JP3941457B2 - 遠心機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遠心機のドアロック制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の遠心機は、通常駆動装置またはロータに識別子を持たせ、この識別子を認識する検出器を近傍に対向して設け、ロータの回転速度を検出し、使用者が設定部より設定した回転速度と比較して、駆動装置をコントロールしている。例えばロータの回転速度が設定値より低い場合は駆動装置の入力電力を増したり、周波数誘導モータの場合は同時に周波数を上げたり等して駆動装置の加速トルクを増し、回転速度を上昇させる。また、ロータの回転速度と設定値の差が規定の差以下になった場合は、電圧や電流を微調整して前記した規定の差以上とならないようフィードバック制御している。この回転速度を検出している検出器もしくは検出器の信号を処理している制御装置の一部がロータ回転中に故障するなどしてロータの回転速度を検出できなくなると、場合によっては回転速度を0(ゼロ)と認識し、ロータが回転しているにもかかわらず制御装置はロータが停止していると誤判断し、ドアロックを解除してドアを開けられる状態にしてしまう場合がある。一方、使用者側は表示部の回転速度が0(ゼロ)と表示されるとロータが止まったものと思い、ドアを開けて回転体(ロータ)に接触する危険がある。
【0003】
この危険性を回避するために、この種の遠心機はロータが回転中に回転速度が検出不能になったり、検出した回転速度の信頼性が疑われる事態になった場合には表示部などに異常を示すメッセージ(アラーム)を表示するとともに、たとえ表示が0となっていても一定時間ロータが回り続けているものとして内部タイマーを動作させ、タイマーが所定の時間に達しなければドアロックの解除ができないようにしている。ここで言う一定時間とは、ロータが風損や軸受けなどの機械損で減速、停止するまでの時間のことで、当然フィードバック制御ができないため、ブレーキ減速はできない。このブレーキ無し減速(当業界では自然減速と称している)の時間をあらかじめ求め、この時間を一定時間(所定の時間)としている。当然、この時間は使用しているロータのタイプや速度検出が不能となった時の回転速度等によっても異なるが、安全を優先させるため最も条件の悪い、すなわち各ロータの許容最高回転速度から自然減速で停止するまでの時間が最も長いロータを選び、この時間に裕度を加えてドアロック解除禁止時間としているのが一般である。これらの時間は遠心機の種類によっても異なるが、通常短くて30分、長いものでは数時間におよぶ場合がある。この間、停電が発生したり、装置の電源を遮断すると、タイマーがクリアされドア開禁止が解除となる危険性があるため例えば特許第2746194号(遠心分離機のドアロック制御方法)にあるように電源が遮断してもバッテリーでバックアップする方法がとられている装置もある。また、リアルタイムクロックを用いて、ドアロック解除時間を制御する装置もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
回転中、回転検出が不能になってもドアが開けられ、使用者が怪我をする等の心配はないが、アラーム解除(ドアロック解除禁止)できるまでの時間が上記したとおり長時間におよぶため、使用者は大切なサンプルを一刻も早くロータから回収したいと願っても、異常が発生した時間が分からない場合には、使用者はいつになったらアラームが解除できるのか判断つかず、度々解除の操作を繰り返したり、解除可能まで残り僅かであるにもかかわらず使用者が知った時点から所定時間(通常、取扱説明書などに記載されている)待って解除操作を行うといった場合もあり、サンプル回収に多くの手間や余分な時間をかけさせてしまう場合があった。また、使用ロータや異常発生時の回転速度、異常の種類などによりロータが自然減速で停止するまでの時間が異なるという事実を考慮してアラーム解除禁止時間を変えている装置や、故障の内容によって装置に影響をおよぼさない程度の弱い電気的減速を加え、所定の時間を短くするといった工夫を加えた装置もあるが、使用者はどれだけの時間、ドアロック解除が禁止されているのか分からないため、上記した工夫が十分生かされていなかった。
【0005】
本発明の目的は、上記問題を解消し、ロータが回転中に回転速度が正しく検出できなくなった場合、使用者にアラームの解除可能時期、即ちドアロックが解除でき安全にドアを開けてサンプルを取り出せる時期を知らしめることである。つまり、ロータ回転中に回転速度の検出ができなくなったり、信頼性に欠ける事態が発生した段階で、従来通り所定の時間アラームが解除できないようにすると共に、その時点で選択された所定の時間を表示したり、或いは所定の時間が経過した時点で自動的にドアロックを解除したり音を出すなどして安全にドアを開けてサンプルを取り出せる時期を知らしめることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、駆動装置により回転駆動されるロータと、ロータを収容する回転室と、回転室を閉塞可能なドアと、ドアの開動作を規制するドアロックと、ロータの遠心条件を入力する設定部及び当該遠心条件を表示する表示部から成るパネルと、ロータの回転速度を検出するための回転検出器と、回転検出器の出力によりロータの回転速度を識別し前記設定部から入力された遠心条件と比較して駆動装置或いはドアロックを制御する制御装置とを備えた遠心機において、回転検出器に異常が発生した場合、制御装置はドアロックの解除禁止時間を設定し、解除禁止時間を表示部に表示することにより達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本実施例における遠心機を図1〜図4を用いて説明する。図1はロータの遠心条件を入力する設定部及び当該遠心条件を表示する表示部から成るパネル5上に表示されたアラームコード表示とドアロック解除禁止の残り時間が表示された状態を示す外観図、図2はパネル5を有する遠心機を示す概略構成図、図3及び図4はドアロックの解除までを説明するフローチャートである。
【0008】
図1及び図2において、使用者は、パネル5から運転条件を設定入力し、試料を入れたロータを駆動装置10の上に装着してドア6を閉め、通常パネル5にあるスタートボタンを押してロータの回転を開始させるが、遠心機側ではスタートボタンが押されると同時にドア6が開けられないようドアロック(図示せず)を動作させてドア6が開かれるのを禁止する。遠心機のドアロックは、ドア6を水平方向に移動させて回転室を開閉するタイプでは回転開始と同時にドアが水平方向に移動できないように棒状の突起を出したり、装置の後や横に蝶番を設けてドア6が蝶番を支点に開閉するようにした装置では、ドア6の蝶番とは反対側(可動側)に穴のあいた突起物を取り付け、ロータの回転中は突起物の穴にソレノイドなどを使って鍵状のものを差し込んでドア6が開くのを防いでいる。なお、入力する運転条件とは分離効果を決めるための回転速度、運転時間及びサンプルを最適な状態に保持するための制御温度のほか、加減速時の舞い上がりを左右する勾配の傾きなどがある。また、ロータは使用できる試験管の種類や大きさ、本数などによって異なる形状のものが用意されており、それぞれに強度上の制約などから許容回転速度が定められている。
【0009】
一方、駆動装置10の出力軸下端には、薄い円盤に周上に複数のスリットが開けられたセンサスリット14が取付けられており、このセンサスリット14を挟むようにして取付けられた片方に発光部、逆方に受光部を有するフォトインタラプタ13からの信号を制御装置11に入力し、駆動装置10の回転速度、即ちロータの回転速度を検出している。なお、遠心機によってはセンサスリット14とフォトインタラプタ13の代わりに磁石を軸端に取付けて磁気センサで回転速度を検出したり、本件出願人が出願した特願2000‐307012のようにロータに識別子を取付けて、この識別子を検出してロータの回転速度を検出したり、最近ではベクトル制御によるセンサレス制御など別の方式で回転速度を検出しているものもある。なお、本実施例では特願2000−307012に記載されているように、ロータの回転軸を中心とした同一円周上にマグネットを3個以上配置し、ロータ室にマグネットを検出する磁気センサを設け、2個のマグネットの角度でロータの最高回転速度を識別し、更に他の1個以上のマグネットの位置を併せてロータのIDを識別することにより、ロータのIDと最高回転速度の双方を識別している。
【0010】
今、ロータが回転中にフォトインタラプタが故障や断線などを起こすと、回転速度が即座に検出不能となる。このような回転速度検出の異常(通常回転速度が0になったり、急激に変化したりする)や突然信頼できない信号が入ってきたり、制御装置内の回転速度検出部が故障したり、またはセンサレスのベクトル制御の位置制御装置が故障するなどの異常事態が発生した場合は、図1に例を示すように表示部1の回転速度表示部3に故障の発生と故障内容を意味するアラームコードを表示する(本例では異常を意味するエラーのEと回転速度検出異常を意味する13を表示している)。この時、制御装置11は、上述したロータ識別により故障発生時のロータの回転速度やロータの種類などから回転中のロータが自然減速で停止するまでの時間を計算、或いは予め用意された記憶部(図示せず)から選択して、ロータが完全に停止するまで、または人が触れても危険のない速度になるまでの時間(所定の時間)を設定し、タイマー(図示せず)の動作を開始させる。
【0011】
通常、アラームは異常の原因を除去すればクリアできるようプログラムされており、例えば回転速度設定において、使用するロータの許容回転速度以上に誤って設定して運転した場合、設定誤りを検出してアラームを表示し、ロータを減速させるが、設定回転速度を正しく再設定するとアラームがクリアでき、運転が可能となる。しかし、ロータ回転中に発生した回転速度検出不良の場合は、回転速度が正しく検出できるようになったか、もしくはタイマーが0にならない限り、アラームをクリアできないようプログラムされており、故障が継続している場合はドアがロックされ続けることになる。このタイマーが動作開始した時、表示部1の時間表示部4に所定の時間を表示し、時間経過とともに減算表示させればドアロック解除可能なまでの時間を使用者に知らしめることが可能となる。なお、ドアロック解除可能までの時間を極力短い時間とするため、故障時の回転速度や使用中のロータの種類の情報を利用して自然減速する時間を長く取り過ぎないようにしたり、或いは場合によっては弱い電気的制動を加えてより短い時間で解除できるよう工夫されている。
【0012】
次に図3及び図4を用いて説明する。図3において、回転速度が検出できない異常が発生すると、直ちに運転を中断(駆動装置10への電源供給を遮断)すると共にドアロック解除禁止時間Tを算出し経過時間と比較する。そしてT時間経過したらブザー音を発したり、表示部1を点滅させたり、アラームコードを消去したり等してドアロックが解除可能になったことを使用者に知らしめる。また図4に示したようにドアロック解除禁止時間Tを算出するとともに時間表示部3にTを表示、カウントダウンしてドアロック解除可能となるまでの残り時間が分かるようにする。これにより、使用者にいつになったらサンプルが回収できるかを一目で理解することができる。
【0013】
なお、故障して自然減速中に停電が発生したり、使用者が誤ってまたは意図的に電源を遮断してしまうと、タイマーがクリアされ、回転速度も0であることから場合によってはロータが停止する前にドアロックを解除してしまう恐れがあるが、例えば特許第2746194号(遠心分離機のドアロック制御方法)にあるように残時間をバッテリーでバックアップしたり、EEP ROMに記憶させれば残り時間がクリアされる心配はない。更にバッテリーでタイマーをカウントし続ければ、電源OFFの間も経過時間計測し続けることができ、ドアロック解除時間を正しくカウントダウンできる。また、制御装置にリアルタイムクロックを用いて、ドアロック解除を時間で制御すれば停電や電源遮断の影響を受けることもない。
【0014】
また、制御部が故障の継続を判断できる場合は、次の使用ができないことを知らせるため、時間が0になってもアラームのクリアをできないようにし、サンプルの回収ができるようドアロックのみ解除を許可して使用者の便宜を図っている。しかし、発光部の断線のように継続して故障であることを判断できない場合は、時間が0になるとアラームがクリアでき、ドアロックも解除されることになる。この場合は次回使用時、スタートボタンを押して運転を開始させようとしても故障しているので回転速度を検出できず、再度異常発生のアラームが点灯することになり、使用者が故障を認識できるタイミングは遅れるが危険な状態になる心配はない。
【0015】
以上のことから、ロータの回転速度を検出する装置に異常が発生した場合、ロータへの電源を遮断していわゆる自然減速させると共に、ロータが完全に停止するまでの所定時間、ドアロックの解除を禁止する機能を有する遠心機において、所定の時間が経過したら使用者に知らしめる手段を持たせたので、いつドアが開けられるかの判断を可能とすることができる。更にドアロック解除禁止時間を表示(所定の時間をカウントダウンして表示)できるようにしたので、ドアが開けられる時間が一目瞭然となり、使用者にとってより利便性が増すという効果が得られる。なお、回転検出が故障した場合、以前は自然減速で最も時間の掛かるロータでの減速時間に裕度分を加えた時間を所定としていたが、故障が発生した時の状態によってドアロック解除禁止時間を変えることのできるようにした装置では、解除可能までの時間表示は使用者にとって更に便利となる。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、所定時間を経過した後、ドアロックの解除を報知することで、ロータが回転中に回転速度が正しく検出できなくなった場合、使用者にアラームの解除可能時期、即ちドアロックが解除でき安全にドアを開けてサンプルを取り出せる時期を知らしめることができる。つまり、ロータ回転中に回転速度の検出ができなくなったり、信頼性に欠ける事態が発生した段階で、従来通り所定の時間アラームが解除できないようにすると共に、その時点で選択された所定の時間を表示したり、或いは所定の時間が経過した時点で自動的にドアロックを解除したり音を出すなどして安全にドアを開けてサンプルを取り出せる時期を知らしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明になるロータの遠心条件を入力する設定部及び当該遠心条件を表示する表示部から成るパネル上に表示されたアラームコード表示とドアロック解除禁止の残り時間が表示された状態を示す外観図である。
【図2】 本発明になるパネルを有する遠心機を示す概略構成図である。
【図3】 本発明になるドアロックの解除までを説明するフローチャートである。
【図4】 本発明になるドアロックの解除までを説明する別のフローチャートである。
【符号の説明】
1は表示部、2は設定部、3は回転速度表示部、4は時間表示部、5はパネル、6はドア、7は回転室、10は駆動装置、11は制御装置、12は回転速度検出部、13はフォトインタラプタ、14はセンサスリットである。

Claims (8)

  1. 駆動装置により回転駆動されるロータと、該ロータを収容する回転室と、該回転室を閉塞可能なドアと、前記ドアの開動作を規制するドアロックと、前記ロータの遠心条件を入力する設定部及び当該遠心条件を表示する表示部から成るパネルと、前記ロータの回転速度を検出するための回転検出器と、該回転検出器の出力により前記ロータの回転速度を識別し前記設定部から入力された遠心条件と比較して前記駆動装置或いは前記ドアロックを制御する制御装置とを備えた遠心機において、前記回転検出器に異常が発生した場合、前記制御装置は前記ドアロックの解除禁止時間を設定し、該解除禁止時間を前記表示部に表示することを特徴とした遠心機。
  2. 前記解除禁止時間は、時間経過に伴い減算表示され、前記解除禁止時間の表示がゼロになった時点で、前記ドアロックの解除が許可されることを特徴とした請求項1記載の遠心機。
  3. 前記解除禁止時間の表示がゼロになった時点で、前記ドアロックの解除を報知することを特徴とした請求項2記載の遠心機。
  4. 前記報知は、音を鳴らすことを特徴とした請求項3記載の遠心機。
  5. 前記報知は、前記表示部を点滅することを特徴とした請求項3記載の遠心機。
  6. 前記制御装置にリアルタイムクロックを持たせ時間で前記ドアロックの解除タイミングを制御することを特徴とした請求項1または請求項2の何れか記載の遠心機。
  7. 前記ロータが回転中に前記ロータの回転速度が検出不能になった場合、回転速度検出が不能となった時の回転速度や使用している前記ロータにより、前記ドアロックの解除が禁止されている前記解除禁止時間が異なることを特徴とした請求項1または請求項2の何れか記載の遠心機。
  8. 前記制御装置に補助電源を持たせ前記ドアロックの解除を禁止中に電源が遮断しても該補助電源で引き続き経過時間をカウントし続け、電源復帰時に前記解除禁止時間に達していない場合には、引き続きドアロックの解除を禁止し、前記解除禁止時間に達している場合には、前記ドアロックの解除禁止を解くことを特徴とした請求項記載の遠心機。
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