JP3945166B2 - 静電荷像現像用トナー、画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は静電荷像現像用トナー、及び画像形成方法に関し、特に外添剤として有用な酸化チタンが外添された静電潜像現像用トナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、複写機やプリンターにより得られる静電画像の高精細、高画質化の要求が市場では高まっており、トナーの粒径を細かくしたり、結着樹脂にポリエステル系樹脂を用いることにより高画質化を達成しようとする試みが行われている。しかし、トナーの粒径を細かくするとトナーの帯電量が増加し、トナー同志の付着力が強くなり、流動性が低下するという問題が起こる。又、結着樹脂にポリエステル樹脂を使用すると温湿度の影響を受け易く、低湿化においては帯電量が高くなりすぎ、高湿化においては帯電量が不足するという問題が起こり、広範な環境において安定した帯電量のトナーが得難いという問題がある。
【0003】
一方、従来より、静電潜像現像に用いられるトナーに対して、流動性を付与したり、クリーニング性を向上させたりする目的のため、シリカ、酸化チタン等を外添し、トナーの表面処理が行われている。例えば、特開昭62−113158号、特開昭64−62667号には、それぞれ疎水性シリカ、酸化チタンを外添する技術が提案されている。
【0004】
又、このような観点から、特開平5−188633号には400nmの光波長に対する光透過率が40%以上のシランカップリング剤で処理された疎水性アナターゼ型酸化チタンを用いることが提案されている。この疎水性アナターゼ型酸化チタンは硫酸法により加水分解を行って得られたメタチタン酸を焼結しないように300〜500℃の比較的低温度で焼成したアナターゼ型酸化チタンにシランカップリング剤を処理したものである。又、特開平10−3177号にはTiO(OH)2とシランカップリング剤との反応で得られたチタン化合物を用いることが開示されている。このチタン化合物は硫酸法により加水分解を行って得られたメタチタン酸に水系媒体中でシランカップリング剤を加水分解しながら表面処理したものである。
【0005】
これらの方法により得られたアナターゼ型酸化チタン及びチタン化合物をトナーに外添した場合、トナーへの付着性及び分散性が極めて良好で、シリカに匹敵する流動性が得られ、又、トナーに付着した微粒子が離脱しにくく、キャリアのスペントが防止されるという特徴を有している。
【0006】
しかしながら、これらの方法により得られたアナターゼ型酸化チタン及びチタン化合物を外添したトナーは、撹拌によるキャリアとトナーの衝突やトナーとブレード及びスリーブとの摩擦により、トナーに付着した酸化チタンがトナー内部に徐々に埋没し、帯電が不安定になるという問題点を有していた。
【0007】
一方、特開平6−208241号にはルチル型の超微粒子酸化チタンをトナーの外添剤に使用することが提案されている。この公報に記載の疎水性ルチル型超微粒子酸化チタンは紡錘状乃至は板状の粒子構造をしたものであるため、摩擦によりトナーに付着した酸化チタンがトナー内部に埋没することによる帯電変化は少ないが、アナターゼ型酸化チタンに比べ粒径が大きいため、トナーに外添した場合には流動性が良好なトナーが得られなかった。又、ルチル型酸化チタンはシランカップリング剤との親和性が悪いため、シランカップリング剤による均一被覆が得られず、これを使用したトナーは温湿度の影響を受けやすく、帯電分布が不均一であるとの問題があった。
【0008】
このような観点から、特開2000−128534号には帯電分布が均一で、摩擦帯電性を低下させることなく安定した帯電特性を示し、分散性が良好で、トナーに使用した場合、摩擦により埋没することのない外添用酸化チタンを提供することを目的として、含水酸化チタン及び/又はアナターゼ型酸化チタンを有し、かつシランカップリング剤で処理されている処理層を有する疎水性ルチル型酸化チタンが開示されている。この疎水性ルチル型酸化チタンは、主成分としてルチル型酸化チタンを使用しているため、トナーに外添した場合、摩擦によりトナーに付着してもトナー内部に埋没することがないため、これに起因した帯電変化を生ずるおそれが無く、又含水酸化チタン及び/又はアナターゼ型酸化チタンを含有しているので、シランカップリング剤との親和性が良く、シランカップリング剤による均一被覆が得られる。しかし、流動性に優れ、帯電分布が均一で、環境依存性少なく、外添剤離脱が少なく、キャリアや摩擦帯電部材を汚染することがなく、しかもトナーの放置帯電量低下が少なく、安定した画像が得られるという点では更なる改良が望まれている。
【0009】
以上のように、従来の疎水化処理酸化チタンには一長一短があり、シランカップリング剤が均一に処理され、分散性の良好な超微粒子酸化チタンでトナーに使用した場合、上記の点で改良された超微粒子酸化チタンの出現が待たれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した事情に鑑みなてされたものであり、その目的は流動性に優れ、帯電分布が均一で、環境依存性少なく、外添剤離脱が少なく、キャリアや摩擦帯電部材を汚染することがない上、トナーの放置帯電量低下が少なく、安定した画像が得られる静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
1.同一粒子内にルチル型酸化チタン、及びアナターゼ型酸化チタンを有し、かつシランカップリング剤で表面処理された処理層を有し、その一次粒径が0.01〜0.1μmであり、かつBET比表面積が90〜220m 2 /gである疎水性酸化チタンを外部添加剤として含有する静電荷像現像用トナーであって、前記疎水性酸化チタンのルチル型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンとの比が質量比で2:98〜45:55の範囲にあることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0012】
前記疎水性酸化チタンの疎水化度30〜85%、カーボン量が2〜8%、ESCA表面分析で、チタン元素の露出量が0.01〜5%であることが好ましい。前記静電荷像現像用トナーは、角がないトナー粒子の割合が50個数%以上であり、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下であることが好ましい。前記静電荷像現像用トナーは、形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下のトナー粒子であることが好ましい。前記静電荷像現像用トナーが少なくとも重合性単量体を水系媒体中で重合せしめて得られることが好ましい。前記静電荷像現像用トナーが少なくとも樹脂粒子を水系媒体中で凝集、融着させて得られることが好ましい。前記静電荷像現像用トナーが多段重合法により得られる複合樹脂粒子と、着色剤粒子とを塩析、凝集、融着して得られるトナーであって、前記複合樹脂粒子の最外層以外の領域に離型剤が含有されていることが好ましい。
【0013】
2.同一粒子内にルチル型酸化チタン、及びアナターゼ型酸化チタンを有し、かつシランカップリング剤で表面処理された処理層を有し、その一次粒径が0.01〜0.1μmであり、かつBET比表面積が90〜220m 2 /gである疎水性酸化チタンを外部添加剤として含有する静電荷像現像用トナーであって、該静電荷像現像用トナーは、角がないトナー粒子の割合が50個数%以上であり、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0014】
前記静電荷像現像用トナーは、形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下のトナー粒子であることが好ましい。前記静電荷像現像用トナーが少なくとも重合性単量体を水系媒体中で重合せしめて得られることが好ましい。前記静電荷像現像用トナーが少なくとも樹脂粒子を水系媒体中で凝集、融着させて得られることが好ましい。前記静電荷像現像用トナーが多段重合法により得られる複合樹脂粒子と、着色剤粒子とを塩析、凝集、融着して得られるトナーであって、前記複合樹脂粒子の最外層以外の領域に離型剤が含有されていることが好ましい。
【0015】
上記1及び2における静電荷像現像用トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおける最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることが好ましい。
【0016】
3.静電荷像担持体上に静電荷像を形成する工程、静電荷像現像用トナーを含む現像剤で該静電荷像を現像してトナー画像を形成する工程、及び該トナー画像を転写体上に転写する工程を含む画像形成方法において、前記静電荷像現像用トナーとして上記1又は2記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【0017】
最初に疎水性酸化チタンについて説明する。
〔1〕疎水性酸化チタン
本発明の静電荷像現像用トナーに外添する疎水性酸化チタン(本発明の疎水性酸化チタンともいう)は、ルチル型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンを特定の比率で存在させた酸化チタンであって、シランカップリング剤で処理されている処理層を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の疎水性酸化チタンは、ルチル型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンとの割合が質量比で2:98〜45:55の範囲にある。ルチル型酸化チタンが2質量%未満では、帯電の環境依存性が過大となる問題があり、ルチル型酸化チタンが45質量%を超えては、十分な流動性とクリーニング性が得られない問題がある。
【0019】
ルチル型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンの比率、即ち質量比はX線回折により、それぞれの格子常数に対応するピーク強度から求める。
【0020】
ルチル型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンの質量比は、具体的には、対陰極にCuを使用してX線回折分析を行い、得られた結果より27.5°におけるルチル型のピークの高さ、及び、25.3°におけるアナターゼ型のピークの高さを求め、以下に示す式に各ピークの高さを代入し、ルチル含有量を求めるものである。
【0021】
ルチル含有量(%)=〔(R−B)/(A−B)+(R−B)〕×100
R:ルチル型のピーク高さ
A:アナターゼ型のピーク高さ
B:チャートから求めたベースの高さ
前記シランカップリング剤は疎水化度、環境依存性及び流動性の向上のために使用するものであり、水溶性であるものが使用できる。このようなシランカップリング剤としては、化学構造式RnSiX4-n(式中、nは0〜3の整数であり、Rは水素原子、アルキル基及びアルケニル基等の有機基を表し、Xは塩素原子、メトキシ基及びエトキシ基等の加水分解基を表す。)で表される化合物を使用することができ、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、特殊シリル化剤の何れのタイプを使用することも可能であるが、特にアルコキシシランが好ましい。アルコキシシランとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−グリドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、炭化水素基の炭素の数が2〜10のものが好ましい。中でもi−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0022】
又、上記シランカップリング剤の処理量は酸化チタン100質量%に対して、10〜100質量%であり、好ましくは20〜70質量%の範囲である。その処理量が10質量%以下の場合は疎水化の低いものしか得られないだけでなく、乾燥時に強固な固着を生じ分散が悪くなり、又、100質量%以上の場合は比表面積の低下幅が大きく、好ましくない。
【0023】
本発明の疎水性酸化チタンは、その一次粒径が0.01〜0.1μmであり、BET比表面積が90〜220m2/gであることが好ましく、特に好ましくは、120〜180m2/gである。
【0024】
トナーの高い流動性を得る観点から前記酸化チタンの一次粒径は、それぞれ0.01〜0.10μmであることが好ましく、0.15〜0.60μmが特に好ましい。又、本発明の酸化チタンは、ポーラスであり、粒子内部に細孔を多数有し、又細孔内部までシランカップリング剤で処理された状態が好ましい。それにより、高湿度環境においても、水蒸気が細孔内部にトラップされるため帯電量低下が発生しない。
【0025】
又、シランカップリング剤処理量の指標であるカーボン量は2〜8%が好ましい。カーボン量は、燃焼法型炭素分析装置により、構造が既知であるシランカップリング剤と酸化チタンを適宜に混合した基準品から作成した検量線から求める。
【0026】
又、処理の均一性を高める観点からESCA表面分析でチタン元素の露出量が0.01〜5%であることが好ましい。0.01%未満では、トナーと酸化チタンの付着力が低下し、離脱した酸化チタンがキャリア、摩擦帯電部材、又は感光体を汚染する問題があり、逆に5%を超えると帯電の環境依存性が広がる。
【0027】
又、本発明の酸化チタンは、適度な流動性とクリーニング性を得る観点から分散性、即ち400nmの分光透過率が10〜40%であることが好ましく、更に20〜30%が好ましい。
【0028】
以下に、本発明の酸化チタンの各種測定法を挙げておく。
(1)比表面積
自動比表面積測定装置 GEMINI 2375(島津製作所製)によりBET一点法にて測定した。
(2)疎水化度
疎水性酸化チタン微粉末10mgを水10mlに添加し、撹拌しながらメタノールを2ml/分の割合でマイクロチューブポンプにより水中に投入し、微粉末が沈降開始する時のメタノール濃度と完全に湿潤した時のメタノール濃度を求めた。
(3)分散性
試料0.02gとエタノール200mlを500mlのビーカー中に採取、混合し、超音波分散器にて3分間分散処理を行う。この様にして得た分散液を石英セル中に充填し、分光光度計により、400nmにおける分光透過率を読み、この値を透過率(%)とする。この値が高いものほど、透明性が良好で粗大粒子が少なく、分散性が良好である。
(4)一次粒径
透過型電子顕微鏡で10万倍に拡大して、粒子200個のフェレ径の平均値で評価した。
【0029】
本発明の疎水性酸化チタンの粒子表面を、アルミニウム、ケイ素、チタニウム、ジルコニウム及び錫のうちの一種又は二種以上を元素を含む層で被覆することが好ましい。即ち、シランカップリング剤で処理する前の粒子表面を、前記所定の元素を含む層で被覆することが好ましい。
【0030】
シランカップリング剤処理を行う前に前記層を被覆するのは、帯電性と抵抗を調整するためである。前記元素の処理量は3〜20質量%が好ましい。3質量%未満では帯電を調整するという効果が得難く、20質量%を超えると粒子同士の合一化が起こるため好ましくない。
【0031】
又、本発明では、前記シランカップリング剤で処理されている処理層の表面を更にカップリング剤及び/又はシリコンオイルで被覆することもできる。即ち、水系媒体中でシランカップリング剤を処理した後、疎水性の向上や帯電量の調整のために気相中でシランカップリング剤やシリコンオイル等の有機ケイ素化合物を処理することができる。この際に使用できるシランカップリング剤としては、上記したものの他、フロロシラン、アミノシラン、ポリジメチルシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が使用できる。
【0032】
気相中で処理する場合の処理量は得られた微粉体100質量%に対し1〜20質量%、特に3〜15質量%処理することが好ましい。その処理量が1質量%未満の場合はその効果が得られず、又20質量%を超える場合は比表面積が低くなるので好ましくない。
【0033】
本発明における疎水性酸化チタンは種々の方法で製造できるが、代表的には次の方法により得ることができる。
1)硫酸チタニル溶液又は四塩化チタン溶液をアルカリで中和して得られるオルソチタン酸を35〜60℃の温度で熟成を行った後、塩酸濃度10〜45g/L、TiO2濃度40〜140g/L、反応温度90℃〜沸点(103℃)で加水分解を行った後、中和を行う方法。
2)公知の方法で得られるルチル型酸化チタンに水溶性チタン化合物を用いてアナターゼ型酸化チタンを55〜98質量%被覆する方法。
【0034】
本発明においては1)の方法で得られるアナターゼ型酸化チタンを55〜98質量%被覆したルチル型酸化チタンが特に好ましい。この方法によれば、結晶性の良好なアナターゼ型酸化チタンが均一に被覆されたルチル型酸化チタンを容易に得ることができる。
【0035】
具体的には、硫酸チタニル溶液又は四塩化チタン溶液を30℃以下の温度においてアルカリで中和して得られたオルソチタン酸を60〜95℃で熟成した後、TiO2濃度40〜140g/L、好ましくは60〜120g/L、塩酸濃度1〜10g/L、好ましくは2〜8g/L、反応温度90℃〜沸点(103℃)、好ましくは100℃以上で反応合成するのがよい。オルソチタン酸の熟成温度は60℃未満の場合は、所望するアナターゼ型酸化チタンの含有量が低い酸化チタンが得られ、95℃を超えるとアナターゼ型酸化チタンの含有量が過大となるので好ましくない。塩酸濃度1g/L未満の場合はアナターゼ型酸化チタンの含有量が98質量%を超え、又、塩酸濃度10g/Lを超えるとアナターゼ型酸化チタンの含有量が55質量%未満となるので好ましくない。
【0036】
所望とするアナターゼ型酸化チタンを含むルチル型酸化チタンの反応温度が90℃未満の場合は反応時間が長くなるので好ましくない。
【0037】
又、2)の方法によりアナターゼ型酸化チタンが55〜98質量%被覆された酸化チタンを製造する場合は、被覆時に粒子同士の合体が起こらないように被覆処理を行うことが必要である。例えば、このような酸化チタンは硫酸チタン溶液を添加して加熱加水分解を行う方法、又は、加温下においてアルカリと硫酸チタン溶液をpHを一定に保ちながら同時に添加して加水分解する方法、或いは尿素中和法により被覆する方法により得ることができる。
【0038】
前記酸化チタンは、一価の酸性チタン溶液を加水分解して得られたものであることが好ましい。
【0039】
ここで、一価の酸性チタン溶液とは、四塩化チタン又はオルソチタン酸を塩酸或いは硝酸等で溶解したチタン溶液をいう。一価の酸性チタン溶液としたのは、二価の酸性チタン溶液である硫酸チタン溶液を使用した場合には、アナターゼ型酸化チタンしか得られず、ルチル型酸化チタンを得ることができないからである。
【0040】
疎水性超微粒子アナターゼ型酸化チタンと同じように、本発明の疎水性酸化チタンをトナーに外添した場合、トナーへの付着性及び分散性が極めて良好という特徴を有している。又、不定形酸化チタンが主体であるため、薄片状のアナターゼ型酸化チタンとは異なり、トナーに高い流動性を付与することが出来る。従って、比較的形状の丸いトナーにおいても良好なクリーニング性が得られるという効果を有する。
【0041】
即ち、本発明の疎水性酸化チタンは、超微粒子状態で表面が疎水化されたものであるので、疎水化度が高く、分散性が良好で、又、外添したトナーは流動性が良好である。
【0042】
本発明にて得られた疎水性酸化チタンのトナーへの添加量は0.1〜3質量%が好ましく、更に好ましくは0.2〜1質量%である。0.1質量%未満では、トナーの流動性が得られず、3質量%を超えるとトナーからの遊離粒子が増加し感光体やキャリアの汚染の原因になるので好ましくない。
【0043】
次に本発明の静電荷像現像用トナー(本発明のトナーともいう)について記載する。
〔2〕本発明のトナー
トナー製造法
本発明のトナーは、懸濁重合法や、必要な添加剤の乳化液を加えた液中(水系媒体中)にて単量体を乳化重合、又はミニエマルション重合して微粒の樹脂粒子を調製し、荷電制御性樹脂粒子を添加し、その後に、有機溶媒、塩類などの凝集剤等を添加して当該樹脂粒子を凝集、融着する方法で製造することができる。
・懸濁重合法
本発明のトナーを製造する方法の一例を示せば、重合性単量体中に荷電制御性樹脂を溶解させ、着色剤や必要に応じて離型剤、更に重合開始剤等の各種構成材料を添加し、ホモジナイザー、サンドミル、サンドグラインダー、超音波分散機などで重合性単量体に各種構成材料を溶解又は分散させる。この各種構成材料が溶解又は分散された重合性単量体を分散安定剤を含有した水系媒体中にホモミキサーやホモジナイザーなどを使用しトナーとしての所望の大きさの油滴に分散させる。その後、攪拌機構が後述の攪拌翼である反応装置(攪拌装置)へ移し、加熱することで重合反応を進行させる。反応終了後、分散安定剤を除去し、濾過、洗浄し、更に乾燥することで本発明のトナーを調製する。尚、本発明でいうところの「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものを示す。・乳化重合法
又、本発明のトナーを製造する方法として樹脂粒子を水系媒体中で塩析、凝集、融着させて調製する方法も挙げることができる。この方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開平5−265252号や特開平6−329947号、特開平9−15904号に示す方法を挙げることができる。即ち、樹脂粒子と着色剤などの構成材料の分散粒子、又は樹脂及び着色剤等より構成される微粒子を複数以上塩析、凝集、融着させる方法、特に水中にてこれらを乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移温度(Tg)以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止し、更に加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することにより、本発明のトナーを形成することができる。尚、ここにおいて凝集剤と同時にアルコールなど水に対して無限溶解する溶媒を加えてもよい。
【0044】
本発明のトナーの製造工程は、主に、以下に示す工程より構成されている。
1:離型剤が最外層以外の領域(中心部又は中間層)に含有されている複合樹脂粒子を得るための多段重合工程
2:複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させてトナー粒子を得る塩析/融着工程
3:トナー粒子の分散系から当該トナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤などを除去する濾過・洗浄工程
4:洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程
5:乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程
から構成される。
【0045】
以下、各工程について、詳細に説明する。
〔多段重合工程〕
多段重合工程は、樹脂粒子の表面に、単量体の重合体からなる被覆層を形成する多段重合法により、複合樹脂粒子を製造する工程である。
【0046】
本発明においては、製造の安定性及び得られるトナーの破砕強度の観点から三段重合以上の多段重合法を採用することが好ましい。
【0047】
以下に、多段重合法の代表例である二段重合法及び三段重合法について説明する。
〈二段重合法〉
二段重合法は、離型剤を含有する高分子量樹脂から形成される中心部(核)と、低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
【0048】
この方法を具体的に説明すると、先ず、離型剤を単量体Lに溶解させて単量体溶液を調製し、この単量体溶液を水系媒体(例えば、界面活性剤水溶液)中に油滴分散させた後、この系を重合処理(第1段重合)することにより、離型剤を含む高分子量の樹脂粒子の分散液を調製するものである。
【0049】
次いで、この樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体Lとを添加し、樹脂粒子の存在下で単量体Lを重合処理(第2段重合)を行うことにより、樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体Lの重合体)からなる被覆層を形成する方法である。
〈三段重合法〉
三段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)、離型剤を含有する中間層及び低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
【0050】
この方法を具体的に説明すると、先ず、常法に従った重合処理(第1段重合)により得られた樹脂粒子の分散液を、水系媒体(例えば、界面活性剤の水溶液)に添加するとともに、上記水系媒体中に、離型剤を単量体Mに溶解させてなる単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第2段重合)することにより、樹脂粒子(核粒子)の表面に、離型剤を含有する樹脂(単量体Mの重合体)からなる被覆層(中間層)を形成して、複合樹脂粒子(高分子量樹脂−中間分子量樹脂)の分散液を調製する。
【0051】
次いで、得られた複合樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体Lとを添加し、複合樹脂粒子の存在下で単量体Lを重合処理(第3段重合)することにより、複合樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体Lの重合体)からなる被覆層を形成する。上記方法において、第2段重合を組み入れることにより、離型剤を微細かつ均一に分散することができ好ましい。
【0052】
本発明に係るトナーの製造方法においては、重合性単量体を水系媒体中で重合することが1つの特徴である。即ち、離型剤を含有する樹脂粒子(核粒子)又は被覆層(中間層)を形成する際に、離型剤を単量体に溶解させ、得られる単量体溶液を水系媒体中で油滴分散させ、この系に重合開始剤を添加して重合処理することにより、ラテックス粒子として得る方法である。
【0053】
本発明でいう水系媒体とは、水50〜100質量%と水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等を例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0054】
離型剤を含有する樹脂粒子又は被覆層を形成するために好適な重合法としては、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、離型剤を単量体に溶解した単量体溶液を、機械的エネルギーを利用して油滴分散させて分散液を調製し、得られた分散液に水溶性重合開始剤を添加して、油滴内でラジカル重合させる方法(以下、ミニエマルジョン法という。)を挙げることができ、本発明の効果をより発揮することができ好ましい。尚、上記方法において、水溶性重合開始剤に代えて、又は水溶性重合開始剤と共に、油溶性重合開始剤を用いても良い。
【0055】
機械的に油滴を形成するミニエマルジョン法によれば、通常の乳化重合法とは異なり、油相に溶解させた離型剤が脱離することがなく、形成される樹脂粒子又は被覆層内に十分な量の離型剤を導入することができる。
【0056】
ここで、機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、例えば、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリン及び圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。又、分散粒子径としては、10〜1000nmとされ、好ましくは50〜1000nm、更に好ましくは30〜300nmである。
【0057】
尚、離型剤を含有する樹脂粒子又は被覆層を形成するための他の重合法として、乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法などの公知の方法を採用することもできる。又、これらの重合法は、複合樹脂粒子を構成する樹脂粒子(核粒子)又は被覆層であって、離型剤を含有しないものを得るためにも採用することができる。
【0058】
この重合工程で得られる複合樹脂粒子の粒子径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される質量平均粒径で10〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
【0059】
又、複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は48〜74℃の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは52〜64℃である。
【0060】
又、複合樹脂粒子の軟化点は95〜140℃の範囲にあることが好ましい。
〔塩析/融着工程〕
この塩析/融着工程は、前記多段重合工程によって得られた複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる(塩析と融着とを同時に起こさせる)ことによって、不定形(非球形)のトナー粒子を得る工程である。
【0061】
本発明でいう塩析/融着とは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、又は、塩析と融着とを同時に起こさせる行為をいう。塩析と融着とを同時に行わせるためには、複合樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下において粒子(複合樹脂粒子、着色剤粒子)を凝集させる必要がある。
【0062】
この塩析/融着工程では、複合樹脂粒子及び着色剤粒子とともに、荷電制御剤などの内添剤粒子(数平均一次粒子径が10〜1000nm程度の微粒子)を塩析/融着させてもよい。又、着色剤粒子は、表面改質されていてもよく、表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができる。
【0063】
着色剤粒子は、水系媒体中に分散された状態で塩析/融着処理が施される。着色剤粒子が分散される水系媒体は、臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度で界面活性剤が溶解されている水溶液が好ましい。
【0064】
着色剤粒子の分散処理に使用する分散機は、特に限定されないが、好ましくは、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、ゲッツマンミル、ダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
【0065】
複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させるためには、複合樹脂粒子及び着色剤粒子が分散している分散液中に、臨界凝集濃度以上の塩析剤(凝集剤)を添加するとともに、この分散液を、複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以上に加熱することが必要である。
【0066】
塩析/融着させるために好適な温度範囲としては、(Tg+10)〜(Tg+50℃)とされ、特に好ましくは(Tg+15)〜(Tg+40℃)とされる。又、融着を効果的に行なわせるために、水に無限溶解する有機溶媒を添加してもよい。
〔濾過・洗浄工程〕
この濾過・洗浄工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散系から当該トナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。
【0067】
ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
〔乾燥工程〕
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程である。
【0068】
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0069】
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。
【0070】
尚、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0071】
本発明のトナーは、着色剤の不存在下において複合樹脂粒子を形成し、当該複合樹脂粒子の分散液に着色剤粒子の分散液を加え、当該複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させることにより調製されることが好ましい。
【0072】
このように、複合樹脂粒子の調製を着色剤の存在しない系で行うことにより、複合樹脂粒子を得るための重合反応が阻害されることない。このため、本発明のトナーによれば、優れた耐オフセット性が損なわれることはなく、トナーの蓄積による定着装置の汚染や画像汚れを発生させることはない。
【0073】
又、複合樹脂粒子を得るための重合反応が確実に行われる結果、得られるトナー粒子中に単量体やオリゴマーが残留するようなことはなく、当該トナーを使用する画像形成方法の熱定着工程において、異臭を発生させることはない。
【0074】
更に、得られるトナー粒子の表面特性は均質であり、帯電量分布もシャープとなるため、鮮鋭性に優れた画像を長期にわたり形成することができる。このようなトナー粒子間における組成・分子量・表面特性が均質であるトナーによれば、接触加熱方式による定着工程を含む画像形成方法において、画像支持体に対する良好な接着性(高い定着強度)を維持しながら、耐オフセット性及び巻き付き防止特性の向上を図ることができ、適度の光沢を有する画像を得ることができる。
【0075】
次に、トナー製造工程で用いられる各構成因子について、詳細に説明する。
(重合性単量体)
本発明に用いられる樹脂(バインダー)を造るための重合性単量体としては、疎水性単量体を必須の構成成分とし、必要に応じて架橋性単量体が用いられる。又、下記するごとく酸性極性基を有する単量体又は塩基性極性基を有するモノマーを少なくとも1種類含有するのが望ましい。
(1)疎水性単量体
単量体成分を構成する疎水性単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。又、要求される特性を満たすように、1種又は2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0076】
具体的には、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0077】
ビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体及びその誘導体が挙げられる。
【0078】
アクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0079】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
【0080】
ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0081】
モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0082】
ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
(2)架橋性単量体
樹脂粒子の特性を改良するために架橋性単量体を添加しても良い。架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
(3)酸性極性基を有する単量体
酸性極性基を有する単量体としては、(a)カルボキシル基(−COOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物及び(b)スルホン基(−SO3H)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。
(a)の−COO基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル、及びこれらのNa、Zn等の金属塩類等を挙げることができる。
(b)の−SO3H基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としてはスルホン化スチレン、そのNa塩、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル、そのNa塩等を挙げることができる。
(4)塩基性極性基を有するモノマー
塩基性極性基を有するモノマーとしては、(i)アミン基或いは4級アンモニウム基を有する炭素原子数1〜12、好ましくは2〜8、特に好ましくは2の脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、(ii)(メタ)アクリル酸アミド或いはN上で随意炭素原子数1〜18のアルキル基でモノ又はジ置換された(メタ)アクリル酸アミド、(iii)Nを環員として有する複素環基で置換されたビニール化合物及び(iv)N,N−ジアリル−アルキルアミン或いはその四級アンモニウム塩を例示することができる。中でも(i)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルが塩基性極性基を有するモノマーとして好ましい。
(i)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルの例としては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、上記4化合物の四級アンモニウム塩、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
(ii)の(メタ)アクリル酸アミド或いはN上で随意モノ又はジアルキル置換された(メタ)アクリル酸アミドとしては、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド等を挙げることができる。
(iii)のNを環員として有する複素環基で置換されたビニル化合物としては、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル−N−メチルピリジニウムクロリド、ビニル−N−エチルピリジニウムクロリド等を挙げることができる。
(iv)のN,N−ジアリル−アルキルアミンの例としては、N,N−ジアリルメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジアリルエチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
【0083】
本発明に用いられる重合開始剤について説明する。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は、水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(例えば、4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物等が挙げられる。更に、上記ラジカル性重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いることにより、重合活性が上昇し、重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が達成でき好ましい。
【0084】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であればどの温度を選択しても良いが例えば50℃から90℃の範囲が用いられる。但し、常温開始の重合開始剤、例えば過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)の組み合わせを用いる事で、室温又はそれ以上の温度で重合する事も可能である。
【0085】
本発明に用いられる連鎖移動剤について説明する。
分子量を調整することを目的として、公知の連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプト基を有する化合物が用いられる。特に、メルカプト基を有する化合物は、加熱定着時の臭気を抑制し、分子量分布がシャープである静電荷像現像用トナーが得られ、保存性、定着強度、耐オフセット性に優れるため好ましく用いられ、好ましいものとしては、例えば、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのメルカプト基を有する化合物、ネオペンチルグリコールのメルカプト基を有する化合物、ペンタエリストールのメルカプト基を有する化合物を挙げることができる。このうち、静電荷像現像用トナー加熱定着時の臭気を抑制する観点で、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステルが、特に好ましい。
【0086】
本発明に用いられる界面活性剤について説明する。
前述の重合性単量体を使用して、特にミニエマルジョン重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行うことが好ましい。この際に使用することのできる界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適な化合物の例として挙げることができる。
【0087】
イオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0088】
又、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等を挙げることができる。
【0089】
本発明において、これら界面活性剤は、主に乳化重合時の乳化剤として使用されるが、他の工程又は他の目的で使用してもよい。
【0090】
本発明においては、トナーの帯電保持機能を良好な状態に保ち、高温高質下でのかぶり発生を抑え、転写性向上の観点から、又、低温低湿下での帯電量上昇を抑え、現像量を安定化させるという観点から、上記記載の界面活性剤の本発明の静電荷像現像用トナー中の含有量としては、1〜1000ppmが好ましく、更に好ましくは5〜500ppmであり、特に好ましくは7〜100ppmである。
【0091】
本発明で用いられる凝集剤について説明する。
本発明で用いられる凝集剤は、金属塩の中から選択されるものが好ましい。金属塩としては、一価の金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩、二価の金属、例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩、マンガン、銅等の二価の金属塩、鉄、アルミニウム等の三価の金属塩等が挙げられる。
【0092】
これら金属塩の具体的な例を以下に示す。一価の金属の金属塩の具体例として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、二価の金属の金属塩として塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられる。三価の金属塩としては、塩化アルミニウム、塩化鉄等が挙げられる。これらは、目的に応じて適宜選択される。一般的には一価の金属塩より二価の金属塩のほうが臨界凝集濃度(凝析値或いは凝析点)が小さく、更に三価の金属塩の臨界凝集濃度は小さい。
【0093】
本発明で言う臨界凝集濃度とは、水性分散液中の分散物の安定性に関する指標であり、凝集剤を添加し、凝集が起こる点の濃度を示している。この臨界凝集濃度は、ラテックス自身及び分散剤により大きく変化する。例えば、岡村誠三他著高分子化学17,601(1960)等に記述されており、これらの記載に従えば、その値を知ることが出来る。又、別の方法として、目的とする粒子分散液に所望の塩を濃度を変えて添加し、その分散液のζ電位を測定し、ζ電位が変化し出す点の塩濃度を臨界凝集濃度とすることも可能である。
【0094】
本発明では、金属塩を用いて臨界凝集濃度以上の濃度になるように重合体微粒子分散液を処理する。この時、当然の事ながら、金属塩を直接加えるか、水溶液として加えるかは、その目的に応じて任意に選択される。水溶液として加える場合には、重合体粒子分散液の容量と金属塩水溶液の総容量に対し、添加した金属塩が重合体粒子の臨界凝集濃度以上になる必要がある。
【0095】
本発明における凝集剤たる金属塩の濃度は、臨界凝集濃度以上であれば良いが、好ましくは臨界凝集濃度の1.2倍以上、更に好ましくは1.5倍以上添加される。
【0096】
本発明においては、トナー粒子への過剰帯電を抑え、均一な帯電性を付与するという観点から、特に環境に対して帯電性を安定化し、維持する為に、本発明の静電荷像現像用トナーは、上記に記載の金属元素(形態として、金属、金属イオン等が挙げられる)をトナー中に250〜2万ppm含有することが好ましく、更に好ましくは800〜5千ppmである。
【0097】
又、本発明においては、凝集剤に用いる2価(3価)の金属元素と後述する凝集停止剤として加える1価の金属元素の合計値が350〜3万5千ppmであることが好ましい。
【0098】
トナー中の金属イオン残存量の測定は、蛍光X線分析装置「システム3270型」〔理学電気工業(株)製〕を用いて、凝集剤として用いられる金属塩の金属種(例えば、塩化カルシウムに由来するカルシウム等)から発する蛍光X線強度を測定することによって求めることができる。具体的な測定法としては、凝集剤金属塩の含有割合が既知のトナーを複数用意し、各トナー5gをペレット化し、凝集剤金属塩の含有割合(質量ppm)と、当該金属塩の金属種からの蛍光X線強度(ピーク強度)との関係(検量線)を測定する。次いで、凝集剤金属塩の含有割合を測定すべきトナー(試料)を同様にペレット化し、凝集剤金属塩の金属種からの蛍光X線強度を測定し、含有割合即ち「トナー中の金属イオン残存量」を求めることが出来る。
(静電荷像現像用トナーの分子量分布)
本発明のトナーは、ピーク又は肩が10万〜100万、及び1000〜5万に存在することが好ましく、更にピーク又は肩が10万〜100万、2万5千〜15万及び1000〜5万に存在することが更に好ましい。
【0099】
樹脂粒子の分子量は、10万〜100万の領域にピークもしくは肩を有する高分子量成分と、1000から5万未満の領域にピークもしくは肩を有する低分子量成分の両成分を少なくとも含有する樹脂が好ましい。更に好ましくは、ピーク分子量で1万5千〜10万の部分にピーク又は肩を有する中間分子量体の樹脂を使用することが好ましい
静電荷像現像用トナー或いは樹脂の分子量測定方法は、THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定がよい。
【0100】
即ち、測定試料0.5〜5mg、より具体的には1mgに対してTHFを1.0ml加え、室温にてマグネチックスターラーなどを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。ついで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCへ注入する。GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1.0mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムは、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard columnの組合せなどを挙げることができる。又、検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)、或いはUV検出器を用いるとよい。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作製した検量線を用いて算出する。検量線作製用のポリスチレンとしては10点程度用いるとよい。
【0101】
本発明の静電荷像現像用トナー粒子について説明する。
本発明の静電荷像現像用トナーの粒径は、個数平均粒径で2〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは3〜8μmとされる。この粒径は、静電荷像現像用トナーの製造方法において、凝集剤(塩析剤)の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
【0102】
個数平均粒径が2〜10μmであることにより、定着工程において、飛翔して加熱部材に付着しオフセットを発生させる付着力の大きい静電荷像現像用トナー微粒子が少なくなり、又、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
【0103】
静電荷像現像用トナーの個数平均粒径は、コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザー、SLAD1100(島津製作所社製レーザー回折式粒径測定装置)等を用いて測定することができる。
【0104】
本発明においては、コールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機社製)、パーソナルコンピューターを接続して使用した。前記コールターマルチサイザーにおけるアパーチャーとしては、100μmのものを用いて、2μm以上(例えば2〜40μm)の静電荷像現像用トナーの体積分布を測定して粒度分布及び平均粒径を算出した。
〈静電荷像現像用トナー粒子の好ましい形状係数の範囲〉
本発明の静電荷像現像用トナーの形状係数は、下記式により示されるものであり、静電荷像現像用トナー粒子の丸さの度合いを示す。
【0105】
形状係数=((最大径/2)2×π)/投影面積
ここに、最大径とは、静電荷像現像用トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。又、投影面積とは、静電荷像現像用トナー粒子の平面上への投影像の面積をいう。本発明では、この形状係数は、走査型電子顕微鏡により2000倍に静電荷像現像用トナー粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、100個の静電荷像現像用トナー粒子を使用して本発明の形状係数を上記算出式にて測定したものである。
【0106】
本発明の静電荷像現像用トナーは、この形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子が65個数%以上とすることが好ましく、更に好ましくは、この形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子が70個数%以上である。
【0107】
この形状係数が1.0〜1.6の範囲にあるトナー粒子が65個数%以上であることにより、現像剤搬送部材などでの摩擦帯電性がより均一となり、過度に帯電したトナーの蓄積が無く、現像剤搬送部材表面よりトナーがより交換しやすくなるために、現像ゴースト等の問題も発生しにくくなる。更に、トナー粒子が破砕しにくくなって帯電付与部材の汚染が減少し、トナーの帯電性が安定する。
【0108】
この形状係数を制御する方法は特に限定されるものではない。例えばトナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、又はトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、或いはトナーを溶解しない溶媒中に添加し旋回流を付与する方法等により、形状係数を1.2〜1.6にしたトナーを調製し、これを通常のトナー中へ本発明の範囲内になるように添加して調整する方法がある。又、いわゆる重合法トナーを調整する段階で全体の形状を制御し、形状係数を1.2〜1.6に調整したトナーを同様に通常のトナーへ添加して調整する方法がある。
【0109】
本発明の静電荷像現像用トナーとしては、静電荷像現像用トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおいて、最頻階級に含まれる静電荷像現像用トナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれる静電荷像現像用トナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上である静電荷像現像用トナーであることが好ましい。
【0110】
相対度数(m1)と相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることにより、静電荷像現像用トナー粒子の粒度分布の分散が狭くなるので、当該静電荷像現像用トナーを画像形成工程に用いることにより選択現像の発生を確実に抑制することができる。
【0111】
本発明において、前記の個数基準の粒度分布を示すヒストグラムは、自然対数lnD(D:個々の静電荷像現像用トナー粒子の粒径)を0.23間隔で複数の階級(0〜0.23:0.23〜0.46:0.46〜0.69:0.69〜0.92:0.92〜1.15:1.15〜1.38:1.38〜1.61:1.61〜1.84:1.84〜2.07:2.07〜2.30:2.30〜2.53:2.53〜2.76・・・)に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムであり、このヒストグラムは、下記の条件に従って、コールターマルチサイザーにより測定されたサンプルの粒径データを、I/Oユニットを介してコンピュータに転送し、当該コンピュータにおいて、粒度分布分析プログラムにより作製されたものである。
【0112】
本発明に係る『角のないトナー粒子』について図1を用いて説明する。
本発明に係るトナーにおいては、トナーを構成するトナー粒子中、角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であることが好ましく、更に好ましくは、70個数%以上である。
【0113】
角がないトナー粒子の割合が50個数%以上であることにより、転写されたトナー層(粉体層)の空隙が減少して定着性が向上し、オフセットが発生しにくくなる。又、摩耗、破断しやすいトナー粒子及び電荷の集中する部分を有するトナー粒子が減少することとなり、帯電量分布がシャープとなって、帯電性も安定し、良好な画質を長期にわたって形成できる。
【0114】
「角がないトナー粒子」とは、電荷の集中するような突部又はストレスにより摩耗しやすいような突部を実質的に有しないトナー粒子を言い、具体的には以下のトナー粒子を角がないトナー粒子という。即ち、図1(a)に示すように、トナー粒子Tの長径をLとするときに、半径(L/10)の円Cで、トナー粒子Tの周囲線に対し1点で内側に接しつつ内側をころがした場合に、当該円CがトナーTの外側に実質的にはみださない場合を「角がないトナー粒子」という。「実質的にはみ出さない場合」とは、はみ出す円が存在する突起が1箇所以下である場合をいう。又、「トナー粒子の長径」とは、当該トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。尚、図1(b)及び(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示している。
【0115】
角がないトナー粒子の割合の測定は次のようにして行った。先ず、走査型電子顕微鏡によりトナー粒子を拡大した写真を撮影し、更に拡大して1万5千倍の写真像を得る。次いでこの写真像について前記の角の有無を測定する。この測定を100個のトナー粒子について行った。
【0116】
角がないトナーを得る方法は特に限定されるものではない。例えば、形状係数を制御する方法として前述したように、トナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、又はトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、或いはトナーを溶解しない溶媒中に添加し、旋回流を付与することによって得ることができる。
【0117】
本発明の静電荷像現像用トナーの好ましい製造方法について説明する。
<樹脂、着色剤、ワックスの各原料を有機溶剤中に溶解或いは分散して油相成分を形成する工程と、該油相成分を水性溶媒中で造粒>
結着樹脂(バインダーともいう)を溶解しうる有機溶媒中に結着樹脂、荷電制御性樹脂、着色剤、離型剤を溶解又は分散して油性成分を調製する工程と、該油性成分を水系媒体中に分散させた状態から静電荷像現像用トナーを造粒する工程とを有する静電荷像現像用トナーの製造方法である。
【0118】
結着樹脂を溶解しうる有機溶媒中に結着樹脂、着色剤、及びワックスを溶解・分散して油性成分を調製する工程とは、結着樹脂、荷電制御性樹脂、着色剤、及び離型剤を、結着樹脂を溶解しうる有機溶媒中に混合分散する工程である。
【0119】
結着樹脂を溶解しうる有機溶媒としては、一般の有機溶媒が用いられる。例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール等のアルコール、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類が挙げられるが、この中でも、樹脂の溶解性、脱溶剤性の点で、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が好ましい。又、これらは単独で使用してもよく、混合して使用してもよい。油性成分を水性媒体中に分散させた状態から静電荷像現像用トナーを造粒する工程とは、前記工程で調整された油性成分を水性媒体中に分散させた状態から固化させて粒子を作製し、これを乾燥させて静電荷像現像用トナーを得る工程である。
【0120】
粒子作製方法としては、前記結着性樹脂、前記荷電制御性樹脂、前記着色剤、前記離型剤、その他の材料を溶媒に溶解分散させてなる溶液を、水系媒体中で懸濁分散し、その後前記溶媒を除去する方法、前記溶液に水性の貧溶媒を加えることにより粒子を析出させる方法、前記結着樹脂、前記荷電制御性樹脂、前記着色剤、前記離型剤、その他の材料を含む加熱溶融物を水系媒体中で溶融分散し、その後冷却して粒子を形成する方法、重合性単量体、前記着色剤、離型剤、その他の材料を含む混合液を水系媒体中で懸濁分散し、その後前記単量体を重合させる方法などが挙げられる。
【0121】
前記水性媒体としては、主として水が用いられるが、水溶性溶媒を混合しても構わない。更に分散剤を添加することが粒径分布上好ましい。分散剤としては、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シリカ、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などが挙げられる。分散剤の量は、母液100質量部に対して、0〜20質量部が好ましい。
【0122】
粒子作製のための攪拌方法としては、剪断を加えることが望ましく、ホモジナイザー、コロイドミル、ディゾルバー、などが用いられる。
【0123】
乾燥には、通気乾燥装置、噴霧乾燥装置、回転乾燥装置、気流乾燥装置、流動層乾燥装置、伝熱加熱型乾燥装置、凍結乾燥装置などが知られており、何れも用いることができる。
【0124】
本発明に係る結着樹脂について説明する。
本発明に係る結着樹脂を製造するために、重合性単量体として使用されるものは、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレン或いはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等の、アクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン系ビニル類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸或いはメタクリル酸誘導体がある。これらビニル系単量体は単独或いは組み合わせて使用することができる。
【0125】
又、樹脂を構成する重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが更に好ましい。例えば、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の置換基を単量体の構成基として有するもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。更に、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の多官能性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂とすることもできる。
【0126】
これら重合性単量体はラジカル重合開始剤を用いて重合することができる。この場合、懸濁重合法では油溶性重合開始剤を用いることができる。この油溶性重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを挙げることができる。又、乳化重合法を用いる場合には水溶性ラジカル重合開始剤を使用することができる。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等を挙げることができる。
【0127】
分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等を挙げることができる。更に、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等の界面活性剤として一般的に使用されているものを分散安定剤として使用することができる。
【0128】
本発明に係る結着樹脂としては、ガラス転移点が20〜90℃、軟化点が80〜220℃のものが好ましい。ガラス転移点は示差熱量分析方法で測定され、軟化点は高化式フローテスターで測定するできる。更に、これら樹脂としてはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定される分子量が数平均分子量(Mn)で1000〜10万、重量平均分子量(Mw)で2000〜100万のものが好ましい。更に、分子量分布として、Mw/Mnが1.5〜100、特に1.8〜70のものが好ましい。
【0129】
本発明の静電荷像現像用トナーの構成成分として用いられる着色剤について説明する。
【0130】
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する着色剤(複合樹脂粒子との塩析、融着に供される着色剤粒子)としては、各種の無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0131】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0132】
これらの無機顔料は所望に応じて単独又は複数を選択併用する事が可能である。又顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0133】
磁性静電荷像現像用トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、静電荷像現像用トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
【0134】
有機顔料及び染料としても従来公知のものを用いることができる。具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
【0135】
マゼンタ又はレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0136】
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156等が挙げられる。
【0137】
グリーン又はシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0138】
又、染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いることができ、又これらの混合物も用いることができる。
【0139】
これらの有機顔料及び染料は、所望に応じて、単独又は複数を選択併用することが可能である。又、顔料の添加量は、重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0140】
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する着色剤(着色剤粒子)は、表面改質されていてもよい。表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を好ましく用いることができる。シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。チタンカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクト」と称する商品名で市販されているTTS、9S、38S、41B、46B、55、138S、238S等、日本曹達社製の市販品A−1、B−1、TOT、TST、TAA、TAT、TLA、TOG、TBSTA、A−10、TBT、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA−400、TTS、TOA−30、TSDMA、TTAB、TTOP等が挙げられる。アルミニウムカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクトAL−M」等が挙げられる。
【0141】
これらの表面改質剤の添加量は、着色剤に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜5質量%とされる。
【0142】
着色剤粒子の表面改質法としては、着色剤粒子の分散液中に表面改質剤を添加し、この系を加熱して反応させる方法を挙げることができる。
【0143】
表面改質された着色剤粒子は、濾過により採取され、同一の溶媒による洗浄処理と濾過処理が繰り返された後、乾燥処理される。
(離型剤)
本発明に使用される静電荷像現像用トナーは、離型剤を内包した樹脂粒子を水系媒体中に於いて融着させた静電荷像現像用トナーであることが好ましい。この様に樹脂粒子中に離型剤を内包させた樹脂粒子を着色剤粒子と水系媒体中で塩析/融着させることで、微細に離型剤が分散された静電荷像現像用トナーを得ることができる。
【0144】
本発明の静電荷像現像用トナーでは、離型剤として、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等が好ましく、特に好ましくは、下記式で表されるエステル系化合物である。
【0145】
R1−(OCO−R2)n
式中、nは1〜4の整数、好ましくは2〜4、更に好ましくは3〜4、特に好ましくは4である。R1、R2は、各々置換基を有しても良い炭化水素基を示す。R1は、炭素数1〜40、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5がよい。R2は、炭素数1〜40、好ましくは16〜30、更に好ましくは18〜26がよい。
【0146】
以下、代表的な化合物の例を示すが本発明はこれらに限定されない。
【0147】
【化1】
【0148】
【化2】
【0149】
上記化合物の添加量は、静電荷像現像用トナー全体に対し1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%である。
【0150】
本発明の静電荷像現像用トナーでは、ミニエマルジョン重合法により樹脂粒子中に上記離型剤を内包させ、着色粒子とともに塩析、融着させて調製することが好ましい。
【0151】
本発明に用いられる外添剤について説明する。
本発明の静電荷像現像用トナーには、流動性の改良やクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤を添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されるものでは無く、種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することができる。
【0152】
外添剤として使用できる無機微粒子としては、従来公知のものを挙げることができる。具体的には、シリカ微粒子、チタン微粒子、アルミナ微粒子等を好ましく用いることができる。これら無機微粒子は疎水性であることが好ましい。
【0153】
シリカ微粒子の具体例としては、日本アエロジル(株)製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト(株)製のHVK−2150、H−200、キャボット(株)製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0154】
チタン微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル(株)製の市販品T−805、T−604、テイカ(株)製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン(株)製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産(株)製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0155】
アルミナ微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル(株)製の市販品RFY−C、C−604、石原産業(株)製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0156】
外添剤として使用できる有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の微粒子を挙げることができる。かかる有機微粒子の構成材料としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体などのを挙げることができる。
【0157】
外添剤として使用できる滑剤としては、高級脂肪酸の金属塩を挙げることができる。かかる高級脂肪酸の金属塩の具体例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸銅、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩;オレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸銅、オレイン酸マグネシウム等のオレイン酸金属塩;パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム等のパルミチン酸金属塩;リノール酸亜鉛、リノール酸カルシウム等のリノール酸金属塩;リシノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウムなどのリシノール酸金属塩等が挙げられる。
【0158】
外添剤の添加量としては、静電荷像現像用トナーに対して0.1〜5質量%程度であることが好ましい。
【0159】
乾燥処理された静電荷像現像用トナー粒子に上記の外添剤を添加する工程では、外添剤を添加するために使用される装置として、タービュラーミキサー、ヘンシエルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を挙げることができる。
〔3〕現像剤
本発明の静電荷像現像用トナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0160】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、或いは静電荷像現像用トナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものが挙げられ、何れも使用することができる。
【0161】
又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0162】
キャリアの平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0163】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、或いは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。又、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
〔4〕画像形成方法
本発明の画像形成方法は、静電荷像担持体上に静電荷像を形成する工程、本発明のトナーを含む現像剤で該静電荷像を現像してトナー画像を形成する工程、及び該トナー画像を転写体上に転写する工程を含むものである。
【0164】
そして本発明のトナーは、トナー像が形成された画像形成支持体を定着装置を構成する加熱ローラーと加圧ローラーとの間に通過させて定着する工程を含む画像形成方法に好適に使用される。
【0165】
画像形成には画像形成装置が使用されるが、その画像形成装置について説明する。
クリーニング条件
・クリーニングブレード
クリーニングブレードは弾性体ゴムブレードが好ましく、その物性はゴム硬度と反発弾性を同時にコントロールすることにより、トルク変動を小さく制御でき、より有効にブレードの反転を抑制できる。25±5℃に於けるブレードのJISA硬度が65よりも小さくなるとブレードの反転が起こり易くなり、80より大きくなるとクリーニング性能が低下する。又、反発弾性が80を超えるとブレードの反転がおこり易くなり、20以下だとクリーニング性能が低下する。より好ましい反発弾性は20〜80である。ヤング率は、294〜588N/cm2の範囲のものが好ましい。
(JISA硬度及び反発弾性ともJISK6301の加硫ゴム物理試験方法に基づき測定する。反発弾性の数値は%を示す。)
前記クリーニングブレードに用いられる弾性体ゴムブレードの材質としてはウレタンゴム、シリコンゴム、フッソゴム、クロロピレンゴム、ブタジエンゴム等が知られているが、これらの内、ウレタンゴムは他のゴムに比して摩耗特性が優れている点で特に好ましい。例えば、特開昭59−30574号に記載のポリカプロラクトンエステルとポリイソシアネートとを反応硬化せしめて得られるウレタンゴム等が好ましい。
【0166】
本発明において、この弾性ゴムブレードの支持部材への固定方法は、感光体当接面側で支持部材に実質的に保持されていることが好ましい。このような保持方法を採ることにより、クリーニングブレードのトルク変動を安定化させることができる。
・ブレードの適正圧接条件
感光体表面への弾性ゴムブレードの適正圧接条件は、諸特性の微妙なバランスにより決められており、かなり狭いものである。弾性ゴムブレードの厚み等の特性によっても変わり、設定には精度を要する。しかし、弾性ゴムブレードは作製時にどうしてもその厚みに多少のバラツキができるため、適正な条件で常に設定されるとはいえず、例え当初は適正に設定されても、適正領域が狭いため使用の過程で適正領域からはずれてしまうこともある。特に高分子量のバインダー樹脂を用いた有機感光層と組み合わせた場合、適正領域からはずれると、フィルミング、黒ポチ等の画像欠陥が生じやすくなる。
【0167】
従って、弾性ゴムブレードの特性のバラツキ等をキャンセルするための方策もとる必要があり、弾性ゴムブレードの厚みのバラツキが例えあっても、感光体面への圧接力等に影響がでない、上記設定方法が有効なのであろう。
【0168】
本発明において、弾性ゴムブレードの自由端は、感光体の回転方向と反対方向(カウンター方向)にして圧接することが好ましい。
【0169】
クリーニングブレードは、必要に応じ、クリーニングブレードのエッジ部にフッ素系潤滑剤をスプレー塗布するか、もしくは、その上に更に、幅方向全域にわたった先端部に、下記フッ素系ポリマー及びフッ素系樹脂粉体をフッ素系溶剤に分散させた分散体を塗布することが好ましい。
有機感光体
次に、有機感光体について記載する。
【0170】
本発明において、有機電子写真感光体(有機感光体)とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0171】
以下に本発明に用いられる有機感光体の構成について記載する。
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0172】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真円度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0173】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0174】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/l、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/l、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
中間層
導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0175】
導電性支持体と前記感光層のとの接着性改良、或いは該支持体からの電荷注入を防止するために、該支持体と前記感光層の間に中間層(下引層も含む)を設けることもできる。該中間層の材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。これら下引き樹脂の中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできる樹脂としてはポリアミド樹脂が好ましい。又、これら樹脂を用いた中間層の膜厚は0.01〜0.5μmが好ましい。
【0176】
又最も好ましく用いられる中間層はシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂を用いた中間層が挙げられる。硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
感光層
感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0177】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
電荷発生層:電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0178】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる立体、電位構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θが12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0179】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.01〜2μmが好ましい。
電荷輸送層
電荷輸送層:電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0180】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCTMは高移動度で、且つ組み合わされるCGMとのイオン化ポテンシャル差が0.5(eV)以下の特性を有するものであり、好ましくは0.25(eV)以下である。
【0181】
CGM、CTMのイオン化ポテンシャルは表面分析装置AC−1(理研計器社製)で測定される。
【0182】
電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
【0183】
これらCTLのバインダーとして最も好ましいものはポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂はCTMの分散性、電子写真特性を良好にすることにおいて、最も好ましい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
保護層
感光体の保護層として、各種樹脂層を設けることができる。特に架橋系の樹脂層を設けることにより、本発明の機械的強度の強い有機感光体を得ることができる。
【0184】
中間層、感光層、保護層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。又、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0185】
有機電子写真感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。尚本発明の保護層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号に詳細に記載されている。
【0186】
図2は、本発明の静電荷像現像用トナーを用いた画像形成方法において使用する定着装置の一例を示す断面図であり、図2に示す定着装置は、加熱ローラー10と、これに当接する加圧ローラー20とを備えている。尚、図2において、Tは転写紙(画像形成支持体)上に形成された静電荷像現像用トナー像である。
【0187】
加熱ローラー10は、フッ素樹脂又は弾性体からなる被覆層12が芯金11の表面に形成されてなり、線状ヒーターよりなる加熱部材13を内包している。
【0188】
芯金11は、金属から構成され、その内径は10〜70mmとされる。芯金11を構成する金属としては特に限定されるものではないが、例えば鉄、アルミニウム、銅等の金属或いはこれらの合金を挙げることができる。
【0189】
芯金11の肉厚は0.1〜15mmとされ、省エネルギーの要請(薄肉化)と、強度(構成材料に依存)とのバランスを考慮して決定される。例えば、0.57mmの鉄よりなる芯金と同等の強度を、アルミニウムよりなる芯金で保持するためには、その肉厚を0.8mmとする必要がある。
【0190】
被覆層12を構成するフッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)及びPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などを例示することができる。
【0191】
フッ素樹脂からなる被覆層12の厚みは10〜500μmとされ、好ましくは20〜400μmとされる。
【0192】
フッ素樹脂からなる被覆層12の厚みが10μm未満であると、被覆層としての機能を十分に発揮することができず、定着装置としての耐久性を確保することができない。一方、500μmを超える被覆層の表面には紙粉によるキズがつきやすく、当該キズ部に静電荷像現像用トナーなどが付着し、これに起因する画像汚れを発生する問題がある。
【0193】
又、被覆層12を構成する弾性体としては、LTV、RTV、HTVなどの耐熱性の良好なシリコーンゴム及びシリコーンスポンジゴムなどを用いることが好ましい。
【0194】
被覆層12を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは60°未満とされる。
【0195】
又、弾性体からなる被覆層12の厚みは0.1〜30mmとされ、好ましくは0.1〜20mmとされる。
【0196】
被覆層12を構成する弾性体のアスカーC硬度が80°を超える場合、及び当該被覆層12の厚みが0.1mm未満である場合には、定着のニップを大きくすることができず、ソフト定着の効果(例えば、平滑化された界面の静電荷像現像用トナー層による色再現性の向上効果)を発揮することができない。
【0197】
加熱部材13としては、ハロゲンヒーターを好適に使用することができる。
加圧ローラー20は、弾性体からなる被覆層22が芯金21の表面に形成されてなる。被覆層22を構成する弾性体としては特に限定されるものではなく、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの各種軟質ゴム及びスポンジゴムを挙げることができ、被覆層12を構成するものとして例示したシリコーンゴム及びシリコーンスポンジゴムを用いることが好ましい。
【0198】
被覆層22を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは70°未満、更に好ましくは60°未満とされる。
【0199】
又、被覆層22の厚みは0.1〜30mmとされ、好ましくは0.1〜20mmとされる。
【0200】
被覆層22を構成する弾性体のアスカーC硬度が80°を超える場合、及び被覆層22の厚みが0.1mm未満である場合には、定着のニップを大きくすることができず、ソフト定着の効果を発揮することができない。
【0201】
芯金21を構成する材料としては特に限定されるものではないが、アルミニウム、鉄、銅などの金属又はそれらの合金を挙げることができる。
【0202】
加熱ローラー10と加圧ローラー20との当接荷重(総荷重)としては、通常40〜350Nとされ、好ましくは50〜300N、更に好ましくは50〜250Nとされる。この当接荷重は、加熱ローラー10の強度(芯金11の肉厚)を考慮して規定され、例えば0.3mmの鉄よりなる芯金を有する加熱ローラーにあっては、250N以下とすることが好ましい。
【0203】
又、耐オフセット性及び定着性の観点から、ニップ幅としては4〜10mmであることが好ましく、当該ニップの面圧は0.6×105Pa〜1.5×105Paであることが好ましい。
【0204】
図2に示した定着装置による定着条件の一例を示せば、定着温度(加熱ローラー10の表面温度)が150〜210℃とされ、定着線速が80〜640mm/秒とされる。
【0205】
本発明において使用する定着装置には、必要に応じてクリーニング機構を付与してもよい。この場合には、シリコーンオイルを定着部の上ローラー(加熱ローラー)に供給する方式として、シリコーンオイルを含浸したパッド、ローラー、ウェッブ等で供給し、クリーニングする方法が使用できる。
【0206】
シリコーンオイルとしては耐熱性の高いものが使用され、ポリジメチルシリコーン、ポリフェニルメチルシリコーン、ポリジフェニルシリコーン等が使用される。粘度の低いものは使用時に流出量が大きくなることから、20℃における粘度が1〜100Pa・sのものが好適に使用される。
【0207】
但し、本発明による効果は、シリコーンオイルを供給しない、又は、シリコーンオイルの供給量がきわめて低い定着装置により、画像を形成する工程を含む場合に特に顕著に発揮される。従って、シリコーンオイルを供給する場合であっても、その供給量はA4用紙1枚当たり2mg以下とすることが好ましい。
【0208】
シリコーンオイルの供給量をA4用紙1枚当たり2mg以下とすることにより、定着後の転写紙(画像支持体)に対するシリコーンオイルの付着量が少なくなり、転写紙へ付着したシリコーンオイルによるボールペン等の油性ペンの記入しずらさがなく、加筆性が損なわれることはない。
【0209】
又、シリコーンオイルの変質による耐オフセット性の経時的な低下、シリコーンオイルによる光学系や帯電極の汚染などの問題を回避することができる。
【0210】
ここに、シリコーンオイルの供給量は、所定温度に加熱した定着装置(ローラー間)に転写紙(A4サイズの白紙)を連続して100枚通過させ、通紙前後における定着装置の質量変化(Δw)を測定して算出される(Δw/100)。
【0211】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。直、以下において「部」は、特に断りがない限り「有効成分としての質量部」を表す。
(酸化チタンの製造例)
・酸化チタンの製造例1
160g/Lの炭酸ナトリウム溶液中に硫酸チタニール溶液を、液温が25℃を越えないようにゆっくりと滴下し、pHが10になった時点、硫酸チタニール溶液の滴下を止めた。次いで、この中和で得られたオルソチタン酸の白色沈殿を濾過し、硫酸根がなくなるまで十分洗浄した。洗浄したオルソチタン酸ケーキを温度30℃に保ちながら純水によりリパルプした後、加温し75℃にて2時間加熱処理を行った。その後、濃塩酸を添加してTiO2濃度100g/L、塩酸濃度5g/Lに調整した。次に、撹拌しながら加温し沸点にて4時間加水分解を行った後、400g/Lの水酸化ナトリウムによりpH7まで中和し、ろ過洗浄を行った。得られた酸化チタンはアナターゼ型酸化チタンが90%被覆された、比表面積150m2/gの酸化チタンであった。次いで、得られた酸化チタンを純水でリパルプし、200g/Lの塩酸を添加してpHを2.5に調整した後、イソブチルトリメトキシランをTiO2に対し20質量%添加した。30分間撹拌保持後、400g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えpH6.5まで中和し、ろ過、水洗、150℃で乾燥後、気流粉砕機にて微粉砕を行い、疎水性酸化チタンを得た。得られた酸化チタンを「酸化チタン1」とする。
・酸化チタンの製造例2
酸化チタンの製造例1において、オルソチタン酸の加熱処理を60℃で4時間行った以外は同様に行った。尚、加水分解を行って得られた酸化チタンの特性は、アナターゼ型酸化チタンを60%含有する、比表面積170m2/gの酸化チタンであった。得られた酸化チタンを「酸化チタン2」とする。
・酸化チタンの製造例3
酸化チタンの製造例1において、加水分解時の塩酸濃度を2g/L、TiO2濃度を60g/Lにした以外は同様に行った。尚、加水分解を行って得られた酸化チタンの特性は、アナターゼ型酸化チタンを95質量%含有する、比表面積145m2/gの酸化チタンであった。得られた酸化チタンを「酸化チタン3」とする。
・酸化チタンの製造例4
酸化チタンの製造例2において得られた酸化チタンの表面に公知の方法により、SiO2を3質量%、Al2O3を10質量%処理を行い洗浄後、処理酸化チタンを純水でリパルプし、200g/Lの塩酸を添加してpHを2.5に調整した後、イソブチルトリメトキシランをTiO2に対し20質量%添加した。30分間撹拌保持後、400g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えpH6.5まで中和し、ろ過、水洗、150℃で乾燥後、気流粉砕機にて微粉砕を行い、比表面積155m2/gの疎水性酸化チタンを得た。得られた酸化チタンを「酸化チタン4」とする。
・酸化チタンの製造例5
酸化チタンの製造例1で得られた疎水性ルチル型酸化チタンにヘンシェルミキサーにより、更にノルマルブチルトリメトキシシラン10質量%の乾式処理を行った後、気流粉砕機で微粉砕を行い疎水性酸化チタンを得た。得られた酸化チタンを「酸化チタン5」とする。
・比較用酸化チタンの製造例1
45℃にて2時間加熱処理を行い、塩酸濃度25g/Lに調整した以外は同様にしてアナターゼ型酸化チタンが45%被覆された比表面積200m2/gの酸化チタンを得た。得られた酸化チタンを「比較用酸化チタン1」とする。
・比較用酸化チタンの製造例2
アナターゼ型の親水性酸化チタン微粉体(0.035μm、比表面積120m2/g)1部を、水からなる水系媒体100部に添加して充分に撹拌し、シランカップリング剤(ノルマルブチルトリメトキシシラン)0.2部を水系媒体に加え、酸化チタン微粒子が合一しないように充分に撹拌し、撹拌後にろ過し、乾燥し、軽く解砕することにより、平均粒径が0.05μmであり、疎水化度が70%であるアナターゼ型の処理酸化チタンを得た。得られた酸化チタンを「比較用酸化チタン2」とする。
【0212】
得られた酸化チタンの詳細を以下の表1に示す。
【0213】
【表1】
【0214】
〔トナー用樹脂粒子の製造例〕
(ラテックス:1HML)
(1)核粒子の調製(第1段重合)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコに、アニオン系界面活性剤(ドデシルスルフォン酸ナトリウム:SDS)7.08gをイオン交換水3010gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0215】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)9.2gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン70.1g、n−ブチルアクリレート19.9g、メタクリル酸10.9gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合(第1段重合)を行い、ラテックス(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の分散液)を調製した。これを「ラテックス(1H)」とする。
(2)中間層の形成(第2段重合)
攪拌装置を取り付けたフラスコ内にて、スチレン105.6g、n−ブチルアクリレート30.0g、メタクリル酸6.4g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル5.6gからなる単量体混合液に、離型剤の例示化合物19)72.0gを添加し、80℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。
【0216】
一方、アニオン系界面活性剤(SDS)1.6gをイオン交換水2700mlに溶解させた界面活性剤溶液を80℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、核粒子の分散液である前記ラテックス(1H)を固形分換算で28g添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により、例示化合物19)の単量体溶液を混合分散させ、均一な分散粒子径(284nm)を有する乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
【0217】
次いでこの分散液(乳化液)に重合開始剤(KPS)5.1gをイオン交換水240mlに溶解させた開始剤溶液とイオン交換水750mlとを添加し、この系を80℃にて3時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第2段重合)を行い、ラテックス(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の表面が中間分子量樹脂により被覆された構造の複合樹脂粒子の分散液)を得た。これを「ラテックス(1HM)」とする。
(3)外層の形成(第3段重合)
上記のようにして得られたラテックス(1HM)に、重合開始剤(KPS)7.4gをイオン交換水200mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン300g、n−ブチルアクリレート95g、メタクリル酸15.3g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル10.4gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第3段重合)を行った後、28℃まで冷却しラテックス(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有し、前記中間層に例示化合物19)が含有されている複合樹脂粒子の分散液)を得た。このラテックスを「ラテックス(1HML)」とする。
【0218】
このラテックス(1HML)を構成する複合樹脂粒子は、13万8000、8万及び1万3000にピーク分子量を有するものであり、又この複合樹脂粒子の個数平均粒径は102nmであった。
〔複合樹脂粒子の調整例〕
(1)核粒子の調製(第1段重合)
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン105.6g、n−ブチルアクリレート30.0g、メタクリル酸6.4gからなる単量体混合液に、離型剤の例示化合物16)72.0gを添加し、80℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。
【0219】
一方、アニオン系界面活性剤(SDS)1.6gをイオン交換水2700mlに溶解させた界面活性剤溶液を80℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により、前記例示化合物16)の単量体溶液を混合分散させ、均一な分散粒子径(268nm)を有する乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
【0220】
次いで、この分散液(乳化液)に重合開始剤(KPS)5.1gをイオン交換水240mlに溶解させた開始剤溶液と、イオン交換水750mlとを添加し、この系を80℃にて3時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第1段重合)を行い、ラテックス(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の分散液)を調製した。これを「ラテックス(2H)」とする。
(2)外層の形成(第2段重合)
上記のようにして得られたラテックス(2H)に、重合開始剤(KPS)14.8gをイオン交換水400mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン600g、n−ブチルアクリレート190g、メタクリル酸30.0g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル20.8gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第2段重合)を行った後、28℃まで冷却しラテックス(高分子量樹脂からなる中心部と、低分子量樹脂からなる外層とを有し、前記中心部に例示化合物16)が含有されている複合樹脂粒子の分散液)を得た。このラテックスを「ラテックス(2HL)」とする。
【0221】
このラテックス(2HL)を構成する複合樹脂粒子は、16万8000及び1万1000にピーク分子量を有するものであり、又、この複合樹脂粒子の重量平均粒子径は126nmであった。
〔着色粒子の製造例1〜4〕
n−ドデシル硫酸ナトリウム59.0gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解した。この溶液を攪拌しながら、カーボンブラック「リーガル330」(キャボット社製)420.0gを徐々に添加し、次いで「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより着色剤粒子の分散液(以下、着色剤分散液という。)を調製した。この着色剤分散液における着色剤粒子の粒子径を電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、重量平均粒子径は98nmであった。
【0222】
ラテックス(1HML)420.7g(固形分換算)、イオン交換水900g、及び着色剤分散液166gを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置、粒径及び形状のモニタリング装置を取り付けた反応容器に入れ攪拌した。内温を30℃に調整した後、この溶液に5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを11.0に調整した。
【0223】
次いで、塩化マグネシウム6水和物12.1gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を6〜10分間かけて90±3℃まで昇温した(昇温速度=10℃/分)。その状態で、「コールターカウンターTA−II」にて会合粒子の粒径を測定し、体積平均粒径が5.5μmになった時点で、塩化ナトリウム80.4gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、更に熟成処理として液温度85±2℃にて0.5〜15時間にわたり加熱攪拌することにより融着を継続させた。その後、8℃/分の条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2.0に調整し、攪拌を停止した。生成した会合粒子をヌッチェを用いて濾過し、イオン交換水で繰り返し洗浄し、その後、フラッシュジェットドライヤーを用いて吸気温度60℃にて乾燥させ、次いで流動層乾燥機を用いて60℃の温度で乾燥させ、離型剤の例示化合物19)を含有する着色粒子を得た。前記塩析/融着段階及び形状制御工程のモニタリングにおいて、攪拌回転数、及び加熱時間を制御することにより、形状及び形状係数の変動係数を制御し、粒径及び粒度分布の変動係数を任意に調整して、表2に示す形状特性及び粒度分布特性からなる着色粒子1〜4を得た。
〔着色粒子の製造例5〜8〕
ラテックス(1HML)に代えてラテックス(2HL)420.7g(固形分換算)を使用し、熟成処理時間を変更したこと以外は着色粒子製造例1〜4と同様にして表2に示す形状特性及び粒度分布特性からなる着色粒子5〜8を得た。
【0224】
得られた着色粒子の詳細を以下の表2に示す。
【0225】
【表2】
【0226】
実施例1〜12及び比較例1〜2
以上のようにして得られた着色粒子1〜8の各々に疎水性シリカ(数平均一次粒子径=10nm、疎水化度=63)を1.0質量%となる割合で添加するとともに、表3に示す疎水性酸化チタンを0.8質量%となる割合でそれぞれ添加し、ヘンシェルミキサーにより混合した。尚、これらの着色粒子について、外部添加剤の添加によってその形状及び粒径は変化しない。
【0227】
【表3】
【0228】
〔キャリアの作製〕
(フェライト芯材の製造)
MnO22mol%、Fe2O378mol%を湿式ボールミルで2時間粉砕、混合し乾燥させた後に、900℃で2時間保持することにより仮焼成し、これをボールミルで3時間粉砕しスラリー化した。分散剤及びバインダーを添加し、スプレードライヤーにより造粒、乾燥し、その後1200℃、3時間本焼成を行い、平均グレイン径5.2μm、抵抗4.3×108のフェライト芯材粒子を得た。
(キャリアの製造)
界面活性剤として炭素数12のアルキル基を有するベンゼンスルホン酸ナトリウムを用い、濃度を0.3質量%とした水溶液媒体による乳化重合法により、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体を合成し、体積平均一次粒径0.1μm、重量平均分子量(Mw)20万、数平均分子量(Mn)9万1000、Mw/Mn=2.2、軟化点温度(Tsp)230℃及びガラス転移温度(Tg)110℃樹脂微粒子を得た。尚、前記樹脂微粒子は、乳化状態において、水と共沸し、残存モノマー量を510ppmとした。
【0229】
次に、フェライト芯材粒子100部と前記樹脂微粒子2部を撹拌羽根付き高速撹拌混合機に投入、120℃で30分間撹拌混合し、機械的衝撃力の作用を使用して体積平均粒径61μmの樹脂被覆キャリアを得た。
〔現像剤の製造〕
外部添加剤が添加された着色粒子の各々とキャリアとを混合し、トナー濃度が6質量%の現像剤を調製した。これら着色粒子1〜12、比較用着色粒子1、2を現像剤1〜12、比較用現像剤1、2とする。
(感光体の製造)
ポリアミド樹脂アミランCM−8000(東レ社製)30gをメタノール900ml、1−ブタノール100mlの混合溶媒中に投入し50℃で加熱溶解した。この液を外径60mm、長さ360mmの円筒状アルミニウム導電性支持体上に塗布し、0.5μm厚の中間層を形成した。
【0230】
次に、シリコーン樹脂KR−5240(信越化学社製)10gを酢酸t−ブチル1000mlに溶解し、これにY−TiOPc(特開昭64−17066号記載の図1)10gを混入しサンドミルを用いて20時間分散し、電荷発生層塗工液を得た。この液を用いて、前記中間層上に塗布し、0.3μm厚の電荷発生層を形成した。
【0231】
次に、CTM(T−1:N−(4−メチルフェニル)−N−{4−(β−フェニルスチリル)フェニル}−p−トルイジン)150gと粘度平均分子量2万のポリカーボネート樹脂ユーピロンZ−200(三菱ガス化学社製)200gを1,2−ジクロロエタン1000mlに溶解し、電荷輸送層塗工液を得た。この液を用いて前記電荷発生層上に円形スライドホッパーにて塗布を行った後、100℃で1時間乾燥し、22μm厚の電荷輸送層を形成した。このようにして中間層、電荷発生層、電荷輸送層が形成された感光体(P1)を得た。
【0232】
次いで、感光体(P1)の表面に、CTM(T−1)30gと粘度平均分子量8万のポリカーボネート樹脂ユーピロンZ−800(三菱ガス化学社製)ポリカーボネート樹脂50gを1,2−ジクロロエタン1000mlに溶解した塗工液を用いて、前記電荷輸送層上に円形スライドホッパーにて塗布を行った後、100℃で1時間乾燥し、5μm厚のオーバーコート層を形成し、感光体(P2)を得た。
【0233】
市販のデジタル複写機(コニカ Sitios 7030)に感光体(P2)を搭載した改造機に、高温高湿環境下(温度33℃ 相対湿度80%)で画素率が15%の画像を連続して30万枚形成する実写テストを行い、以下の評価を行った。
〈評価〉
・すり抜け
画像白地部にクリーニング装置から感光体上にトナーがすり抜け、画像汚れとして検知された枚数で評価した。一般にトナーの流動性が著しく低下するとすり抜けが発生する。
・画像濃度の環境依存性
マクベス反射濃度計にてソリッド画像部の最高画像濃度を測定した。高温高湿環境下(温度33℃ 相対湿度80%)と低温低湿環境下(温度10℃ 相対湿度20%)の画像濃度の差が0.05未満を◎、0.05〜0.1を○、0.1を超えると×とした。
・10%網点の濃度
20mm×20mmの10%網点画像部について、マクベス反射濃度計「RD−918」を用いて白地部に対する相対画像濃度を測定した。10%網点濃度の評価は、ドットの再現性及びハーフトーンの再現性を評価するために行ったもので、濃度変化が0.10以内であれば画質変化は少なく問題ないといえる。
・ライン幅
2ドットラインの画像信号に対応するライン画像のライン幅を印字評価システム「RT2000」(ヤーマン(株)製)によって測定した。1枚目の形成画像のライン幅及び2万枚目の形成画像のライン幅の何れもが200μm以下であり、かつ、ライン幅の変化が10μm未満であれば、細線再現性は問題ないといえる。
・文字潰れ
3ポイント、5ポイントの文字画像を形成し、下記の判断基準で評価した。
【0234】
◎・・・3ポイント、5ポイントとも明瞭であり、容易に判読可能
○・・・3ポイントは一部判読不能な文字が発生し、5ポイントは明瞭であり、容易に判読可能
×・・・3ポイントは殆どの文字が判読不能で、5ポイントも一部又は全部が判読不能な状態
・かぶりの発生状況
マクベス濃度計にて非画像部の白地濃度に対する相対濃度を測定した。
【0235】
◎・・・0.002未満
○・・・0.002〜0.005
×・・・0.005を超える値
得られた結果を表4に示す。
【0236】
【表4】
【0237】
表4から明らかなように、実施例1〜12は何れの評価においても良好な結果であり、優れた画像を得ることができることが判る。しかしながら疎水性酸化チタンのルチル型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンとの比が質量比で2:98〜45:55の範囲にない比較例では、充分に満足した画像が得られないことが判る。
【0238】
【発明の効果】
本発明のトナーによれば、流動性に優れ、帯電分布が均一で、環境依存性少なく、外添剤離脱が少なく、キャリアや摩擦帯電部材を汚染することがない上、トナーの放置帯電量低下が少ないので、安定した画像が得られるという顕著に優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は角のないトナー粒子の投影像を示す説明図であり、(b)及び(c)はそれぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示す説明図である。
【図2】定着装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
8 記録材
10 加熱ローラー
11 芯金
12 被覆層
13 加熱部材
20 加圧ロール
21 芯金
22 被覆層
T 記録材上に形成されたトナー像
Claims (14)
- 同一粒子内にルチル型酸化チタン、及びアナターゼ型酸化チタンを有し、かつシランカップリング剤で表面処理された処理層を有し、その一次粒径が0.01〜0.1μmであり、かつBET比表面積が90〜220m 2 /gである疎水性酸化チタンを外部添加剤として含有する静電荷像現像用トナーであって、前記疎水性酸化チタンのルチル型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンとの比が質量比で2:98〜45:55の範囲にあることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
- 前記疎水性酸化チタンの疎水化度30〜85%、カーボン量が2〜8%、ESCA表面分析で、チタン元素の露出量が0.01〜5%であることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
- 角がないトナー粒子の割合が50個数%以上であり、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下であることを特徴とする請求項1または2項記載の静電荷像現像用トナー。
- 形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下のトナー粒子であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の静電荷像現像用トナー。
- 少なくとも重合性単量体を水系媒体中で重合せしめて得られることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の静電荷像現像用トナー。
- 少なくとも樹脂粒子を水系媒体中で凝集、融着させて得られることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の静電荷像現像用トナー。
- 多段重合法により得られる複合樹脂粒子と、着色剤粒子とを塩析、凝集、融着して得られるトナーであって、前記複合樹脂粒子の最外層以外の領域に離型剤が含有されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の静電荷像現像用トナー。
- 同一粒子内にルチル型酸化チタン、及びアナターゼ型酸化チタンを有し、かつシランカップリング剤で表面処理された処理層を有し、その一次粒径が0.01〜0.1μmであり、かつBET比表面積が90〜220m 2 /gである疎水性酸化チタンを外部添加剤として含有する静電荷像現像用トナーであって、該静電荷像現像用トナーは、角がないトナー粒子の割合が50個数%以上であり、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
- 形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子の割合が65個数%以上であり、形状係数の変動係数が16%以下のトナー粒子であることを特徴とする請求項8記載の静電荷像現像用トナー。
- 少なくとも重合性単量体を水系媒体中で重合せしめて得られることを特徴とする請求項8又は9記載の静電荷像現像用トナー。
- 少なくとも樹脂粒子を水系媒体中で凝集、融着させて得られることを特徴とする請求項8又は9記載の静電荷像現像用トナー。
- 多段重合法により得られる複合樹脂粒子と、着色剤粒子とを塩析、凝集、融着して得られるトナーであって、前記複合樹脂粒子の最外層以外の領域に離型剤が含有されていることを特徴とする請求項8又は9記載の静電荷像現像用トナー。
- トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおける最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m 1 )と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m 2 )との和(M)が70%以上であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項記載の静電荷像現像用トナー。
- 静電荷像担持体上に静電荷像を形成する工程、静電荷像現像用トナーを含む現像剤で該静電荷像を現像してトナー画像を形成する工程、及び該トナー画像を転写体上に転写する工程を含む画像形成方法において、前記静電荷像現像用トナーとして請求項1〜13の何れか1項記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
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