JP3946862B2 - 低アレルゲン冷菓 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、アレルゲンとなる蛋白質を含有せず、その代替としてアレルゲン性の低減又は除去された蛋白質加水分解物を含有し、なおかつアイスクリームと同等の食味、食感をもつ冷菓に関する。
本発明のアレルゲン性の低減された冷菓は、アレルギーになりやすい体質を持つ人でも安心して食べることができる。また、本発明のアレルゲン性の除去された冷菓は、アレルギー患者が安心して食べることができる。
【0002】
【従来の技術】
近年、アレルギー患者の増加が報告されている。20〜30年前の日本ではアレルギー患者は国民の1%に満たないものであったが、最近では日本国民の3人に1人が何らかのアレルギー疾患にかかっている。アレルギー疾患のうち、摂取した食物が消化管から吸収されて発症する経口アレルギーは、食物アレルギーと呼ばれており、花粉やダニが原因となる吸入アレルギーとは区別されている。
食物アレルギーの原因になるアレルゲンとしては種々のものがあるが、主要なものとして、一般に五大アレルゲンと言われる、牛乳、卵、大豆、米、小麦由来のアレルゲンを挙げることができる。その中でも卵及び牛乳に対する食物アレルギーは、幼児期、少年(少女)期に多いことが知られている。
また、食物アレルギーの症状としては、じん麻疹やアトピー性皮膚炎がよく知られており、その他にも、呼吸困難を始め、全身のありとあらゆる部位で発症する。
【0003】
食物アレルギー患者にとって、アレルゲンを含有する食品を食べることは危険な行為であり、アレルギーの発症を回避するためにアレルゲンを含有しない代替食を食べなければならないのが実情である。しかしながら、代替食は調理が面倒であったり、オリジナルのものの本来有する味よりも大体において美味しくない。本来、食べるという行為は、楽しいものであり、食物アレルギー患者が代替食を我慢して食べなければならないという状況は、改善されてしかるべきであるが、抜本的な解決手段が見つかっていなかった。 また、アレルギーではないが、潜在的にアレルギーになり易い人も多く存在し、このような人はアレルゲンとなり得る物質を取り続けていることにより、アレルギー症状を呈する傾向がある。これらの人も、アレルゲン性を低減させた食品を食べることが望ましいのは勿論である。しかしながら現在のところ、乳蛋白質を必須とするアイスクリ−ムのような冷菓においてアレルゲンフリーの製品は存在していない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アレルゲンとなる蛋白質を含有せず、なおかつアイスクリーム類と同等の食味、食感をもつ冷菓を提供することを目的とする。
本発明では、乳又は卵由来のアレルゲン性の除去又は低減された冷菓が提供され、乳又は卵に対する食物アレルギー患者又はアレルギー体質の人が、本来有するものと変わらない美味しい冷菓をアレルギ−の心配なく安心して食べることができる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、蛋白質を含有せず、その代替として蛋白質加水分解物を配合することにより得られる、アレルゲンフリー又はアレルゲン性の低減された冷菓に関する。
本発明においては、アイスクリーム類中に含有されるアレルゲンである乳蛋白質を配合せず、乳蛋白質の代替としてアレルゲン性の低減又は除去された蛋白質加水分解物を配合することにより、乳蛋白質に起因するアレルギーを低減させ又は防止する。さらに望ましくは、別のアレルゲンである卵蛋白質をも配合せず、乳蛋白質及び卵蛋白質の代替としてアレルゲン性を低減又は除去された蛋白質加水分解物を配合することにより、卵蛋白質に起因するアレルギーをも低減させ又は防止する。
【0006】
本発明の冷菓に配合する原料としては、美味しさの面を考慮すると、乳由来の原料を主体にするのが好ましい。しかしながら、アレルゲンである乳蛋白質を含有しないように十分な注意を要する。
そのため、脂質原料として、バターやクリームではなく乳蛋白質を含有しないバターオイルを用いる。このときに用いるバターオイルの量は、製品に対し、0.1重量%から20重量%の範囲で用いることができるが、好ましくは1重量%から10重量%の範囲で用いる。また、バターオイルと他の脂質原料とを合わせて配合して用いることもできる。他の脂質原料としては、蛋白質を含有しない脂質原料であればどんな脂質原料でも添加することができるが、冷菓への適性の点からパーム油又はやし油が好ましい。他の脂質原料は、バターオイル量に対して最大量10倍までの範囲で添加できる。
【0007】
また、本発明の冷菓に用いる糖としては、乳糖や蔗糖、ブドウ糖、果糖など各種の糖を用いることができる。また、望むならば糖アルコール、オリゴ糖も配合できる。これらの糖類の配合量は、製品に対し、1重量%から30重量%の範囲で用いることができるが、8重量%から25重量%が望ましい。
本発明において蛋白質の代替とする原料としては、アレルゲン性の低減又は除去された蛋白質加水分解物を用いる。蛋白質加水分解物としては、例えばカゼイン蛋白質やホエイ蛋白質等の乳蛋白質、卵の蛋白質、大豆蛋白質等を公知の方法で酵素分解又は酸加水分解し、アレルゲン性を低減又は除去した蛋白質加水分解物を挙げることができる。
【0008】
本発明においては、蛋白質の代替として蛋白質加水分解物を用いることにより、アイスクリ−ム類のもつボディ感を失わずにアレルゲン性の低減又は除去された冷菓を得ることができる。
用いる蛋白質分解物としては、分解程度の高いほどアレルゲン性が低減する傾向がある。しかしながら、用いる蛋白質加水分解物の分解程度が高いほど、ミックスの粘度が下がり、得られる冷菓の食感が低下する傾向がある。
このため、製造に当たっては、要求されるアレルゲン性の低減程度に応じた分解程度の蛋白質加水分解物を適宜用いて製造する。用いる蛋白質加水分解物の分解程度が低い場合には、蛋白質を含有するアイスクリ−ム類と同様の食感を有する冷菓を得ることができる。
【0009】
一方、用いる蛋白質加水分解物に高い分解程度が要求され、その結果、ミックスの粘度が低くなり、食感が低下する場合には、さらに多糖類を添加することにより食感の低下を防止できる。このように、適宜、多糖類を用いることにより、所望の食感を持つ冷菓を製造すればよい。
ここで用いる多糖類としては、アレルゲン性を示さない多糖類を用いるが、食味、価格等の面を考慮すると、デキストリン、ポリデキストロースが好ましく、特にポリデキストロ−スが好ましい。添加量は多糖類によって異なるが、通常、ポリデキストロ−スの場合、製品に対して0.01重量%から10重量%の範囲が好ましい。
以上のような原料を用い、適宜、乳化剤、フレーバー等を用い、通常の冷菓製造方法に従い製造すればよい。
このようにして得られた冷菓は、アレルゲン性が低減又は除去されているので、アレルギーになりやすい人にも安心して食べることができる。特に、アレルゲン性が除去されている場合には、アレルギー患者も安心して食べることができる。
【0010】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
冷菓中のアレルゲンの測定はアレルゲン蛋白質としてβ−ラクトグロブリンを指標とし、Bent MariagerらのELISA法(Bent Mariager et.al.、Food & Agricultural Immunology、1994、6、73−83)に従い行なった。また、脂質の分析にはレーゼゴッドリーブ法を用い、蛋白質はケルダール法を、灰分は灰化法を用いて分析した。また、糖質はHPLCを用い分析した。
【0011】
【実施例1】
アレルゲン性の低減された蛋白質加水分解物は、宿野部らの方法(特開平06−261691)に従い調製した。
このアレルゲン性の低減された蛋白質加水分解物250g、バターオイル400g、蔗糖550g、粉末水飴300g、乳糖200g、ポリデキストロース100g、バニラフレーバー0.2g、β−カロチン0.4g、塩化カリウム5g、クエン酸3ナトリウム4gを水に溶解し5000gとした。これを圧力120kg/cm 2 にて均質化し、85℃5分間殺菌をした。得られたミックスを常法に従ってフリーザーに投入し、オーバーラン130%に設定して冷菓を製造した。
【0012】
【比較例1】
対照として以下に示す製法にてラクトアイスを製造し、実施例1の冷菓と比較した。
脱脂乳300g、やし油250g、蔗糖5g、異性化糖250g、粉末水飴200g、バニラフレーバー0.2gを水に溶解し5000gとした。これを圧力120kg/cm 2 にて均質化し、85℃5分間殺菌をした。得られたミックスを常法に従いフリーザーに投入してオーバーラン130%に設定してラクトアイスを製造した。
実施例1の冷菓は、対照のラクトアイスとほぼ同様な品質となり、食味、食感ともに良好なものであった。またELISA法によるアレルゲン性の測定の結果、実施例1の冷菓中のアレルゲンとなる蛋白質の量は、対照のラクトアイスの1/50であった。
【0013】
【実施例2】
アレルゲン性の低減された蛋白質加水分解物は、池永らの方法(特開平08−238059)に従い調製した。
このアレルゲン性の低減された蛋白質加水分解物400g、バターオイル600g、パーム油300g、蔗糖900g、ブドウ糖200g、粉末水飴300g、バニラフレーバー0.4g、アナトー色素0.3g、塩化カリウム9g、クエン酸3ナトリウム7gを水に溶解し10000gとした。これを圧力100kg/cm 2 にて均質化し、85℃10分間殺菌をした。得られたミックスを常法に従ってフリーザーに投入し、オーバーラン150%に設定して冷菓を製造した。
【0014】
【比較例2】
対照として以下に示す製法にてアイスクリームを製造し、実施例2の冷菓と比較した。
牛乳500g、脱脂乳500g、バター800g、蔗糖200g、異性化糖400g、粉末水飴300g、バニラフレーバー0.4g、アナトー色素0.3gを水に溶解し10000gとした。これを圧力100kg/cm 2 にて均質化し、85℃10分間殺菌をした。得られたミックスを常法に従いフリーザーに投入し、オーバーラン150%に設定してアイスクリームを製造した。
実施例2の冷菓は、対照のアイスクリームとほぼ同様な品質となり、食味、食感ともに良好なものであった。また、ELISA法によるアレルゲン性の測定の結果、実施例2の冷菓中のアレルゲンとなる蛋白質の量は、対照のアイスクリームの1/3であった。
【0015】
【発明の効果】
本発明により、アレルゲン性の除去又は低減された、かつアイスクリームと同等の良好な食味、食感をもつ美味しい冷菓が提供される。従って、乳又は卵に対する食物アレルギー患者又はアレルギーになりやすい体質を持つ人でも、安心して美味しい冷菓を食べることができる。
Claims (4)
- 乳蛋白質を含有することなく、アレルゲン性の除去又は低減された蛋白質加水分解物及びバターオイルを含有することを特徴とする冷菓。
- 多糖類を含有することを特徴とする請求項1記載の冷菓。
- バターオイルを製品に対し、0.1重量%〜20重量%の範囲内で使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の冷菓。
- 蛋白質加水分解物が、乳蛋白質の加水分解物、卵蛋白質の加水分解物、大豆蛋白質の加水分解物のうちの1種類又は2種類以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷菓。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP09810298A JP3946862B2 (ja) | 1998-03-27 | 1998-03-27 | 低アレルゲン冷菓 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP09810298A JP3946862B2 (ja) | 1998-03-27 | 1998-03-27 | 低アレルゲン冷菓 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH11276086A JPH11276086A (ja) | 1999-10-12 |
JP3946862B2 true JP3946862B2 (ja) | 2007-07-18 |
Family
ID=14210977
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP09810298A Expired - Lifetime JP3946862B2 (ja) | 1998-03-27 | 1998-03-27 | 低アレルゲン冷菓 |
Country Status (1)
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ES2382100T3 (es) | 2006-10-20 | 2012-06-05 | Nestec S.A. | Péptidos estructurantes del hielo de origen láctico |
EP3316706A1 (en) | 2015-06-30 | 2018-05-09 | Unilever PLC, a company registered in England and Wales under company no. 41424 of | Frozen confection |
-
1998
- 1998-03-27 JP JP09810298A patent/JP3946862B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
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