JP3953221B2 - コレステリック液晶による着色方法及びその着色物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はコレステリック液晶による映像・画面・文字の表示及び全体あるいは一部分の着色方法及びその着色物品に係り、さらに詳しくはコレステリック液晶の反射色を制御し、そのらせん構造を固定化することでパターニングされた文字や映像をそのバックと対照的に表示し、しかも文字や映像の濃淡を効果的に表現できる、極めて鮮明性の高い映像・画像・文字の表示方法、全体あるいは一部分の着色方法(以下、画像の着色方法と総称する)及びその着色物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から文字や映像を表現するのに、液晶を使用する試みがなされてきた。通常、液晶表示とは液晶にかける電場のオン、オフにより表示素子(液晶物質を平行な2枚の電極中に挟み込み、さらにそれを2枚の偏光板に挟んだもの)を通過する光の量を制御する表示形態を云い、パソコン、腕時計、液晶TVなどのディスプレーに用いられている。しかしながら、電気又は機械製品以外の用途に用いられる、液晶そのものの特徴を活かした、より簡便で、より安価で、よりアーティスティックな表示方法は、液晶がその潜在的な構造を有しているにもかかわらず、あまり例を見ない。
液晶の中でもコレステリック液晶フィルムは黒色の背景に於て美しい反射色を生み出すため、新規な表示素材及び着色素材として注目されつつある。コレステリック液晶の発色はコレステリック液晶分子のらせん凝集構造による選択反射によるものであり、反射光は円偏光である。これを利用してパターン化された映像、画像や文字を鮮明に表現したり、着色したりするためには、コレステリック液晶の反射色を制御し、かつそのらせん構造を固定化する必要がある。コレステリック液晶のらせん構造は、らせんピッチに対応した波長の光を選択的に反射する性質があるので、反射光の波長を制御するためには液晶のらせんのピッチをコントロールしなければならない。らせんピッチを制御するための公知技術は2つあり、1つの方法はこのらせんピッチの高い温度依存性(サーモトロピック液晶)を利用して、温度によりらせんピッチを制御しようとする方法であり、別の方法は溶媒コレステリック液晶(リオトロピック・コレステリック液晶)のらせんピッチを溶質の濃度変化などにより変化させる方法である。さらに、コレステリック液晶独特の美しい色を表示させるためにはできたコレステリックらせん構造を固定化させねばならず、従来技術としては、サーモトロピック液晶では急速に冷却し、ガラス化する方法及びリオトロピック液晶はその溶液を乾燥、固化する方法等がある。
然しながらコレステリック反射色を表示させるためには、特定のピッチのコレステリックらせん構造を作り出し、この構造を壊さない様に注意深く固定化する必要があるが、従来方法の組合せでは手間がかかり、しかも色合の微妙な制御も困難で、往々にして目的の色よりずれてしまう場合が多く、上記の工程を、一連の工程として迅速に、しかも簡便に行える新しい方法の出現が待たれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は上記の従来技術の欠点が解消され、コレステリック液晶のらせん構造を簡便にしかも効果的に固定化することにより、文字や映像の濃淡を効果的に表現できる、極めて鮮明性の高い画像の表示方法を提供することである。
上記の目的を達成するため、本発明者らはかかる画像の表示方法について鋭意研究を重ねた結果、コレステリック液晶形成性化合物にエネルギー線硬化性単量体を含有させ、コレステリック液晶の反射光の波長制御を行い、紫外線、可視光線あるいは電子線等のエネルギー線を照射し、含有する単量体を硬化させることでコレステリック液晶のらせん構造を固定化し、さらにその際に光の照射等のエネルギー線照射エネルギーを変えることによっても反射光の波長を制御することができ、それらにより画像のパターンをそのバックと対照的に表示できることを見出した。
本発明者らはかかる知見に基づき、高分子コレステリック液晶の画像の表示方法の提供を目的にしてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、
(1)ヒドロキシプロピルセルロースの脂肪族カルボン酸エステルに、多官能性単量体からなるエネルギー線硬化性化合物を含有させ、コレステリック液晶の反射光の波長制御を行い、同時にあるいは引き続いて、コレステリックらせん構造の固定化をエネルギー線照射によって行うことを特徴とするコレステリック液晶による着色方法、
(2)コレステリック液晶形成性化合物にエネルギー線硬化性化合物を含有させ、コレステリック液晶の反射光の波長の制御を照射するエネルギー線の放射照度を変えることで行い、同時にあるいは引き続いてコレステリックらせん構造の固定化をエネルギー線照射によって行う着色方法であって、色の濃淡を網点のサイズで表したモノクロ写真画像ポジフィルム又はネガフィルムをコレステリック液晶面に密着させエネルギー線照射により透明部をエネルギー線重合させた後、該ポジフィルム又はネガフィルムを剥離し、再びエネルギー線照射を行って画像の濃淡を表現することを特徴とするコレステリック液晶による着色方法、
(3)コレステリック液晶の反射光の波長の制御を行うに際し、前記照射するエネルギー線が紫外線であり、該紫外線の照射エネルギー線の放射照度を0.35〜18mW/cm2の範囲に変化させる第(2)項に記載のコレステリック液晶による着色方法、
(4)エネルギー線硬化性化合物が分子中に2個ないしそれ以上のエネルギー線硬化性基を有する単量体、オリゴマー及び/又はポリマーを含むものである第(2)項に記載のコレステリック液晶による着色方法、及び、
(5)第(2)、(3)、(4)項のいずれか1項に記載の方法により着色したコレステリック液晶による着色物品、
を提供するものである。
また、本発明の好適な実施態様として、
(6)照射するエネルギー線が紫外線、可視光線及び/又は電子線である第(2)項に記載のコレステリック液晶による着色方法、
(7)2種以上のコレステリック液晶の反射光波長の発現を2段階以上の一連のエネルギー線の照射エネルギーの変化によって行うことを特徴とする第(2)項に記載の画像の表示方法、及び、
(8)画像がパターニングされているポジフィルム又はネガフィルムをコレステリック液晶面に密着させ、エネルギー線照射によりポジフィルム又はネガフィルムの透明部をエネルギー線重合させた後、該ネガフィルムを剥離し、再びエネルギー線照射を行って画像を鮮明に表現する第(2)項に記載のコレステリック液晶による着色方法、
を挙げることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
次に発明の実施の形態を挙げて本発明をより詳しく説明する。
一般に、液晶にはネマチック液晶(分子が縦方向にのみ配列したもの)、スメクチック液晶(分子が縦横両方向に配列したもの)、及びコレステリック液晶(分子が面方向に配列して多数の薄層を成し、隣接薄層間の結晶の配列方向が少しづつずれているもの)の3種類が存在するが本発明で使用する液晶はコレステリック液晶である。コレステリック液晶では分子軸に垂直な方向にらせん周期構造を持ち、そのらせん構造のピッチが光と相互関係を構築している。すなわち、コレステリック液晶はらせん軸にそって光の屈折率が周期的に変動するため、らせんピッチに対応した波長の光を選択的に反射するのである。したがって、何らかの方法でらせんピッチを制御し、希望する紫外部、可視部ないし赤外部の光を反射するらせんピッチが得られたところで、そのらせん構造を固定化できれば、思い通りのコレステリックらせん反射色を作り出すことができる。
【0006】
本発明の方法は、コレステリック液晶形成性化合物と多官能性エネルギー線重合性化合物との組成物を紫外線等のエネルギー線照射により重合させることによりコレステリック液晶のらせんのピッチを固定化できる。又、多官能性化合物を重合させる際にエネルギー線の照射量に応じてコレステリック液晶のらせんのピッチが変化することも利用できるものである。
照射するエネルギー線としては紫外線、可視光線及び/又は電子線が使用され、それらの照射装置としては従来公知の紫外線、可視光線あるいは電子線の照射装置が使用される。照射の方法についても自由に選択され、紫外線ランプを用いる場合のような面照射、レーザー光を用いる場合のような点照射、さらに、連続発光による照射あるいはパルス発光による照射が使用される。
【0007】
本発明の方法の代表的な例としては、紫外線(以下、UVと称する)照射のみでらせんピッチの制御及びらせん構造の固定化を行う方法があり、複雑な工程なしに、簡単に美しいコレステリックらせん反射色が得られる。さらに、この手法を用いれば、型紙で覆うなどして、同一画面上で任意の場所毎に異なる量のUV照射を行うことができるので、美しく、鮮明な文字や画像のパターニングをいとも容易に行うことができる。
先ず、コレステリック液晶形成性化合物と光重合性化合物及び光重合開始剤とを混入させ、必要に応じてさらに溶剤を加えた溶液を調製し、支持体上に塗布あるいは流入する。溶剤を乾燥して後、その表面にもう1枚のガラス板をスペーサーを介して貼り付け重ね合わせる。この時、コレステリック液晶が基板に垂直な方向に配向し易いようにガラス板にずり応力を与える。この処理をずり配向処理と称する。次に、らせんが充分成長するよう室温で放置する。このようにして得られたコレステリック液晶は、室温で反射光が長波長の、例えば、鮮やかな黄緑色を呈する。文字や画像がパターニングされているポジフィルム又はネガフィルムを液晶組成物の表面に密着させ、この上から1回目のUV照射をすると露光した部分の色が変化し、文字や画像がはっきり読み取れるようになる。この後、ポジフィルム又はネガフィルムを剥離し、1回目と放射照度を変えて2回目のUV照射を行うと、コレステリック液晶のらせん構造が固定化され、文字や映像のパターンをそのバックと対照的に表示でき、しかも文字や画像の濃淡までも効果的に表示できる。このようにUVの放射照度を変えることにより、コレステリック液晶のらせんのピッチを、ひいては反射色をコントロールでき、コレステリック液晶独特の鮮やかで、メタリック調で、微妙な色彩のパターニングを表示できる。例えば80W/cmの高圧水銀灯を用いてUV照射し、光重合を行う際にUVランプの高さを調節し0.35〜18mW/cm2の範囲で放射照度を変え、光重合を行う。この結果、放射照度が低くなるにつれてUV照射前と比べ順次ブルーシフトする様子が観察され、0.35mW/cm2では明らかに黄緑色が短波長側の青色に変化する。18mW/cm2では黄緑色のまま変化せず固定化される。同様にして使用する液晶組成物の材料及びエネルギー放射照度を変えることで、例えば、オレンジ色のバックに緑色のパターンが、黄緑色のバックに青の文字が、又、藍色の画像がメタリック調の緑色のバックに浮かび上がって見えるようにすることができる。
【0008】
本発明の方法で用いられるコレステリック液晶形成性化合物としては従来公知のヒドロキシアルキルセルロースのアシル誘導体類、コレステリック液晶形成性ポリペプチド類、コレステリック液晶形成性の芳香族ポリエステル類、ポリカーボネート類、芳香族ポリエステルイミド類、芳香族ポリアミド類などの主鎖型高分子液晶形成性化合物又はポリ(メタ)アクリレート系、ポリマロネート系、ポリシロキサン系等の側鎖型高分子液晶形成性化合物が使用される。ヒドロキシアルキルセルロースのアシル誘導体に使用されるヒドロキシアルキルセルロースとしては例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチル化ヒドロキシプロピルセルロースのアシル誘導体等が用いられる。剛直なセルロース分子主鎖部分に対し側鎖にフレキシブルな分子鎖を導入することが必要であり、側鎖の長さ、フレキシビリティや剛直性等を制御するために種々のアシル誘導体が使用される。例えば、炭素数凡そ1〜30の脂肪族、脂環族、芳香族カルボン酸のエステル類が好ましい。例を挙げると、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチル酪酸、トリメチル酢酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の飽和カルボン酸のエステル類、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキシル酢酸、シクロヘキサンプロピオン酸、シクロヘキサン酪酸等の脂環族カルボン酸のエステル類、安息香酸、フェニル酢酸、3−フェニルプロピオン酸、5−フェニル吉草酸、4−フェニル酪酸等の芳香族カルボン酸のエステル類、及びアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸のエステル類が好ましい。また、エステル化の程度により性質、挙動が異なり、従って化合物の設計として完全エステル化物及び部分エステル化物が使用される。また、不飽和カルボン酸のエステル類は液晶化合物と併用されるエネルギー線硬化性化合物と共に硬化(重合)反応を起こすことができる。従って架橋を目的として飽和カルボン酸の一部、例えば0.1〜20%を不飽和カルボン酸に置き換えて使用することも有効な方法である。
【0009】
好ましいものとしては、ヒドロキシプロピルセルロースの酢酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロースのプロピオン酸エステル、ヒドロキシブチル化ヒドロキシプロピルセルロースの酢酸エステル、ヒドロキシブチル化ヒドロキシプロピルセルロースのプロピオン酸エステル、ヒドロキシブチルセルロースの酢酸エステル、ヒドロキシブチルセルロースのプロピオン酸エステル等、ヒドロキシプロピルセルロースのアクリル酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロースのメタクリル酸エステル、ヒドロキシブチル化ヒドロキシプロピルセルロースのアクリル酸エステル、ヒドロキシブチル化ヒドロキシプロピルセルロースのメタクリル酸エステル、ヒドロキシブチルセルロースのアクリル酸エステル、ヒドロキシブチルセルロースのメタクリル酸エステル等の完全エステル化物及び部分エステル化物、ヒドロキシプロピルセルロースの酢酸エステル−メタクリル酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロースのプロピオン酸エステル−メタクリル酸エステル、ヒドロキシブチル化ヒドロキシプロピルセルロースのプロピオン酸エステル−メタクリル酸エステル、ヒドロキシブチルセルロースのプロピオン酸エステル−メタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0010】
コレステリック液晶形成性ポリペプチド類の例としてはポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート−co−γ−アルキル−L−グルタメート)、ポリ(γ−ベンジル−D−グルタメート−co−γ−アルキル−D−グルタメート)(アルキル基としては例えば10〜24)であり、例えばポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート−co−γ−ドデシル−L−グルタメート)等が挙げられる。
コレステリック液晶形成性化合物としては従来公知の低分子量及び中分子量のコレステリック液晶形成性化合物も単独もしくは上記した高分子量のコレステリック液晶形成性化合物と併用して使用される。
【0011】
液晶形成性化合物に添加されるエネルギー線硬化性化合物としては特に制限は無く、従来公知のエネルギー線硬化性化合物が使用されるが、特に分子中に2個ないしそれ以上のエネルギー線硬化性基を有する単量体、オリゴマー及び/又はポリマーを含有することが好ましい。ラジカル系光重合性単量体として従来公知の、例えば、トリメチロールプパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂ポリ(メタ)アクリレート、アクリルポリオールポリ(メタ)アクリレート等の多官能性オリゴマー類が好ましい。一官能性の単量体としては、アルキル(C1〜C18)(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレート、アルコキシ(C1〜C10)アルキル(C2〜C4)(メタ)アクリレート、ポリアルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレート、アルコキシ(C1〜C10)ポリアルキレン(C2〜C4)グリコール(メタ)アクリレート等である。カチオン系光重合性単量体として従来公知の芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル系化合物が挙げられる。
【0012】
また、本発明で使用するエネルギー線硬化を起こすための重合開始剤等は照射するエネルギー線により適切な特性の公知の重合開始剤が必要に応じて使用される。例えば、光重合開始剤としては従来公知のものが使用される。ラジカル光重合開始剤として、α−ヒドロキシアセトフェノン系、α−アミノアセトフェノン系等のアセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、α−ジカルボニル系、α−アシルオキシムエステル系等公知のものが使用され、具体的にはα−アミノアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、イソプロピルチオキサントン、ベンゾフェノンとN−メチルジエタノールアミンとの併用等が挙げられる。カチオン系光重合開始剤としては従来公知のもの単独のほか、増感剤や過酸化物との併用も好ましい。例えば、アリルヨードニウム塩−α−ヒドロキシアセトフェノン系、トリアリルスルホニウム塩系、メタロセン化合物−パーオキサイド併用系、メタロセン化合物−チオキサントン併用系、メタロセン化合物−アントラセン併用系等である。
また、本発明で使用する液晶支持体としてはプラスチックフィルム、プラスチックシート、プラスチックプレートあるいはガラス板等が任意に使用されるが、特にポリエチレンテレフタレートやポリカーボネートのフィルムやシート、あるいはガラスプレートが好ましい。これらの液晶支持体としては無色透明のもの及び有彩色、黒色のものも使用される。
【0013】
コレステリック液晶形成性化合物とエネルギー線重合性化合物との組成物の調製に際して、配合量は特に限定されないが、例えば、コレステリック液晶形成性化合物40〜98重量部、エネルギー線重合性化合物60〜2重量部、重合開始剤0〜10重量部の配合比であり、好ましくは、コレステリック液晶形成性化合物55〜95重量部、エネルギー線重合性化合物45〜5重量部、重合開始剤0〜5重量部の配合比である。必要に応じて溶解助剤として両者の良溶媒を使用することができる。さらに必要に応じて従来公知の種々の添加剤を含むことができる。
本発明は、このようにらせん構造を固定化したコレステリック液晶による映像、画像、文字の表示方法及び全体あるいは一部分の着色方法及び着色された物品であり、様々な用途に使用することができる。映像、文字、画像としては図案、模様、柄、写真等が挙げられ、特に制限されない。
本発明の表示ないし着色された物品としては、情報記録材料、情報表示材料、偽造・贋造防止材料、ディスプレー材料、装飾画、装飾材料、装飾品、装身具、人造宝石、標識、広告、看板、建物のドアー、窓、ショーウインドウ、コーティング材料、塗料特に意匠性塗料、成形加工品等広く使用されるものである。
特に効果的な用途としては、偏光顕微鏡によって色が見られることから紙幣、有価証券、カード類、商品券、旅券、遊戯券等の偽造、贋造防止材料に使用できる。また、見る角度によって色が玉虫のように微妙に変化することを特長とする使いかたがあり、ディスプレー材料、装飾材料、広告、看板、自動車用メタリック塗料等の意匠性のカラー材料として使用できる。又、建物のドアー、窓、ショーウインドウ等に有機ガラス、合わせガラス、塗装ガラス等にして使用し、さらに外部と内部で明るさが異なるようにした場合には、暗い側から見るとガラスはほとんど無色透明で、明るい側が良く見えるのに、明るい側から見るとガラス面が液晶によって着色して見え、暗い側が見えなくなるようにすることができる。
【0014】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
10重量%ヒドロキシプロピルセルロースのテトラヒドロフラン溶液約110重量部に36.8重量部のピリジン(触媒)を溶解させた。この溶液に40重量部の無水プロピオン酸を滴下しつつ、室温で2時間反応させた。滴下終了後、40℃に昇温し5時間反応を続行した。この後、室温で20時間放置した反応溶液を大量の水中に投入し、析出物を分離した。この析出物についてテトラヒドロフランへの再溶解、再析出を5回繰り返し精製した後、50℃で真空乾燥し、13重量部のヒドロキシプロピルセルロースプロピオン酸エステルを得た。
上記で得られたヒドロキシプロピルセルロースプロピオン酸エステル70重量%、トリメチロールプロパントリアクリレート28.5重量%及びアセトフェノン系光重合開始剤[ダロキュアー1173、メルク社製]1.5重量%とからなる組成物に約1.5倍量のアセトンを加え良く混合し、均一に溶解した。この混合物をガラス基板に塗布し、約1日放置してアセトンを完全に蒸発させた。次に、その表面にもう1枚のガラス板を50〜100μmのスペーサーを介して貼り付け重ね合わせた。この時、コレステリック液晶が基板に垂直な方向に配向し易いようにガラス板を2〜5mm程度ずらし、ずり応力を与えた。この処理をずり配向処理と称する。次に、らせんが充分成長するよう室温で約5時間放置した。このようにして得られたコレステリック液晶は、室温で鮮やかな黄緑色を呈した。次に、80W/cmの高圧水銀灯を用いてUV照射し、光重合を行った。この時、UVランプの高さを調節し0.35〜18mW/cm2の範囲で放射照度を変え、光重合を行った。この結果、放射照度が低くなるにつれてUV照射前と比べ順次ブルーシフトする様子が観察され、0.35mW/cm2では、明らかに黄緑色から青色に変化した。
放射照度を種々変化させた時の反射波長のシフトの様子を図1に示す。このことより、従来コレステリック液晶の反射波長のコントロールを温度または溶質濃度の変化により行っていたが、UVの放射照度の変化によっても可能であることが分かった。また、図2では未照射及び放射照度0.35及び18mW/cm2の場合のUV照射膜の80℃まで昇温した際の波長の変化を示す。UV照射膜は昇温しても色は変化せず、添加した多官能性単量体の光重合反応によりコレステリック液晶のらせんが固定されていることが確認された。
【0015】
実施例2
10重量%ヒドロキシプロピルセルロースのアセトン溶液約130重量部に14.2重量部のピリジン及び1.47重量部のジメチルアミノピリジン(触媒)を溶解させた。この溶液に15.6重量部の無水プロピオン酸を滴下しつつ、室温で2時間反応させた。滴下終了後、50℃に昇温し5時間反応を続行した。この後、室温で20時間放置した反応溶液を大量のメタノール中に投入し、析出物を分離した。この析出物についてアセトンへの再溶解、再析出を5回繰り返し、精製した後、50℃で真空乾燥し約15重量部のヒドロキシプロピルセルロースプロピオン酸エステルを得た。
上記で得られたヒドロキシプロピルセルロースプロピオン酸エステル75重量%、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート23.5重量%及びアセトフェノン系光重合開始剤[ダロキュアー1173]1.5重量%とからなる組成物に約1.5倍量のアセトンを加え良く混合し、均一に溶解した。
この混合物をガラス基板に塗布し、約1日暗所に放置してアセトンを完全に蒸発させた。次に、その表面に50μmのPETフィルムを50〜100μmのスペーサーを介して貼り付けた。重ね合ったPETフィルムとガラス基板をずらしてずり配向処理を行い、粘ちょうなコレステリック液晶を均一に流展させた。この状態でらせんが充分成長するよう室温で暗所に約5時間放置した。このようにして得られたコレステリック液晶は、室温で鮮やかなオレンジ色を呈した。次に、文字がパターニングされているネガフィルムをPET面に真空密着させ、放射照度1mW/cm2でUV露光し、ネガフィルムの透明部分を重合させた。露光した部分は明らかにオレンジ色から緑色に変化し、はっきり文字が読み取れる。その後、ネガフィルムを剥離し、放射照度18mW/cm2でUV照射を行った。この時、UV照射前のオレンジ色はほとんど変化せず鮮やかなオレンジ色をバックに緑色の文字がきれいにパターニングされたコレステリック液晶の固定化膜を得ることができた。
【0016】
実施例3
NCA法より合成したポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)[重合度:150]1.0重量部当たり2.0重量部のp−トルエンスルホン酸を触媒として用い、適当量の1,2−ジクロロエタン中でポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)の残基モル数に対して約30倍量のドデシルアルコールを約60℃でエステル交換反応させ、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート−co−γ−ベンジル−L−グルタメート)を合成した。
次に、上記で得られたコレステリック液晶性ポリペプチド60重量%、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート38重量%及びアセトフェノン系光重合開始剤[ダロキュアー1173、メルク社製]2重量%とからなる組成物に約1.5倍量のアセトンを加え良く混合し、均一に溶解した。この混合物をガラス基板に塗布し、約1日暗所に放置してアセトンを完全に蒸発させた。次に、50μmPETフィルムを50〜100μmのスペーサーを介して貼り付けた。重ね合ったPETフィルムとガラス基板をずらしてずり配向処理を行い、粘ちょうなコレステリック液晶を均一に流展させた。この状態でらせんが充分成長するよう室温で暗所に約5時間放置した。このようにして得られたコレステリック液晶は、室温で鮮やかな黄緑色を呈した。次に、文字がパターニングされているネガフィルムをPET面に真空密着させ、放射照度0.35mW/cm2でUV露光し、ネガフィルムの透明部分を重合させた。露光した部分は明らかに黄緑色から青色に変化し、はっきり文字が読み取れる。その後、ネガフィルムを剥離し、放射照度18mW/cm2でUV照射を行った。この時、UV照射前の黄緑色はほとんど変化せず鮮やかな黄緑色をバックに青色の文字がきれいにパターニングされたコレステリック液晶の固定化膜を得ることができた。
【0017】
実施例4
実施例2で得られたヒドロキシプロピルセルロースプロピオン酸エステル67重量%、ペンタエリスリトールテトラアクリレート31.5重量%及びアセトフェノン系光重合開始剤[イルガキュアー907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製]1.5重量%とからなる組成物に約1.5倍量のアセトンを加え、良く混合し、均一に溶解した。この混合物を裏面が黒塗料皮膜で覆われた100μmPETフィルムに塗布し、約1日暗所に放置してアセトンを完全に蒸発させた。次に、50μmPETフィルムに50〜100μmのスペーサーを介して、PETフィルムと重ね合わせ、ずり配向処理を行い、粘ちょうなコレステリック液晶を均一に流展させた。この状態でらせんが充分成長するよう室温で暗所に約5時間放置した。このようにして得られたコレステリック液晶は、室温で鮮やかな緑色を呈した。次に、オフセット印刷で一般に使用される色の濃淡を網点のサイズで表したモノクロ写真画像ネガフィルムをPET面に真空密着させ放射照度0.5mW/cm2でUV露光し、ネガフィルムの網点を含む透明部分を重合させた。ネガフィルムを剥離すると露光した部分は明らかに緑色から藍色に変化し、しかも写真画像の陰影が認められた。その後、放射照度18mW/cm2でUV照射を行った。この時、UV照射前の緑色はほとんど変化せず、藍色の画像が鮮やかなメタリック調の緑色をバックに浮かび上がっていた。
顕微鏡観察の結果、ネガフィルムの網点のグラデーションが緑色と藍色の網点により忠実に再現され、画像の濃淡が表現されていることが確認された。
【0018】
【発明の効果】
上記本発明によれば、コレステリック液晶形成性化合物にエネルギー線硬化性化合物を含有させた組成物を基板に塗布し、ずり配向処理を行い、エネルギー線照射を行うことによってコレステリック液晶の反射光の波長を予定した光の波長に制御を行い、同時にあるいは引き続いて照射エネルギーの異なるエネルギー線照射を行うことによってコレステリック液晶のらせん構造の固定化することで、パターニングされた文字や映像をそのバックと対照的に表示し、しかも文字や映像の濃淡を効果的に表現できる、極めて鮮明性の高い映像・画像・文字の表示及び全体あるいは一部分の着色をもたらすことができ、例えば、情報記録材料、情報表示材料、偽造・贋造防止材料、ディスプレー材料、装飾材料、人造宝石、広告、看板、建物のドアー、窓、ショーウインドウ、コーティング材料、塗料特に意匠性塗料、成形加工品等に効果的に使用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、放射照度を変化させた時の反射波長のシフトを示すグラフである。
【図2】 図2は、加熱した際の反射波長の変化を示すグラフである。
Claims (5)
- ヒドロキシプロピルセルロースの脂肪族カルボン酸エステルに、多官能性単量体からなるエネルギー線硬化性化合物を含有させ、コレステリック液晶の反射光の波長制御を行い、同時にあるいは引き続いて、コレステリックらせん構造の固定化をエネルギー線照射によって行うことを特徴とするコレステリック液晶による着色方法。
- コレステリック液晶形成性化合物にエネルギー線硬化性化合物を含有させ、コレステリック液晶の反射光の波長の制御を照射するエネルギー線の放射照度を変えることで行い、同時にあるいは引き続いてコレステリックらせん構造の固定化をエネルギー線照射によって行う着色方法であって、色の濃淡を網点のサイズで表したモノクロ写真画像ポジフィルム又はネガフィルムをコレステリック液晶面に密着させエネルギー線照射により透明部をエネルギー線重合させた後、該ポジフィルム又はネガフィルムを剥離し、再びエネルギー線照射を行って画像の濃淡を表現することを特徴とするコレステリック液晶による着色方法。
- コレステリック液晶の反射光の波長の制御を行うに際し、前記照射するエネルギー線が紫外線であり、該紫外線の照射エネルギー線の放射照度を0.35〜18mW/cm2の範囲に変化させる請求項2に記載のコレステリック液晶による着色方法。
- エネルギー線硬化性化合物が分子中に2個ないしそれ以上のエネルギー線硬化性基を有する単量体、オリゴマー及び/又はポリマーを含むものである請求項2に記載のコレステリック液晶による着色方法。
- 請求項2、3、4のいずれか1項に記載の方法により着色したコレステリック液晶による着色物品。
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