本発明は、スラリ状(ミルク状ともいう)もしくは粉体状のセメント系等の固化材を地中に吐出または噴射しながら原土(現位置土)の掘削とそれとの混合撹拌処理を施すことにより、処理土の強度を増加させるようにした地盤改良工法に関するものである。
この種の技術としてTRD工法協会によるTRD工法(ソイルセメント地中連続壁工法)が知られている。同工法は、地中に差し込んだカッターポストを横方向に移動させて掘削しながら鉛直方向では固化液(スラリ状もしくはミルク状固化材)と現位置土を混合撹拌して、壁状の固化体を地中に造成するものである。同工法では、固化液混合スラリー性状(撹拌混合直後における安定処理土の流動値)の管理目標値としてテーブルフロー値で150〜200mmと定めている。
また、特許文献1に記載の技術では、処理対象となる原位置土の自然含水比、塑性限界比、液性限界比等を予め測定して、それらの値から流動性の指標となるコンシステンシー指数Icを算出する一方、このコンシステンシー指数Icと現位置土の塑性指数Ipよおよびスラリ状固化材の水セメント比(W/C)相互間の相関を示すグラフを予め用意しておき、同相関グラフから現位置土のコンシステンシー指数に応じたスラリ状固化材の水セメント比(W/C)を決定するようにしている。
このように現位置土の土質性状に応じてスラリ状固化材の水セメント比(W/C)を変化させて混合撹拌処理直後のコンシステンシー指数Ic1を管理することによって、混合むらや安定処理後に空隙を発生させることなく、改良品質が良好な地盤改良が可能になる。
特開2003−239275号
しかしながら、従来のいずれの工法にあっても混合撹拌処理直後における処理土の流動性のみを定めているにすぎないものである。
その一方、実際の施工に際しては、原土を採取して予備試験にて水/セメント比および固化材たるセメント添加量等を決定しているが、現位置における原土の土質性状は予備試験時における土質性状と必ずしも同じとは言えず、むしろ変化していることの方が多い。
よって、原土の土質性状が変化しているにもかかわらず、予備試験によって一義的に決定した水/セメント比とセメント添加量にて混合撹拌処理を行っているのが現状であり、そのために、処理土の品質は大きくばらつくこととなる。また、施工性すなわち単位時間当たりの作業量が著しく低下して不経済となることもあった。
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、とりわけ経済性に優れ、しかも混合むら等の発生をなくしてその処理品質の向上を図った地盤改良工法を提供するものである。
そこで、本発明では、施工を開始したならば混合撹拌処理直後における処理土の流動値(例えばテーブルフロー値)を測定して、管理流動限界値の上限を超えている場合には実施水/固化材比(例えばセメントを固化材として用いる場合には、水/セメント比)を下げ、逆に管理流動限界値の下限を超えている場合には実施水/固化材比を上げる。このような作業を1日に何回か繰り返して、混合撹拌処理直後における処理土の流動値を常に管理流動値の範囲内におさめ、安定した施工性を確保する。
地盤改良工法の基本工法は従来と同様であり、例えば上下方向に周回駆動されるエンドレスなチェーンに複数の撹拌翼を装着してなる混合撹拌ヘッドをバックホウ等のベースマシンに支持させ、この混合撹拌ヘッドを地中に貫入しながら同時に混合撹拌ヘッドの一部に設けた固化材吐出機構から粉体状もしくはスラリ状の固化材を吐出もしくは噴射するものとする。
すなわち、請求項1に記載の発明は、原土とスラリ状固化材を混合攪拌処理して強度増加を図る地盤改良工法において、混合撹拌処理直後における処理土の流動値を管理する手段として管理流動値の範囲を改良深度との相関をもって予め定めておき、上記相関上にて改良深度を指定したときの管理流動値の範囲を満たすように原土とスラリ状固化材を混合攪拌処理する一方、混合撹拌処理直後における処理土の流動値が上記管理流動値の範囲外となった場合に、上記管理流動値の範囲となるようにスラリ状固化材の水/固化材比を補正して、原土とスラリ状固化材を混合攪拌処理することを特徴とする。
この場合において、請求項2に記載のように、請求項1に記載の管理流動値の範囲である改良深度と流動値の相関に代えて、管理流動値の範囲を改良深度との相関のほか原土重量との相関をもって予め定めておくようにしても良い。
また、請求項3に記載のように、水/固化材比を補正する手段として補正係数を予め定めておき、混合撹拌処理直後における処理土の流動値が上記管理流動値の範囲外となった場合に、上記補正係数のほか管理流動限界値と実施流動値との差に基づいて補正水/固化材比を求め、この補正水/固化材比を実施水/固化材比として原土とスラリ状固化材を混合攪拌処理するものとする。
なお、上記補正係数は、請求項4に記載のように、水/固化材比と流動値の相関より求めたものとする。
さらに、本発明では、実施水/固化材比の増減に応じて固化材添加量を増減させる。例えば、実施水/固化材比を下げた時には固化材添加量を下げ、逆に実施水/固化材比を上げた時には固化材添加量を上げる。この手法によれば、処理土の強度と流動値は安定して得られることとなる。
すなわち、請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の発明を前提として、先に求めた補正水/固化材比に応じて固化材添加量を決定し、その補正水/固化材比と固化材添加量をそれぞれ実施水/固化材比および実施添加量として、原土とスラリ状固化材を混合攪拌処理することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、自然含水比Wnと液性限界比Wlの関係においてWn>Wlとなる原土とスラリ状固化材を混合撹拌処理して強度増強を図る地盤改良工法において、混合撹拌処理直後における処理土の流動値を管理する手段として管理流動値の範囲のほか、目標強度を満足する固化材添加量と自然含水比との相関を予め定めておき、混合撹拌処理直後における処理土の流動値が上記管理流動値の範囲外となった場合に、原土の自然含水比を測定して該自然含水比に対応する固化材添加量を上記相関より求め、この求めた固化材添加量となるように実際の固化材添加量を増減させて、原土とスラリ状固化材を混合撹拌処理することを特徴とする。
この場合、スラリ状固化材に代えて、請求項7に記載のように粉体状固化材を使用することも可能である。
ここで、請求項1〜7のいずれかに記載の発明における流動値は、例えば請求項8に記載のように、JIS R 5201に定められているテーブルフロー試験でのテーブルフロー値とする。
請求項1〜4に記載の発明によれば、処理途中でスラリ状固化材の水/固化材比を補正することで、原土の部位別の土質性状に応じ混合撹拌処理直後における処理土の流動値を常に管理流動値の範囲内におさめることができ、その結果として施工品質もしくは処理品質の向上と安定化が図れるとともに、施工性も良好で、経済的な施工を行うことが可能となり、大幅なコストダウンを図ることが可能となる。
特に、請求項5に記載の発明のように、水/固化材比に応じて固化材添加量を決定するか、もしくは請求項6に記載の発明のように、原土の自然含水比の増減に応じて固化材添加量を増減させるようにすれば、上記効果が一段と顕著となる。
請求項7に記載の発明によれば、粉体状固化材の使用を前提として、混合撹拌処理直後における処理土の流動値が予め定めた管理流動値の範囲外となった場合に、上記管理流動値の範囲となるように固化材添加量を増減させるものであるから、上記と同様にして、施工品質もしくは処理品質の向上と安定化が図れるとともに、施工性も良好で、経済的な施工を行うことが可能となり、大幅なコストダウンを図ることが可能となる効果がある。
最初に、本実施の形態で使用される各用語の定義は下記の通りとする。
(1)固化材:土あるいはこれに類するものを固めることを目的に、JIS規格品の特定成分の補強、粒度調整あるいは土質に応じて有効成分を添加するなどしたもの。セメント等のセメント系固化材が代表的なものである。
(2)粉体状固化材:粉体状の固化材をそのまま地中もしくは地表に吐出または噴射する場合に使用するもの。
(3)スラリ状固化材:粉体状の固化材を予め所定の割合で水を混ぜ合わせていわゆるスラリ状もしくはミルク状のものとした上で、地中に吐出もしくは噴射する場合に使用するもの。
(4)土質性状:原土の物性値で、ここでは自然含水比、湿潤密度、乾燥密度、液性限界、塑性限界、砂質土等での細粒分通過率をいう。
(5)混合土(調整土):互層地盤での各土層を厚さ比率により混合した土のことである。
(6)テーブルフロー値:テーブルフロー試験による流動性の数値。
(7)計画テーブルフロー値:予め定めた改良深度とテーブルフロー値との相関グラフより求めた値、または予め定めた改良深度と原土重量とテーブルフロー値との相関グラフより求めた値。
(8)管理テーブルフロー値:管理流動値のことで、計画テーブルフロー値に対して例えば±10mmの範囲内で定め、現場施工時における処理土の流動値の管理範囲となるもの。
(9)管理流動限界値:管理テーブルフロー値の上限および下限の値。
(10)実施テーブルフロー値:施工中のテーブルフロー値。
(11)推定添加量:予備試験時の室内目標強度になると想定されるセメント等の固化材添加量。
(12)暫定添加量:推定添加量の7〜8割前後の添加量。
(13)実施添加量:実施工時における固化材添加量。
(14)計画水/セメント比:スラリ状固化材を使用する場合に、計画テーブルフロー値を満足する時の水と固化材であるセメントの比率。広義には、計画水/固化材比という。
(15)補正水/セメント比:テーブルフロー値を補正するための水と固化材であるセメントの比率。広義には、補正水/固化材比という。
(16)実施水/セメント比:施工中の水と固化材であるセメントの比率。広義には、実施水/固化材比という。
実際の施工に先立って、各種のデータ収集を目的として、いくつかの予備試験を行う。
ここでの予備試験の目的は、例えば改良深度を3.5mとする施工に際して、目標強度として例えば250kN/m2を満足するのに必要な水/固化材比、すなわち水と固化材であるセメントとの割合である水/セメント比とセメント添加量を求めることにある。
さらに、過去の実績データをもとに予め作成してある図1の改良深度とテーブルフロー値との相関グラフから、改良深度が3.5mの時のテーブルフロー値を求めておくものとする。
すなわち、図1の相関グラフに基づいて、改良深度が3.5mのときの計画テーブルフロー値を130mmと定め、同時に管理テーブルフロー値として計画テーブルフロー値−5〜0として125〜130mmと定める。したがって、最終的に求めることになる水/セメント比とセメント添加量は、計画テーブルフロー値として130mmを満たし得るものということになる。
(A)予備試験1
予備試験1は、表1に示す三種類の原土a〜cを対象として、下記の手順で行うものとする。
手順1として、三種類の原土a〜cに対する固化材たるセメントの暫定添加量を100kg/m3として、水/セメント比(略してW/Cと言うこともある)が150%、200%、250%、300%の時のテーブルフロー値をJIS R 5201に定められているテーブルフロー試験にて測定する。その測定結果を表2に示す。
手順2として、表2の三種類の原土a〜cの実測データをもとに、水/セメント比とテーブルフロー値の相関グラフを作成する。その相関グラフを図2に示す。
手順3として、図2の相関グラフから、三種類の原土a〜cが計画テーブルフロー値となる水/セメント比を求める。すなわち、先に述べたように計画テーブルフロー値は130mmであることから、各原土a〜cについて図2の相関グラフから計画テーブルフロー値が130mmとなる水/セメント比を読み取る。これを整理すると表3のようになる。さらに、表3の各数値について5%未満を切り上げて数値そのものを丸めると表4のようになる。
手順4として、表4における原土a〜cの水/セメント比について、固化材であるセメント添加量を60kg/m3、100kg/m3、140kg/m3、180kg/m3とした時の一軸圧縮強度(kN/m2)を測定して求める。その測定結果を表5に示す。
手順5として、表5の実測データをもとに、管理流動値の範囲となる水/セメント比別のセメント添加量と一軸圧縮強度の相関グラフを作成する。その相関グラフを図3に示す。
手順6として、図3の相関グラフから、管理流動値の範囲となる水/セメント比において目標強度=250kN/m2を満足するセメント添加量を求める。これを整理すると表6のようになる。
手順7として、表6の数値に基づき、管理流動値の範囲となる水/セメント比と、所定の強度を満足するセメント添加量との相関グラフを作成する。その相関グラフを図4に示す。
図4は、実施水/セメント比から固化材であるセメント添加量を求めるための相関グラフであり、管理テーブルフロー値を満足させ且つ目標強度を満足させる時の水/セメント比とセメント添加量との相関グラフにほかならない。この相関グラフを使用すれば、原土の土質性状の変化に応じて水/セメント比とセメント添加量を選択することが可能となり、一層の品質および強度の安定化に寄与できることになる。
(B)予備試験2
予備試験2の目的は、予備試験1と同様である。ただし、原土の自然含水比Wn(%)が液性限界比Wl(%)を大きく上回っているような場合には、混合撹拌処理直後における処理土の流動値が管理流動値の上限を超えることが予想される。にもかかわらず、施工現場の条件によっては粉体状固化材ではなくスラリ状固化材を使用して施工を行わざるを得ない場合もある。その場合に備えて、予備試験2は、表7に示す原土dを対象として、下記の手順で行うものとする。
手順1として、表7の土質性状の原土dに対する固化材たるセメントの暫定添加量を100kg/m3として、セメントを粉体のままで添加する場合のほか、水/セメント比を40%、80%、120%とする場合の4水準にてテーブルフロー値を測定する。その測定結果を表8に示す。
手順2として、表8の原土dの実測データをもとに、水/セメント比とテーブルフロー値の相関グラフを作成する。その相関グラフを図5に示す。
手順3として、図5の相関グラフから明らかなように、粉体添加を含む全ての水/セメント比においてテーブルフロー値が管理流動限界値の上限(=130mm)を上回る結果となった。したがって、経験的に把握しているところの施工可能な最低限の水/セメント比(=60%)にて予備試験を進めるものとする。
手順4として、原土の自然含水比Wn(%)は施工箇所および施工時期等によって変動する。よって、自然含水比Wn(%)の変動に対応できるように、原土の含水比を3水準以上変化させた調整土について、固化材であるセメント添加量を60kg/m3、100kg/m3、140kg/m3、180kg/m3としたときの一軸圧縮強度(kN/m2)を測定して求める。その測定結果を表9に示す。
手順5として、表9の実測データをもとに、調整土の含水比別セメント添加量と一軸圧縮強度の相関グラフを作成する。その相関グラフを図6に示す。
手順6として、図6の相関グラフから、含水比別に目標強度である250kN/m2を満足するセメント添加量を求める。これを整理すると表10のようになる。
手順7として、表10の数値に基づき、目標強度250kN/m2を満足させるときの自然含水比と固化材であるセメント添加量の相関グラフを作成する。その相関グラフを図7に示す。
図7は、自然含水比から、目標強度250kN/m2を満足させるのに必要なセメント添加量を求める相関グラフである。ただし、この相関グラフは、あくまで最低の水/セメント比(W/C=60%)における自然含水比とセメント添加量との関係を示すものである。したがって、実際の施工に先立って原土の自然含水比を測定した上で、固化材であるセメントの添加量を決定する。
(C)予備試験3
予備試験3の目的は、予備試験1と同様である。ただし、原土の自然含水比Wn(%)が液性限界比Wl(%)を大きく上回っているような場合には、混合撹拌処理直後における処理土の流動値が管理流動値の上限を超えることが予想される。その際に、経済性を重視して固化材であるセメントの添加方式を粉体添加とする場合、すなわち粉体状固化材の添加とする場合に備えての予備試験の手順を以下に示す。
手順1〜2は、先に述べた予備試験2の場合と全く同様である。
手順3として、固化材であるセメントを粉体添加の形態で添加した場合でも、テーブルフロー値が管理流動限界値の上限(=130mm)を上回ることは図5からも明らかである。よって、固化材であるセメントの添加方式は最も経済的な粉体添加方式とする。
原土の自然含水比Wn(%)は施工箇所および施工時期等によって変動することは先に述べた。よって、手順4として、自然含水比Wn(%)の変動に対応できるように原土の含水比を3水準以上変化させた調整土に対して、固化材であるセメント添加量を60kg/m3、100kg/m3、140kg/m3、180kg/m3とした時の一軸圧縮強度(kN/m2)を測定して求める。その測定結果を表11に示す。
手順5として、表11の実測データをもとに、調整土の含水比別セメント添加量と一軸圧縮強度の相関グラフを作成する。その相関グラフを図8に示す。
手順6として、図8の相関グラフから、含水比別に目標強度=250kN/m2を満足するセメント添加量を求める。これを整理すると表12のようになる。
手順7として、表12の数値に基づき、目標強度250kN/m2を満足させるときの自然含水比と固化材であるセメント添加量の相関グラフを作成する。その相関グラフを図9に示す。
図9は、自然含水比から、目標強度250kN/m2を満足させるのに必要なセメント添加量を求める相関グラフである。ただし、この相関グラフは、固化材であるセメントを粉体添加とする場合において、原土の自然含水比に対して目標強度を満足させるのに必要なセメント添加量を示すものである。したがって、実際の施工に先立って自然含水比を測定した上で、セメント添加量を決定する。
なお、自然含水比が低下するのに伴ってテーブルフロー値が低下することもある。その際に、テーブルフロー値が管理流動限界値の下限を超えるような場合には、原土に加水して保有含水量を調整することが望ましい。
次に、上記の各予備試験1〜3を前提としたより具体的な実施例について説明する。
先ず、所定の施工対象領域すなわち地盤改良対象領域のうち、表1に示す原土b付近より施工を開始するものとし、その時の改良深度3.5m時における計画テーブルフロー値は図1に基づき130mmとする。同時に、計画テーブルフロー値130mmを満足する水/セメント比(W/C)は表4に基づき235%とするとともに、その水/セメント比において目標強度250kN/m2を満足する固化材たるセメント添加量は図3に基づき115kg/m3とする。また、管理テーブルフロー値は先に定義した通り125〜130mmの範囲とする。
そして、上記のように固化材であるセメントの添加量を115kg/m3、実施水/セメント比を235%として、原土との混合撹拌処理を開始する。
ここで、一般的には、施工管理として朝、昼および夕方の少なくとも三回は流動値である実施テーブルフロー値の測定を行うものとする。すなわち、特に朝の測定時には、実施テーブルフロー値をもとに昨日までの実施水/セメント比とセメント添加量で良いかどうかの確認を行い、また、夕方の測定時には、実施テーブルフロー値をもとに次の日の作業のための実施水/セメント比とセメント添加量の決定を行う。
また、例えばバックホウ等をベースマシンとしてそのアーム先端に混合撹拌ヘッドを装着し、その混合撹拌ヘッドを地中に貫入して施工を行う地盤改良工法において、混合撹拌ヘッドにおける撹拌翼付きのチェーンの周回速度をキャビン内でモニタリングしている場合には、チェーン速度に異常が認められた場合には一旦施工を中断して、上記と同様に実施テーブルフロー値の測定を行う。
上記のような各実施テーブルフロー値の測定に際しては、例えば混合撹拌処理開始後10分以内処理土(以後、「混合撹拌処理直後の処理土」とい言う。)の実施テーブルフロー値を測定する。
測定の結果、実施テーブルフロー値が管理テーブルフロー値である125〜130mmの範囲であれば同条件で施工を継続する。
その一方、実施テーブルフロー値が管理流動限界値を超えている場合には、管理テーブルフロー値の範囲となるように実施水/セメントを補正する。
実施水/セメント比の補正後、その補正水/セメント比にて施工を再開する。
そして、施工再開後、直ちに実施テーブルフロー値を再測定し、管理テーブルフロー値の範囲内となっているかどうか再確認する。実施テーブルフロー値が管理テーブルフロー値の範囲になっていない場合には、再度、実施水/セメント比の補正を行う。
1日の作業時間内に、実施テーブルフロー値の測定、水/セメント比の補正、実施テーブルフロー値の再測定、再水/セメント比の補正、再再実施テーブルフロー値の測定を繰り返し実施する。そして、混合撹拌処理直後における処理土の流動値が継続的に管理流動値の範囲となるように施工をする。
実施例2は、実施テーブルフロー値を管理テーブルフロー値の範囲内のものとするのに必要な水/セメント比を求めるにあたり、補正係数を用いる場合の例である。
ここでは、上記実施例1の実施テーブルフロー値の測定値が例えば137mmであったと仮定する。
最初に、表2の水/セメント比とテーブルフロー値との関係から、原土a〜cごとに、テーブルフロー値を1mmだけ増減させるのに必要な水/セメント比の補正係数を求める。なお、この補正係数は、最大と最小の水/セメント比の差を、それらに対応する最大と最小のテーブルフロー値の差で除した値として算出される。
・原土aの補正係数
=(300−150)/(165−115)=3.0%/mm
・原土bの補正係数
=(300−150)/(147−109)=3.9%/mm
・原土cの補正係数
=(300−150)/(135−106)=5.2%/mm
そして、三種類の原土a〜cの平均値を(3.0+3.9+5.2)/3=4.0%/mmとして算出し、これを原土a〜cを有する施工現場での補正係数とする。
次に、下記の計算式(1)により補正水/セメント比(W2/C2)を求める。
W2/C2=W1/C1+{(FI1−FI2)×SI}‥‥(1)
ここに、
W2/C2:求めようとする補正水/セメント比(%)
W1/C1:実施水/セメント比(%)‥‥‥‥235%
FI1:管理テーブルフロー値(mm)‥‥130mm
FI2:実施テーブルフロー値(mm)‥‥137mm
SI:補正係数‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥4.0
上記式(1)より、
W2/C2=235+{(130−137)×4.0}=207%≒205%
となる。
なお、補正水/セメント比については、5%〜10%単位での補正が望ましい。
また、実施テーブルフロー値が管理流動限界値の上限を超えた場合には、求めた補正水/セメント比の端数を切り捨てる。逆に実施テーブルフロー値が管理流動限界値の下限を超えた場合には、求めた補正水/セメント比の端数を切り上げて、管理流動値の範囲内となるように補正する。
こうして、補正水/セメント比(W2/C2)が求められたならば、その補正水/セメント比205%、セメント添加量115kg/m3にて施工を再開する。
施工再開後、先の場合と同様に、例えば施工再開後約10分〜60分以内の混合撹拌直後の処理土にて実施テーブルフロー値を再測定し、管理テーブルフロー値の範囲内(125〜130mm)であるかどうか確認する。
実施テーブルフロー値を再測定した結果132mmであった。よって、再度水/セメント比の補正を行う。
上記式(1)より、
W2/C2=205+{(130−132)×4.0}=197%≒195%
となる(管理流動値の上限を越えているので切り捨てる)。
同様に、再補正水/セメント比が求められたならば、その再補正水/セメント比195%、セメント添加量115kg/m3にて施工を再開する。
こうして、実施テーブルフロー値が管理テーブルフロー値の範囲内でない場合には、繰り返し実施水/セメント比の補正を行い、混合撹拌処理直後における処理土の流動値が継続的に管理流動値の範囲となるように施工をする。
この実施例は、実施水/セメント比に応じたセメント添加量を決定する場合の例である。
先に述べた実施例1と同条件にて施工を開始する。すなわち、固化材であるセメント添加量を115kg/m3、実施水/セメント比を235%として混合撹拌処理を開始する。
なお、施工管理として朝、昼および夕方の少なくとも三回は流動値である実施テーブルフロー値の測定を行うことは実施例1の場合と同様である。
この場合、上記のような各実施テーブルフロー値の測定に際しては、例えば混合撹拌処理直後の処理土にて実施テーブルフロー値を測定する。
実施テーブルフロー値が管理テーブルフロー値の範囲(125〜130mm)であれば同条件で施工を継続する。
一方、実施テーブルフロー値が管理流動限界値を越えている場合には、管理テーブルフロー値の範囲(125〜130mm)となるように次の手順にて実施水/セメント比を補正する。
すなわち、実施テーブルフロー値の測定値が例えば137mmであったと仮定した場合に、その実施テーブルフロー値を管理流動値の範囲とするのに必要な水/セメント比の決定あたり、その水/セメント比を先の補正係数を用いて求める。
最初に、実施例2と同様に、表2の水/セメント比とテーブルフロー値との関係から、原土a〜cごとに、テーブルフロー値を1mmだけ増減させるのに必要な水/セメント比の補正係数を求める。
・原土aの補正係数
=(300−150)/(165−115)=3.0%/mm
・原土bの補正係数
=(300−150)/(147−109)=3.9%/mm
・原土cの補正係数
=(300−150)/(135−106)=5.2%/mm
そして、三種類の原土a〜cの平均値を(3.0+3.9+5.2)/3=4.0%/mmとして算出し、これを原土a〜cを有する施工現場での補正係数とする。
次に、実施例2と同様に、計算式(1)により補正水/セメント比(W2/C2)を求める。
W2/C2=235+{(130−137)×4.0}=207%≒205%
なお、補正水/セメント比については、先の場合と同様に5%〜10%単位での補正が望ましい。
この場合、実施テーブルフロー値が管理流動限界値の上限を超えた場合には、求めた補正水/セメント比の端数を切り捨てる。逆に実施テーブルフロー値が管理流動限界値の下限を超えた場合には、求めた補正水/セメント比の端数を切り上げて、管理流動値の範囲内となるように補正する。
こうして、補正水/セメント比(W2/C2)が求められたならば、その補正水/セメント比205%に対応する固化材の補正添加量、すなわちセメントの補正添加量を図4から読み取る。
図10は、図4と同じ相関グラフ上に上記の補正水/セメント比205%をプロットしたものであるが、図10では補正水/セメント比205%に対応するセメント添加量が83kg/m3となるが、ロス等を考慮して実際の添加量においては5kg/m3単位にて切り上げて85kg/m3とする。
そして、補正水/セメント比205%によるセメントの補正添加量、すなわち85kg/m3にて施工を再開する。
施工再開後、先の場合と同様に、例えば施工再開後約10分〜60分以内の混合攪拌直後の処理土にて実施テーブルフロー値を再測定し、管理テーブルフロー値の範囲内(125〜130mm)であるかどうか確認する。
実施テーブルフロー値を再測定した結果122mmであった。よって、再度水/セメント比の補正を行う。
上記式(1)より、
W2/C2=205+{(125−122)×4.0}=217%≒220%
となる(管理流動限界値の下限を超えているので切り上げる)。
こうして得られた、再補正水/セメント比220%に対応する固化材の再補正添加量、すなわちセメントの再補正添加量を図4から読み取る。
図10は、図4と同じ相関グラフ上に上記の再補正水/セメント比220%をプロットしたものであるが、図10では再補正水/セメント比220%に対応するセメント添加量が98kg/m3となるが、ロス等を考慮して実際の添加量においては5kg/m3単位にて切り上げて100kg/m3とする。
そして、再補正水/セメント比220%によるセメントの再補正添加量、すなわち100kg/m3にて施工を再再開する。
こうして、実施テーブルフロー値が管理テーブルフロー値の範囲内でない場合には、繰り返し実施水/セメント比の補正を行い、混合攪拌処理直後における処理土の流動値が継続的に管理流動値の範囲となるように施工をする。
この値は取りも直さず、混合撹拌処理直後における処理土の流動値を管理流動値の範囲としつつ、所定の強度を満足させる水セメント比と固化材添加量の値である。
ただし、地下水位の変動によって自然含水比が変動したことが明らかな場合には、その変動分を考慮して実施する必要がある。
この実施例は予備試験2を前提とした実施例である。また、施工現場条件(改良深度、目標強度、管理流動値)は実施例1と同様とする。
表8および図5に示した水/セメント比とテーブルフロー値との関係では、水/セメント比が40%のときのテーブルフロー値は154mmであり、管理流動限界値の上限(=130mm)を上回っている。よって、実施水/セメント比は、施工可能な最低限の水/セメント比として60%に設定する。
先にも述べたように、自然含水比は施工箇所や施工時期によって変動するものである。原土の自然含水比が変動し保有含水量が変動しているにもかかわらず、一定の水/セメン比(施工可能な最低限の水/セメント比)による一定添加量で施工を行った場合には、強度(品質)のばらつきの発生原因となる。よって、強度(品質)を平準化するには、自然含水比に応じたセメント添加量に補正して施工する必要がある。
最初に、施工に先立って、原土の自然含水比を測定する。
測定頻度は、0.5〜2日施工分当たり3箇所以上測定して、その平均値を使用するものとする。なお、測定実施時期は、施工日の1〜2日程度前が望ましい。
次に、自然含水比に応じた固化材たるセメント添加量を決定する。例えば、先に測定した自然含水比の平均値が75パーセントであった場合には、その自然含水比が75%のときに目標強度を満足するセメント添加量を、図7の自然含水比とセメント添加量との相関グラフから読み取る。
図11は、図7の相関グラフに自然含水比として75%をプロットしたものであり、図11から明らかなように、自然含水比が75%のときのセメント添加量は107kg/m3となるが、実施添加量としてはロス等を考慮して110kg/m3と決定する。
先に決定した水/セメント比(=60%)とセメント添加量(=110kg/m3)にてスラリ状固化材を吐出して、混合撹拌処理を開始する。
なお、施工管理として朝、昼および夕方の少なくとも三回は流動値である実施テーブルフロー値の測定を行うことは先の場合と同様である。
この場合、上記のような各実施テーブルフロー値の測定に際しては、例えば混合撹拌処理直後の処理土の実施テーブルフロー値を測定する。
その一方、図5に示した水/セメント比とテーブルフロー値との相関グラフから実施時に於けるテーブルフロー値を予測する。
図12は、図5の相関グラフに水/セメント比として60%をプロットしたものであるが、図12では、セメント添加量が100kg/m3(暫定的にセメント添加量を100kg/m3と定めたことは先に述べた)で、水/セメント比が60%のときのテーブルフロー値は167mmとして読み取ることができる。実施添加量である実施セメント添加量に応じてテーブルフロー値は異なるが、図12の相関グラフから求めたテーブルフロー値を参考にして、例えば±5〜10mm以上変動した場合には自然含水比を再度確認する。
ここで、実施テーブルフロー値を測定した結果、施工開始時には170mmであったものが施工を進めるに伴い180mmに増大していたものと仮定する。
また、実施セメント添加量が大きく変動(予備試験時における暫定添加量に対して例えば±20kg/m3以上)することが予測される場合には、施工現場内における平均的な土質に対する、一定の水/セメント比(施工可能な最低限の水/セメント比)のもとでのセメント添加量とテーブルフロー値との相関を予め把握しておくことが望ましい。
ここで、上記のような実施テーブルフロー値の変動は、自然含水比(保有含水量)の変動を示唆しているので自然含水比を再確認する。
自然含水比Wn(%)を再確認したところ、90%であったと仮定する。そこで、自然含水比Wn(%)に応じた固化材たるセメント添加量を決定する。すなわち、自然含水比が90%のときに目標強度を満足するセメント添加量を、図7の自然含水比とセメント添加量との相関グラフから読み取る。
先にも述べたように、図11は、図7の相関グラフに自然含水比として90%をプロットしたものであり、図11から明らかなように、自然含水比が90%のときのセメント添加量は143kg/m3となるが、施工時における実施添加量としてはロス等を考慮して145kg/m3とする。
そして、施工を再開する。以降も自然含水比と実施テーブルフロー値の測定を繰り返しながら、施工時における原土の自然含水比に即した最適なセメント添加量をその都度決定して、混合攪拌処理を実行する。
このように、従来であれば原土の自然含水比(80.9%)より求められたセメント添加量を図6から118kg/m3として読み取った上でこれを120kg/m3に丸めた上で施工を実施していたのに対して、実施例4ではセメント添加量を、自然含水比が75%のときに目標強度を満足するセメント添加量である110kg/m3として施工を行うことになり、一段と経済的に施工を行うことが可能となる。
また、逆に原土の自然含水比が90%に変動した場合には、必要なセメント添加量は143kg/m3(実施添加量は145kg/m3)となることが図11からわかる。この場合、従来通りに求められたセメント添加量120kg/m3で実施したとするならば、強度の不足(品質不良)となり大きな問題となる。よって、従来では施工現場内における自然含水比の高めな箇所で試料採集し、結果的に強度面において安全サイド(セメント添加量が多くなり不経済)のセメント添加量を決定していたのである。
従来ならば今回の様なケースには、自然含水比が90%強となる高めな箇所にて試料採集し予備試験を行うので、実施添加量は145kg/m3となる処であるが、このように、実施例4によれば、原土の自然含水比の変動に応じて固化材たるセメントの添加量を110kg/m3〜145kg/m3と変化させることによって、経済的に施工を行えるとともに、強度(品質)の確保も可能となる。
この実施例は予備試験3を前提とした実施例である。また、施工現場条件(改良深度、目標強度、管理流動値)は実施例1と同様とする。
表8および図5に示した水/セメント比とテーブルフロー値との関係では、固化材として粉体状のセメントを100kg/m3添加したときには、テーブルフロー値は135mmとなっている。つまり、粉体添加であっても管理流動限界値の上限(130mm)を上回った結果となっている。よって、固化材であるセメントの添加方式としては粉体添加とする。
原土の自然含水比は施工箇所や施工時期によって変動することは先に述べた。原土の自然含水比が変動し保有含水量が変動しているにもかかわらず、予備試験にて求められた一定のセメント添加量で施工した場合には、強度(品質)のばらつきの発生原因となる。よって、強度(品質)を平準化するには、自然含水比に応じたセメント添加量に補正して施工する必要がある。
最初に、施工に先立って、施工箇所のセメント添加量を決定する前に、原土の自然含水比Wn(%)を測定する。
測定頻度は、0.5〜2日施工分当たり例えば三箇所を測定して、その平均値を使用するものとする。測定実施時期は、施工日の1〜2日程度前が望ましい。
次に、原土の自然含水比Wn(%)に応じたセメント添加量を決定する。すなわち、自然含水比が75%のときに目標強度を満足するセメント添加量を、図9の自然含水比とセメント添加量との相関グラフから読み取る。
図13は、図9の相関グラフに自然含水比として75%をプロットしたものであり、同図から明らかなように、自然含水比が75%のときのセメント添加量は83kg/m3となるが、実施添加量としてはロス等を考慮して85kg/m3と決定する。
そして、先に決定したセメント添加量(=85kg/m3)にて固化材であるセメントを粉体のままで吐出して、混合撹拌処理を開始する。
なお、施工管理として朝、昼および夕方の少なくとも三回は流動値である実施テーブルフロー値の測定を行うことは先の場合と同様である。
また、上記のような各実施テーブルフロー値の測定に際しては、例えば混合撹拌処理直後の処理土の実施テーブルフロー値を測定する。
ここでは、表8および図5に示したように、固化材である粉体状のセメント100kg/m3添加時におけるテーブルフロー値135mmを参考に実施テーブルフロー値を管理するものとし、例えば上記の135mmに対して±5〜10mm以上変動した場合には自然含水比を再度確認する。
例えば、実施テーブルフロー値を測定した結果、施工開始時には132mmであったものが、施工を進めるに伴い140mmと増大していたと仮定する。
なお、粉体での実施セメント添加量が大きく変動(予備試験時における暫定添加量に対して例えば±20kg/m3以上)することが予測される場合には、施工現場内における平均的な土質に対するセメント添加量とテーブルフロー値との相関を予め把握しておくことが望ましい。
上記のような実施テーブルフロー値の変動を受けて、自然含水比を再確認する。
自然含水比を再確認したところ、90%であったと仮定する。そこで、自然含水比90%に応じた固化材たるセメント添加量を決定する。すなわち、自然含水比が90%のときに目標強度を満足するセメント添加量を、図9,13の自然含水比とセメント添加量との相関グラフから読み取る。
図13は、図9の相関グラフに自然含水比として90%をプロットしたものであり、同図から明らかなように、自然含水比が90%のときのセメント添加量は102kg/m3となるが、施工時における実施添加量としてはロス等を考慮して105kg/m3とする。
そして、施工を再開する。以降も自然含水比と実施テーブルフロー値の測定を繰り返しながら、施工時における原土の自然含水比に即した最適なセメント添加量をその都度決定して混合攪拌処理を実行する。
このように、従来であれば原土の自然含水比(80.9%)より求められたセメント添加量を図8から90kg/m3として決定して施工を実施していたのに対して、実施例5ではセメント添加量を自然含水比が75%のときの目標強度を満足するセメント添加量である85kg/m3として施工を行うことになり、一段と経済的に施工を行うことが可能となる。
また、逆に原土の自然含水比が90%に変動した場合には、必要なセメント添加量は102kg/m3(実施必要添加量は105kg/m3)となることが図13からわかる。この場合、従来通りに求められたセメント添加量90kg/m3で実施したとするならば、強度の不足(品質不良)となり大きな問題となる。よって、従来では施工現場内における自然含水比の大きめな箇所で試料採集し、結果的に強度面において安全サイド(セメント添加量が多く不経済)のセメント添加量を決定していたのである。
従来ならば今回の様なケースには、自然含水比が90%強となる高めな箇所にて試料採集し予備試験を行うので、実施添加量は105kg/m3となる処であるが、このように、実施例5によれば、原土の自然含水比の変動に応じて固化材たるセメントの添加量を85kg/m3〜105kg/m3と変化させることによって、経済的に施工を行えるとともに、強度(品質)の確保も可能となる。
なお、固化材として粉体状のセメントを使用した場合には、セメント重量の約40%に相当する水分量が吸収されるために、場合によっては混合撹拌直後における処理度の流動値(実施テーブルフロー値)が著しく低下して管理流動限界値の下限値を下回ることもある。このような場合には、混合撹拌直後における処理度の流動値を管理流動値の範囲となるよう原土に加水しながら施工することが望ましい。
また、粉体状のセメントを使用する場合、原土に有機質土等が混入して、セメントによる強度発現が比較的低くなるようなケースでは、スラリ状固化材を使用する場合に対して、計画テーブルフロー値を0.8〜0.95の範囲とするほうが経済的となることもある。
(D)予備試験4
この予備試験4は、原土としてはその自然含水比が液性限界を大きく上回っているが、現場の都合上、スラリ状固化材の添加での施工が必要とされる場合に備えるためである。すなわち、原土の自然含水比が液性限界を大きく上回っているために、混合撹拌処理直後における安定処理土の流動値が管理流動値の上限を越えることが予想されるにもかかわらず、現場条件によりスラリ状固化材の添加が余儀なくされる場合があるからである。
最初に、砂質土と粘性土が混在する原土を想定し、表13に示すような二種類の物性の原土、すなわち砂質土と粘性土を用意する。
表13に示す二種類の原土を用いた上で、表14に示すような体積比率(土層比率)で混合して三種類の調整土(1)〜(3)を作り、各調整土(1)〜(3)の物性値を測定する。その結果を表14に示す。
さらに、表14に示す三種類の調整土(1)〜(3)について、コンシステンシー指数Icの値をIc=(Wl−Wn)/Ipに基づいて算出する。
(a) Ic=−3.8
(b) Ic=−1.3
(c) Ic=−0.5
上記コンシステンシー指数Icの値から推定するに、三種類の調整土(1)〜(3)はいずれも原土として不安定な状態にあり、強度発現のみを考慮したときには粉体状固化材の添加のもとでの施工が経済的であるが、現場の施工環境上スラリ状固化材の添加のもとでの施工が余儀なくされる場合には、当然のことながらスラリ状固化材の水/セメント比としては施工可能な最低水/セメント比(W/C=60%)での施工となる。
手順1として、上記三種類の調整土(1)〜(3)につき、目標強度400kN/m2、改良深度4.5m、平均原土重量1.596t/m2として施工を行う場合の計画テーブルフロー値を決定する。具体的には、図14に示すような改良深度−原土重量−テーブルフロー値の相関グラフを予め用意しておき、これに上記の改良深度4.5mをプロットして、計画テーブルフロー値を読み取る。図14から明らかなように、計画テーブルフロー値は135mm、管理テーブルフロー値は130mm〜140mm(計画テーブルフロー値135mm±5mm)とする。
手順2として、上記の管理テーブルフロー値に対し土質性状よりして実際の実施テーブルフロー値が大きく上回ることが予想されるので、ここでは、上記三種類の調整土(1)〜(3)につき、最低水/セメント比(W/C=60%)における各固化材添加量のときのテーブルフロー値を測定する。その結果を表15に示す。
手順3として、表15のデータをもとに、三種類の調整土(1)〜(3)の固化材添加量とテーブルフロー値の相関グラフを作成する。そのグラフを図15に示す。なお、三種類の調整土(1)〜(3)の相関は同図の実線のとおりであるが、同調整土(1)〜(3)の体積比率(土層比率)間の中間の比率(7:3、6:4、4:6、3:7)についても、図15に破線で示すように相関を推定することができる。
手順4として、上記三種類の調整土(1)〜(3)について、スラリ状固化材の水/セメント比W/C=60%、固化材添加量をそれぞれ120kg/m3、160kg/m3、200kg/m3、240kg/m3としたときの一軸圧縮強度を求める。その結果を表16に示す。
手順5として、表16のデータをもとに、上記三種類の調整土(1)〜(3)について図16に実線で示すような固化材添加量と一軸圧縮強度の相関グラフを作成する。なお、上記と同様に、同調整土(1)〜(3)の体積比率(土層比率)間の中間の比率(7:3、6:4、4:6、3:7)についても、同図に破線で示すようにその相関を推定することができる。
以上のことから、図15の固化材添加量とテーブルフロー値の相関グラフを用い、混合撹拌処理直後におけるテーブルフロー値を測定して同図に当てはめれば、その時の体積比率(土層比率もしくは土層割合)を推定することができる。
また、図16の固化材添加量と一軸圧縮強度の相関グラフを用い、推定土層に対する目標強度を得るのに必要なスラリ状固化材の固化材添加量を推定することができる。
すなわち、図15と図16を用いることによって、混合撹拌処理直後の処理土におけるテーブルフロー値を測定しつつその時のテーブルフロー値の変動によって土層割合を推定し、その時に必要な固化材添加量をリアルタイムで導き出して実施添加量とすることで、経済的で且つ安定した強度(品質)を得ることが可能となる。
この実施例は、先の予備試験4を前提として施工を行う場合の実施例である。
施工条件として、目標強度400kN/m2、改良深度4.5m、平均原土重量1.596t/m2と定め、同時に、計画テーブルフロー値135mmとし、そのときの管理テーブルフロー値は130mm〜140mm(計画テーブルフロー値135mm±5mm)とする。さらに、施工開始箇所の土層割合を4:6と推定し、その場合のスラリ状固化材における固化材添加量は図16から173kg/m3として読み取る。そして、実施固化材添加量を175kg/m3として丸める。
土層割合が4:6と推定される付近より施工を開始し、そのときの水/セメント比W/C=60%、固化材添加量は175kg/m3とする。また、この条件でのテーブルフロー値を図15から133mmとして読み取る。
混合撹拌処理直後の処理土の実施テーブルフロー値を測定する。実施テーブルフロー値が133mm±5mmの範囲内であれば同条件で施工を継続する。
一方、実施テーブルフロー値として例えば143mmを測定したような場合には、図17に示すように、固化材添加量175kg/m3、テーブルフロー値143mmのときの土層割合を5:5と推定する。さらに、図18に示すように、推定土層割合5:5のときの実施固化材添加量を決定する。すなわち、図18から明らかなように、目標強度400kN/m2で推定土層割合5:5のときの固化材添加量は1158kg/m3となるが、これを丸めて160kg/m3とする。なお、図17は図15と同じものであり、また図18は図16と同じものである。
そして、固化材添加量160kg/m3として施工を再開する。
このように、実施テーブルフロー値の測定によって土層割合を推定したことにより、実施固化材添加量として175kg/m3から160kg/m3へ補正しても目標強度を満足させることができる。
なお、施工開始直後の実施テーブルフロー値を再度測定する。また、混合撹拌処理直後の処理土を採取し、実施固化材添加量を下げたことに伴う強度への影響を確認する。
以上の予備試験1〜4および実施例1〜6は、固化材の添加形態としてスラリ状固化材、又は粉体状の固化材の両添加形態を前提とした施工を想定している。
施工に際し、改良深度が大きくなるのに伴い混合撹拌負荷抵抗も増加する。また、混合撹拌負荷抵抗の増大に伴って処理土の品質も低下する。
これらの点を踏まえて、混合撹拌処理直後における処理土の流動値を改良深度に応じて増減させれば混合撹拌時の負荷抵抗を一定水準に維持することが可能となる。同時に、実際に混合撹拌処理を司る混合撹拌ヘッドの撹拌翼を常に安定した状態にて稼動させることが可能となる。
図1に示したものは改良深度とテーブルフロー値の相関グラフの一例であり、改良深度に応じた計画テーブルフロー値と管理流動限界値の上限および下限を表している。その上限と下限のなす幅を管理テーブルフロー値の範囲と定め、例えば計画テーブルフロー値に対して例えば±10mmの幅を持たせてある。この幅を現場状況に応じて増減させることで所期の目的を達成する上でより有効なものとなる。
また、図14に示したものは改良深度と原土重量(湿潤土重量)とテーブルフロー値の相関グラフの一例であり、改良深度および原土重量に応じた計画テーブルフロー値を表している。その計画テーブルフロー値に対して管理テーブルフロー値の範囲を上記と同様に、例えば計画テーブルフロー値に対して例えば±10mmの幅を持たせることとする。この幅を現場状況に応じて増減させることで所期の目的を達成する上でより有効なものとなる。
(E)予備試験5
ここでは、粉体状固化材の添加による施工の場合のみを前提とした予備試験を行う。
先に表14に示した三種類の調整土(1)〜(3)のIc=(Wl−Wn)/Ipに基づく(Wl−Wn)の値とコンシステンシー指数Icは下記のとおりである。
(1) 20.6−43.4=−22.8 Ic=−3.8
(2) 35.1−54.9=−19.8 Ic=−1.3
(3) 51.5−66.6=−15.1 Ic=−0.5
また、コンシステンシー指数Icが得られる原土でWl−Wnの関係において固化材を粉体状にて添加する範囲は、一般的には図19のとおりである。
各調整土(1)〜(3)は、いずれもWl−Wnの値が−22.8〜−15.1の範囲であり、Wl−Wn≦50を大きく下回っている。また、Ic=−3.8〜−0.5の範囲は原土としては不安定な状態と言える。よって、固化材の添加形態としては粉体添加とする。
施工条件としては、先の予備試験4と同様に、目標強度400kN/m2、改良深度4.5m、計画テーブルフロー値は135mmとする。ただし、管理テーブルフロー値は、計画テーブルフロー値−10mm〜+5mmの範囲(125mm〜140mm)とする。
手順1として、上記三種類の調整土(1)〜(3)に対して粉体状の固化材をそれぞれ70kg/m3、110kg/m3、150kg/m3、190kg/m3で添加した場合のテーブルフロー値を測定する。その結果を表17に示す。
手順2として、表17のデータをもとに、固化材添加量とテーブルフロー値の相関グラフを作成する。そのグラフを図20に示す。なお、三種類の調整土(1)〜(3)の相関は同図の実線のとおりであるが、同調整土(1)〜(3)の体積比率(土層比率)間の中間の比率(7:3、6:4、4:6、3:7)についても、同図に破線で示すようにその相関を推定することができる。
手順3として、上記三種類の調整土(1)〜(3)に70kg/m3、110kg/m3、150kg/m3、190kg/m3でそれぞれ固化材を添加した場合の一軸圧縮強度を求める。その結果を表18に示す。
手順4として、表18のデータをもとに、固化材添加量と一軸圧縮強度の相関グラフを作成する。そのグラフを図21に示す。
この実施例は、先の予備試験5を前提として施工を行う場合の実施例である。
土層割合を4:6と推定し、目標強度を400kN/m2とした場合の粉体状固化材の添加量を図21から132kg/m3として読み取る。そして、実施固化材添加量を135kg/m3として丸める。
土層割合が4:6と推定される付近より施工を開始し、そのときの粉体状固化材の添加量は135kg/m3とする。また、この条件でのテーブルフロー値を図20から126mmとして読み取る。
混合撹拌処理直後の処理土の実施テーブルフロー値を測定する。測定の結果、実施テーブルフロー値が例えば135mmであったと仮定する。粉体状の固化材の添加量135kg/m3、テーブルフロー値が135mmに相当する土層割合を、図22に示すように6:4と推定する。
さらに、図23に示すように、推定土層割合6:4のときの実施固化材添加量を決定する。すなわち、図23から明らかなように、目標強度400kN/m2で推定土層割合6:4のときの固化材添加量は107kg/m3となるが、これを丸めて110kg/m3とする。
なお、上記の図22は図20と同じものであり、同様に図23は図21と同じものである。
そして、粉体状の固化材添加量110kg/m3として施工を再開する。
このように、実施テーブルフロー値の測定によって土層割合を推定したことにより、実施固化材添加量として135kg/m3から110kg/m3へ補正しても目標強度を満足させることができる。
ここで、施工開始直後の実施テーブルフロー値を再度測定する。
再度測定の結果、実施テーブルフロー値が管理テーブルフロー値を外れている場合には、実施例1,2,3と同様に再度実施添加量の補正を行う。
この様に、上記の手順を繰り返しながらテーブルフロー値の変動に応じ固化材添加量を補正しつつ施工を行う。さらに、混合撹拌処理直後の処理土を採取し、実施固化材添加量を下げたことに伴う強度への影響を確認する。
以上の予備試験5および実施例7は、いずれも固化材の添加形態として粉体状固化材の添加を前提とした施工を想定している。
原土重量と混合撹拌負荷抵抗は正比例する。原土重量と目標強度を満足させるのに必要な固化材添加量は反比例する。
改良深度および原土重量が大きくなるのに伴い混合撹拌負荷抵抗が大きくなるので、混合撹拌処理直後における流動性を高めることにより、ひいては計画テーブルフロー値を大きくすることにより、混合撹拌処理時の負荷抵抗を一定水準に維持しようとするものである。
原土重量の小さい土は強度の発現が悪く、原土重量の大きな土よりも目標強度を満足させるのに必要な固化材量が多くなる。
一方、計画テーブルフロー値が小さい方が強度も得られやすいことを含めて考察すると、原土重量の小さい土は計画テーブルフロー値を小さくすることによって固化材量を少なくすることが可能となり、好ましい傾向と言える。
また、実施例5でも述べたように、粉体状のセメントを使用する場合には、原土に有機質土等が混入して、セメントによる強度発現が比較的低くなるようなケースが多く、この様な場合にはスラリ状固化材を使用する場合に対して、計画テーブルフロー値を0.8〜0.95の範囲とするほうが経済的となることもある。
ここで、先の予備試験1〜5および実施例1〜7に関連して、土質の一般的事項について補足する。
(a)「液性限界比Wl、塑性限界比Wpの測定が不可能なNPと表示される土質」について
土質分類のなかで、液性限界および塑性限界のうち少なくともいずれか一方の測定が不可能なNPと表示されるものがある。これは、JIS A1205:1999 で定められた試験方法で実施して測定が不可能な土質をいう。土質工学会発行による土質試験法では、液性限界および塑性限界のうち少なくともいずれか一方がそれぞれに規定された方法による試験によって求められない場合、または塑性限界が液性限界と等しいか、あるいは塑性限界が液性限界より大きく求まった場合に、非塑性土の意味としてNPと表示するとある。
(b)「粒度試験における細粒分」について
JIS A1204:2000 で定められた粒度試験方法によるふるい分けにより75μmより小さな試料(標準網ふるい75μmを通過した資料)の粒度をいう。土の分類としてはシルト、粘土分に属する。
(c)「自然含水比Wn、液性限界比Wl、塑性限界比Wp」について
液性限界とは、土が塑性状態から液体に移る限界の含水比で、一般には多量の水分を含む土が、塑性体として最小のせん断強さを示す状態にあるときの含水比ということになっている。LLまたはWlの記号にて表示する。
塑性限界とは、土の含水比がそれ以下になると脆くなって、亀裂が生じやすくなり、自由に変形しにくくなる、いわば塑性の状態から固体状態に移る限界であるが、丸めた試料をころがしてひも状に伸ばし、ひもの直径が3mm程度になったとき、きれぎれになるような状態の土の含水比で表す。PlまたはWpの記号にて表示する。つまり、Wl−Wnの値が大きい土は、比較的安定した状態にあるといえる。また、Wl−Wnの値が小さい土は、不安定で流動化しやすい状態にあるといえる。
コンシステンシーとは、固体と液体の中間にある物体の硬軟の程度を表す概念である。また、土の流動に対する抵抗であり、土のレオロジ的挙動の指標であると言われている。
コンシステンシー指数は、細粒土の硬軟の程度を示すが、軟弱土については流動に対する抵抗であり、次式で表される。
コンシステンシー指数Ic=(Wl−Wn)/(Wl−Wp)
コンシステンシー指数Icは、細粒土の相対的な硬さなり安定度を意味する。Ic≧1である場合には、自然含水比が塑性限界に近いか、あるいはそれ以下ということになり、比較的安定な状態にあることを意味している。Ic≒0である場合には、自然含水比が液性限界に近く、このような土を乱せば液状を呈することになることを示し、著しく不安定化する危険性のあることを示していると言われている。なお、Wl−Wnの関係における土の状態を図24に示す。
ここでは、固化材の添加形態をスラリ状固化材の添加とする場合に、コンシステンシー指数Icが得られる原土について検討する。
安定処理工法における自然含水比と発現強度の関係は、自然含水比が大きくなればなるほど目標強度を得るのに必要な固化材量が増える傾向にあることは周知の事実である。よって、自然含水比Wnと液性限界比Wlのバランスにおいて、スラリ状固化材の添加における経済的な添加量下限を定める場合について検証してみる。
シルト、粘度分が多く含まれた土やローム土等においては自然含水比と液性限界比がほぼ同等であっても予想以上の支持力をもっている。また、掘削にあたってもほとんど垂直に近い法面で切り土した場合にも自立して安定した状態をよく見かける。
つまり、上記のような土にあっては、Wl−Wn=0であっても安定した状態にあるといえる。また、そのことが固化材をスラリ状形態にて供給して混合撹拌処理を行った場合に十分な混合撹拌が行えない要因となっていた。さらに、混合撹拌処理ができたとしても安定処理土に流動性がなく安定処理土中に空隙等が生じ品質がばらつくこともあった。
上記のような原土の一例を以下に示す。
・土質分類名:関東ローム
・湿潤密度ρt=1.56t/m3
・自然含水比Wn=147%
・液性限界比Wl=−143%
・塑性限界比Wp=71%
・乾燥密度ρd=0.63t/m3
・一軸圧縮強度σ=129kN/m2
Wl−Wn=143−147=−4と、限りなくWl−Wn=0に近い状態にあるが、一軸圧縮強度としては、σ=129kN/m2と安定した状態にあるといえる。これは取りも直さず混合撹拌抵抗となることを意味している。
この原土において、Wl−Wn=−30となる状態とは、自然含水比として173%以上となる。自然含水比Wn=173%としたときには、細粒土の相対的な硬さを示すコンシステンシー指数としてはIc=(143−173)/(143−71)=−4となり、土として不安定な状態となってくる。
これらを鑑みて、スラリ状固化材の添加形態にて混合撹拌する安定処理工法において、図25に示すようにWl−Wn≧−30の範囲を経済的な下限と定めるのが妥当となる。
次に、固化材の添加形態をスラリ状固化材の添加とする場合に、コンシステンシー指数Icが得られない原土について検討する。
原土の土質性状(物性値)を表す液性限界比、塑性限界比の測定が不可能でNPと表示される原土に対しスラリ状固化材の添加のもとで混合撹拌処理する安定処理工法において、固化材の経済的な添加量下限を、粒度試験における細粒分の比率Aと自然含水比Wnの関係において定める場合について検証してみる。
過去の土質データによると、液性限界比の最低測定値としては、土によりばらつきもあるが、Wl=20〜30%程度である。また、そのときにおける細粒分の比率はA=10〜20%であった。つまり、液性限界比と細粒分の比率は正比例の相関関係にあるといえる。
そこで、原土の自然含水比が液性限界比に近付くと不安定な状態となることに着目し、液性限界比の測定ができない土に対しては、細粒分の比率Aと自然含水比Wnの相関よりスラリ状固化材の添加量を定めようとするものである。
ここでは、細粒分の比率が下限側に位置(細粒分の比率A≒5%以下)する土において、自然含水比がWn≒30%程度保有している原土について検証する。因みに、細粒分の比率A≒5%以下の原土とは、良質な砂に属して土質性状としては当然NPとなる土である。
これらの原土は砂質土と言われ、土の抵抗値を表すには内部摩擦角Φをもって表示する。内部摩擦角Φの大きい砂質土(細粒分の比率Aの小さい土)にあっては、細粒分の比率Aに対して自然含水比Wnが比較的高くても、混合撹拌抵抗を有しているのが特徴である。
固化材をスラリ状形態で添加,供給する下限とは、これより下回るならば品質と経済性の両面において粉体状固化材の添加とした方が良いとされる限界を指すものである。
上記のような原土の一例を以下に示す。
・土質分類名:砂質土
・細粒分の比率A=3.4%
・自然含水比Wn=27.0%
・一軸圧縮強度σ=16kN/m2
・内部摩擦角Φ=43°(砂質土としては約45°が最大値である)
このときにおけるA−Wnの値は3.4−27=−23.6であるが、内部摩擦角がΦ=43°で原土としては安定した状態といえる。よって、図26に示すように、A−Wnの関係において、A−Wn≧−30の範囲をスラリ状固化材の添加,供給にて混合撹拌処理する際の経済的な下限値とすることが妥当となる。
次に、固化材の添加形態を粉体状固化材の添加とする場合であって、コンシステンシー指数Icが得られる原土について検討する。
液性限界比が200%を越える高有機質のような原土においては、自然含水比が液性限界比を大きく下回っていても強度特性としては比較的小さいことが特徴である。また、これらの原土は酸性土壌であり、固化材のアルカリ分が酸性土壌に食われて、強度発現としては小さく、目標強度によっては固化材添加量がかなり増大することがある。
上記のような原土の一例を以下に示す。
・土質分類名:有機質土
・湿潤密度ρt=1.3t/m3
・自然含水比Wn=160%
・液性限界比Wl=−205%
・塑性限界比Wp=97%
・乾燥密度ρd=0.5t/m3
・一軸圧縮強度σ=40kN/m2
Wl−Wn=205−160=45となるが、乾燥密度としてはρd=0.5t/m3と軽く、かなりの有機物が含まれていることが予想される。一軸圧縮強度も有機物の影響によりσ=40kN/m2と小さい値となっている。このように原土重量は小さく強度特性も小さいので混合撹拌処理等に対する抵抗も小さくなる。
また、このように有機物の含まれる原土の特性はコンシステンシー指数としてはIc=(205−160)/(205−97)=0.4を示し、現位置の状態ならば安定しているかのように見えるが、土と水の割合(1.3−0.5=0.8)は、±0.5tに対し水0.8tの割合で構成されている。これは混合撹拌処理等におけるこね返し時に保有強度が大きく低下する鋭敏比の高い土としても良く知られるところである。
このように有機物が混入し且つ相対的に保有含水量が多い原土に対しスラリ状固化材の添加では、強度の発現が望み薄く、目標強度を得ることが困難となる可能性が高い。よって、図27に示すように、Wl−Wnの関係において、Wl−Wn≦50の範囲を粉体状固化材の添加,供給にて混合撹拌処理する際の経済的な下限値とすることが妥当となる。
次に、固化材の添加形態を粉体状固化材の添加とする場合であって、コンシステンシー指数Icが得られない原土について検討する。
原土の土質性状(物性値)を表す液性限界比、塑性限界比の測定が不可能でNPと表示される原土に対し粉体状固化材の添加のもとで混合撹拌処理する安定処理工法において、固化材の経済的な添加量上限を、粒度試験における細粒分の比率Aと自然含水比Wnの関係において定める場合について検証してみる。
細粒分の比率Aと自然含水比Wnの関係については、先に述べたとおりである。そこで、自然含水比が液性限界比に近付くと土としては不安定な状態となることに着目し、液性限界比が測定不可能な土に対して粉体状固化材を添加するのが好適な範囲を以下に示す。
細粒分の比率が上限側に位置している場合、つまり細粒分の比率A≒30%で且つNPとなる土において、自然含水比がWn≒30%程度であっても中位程度(一軸圧縮強度σ=40kN/m2)の強度特性を示す事例がある。これはA−Wn≦0となるあたりから土の不安定化が始まることを意味することでもある。
上記のような原土の一例を以下に示す。
・土質分類名:シルト質砂
・細粒分の比率A=27.9%
・自然含水比Wn=28.2%
・一軸圧縮強度σ=39kN/m2
・内部摩擦角Φ=10.4°(砂質土としては約45°が最大値である)
A−Wn=27.9−28.2=−0.3であるが、内部摩擦角としてはΦ=10.4°と中位以下の値を示している。しかし、先に述べたように「液性限界比Wnの最低測定値としては20〜30%程度であり、そのときにおける細粒分の比率Aは10〜20%であった」とし、且つ「液性限界比と細粒分の比率は正比例の相関関係にある」としたときに、粉体状固化材の添加の上限を示すならば、Wnの最低値である20%のときと、Aの最高値である20%のときである。つまり、A−Wn=0のときといえる。したがって、粉体状固化材を添加,供給して混合撹拌処理した安定処理土が、重機等による転圧にて必要な締め固め度が得られる上限としてA−Wn≦0の範囲が好ましいものとなる。
すなわち、図28に示すように、A−Wnの関係において、A−Wn≦0の範囲を粉体状固化材の添加,供給にて混合撹拌処理する際の経済的な上限値とすることが妥当となる。
図24〜28から明らかなように、固化材の添加形態(スラリ状固化材の添加とするか粉体状固化材の添加とするかの違い)によって適用範囲が重なっている。これは、品質と経済性という相反する条件を考慮しつつ、スラリ状固化材の添加ではその適用範囲の下限を、粉体状固化材の添加では適用範囲の上限をそれぞれ示そうとしているからである。
例えば、先の述べた例のうち、コンシステンシー指数の得られる原土においてはWl−Wn=−30〜50の間で、コンシステンシー指数の得られない原土ではA−Wn=−30〜0の間で、それぞれスラリ状固化材の添加と粉体状固化材の添加とが重複している。よって、実施工における重複区間の運用は対象原土の土質性状等を良く把握した上で、スラリ状固化材および粉体状固化材の運用性を予備試験にて確認し、最も経済的で且つ良好な品質が得られるものを選択する。
なお、予備試験では現場状況に応じた最適な処理土の流動値を予め定めておき、混合撹拌処理直後における管理流動値の範囲となるように固化材添加形態としてスラリ状固化材の添加または粉体状固化材の添加のいずれかを選択する。また、それぞれの添加形態に応じた固化材量、スラリ状固化材の場合の水/固化材比等を変化させた試験を実施して、品質の一層の安定化を図ることが望ましい。
そのとき、上記の固化材量や水/固化材比等は、改良対象深度、原土重量、目標強度等を考慮し、予備試験により「最も経済的であり且つ良好な品質」が得られるところで決定する。
改良深度とテーブルフロー値の相関を示すグラフ。
スラリ状固化材における水/セメント比とテーブルフロー値の相関を示すグラフ。
水/セメント比別のセメント添加量と一軸圧縮強度の相関を示すグラフ。
スラリ状固化材における水/セメント比と固化材添加量の相関を示すグラフ。
スラリ状固化材における水/セメント比とテーブルフロー値の相関を示すグラフ。
含水比調整土の含水比別セメント添加量と一軸圧縮強度の相関を示すグラフ。
自然含水比とセメント添加量の相関を示すグラフ。
含水比調整土の含水比別セメント添加量と一軸圧縮強度の相関を示すグラフ。
自然含水比とセメント添加量の相関を示すグラフ。
図4のグラフ上で特定のセメント添加量もしくは水/セメント比を指定したときの説明図。
図7のグラフ上で特定のセメント添加量もしくは自然含水比を指定したときの説明図。
図5のグラフ上で特定の水/セメント比もしくはテーブルフロー値を指定したときの説明図。
図9のグラフ上で特定のセメント添加量もしくは自然含水比を指定したときの説明図。
改良深度と原土の重量およびテーブルフロー値の相関を示すグラフ。
スラリ状固化材における固化材添加量とテーブルフロー値の相関を示すグラフ。
スラリ状固化材における固化材添加量と一軸圧縮強度の相関を示すグラフ。
図15のグラフ上で特定のテーブルフロー値もしくは固化材(セメント)添加量を指定したときの説明図。
図16のグラフ上で特定の一軸圧縮強度もしくは固化材添加量を指定したときの説明図。
原土のWl−Wnの関係において粉体状固化材の添加形態とする場合の説明図。
粉体状固化材の添加量とテーブルフロー値の相関を示すグラフ。
粉体状の固化材添加量と一軸圧縮強度の相関を示すグラフ。
図19のグラフに特定の固化材添加量とテーブルフロー値をプロットしたときに説明図。
図20のグラフ上で特定の一軸圧縮強度もしくは固化材添加量を指定したときの説明図。
Wl−Wnの関係における土の状態を示す説明図。
Wl−Wnの関係において、Wl−Wn≧−30の範囲をスラリ状固化材の添加とする際の説明図。
A−Wnの関係において、A−Wn≧−30の範囲をスラリ状固化材の添加とする際の説明図。
Wl−Wnの関係において、Wl−Wn≦50の範囲を粉体状固化材の添加とする際の説明図。
A−Wnの関係において、A−Wn≦0の範囲を粉体状固化材の添加とする際の説明図。