JP3953126B2 - 保冷袋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水分或いは液体と固形化した冷却剤とを反応させ、簡易に冷却状態を得る事のできる保冷袋の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、保冷袋は魚介類や肉類、生鮮野菜等を貯蔵や搬送中に冷却するために使用されていた。また、スポーツ後の筋肉や血管を冷やしたり、打ち身、捻挫箇所の冷却に使用されている。
更に、病気で発熱した場合に頭部を冷やしたり、勉学の際に頭を冷やしたりするために使用されている。
これらの保冷袋は、袋の内部に収納された冷却剤と注入した水分を反応させ、化学反応による冷却効果を利用するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の保冷袋において、冷却剤と注入した水分との反応が一度に行われるために、急激な冷却効果、例えば、−2度C程度の冷却効果が得られるものの、冷却時間が2時間程度しか持続せず、宅配便等で鮮魚や肉類を搬送する為に必要とされる24時間程度、持続させる事ができなかった。特に、冷却剤が顆粒状やペレット状で収納されているために、水に対する溶解速度が大きく、急激に冷却反応が起っていた。
また、宅配便等で鮮魚や肉類を搬送する場合、搬送する品物は予め予冷却してある場合が殆どである。したがって、一旦冷却された品物を0度C近辺の温度で保持すれば良く、−2度Cまで急激に低下させる必要がなかった。
【0004】
本発明の目的は、上述した従来の欠点に鑑みなされたもので、0度C近辺の温度で長時間冷却する事のできる保冷袋を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る保冷袋は、一部に注水用の逆止弁を備えた袋本体と、該袋本体内に収納される所要大きさに固形化した硝安や尿素等の冷却剤と、該冷却剤の周囲を包装し水と反応してゲル化すると共にアルカリ性粉末を含有する吸水性・保水性シートとからなり、使用時に前記逆止弁から水を注入して前記吸水性・保水性シートをゲル化させることにより冷却剤と水との反応を徐々に行わせて冷却効果を長時間持続させる構成にしたことを特徴とするものである。
【0006】
前記水と反応してゲル化する吸水性・保水性シートは、アクリル酸ナトリウムまたはアクリル酸カルシウムで形成されていることを特徴とするものである。また、前記水と反応してゲル化する吸水性・保水性シートは、含有させたアルカリ性粉末によって、冷却剤と水分との反応で酸化した冷却剤の周囲のゲルをpH調整してアルカリ性にすることを特徴とするものである。
【0007】
【作用】
このように、本発明に係る保冷袋によれば、限られた量の冷却剤であっても、水分との反応を徐々にする事により、長期に渡り冷却効果を持続する事ができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に従って本発明の一実施例を説明する。図1は、本発明の保冷袋の全体正面図、図2は本発明の保冷袋の縦断面図、図3は同保冷袋に使用される逆止弁の断面図である。本発明の保冷袋10は、一部に注水用の逆止弁11を備えた袋本体12から構成されている。
【0009】
袋本体12は、合成樹脂製のフィルム、例えば、ポリエチレンフィルムを熱溶着して構成する。溶着ライン13は、本実施例の場合に袋本体12の上端及び下端に形成されている。尚、熱溶着の他に高周波溶着等を利用してもよい。
【0010】
逆止弁11は、図1,図3に示すようにポリエチレンフィルム等の両端をほぼ平行に熱シールして溶着ライン14によって両端の開放された封筒状体部11aを形成する。また、該封筒状体内に複数の逆流防止シール部15を形成する。逆流防止シール部15は、熱溶着によって形成され、液体の注入方向に沿って後退しており、中央部が開口している。したがって、この逆流防止シール部15の存在によって、液体は逆方向に流れ難くなる。更に、後述する薄い弁体部16のマクレ込みを防止する。
【0011】
逆止弁11は、前記封筒状体部11aの奥端に薄いフィルム部材で形成された弁体部16が封筒状に延設されている。前記逆流防止シール部15の一部は、弁体部16に跨って形成されている。弁体部16は、薄いフィルムで形成されているので、注入方向から液体が注がれた場合には、流路が閉じて逆止弁を構成する。また、逆止弁11を袋本体12に取り付ける場合には、図1に示すように幅Hの空隙を確保す為に、幅Hの紙等を挟んだ状態で熱溶着して溶着ライン13を形成する。
【0012】
冷却剤17は、硝安、尿素等の固形物が塊状に形成されており、吸水性・保水性シート18に包まれて収納されている。吸水性・保水性シート18は、例えばアクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシュウム等から構成されている。したがって、袋本体12内に水分が供給されると、図5に示すように吸水性・保水性シート18が供給された水分を吸ってゲル化し、冷却剤17の周囲がゲル19で充満される。更に、吸水性・保水性シート18は、アルカリ性粉末20を含有している。アルカリ性粉末20は、例えば、消石灰等を粉末にして吸水性・保水性シート18に含浸させてもよい。
【0013】
また、冷却剤である硝安、尿素は、水分と反応すると、酸性を呈し周囲のゲルを酸化する。ところが、ゲル19は、一般に酸化或いはアルカリ化されると吸水率が低下して、含有している水分を排出してしまう。この為に、冷却剤17と水分との反応が一度に促進されてしまう。そこで、吸水性・保水性シート18に含浸された、アルカリ性粉末20が酸化されたゲル19を中和して、pHを調整を行い、ゲル19の吸水性を回復する。
【0014】
次に、以上のように構成された保冷袋10の使用方法について説明する。先ず、図1,2に示すような冷却剤17及び吸水性・保水性シート18のみが収納された保冷袋10内に逆止弁11から水分を供給する。水分は、冷却剤17とほぼ同量補給する。供給は、逆止弁11の封筒状体部11aの先端を開き、蛇口等から注入する。水分が給送されると、図4に示すように膨れて袋本体12の内部圧力が上昇する。内部圧力が上昇すると、逆止弁11の働きにより、水が漏れる事がない。
【0015】
逆止弁11は、内圧を受けた場合に薄いフィルムで形成された弁体部16が閉じて、水分を漏らす事がない。更に、注入された水分が吸水性・保水性シート18により全てゲル化するので、漏れ難くなる。また、弁体部16は、逆流防止シール部15によって一部がシールされているので、捲れて外方へ押し出される虞もない。
【0016】
図5に示すように注入された水分は、吸水性・保水性シート18によってゲル化し、冷却剤17と徐々に反応する。また、冷却剤17は、一個の塊状に形成されているので、水分と接触する面が限られている。したがって、冷却反応が緩慢に行われ、急激な温度低下を来す事がなく、長期に渡り冷却作用が持続する。更に、冷却剤17と水分の反応により酸化され、吸水率の低下したゲル19は、含浸されたアルカリ性粉末20により中和されて、吸水率を回復し、長期に渡り吸熱反応が持続できる。本実施例では、24時間程度の冷却効果の持続が可能である。
【0017】
以上のように構成された保冷袋は、5度C以下、特に0度C近辺の温度が長時間維持できるので、宅配便に入れ、鮮魚や肉等を冷却し搬送する事ができる。つまり、鮮魚や肉等は、すでに0度近くまで冷却されており、この状態を保持できれば十分である。また、発熱した病人の頭部や打ち身、捻挫部位の冷却にも氷嚢の代用として使用する事ができる。
【0018】
また、袋本体12を不織布をラミネート加工して構成した場合、耐圧性が向上するので、水枕としても使用する事ができる。
尚、本発明は以上の実施例に限ることなく本発明の技術思想に基づいて種々の設計変更が可能である。
【0019】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る保冷袋によれば、一部に注水用の逆止弁を備えた袋本体と、該袋本体内に収納される所要大きさに固形化した硝安や尿素等の冷却剤と、該冷却剤の周囲を包装し水と反応してゲル化すると共にアルカリ性粉末を含有する吸水性・保水性シートとからなり、使用時に前記逆止弁から水を注入して前記吸水性・保水性シートをゲル化させることにより冷却剤と水との反応を徐々に行わせて冷却効果を長時間持続させる構成にしたので、保冷袋の使用時に所要量の水分を注入しても、冷却剤の周囲を覆っている吸水性・保水性シートがゲル化することで、水分と冷却剤との反応が徐々に行われるようになり、長時間に渡り保冷効果を保持することができる。したがって、鮮魚や肉類を新鮮な状態で宅配便で搬送することができる。また、本発明の保冷袋では、水分がゲル化して固形化した冷却剤と急激に反応しないので、発熱した病人が頭部等を冷やすために使用しても凍傷になる虞もなく、長時間に渡り使用することができる。
【0020】
前記吸水性・保水性シートは、アクリル酸ナトリウムまたは、アクリル酸カルシュウムから成り、水分と反応するとゲル化するので、注入された水分がゲル化して固形化した冷却剤との反応が緩慢に行われ、長時間に渡り冷却効果を持続する事ができる。
【0021】
前記吸水性・保水性シートは、アルカリ性粉末を含有し、冷却剤と水分との反応で酸化した冷却剤の周囲のゲルをpH調整するので、酸化によりゲルの保水量が減少するのを防止する事ができ、長時間に渡り保冷効果を持続する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の保冷袋の全体正面図である。
【図2】本発明の保冷袋の縦断面図である。
【図3】同保冷袋に使用される逆止弁の断面図である。
【図4】同保冷袋の内部に水を充満した状態を示す縦断面図である。
【図5】同保冷袋の内部にゲルが充満し、反応が進んだ状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10 保冷袋
11 逆止弁
11a 封筒状体部
12 袋本体
13 溶着ライン
14 溶着ライン
15 逆流防止シール部
16 弁体部
17 冷却剤
18 吸水性・保水性シート
19 ゲル
20 アルカリ性粉末
Claims (3)
- 一部に注水用の逆止弁を備えた袋本体と、該袋本体内に収納される所要大きさに固形化した硝安や尿素等の冷却剤と、該冷却剤の周囲を包装し水と反応してゲル化すると共にアルカリ性粉末を含有する吸水性・保水性シートとからなり、使用時に前記逆止弁から水を注入して前記吸水性・保水性シートをゲル化させることにより冷却剤と水との反応を徐々に行わせて冷却効果を長時間持続させる構成にしたことを特徴とする保冷袋。
- 前記水分と反応してゲル化する吸水性・保水性シートは、アクリル酸ナトリウムまたはアクリル酸カルシウムで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の保冷袋。
- 前記水分と反応してゲル化する吸水性・保水性シートは、含有させたアルカリ性粉末によって、冷却剤と水分との反応で酸化した冷却剤の周囲のゲルをpH調整してアルカリ性にすることを特徴とする請求項1または2に記載の保冷袋。
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