JP2004359081A - 係留系の水中計測装置及びその回収方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】シンカーを含めて計測装置全体を水中から容易かつ安全に回収できる係留系の水中観測装置の構成とその容易かつ安全な回収方法の提供。
【解決手段】トップブイと計測機器と水中切離装置とシンカーとを結索具によって連結してあり、シンカー重量に対応する引っ張り強度を有するロープを収容して引き出し自在に固定してある容器を水中切離装置の側面に固着し、該ロープの上端は水中切離装置の上方の結索具に結続し、該ロープの下端は切離フックの下方の結索具に結続してあると共に、船上からの信号によって切離フックが開いて水中切離装置とシンカーの結続が解除され、トップブイが水面に浮上するようにしてある係留系の水中計測装置。浮上したトップブイを手がかりにして水中計測装置全体を回収する方法。ロープは、無蓋無底の円筒状容器内に巻装してあり、その両端面はそれぞれ十字状に張った針金で固定してあることが望ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】トップブイと計測機器と水中切離装置とシンカーとを結索具によって連結してあり、シンカー重量に対応する引っ張り強度を有するロープを収容して引き出し自在に固定してある容器を水中切離装置の側面に固着し、該ロープの上端は水中切離装置の上方の結索具に結続し、該ロープの下端は切離フックの下方の結索具に結続してあると共に、船上からの信号によって切離フックが開いて水中切離装置とシンカーの結続が解除され、トップブイが水面に浮上するようにしてある係留系の水中計測装置。浮上したトップブイを手がかりにして水中計測装置全体を回収する方法。ロープは、無蓋無底の円筒状容器内に巻装してあり、その両端面はそれぞれ十字状に張った針金で固定してあることが望ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、係留系の水中計測装置とその水中計測装置の回収方法に関する。詳しくは、流速計や水温計などの計測機器とその付属装置一式からなり、水中に係留した状態で計測をおこなう水中計測装置の新規な構造とその水中計測装置全体を水中から容易かつ安全に回収する新規な方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平10−25738号公報の3頁、段落番号0012
【0003】
流速計や水温計などの計測機器を水中に係留して計測作業をおこなう係留系の水中計測は、例えば、海洋生物資源の研究において、海流の動向や回遊魚の生態などを調査する上で、調査船観測と共にきわめて重要な手法である。
【0004】
通常、係留系の水中計測装置は、計測機器の下方に適宜の重量を有するシンカーをチェーンなどの結索具で結属し、計測機器の上方にはトップブイを結属して水中に設置する。特に、海洋計測に用いる係留系の水中計測装置は、荒天時の波浪やうねりによる計測機器の損傷を防ぐと共に、漁船の操業や船舶の航行に支障が生じないように、通常はトップブイが海深20m〜30m以下に留まるように調節する必要がある。このように計測機器を海中の深い位置に係留して計測をおこなうときは、シンカーの引き揚げが困難であるため、計測機器とシンカーの間に水中切離装置(以下、単に「切離装置」ともいう。)を入れて、計測作業が終了した後は、切離装置によって計測機器とシンカーを切り離してトップブイを海面に浮上させ、シンカーを海底に残して、計測機器だけを回収する方法を採ることが多い。
【0005】
係留系の計測をおこなうべき海域は、底曳網漁業などの好漁場が多いため、水中計測装置による計測作業を実施する場合には、まず第一に操業の妨げにならないようにしなければならない。そうすると、ズワイガニ保護礁設置海域など底曳網漁船の操業規制がある海域に設置することが考えられるが、このような海域はきわめて限定された海域でしかない。
上記のような操業規制海域以外で計測作業をおこなう場合には、計測期間が夏季の2〜3カ月に限定されてしまうものの、水中計測装置を底曳網漁業の休漁期に設置してその期間内に回収する方法を採ることができる。しかし、その場合でも、計測終了時にシンカーを海底にそのまま残しておくと、休漁期があけて操業が開始されたとき、漁網がシンカーにひっかかって破損するおそれがある。このため、漁業者からは、万一漁網がひっかかっても破損しないようなシンカーを使用するか、そうでなければ、シンカーを含めた水中計測装置全体の回収を強く求められている。
【0006】
このような事情から、漁網がひっかかっても破損しないシンカーとして「土のう」の利用が考えられているが、土のうを用いることは、土のうの準備や浮力計算、土のうの設置に伴う船上作業など実施に当たって多大な労力を必要とする。
【0007】
特許公報を調べると、特開平10−25738号公報には、設置並びに回収操作を容易にしたシンカーの埋設方法について開示されている。しかし、この公報に記載されているシンカーの構造は、天井部に開口部を形成した断面略逆U字形のものであり、その回収方法は、コンプレッサに接続されている送気管をシンカーの開口部に接続し、空気をシンカー内部に供給してシンカー内部の圧力を増大させることにより、水圧に抗してシンカーが引き抜かれる方向の作用が働くようにして、海底の所定位置からシンカーを容易に引き抜いて作業船上に回収する方法である。すなわち、この方法は、特殊な構造のシンカーを用いて特殊な方法によって、海底の土砂に埋もれているシンカーを容易に回収する方法である。本発明のように、シンカーを切り離すことなく、シンカーを含めた水中計測装置全体を引き上げる方法については何ら記載されておらず、他の特許公報を調べても、シンカーを切り離すことなく水中計測装置全体を回収する技術に関しては、何ら開示されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の状況に鑑み、本発明は、シンカーを含めて計測装置全体を容易かつ安全に回収できる係留系の水中計測装置と、シンカーを含めて計測装置全体を容易かつ安全に回収できる係留系の水中計測装置の回収方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1に記載する発明は、トップブイと計測機器と水中切離装置とシンカーとをチェーンなどの結索具によってこの順序に連結してあり、シンカーが着底したときトップブイと計測機器が水面下の所定の位置にあるように結索具の長さを調節してある係留系の水中計測装置において、シンカー重量に対応する引っ張り強度を有するロープを収容して引き出し自在に固定してある容器を水中切離装置の側面に固着し、該ロープの上端は水中切離装置の上方の結索具に結続し、該ロープの下端は水中切離装置の切離フックの下方の結索具に結続してあると共に、船上からの信号によって切離フックが開いて水中切離装置とシンカーとの結続が解除され、トップブイが水面に浮上するようにしてある係留系の水中計測装置である。
【0010】
また、本発明のうち請求項2に記載する発明は、ロープは、無蓋無底の円筒状容器内に巻装してあり、その上端面と下端面はそれぞれ十字状に張った針金で固定してある請求項1に記載の水中計測装置である。
【0011】
また、本発明のうち請求項3に記載する発明は、シンカーが着底したときのトップブイの水面からの所定の位置に対して、その3倍の長さのロープを装備してある請求項1又は2に記載の水中計測装置である。
【0012】
また、本発明のうち請求項4に記載する発明は、計測機器が流速計である請求項1から3のいずれかに記載の水中計測装置である。
【0013】
さらに、本発明のうち請求項5に記載する発明は、水中に係留してある請求項1から4のいずれかに記載の水中計測装置を回収するに当たって、船上から信号を発して水中切離装置を作動させ、切離フックを開いて水中切離装置とシンカーとの結続を解除し、トップブイを水面に浮上させ、トップブイに結続してある結索具を引き揚げて計測機器や水中切離装置と共にロープで繋がったシンカーを回収することを特徴とする係留系の水中計測装置を回収する方法である。
【0014】
【作用】
本発明は上記の構成からなるので、本発明の水中計測装置を回収するときは、作業船で水中計測装置の係留水域に近づいて、船上から信号を発すると切離装置が作動し、切離フックが開いてチェーンなどの結索具を外し、切離装置とシンカーの結続を解除する。そうすると、シンカーの重みが除かれるので、トップブイが水面に浮上すると共に、トップブイに結続してある結索具に引っ張られて計測機器と切離装置もほぼロープの長さ分上昇する。そこで、浮上したトップブイを手繰りよせて、それに繋がっている結索具を引き揚げることによって計測機器と切離装置を水中から引き揚げることができると共に、切離装置の上方の結索具にはロープの上端が結続してあり、ロープの下端はシンカーに繋がっている結索具に結続してあるので、続いてシンカーを容易に引き揚げることができる。すなわち、シンカーは、切離装置との結続を切られても、ロープによって切離装置の上方の結索具に繋がっているので、切離装置に続いてロープに繋がったシンカーを容易に引き揚げることができる。
以下、本発明を実施例に基づき図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
【0015】
【実施例1】
図1は、本発明の一実施例の水中計測装置が水中に係留されている状態を示す説明図であり、図2は、その水中計測装置の切離装置を中心とする部分(図1の点線の枠で囲んだ部分)の拡大説明図である。また、図3は、その切離装置の切離フックを開いてシンカーとの結続を解除し、トップブイを水面に浮上させた状態を示す説明図である。さらに、図4は、切離装置の側面に固着した容器内のロープの収納・固定状態を示す説明図である。
【0016】
まず、本実施例の水中計測装置の構成について説明する。
図1において、1は、トップブイ31と流速計2と予備ブイ32と切離装置4とシンカー5をそれぞれチェーン6(チェーン60・61・62の集合体をチェーン6と称する。)によってこの順序に連結した構成の水中計測装置である。水中計測装置1の流速計2は、羽根21と記録部22で構成されている。また、切離装置4は、胴体40にバッテリーを内蔵してあり、その下部に切離フック42を備えていて、切離装置4の上方のシャックル41と切離フック42にはそれぞれ予備ブイ32を介して流速計2に繋がるチェーン61とシンカー5に繋がるチェーン62のシャックルを結続してある。切離装置4は作業船上から発せられる信号によって作動し、切離フック42を図2の点線矢印の方向へ開いてチェーン62を切り離し、シンカー5との結続を解除できるようにしてある。
【0017】
シンカー5は、鉄道レールの廃材を数枚組み合わせて作ったもので空中重量は約400kgである。本実施例の水中計測装置1は、シンカー5が海底に着底したたき、トップブイ31が水面の約20m下方に位置するようにチェーン6の長さを調節してある。
【0018】
図2に示すように、切離装置4の胴体40には、無蓋無底の円筒状の塩化ビニール製の容器43(直径210mm ×長さ430mm )が固着されている。塩ビ容器43の固着方法は任意であり、例えば、図4に示すように、切離装置4の胴体40と塩ビ容器43に2本のワイヤー44・44を巻き付けて外れないように固定すればよい。塩ビ容器43の上端(図4では左端)にはスレンレス鋼製の針金8・8が十文字状に張ってあり、その中には直径9mmで長さ約60mのロープ7(引っ張り強度3.2ftのもの)を中央から容易に引き出せるような「とぐろ巻き」にして収納してある。なお、図4はロープ7の収納・固定状態の説明図であるから図示していないが、正確には、ロープ7の上端71は、図2に示すように、切離装置4の上方のチェーン61に結続してある。すなわち、ロープ7の上端71は切離装置4の上方のチェーン61に、ロープ7の下端72は切離装置4の下方のチェーン62にそれぞれ結続してある。また、塩ビ容器43内に収納してとぐろ巻きしてあるロープ7の下面は、上面と同様に、十文字状に張ったスレンレス鋼製の針金8・8で固定してある。したがって、ロープ7は、塩ビ容器43の内部に引き出し自在であるが確実に固定されているので、切離装置4と共に海中に沈めても浮きでることはない。
【0019】
本実施例の水中計測装置1は上記の構成であるから、これを特定の海域に係留して海洋計測をおこなうべく、シンカー5を海底に着底させると、トップブイ31と予備ブイ32の浮力によりチェーン6に引っ張られて流速計2が海面の方向に伸びて海中の所定の位置に係留されるが、トップブイ31が海面下約20mの位置に留まるように調節してあるので、水中計測装置1を所定の期間水中に係留して流速計2による計測を続けても、荒天時の波浪やうねりによって流速計が損傷を受けたり、漁船の操業や船舶の航行に支障を与えるおそれがない。
【0020】
次に、計測を終了した後、水中計測装置1を回収する方法について説明する。作業船で水中計測装置1を係留している海域に近づいて、船上から信号を発すると切離装置4が作動し、切離フック42が図2の点線矢印方向に開いてチェーン62を外し、切離装置4とシンカー5の結続を解除する。そうすると、シンカー5の重みが除かれるので、図3に示すように、トップブイ31が海面に浮上する。また、トップブイ31に結続してあるチェーン60・61に引っ張られて切離装置4もほぼロープの長さ分上昇する。
【0021】
浮上したトップブイ31を手繰りよせて、それに繋がっているチェーン6を引き揚げると流速計2と切離装置4を引き揚げることができると共に、切離装置4の上方のチェーン61にはロープ7の上端71が結続してあり、ロープ7の下端72はシンカー5に繋がっているチェーン62に結続してあるので、シンカー5を容易に引き揚げることができる。すなわち、図3に示すように、シンカー5は、切離フック42とチェーン62との結続が切られても、ロープ7によって切離装置4の上方のチェーン61に繋がっているので、切離装置4に続いてロープ7に繋がったシンカー5を容易に引き揚げることができる。
【0022】
このように、本実施例の海中に係留してある水中計測装置1の回収方法は、海面に浮上したトップブイ31を目じるしとして、トップブイ31に繋がったチェーン6を引き揚げるだけで、流速計2や切離装置4に続いてシンカー5まで容易にかつ安全に引き揚げることができる。
【0023】
本実施例では、トップブイ31が海面下約20mの位置にあるため、理論的にはロープ7は約20mの長さがあればトップブイ31が浮上できるように思える。しかし、潮に流されるとトップブイ31は海面下に潜ることになり、また、ロープ7が伸びる際に絡むことも予想される。これらの危険を考慮し、かつ種々試験した結果から、ロープ7の長さは、本実施例のように海面からトップブイ31までの距離の約3倍(すなわち、本実施例では約60m)にすることが好ましい。
【0024】
本発明において、ロープの種類は、市販のもので差し支えないが、シンカーを引き揚げるための引っ張り強度を十分に備え、かつ上記の実施例のように相当の長さのものを切離装置に固着した容器内に収容できるという2条件を充たすものを選択する必要がある。
【0025】
また、本発明において、ロープは、外に伸びて行く際に絡まないようにする必要がある。このため、ロープはとぐろ状に巻かれた外周からではなく、図4に示すように、中央(真ん中)から出て行くような形で巻き込んでおく必要がある。さらに、ロープが伸びる際とシンカーを回収する際に切離装置に固着した容器の両端に接して擦れることがあるので、容器の端部は面取りをしておくことが好ましい。
【0026】
上記の実施例では、切離装置の側面に固着させる容器として、塩化ビニール製で無蓋無底の円筒状のものを用いたが、本発明の計測装置に用いる容器はこの例に限るものではなく、ロープを巻装して引き出し自在に(絡まないように自由に出し入れができる状態で)固定できるものであれば、どのような容器を用いても差し支えない。
【0027】
また、上記の実施例では、切離装置の胴体にバッテリーを内蔵させたが、要は切離装置が船上からの信号によって作動し、切離フックを開くことができればよいので、必ずしもこの例のような構成にする必要はない。
また、上記の実施例では、切離装置4の上方に予備ブイ32を連結したが、予備ブイ32はトップブイ31が流失したときのためのものであるから、必ずしも常時備えておく必要はない。
【0028】
上記の実施例では、ロープ7の上下の端面をそれぞれ針金8・8で十文字に固定したが、針金による固定方法は、ロープが中央から引き出し自在の状態に固定できればよく、必ずしも正確な十文字でなくてもよいし、また、十文字の固定に限るものではなく、井の字状でもよく、さらに、必ずしも針金を用いなくてもよい。要は、とぐろ状に巻いたロープの端面が確実に固定され、かつロープの先端が中央から引き出しやすいように固定できればよい。
【0029】
また、本実施例では、海洋計測に用いる水中計測装置とその回収方法について説明したが、本発明は、海洋計測に限るものではなく、あらゆる水域の計測に応用できることはいうまでもない。
また、本実施例では、流速計を用いて計測をおこなう例について説明したが、本発明は、水温計や潮汐計など各種計測機器による計測装置に応用できることは勿論である。
【0030】
また、上記の実施例では、説明の便宜上、潮の流れを無視して、流速計が海中にまっすぐ立っている例について説明した。流れがなければ、水中に係留した流速計などの計測機器はまっすぐ上向きに立っていることになる。しかし、少しでも流れがあると、ブイや計測機器や結索具などは横向きの抵抗を受けるため、傾いてしまう。流れが強くなるほど係留されている計測機器の傾きは大きくなる。傾きが大きくなると、計測機器が係留予定深度よりも沈んでしまい、得られた計測データが使えなくなるおそれが生じる。したがって、できるだけ傾きを少なくすることが係留系の水中計測装置の設計上きわめて重要である。そのためには、計測機器の浮力を或る程度大きくする必要があり、その結果、浮力に見合うだけのシンカー重量が必要となる。そのために、深度200m程度の海域での計測では、重量が数百キロのシンカーを必要とすることになる。
【0031】
このように、数百キロのものを海底から海面まで引き揚げる作業は大きな危険を伴うため、船上での作業の危険性をできるだけ下げるためにも、従来、シンカーを回収することは考えられなかった。本発明がなされた結果、水中に沈んでいるトップブイをシンカーを切り離すことなく海面まで浮上させることが可能となり、シンカーと共に水中計測装置全体を回収することが可能となったのである。
以下、本発明の効果を試験例に基づいてさらに詳しく説明する。
【0032】
【試験例1】
(1)試験方法
実施例1の水中計測装置を、2001年には丹後沖の3海域(表1のA〜C)に、2002年には隠岐から丹後沖にかけての5海域(表2のD〜H)の合計8海域に係留し、所定の期間、潮の流速を測定した。計測終了後、実施例1の方法によって計測装置全体の引き揚げを試みた。水中計測装置を係留した位置(試験海域)のデータを表1と表2に示す。また、図5は、水中計測装置を係留した位置をA〜Hの符号で示した海域図である。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
(2)試験結果
試験の結果、8海域全てにおいて、水中計測装置全体を無事回収することに成功した。なお、3海域においては、ロープの途中に小さな玉状に絡んだ箇所が生じた。
【0036】
(3)考察
上記2回の試験によって、本発明に係る水中計測装置及びその回収方法を用いれば、水深が400mを越えても、シンカーを海底に残すことなく水中計測装置全体を回収できることが確認された。したがって、本発明に係る水中計測装置及びその回収方法はきわめて有用であることが確認された。
【0037】
【発明の効果】
以上、詳細に説明するとおり、本発明によれば、荒天時の波浪やうねりを気にすることなく、また、底曳網漁業などが盛んにおこなわれている漁場や船舶の航行が激しい海域においても、水中計測装置を係留させて計測を続けることができる。しかも、計測が終了した後、その水中計測装置をシンカーを含めて安全かつ容易に回収できる。
本発明によれば、シンカーを海底に残置しないので、シンカーに漁網が引っかかって破損するおそれがない。したがって、本発明の水中計測装置を用い、本発明の回収方法にしたがえば、あらゆる水域において水中計測を実施できるので、本発明は、海洋生物資源など水中資源の研究に大きく資することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の水中計測装置が水中に係留されている状態を示す説明図
【図2】その水中計測装置の切離装置を中心とする部分の拡大説明図
【図3】その切離装置の切離フックを開いてシンカーとの結続を解除し、トップブイを水面に浮上させた状態を示す説明図
【図4】切離装置の側面に固着した容器内のロープの収納・固定状態を示す説明図
【図5】試験例1において水中計測装置を係留した位置(試験海域)を示す海域図
【符号の説明】
1:水中計測装置、
2:流速計、 21:流速計の羽根、 22:流速計の記録部
31:トップブイ、 32:予備ブイ
4:切離装置、 40:切離装置の胴体、 41:シャックル、 42:切離フック
43:塩化ビニール製の容器
5:シンカー
6:チェーン、 60・61・62:チェーンの各部分
7:ロープ、 71:ロープの上端、 72:ロープの下端
8:ワイヤー
【発明の属する技術分野】
本発明は、係留系の水中計測装置とその水中計測装置の回収方法に関する。詳しくは、流速計や水温計などの計測機器とその付属装置一式からなり、水中に係留した状態で計測をおこなう水中計測装置の新規な構造とその水中計測装置全体を水中から容易かつ安全に回収する新規な方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平10−25738号公報の3頁、段落番号0012
【0003】
流速計や水温計などの計測機器を水中に係留して計測作業をおこなう係留系の水中計測は、例えば、海洋生物資源の研究において、海流の動向や回遊魚の生態などを調査する上で、調査船観測と共にきわめて重要な手法である。
【0004】
通常、係留系の水中計測装置は、計測機器の下方に適宜の重量を有するシンカーをチェーンなどの結索具で結属し、計測機器の上方にはトップブイを結属して水中に設置する。特に、海洋計測に用いる係留系の水中計測装置は、荒天時の波浪やうねりによる計測機器の損傷を防ぐと共に、漁船の操業や船舶の航行に支障が生じないように、通常はトップブイが海深20m〜30m以下に留まるように調節する必要がある。このように計測機器を海中の深い位置に係留して計測をおこなうときは、シンカーの引き揚げが困難であるため、計測機器とシンカーの間に水中切離装置(以下、単に「切離装置」ともいう。)を入れて、計測作業が終了した後は、切離装置によって計測機器とシンカーを切り離してトップブイを海面に浮上させ、シンカーを海底に残して、計測機器だけを回収する方法を採ることが多い。
【0005】
係留系の計測をおこなうべき海域は、底曳網漁業などの好漁場が多いため、水中計測装置による計測作業を実施する場合には、まず第一に操業の妨げにならないようにしなければならない。そうすると、ズワイガニ保護礁設置海域など底曳網漁船の操業規制がある海域に設置することが考えられるが、このような海域はきわめて限定された海域でしかない。
上記のような操業規制海域以外で計測作業をおこなう場合には、計測期間が夏季の2〜3カ月に限定されてしまうものの、水中計測装置を底曳網漁業の休漁期に設置してその期間内に回収する方法を採ることができる。しかし、その場合でも、計測終了時にシンカーを海底にそのまま残しておくと、休漁期があけて操業が開始されたとき、漁網がシンカーにひっかかって破損するおそれがある。このため、漁業者からは、万一漁網がひっかかっても破損しないようなシンカーを使用するか、そうでなければ、シンカーを含めた水中計測装置全体の回収を強く求められている。
【0006】
このような事情から、漁網がひっかかっても破損しないシンカーとして「土のう」の利用が考えられているが、土のうを用いることは、土のうの準備や浮力計算、土のうの設置に伴う船上作業など実施に当たって多大な労力を必要とする。
【0007】
特許公報を調べると、特開平10−25738号公報には、設置並びに回収操作を容易にしたシンカーの埋設方法について開示されている。しかし、この公報に記載されているシンカーの構造は、天井部に開口部を形成した断面略逆U字形のものであり、その回収方法は、コンプレッサに接続されている送気管をシンカーの開口部に接続し、空気をシンカー内部に供給してシンカー内部の圧力を増大させることにより、水圧に抗してシンカーが引き抜かれる方向の作用が働くようにして、海底の所定位置からシンカーを容易に引き抜いて作業船上に回収する方法である。すなわち、この方法は、特殊な構造のシンカーを用いて特殊な方法によって、海底の土砂に埋もれているシンカーを容易に回収する方法である。本発明のように、シンカーを切り離すことなく、シンカーを含めた水中計測装置全体を引き上げる方法については何ら記載されておらず、他の特許公報を調べても、シンカーを切り離すことなく水中計測装置全体を回収する技術に関しては、何ら開示されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の状況に鑑み、本発明は、シンカーを含めて計測装置全体を容易かつ安全に回収できる係留系の水中計測装置と、シンカーを含めて計測装置全体を容易かつ安全に回収できる係留系の水中計測装置の回収方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1に記載する発明は、トップブイと計測機器と水中切離装置とシンカーとをチェーンなどの結索具によってこの順序に連結してあり、シンカーが着底したときトップブイと計測機器が水面下の所定の位置にあるように結索具の長さを調節してある係留系の水中計測装置において、シンカー重量に対応する引っ張り強度を有するロープを収容して引き出し自在に固定してある容器を水中切離装置の側面に固着し、該ロープの上端は水中切離装置の上方の結索具に結続し、該ロープの下端は水中切離装置の切離フックの下方の結索具に結続してあると共に、船上からの信号によって切離フックが開いて水中切離装置とシンカーとの結続が解除され、トップブイが水面に浮上するようにしてある係留系の水中計測装置である。
【0010】
また、本発明のうち請求項2に記載する発明は、ロープは、無蓋無底の円筒状容器内に巻装してあり、その上端面と下端面はそれぞれ十字状に張った針金で固定してある請求項1に記載の水中計測装置である。
【0011】
また、本発明のうち請求項3に記載する発明は、シンカーが着底したときのトップブイの水面からの所定の位置に対して、その3倍の長さのロープを装備してある請求項1又は2に記載の水中計測装置である。
【0012】
また、本発明のうち請求項4に記載する発明は、計測機器が流速計である請求項1から3のいずれかに記載の水中計測装置である。
【0013】
さらに、本発明のうち請求項5に記載する発明は、水中に係留してある請求項1から4のいずれかに記載の水中計測装置を回収するに当たって、船上から信号を発して水中切離装置を作動させ、切離フックを開いて水中切離装置とシンカーとの結続を解除し、トップブイを水面に浮上させ、トップブイに結続してある結索具を引き揚げて計測機器や水中切離装置と共にロープで繋がったシンカーを回収することを特徴とする係留系の水中計測装置を回収する方法である。
【0014】
【作用】
本発明は上記の構成からなるので、本発明の水中計測装置を回収するときは、作業船で水中計測装置の係留水域に近づいて、船上から信号を発すると切離装置が作動し、切離フックが開いてチェーンなどの結索具を外し、切離装置とシンカーの結続を解除する。そうすると、シンカーの重みが除かれるので、トップブイが水面に浮上すると共に、トップブイに結続してある結索具に引っ張られて計測機器と切離装置もほぼロープの長さ分上昇する。そこで、浮上したトップブイを手繰りよせて、それに繋がっている結索具を引き揚げることによって計測機器と切離装置を水中から引き揚げることができると共に、切離装置の上方の結索具にはロープの上端が結続してあり、ロープの下端はシンカーに繋がっている結索具に結続してあるので、続いてシンカーを容易に引き揚げることができる。すなわち、シンカーは、切離装置との結続を切られても、ロープによって切離装置の上方の結索具に繋がっているので、切離装置に続いてロープに繋がったシンカーを容易に引き揚げることができる。
以下、本発明を実施例に基づき図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
【0015】
【実施例1】
図1は、本発明の一実施例の水中計測装置が水中に係留されている状態を示す説明図であり、図2は、その水中計測装置の切離装置を中心とする部分(図1の点線の枠で囲んだ部分)の拡大説明図である。また、図3は、その切離装置の切離フックを開いてシンカーとの結続を解除し、トップブイを水面に浮上させた状態を示す説明図である。さらに、図4は、切離装置の側面に固着した容器内のロープの収納・固定状態を示す説明図である。
【0016】
まず、本実施例の水中計測装置の構成について説明する。
図1において、1は、トップブイ31と流速計2と予備ブイ32と切離装置4とシンカー5をそれぞれチェーン6(チェーン60・61・62の集合体をチェーン6と称する。)によってこの順序に連結した構成の水中計測装置である。水中計測装置1の流速計2は、羽根21と記録部22で構成されている。また、切離装置4は、胴体40にバッテリーを内蔵してあり、その下部に切離フック42を備えていて、切離装置4の上方のシャックル41と切離フック42にはそれぞれ予備ブイ32を介して流速計2に繋がるチェーン61とシンカー5に繋がるチェーン62のシャックルを結続してある。切離装置4は作業船上から発せられる信号によって作動し、切離フック42を図2の点線矢印の方向へ開いてチェーン62を切り離し、シンカー5との結続を解除できるようにしてある。
【0017】
シンカー5は、鉄道レールの廃材を数枚組み合わせて作ったもので空中重量は約400kgである。本実施例の水中計測装置1は、シンカー5が海底に着底したたき、トップブイ31が水面の約20m下方に位置するようにチェーン6の長さを調節してある。
【0018】
図2に示すように、切離装置4の胴体40には、無蓋無底の円筒状の塩化ビニール製の容器43(直径210mm ×長さ430mm )が固着されている。塩ビ容器43の固着方法は任意であり、例えば、図4に示すように、切離装置4の胴体40と塩ビ容器43に2本のワイヤー44・44を巻き付けて外れないように固定すればよい。塩ビ容器43の上端(図4では左端)にはスレンレス鋼製の針金8・8が十文字状に張ってあり、その中には直径9mmで長さ約60mのロープ7(引っ張り強度3.2ftのもの)を中央から容易に引き出せるような「とぐろ巻き」にして収納してある。なお、図4はロープ7の収納・固定状態の説明図であるから図示していないが、正確には、ロープ7の上端71は、図2に示すように、切離装置4の上方のチェーン61に結続してある。すなわち、ロープ7の上端71は切離装置4の上方のチェーン61に、ロープ7の下端72は切離装置4の下方のチェーン62にそれぞれ結続してある。また、塩ビ容器43内に収納してとぐろ巻きしてあるロープ7の下面は、上面と同様に、十文字状に張ったスレンレス鋼製の針金8・8で固定してある。したがって、ロープ7は、塩ビ容器43の内部に引き出し自在であるが確実に固定されているので、切離装置4と共に海中に沈めても浮きでることはない。
【0019】
本実施例の水中計測装置1は上記の構成であるから、これを特定の海域に係留して海洋計測をおこなうべく、シンカー5を海底に着底させると、トップブイ31と予備ブイ32の浮力によりチェーン6に引っ張られて流速計2が海面の方向に伸びて海中の所定の位置に係留されるが、トップブイ31が海面下約20mの位置に留まるように調節してあるので、水中計測装置1を所定の期間水中に係留して流速計2による計測を続けても、荒天時の波浪やうねりによって流速計が損傷を受けたり、漁船の操業や船舶の航行に支障を与えるおそれがない。
【0020】
次に、計測を終了した後、水中計測装置1を回収する方法について説明する。作業船で水中計測装置1を係留している海域に近づいて、船上から信号を発すると切離装置4が作動し、切離フック42が図2の点線矢印方向に開いてチェーン62を外し、切離装置4とシンカー5の結続を解除する。そうすると、シンカー5の重みが除かれるので、図3に示すように、トップブイ31が海面に浮上する。また、トップブイ31に結続してあるチェーン60・61に引っ張られて切離装置4もほぼロープの長さ分上昇する。
【0021】
浮上したトップブイ31を手繰りよせて、それに繋がっているチェーン6を引き揚げると流速計2と切離装置4を引き揚げることができると共に、切離装置4の上方のチェーン61にはロープ7の上端71が結続してあり、ロープ7の下端72はシンカー5に繋がっているチェーン62に結続してあるので、シンカー5を容易に引き揚げることができる。すなわち、図3に示すように、シンカー5は、切離フック42とチェーン62との結続が切られても、ロープ7によって切離装置4の上方のチェーン61に繋がっているので、切離装置4に続いてロープ7に繋がったシンカー5を容易に引き揚げることができる。
【0022】
このように、本実施例の海中に係留してある水中計測装置1の回収方法は、海面に浮上したトップブイ31を目じるしとして、トップブイ31に繋がったチェーン6を引き揚げるだけで、流速計2や切離装置4に続いてシンカー5まで容易にかつ安全に引き揚げることができる。
【0023】
本実施例では、トップブイ31が海面下約20mの位置にあるため、理論的にはロープ7は約20mの長さがあればトップブイ31が浮上できるように思える。しかし、潮に流されるとトップブイ31は海面下に潜ることになり、また、ロープ7が伸びる際に絡むことも予想される。これらの危険を考慮し、かつ種々試験した結果から、ロープ7の長さは、本実施例のように海面からトップブイ31までの距離の約3倍(すなわち、本実施例では約60m)にすることが好ましい。
【0024】
本発明において、ロープの種類は、市販のもので差し支えないが、シンカーを引き揚げるための引っ張り強度を十分に備え、かつ上記の実施例のように相当の長さのものを切離装置に固着した容器内に収容できるという2条件を充たすものを選択する必要がある。
【0025】
また、本発明において、ロープは、外に伸びて行く際に絡まないようにする必要がある。このため、ロープはとぐろ状に巻かれた外周からではなく、図4に示すように、中央(真ん中)から出て行くような形で巻き込んでおく必要がある。さらに、ロープが伸びる際とシンカーを回収する際に切離装置に固着した容器の両端に接して擦れることがあるので、容器の端部は面取りをしておくことが好ましい。
【0026】
上記の実施例では、切離装置の側面に固着させる容器として、塩化ビニール製で無蓋無底の円筒状のものを用いたが、本発明の計測装置に用いる容器はこの例に限るものではなく、ロープを巻装して引き出し自在に(絡まないように自由に出し入れができる状態で)固定できるものであれば、どのような容器を用いても差し支えない。
【0027】
また、上記の実施例では、切離装置の胴体にバッテリーを内蔵させたが、要は切離装置が船上からの信号によって作動し、切離フックを開くことができればよいので、必ずしもこの例のような構成にする必要はない。
また、上記の実施例では、切離装置4の上方に予備ブイ32を連結したが、予備ブイ32はトップブイ31が流失したときのためのものであるから、必ずしも常時備えておく必要はない。
【0028】
上記の実施例では、ロープ7の上下の端面をそれぞれ針金8・8で十文字に固定したが、針金による固定方法は、ロープが中央から引き出し自在の状態に固定できればよく、必ずしも正確な十文字でなくてもよいし、また、十文字の固定に限るものではなく、井の字状でもよく、さらに、必ずしも針金を用いなくてもよい。要は、とぐろ状に巻いたロープの端面が確実に固定され、かつロープの先端が中央から引き出しやすいように固定できればよい。
【0029】
また、本実施例では、海洋計測に用いる水中計測装置とその回収方法について説明したが、本発明は、海洋計測に限るものではなく、あらゆる水域の計測に応用できることはいうまでもない。
また、本実施例では、流速計を用いて計測をおこなう例について説明したが、本発明は、水温計や潮汐計など各種計測機器による計測装置に応用できることは勿論である。
【0030】
また、上記の実施例では、説明の便宜上、潮の流れを無視して、流速計が海中にまっすぐ立っている例について説明した。流れがなければ、水中に係留した流速計などの計測機器はまっすぐ上向きに立っていることになる。しかし、少しでも流れがあると、ブイや計測機器や結索具などは横向きの抵抗を受けるため、傾いてしまう。流れが強くなるほど係留されている計測機器の傾きは大きくなる。傾きが大きくなると、計測機器が係留予定深度よりも沈んでしまい、得られた計測データが使えなくなるおそれが生じる。したがって、できるだけ傾きを少なくすることが係留系の水中計測装置の設計上きわめて重要である。そのためには、計測機器の浮力を或る程度大きくする必要があり、その結果、浮力に見合うだけのシンカー重量が必要となる。そのために、深度200m程度の海域での計測では、重量が数百キロのシンカーを必要とすることになる。
【0031】
このように、数百キロのものを海底から海面まで引き揚げる作業は大きな危険を伴うため、船上での作業の危険性をできるだけ下げるためにも、従来、シンカーを回収することは考えられなかった。本発明がなされた結果、水中に沈んでいるトップブイをシンカーを切り離すことなく海面まで浮上させることが可能となり、シンカーと共に水中計測装置全体を回収することが可能となったのである。
以下、本発明の効果を試験例に基づいてさらに詳しく説明する。
【0032】
【試験例1】
(1)試験方法
実施例1の水中計測装置を、2001年には丹後沖の3海域(表1のA〜C)に、2002年には隠岐から丹後沖にかけての5海域(表2のD〜H)の合計8海域に係留し、所定の期間、潮の流速を測定した。計測終了後、実施例1の方法によって計測装置全体の引き揚げを試みた。水中計測装置を係留した位置(試験海域)のデータを表1と表2に示す。また、図5は、水中計測装置を係留した位置をA〜Hの符号で示した海域図である。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
(2)試験結果
試験の結果、8海域全てにおいて、水中計測装置全体を無事回収することに成功した。なお、3海域においては、ロープの途中に小さな玉状に絡んだ箇所が生じた。
【0036】
(3)考察
上記2回の試験によって、本発明に係る水中計測装置及びその回収方法を用いれば、水深が400mを越えても、シンカーを海底に残すことなく水中計測装置全体を回収できることが確認された。したがって、本発明に係る水中計測装置及びその回収方法はきわめて有用であることが確認された。
【0037】
【発明の効果】
以上、詳細に説明するとおり、本発明によれば、荒天時の波浪やうねりを気にすることなく、また、底曳網漁業などが盛んにおこなわれている漁場や船舶の航行が激しい海域においても、水中計測装置を係留させて計測を続けることができる。しかも、計測が終了した後、その水中計測装置をシンカーを含めて安全かつ容易に回収できる。
本発明によれば、シンカーを海底に残置しないので、シンカーに漁網が引っかかって破損するおそれがない。したがって、本発明の水中計測装置を用い、本発明の回収方法にしたがえば、あらゆる水域において水中計測を実施できるので、本発明は、海洋生物資源など水中資源の研究に大きく資することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の水中計測装置が水中に係留されている状態を示す説明図
【図2】その水中計測装置の切離装置を中心とする部分の拡大説明図
【図3】その切離装置の切離フックを開いてシンカーとの結続を解除し、トップブイを水面に浮上させた状態を示す説明図
【図4】切離装置の側面に固着した容器内のロープの収納・固定状態を示す説明図
【図5】試験例1において水中計測装置を係留した位置(試験海域)を示す海域図
【符号の説明】
1:水中計測装置、
2:流速計、 21:流速計の羽根、 22:流速計の記録部
31:トップブイ、 32:予備ブイ
4:切離装置、 40:切離装置の胴体、 41:シャックル、 42:切離フック
43:塩化ビニール製の容器
5:シンカー
6:チェーン、 60・61・62:チェーンの各部分
7:ロープ、 71:ロープの上端、 72:ロープの下端
8:ワイヤー
Claims (5)
- トップブイと計測機器と水中切離装置とシンカーとをチェ−ンなどの結索具によってこの順序に連結してあり、シンカーが着底したときトップブイと計測機器が水面下の所定の位置にあるように結索具の長さを調節してある係留系の水中計測装置において、シンカー重量に対応する引っ張り強度を有するロープを収容して引き出し自在に固定してある容器を水中切離装置の側面に固着し、該ロープの上端は水中切離装置の上方の結索具に結続し、該ロープの下端は水中切離装置の切離フックの下方の結索具に結続してあると共に、船上からの信号によって切離フックが開いて水中切離装置とシンカーとの結続が解除され、トップブイが水面に浮上するようにしてある係留系の水中計測装置。
- ロープは、無蓋無底の円筒状容器内に巻装してあり、その上端面と下端面はそれぞれ十字状に張った針金で固定してある請求項1に記載の水中計測装置。
- シンカーが着底したときのトップブイの水面からの所定の位置に対して、その3倍の長さのロープを装備してある請求項1又は2に記載の水中計測装置。
- 計測機器が流速計である請求項1から3のいずれかに記載の水中観測装置。
- 水中に係留してある請求項1から4のいずれかに記載の水中計測装置を回収するに当たって、船上から信号を発して水中切離装置を作動させ、切離フックを開いて水中切離装置とシンカーとの結続を解除し、トップブイを水面に浮上させ、トップブイに結続してある結索具を引き揚げて計測機器や水中切離装置と共にロープで繋がったシンカーを回収することを特徴とする係留系の水中計測装置を回収する方法。
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-
2003
- 2003-06-04 JP JP2003159209A patent/JP2004359081A/ja active Pending
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