に収容された第一ガス発生剤の燃焼圧力を受けることにより、係止部が内筒部材の段欠き部に押圧される請求項8記載のエアバッグ用ガス発生器。
- 第一燃焼室の第一ガス発生剤から発生する作動ガスと、第二燃焼室の第二ガス発生剤から発生する作動ガスが、それぞれ異なるクーラント手段を通過する請求項1〜9の何れか一項記載のエアバッグ用ガス発生器。
- エアバッグ用ガス発生器と、
衝撃を感知して前記ガス発生器を作動させる衝撃センサと、
前記ガス発生器で発生するガスを導入して膨張するエアバッグと、
前記エアバッグを収容するモジュールケースとを含み、前記エアバッグ用ガス発生器が請求項1〜10の何れか一項記載のエアバッグのガス発生器であることを特徴とするエアバッグ装置。
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