以下、図面を参照して、この発明の実施の形態に係る記録方法及び記録装置を説明する。
この発明の実施の形態に係る記録方法では、加熱により記録媒体の記録層を非結晶状態から結晶状態に、或いは、結晶状態から非結晶状態に遷移させて情報が記録媒体記録層に記録される。ここで、記録媒体の記録層には、結晶状態或いは非結晶状態の領域が記録マークとして記録される。記録媒体に情報を記録する為に加熱する熱源として、通常、レーザビームが利用されるが、媒体上の微小スポットを加熱することができるものであればガスレーザ或いは電子ビーム等他の加熱手段が利用されても良い。この明細書にいては、加熱により記録媒体の記録層を非結晶状態から結晶状態に、或いは、結晶状態から非結晶状態に遷移させることができるレーザビーム及び電子ビーム等を総称してエネルギービームと称する。以下の実施形態の説明においては、このエネルギービームの内のレーザビームを一例として説明する。
熱源としてレーザビームが利用される場合には、このレーザビームのパワーがピークレベル、ピークレベルよりも低いパワーのバイアスレベル、バイアスレベルよりも低いパワーのボトムレベルの少なくとも3段階のレベルを有するレーザビームを発生するようにレーザユニットが制御される。情報記録媒体上に記録されるべき記録マークの長さに応じてレーザビーム等のパワーレベルが組み合わされ、この組み合わせに係るレーザビームのパルス列の数及び時間幅が増減されることによって情報が記録媒体に記録される。
ピークパワーレベルは、媒体の記録層の温度が融点を超えるように調整される。また、バイアスパワーレベルは、媒体の記録層の温度が融点よりも低く、且つ、結晶化開始温度よりも高く、望ましくは、融点と結晶化開始温度との中間程度となるように調整される。更に、ボトムパワーレベルは、媒体の記録層の温度が結晶化開始温度よりも充分に低くなるように調整される。いずれのパワーも1種類には限られず、媒体の層構成或いは熱的物性値、前後の記録マーク或いはスペースの長さ等に応じて数種類を用意しても良い。
記録媒体は、一例としてレーザビームが入射される入射側からカバー層/誘電体層/記録層/誘電体層/反射層の順序で積層されている構造を有している。しかし、記録層に記録マークが形成されるような構造を有する記録媒体であればその構造の如何にかかわらずこの発明の方法を適用することができ、一例として挙げるような構造に限定されるものではない。また、記録媒体として記録層を複数有するいわゆる多層記録構造を有する記録媒体であってこの発明を適用することができることは明らかである。また、記録媒体として既に説明したように現在種々の規格が提案されているが、その規格に拘束されることなく、この発明の方法を適用することができることは明らかである。
現行DVD或いは次世代DVDでは、トラックとして溝が形成されている所謂グルーブ構造が採用されている。しかし、グルーブの有無やグルーブ或いはランドへの記録等に拘わらずこの発明の方法を適用することができる。また、記録層の材料も、相変化材料としてGeSbTe等を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、DVD−Rのような追記型の媒体に使用される、シアニン系やフタロシアニン系、アゾ系等の色素系材料を用いても良く、レジスト等の材料を用いている原盤記録にこの発明を適用することも可能である。
実用的には、媒体は、円板形状に形成され、この中心軸の回りに回転させることでレーザビームとの相対的移動が実現されるが、レーザビームが記録媒体上を移動されても良い。また、レーザビームと媒体との間に反射板(所謂、チルトミラーと称せられている。)が配置され、反射板の角度が変化されてレーザビームによって記録媒体が走査されても良い。
記録媒体は、円板に限らず、円筒等であっても良い。記録媒体とレーザビームとの相対速度は、例えば、次世代DVDでは5m/秒前後と規定されているが、これに限るものではなく、例えば、2倍速記録の際には相対速度は2倍になっても良い。
熱源としてのエネルギー源には、波長400nmから800nm程度の半導体レーザを光源として用いるのが一般的であるが、既に述べたように媒体上の微小スポットを加熱することができるものであればガスレーザ或いは電子ビーム等他の加熱手段が用いられても良い。
図1には、この発明の記録方法が適用される記録媒体の一例としての光ディスク10の構造が示されている。図1に示すように、この光ディスク10は、それぞれ記録層17が設けられた一対の透明基板14を接着層20で貼り合わせた構造を有している。各基板14は、所定厚、例えば、0.6mm厚或いは0.1を有するポリカーボネートで構成することができ、接着層20は極薄の紫外線硬化性樹脂で構成することができる。これら一対の基板14を、記録層17が接着層20の面上で接触するようにして貼り合わすことにより、大容量光ディスク10が得られる。
光ディスク10には、中心孔22が設けられており、ディスク両面の中心孔22の周囲には、この光ディスク10を回転駆動時にクランプするためのクランプエリア24が設けられている。中心孔22には、後に光記録装置の一実施例として説明する図2に示されるようなディスクドライブ装置に光ディスク10が装填された際に、ディスクモータのスピンドルが挿入される。そして、光ディスク10は、そのクランプエリア24において、図示しないディスククランパにより、ディスク回転中クランプされる。
光ディスク10は、クランプエリア24の周囲に、ビデオデータ、オーディオデータその他の情報を記録することができる情報エリア25を有している。情報エリア25には、その外周にはリードアウトエリア26が設けられ、また、クランプエリア24に接する内周側には、リードインエリア27が設けられている。そして、リードアウトエリア26とリードインエリア27との間にデータ記録エリア28が定められている。
情報エリア25の記録層17には、記録トラックが例えばスパイラル状に連続して形成されている。その連続トラックは複数の物理セクタに分割され、これらのセクタには連続番号が付されている。このセクタを記録単位として、光ディスク10に種々なデータが記録される。データ記録エリア28は、実際のデータ記録領域であって、記録・再生情報として、映画等のビデオデータ(主映像データ)、字幕・メニュー等の副映像データおよび台詞・効果音等のオーディオデータが、同様なピット列(レーザ反射光に光学的な変化をもたらす物理的な形状あるいは相状態)として記録されている。
光ディスク10が片面1層で両面記録のRAMディスクの場合は、各記録層17は、2つの硫化亜鉛・酸化シリコン混合物(ZnS・SiO2←下付注意)で相変化記録材料層(例えば、Ge2Sb2Te5←下付注意)を挟み込んだ3重層により構成できる。
光ディスク10が片面1層で片面記録のRAMディスクの場合は、読み出し面19側の記録層17は、上記相変化記録材料層を含む3重層により構成できる。この場合、読み出し面19から見て反対側に配置される層17は情報記録層である必要はなく、単なるダミー層でよい。光ディスク10が片面読み取り型の2層構造のRAM/ROMディスクの場合は、2つの記録層17は、1つの相変化記録層と1つの半透明金属反射層で構成できる。
光ディスク10がライトワンスのDVD−Rである場合は、基板としてはポリカーボネートが用いられ、図示しない反射膜としては金、図示しない保護膜としては紫外線硬化樹脂を用いることができる。この場合、記録層17には有機色素が用いられる。この有機色素としては、シアニン、スクアリリウム、クロコニック、トリフェニルメンタン系色素、キサンテン、キノン系色素(ナフトキン、アントラキノン等)、金属錯体系色素(フタロシアン、ボルフィリン、ジチオール錯体等)その他が利用可能である。
読み書き用(またはライトワンス用)の記録層17を有する基板14には連続的にグルーブ溝が刻まれている。このグルーブ溝に、相変化記録層が設けられる。読み書き用DVDーRAMディスクの場合は、さらに、グルーブの他にランド部分の相変化記録層も情報記録に利用されても良い。
図2は、図1に示した光ディスクにこの発明の記録方法を適用する実施の一例に係る光ディスク装置のブロック図が示されている。
図2に示される光ディスク装置は、デジタル動画情報を可変記録レートで記録再生する装置(DVDビデオレコーダ)として構成されている。図2に示すDVDビデオレコーダの装置本体は、DVD−RAMまたはDVD−Rディスク10を回転駆動し、このディスク10に対してレーザビームで情報の読み書きを実行するディスクドライブ部32、録画側を構成するエンコーダ部50と、再生側を構成するデコーダ部60と、装置本体の動作を制御するマイクロコンピュータユニット30とで構成されている。エンコーダ部50は、AV入力部42から入力されたアナログオーディオ信号及びアナログビデオ信号をアナログ・デジタル変換すると共にAV入力部42から入力或いは他の外部入力部から入力された副映像信号をエンコードし、これらを所定のフォーマットに従ってフォーマットしてバッファメモリに記憶している。
エンコーダ部50でエンコードされたオーディオ、ビデオ及び副映像信号は、データプロセサ36に出力され、このデータプロセサ36において、所定フォーマットに編集される。また、データプロセサ36では、デジタル記録データがコード化データに変換され、このコード化されたデータがディスクドライブ部32のレーザ駆動回路(図示せず)に与えられる。コード化データは、後に述べるように記録タイミングの周期Tを基準としたNRZ信号(non-return to zero signal)或いはNRZI信号(non-return to zero inverted signal)に変換されている。
ディスクドライブ部32においては、コード化データに含まれるNRZ信号或いはNRZI信号がレーザを駆動する為のパルストレイン(パルス列)に変換されてレーザユニット(図示せず)に与えられる。記録時には、レーザユニットは、このパルストレインで駆動されて強度変調されたレーザビームを回転されている光ディスク10に向けて発生する。従って、光ディスク10には、記録パワーレベルを有するレーザビームがフォーカスされ、その記録層17に記録マークが形成されて情報が記録される。このディスクドライブ部32は、ディスク駆動モータ(図示せず)を備え、ディスク10を回転制御している。
マイクロコンピュータユニット30は、MPU(またはCPU)、制御プログラム等が書き込まれたROM、およびプログラム実行に必要なワークエリアを提供するRAMを含んでいる。マイクロコンピュータユニット30は、ディスクドライブ部32、データプロセッサ30及びエンコーダ部50を制御し、記録時にこれらを記録モードに設定して適切に動作させている。
再生時には、マイクロコンピュータユニット30は、ディスクドライブ部32、データプロセッサ30及びデコーダ部60を再生モードに設定し、ディスクドライブ部32のレーザユニットから再生用のレーザビームを光ディスクに向けて発生させる。このレーザビームは、光ディスク10の記録層で反射されてディスクドライブ部32において検出され、再生信号に変換される。再生信号は、データプロセッサ30においてNRZ信号或いはNRZI信号に変換され、このNRZ信号或いはNRZI信号がコード変換されて再生データに変換されてデコーダ部60に供給される。デコーダ部60において、セパレータ(図示せず)でビデオデータ、オーディオデータ及び副映像データに分離され、それぞれがデコードされてビデオ信号、オーディオ信号及び副映像信号としてAV出力部46に出力される。
AV出力部46においては、ビデオ信号に副映像信号が合成されてビデオ出力として出力され、オーディオオーディオ信号は、各オーディオチャネルに出力される。
情報の消去時には、マイクロコンピュータユニット30は、ディスクドライブ部32を消去モードに設定し、ディスクドライブ部32のレーザユニットから消去用のレーザビームを光ディスクに向けて発生させる。この消去用のレーザビームは、光ディスク10の記録層に照射されて記録層の記録マークが消去される。
媒体の一例としての図1に示した光ディスク10及びこの光ディスク10に情報を記録する図2に示す装置例に適用することができるこの発明の記録方法に係る種々の実施形態について次に説明する。
初めに、図3(a)〜図8を参照して、この発明の第1の実施形態に係る記録方法を説明する。
図3(a)、図4(a)、図5(a)、図6(a)及び図7(a)は、記録層上の記録マーク及び記録マーク間のスペースの長さを規定する5Tから9TまでのNRZI信号を示している。また、図3(b)、図4(b)、図5(b)、図6(b)及び図7(b)は、夫々図3(a)、図4(a)、図5(a)、図6(a)及び図7(a)に示されるNRZI信号に応じて定められる記録ストラテジー(最適なパルストレインの条件)に基づいて生成される5Tから9Tまでのパルストレインを夫々示している。9Tを超える長さのマークが記録される場合にも同様に以下に説明する記録ストラテジーが適用される。
NRZI信号は、既に述べたようにデータプロセッサ30において、記録すべきデータがコード化変換して生成され、このNRZI信号に応じてレーザユニット駆動回路でパルストレインが生成され。このパルストレインでレーザユニットが駆動され、パルストレインに従って変調されたレービームがレーザユニットから記録層に向けて照射される。従って、NRZI信号に相当する記録マークが記録層に形成される。以下の説明においては、NRZI信号について説明しているが、NRZI信号は、NRZ信号を反転して得られることから、以下の説明において、NRZI信号をNRZ信号に読み替えても良いことは明らかである。
NRZI信号がオンの際にNRZI信号の長さに応じた記録ストラテジーが適用され、5Tから9T或いは9T以上の記録マークが記録される。図8は、この記録ストラテジーにおける手順の一例をごく単純化して示している。記録装置の構成によっては、図8に示される手順に情報の遅延等の手順が追加され、或いは、手順の順番が異なる場合もあることを付記しておく。
図8に示すように記録モードが設定されてデータプロセッサ30でデータのコード変換が開始されると、ディスクドライブ32において、パルストレインの生成が開始される。(ステップS1)ステップS2に示すようにNRZI信号がオンとなるタイミングがディスクドライブ32の駆動回路においてモニタされ、NRZI信号がオンとなって立ち上がると、ステップS3に示すようにそのNRZI信号に対応する記録マークの長さ(nT)が判断される。この記録マークの長さ(nT)に従って、下記の実施形態に記述された基準に従って定められた記録ストラテジーからステップS4に示すようにある記録ストラテジーが選択される。次に、ステップS5に示すようにこの選択された記録ストラテジーが生成される。即ち、最適化されたパルストレインP1〜P8が生成されてレーザユニットに供給され、このパルストレインでレーザユニットが駆動され、レーザユニットからは、NRZI信号に対応する記録マークの長さ(nT)に応じた変調レーザが記録層17に照射され、記録層17に記録マークが形成される。このようにNRZI信号がオンとなる毎に同様の動作が繰り返され、記録層17には、変換コードが記録マークとして次々に記録される。
この実施形態に係る記録方法においては、選択の対象となる記録ストラテジーが下記基準で決定される。以下の説明において、記録タイミングの周期をT、記録マークの長さをnT、規定線速度に対する媒体の線速度の倍率をmとする。
マーク長係数nに対する線速度の倍率の比(n÷m)が5以上の長さの記録マークが記録される場合には、パルストレインは、少なくとも最初の2つのピークパルスP1及びP2の幅がこれ以降に続くピークパワーP3〜P8のパルス幅よりも大きく設定されている。この記録方法にあっては、パルストレインは、望ましくは、{(n−1)÷m}個のピークパルスP1〜P8を有する。図3(b)、図4(b)、図5(b)、図6(b)及び図7(b)は、倍率m=1におけるNRZI信号に対するパルストレインを示している。従って、図3(b)、図4(b)、図5(b)、図6(b)及び図7(b)に示されるパルストレインでは、夫々4、5、6、7及び8個のピークパルスを有し、第1及び第2のピークパルスP1、P2が他のピークパルスP3〜P8のパルス幅よりも大きく定められている。
最初の2つのピークパルスP1、P2の幅がそれ以降のピークパルスP3〜P8の幅より大きく設定される理由は、再生時における再生信号の立ち上がりを記録マークの長さにかかわらず急峻かつ揃ったものにするためであり、これはスポットサイズと記録マークの長さとの関係に由来している。例えば、次世代DVDの場合、媒体の記録層におけるレーザスポットの直径が3T〜4T程度に定められ、現行DVDにおいても2T〜3T程度に定められている。次世代DVDにあっては、記録マークに比べてレーザスポットサイズが非常に大きい。このため、再生信号の立ち上がり部分においては、記録マークの少なくとも先頭3Tの範囲の影響が大きくなっている。この範囲での再生信号の品位を保つためには、記録パルス列のピークパルスのうち、最初の少なくとも3T分に相当する範囲内のピークパルスP1、P2、即ち、2つ以上のピークパルスP1、P2に関してより安定した記録ができるようにしなければならない。また、記録マークの長さが、例えば、現行DVDでは3T以上、次世代DVDでは、2T以上と規定されているにもかかわらず、本実施形態に係る記録方法おいて、比(n÷m)が5以上の長さの記録マークを記録する場合と限定したのは、比(n÷m)が5未満の場合には、記録マークのほぼ全体がレーザスポット内に収まってしまうか、或いは、最初の2つのピークパルスP1、P2により記録される長さが3Tよりも長くなってしまうため、再生信号の立ち上がり部分の品位を向上させ、かつ、他に悪影響を生じない効果が期待しにくいことが理由である。
更に、図3(b)、図4(b)、図5(b)、図6(b)及び図7(b)に示すように最初の2つのピークパルスP1、P2の幅が0.6T、3つ目以降のピークパルスP3〜P8の幅が0.5Tに定められている。また、最初の2つのピークパルスP1、P2に続くボトムパルス幅が0.4Tに定められ、3つ目以降のピークパルスP3〜P8に続くボトムパルス幅が0.3Tに定められている。これらのパルス幅は、必ずしもこれらの値に限るものではなく、種々の条件に応じて適当な幅が設定されても良い。これらのパルス幅は、この発明の第4実施形態において一般的に既定される方法も含めて設定されることが望ましいが、この実施形態に係る記録方法は、基本的に以下のような考え方に基づいている。
まず、ピークパルス幅とそれに続くボトムパルス幅の合計が1T以下であることが望ましい。これは、記録マークの長さがTの整数倍で規定されており、ピークパルス幅とそれに続くボトムパルス幅の合計が1Tを越えた場合には、異なった長さの記録ストラテジー間でパルス数の規則性が取りにくくなるためである。例えば、図3(a)〜図7(b)では、記録マークの長さnTに対してピークパルス数が(n−1)に定められ、記録マークの長さnTに対してパルス数の規則性がある。しかし、ピークパルス幅とそれに続くボトムパルス幅の合計が1Tを越える場合には、この規則性が崩れたり、ピークパルス数を(n−1)とするために記録ストラテジーに部分的なゆがみが生じて再生信号の品位を低下させたりしてしまう虞恐れがある。ピークパルス幅とそれに続くボトムパルス幅の合計を1T以下とすることは、記録ストラテジーを微調整して最適化する際の手間を減らし開発期間を短縮するという実用上の効果もある。
次に、すべてのパルス幅は、小さい場合でも0.3T以上であることが望ましい。これは、レーザパワーを増減させてパルスを生成する際に、その立ち上がり或いは立ち下りには遅延が生じるため、ある一定時間幅以下のパルスに対応することが困難であり、パルス列に使用されるレーザパルスの時間幅もそれに応じた時間以上とする必要がある。例えば、一般的な半導体レーザの場合、立ち上がりや立ち下りに必要な時間は、短い場合でも1〜2n秒程度であり、そのため、記録タイミングの周期をT=15n秒とすると、パルスの時間幅は少なくとも0.2T以上、望ましくは0.3T以上としなければならない。
次に、ピークパルス幅は、小さい場合でも0.5T以上であることが望ましい。これは、レーザパワーが低下した場合でも筆先記録にならないようにするためである。なお、筆先記録とは、記録媒体上に形成されたビームスポットの温度分布における最高温度に相当する頂点位置の近傍で記録マークを形成することで、頂点位置の近傍では、頂点位置からの距離に対する温度の変化率(温度勾配)が小さいため、レーザパワー等のわずかな変化が記録マークの大きさを大きく変化させてしまうことになり、安定した記録が期待できないこととなる。
図9及び図10を参照してこのビームスポットの温度分布について説明する。図9及び図10は、記録媒体の記録層に形成されたビームスポットの温度分布を示している。図9及び図10において、横軸は、移動方向と直角の方向(媒体が光ディスクである場合における光ディスクの半径方向)におけるレーザスポットの中心からの距離を示し、縦軸は、温度を示している。図9及び図10において、各曲線は、バイアスパルスを充分な期間照射した後にピークパルスをある一定期間照射した場合におけるビームスポットの温度分布を示し、下からピークパルス幅0.0T、0.1T、0.2T、・・・、1.0Tを有するビームスポットの温度分布曲線を夫々示している。破線は、記録層の融点を示し、温度がこれを超えれば、超えた部分に記録マークが形成されることを意味している。図9及び図10は、夫々パワーの低下がない場合及びパワーが20%低下した場合をそれぞれ計算機による数値解析結果をもとに示している。
図9に示すように、パワーの低下がない場合には、ピークパルス幅が約0.13T以上であれば、記録マークの形成が可能である。パワーが20%低下した場合にも、記録マークを形成するためには、図10から明らかなようにピークパルス幅が少なくとも約0.33T以上必要なことが判る。更に、パワーマージンを充分に大きく取るためにパワーが20%低下しても筆先記録とならないようにするためには、20%低下時の融点を横切る位置での温度分布の傾斜ができるだけ大きい必要があり、そのためには、図11から明らかなようにピークパルスは、0.5T以上のパルス幅を有することが望ましい。
図3(b)、図4(b)、図5(b)、図6(b)及び図7(b)に示されるように、最初の2つのピークパルスP1、P2の幅とそれ以降のピークパルスP3〜P8の幅との差を0.1Tに定めているが、これは記録マークの先頭部分とそれ以降との大きさの差を有意にするためである。有意でありさえすれば、例えば、0.09T等でも構わないが、他の数値と同様に、煩雑となり開発期間の増加を招くことを避けるために切りの良い数値とすることが望ましい。また、0.2Tとすることも可能ではあるが、この場合は、最初の2つのピークパルス幅が0.7Tになることを意味し、ピークパルス幅とそれに続くボトムパルス幅の合計が1T以下であることが望ましいとする前記条件を満足しにくくなるばかりか、温度上昇が大きくなりすぎるため、消去領域が隣接トラックに到達して隣接トラックの記録マークを消去してしまうクロスイレーズという現象を引き起こしやすくなる。
次に、この実施形態の記録方法では、ピークパルス幅とそれに続くボトムパルス幅との関係を、0.6Tには、0.4Tとし、0.5Tには、0.3Tとしている。これは、ボトムパルス幅をピークパルス幅に合わせて適切に選択することにより、ボトムパルス終了後の温度をピークパルス開始時の温度に短時間で復帰させ、レーザパワー及びパルス幅等の一時的な変動に対する耐性を強くする効果がある。例えば、図10及び図11には、ピークパルス幅が0.6Tの場合にボトムパルス幅を0.3T及び0.4Tとした場合におけるレーザスポットの中心温度の相違が示されている。図11及び図12においては、横軸が時刻を示し、縦軸が温度を示している。図11及び図12に示されるようにボトムパルス幅0.3Tに比べてボトムパルス幅0.4Tの方が温度の復帰に必要な時間が短いことがわかる。
最初の2つのピークパルスは、同一のパルス幅を有することが望ましい。また、最初の2つのピークパルス幅及びこのピークパルスに続くボトムパルス幅及びバイアスパルス幅は、記録マークの長さにかかわらず同一であることが好ましい。3つ目以降のピークパルス幅等に関しても同様にボトムパルス幅及びバイアスパルス幅は、記録マークの長さにかかわらず同一であることが好ましい。これは、煩雑さを避けるためと、異なる長さの記録マーク間での統一性を高めるためである。ただしいずれも、記録マークの長さ及び記録マークの前後のスペースやマークの長さ等に応じた微調整(いわゆる記録補償)を行う場合等にはこの限りではない。
以上のような記録方法によれば、記録マークの先頭端から3T分以上の範囲に亘って、温度の立ち上がりを急峻かつ安定にすることができる。従って、記録マークの先頭部分の形状を均一にすることができ、その結果、再生時に再生信号の立ち上がりの均一性を増すことができる。また、パワーマージンの増加を達成でき、例えば、記録層に到達する見かけ上のレーザパワーが低下した場合にも再生信号の立ち上がりの均一性を比較的良く保つことが可能となる。
さらに、図3(b)〜図7(b)における2つ目のピークパルスP3〜P8の以降に続くパルスでは、3つ目、4つ目と進むにしたがって再生信号の急峻で均一な立ち上がりよりもむしろ温度の安定性の方が重要となる傾向が強くなる。これら温度の安定性の方が重要なピークパルスP3〜P8では、ピークパルスP3〜P8の直前にバイアスパルスBP3〜BP8を設けることにより、ピークパルスP3〜P8及びバイアスパルスBP3〜BP8によって上下した温度をいったん中間の温度に安定させることができ、それぞれのピークパルスP3〜P8の開始時における温度を毎回同等なレベルとすることができる。従って、これらの部分での温度の安定性をさらに高めることができ、レーザパワー及び媒体の回転数、ちり並びに傷、或いは媒体の層構造及び材料物性値の不揃い等の変動要因を吸収することができる。
この実施形態に係る記録方法に従って、nTマーク及びこのnTマークに続いてnTスペースが続く記録マークが繰り返し記録され、この記録マークから再生される再生信号の強度の一例が図13及び図14に示されている。図13は、記録時に規定通りのレーザパワーが記録膜に照射されて記録マークが形成された場合における再生信号強度の数値解析の結果を示し、図14は、記録時にレーザパワーが規定値の80%に低下して記録マークが形成された場合における再生信号強度の数値解析の結果を示している。
比較例として再生信号強度の数値解析結果が図15及び図16に示されている。図15及び図16に示される解析結果は、図17(a)〜図21(b)に示されるNRZI信号及びこのNRZIに対応して生成されたパルストレインで記録マークが記録される記録方法に基づいている。
図17(a)、図18(a)、図19(a)、図20(a)及び図21(a)は、図3(a)、図4(a)、図5(a)、図6(a)及び図7(a)と同様に記録層上の記録マーク及び記録マーク間のスペースの長さを規定する5Tから9TまでのNRZI信号を示している。図17(b)、図18(b)、図19(b)、図20(b)及び図21(b)は、最初のピークパルスP1のみが0.6Tのパルス幅を有するに対して、第2のピークパルスP2を含む他のピークパルスP2〜P8が最初のピークパルスP1のパルス幅よりも小さい0.5Tのパルス幅を有している。
図15は、図13と同様に記録時に規定通りのレーザパワーが記録膜に照射されて記録マークが形成された場合における再生信号強度の数値解析の結果を示し、また、図16は、図14と同様に記録時にレーザパワーが規定値の80%に低下して記録マークが形成された場合における再生信号強度の数値解析の結果を示している。但し、図17(b)、図18(b)、図19(b)、図20(b)及び図21(b)に示すパルストレインでnTマーク及びこのnTマークに続いてnTスペースが続くように記録マークが繰り返し記録され、この記録マークから再生される再生信号が解析されて図15及び図16が得られている。
図13と図14との比較及び図15と図16の比較結果から明らかなように、記録時のレーザパワーが規定通りの場合に比べて、記録時のレーザパワーが規定値の80%に低下した場合には、図14及び図16に示されるように再生信号の立ち上がり部分の均一性に崩れが認められる。しかしながら、図14の解析結果は、図16で示した比較例に比べると、明らかに再生信号の品位が向上されている。より詳細には、記録時のレーザパワーが規定通りの場合に比べて、図16に示されるように記録時のレーザパワーが規定値の80%に低下した場合には、特に再生信号の立ち上がり部分が記録マークの長さにより大きく不揃いになり、充分な品位が保たれていないことが明らかである。(以下の文を追加してください。)このような品位の向上は、再生信号処理に前述のPRMLを用いるような場合には、特に有効である。
本発明の第2の実施形態を、図22(a)〜図26(b)に基づいて説明する。これらの図22(a)、図23(a)、図24(a)、図25(a)及び図26(a)は、記録マーク及びマーク間のスペースの長さを規定するNRZI信号を示し、図22(b)、16(b)、17(b)、18(b)及び図26(b)は、NRZI信号に対応して生成される記録ストラテジーに相当する5Tから9Tまでのパルストレインを示している。9Tを超える長さのマークが記録される場合にも同様に以下に説明する記録ストラテジーが適用される。既に説明したと同様にNRZI信号がオンの際にNRZI信号の長さに応じた記録ストラテジーが適用され、記録マークが記録される。
本実施の形態に係る記録方法では、記録タイミングの周期をT、記録マークの長さをnT、媒体の線速度の規定線速度に対する倍率をmとして、(n÷m)が5以上の長さの記録マークを記録する場合には、少なくとも最初の(n÷m−3)個のピークパルス幅を、それ以降のピークパワーのパルス幅よりも大きくしている。この記録方法では、パルストレインは、望ましくは、{(n−1)÷m}個のピークパルスを有する。図22(b)、図23(b)、図24(b)、図25(b)及び図26(b)は、m=1の場合におけるにおけるNRZI信号に対するパルストレインを示している。従って、図22(b)、図23(b)、図24(b)、図25(b)及び図26(b)に示されるパルストレインでは、夫々4、5、6、7及び8個のピークパルスを有し、5Tでは、第1及び第2のピークパルスP1、P2が他のピークパルスP3、P4のパルス幅よりも大きく定められ、6Tでは、第1、第2及び第3のピークパルスP1、P2、P3が他のピークパルスP4、P5のパルス幅よりも大きく定められ、7Tでは、第1、第2、第3及び第4のピークパルスP1、P2、P3、P4が他のピークパルスP5、P6のパルス幅よりも大きく定められている。また、8Tでは、第1、第2、第3、第4及び第5のピークパルスP1、P2、P3、P4、P5が他のピークパルスP6、P7のパルス幅よりも大きく定められ、9Tでは、第1、第2、第3、第4、第5及び第6のピークパルスP1、P2、P3、P4、P5、P6が他のピークパルスP7、P8のパルス幅よりも大きく定められている。
最初の(n÷m−3)個のピークパルス幅をそれ以降のピークパルス幅より大きくする理由は、再生時における再生信号の立ち上がりを記録マークの長さにかかわらず急峻かつ揃ったものにするためであり、これはスポットサイズと記録マークの長さとの関係に由来している。例えば、次世代DVDの場合、媒体の記録層におけるレーザスポットの直径が3T〜4T程度に定められ、現行DVDにおいても2T〜3T程度に定められている。次世代DVDにあっては、記録マークに比べてレーザスポットサイズが非常に大きい。このため、再生信号の立ち上がり部分においては記録マークの少なくとも先頭3Tの範囲の影響が大きくなっている。この範囲で再生信号の品位を保つためには、記録パルス列のピークパルスのうち、最初の少なくとも3T分に相当する範囲内のピークパルス、即ち、2つ以上のピークパルスに関して安定した記録ができるようにしなければならない。さらに、この発明の第1実施形態における再生信号強度の一例として図14で示されているように、最初の2つのピークパルス幅をそれ以降のピークパワーのパルス幅よりも大きくしただけでは、特に長い記録マークの再生信号ほど、再生信号のピークに近づくにつれて、再生信号の均一性が崩れる傾向にある。したがって、例えばm=1の場合、最初のピークパルス幅を大きくする範囲は、n=5で2つ、n=6で3つ、n=7で4つ、というように記録マークの長さが長いほど増やしていくことが望ましい。
さらに、最初の(n÷m−3)個のピークパルス幅が0.6T、それ以降のピークパルス幅が0.5Tに定められ、それぞれに続くボトムパルス幅が0.4Tと0.3Tに定められている。これらのパルス幅は、必ずしもこれらの値に限るものではなく、種々の条件に応じて適当な幅が設定されても良い。最初の(n÷m−3)個のピークパルス幅は、同一である方が望ましいが、異なっていても良い。それ以降のピークパルス幅も、同一である方が望ましいが、異なっていても良い。また、最初の(n÷m−3)個のピークパルス幅及びそれぞれのピークパルスに続くボトムパルス幅及びバイアスパルス幅は、記録マークの長さにかかわらず同一であることが好ましいが、当該記録マークの長さ及び当該記録マークの前後のスペースやマークの長さ等に応じて記録補償を行う場合等にはこの限りではない。最初の(n÷m−3)個以降のピークパルス幅及びそれぞれのピークパルスに続くボトムパルス幅やバイアスパルス幅についても同様である。
以上のように、記録マークの立ち下がりを除く部分で、温度の立ち上がりを急峻にし、かつ、記録マークの幅を大きく保ち、ひいては再生信号の振幅を大きく均一にすることができるようになる。このことはパワーマージンの増加に有効であり、例えば、記録層に到達する見かけ上のレーザパワーが低下した場合にも再生信号の立ち上がり及び振幅の均一性を比較的良く保つことが可能となる。さらに、図22(b)〜図26(b)における(n÷m−3)個のピークパルス以降では、再生信号の急峻で均一な立ち上がり及び記録マークの幅よりもむしろ温度の安定性の方が重要となる傾向が強くなる。これらのピークパルスP3〜P8では、ピークパルスの直前にバイアスパルスBP3〜BP8を設けることにより、ピークパルス及びバイアスパルスによって上下した温度をいったん中間の温度に安定させることができ、それぞれのピークパルスP3〜P8の開始時における温度を毎回同等なレベルとすることができる。従って、これらの部分での温度の安定性をさらに高めることができ、レーザパワー及び媒体の回転数、ちり及び傷、或いは媒体の層構造及び材料物性値の不ぞろい等の変動要因を吸収することができる。
この実施形態に係る記録方法に従って、nTマーク及びこのnTマークに続いてnTスペースが続く記録マークが繰り返し記録され、この記録マークから再生される再生信号の強度の一例が図27及び図28に示されている。図27は、記録時に規定通りのレーザパワーが記録膜に照射されて記録マークが形成された場合における再生信号強度の数値解析の結果を示し、図28は、記録時にレーザパワーが規定値の80%に低下して記録マークが形成された場合における再生信号強度の数値解析の結果を示している。
図28と図14との比較から明らかなように、記録時のレーザパワーが規定通りの場合に比べて、記録時のレーザパワーが規定値の80%に低下した場合には、図14で示した比較例に比べて、再生信号全域に渡って良好な品位が保たれていることがわかる。(以下の文を追加してください。)このような品位の向上は、再生信号処理に前述のPRMLを用いるような場合には、特に有効である。
この発明の第3の実施形態に係る記録方法を再び図3(a)〜図7(b)を参照して説明する。これら図3(a)〜図7(b)に関する説明は、第1の実施の形態で説明されているのでその説明を参照されたい。
この発明の第3の実施形態に係る記録方法においては、記録タイミングの周期をT、記録マークの長さをnT、媒体の線速度の規定線速度に対する倍率をmとすると、(n÷m)が5以上の長さの記録マークを記録する場合には、少なくとも最後の2つのピークパルス幅が記録マークの長さにかかわらず同一に定められている。各記録マークの記録に関しては、望ましくは、{(n−1)÷m}個のピークパルスで記録マークが記録される。図3(a)〜図7(b)は、m=1の場合の実施形態である。最後の2つのピークパルス幅が同一に設定される理由は、再生信号の立ち下がりを記録マークの長さにかかわらず急峻かつ揃ったものにするためであり、これはスポットサイズと記録マークの長さとの関係に由来する。例えば、次世代DVDにあっては、媒体の記録層におけるレーザスポットの直径が3T〜4T程度、現行DVDにおいても2T〜3T程度に定められ、記録マークに比べてレーザスポットサイズが非常に大きい。このため、再生信号が立ち下がる領域においては、記録マークの少なくとも最後の3Tの範囲が大きな影響を再生信号に与える。この範囲で再生信号の品位を保つためには、記録パルス列のピークパルスのうち、最後の少なくとも3Tの範囲、つまりは2つ以上のピークパルスでより安定した記録が実現できるようにしなければならない。また、例えば記録マークの長さが、現行DVDでは、3T以上、次世代DVDでは2T以上と規定されているにもかかわらず、本実施形態において(n÷m)が5以上の長さの記録マークを記録する場合と限定したのは、(n÷m)が5未満の場合には記録マークのほぼ全体がレーザスポット内に収まるか、或いは最後の2つのピークパルスにより記録される長さが3Tよりも長くなってしまうため、再生信号の立ち下がり部分の品位を向上させ、かつ、他に悪影響を生じない効果が期待できないことが理由である。
さらに、最後の2つのピークパルス幅が記録マークの長さにかかわらず0.5Tに定められ、これらピークパルスに続くボトムパルス幅が0.3Tとなっているが、必ずしもこれに限るものではない。また、最後の2つのピークパルス幅がそれ以前のピークパルス幅と同じ0.5Tとなっているが、これは最後の2つのピークパルスが再生信号の立ち下りにかかわるものであるためで、この発明の第1及び第2の実施形態のように他のピークパルス幅よりも大きなピークパルス幅を用いる必要はなく、再生信号の立下りでレーザスポット内に収まる範囲の記録マーク形状を記録マークの長さにかかわらず同一とすることが目的なためである。ただし、当該記録マークの長さ及び当該記録マークの前後のスペース並びにマークの長さ等に応じて記録補償を行う場合等にはこの限りではない。また、最後の2つのピークパルスの直前には、バイアスパルスが設けられている方が温度の安定性の点から望ましい。以上のようにすることによって、記録マークの最後の2T分以上の範囲で、記録マークの最後の部分のマーク形状を均一にすることが達せられ、ひいては再生信号の立ち下がりの均一性を増すことができる。このことはパワーマージンの増加に有効であり、例えば記録層に到達するレーザパワーが低下した場合にも再生信号の立ち下がりの均一性を比較的良く保つことが可能となる。(以下の文を追加してください。)このような品位の向上は、再生信号処理に前述のPRMLを用いるような場合には、特に有効である。
この発明の第4の実施形態に係る記録方法を再び図3(a)〜図7(b)を参照して説明する。これら図3(a)〜図7(b)に関する説明は、第1の実施の形態で説明されているのでその説明を参照されたい。
この実施の形態に係る記録方法において、記録タイミングの周期をT、パルス列で使用されるピークパルス幅をTp、このピークパルスに続くボトムパルスの幅をTbとしている。さらに、記録時には、情報記録媒体の最高温度が変動しなくなるまでバイアスパルスを連続して照射し、その直後にピークパルスを照射している。情報記録媒体の記録層の最高温度が融点に達するまでのピークパルス幅をkTとした場合に、記録マークの長さにかかわらず、kT及びTpは、下記式(1)及び式(2)の関係を有し、かつ、一対のTpとTbの比が、最後のパルス対を除いては記録マークの長さにかかわらず±20%の範囲に分布される。
kT×3≦Tp≦kT×5 (1)
但し、先頭のピークパルスに限っては、kT×3≦Tp
Tb<Tp (2)
図3(b)、図4(a)、図5(a)、図6(a)及び図7(b)は、k=0.13の場合を示している。図3(b)、図4(a)、図5(a)、図6(a)及び図7(b)においては、ピークパルスとピークパルスに続くボトムパルスのそれぞれの幅がいずれも式(1)及び式(2)を満たし、さらに、TpとTbの比が最後のパルス対を除いては記録マークの長さにかかわらず±20%の範囲に分布するとの関係を満たしている。kTは、バイアスパルスを例えば2T以上の長時間照射した直後にピークパルスを照射することによって上昇する媒体温度が、融点に達して記録マークが形成されるまでに必要なピークパルス幅に相当し、この値kTは、媒体の層構造及び物性値、媒体の線速度、レーザパワー等多岐にわたる要因によりそれぞれ異なる。従って、値kTは、事前に実験等により最適値を求める必要がある。
実験により値kTを求めるためには、例えば以下のような方法がある。バイアスパルスを充分な長時間照射した直後にピークパルスを一回照射する作業を、ピークパルス幅をパラメーターとして、異なるトラック上で複数回行う。その後、これらのトラックの再生信号を測定する。この測定において、再生信号のACレベルが変動する最も小さいピークパルス幅がkTに相当する。再生信号のACレベルが変動するということは、記録マークが形成されているということを意味するからである。その他、記録した複数のトラックを透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて観察し、記録マークが形成されるもっとも小さいピークパルス幅を調べるという方法もある。このようにして得られた値kTは、マークを記録するために必要な最短のピークパルス幅であり、いわゆる筆先記録となっているため、僅かなピークパワーの低下でマークが記録できなくなる、或いは、パワーの変動によりマークの大きさが大きく変動してしまう等、特にパワーの変動に対する耐性が非常に低い。
この関係は、第1の実施の形態で使用した図9及び図10を参照して説明されている。即ち、この図10を参照して説明したようにピークパルス幅は、少なくとも0.4T以上、望ましくは0.5T以上、一般的には少なくともkTの3倍以上のピークパルス幅が必要なことが明らかである。本実施の形態に係る記録方法にあっては、k=0.13であるから、少なくともkT×3=0.39T以上ということになる。逆にTpが大きすぎる場合、クロスイレーズ等の悪影響が顕著になる傾向にあり、通常の場合はkTの5倍よりも大きくする必要性はないと考えられる。ただし、先頭のピークパルスに限っては、それ以前のピークパルスによる予熱の影響がないためクロスイレーズが発生しにくい状況にあり、上限をkTの5倍以上とすることが可能である。これらの関係を示したものが式(1)であり、さらに、ピークパルス直後のボトムパルスにより媒体の最高温度が低下しすぎて結晶化開始温度よりも低くなり、重ね書きの際の消し残しの生じる恐れがあるため、式(2)によりTbを規定する必要があるが、kTを実験等により求める必要があったのと同様に装置や媒体の種類等により異なるため、消し残しの生じない適正な値を実験により求める必要がある。
さらに、一対のTpとTbの比が、記録マークの長さにかかわらず±20.%の範囲に分布することの意味は、次のように説明される。図3〜図7に示される実施形態では図11及び図12においても一例が説明されたように、Tp=0.6には、Tb=0.4、Tp=0.5にはTb=0.3というの関係があり、Tp/Tbは1.5と1.67であり、±20%の範囲に分布している。このTp/Tbは、ピークパルスによる温度上昇とピークパルスに続くボトムパルスによる温度下降を経過した時点での温度レベルを予測する指標であり、適切な値を示す場合には図10に示したように短時間で温度を復旧させることが可能となり、レーザパワー及びパルス幅等の一時的な変動に対する耐性を強くすることができる。適切な値は、媒体の層構成、熱的物性値、レーザパワー等の条件によって異なるが、いずれの値が最適であったとしても、その値からのずれが小さいほど好ましいということには変わりがない。いくつかの条件下における記録ストラテジーで使用されるTp/Tbを調べた結果が一例として図29に示されている。図29においては、横軸がTpを、縦軸がTp/Tbの中心値からのずれを%で表している。Tp及びTbは、前述のように切りの良い数値であることが好ましいため、必ずしもすべてにおいて最適なTp/Tbが求められているわけではないが、適切と思われるデータがピックアップされている。図29に示されるようにほとんどの場合で±10%の範囲内にあり、ばらつきの大きい場合でも±20.%の範囲内に収まっている。従って、TpとTbの比のばらつきが±20%以内であること、望ましくは、±10%以内であることが条件となる。このようにすることによって、パルス列の期間における温度変化を記録マークの長さにかかわらずほぼ同一に保つことができ、その結果、前記レーザパワーの低下の際に温度レベルが低下するような場合にも、記録マーク形状を一定に揃えることが可能となる。ただし、最後のボトムパルスに関しては、これ以降のパルス列に対する影響を考慮する必要がないため、この限りではない。また仮に、TpとTbの比が±20%以上ばらつくような場合には、たとえパワーが規定通りの場合に記録マークの形状が記録マークの長さにかかわらず揃っているような条件においても、パワーの変動時には記録マーク形状が揃わなくなるという現象が生じてしまう。また同様の理由から、記録マークの長さ及び記録ストラテジーの中のどのパルスであるかに拘わらず、設定されるすべてのTpとTbの比が同一であることが望ましいが、第1及び第2の実施形態で示したように、先頭の数個のピークパルス幅を大きくした方が再生信号の品位やパワーマージンに対してよい結果をもたらす場合には、TpとTbの比を±20%以内、望ましくは±10%以内とした上で、これら先頭数個のピークパルスやそれらに続くボトムパルスの幅を記録マークの長さにかかわらず統一し、さらに、これら先頭数個より後に設けられるピークパルス及びピークパルスに続くボトムパルスの幅を記録マークの長さに拘わらず統一することで、さらに好ましい結果を得ることができる。さらに望ましくは、ピークパルス幅とそれに続くボトムパルス幅と、存在する場合にはピークパルスの直前のバイアスパルス幅との和は、記録タイミングの周期Tと同程度であることが望ましい。これにより、記録タイミングを与えるクロックと、それぞれのパルスとの間の相対的な時間差をパルス列の中でそろえることができ、記録ストラテジーの規則性を保つとともに、パルスの発生方法が容易になるばかりでなく、パルス幅を実験等により求める際の手間を大幅に省略することが可能となる。
尚、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
10...光ディスク、14...透明基板、20...接着層、22...中心孔、25...情報エリア、26...リードアウトエリア、27...リードインエリア、28...データ記録エリア、30...μコンピュータユニット、32...ディスクドライブ部、36...データプロセッサ、42...AV入力部、46...AV出力部、50...エンコーダ部、