JP3948054B2 - 車両の液圧制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の液圧制御装置に関し、特に、マスタシリンダとホイールシリンダとの間にモジュレータを介装し、このモジュレータを介してホイールシリンダのブレーキ液を排出し補助リザーバに貯蔵すると共に、液圧ポンプによって補助リザーバ内のブレーキ液及びマスタシリンダのブレーキ液を吸い込みモジュレータを介してホイールシリンダに吐出するブレーキ液圧制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
近時の車両は、アンチスキッド制御をはじめ、トラクション制御、前後制動力配分制御等、種々の制御を行なう装置が搭載されている。更に、車両の運動特性を制御する手段として、ブレーキペダルの操作に起因した制動状態にあるか否かに拘らず各車輪に対して制動力を付与し、所謂制動操舵制御によってオーバーステア抑制制御及びアンダーステア抑制制御を行なう装置も提案されている。これらの制御に供する液圧制御装置としては種々の態様があるが、マスタシリンダとホイールシリンダとの間にモジュレータを介装し、これを介してホイールシリンダのブレーキ液を排出し補助リザーバに貯蔵すると共に、液圧ポンプによって補助リザーバ内のブレーキ液及びマスタシリンダのブレーキ液を吸い込みモジュレータを介してホイールシリンダに吐出する液圧制御装置が、簡便な装置として利用されている。
【0003】
例えば、ブレーキペダルの非操作時に加速スリップが生じたとき、駆動輪に対する制動力を制御するトラクション制御(TRC)装置に関し、これに供する液圧制御装置が特開昭64−74153号公報に開示されている。同公報の第3図には、所謂還流式のアンチスキッド制御(ABS)回路に一個のTRC切替弁を接続した例が開示されている。
【0004】
そして、このような液圧制御装置には、液圧ポンプからホイールシリンダに吐出されるブレーキ液圧に所定の制限を加えるため、通常、リリーフ弁が設けられている。例えば、実開平2−102867号公報には、アンチロックブレーキ装置に供されるリリーフ弁の構造が開示されている。このアンチロックブレーキ装置は、液圧ポンプの吐出流をパワーステアリングギヤに供給する回路の途中にレギュレータ弁を介装し、ブレーキ液圧回路の途中にアクチュエータを介装するもので、リリーフ弁はパワー液圧が所定値以上となったときにレギュレータ弁の液室に導く旨記載されている。そして、このリリーフ弁においては、弁部材の径とシート部材のシート面の有効径とが同径とされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開昭64−74153号公報の第3図に記載の液圧制御装置は、ブレーキペダルが非操作時にABS回路が制御されるものであるが、このABS回路をブレーキペダルの操作、非操作に拘らず制御可能に構成することとすれば、トラクション制御に留まらず前述の制動操舵制御も可能となり、ひいては車両の運動制御が可能となる。
【0006】
上記のような液圧制御装置において、液圧ポンプから吐出されるブレーキ液圧が所定値を超えたときには、前述のようにリリーフ弁によってマスタシリンダにブレーキ液を還流するように構成される。図3はこのリリーフ弁の一例を示すもので、液圧ポンプの吐出ブレーキ液圧がパワーポート1aを介して弁体3aに付与され、この圧力がスプリング3sの付勢力を上回ると弁体3aが弁座4から離れ、ブレーキ液はリリーフポート1cを介してマスタシリンダに戻される。このとき、弁体3aのシール径(前述のシート面の有効径に相当)と支持部3bの外径が等しい値に設定され、支持部3bには大気圧が付与されるように構成され、その結果弁部材3に付与されるマスタシリンダ液圧が相殺されるように構成される。これにより、弁部材3はマスタシリンダ液圧の変化に影響されることなく、パワーポート1aからの液圧ポンプの吐出ブレーキ液圧が所定値を超えれば開弁することとなる。
【0007】
然し乍ら、このようなリリーフ弁においては、弁部材の支持部が外部に露出しているため、支持部のシール6部分に異物が侵入するおそれがある。これを防止するためには防水、防塵構造とすればよいが、コストアップとなる。また、万一シール部分が損傷し、ここからブレーキ液が漏洩するとマスタシリンダに必要なブレーキ液の量が不足するおそれもある。
【0008】
実開平2−102867号公報に記載の装置は前述の液圧制御装置とは基本的な構成を異にするので、同公報に記載のリリーフ弁をそのまま前述の液圧制御装置に適用することは困難である。しかも、同公報に記載のリリーフ弁においても、万一弁体支持部のシール性が損なわれるとマスタシリンダに必要なブレーキ液の量が不足するおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、マスタシリンダとホイールシリンダとの間にモジュレータを介装し、このモジュレータを介してホイールシリンダのブレーキ液を排出し補助リザーバに貯蔵すると共に、液圧ポンプによって補助リザーバ内のブレーキ液及びマスタシリンダのブレーキ液を吸い込みモジュレータを介してホイールシリンダに吐出する車両の液圧制御装置に関し、液圧ポンプの吐出ブレーキ液圧が所定値を超えたときには、マスタシリンダ液圧の変化に左右されることなく確実にマスタシリンダにブレーキ液を戻し得ると共に、取付け部の環境に影響されることなく、常に適切な作動を確保し得る液圧制御装置を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明は、車両の各車輪に装着し制動力を付与するホイールシリンダと、ブレーキペダルの操作に応じてブレーキ液を昇圧しマスタシリンダ液圧を出力するマスタシリンダと、該マスタシリンダと前記ホイールシリンダとの間に介装し前記車両の運転状態に応じてブレーキ液を給排し前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を調整するモジュレータと、該モジュレータを介して前記ホイールシリンダから排出したブレーキ液を貯蔵する補助リザーバと、該補助リザーバ内のブレーキ液及び前記マスタシリンダ内のブレーキ液を吸い込み前記モジュレータを介して前記ホイールシリンダに対し昇圧したブレーキ液を吐出する液圧ポンプとを備えた車両の液圧制御装置において、前記液圧ポンプの吐出ブレーキ液圧を受圧する第1の受圧部と、該第1の受圧部が受圧するブレーキ液圧に抗する方向にブレーキ液圧を受圧する第2の受圧部を有し、該第2の受圧部及び前記第1の受圧部の受圧面積が等しい弁部材を具備した弁装置であって、常時は前記液圧ポンプから前記マスタシリンダへのブレーキ液の流れを禁止し、前記弁部材に対する前記液圧ポンプの吐出ブレーキ液圧が所定値を超えたときに前記液圧ポンプから前記マスタシリンダへのブレーキ液の流れを許容する弁装置を備え、前記弁部材の前記第2の受圧部が前記補助リザーバ内のブレーキ液圧を受圧するように構成したものである。
【0011】
前記車両の液圧制御装置において、前記弁装置は、請求項2に記載のように、少くとも第1の液室と第2の液室を隣接して郭成するハウジングと、該ハウジングに配設し前記液圧ポンプの吐出側に連通すると共に前記第1の液室に開口する弁座を備えたものとし、前記弁部材は、前記第1の液室内で前記弁座に着座可能に配設する弁体を一端に具備すると共に、前記弁体の前記弁座への着座部の面積と等しい断面積を有する支持部を他端に具備して成り、該支持部を前記第1の液室と前記第2の液室との間の前記ハウジングに摺動自在に支持し、前記弁体が前記弁座に着座する方向に前記弁部材を付勢する付勢手段を設け、前記第1の液室を前記マスタシリンダに連通接続し、前記第2の液室を前記補助リザーバに連通接続するとよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の望ましい実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の液圧制御装置の一実施形態を示すもので、所謂ダイアゴナル配管の液圧系が構成されている。マスタシリンダMCはタンデム型のマスタシリンダで、二つの圧力室が夫々各ブレーキ液圧系統に接続されている。即ち、第1の圧力室MCaは車輪FR,RL側のブレーキ液圧系統に連通接続され、第2の圧力室MCbはその他の車輪側のブレーキ液圧系統に連通接続される。尚、図1では第1の圧力室MCaに接続される側の液圧系統のみに符号を付し、第2の圧力室MCbに接続される側は実質的に同様であるので符号を省略している。
【0013】
図1において、車輪FRは運転席からみて前方右側の車輪、車輪RLは後方左側の車輪、車輪FLは前方左側の車輪、車輪RRは後方右側の車輪を夫々示しており、車輪FR,RL,FL,RRに夫々ホイールシリンダWfr,Wrl,Wfl,Wrrが装着されている。そして、ブレーキペダルBPの操作に応じてバキュームブースタVBを介してマスタシリンダMCが倍圧駆動され、低圧リザーバLRS内のブレーキ液が昇圧されて各液圧系統にマスタシリンダ液圧が出力されるように構成されている。
【0014】
マスタシリンダMCの第1の圧力室MCaは主液圧路MF及びその分岐液圧路MFf,MFrを介して夫々ホイールシリンダWfr,Wrlに接続されている。主液圧路MFには一対の2ポート2位置電磁開閉弁SC1及びSC2(以下、単に開閉弁SC1,SC2という)が介装されている。分岐液圧路MFf,MFrには夫々、常開型の2ポート2位置電磁開閉弁PC1及びPC2(以下、単に開閉弁PC1,PC2という)が介装されており、これらと並列に夫々逆止弁CV1,CV2が介装されている。また、ホイールシリンダWfr,Wrlに連通接続される排出側の分岐液圧路RFf,RFrに、夫々常閉型の2ポート2位置電磁開閉弁PC3,PC4(以下、単に開閉弁PC3,PC4という)が介装されており、分岐液圧路RFf,RFrが合流した液圧路RFは補助リザーバPRSに接続されている。
【0015】
逆止弁CV1,CV2は、マスタシリンダMC方向へのブレーキ液の流れを許容しホイールシリンダWfr,Wrl方向へのブレーキ液の流れを阻止するもので、これらの逆止弁CV1,CV2及び開位置の開閉弁SC1を介してホイールシリンダWfr,Wrl内のブレーキ液がマスタシリンダMC、そして低圧リザーバLRSに戻されるように構成されている。而して、ブレーキペダルBPが解放されたときに、ホイールシリンダWfr,Wrl内の液圧はマスタシリンダMC側の液圧低下に迅速に追従し得る。
【0016】
本実施形態の車輪FR,RL側の液圧系統においては、上記開閉弁PC1及びPC3によって第1のモジュレータが構成され,開閉弁PC2及びPC4によって第2のモジュレータが構成されている。また、開閉弁PC1,PC2の上流側で分岐液圧路MFf,MFrに連通接続される液圧路PFには、液圧ポンプLPと、その吸込側に接続された逆止弁CV3,CV5と、吐出側に接続された逆止弁CV4と、容積室を郭成するダンパDPが設けられている。
【0017】
逆止弁CV3,CV5は液圧ポンプLP方向へのブレーキ液の流れを許容し逆方向の流れを阻止するもので、逆止弁CV4は吐出方向(開閉弁PC1,PC2方向)へのブレーキ液の流れを許容し逆方向の流れを阻止するものである。二つの液圧系統の各々に配設される一対の液圧ポンプLPは一つの電動モータMによって駆動され、何れも吸込側からブレーキ液を導入し所定の圧力に昇圧して吐出側から出力するように構成されており、電動モータMの起動後は一対の液圧ポンプLPが連続して駆動される。
【0018】
補助リザーバPRSは、マスタシリンダMCの低圧リザーバLRSとは独立して設けられるもので、後述する種々の制御に必要な容量のブレーキ液を貯蔵し得るように構成されている。この補助リザーバPRSはピストンとスプリングを備え、アキュムレータということもできるが、ホイールシリンダ液圧を減圧する際にホイールシリンダ内のブレーキ液を一時的に貯蔵するもので小容量であり、また補助リザーバPRS内の圧力は、通常、氷上等の滑り易い路面でも車輪がロックしない程度の数気圧以下となるように設定されている。そして、補助リザーバPRSは前述のように液圧路RFに連通接続されると共に、逆止弁CV3,CV5を介して液圧ポンプLPの吸込側に連通接続されている。
【0019】
一方、開閉弁SC1は常開の電磁開閉弁で、マスタシリンダMCと開閉弁PC1,PC2との間に介装されている。これに対し、開閉弁SC2は常閉の電磁開閉弁で、マスタシリンダMCに接続されると共に、液圧路MFcによって逆止弁CV3を介して液圧ポンプLPに連通接続されている。更に、開閉弁SC1に並列に、後述のリリーフ弁RVと、所定の圧力差以上で開弁して開閉弁PC1,PC2方向へのブレーキ液の流れを許容し逆方向の流れを阻止するリリーフ弁AVが介装されている。リリーフ弁RVは、液圧ポンプLPから吐出されるブレーキ液圧が所定値を超えたときに、マスタシリンダMCを介して低圧リザーバLRSにブレーキ液を還流するもので、これにより液圧ポンプLPの吐出ブレーキ液圧が所定値以下の圧力に制限される。
【0020】
上記の開閉弁SC1,SC2並びに開閉弁PC1乃至PC4は電子制御装置ECUによって駆動制御され、アンチスキッド制御のみならず、制動操舵制御を初めとする各種制御が行なわれる。例えば、車両が旋回運動中において、過度のオーバーステアと判定されたときには、例えば旋回外側の前輪に制動力が付与され、車両に対し外向きのヨーモーメント、即ち車両を旋回外側に向けるヨーモーメントが生ずるように制御される。これをオーバーステア抑制制御と呼び、安定性制御とも呼ばれる。また、車両が旋回運動中に過度のアンダーステアと判定されたときには、本実施形態のように後輪駆動車の場合、旋回外側の前輪及び後二輪に制動力が付与され、車両に対し内向きのヨーモーメント、即ち車両を旋回内側に向けるヨーモーメントが生ずるように制御される。これはアンダーステア抑制制御と呼び、コーストレース性制御とも呼ばれる。そして、オーバーステア抑制制御とアンダーステア抑制制御は制動操舵制御と総称される。尚、電子制御装置ECUは、バスを介して相互に接続されたプロセシングユニット、メモリ、入出力ポート等から成るマイクロコンピュータ(図示せず)を備えている。
【0021】
本発明の弁装置を構成するリリーフ弁RVは、図2に拡大して示すように、そのハウジング10に小径孔11及び大径孔12から成る段付孔が形成されると共に、小径孔11に連通するパワーポート13及びリリーフポート14、並びに大径孔12に連通するリザーバポート15が形成されている。そして、図1に示すように、パワーポート13は液圧路PFを介して液圧ポンプLPに連通接続され、リリーフポート14は主液圧路MFを介してマスタシリンダMCに連通接続され、リザーバポート15は液圧路RFを介して補助リザーバPRSに連通接続される。尚、図2は図1と左右対称に表している。
【0022】
小径孔11には、弁部材30等が装着された状態でシリンダ20が嵌合される。シリンダ20には、一端が開放端の段付孔21が形成されると共に、その他端側に小径の連通孔22が形成され、この連通孔22に連続して凹部23が形成されている。更に、シリンダ20の外周面に環状の溝24が形成されると共に、径方向に連通孔25が形成されている。溝24はリリーフポート14に対向する位置に形成されており、段付孔21は連通孔25を介して溝24に連通し、更にリリーフポート14に連通する。
【0023】
段付孔21内には弁部材30が摺動自在に収容され、段付孔21の大径部に開口端から弁座40が嵌着される。弁部材30は一方の先端部に球状の弁体31が固定され、他端側には支持部32が一体的に形成され、支持部32の先端がシリンダ20の外側(図2の右側)に延出するように配置され、連通孔22に摺動自在に支持されている。弁部材30の中間部には肩部33が形成されており、この肩部33とシリンダ20の段付孔21底部との間に付勢手段たるスプリング34が張設される。尚、弁体31は弁部材30と一体的に形成することとしてもよい。
【0024】
シリンダ20の凹部23には環状のシール部材62が収容され、これにより弁部材30の支持部32が液密的摺動自在に支持されている。更に、凹部23内に環状のスペーサ63が収容され、これを介してシール部材62を押圧するようにプラグ50の凸部51が凹部23内に収容されている。このプラグ50には弁部材30の支持部32を摺動自在に支持する案内孔52及びこれに直交する連通孔53が形成されており、支持部32の先端が連通孔53内に露呈するように配置されている。尚、シリンダ20の外周には環状溝が形成され、この環状溝にも環状のシール部材61が収容されている。
【0025】
弁座40の中央には連通孔41が形成されており、段付孔21の大径部に弁座40が嵌着されると連通孔41の開口端に弁体31が着座し、スプリング34によって着座方向に付勢され、連通孔41を閉塞するように配置される。そして、シリンダ20に弁部材30、スプリング34、弁座40、シール部材61,62、スペーサ63及びプラグ50が装着された状態でハウジング10の小径孔11内に収容され、大径孔12の内面に形成されたかしめ片16によってかしめ固定される。これにより、シリンダ20の段付孔21内に第1の液室が形成され、この第1の液室はシリンダ20の連通孔25を介して常時リリーフポート14に連通すると共に、弁部材30が開弁位置にあるときには弁座40の連通孔41を介してパワーポート13に連通可能である。また、大径孔12及びプラグ50の連通孔53内に第2の液室が形成され、この第2の液室はリザーバポート15を介して常時補助リザーバPRSに連通している。
【0026】
上記弁座40の連通孔41に対する弁体31の着座部(本発明の第1の受圧部に相当)の面積、即ちパワーポート13内のブレーキ液圧が付与される弁体31の受圧面積と、支持部32(本発明の第2の受圧部に相当)の断面積、即ち第2の液室内のブレーキ液圧が付与される支持部32の受圧面積とが等しくなるように設定されている。具体的には、弁体31のシール径と支持部32の外径が等しい値に設定されている。これにより、段付孔21内(第1の液室内)のブレーキ液圧、即ちマスタシリンダ液圧は弁部材30に対し弁体31が着座する方向とその逆方向に付与されるが、これらは等しい力となるので相殺される。尚、このときの連通孔53内(第2の液室内)のブレーキ液圧は低圧(前述のように補助リザーバPRS内は数気圧)であり、パワーポート13を介して付与される液圧ポンプLPの吐出ブレーキ液圧(100気圧以上)に比し無視し得る値であり変動も小さい。従って、本実施形態においても大気圧開放の図3の態様と同等の圧力調整機能を確保することができる。
【0027】
上記の構成になるリリーフ弁RVによれば、パワーポート13を介して液圧ポンプLPの吐出ブレーキ液圧が弁体31に付与され、そのブレーキ液圧がスプリング34の付勢力及び連通孔53内のブレーキ液圧による第2の受圧部の圧力の合計を上回ると弁体31が弁座40から離座し、ブレーキ液は段付孔21、連通孔25、リリーフポート14を介してマスタシリンダMCに戻される。このとき、弁部材30に付与されるマスタシリンダ液圧は相殺されるので、弁部材30はマスタシリンダ液圧の変化に影響されることなく、パワーポート13からの液圧ポンプLPの吐出ブレーキ液圧に応じて開閉することとなる。
【0028】
而して、リリーフ弁RVは、ブレーキペダルBPが操作されマスタシリンダ液圧が高圧となっている場合にも、ブレーキペダルBP非操作時と同様に作動することとなる。万一、弁部材30の支持部32をシールするシール部材62が損傷し、ここからブレーキ液が漏洩した場合には、漏洩ブレーキ液によって小容量の補助リザーバPRSが満杯となれば、それ以上マスタシリンダMC内のブレーキ液が流出することはないので、マスタシリンダMCに必要なブレーキ液量を確保することができる。しかも、補助リザーバPRSに貯蔵されたブレーキ液は、液圧ポンプLPの吐出ブレーキ液圧が所定値以下となった後、液圧ポンプLPによってマスタシリンダMCに戻すことができる。
【0029】
上記の構成になる実施形態の作用を説明すると、通常のブレーキ作動時においては、各電磁弁は図1に示す常態位置にあり、電動モータMは停止している。この状態でブレーキペダルBPが踏み込まれると、マスタシリンダMCの第1及び第2の圧力室MCa,MCbから、マスタシリンダ液圧が夫々車輪FR,RL側及び他の一対の車輪側の液圧系統に出力され、開閉弁SC1並びに開閉弁PC1及びPC2を介して、ホイールシリンダWfr及びWrlに供給される。
【0030】
ブレーキ作動中にアンチスキッド制御に移行し、例えば車輪FR側がロック傾向にあると判定されると、図1に示すように開閉弁SC1が開位置、開閉弁SC2が閉位置とされ、この状態で開閉弁PC1が閉位置とされると共に、開閉弁PC3が開位置とされる。而して、ホイールシリンダWfrは開閉弁PC3を介して補助リザーバPRSに連通し、ホイールシリンダWfr内のブレーキ液が補助リザーバPRS内に流出し減圧される。
【0031】
ホイールシリンダWfrが緩増圧モードとなると、開閉弁PC3が閉位置とされると共に開閉弁PC1が開位置とされ、マスタシリンダMCからマスタシリンダ液圧が開位置の開閉弁PC1を介してホイールシリンダWfrに供給される。そして、開閉弁PC1が断続制御され、ホイールシリンダWfr内のブレーキ液は増圧と保持が繰り返されてパルス的に増大し、緩やかに増圧される。ホイールシリンダWfrに対し急増圧モードが設定されたときには、開閉弁PC2,PC3が閉位置とされた後、開閉弁PC1が開位置とされ、マスタシリンダMCからマスタシリンダ液圧が供給される。そして、ブレーキペダルBPが解放され、ホイールシリンダWfrの液圧よりマスタシリンダ液圧の方が小さくなると、ホイールシリンダWfr内のブレーキ液が逆止弁CV1及び開位置の開閉弁SC1を介してマスタシリンダMCに戻り、そして低圧リザーバLRSに戻る。このようにして、車輪毎に独立した制動力制御が行なわれる。
【0032】
そして、トラクション制御に移行し、例えば駆動側の車輪RLの加速スリップ防止制御が行なわれる場合には、開閉弁SC1が閉位置、開閉弁SC2が開位置とされて、ホイールシリンダWfrに接続された開閉弁PC1が閉位置とされ、開閉弁PC2が開位置とされる。この状態で、電動モータMによって液圧ポンプLPが駆動されると、非作動状態のマスタシリンダMC、開位置の開閉弁SC2を介して低圧リザーバLRSからブレーキ液が吸引されると共に、補助リザーバPRS内のブレーキ液が吸引され、開位置の開閉弁PC2を介して駆動輪側のホイールシリンダWrlに加圧ブレーキ液が供給される。尚、開閉弁PC2が閉位置とされれば、ホイールシリンダWrlの液圧が保持される。而して、ブレーキペダルBPが非操作状態であっても、例えば車輪RLの加速スリップ防止制御時には、車輪RLの加速スリップ状態に応じて開閉弁PC2,PC4の断続制御により、ホイールシリンダWrlに対し、緩増圧、減圧及び保持の何れかの液圧制御モードが設定される。これにより、車輪RLに制動力が付与されて回転駆動力が制限され、加速スリップが防止され、適切にトラクション制御を行なうことができる。
【0033】
更に、車両の制動操舵制御時においては、例えば過度のオーバーステアを防止する場合には、これに対抗するモーメントを発生させる必要があり、この場合には或る一つの車輪のみに関し制動力を付与すると効果的である。即ち、車輪FR,RL側のブレーキ液圧系統においては、制動操舵制御時に開閉弁SC1が閉位置、開閉弁SC2が開位置とされると共に、電動モータMが駆動され、液圧ポンプLPからブレーキ液が吐出される。そして、開閉弁PC1乃至PC4が適宜開閉制御され、ホイールシリンダWfr,Wrlの液圧が緩増圧、減圧又は保持され、他の車輪側のブレーキ液圧系統も含め、前後の車輪間の制動力配分が車両のコーストレース性を維持し得るように制御される。
【0034】
何れの制御モードにおいても、液圧ポンプLPから吐出されるブレーキ液圧が所定値を超えたときには、前述のようにリリーフ弁RVによって液圧ポンプLPの吐出ブレーキ液圧が所定値以下に制限される。このとき、リリーフ弁RVは、マスタシリンダ液圧の変化に左右されることなく、液圧ポンプLPの吐出ブレーキ液圧が所定値を超えたときには確実にマスタシリンダMCにブレーキ液を戻すことができる。しかも、万一弁部材30の支持部32のシール部分が損傷し、ここからブレーキ液が漏洩してもマスタシリンダMCに必要なブレーキ液量を確保することができるので、このようなときでもマスタシリンダMCによる適切な制動作動を行なうことができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明の車両の液圧制御装置は、補助リザーバ内のブレーキ液及びマスタシリンダ内のブレーキ液を吸い込みモジュレータを介してホイールシリンダに対し昇圧したブレーキ液を吐出する液圧ポンプを備えると共に、液圧ポンプの吐出ブレーキ液圧を受圧する第1の受圧部と、この第1の受圧部が受圧するブレーキ液圧に抗する方向にブレーキ液圧を受圧する第2の受圧部を有し、これら第1及び第2の受圧部の受圧面積が等しい弁部材を具備し、この弁部材に対する液圧ポンプの吐出ブレーキ液圧が所定値を超えたときに液圧ポンプからマスタシリンダへのブレーキ液の流れを許容する常閉の弁装置を備え、弁部材の第2の受圧部が補助リザーバ内のブレーキ液圧を受圧するように構成されているので、液圧ポンプの吐出ブレーキ液圧が所定値を超えたときには、マスタシリンダ液圧の変化に左右されることなく確実にマスタシリンダにブレーキ液を戻すことができると共に、万一弁部材の第2の受圧部のシール性が損なわれた場合にも、補助リザーバにブレーキ液が貯蔵されるのみであるので、マスタシリンダに必要なブレーキ液を確保することができる。
【0036】
また、請求項2に記載の液圧制御装置においては、簡単な構造で弁装置を構成することができるので、安価な装置で、マスタシリンダ液圧の変化に左右されることなく確実にマスタシリンダにブレーキ液を戻すことができると共に、万一弁部材の支持部のシール性が損なわれた場合にも、マスタシリンダに必要なブレーキ液を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る液圧制御装置を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるリリーフ弁を拡大して示す部分断面図である。
【図3】一般的な液圧制御装置に供する一般的なリリーフ弁の断面図である。
【符号の説明】
BP ブレーキペダル
MC マスタシリンダ
LRS 低圧リザーバ
M 電動モータ
LP 液圧ポンプ
PRS 補助リザーバ
CV1〜CV5 逆止弁
RV リリーフ弁
SC1 第1の開閉弁, SC2 第2の開閉弁
PC1〜PC4 開閉弁
ECU 電子制御装置
Wfr,Wrl,Wfl,Wrr ホイールシリンダ
FR,RL,FL,RR 車輪
10 ハウジング
20 シリンダ
30 弁部材
40 弁座
50 プラグ
Claims (2)
- 車両の各車輪に装着し制動力を付与するホイールシリンダと、ブレーキペダルの操作に応じてブレーキ液を昇圧しマスタシリンダ液圧を出力するマスタシリンダと、該マスタシリンダと前記ホイールシリンダとの間に介装し前記車両の運転状態に応じてブレーキ液を給排し前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を調整するモジュレータと、該モジュレータを介して前記ホイールシリンダから排出したブレーキ液を貯蔵する補助リザーバと、該補助リザーバ内のブレーキ液及び前記マスタシリンダ内のブレーキ液を吸い込み前記モジュレータを介して前記ホイールシリンダに対し昇圧したブレーキ液を吐出する液圧ポンプとを備えた車両の液圧制御装置において、前記液圧ポンプの吐出ブレーキ液圧を受圧する第1の受圧部と、該第1の受圧部が受圧するブレーキ液圧に抗する方向にブレーキ液圧を受圧する第2の受圧部を有し、該第2の受圧部及び前記第1の受圧部の受圧面積が等しい弁部材を具備した弁装置であって、常時は前記液圧ポンプから前記マスタシリンダへのブレーキ液の流れを禁止し、前記弁部材に対する前記液圧ポンプの吐出ブレーキ液圧が所定値を超えたときに前記液圧ポンプから前記マスタシリンダへのブレーキ液の流れを許容する弁装置を備え、前記弁部材の前記第2の受圧部が前記補助リザーバ内のブレーキ液圧を受圧するように構成したことを特徴とする車両の液圧制御装置。
- 前記弁装置が、少くとも第1の液室と第2の液室を隣接して郭成するハウジングと、該ハウジングに配設し前記液圧ポンプの吐出側に連通すると共に前記第1の液室に開口する弁座を備え、前記弁部材が、前記第1の液室内で前記弁座に着座可能に配設する弁体を一端に具備すると共に、前記弁体の前記弁座への着座部の面積と等しい断面積を有する支持部を他端に具備して成り、該支持部を前記第1の液室と前記第2の液室との間の前記ハウジングに摺動自在に支持し、前記弁体が前記弁座に着座する方向に前記弁部材を付勢する付勢手段を設け、前記第1の液室を前記マスタシリンダに連通接続し、前記第2の液室を前記補助リザーバに連通接続することを特徴とする請求項1記載の車両の液圧制御装置。
Priority Applications (1)
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JP15597097A JP3948054B2 (ja) | 1997-05-29 | 1997-05-29 | 車両の液圧制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP15597097A JP3948054B2 (ja) | 1997-05-29 | 1997-05-29 | 車両の液圧制御装置 |
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JPH10329687A JPH10329687A (ja) | 1998-12-15 |
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Family Applications (1)
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JP15597097A Expired - Fee Related JP3948054B2 (ja) | 1997-05-29 | 1997-05-29 | 車両の液圧制御装置 |
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JP (1) | JP3948054B2 (ja) |
-
1997
- 1997-05-29 JP JP15597097A patent/JP3948054B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH10329687A (ja) | 1998-12-15 |
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