JP3951631B2 - 海上風況観測装置およびその敷設方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、海上における風況(風向、風速および風の加速度)を観測するための海上風況観測装置およびその敷設方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
風力発電は、クリ−ンなエネルギ−を得る手段として、近年太陽光発電とともに盛んに実施されるようになってきている。風力発電が実施されている場所は、今までもっぱら地上であり、離島や山間僻地等で行われている例が多い。
【0003】
風力発電を行う場合には、候補地の所定高度(例えば20m)の年間における平均風速、平均風向、最大瞬間風速および風速の標準偏差等を把握する必要があり、風向計や風速計による風況の観測を実施しなければならない。
【0004】
ところで、最近では、特開2000−272581号公報に開示されているように、海上で風力発電を行うことが提案されるようになってきている。この風力発電装置は、例えば20m以上の水深域で風力発電を行う場合に使用されるものであり、波力や風力によって揺動されないように工夫された浮体上に、風力発電機本体を配置したものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した特開2000−272581号公報に開示されている、海上風力発電装置により、風力発電を行う場合には、その海域における海面上高度20〜30m程度における風況を観測しなければならないが、そのような海上風況観測装置は、現在まで開発されていない。
【0006】
この発明は、海上風力発電を行う場合に必要となる海面上高度20〜30m程度の風況を観測することのできる海上風況観測装置およびその敷設方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る海上風況観測装置は、風向風速計と、該風向風速計を海面上所定の高さに保持する高さ保持用ポ−ルと、該高さ保持用ポ−ルの下端部に接続した浮力体と、該浮力体に接続した係留索と、該係留索に接続したシンカ−と、前記風向風速計の姿勢を水平に保つために、前記高さ保持用ポ−ルの傾斜にともなって風向風速計を取り付けた部材を回動させる姿勢保持用ロッドとから構成されるものである。
【0008】
また、前記高さ保持用ポ−ルおよび前記姿勢保持用ロッドが接続可能な複数の短尺材で構成されているものである。
【0009】
この発明に係る海上風況観測装置においては、浮力体に海面上所定の高度の風況を観測できる長さの高さ保持用ポ−ルを取り付け、その上端に風向風速計を取り付けているので、所定の高度での風況観測が可能である。
【0010】
また、浮力体は係留索およびシンカ−により係留できるようになっているので、長期間の風況観測が可能である。
【0011】
また、高さ保持用ポ−ルが風や波により傾いても、姿勢保持用ロッドが風向風速計を取り付けた部材を回動させ、風向風速計の姿勢が常に水平なるようにするので、正確な観測デ−タを得ることができる。
【0012】
また、保持用ポ−ルおよび姿勢保持用ロッドを、接続可能な複数の短尺材で構成することにより、保持用ポ−ルおよび姿勢保持用ロッドを容易に搬送することができる。
【0013】
また、この発明に係る海上風況観測装置の敷設方法は、次の(1)〜(5)の工程により敷設を行うものである。
(1)あらかじめ前記高さ保持用ポ−ルおよび前記姿勢保持用ロッドの各短尺材の一部が接続された前記浮力体を、前記係留索の一端部が接続されている状態で、クレ−ンにより船から海上に降ろす工程。
(2)固着した滑車を通した敷設用索によりあらかじめ浮力体に接続されているシンカ−を、船上からクレ−ンで吊って海上に振り出した後、シンカ−をクレ−ンから切り離し、ドラムに巻かれている前記敷設用索を巻き戻しながら、シンカ−を海底に降ろす工程。
(3)シンカ−が海底に沈んだことにより、ほぼ直立な状態にある浮力体に接続した高さ保持用ポ−ルおよび姿勢保持用ロッドの各短尺材に、それぞれ他の短尺材を継ぎ足す工程。
(4)敷設用索を巻き取りながら、浮力体を所定の位置まで沈めて、短尺材を順次継ぎ足す工程。
(5)高さ保持用ポ−ルおよび姿勢保持用ロッドの各最上段の短尺材を継ぎ足すとともに、風向風速計を取り付けた後、敷設用索を巻き戻して浮力体を上昇させ、風向風速計の位置を所定の高さとする工程。
【0014】
この発明に係る海上風況観測装置の敷設方法においては、敷設用索により浮力体を沈めて、高さ保持用ポ−ルおよび姿勢保持用ロッドを、それぞれの短尺材が継ぎ足し易い状態にすることができるので、海上風況観測装置を容易に敷設することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は本発明の海上風況観測装置の実施の形態の説明図であり、(a)は海上風況観測装置の正面図、(b)は(a)のA−A矢視図である。この海上風況観測装置は、風向および風速を計測する風向風速計1と、この風向風速計1を海面2上所定の高さに保持する高さ保持用ポ−ル3と、高さ保持用ポ−ル3の下端部に接続した浮力体4と、浮力体4に一端を接続した係留索5と、係留索5の他端部に接続したシンカ−6と、前記風向風速計1の姿勢を水平に保つために、前記高さ保持用ポ−ルの傾斜にともなって風向風速計1を取り付けた支持部材を回動させる姿勢保持用ロッド7とから構成されている。
【0016】
この、海上風況観測装置を詳述すると、高さ保持用ポ−ル3は長さが30m程度のものであり、4〜6m程度の長さのフランジ付きの短尺管3a〜3nを継ぎ足した構造となっている。また、姿勢保持用ロッド7も高さ保持用ポ−ル3と同程度の長さがあり、4〜6m程度の長さのフランジ付きの短尺ロッド7a〜7nを継ぎ足した構造となっている。
【0017】
高さ保持用ポ−ル3と姿勢保持用ロッド7とは、上方で上部接続部材8とピン9a、9bにより回動可能に接続され、下方では高さ保持用ポ−ル3に接続した浮力体4を介して、下部接続部材10とピン11a、11bにより回動可能に接続されている。そして、高さ保持用ポ−ル3と姿勢保持用ロッド7は、高さ保持用ポ−ル3の長さ方向に沿って複数設けた間隔材12により、常に平行が保たれるようになっている。この間隔材には、図1(b)に図1(a)のA−A断面を示すように、高さ保持用ポ−ル3側は、高さ保持用ポ−ル3に固着され、姿勢保持用ロッド7側は、姿勢保持用ロッド7が上下方向に移動可能なように、隙間が設けられている。
【0018】
このような構成になっているので、高さ保持用ポ−ル3が波や風の影響により傾いたとき、姿勢保持用ロッド7も高さ保持用ポ−ル3と同じ傾斜角度で傾むき、上部接続部材8はピン9a、9bの回りに回動して、常に水平状態に保持される。したがって、上部接続部材8上に設けられた風向風速計1も、姿勢が常に水平状態に保たれることになり、観測デ−タがバラつくことがないので、正確なデ−タを得ることができる。
【0019】
係留索5の長さは、シンカ−6が海底に着底したときに、高さ保持用ポ−ル3上の風向風速計1が、所定の高さに位置するような長さとなっている。この係留索5は、シンカ−6に設けられた接続用リング13に接続されているが、接続用リング13には係留索5とは別に回収用索14の一端部が接続され、他端部は海上に浮かべたブイ15に接続されて、ブイ15を引き上げることにより、シンカ−6が回収できるようになっている。また、係留索5とは別に、浮力体4の下方には、高さ保持用ポ−ル3と姿勢保持用ロッド7を敷設するための敷設用索16が接続されており、シンカ−6に設けられた滑車17を通して、海上に浮かべたブイ18に接続されている。なお、図1(a)において、符号19はデ−タ収録装置である。
【0020】
次に、上述した海上風況観測装置の敷設方法を、図2〜図7により説明する。
(1)図2に示すように、船(アンカ−ボ−ト)20の甲板20a上で、下部接続部材10および一部の短尺ロッド、短尺管が取り付けられている浮力体4を横倒しにし(海中で垂直となる辺を水平にする)、長さ4〜6m程度の最初の短尺ロッド7aおよび短尺管3aを継ぎ足す。なお、下部接続部材10には、係留索5とは別に敷設用索16が接続されている。
(2)図3に示すように、最初の短尺ロッド7aおよび短尺管3aが継ぎ足された状態の浮力体4をクレ−ン21で吊り、甲板20aから海面2に降ろす。
(3)図4に示すように、甲板20a上に置かれたシンカ−6を、クレ−ン21で海面2上に振り出す。そして、シンカ−6をクレ−ン21から切り離す。下部接続部材10に一端部が接続された敷設用索16は、あらかじめシンカ−6の滑車17を通して接続され、他端部はウインチ22に巻き取られており、シンカ−6の接続用リング13に一端部が接続されている回収用索14も、ウインチ22に巻き取られているので、切り離されたシンカ−6は、ウインチ22で回収用索14および敷設用索16を巻き戻しながら、海底に降ろす。
(4)図5に示すように、シンカ−6が海底23に着底すると、ウインチ22で敷設用索16を巻き取りながら、最初に継ぎ足した短尺ロッド7aおよび短尺管3aの頂部が、船上から次の短尺ロッドおよび短尺管が接続しやすい高さとなるまで、浮力体4を水没させていく。浮力体4が水没すると、係留索5に張力が作用して、最初に継ぎ足した短尺ロッド7aおよび短尺管3aはほぼ垂直になるので、クレ−ン21で次に継ぎ足す短尺ロッド7bおよび短尺管3bを接続する。なお、回収用索14はシンカ−6が回収しやすいように、端部にブイ15を接続して浮遊させる。
(5)同じように、ウインチ22で敷設用索16を巻き取りながら、短尺ロッドおよび短尺管を、順次継ぎ足していく。
(6)図6に示すように、風向風速計1が取り付けられている上部接続部材8が、ピン9a、9bを介して回動可能に接続されている最上段の短尺ロッド7nおよび短尺管3nの接続が終わったら、浮力体4が上昇して、係留索5のたるみがなくなるまで、敷設用索16を巻き戻す。そして、図7に示すように、風向風速計1が所定の風況観測高さに位置するようにする。なお、図示しないが、敷設用索16の端部にはブイ(図1のブイ18)を接続して浮遊させる。
(7)海上風況観測装置を回収するときには、敷設用索16に接続したブイ18を回収して、ウインチ22で敷設用索16を巻き取り、最上段の短尺ロッド7nおよび短尺管3nが取り外し可能な高さとなるように、浮力体4を水没させる。そして、ウインチ22で敷設用索16を巻き戻して、浮力体4を徐々に上昇させながら、上方から順次短尺ロッドおよび短尺管を取り外していく。最下段の短尺ロッド7aおよび短尺管3aを取り外したら、回収用索14を接続したブイ15を回収して、回収用索14をウインチ22で巻き取り、シンカ−6を海面まで引き上げた後、クレ−ン21でシンカ−6を船に回収する。最後に、浮力体4をクレ−ン21で船に回収する。
【0021】
なお、風向風速計1の高さを保持する高さ保持用ポ−ル3の短尺管の径は、同一ではなく上のものほど径を小さくしている。
【0022】
【発明の効果】
この発明により、海上で風力発電を行う場合に必要な風況の観測が、長期にわたり行え、かつ正確な風況デ−タを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の海上風況観測装置の実施の形態の説明図であり、(a)は海上風況観測装置の正面図、(b)は(a)のA−A矢視図である。
【図2】本発明の海上風況観測装置の敷設方法を示す図である。
【図3】本発明の海上風況観測装置の敷設方法を示す図である。
【図4】本発明の海上風況観測装置の敷設方法を示す図である。
【図5】本発明の海上風況観測装置の敷設方法を示す図である。
【図6】本発明の海上風況観測装置の敷設方法を示す図である。
【図7】本発明の海上風況観測装置の敷設方法を示す図である。
【符号の説明】
1 風向風速計
2 海面
3 高さ保持用ポ−ル
3a〜3n 短尺管
4 浮力体
5 係留索
6 シンカ−
7 姿勢保持用ロッド
7a〜7n 短尺ロッド
8 上部接続部材
9a、9b ピン
10 下部接続部材
11a、11b ピン
12 間隔材
13 接続用リング
14 回収用索
15 ブイ
16 敷設用索
17 滑車
18 ブイ
19 デ−タ収録装置
20 船
21 クレ−ン
22 ウインチ
23 海底
Claims (3)
- 風向風速計と、該風向風速計を海面上所定の高さに保持する高さ保持用ポ−ルと、該高さ保持用ポ−ルの下端部に接続した浮力体と、該浮力体に接続した係留索と、該係留索に接続したシンカ−と、前記風向風速計の姿勢を水平に保つために、前記高さ保持用ポ−ルの傾斜にともなって風向風速計を取り付けた部材を回動させる姿勢保持用ロッドとから構成されることを特徴とする海上風況観測装置。
- 前記高さ保持用ポ−ルおよび前記姿勢保持用ロッドが接続可能な複数の短尺材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の海上風況観測装置。
- 次の(1)〜(5)の工程により敷設を行うことを特徴とする請求項2に記載の海上風況観測装置の敷設方法。
(1)あらかじめ前記高さ保持用ポ−ルおよび前記姿勢保持用ロッドの各短尺材の一部が接続された前記浮力体を、前記係留索の一端部が接続されている状態で、クレ−ンにより船から海上に降ろす工程。
(2)固着した滑車を通した敷設用索によりあらかじめ浮力体に接続されているシンカ−を、船上からクレ−ンで吊って海上に振り出した後、シンカ−をクレ−ンから切り離し、ドラムに巻かれている前記敷設用索を巻き戻しながら、シンカ−を海底に降ろす工程。
(3)シンカ−が海底に沈んだことにより、ほぼ直立な状態にある浮力体に接続した高さ保持用ポ−ルおよび姿勢保持用ロッドの各短尺材に、それぞれ他の短尺材を継ぎ足す工程。
(4)敷設用索を巻き取りながら、浮力体を所定の位置まで沈めて、短尺材を順次継ぎ足す工程。
(5)高さ保持用ポ−ルおよび姿勢保持用ロッドの各最上段の短尺材を継ぎ足すとともに、風向風速計を取り付けた後、敷設用索を巻き戻して浮力体を上昇させ、風向風速計の位置を所定の高さとする工程。
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