JP3951028B2 - 発酵槽及びそれを用いるビールの連続式製造法 - Google Patents

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本発明は、ビールの連続発酵方式に関するものであり、更に詳細には、ビール連続式製造用発酵槽及びそれを用いてビールを連続式に製造する方法に関するものである。
商業的にビールを製造するためには、製造されるビールの品質が良好であるばかりでなく、原料、エネルギー、労働力等の消費が少ないこと、環境への負荷が小さいこと、製造工程でのビールの損失が少ないこと、長期安定運転が可能なこと、等の要件が満たされねばならない。中でも、発酵工程において回収されるビール酵母の活性が常に高く維持されていることは、発酵状態の安定維持、それによる製品ビール品質の安定化、あるいは、酵母購入、新規培養の必要頻度低減、等のためにもっとも必要な要件の一つである。
現在、ビールの工業的製造は回分式発酵で行われている。現行の回分式発酵においては、麦汁成分の変化と酵母の世代的変化が併行して進行するため、発酵の終了時にほぼ同調して一定の生理生態的状態に達した酵母を毎回回収し、反復使用することが可能である。このような利点から、ビールの連続発酵方式が知られてはいるものの、現在、工業的には回分式発酵が行われている。
ビールの連続発酵方式としては、発酵槽の内部に攪拌機を装置し、槽内の酵母を含む麦汁(発酵液)を攪拌し、発酵槽内で増殖を続けながら発酵を行う方法(例えば、クーツ法:非特許文献1)、塔型発酵槽に多数の有孔板仕切りを設け、麦汁と酵母を底部から供給し、塔内を上昇させながら発酵を行う方法(例えば、APV塔式連続発酵法:非特許文献1)のほか、攪拌発酵槽と沈降分離槽の2種類のタンクを併設し、分離した酵母を循環使用するタイプの連続発酵法も提案されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、本発明のように、担体を収容した主発酵槽の上方から酵母を含む麦汁(前発酵液)を供給し、容易に脱着し得るよう(すなわち軽度に)酵母を担体に沈積して発酵を行い、間欠的に担体に振動を与えて酵母を担体から離脱せしめ、下方の担体に沈積せしめ、この操作をくり返しながら発酵を行い、槽内下方へ移動してきた低活性の酵母は槽の底部から系外に取り出しながら発酵を行うビールの連続発酵システムについては、従来全く知られておらず、新規である。
松山茂助著、「麦酒醸造学」、東洋経済新報社、昭和44(1969)年、第366〜372ページ 特許第3278177号公報
既知の連続発酵方式の内、クーツ法はすぐれたものであるが、この方式においては、槽内の酵母が攪拌された発酵槽内で増殖を続けながら発酵を行うため、発酵系全体の酵母活性としては安定していても、世代的組成(発酵槽内での滞留時間別組成)が均一ではなく、一部の、滞留時間が長いために老化した酵母の活性の低下、ならびに、それらの自己消化によるビール品質の低下を避けることができず、十分に満足できるものとはいい難い。また、APV法では、麦汁を塔の上方へと上昇せしめる方式であるため、下面発酵酵母を用いた発酵は実施不可能である。更に、攪拌発酵槽と沈降分離槽の2槽を併用する方法では、クーツ法の欠点を避けられない。本発明はこれらの欠点を解消する目的でなされたものである。
本発明は、これらの欠点を一挙に解決するためになされたものであって、発酵槽内での酵母の活性低下、ならびに、それによる品質の低下を生じさせないビールの連続発酵法の開発を目的としてなされたものである。
本発明者らは、上記目的達成のため、各方面から検討の結果、本発明では、連続発酵系の中で、長期滞留により活性を低下させた酵母を発酵槽内のより底部に位置せしめ、優先的に槽外へ取り出しうる状態の実現を目指した。また、この状態の酵母が新たに槽内に流入してくる麦汁中に含まれている活性の高い酵母と混ざり合わないために、発酵液の槽内での下降流の併せての実現を目指した。この目的達成のために本発明者らは、鋭意研究を行い、この目的を実現することのできる連続発酵システムの開発に遂に成功した。
本発明に係る連続発酵システムは、前発酵槽、前発酵液貯槽、及び主発酵槽からなり、これらを有機的に結合して、ビールの連続発酵による製造を骨子とするものである。以下、本発明を、本発明に係る連続発酵システムの1例として図示した図1を参照しながら詳細に説明する。
すなわち、前発酵槽は通気装置、攪拌装置を備え、温度制御された発酵槽である。前発酵液貯槽は、前発酵を終了した発酵液を一時的に貯留するための貯槽であり、温度制御装置、ならびに、攪拌装置を備えている。主発酵槽は温度制御装置を備えているほかに、内部には透水性のない担体が充填されており、これに対して間歇的に振動を与えられる構造となっている。これらの槽を通過して発酵された液(若ビール)は、既存の方法による熟成工程を経て製品ビールとなる。
前発酵は回分式であり、前発酵槽には所定濃度の酵母を接種した溶存酸素を含む麦汁を充填し、槽内で必要により追加通気を行い、その後所定の滞留時間をとることにより酵母に溶存酸素を吸収させ増殖を開始させた後、嫌気的条件下に前発酵液貯槽へ送り貯留する。主発酵槽へは、上記前発酵処理を済ませた発酵液が、前発酵液貯槽下部より連続的に、主発酵槽の上部より供給される。
主発酵槽内では嫌気的に保たれた状態で温度制御下に発酵が進行する。すなわち、槽内の酵母は、一部が液中に懸濁し、一部が槽内に置かれた担体の表面に沈積した状態で存在し、共に発酵に参画する。担体には、間歇的に振動が与えられ、沈積している酵母は担体から一時離脱する。離脱した酵母は、再び担体上に沈積する。このようにして酵母は漸次槽内下方に移動し、最後に発酵槽底部へ沈積する。槽内最低部からは随時、沈積した酵母を系外へ取り出す。このようにして槽内に存在する担体が、発酵中の酵母の槽底部への急速な沈降を防ぎ、担体層内に保って発酵に関与させると共に、酵母を順次槽底部へ集積させるために機能している。そして、主発酵槽最底部から随時酵母を抜き取ることにより、槽内に常に活性の高い酵母を保持し、かつ、酵母の自己消化による活性低下、ならびに、ビール品質の低下を防止可能なシステムが形成される。
前発酵液貯槽から主発酵槽への発酵液の流入は槽上部から行われるが、担体の間隙から浮上してくる炭酸ガスにより既存の発酵液とよく混和されるため、高比重のために槽下部へ発酵未了のまま沈降してしまうことはない。主発酵槽内には、このように酵母の分布を広めて発酵を促進するため、ならびに、酵母を下方に順次移動させるために、担体が、それらを間歇的に振動させることが可能な状態で、充填されている。担体は、新たに流入した高比重の前発酵終了液が発酵未了のまま槽底に沈降してしまうことを防ぎ、かつ、担体上に沈積している酵母を間歇的にそれより離脱させることのできるものであれば、各種の沈積材が適宜使用可能である。
沈積材としては、その上面のみならず、下面、側面あるいは内面の少なくともひとつに酵母を沈積することができる材料であれば、すべてのものが使用される。そして、本発明において沈積とは、酵母をいわゆる酵母固定化によって担体に強固に吸着ないし結合するのではなく、例えば沈積材の上面に酵母を沈積せしめた場合、通常の状態では酵母が容易に離脱することはないが、沈積材に振動を与えたりした場合、酵母が容易に離脱する程度に、軽度に結合ないし付着することを指すものである。
通常、酵母等微生物の濃度を高める目的て担体に酵母を固定化することが行われているが、酵母と担体とは離脱することなく、強固に結合せしめたり吸着せしめたりしている。しかしながら、本システムで用いる担体(沈積材)は、いわゆる酵母固定化のために用いられている担体とは異なり、酵母を担体内部に含有したり表面に吸着したりすることはなく、むしろ透水性のない、酵母を脱着(非固定)させやすいものである必要がある点で、いわゆる固定化とは全く異なるものであって、きわめて特徴的である。
沈積材としては、上記したように酵母を沈積しうるものが適宜使用されるが、例えば、粒状、棒状、筒状、板状、格子状、マット状ないし網状、可撓性の各沈積材、小型筒状体、成型樹脂性充填物等が、単用ないし2種以上併用される。
沈積材の具体例は、次のとおりである。
粒状沈積材:ガラスやプラスチックビーズ、木片や砂れき等、球形、半球形、楕円球形、直方体、立方体等各種形状、各種大きさの担体が1種又は2種以上使用可能であり、非限定的には、例えば直径0.5〜15mm、好ましくは1〜10mmのガラス球が使用可能である。本実施例においては直径6mmのガラス球を使用している。
棒状沈積材:各種の長さを有する角棒、丸棒その他各種形状の断面を有する棒状体ないしロッドが広く包含される。
筒状沈積材:棒状沈積材:棒状沈積材を中空にして筒状となした沈積材。
板状沈積材:平面状、波板状、カールないし屈曲させた平板状、カールないし屈曲させた波板状、その他変形した各種プレートが広範囲に含まれる
格子状沈積材:細長い担体を格子状に成形したもの、これを井げた状にしたもの等格子を基礎とした各種の沈積材。
マット状ないし網状沈積材材:マット状、粗目、布状〜網状を呈した織維、合成樹脂その他の材料からなる沈積材であって、これらの材料の板状体ないしはそれを間隔をあけて多数結合させたもの、該板状体を円筒ないし角筒に成形したもの、又は立体網状体その他が広く包含される。
可撓性沈積材:繊維状、布状、シート状、紐状、帯状、リボン状、薄片状等を呈する可撓性を有する材料からなる沈積材がすべて包含される。
小型筒状体:比較的小型の筒状体がすべて包含されるが、筒状体としては正確な筒状体のほか、例えば底を除去した乳酸菌飲料用の小型容器のように変形した筒状体も包含される。
また、蒸留塔用充填物等化学工業において用いられる充填物も各種使用することができ、上記した小型筒状体の1種であるところのラーシッヒリング、それに仕切りをつけたレシングリング、クラ、それを網状化したマクマホン充填物、及びステッドマン充填物その他を有利に利用することができる。
成型樹脂性充填物:乾燥塔、洗浄塔、冷却塔等化学工業用装置におけるプラスチック製の充填物が広く使用される。例えば、多数のリングを放射状に配置した車輪状円形体、同円形体においてリングの断面が円形、丸形、角形ないしだ円形その他の形状をしたもの、同じく同中心部に空間部ないし穿孔を設けたもの、同じく外周部に外輪円を設けたもの、あるいは、多数のスポークを放射状に配置した円形体、その外周部に外輪円を設けて車輪状にしたもの等が使用可能である。
これには市販品も適宜使用することができ、例えば花形充填物テラレット(TELLERETTE)(日鉄化工機(株)登録商標)が例示される。また、本充填物において、上記したようにリングを水平面上に放射状に配置した構造のほか、リングを立体的に放射状に配置した構造も使用可能である。
沈積材は、槽内に一部固定してもよいし、また、沈積材個々またはそれらを数個まとめたものを非固定的につまり遊離の状態で槽内に配置してもよいし、沈積材を数種ないし多数まとめてサポート内に収容し、このサポートを槽内に配置してもよい。その際、サポートとしては網状ないし有孔状の容器を使用し、処理の効率化をはかるために容器に1又はそれ以上の棚を設けて、そこに空間部を残して沈積材を配置したり及び/又は沈積材を配置しない棚を設けたりして、麦汁と酵母とが充分に接触するようにしてもよい。
更にまた、本発明においては一部固定的沈積材も使用することができる。この一部固定的沈積材としては、既に述べた可撓性沈積材が使用できるほか、繊維状、棒状、管状、紐状、帯状、リボン状及び/又は薄片状沈積材が広く使用することができる。
本発明を実施するには、まず、主発酵槽内に酵母を接種した麦汁を注入し発酵を開始させる。その発酵が終了した時点で前発酵槽(あるいは、既に前発酵処理を済ませた発酵液を貯留してある前発酵液貯槽)より、発酵液を主発酵槽へ、その上部より連続的に供給し、連続発酵を開始する。当該発酵液中の酵母は、主発酵槽内で凝集し沈降するが、沈積材上に存在して発酵に関与する。(なお、以下において、沈積材を単に担体ということもある。)。そして、その際、本システムでは、担体上に沈積している酵母のうち活性の弱ったものを選択的に槽外へ排出するために、上述のように、担体に振動を与える処理を間歇的に実施しつつ連続発酵を行う。担体に振動を与えたことにより槽底部へ、担体上から離脱して沈降した酵母はこれを槽外に排出し、生成した若ビールは、これを槽外に取り出し、熟成工程に送って熟成させ、ビールを連続的に製造するものである。なお、図中、Pはポンプを示す。
図2において、内径90mm、直胴部長さ250mmの主発酵槽の内部に球径6mmのガラス製担体を充填したステンレス製金網底を有する円筒(担体層の厚さ180mm)を収容した場合、この円筒を上下方向に例えば10〜50mm、好ましくは20〜30mm動かすことにより、担体を振動せしめることができる。振動は、沈積した酵母を離脱させるものであるから、上記にとらわれることなく、酵母を離脱せしめる程度に振動を与えればよく、上下方向に限らず水平方向(左右に)、あるいは回転させたりしてもよい。
振動処理を行う間隔、振動を与える時間も、適宜発酵状態を観察しながら行えばよく、通常0.2〜2日、好ましくは0.5〜1日に1回程度、1〜2回上下方向に振動させればよい。なお、これらの規定は、上記した主発酵槽内で上下方向に振動させる場合の1例であって、他の場合はこれに準じて行えばよい。
このようにして本発明において、前発酵槽で麦汁に添加された酵母は、前発酵槽で吸収した溶存酸素量に相当した程度に応じた増殖を行いながら発酵に参画し、その程度により若ビールの香味成分組成が調節される。そして、上記したように、主発酵槽下部から取り出された発酵液は既知の各種の方法による熟成を経て製品化される。
回分式発酵を連続式に転換することができれば、製品品質の変動幅の減少、それによるブレンドの必要性減少、また、バッチごとの洗浄殺菌の必要性解消等により、設備の簡略化、製品歩留まりの向上、排水処理設備への負荷低減、省力化、省エネルギー、等多くのメリットが生まれ、製造効率が大きく向上すると共に、環境への負荷も少なくすることができる。しかし、これまでその実現が阻まれてきた原因には、酵母活性の長期維持の困難性、製品品質の低下、回分式の麦汁製造と連続式の発酵との効率的連結の困難性、微生物汚染防止の困難性、などの問題があったからである。ここで発明したシステムは、これらの問題を克服し、連続発酵の諸メリットを享受できるシステムである。
すなわち、本システムでは、酵母活性の長期維持が、槽内に置いた担体への間歇的な振動付与による、活性の低下した酵母の優先的除去(表5)により達成可能(表4)であると言うことは、酵母の再活性化のための頻繁な連続発酵の中断による製造効率の低下を回避できることにつながっている。
製品品質の低下防止については、発酵中の香味成分の生成は酵母の増殖と密接な関係があり、酵母の増殖を制御することで同じ水準に制御可能であることが既に判明している。本システムでは、前発酵槽での酵母への酸素供給を制御することで酵母の増殖程度を制御して対処し、市販ビール並の香味成分組成の若ビール製造に成功している(表7)。また、ビールの香味品質は、発酵、ならびに、熟成中の酵母の死滅による自己消化の程度によっも左右される。本システムでは、発酵系内の酵母の活性を経常的に高く保ちうる(表4)ので、この原因に基づく香味品質の低下も防止できる。
また、回分式で行われている麦汁製造と連続式で行われる発酵との連結については、バッチ式で行う前発酵工程の後段に貯槽を置いて、そこから主発酵槽で行われる連続発酵に対して連続式に発酵液を供給する。前発酵液貯槽は前後の工程間の、液量の供給と支出の時間的相違を吸収して調和させる。それとともに、主発酵槽内の液の流れが下降流であることも、万一の前発酵液供給不能の事態に(上昇流である場合と相違して)過発酵液の発生を最小にすることができる。なおまた、微生物汚染を受けやすい麦汁を加熱殺菌したり、超低温に冷却したりして貯留した後に連続発酵に移行する既報の多くの方法に較べて、酵母を添加して発酵を開始させてから貯留する本システムはエネルギー消費が少なく、しかも、後述のように微生物汚染を受ける確率が低く、より効率的であると言うことができる。本システムでは前発酵工程が回分式であるので、複数の発酵槽を用意せねばならないが、要求される構造が単純であるので従来方式による発酵で使用してきた槽を転用できる可能性もある。
さらに、連続発酵一般に対して言われている微生物汚染防止の困難性に関しては、本システムでは、微生物汚染の起こりやすい好気的条件下にある前発酵槽は回分式であるため、従来方式と同じく、必要であれば容易に洗浄殺菌が可能である。しかも、他の多くの連続発酵法のごとく、製造完成後の最も微生物汚染の起こりやすい時期に麦汁を貯留することはせず、歴史的にその合理性が証明されてきている従来法と同じく、直ちに酵母を添加して発酵を開始させ、微生物汚染に対する抵抗性を持たせた状態で貯留しているので、微生物汚染に対する抵抗性を備えた発酵方式であると言える。なお、前発酵液貯槽は、内部に攪拌装置のみを備えた単純な構造の槽であるので、たとえ洗浄殺菌が必要な場合にも、容易にそれらを実施可能である。主発酵槽は、内部に担体、あるいは、構造物を内蔵しているが、これらは吸水性のない材質からなり、さらに、振動させることが可能であるので、槽内の自動洗浄が不可能ではない。また、そのような材質からなっていることは、洗浄などの際の、液の切り替えに際して、異種液混合の程度が少なく、切り替えを時間的に効率よく、しかも、廃棄せざるを得ぬ混合物の発生を抑えて行いうる利点をも提供している。更に、本システムにおいて、全ての槽からの液の取り出しを槽下部から実施しうるということは、連続発酵の終了、あるいは、中断時に槽内の残留液を無駄なく、また、付加的な仕組みなく取り出せるという点で、効率的、また、環境にやさしいということができる。
次に本発明の実施例を示す。
(1)本発明に係るシステムの有効性について、主発酵槽として図2ならびに下記表1に示すような逆円錐型(円錐角度70°)底部を有するガラス製円筒容器2種を用いて、以下により確認した。
Figure 0003951028
内部には球径6ミリのガラス製担体を、ステンレス製金網底を有する円筒に入れて設置した。当該円筒は、主発酵槽の蓋につるした形態で主発酵槽(直胴部分)内に設置し、当該蓋には、前発酵液注入管、ならびに、炭酸ガス排出管を挿入したシリコンゴム栓を取り付けた。担体への振動の付与は、当該蓋を動かすことにより、円筒と共に行った。なお、容器Bの場合には、若ビール取り出し口は逆円錐部上端に位置し、その上方、300ミリ、600ミリ、900ミリの各位置に試料採取口を設けた。比較として行った攪拌発酵は、容器Aを用い、円筒の代りに主発酵槽底部より上方向約60ミリの位置(若ビール取り出し管の約10ミリ上方)にプラスチック製の網底を設置し、その上でマグネティックスターラーの攪拌子を回転させることによって行った。なお、担体への振動は、1日に1回、上下方向1回(持ち上げて急激に落とす方法で)実施した。
標準的な発酵条件は以下のとおりとした。すなわち、前発酵は、主発酵槽底部より取り出した泥状酵母(あるいは、純粋培養酵母)を約1500万細胞/ミリリットルの濃度となるように11℃の麦汁(12%Brix、ホップ1.5g/L添加)に接種し、2時間おきに2回、溶存酸素濃度が飽和に達するまで振とう後、マグネティックスターラーを用いて攪拌しながら.11℃、炭酸ガス雰囲気下で保ち溶存酸素濃度を充分に低下させ、酵母の増殖を開始させた後、その容器のまま氷冷し、攪拌しながら貯留した。(実験室的には、各槽段階での変化を解析しやすくするために、このように前発酵液貯槽を冷却したが、実規模段階では貯槽をも発酵槽として働かせ、主発酵槽内で進行する発酵と併せて管理し進行させる)。貯槽中での酵母濃度は5000〜6000万細胞/ミリリットルとなるように調節した。
貯槽から主発酵槽への前発酵処理液の移送は、ステンレスチューブを通じて、部分的に挿入したファーメドチューブ部分をしごきポンプでしごくことにより一定速度で行った。当該前発酵処理液は移送中に室内で自動的に加温されると期待し、特に主発酵槽内温度(11℃に、室温により維持)への温度調節は行わなかった。主発酵槽流出液(若ビール)は氷冷下に貯留し、原則として1日以内に酵母を分離し、その後マイナス40℃で保存した試料を香味成分組成等の分析に供した。
若ビール中の酵母は遠心分離に先立って、若ビールを等量のアルカリ性メチレンブルー溶液と混和し、被染色細胞比率を計測した。主発酵槽底部に沈積した酵母は原則として毎日取り出し、全細胞数、アルカリ性メチレンブルーによる被染色細胞比率(4回計測し、最大値、最小値を削除して中間の2測定値を平均した)、新規麦汁へ接種(約1億細胞/ミリリットル濃度)し24時間、11℃で振とう培養後の発酵能(0.1億細胞含有10%Brix麦汁ミリリットル・1日あたりの低下糖度として表す。変動係数2.0%)、増殖能(1日あたりの細胞濃度増加率で表す。変動係数6.0%)、等を測定した。
当該連続発酵中、若ビールの外観発酵度は、麦汁の移送速度(希釈率)、前発酵処理方法、等により変動したが、約1ヶ月の連続運転中、希釈率1/3〜1/5日において、ほぼ80%以上を保った。
(2)主発酵槽内の発酵液の糖度分布は表2に示すごとく槽内でほぼ均一であり、発酵未了の比重の重い液が槽内下部へそのまま沈降してしまうことがないことを示していた。
Figure 0003951028
(3)ビール製造工程において酵母の活性を高く保ち、その自己消化を防ぐことは、良好なビール品質を保証する上で重要なことである。そこで、本システムによる主発酵槽内の酵母活性の高さを、他の発酵方法による場合と比較して実証するために、容器Aを用いた本シスチム系と併行して、容器A内に担体をおく代わりに容器内の発酵液を攪拌した発酵を行い、両発酵系より得られた酵母の諸活性と若ビール中の蛋白分解酵素(酵母の自己消化により細胞より漏出する)活性を測定し、比較した。結果は表3に示すごとく、本システム系において酵母の活性が攪拌発酵系におけるよりも高く維持されていることが各指標に顕れており、酵母の自己消化の程度もより低いことが蛋白分解酵素活性の測定結果に顕れていた。
Figure 0003951028
(4)また、容器Aを用いて1ケ月間の連続発酵を行った際に、主発酵槽から取り出された酵母の活性度は表4のごとくであった。この連続発酵に際して、担体への振動付与処理は1日に1回の頻度で行った。この結果から、本システムによる連続発酵中酵母の活性度は低下することなく高く維持されたことがわかる。
Figure 0003951028
(5)本システムでは、担体上に沈積している酵母のうち活性の弱ったものを選択的に槽外へ緋出するために、上述のように、担体に振動を与える処理を間歇的に実施しつつ連続発酵を行う。担体に振動を与えたことにより槽底部へ、担体上から離脱して沈降した酵母を下部のものから順次採取してその活性度を調査した。その結果を下記表5に示す。本結果は、容器Bを使用して行った連続発酵に際してのものである。酵母活性の最も低い画分が、容器Bの最低部に位置していたものではなく、その次の層に沈積していた画分であった理由は、本採取に先立つ採取に際して取り出されえなかった酵母が、担体への振動付与により離脱し沈降した酵母に先立って沈降していたためと考えられる。本実験の結果から、連続発酵中、担体への間歇的振動付与により、活性の弱った酵母を優先的、かつ、選択的に取り出しうる状態が形成されることがわかる。
Figure 0003951028
(6)担体への振動付与を数日間隔で実施しながら容器Aを用いて連続発酵を行い、振動付与前後で採取した酵母の、アルカリ性メチレンブルーによる被染色細胞比率ならびに増殖能を調べた結果は表6のごとくであった。増殖能の測定結果から、担体への振動付与処理の結果、酵母の活性が回復していることが読み取れる。(なお、発酵能には明確な相違は現れなかった。)
Figure 0003951028
(7)生成した若ビールの香味成分組成等の一例を表7に示す。遊離アミノ態窒素、イソブタノール(i−BuOH)、アミルアルコール(AmOH)、pHは酵母の増殖程度と相関の高い指標であり、これらの値が市販ビールのそれらとの間で一致していると言うことは、本システム系による連続発酵条件下での酵母の生理的状態(増殖程度)が現状での回分式発酵法条件下でのそれと一致していることを示している。発酵中における酵母による遊離アミノ酸の消費程度により変動する全ダイアセチルの濃度も、現行回分式の発酵条件下で観察される値とほぼ同じであった。プロパノール(PrOH)濃度には相違があるが、発酵条件のより厳密な調整により低下させうる可能性のある成分である。また、官能的に問題となる濃度よりもはるかに低いレベルでの変動であり、ビール品質に影響するものではない。なお、エステル類は熟成工程で主として生成するもの、全ダイアセチルは同工程で大きく濃度低下するものであるので、本システム系からの若ビールと市販ビールとの間で大きな濃度差がある点は問題ではない。
これらのことから、本システム系による連続発酵により生成する若ビールの香味成分組成を、市販ビールのそれらに一致させることは可能であり、当該発酵を経ることによる麦汁成分の変化は、従来法の下での発酵を経る場合と同様でありうることを示していた。
Figure 0003951028
(8)なお、主発酵槽内上部と下部に存在する発酵液の糖度の差は、表2に示したごとく殆どなかったが、香味成分組成的には表8に示すごとく、従来法による発酵条件下では発酵の後半期に進行するアルデヒド類の濃度低下とエステル類の濃度上昇が本システム中でも主発酵槽(容器A)内の上部から下部に向かって進行していることが示されていた。
Figure 0003951028
以上、「酵母活性を長期的に高く維持しうる連続発酵法の開発」という課題解決のための手段として設定した「発酵槽内でより活性を弱めた酵母を槽内のより底部に位置せしめ、優先的、かつ、選択的に槽外へ取り出しうる状態と、そのための、発酵液の槽内上方から下方への流れ状態の、連続発酵系内での実現」は、上記の諸実験結果により以下のように実証された。すなわち、主発酵槽内に担体を置くことにより、槽上部より添加された比重の重い前発酵処理液は未発酵のまま槽底部へ沈降してしまうことなく、槽内で良く発酵された(表2)。槽内の酵母の活性度は、槽内に設置した担体に間歇的に振動を与えつつ連続発酵を行うことにより、下部に存在するものほど低い状態とすることが可能(表5)であり、その処理により槽内から取り出す酵母の活性を回復させ(表6)、長期に高く維持しえた(表4)。本連続発酵システムより得られる酵母の活性は、攪拌発酵系より得られる酵母の活性よりも高く(表3)、かつ、じゅうぶんな活性を有していた(表4)。また、得られた若ビールの香味成分組成も従来の回分式で造られているビールの組成と類似しており優れていた(表7)。
また、上記のほか、前発酵液貯槽を実質的な発酵槽として使用し、担体(沈積材)を収納した主発酵槽を酵母沈澱槽及び/又は補助発酵槽兼酵母沈澱槽として用いてビールを連続的に発酵するシステムも、本発明は包含するものである。
ビール連続発酵システムの概念図である。 実施例で主発酵槽として使用した容器Aを示す。

Claims (9)

  1. 発酵槽内に、凝集して沈降する性質を有する酵母が沈積可能な沈積材であって、酵母を強固に吸着ないし結合して固定化するものではなく、酵母易脱着性を有し、且つ透水性のない沈積材を、当該酵母を含む発酵未了の液が容易に沈降せず、発酵により発生し上昇する炭酸ガスにより攪拌混合されるような状態で設置し、それを間歇的に動かすことにより、沈積している酵母にそれからの離脱、再沈積を行わせることのできる、当該沈積材を内蔵したこと、を特徴とするビール醸造用発酵槽。
  2. 沈積材が、粒状沈積材、棒状沈積材、筒状沈積材、板状沈積材、格子状沈積材、マット状ないし網状沈積材、可撓性沈積材、小型筒状体、成型樹脂性充填材から選ばれる少なくともひとつであること、を特徴とする請求項1に記載の発酵槽。
  3. 沈積材を数種ないし多数まとめてサポート内に収容し、このサポートを1又はそれ以上槽内に配置してなること、を特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の発酵槽。
  4. 沈積材を発酵槽又はサポートに固定又は一部固定するか、あるいは固定しないこと、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発酵槽。
  5. 沈積材が、ガラス又はプラスチック製の球形担体を底面及び/又は側面に空隙部を設けた容器からなるサポートに多数収容してなるものであること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発酵槽。
  6. 沈積材が、透水性がなく、酵母易脱着性を有するものであること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発酵槽。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の発酵槽を用い、活性の低下した酵母を選択的に排除することにより、槽内に高い酵母活性を維持しつつ発酵を行うこと、を特徴とするビールの連続発酵を行う方法。
  8. 沈積材を振動させることによって、活性の低下した酵母を選択的に排除すること、を特徴とする請求項7に記載の方法。
  9. 前発酵槽において酵母を接種した麦汁を通気攪拌し、得られた発酵液を発酵液貯槽に貯留しておき、前発酵処理を終了した発酵液を請求項7〜8のいずれか1項に記載の方法にて、発酵を行うこと、を特徴とするビールの連続発酵を行う方法。
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