JP3941193B2 - 圧力センサ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体歪みゲージを半導体基板への不純物拡散により形成したピエゾゲージ式圧力センサ装置に係り、詳しくは、温度補償機能が付いた圧力センサ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ピエゾ式半導体圧力センサは、シリコン基板の中央部に薄肉のダイヤフラムを形成し、その表面に半導体歪みゲージを不純物の拡散により形成し、ホイートストーンブリッジを構成したものである。これはIC工程を用いて大量生産に適しているが、温度変化の影響が大きい。そこで、温度特性を補償すべく、特公昭59−41134号公報においては圧力を感じない部位に拡散抵抗を設け、この抵抗値を基にゲージによる圧力信号を補正するようにしている。
【0003】
しかしながら、センサチップ毎の温度補償回路の出力信号の高精度化という観点からは満足できるものになっておらず更なる改良が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、センサチップ毎の温度補償回路の出力信号の高精度化を図ることができる圧力センサ装置を提供することをその目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、前記半導体基板の薄肉部以外の領域である厚肉部に形成されて前記圧力検出用ブリッジ回路と同一の給電条件におかれるブリッジ回路であって、このブリッジ回路の一方の対角抵抗とする不純物拡散層よりなる温度補償用ピエゾ抵抗素子(R2,R3)と同ブリッジ回路の他方の対角抵抗として同半導体基板上に薄膜形成された温度補償用薄膜抵抗(r10,r40)との各中点電位をブリッジ出力(Vtp,Vtm)とし、それら温度補償用ピエゾ抵抗素子(R2,R3)および温度補償用薄膜抵抗(r10,r40)を室温(25℃)において全て同一の抵抗値に設定するとともに、それらブリッジ接続された各温度補償用ピエゾ抵抗素子(R2,R3)および各温度補償用薄膜抵抗(r10,r40)と各給電点との間には同じく室温(25℃)において全て同一の抵抗値を有して同半導体基板上に薄膜形成された補助抵抗としての温度補償用薄膜抵抗(r11,r21,r31,r41)がそれぞれ直列接続されてなる温度補償用ブリッジ回路を備え、前記圧力検出用ブリッジ回路からの出力と前記温度補償用ブリッジ回路からの出力とを共通のオペアンプ(71)を介して取り込みつつ、演算回路(74)にて前記圧力検出用ブリッジ回路からの出力を前記温度補償用ブリッジ回路からの出力にて温度補償するようにしたことを特徴としている。
【0006】
このような構成を採用すると、半導体基板の厚肉部に配置された温度補償用のピエゾ抵抗素子および薄膜抵抗にてブリッジ回路が組まれ、演算回路において、圧力検出用ブリッジ回路からの出力に対し温度補償用ブリッジ回路からの出力にて温度補償処理が行われる。
【0007】
このように、温度補償用素子として拡散抵抗と薄膜抵抗とを用い、ブリッジ接続することにより、温度補償のための出力として高精度なものとなる。つまり、薄膜抵抗はセンサチップにおける厚肉部に形成され、IC製造技術を用いて高精度に作成することができ、センサチップ毎の温度補償回路の出力信号の高精度化を図ることができる。
【0008】
また、請求項2に記載のように、前記温度補償用薄膜抵抗を、CrSiよりなるものとすると、CrSi薄膜抵抗の抵抗温度係数TCRは略0×10-6/℃であるので、不感温抵抗として好ましいものとなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した実施の形態を図面に従って説明する。
図1には、本実施形態での圧力センサ装置におけるセンサチップ100を示す。図1において上側にはセンサチップ100の平面を示すとともに、その下にはY−Y断面を示す。
【0010】
半導体基板としてのシリコン基板1は、表面が(110)面をなすP型シリコン基板1aの上にN型エピタキシャル層1bを成長させたものを使用している。
P型シリコン基板1aの中央部には凹部2が形成され、凹部2の底面部2aにより薄肉部3が形成されるとともにその周囲の四角枠部が厚肉部4となっている。
より詳しくは、電気化学ストップエッチング法を用いてP型シリコン基板1aの所定領域をエッチングしてPN接合部にてそのエッチングを停止させることにより凹部2を形成したものである。シリコン基板1の薄肉部3がセンサダイヤフラムとなり、この薄肉部3よりなるダイヤフラムに圧力が印加されると歪みが生じる。このように、厚肉のシリコン基板1の一部領域にダイヤフラムとなる薄肉部3が形成されている。
【0011】
シリコン基板1の薄肉部3の表層部には、P型不純物拡散層よりなるピエゾ抵抗素子5,6,7,8が形成され、当該素子5,6,7,8による圧力検出用ブリッジ回路からの出力にて圧力を測定することができるようになっている。
【0012】
また、シリコン基板1の厚肉部4の表層部には、P型不純物拡散層よりなる温度補償用ピエゾ抵抗素子9,10が形成され、ピエゾ抵抗素子9,10は応力に関して一番鈍感な<100>方向に延設されている。さらに、シリコン基板1における厚肉部4の上には、温度補償用薄膜抵抗11,12,13,14,15,16が形成されている。温度補償用薄膜抵抗11〜16にはCrSi薄膜が用いられている。この温度補償用薄膜抵抗11,12,13,14,15,16と温度補償用ピエゾ抵抗素子9,10とで温度補償用ブリッジ回路が組まれる。前述の圧力検出用ピエゾ抵抗素子5〜8および温度補償用ピエゾ抵抗素子9,10の抵抗温度係数TCRは、ほぼ1250〜1540×10-6/℃であり、温度補償用CrSi薄膜抵抗11〜16の抵抗温度係数TCRは、ほぼ0×10-6/℃である。
【0013】
このように、温度補償用ブリッジ回路を構成する各素子9〜16は圧力応力を受けない部位である厚肉部4に配置されるとともに、ピエゾ抵抗素子(拡散抵抗)9,10は応力に関して一番鈍感な<100>方向に延設されている。
【0014】
図2には、シリコン基板1における温度補償用のピエゾ抵抗素子9,10と薄膜抵抗11〜16の配置領域の詳細図を示す。
図2において、N型エピタキシャル層1bは素子分離用P型拡散層23にて素子分離が行われ、一つの島においてN型エピタキシャル層1bの表層部にはP型不純物拡散層よりなるピエゾ抵抗素子(拡散抵抗)24が形成されている。当該島において、P型シリコン基板1aとN型エピタキシャル層1bとの間にはN+ 型埋め込み層22が形成されている。他の島においてN型エピタキシャル層1bの上にはCrSi薄膜抵抗25が配置されている。そして、ピエゾ抵抗素子24と薄膜抵抗25とはアルミ配線26,27,28により電気的に接続されている。
【0015】
なお、N型エピタキシャル層1bの上面はシリコン酸化膜29にて覆われ、その上にアルミ配線26〜28が配置されるとともに、アルミ配線26〜28は保護膜30にて覆われている。
【0016】
図3には、圧力センサ装置の電気的構成を示す。
図3において、圧力センサ装置は大きくセンサチップ100とそのセンサ信号を所要に処理する信号処理部(演算回路)200とによって構成されている。
【0017】
センサチップ100は、その検出対象となる物理情報を抽出する部分として、圧力検出用ブリッジ回路(圧力情報抽出用ブリッジ回路)40、温度補償用ブリッジ回路(温度情報抽出用ブリッジ回路)50、及び、基準位置出力回路(基準情報抽出用ブリッジ回路)60を有している。
【0018】
このうち、圧力検出用ブリッジ回路(圧力情報抽出用ブリッジ回路)40は、図1のピエゾ抵抗素子5〜8にて構成されている。つまり、検出対象となる圧力の印加に応じてピエゾ抵抗効果によりその抵抗値が変化する感圧抵抗素子R11,R12,R13,R14を有して構成されている。このため、抵抗素子R12及びR13の中点電位は、該圧力の印加量に応じて低くなり、逆に、抵抗素子R11及びR14の中点電位は、同圧力の印加量に応じて高くなる。そして、これら中点電位の電位差が、同ブリッジ回路40によるブリッジ出力として取り出されるようになる。つまり、圧力検出用ブリッジ回路(圧力情報抽出用ブリッジ回路)40のブリッジ出力が圧力情報Dとなる。このブリッジ回路40による出力電圧Dは、上記印加される圧力の他、当該センサの温度にも依存したものとなっている。また、同回路40は定電流回路41を有し、定電流駆動するようになっている。さらに、同回路40にはトリミング用抵抗R15,R16が設けられている。
【0019】
一方、温度補償用ブリッジ回路(温度情報抽出用ブリッジ回路)50は、図1のピエゾ抵抗素子9,10、薄膜抵抗11〜16を用いてブリッジ接続されている。つまり、図4に示すように、センサ自身の温度に応じて抵抗値変化を生じる感温抵抗素子R2,R3と基本的に温度特性を持たない抵抗素子r10,r11,r21,r31,r40,r41とにより、ブリッジ回路が構成されている。
【0020】
より詳しくは、図1の薄膜抵抗15(抵抗r11)と薄膜抵抗16(抵抗r10)が直列に接続されている。また、図1の薄膜抵抗14(抵抗r21)とピエゾ抵抗素子10(抵抗R2)が直列に接続されている。さらに、図1の薄膜抵抗13(抵抗r31)とピエゾ抵抗素子9(抵抗R3)が直列に接続されている。
また、図1の薄膜抵抗11(抵抗r40)と薄膜抵抗12(抵抗r41)が直列に接続されている。
【0021】
図4において、薄膜抵抗15(抵抗r11)と薄膜抵抗13(抵抗r31)との間に電源電圧VDDが印加される。薄膜抵抗12(抵抗r41)にはトリミング用薄膜抵抗r6が接続されるとともに、薄膜抵抗14(抵抗r21)にはトリミング用薄膜抵抗r5が接続されている。この両トリミング用薄膜抵抗r6とr5には定電流回路51が接続されている。ピエゾ抵抗素子9(抵抗R3)と薄膜抵抗11(抵抗r40)との間が出力電圧Vtmとなり、薄膜抵抗16(抵抗r10)とピエゾ抵抗素子10(抵抗R2)との間が出力電圧Vtpとなる。そして、出力電圧Vtmと出力電圧Vtpとの電位差が温度に応じた信号レベルになる。この信号レベル(ブリッジ出力)にて温度を測定することが可能となる。なお、図4のトリミング用薄膜抵抗r5,r6は、図1には図示しなかったが、シリコン基板1の厚肉部4に形成されている。
【0022】
このように、図4の抵抗素子r10とR2との間の中点電位Vtpと抵抗素子R3とr40との間の中点電位Vtmとでは、同センサ自身の温度に応じた電位差を生じることとなり、こうした電位差が、同ブリッジ回路50によるブリッジ出力として取り出されるようになる。つまり、図3の温度補償用ブリッジ回路(温度情報抽出用ブリッジ回路)50のブリッジ出力が温度情報Tとなる。このブリッジ回路50による出力電圧Tは基本的に、当該センサの温度のみに依存したものとなっている。
【0023】
このように温度補償用ブリッジ回路(温度情報抽出用ブリッジ回路)50において、ブリッジ検出とすることにより、図1の圧力ゲージ5〜8と同等分の温度出力特性が補償できる。
【0024】
なお、図4において、抵抗値は、それぞれ室温(25℃)において、r11=r21=r31=r41、R2=R3=r10=r40となっている。
また、図3に示すように、基準位置出力回路(基準情報抽出用ブリッジ回路)60は、温度特性を持たない抵抗素子R6,R6が直列に接続され、その中間電位が出力される。つまり、基準位置出力回路(基準情報抽出用ブリッジ回路)60の出力が基準情報Aとなる。この基準位置出力回路60の出力Aは圧力にも温度にも不感である。
【0025】
また、アナログマルチプレクサ70は、圧力検出用ブリッジ回路(圧力情報抽出用ブリッジ回路)40、温度補償用ブリッジ回路(温度情報抽出用ブリッジ回路)50、及び基準位置出力回路(基準情報抽出用ブリッジ回路)60のいずれかの信号を増幅用オペアンプ71に出力する。増幅用オペアンプ71の出力端子にはA/D変換器73を介してマイクロコンピュータ74が接続されている。
【0026】
一方、増幅用オペアンプ71の出力端子は抵抗75を介して帰還がかけられている。また、A/D変換器73の入力側には前述の抵抗75および77を介して増幅器78が接続され、増幅器78にはマルチプレクサ79を介してEPROM80,81,82が接続されている。マイクロコンピュータ74はアナログマルチプレクサ70を制御して圧力情報D、温度情報T、及び基準情報Aを選択して取り込むととともに、マルチプレクサ79を制御して不揮発性メモリであるEPROM80,81,82に予め記憶されている当該センサ自身の特性のばらつきや機差等を補正するための補正データ(定数a〜f)を取り込む。マイクロコンピュータ74はこれらデータに基づいて演算を行い最終圧力値Pを出力する。
【0027】
具体的には上記EPROM80,81,82に予め記憶する補正データとして、
・温度情報Tに関する温度係数a、
・基準温度における温度情報Tのオフセット値b、
・圧力情報Dに対する感度の温度特性係数c、
・基準温度における圧力情報Dに対する感度d、
・圧力情報Dのオフセットにおける温度係数e、
・基準温度における圧力情報Dのオフセット値f
の6つのデータ(定数)が用意されている。これらデータは何れも、センサの製造ばらつき等によって異なるのが普通であり、同実施形態の装置では、当該センサの作り込みの段階で、これら補正データa〜fを上記EPROM80,81,82に書き込むようにしている。
【0028】
マイクロコンピュータ74は、上記分離復調された補正データa〜f、圧力情報D、温度情報T、及び基準情報Aを取り込んだ後、予め登録されている図5に例示する演算プログラムを実行する。
【0029】
すなわち、この図5に示す演算ルーチンにおいて、マイクロコンピュータ74は、ステップ201及びステップ202にて、圧力情報D、温度情報T、基準情報A、並びに補正データa〜fを読み込んだ後、ステップ203にて、演算
Figure 0003941193
を実行して、最終の圧力情報Pを算出する。
【0030】
なお、「D/A」及び「T/A」は、それぞれ上記圧力情報D及び温度情報Tについて、温度特性や系統間の特性ばらつきを正規化するための処理である。基準情報Aがこれら回路における温度特性や系統間の特性ばらつきに対応した情報となる。
【0031】
上記圧力検出用ブリッジ回路40を通じて抽出される圧力情報D(出力電圧)がセンサに印加される圧力の他、センサ自身の温度にも依存したものとなっている。このような圧力情報Dに対して上記(1)式の演算を施すことにより、検出対象とする物理情報である圧力Pについての極めて精度の高いセンサ値を得ることができるようになる。
【0032】
ここで、温度補償用ブリッジ回路50の作用について詳述する。
図3に示すブロック図よりなるデジタル圧力センサにおいて、アナログマルチプレクサ70以降で、センサチップ100から出力した圧力P、温度T、基準Aの情報を演算処理し補正を行っている。このとき、圧力検出用ブリッジ回路40における図1のピエゾ抵抗素子(ゲージ抵抗)5,6,7,8は応力変化に応じて抵抗値を変化させるが、同時に温度変化に対しても抵抗値を変化させてしまう。温度補償用ブリッジ回路50においては、図1の抵抗体9,10,11〜16をダイヤフラム部以外の場所に配置することにより、圧力検出用のピエゾ抵抗素子5〜8の温度抵抗変化を正確に出力させることができる。また、これらの抵抗体9,10,11〜16をブリッジ回路とし、抵抗体11〜16としてCrSi薄膜抵抗を用いることにより、圧力情報と同等の出力が可能となる。そして、温度補償用ブリッジ回路50の出力値Tを用いて、圧力検出用ブリッジ回路40の出力値Dに補正が加えられ、温度の影響を受けずに純粋に応力のみの出力値Pが得られる。
【0033】
より詳しくは、圧力検出用ブリッジ回路40において、定電流駆動の場合には、その出力(出力電圧式)△Vは、
△V=α・(1+βT)・Iconst
となり、出力△Vは温度Tに依存する。ただし、Iconst は定電流値であり、αは係数であり、βはピエゾ抵抗素子5,6,7,8が持っている曲がり成分、即ち、温度抵抗係数TCRである。
【0034】
温度補償用ブリッジ回路50において、ピエゾ抵抗素子(拡散抵抗)9,10を用いると、温度抵抗係数TCRが圧力検出用ブリッジ回路40でのピエゾ抵抗素子5,6,7,8のもつ曲がり成分βと一致し、相殺効果が高い。
【0035】
次に、このように構成した半導体圧力センサにおける図2の温度補償用のピエゾ抵抗素子24とCrSi薄膜抵抗25に関する製造方法を、図6〜図11を用いて説明する。
【0036】
まず、図6に示すように、(110)のP型シリコン基板(ウエハ)1aを用意し、その上にN型エピタキシャル層1bを成長させるとともに、N+ 型埋め込み層22を形成する。そして、図7に示すように、素子分離用P型拡散層23を形成してアイソレーションを行う。
【0037】
引き続き、図8に示すように、イオン注入法によりN型エピタキシャル層1bの表層部にP型のピエゾ抵抗素子24を形成する。その後、図9に示すように、N型エピタキシャル層1bの上に、蒸着法やスパッタ法によりCrSi薄膜抵抗25を配置する。そして、図10に示すように、絶縁用の酸化膜29を形成し、配線用コンタクトを設けるために穴あけを行う。その後、図11に示すように、スパッタ法を用いてアルミ配線26,27,28を形成し、ピエゾ抵抗素子24と薄膜抵抗25を配線する。
【0038】
さらに、図2に示すように、保護膜30を形成する。この後、保護膜30の一部に、ボンディング用のコンタクト穴を設ける。この後、電気化学エッチングを利用しダイヤフラム(3)を形成し、陽極接合によりガラス台座を接合する。
【0039】
その後、ウエハをダイシングして各センサチップ100に裁断する。この各センサチップにおける温度補償用ブリッジ回路50の出力はバラツキが少なく高精度である。これは、センサチップ100の厚肉部4にIC製造技術を用いて温度補償用ブリッジ回路の構成素子としてのピエゾ抵抗素子24およびCrSi薄膜抵抗25を形成したことによるものである。
【0040】
図12には、本実施の形態の構成をとったことによる効果確認のための実験結果を示す。これは、温度を−30〜70℃の範囲で変えた時における温度補償用ブリッジ回路(温度情報抽出用ブリッジ回路)50の出力の測定結果をプロットしたものである。温度は、−30℃、25℃、70℃の三種類とし、サンプル数(N)は「7」である。表1には、これらの測定結果をまとめたものであり、各温度における平均値(X)とバラツキ(3σ)を求めている。なお、オフセットはトリム調整により一致させている。
【0041】
図12から、出力値に関してはバラツキも少なく(3σで最大0.14mV)となり、温度検出が優れていることが分かる。
【0042】
【表1】
Figure 0003941193
【0043】
このように、本実施の形態は、下記の特徴を有する。
(イ)図1に示すように、シリコン基板1における厚肉部4に不純物拡散層よりなる温度補償用ピエゾ抵抗素子9,10を形成するとともに、同じく厚肉部4の上に温度補償用薄膜抵抗11〜16を配置し、図3に示すように、温度補償用ピエゾ抵抗素子9,10と温度補償用薄膜抵抗11〜16とで温度補償用ブリッジ回路50を組み、信号処理部200において、圧力検出用ブリッジ回路40からの出力(D)に対し温度補償用ブリッジ回路50からの出力(T)にて温度補償処理を行うようにした。よって、薄膜抵抗11〜16はセンサチップ100における厚肉部4に形成され、IC製造技術を用いて高精度に作成することができ、センサチップ毎の温度補償回路の出力信号の高精度化を図ることができる。
(ロ)温度補償用薄膜抵抗11〜16をCrSiよりなるものとしたので、CrSi薄膜抵抗の抵抗温度係数TCRは略0×10-6/℃であり、不感温抵抗として好ましいものとなる。
【0044】
これまでの説明においては、温度補償用薄膜抵抗11〜16にはCrSiを用いた場合について述べたが、温度補償用薄膜抵抗11〜16としてCrSiN等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態の圧力センサ装置におけるセンサチップを示す図。
【図2】温度補償用のピエゾ抵抗素子と薄膜抵抗の配置領域の詳細図。
【図3】圧力センサ装置の電気的構成を示す図。
【図4】温度情報抽出用ブリッジ回路の構成図。
【図5】センサ値演算手順を示すフローチャート。
【図6】製造工程を説明するための断面図。
【図7】製造工程を説明するための断面図。
【図8】製造工程を説明するための断面図。
【図9】製造工程を説明するための断面図。
【図10】製造工程を説明するための断面図。
【図11】製造工程を説明するための断面図。
【図12】温度情報抽出用ブリッジ回路の出力の測定結果を示す図。
【符号の説明】
1…半導体基板としてのシリコン基板、3…薄肉部(ダイヤフラム)、4…厚肉部、5,6,7,8…不純物拡散層よりなるピエゾ抵抗素子、9,10…不純物拡散層よりなる温度補償用ピエゾ抵抗素子、11〜16…温度補償用薄膜抵抗、40…圧力検出用ブリッジ回路、50…温度補償用ブリッジ回路、200…信号処理部(演算回路)。

Claims (2)

  1. 厚肉の半導体基板の一部領域にダイヤフラムとなる薄肉部が形成され、この薄肉部に不純物拡散層よりなるピエゾ抵抗素子が形成され、当該素子による圧力検出用ブリッジ回路からの出力にて圧力を測定する圧力センサ装置において、
    前記半導体基板の薄肉部以外の領域である厚肉部に形成されて前記圧力検出用ブリッジ回路と同一の給電条件におかれるブリッジ回路であって、このブリッジ回路の一方の対角抵抗とする不純物拡散層よりなる温度補償用ピエゾ抵抗素子(R2,R3)と同ブリッジ回路の他方の対角抵抗として同半導体基板上に薄膜形成された温度補償用薄膜抵抗(r10,r40)との各中点電位をブリッジ出力(Vtp,Vtm)とし、それら温度補償用ピエゾ抵抗素子(R2,R3)および温度補償用薄膜抵抗(r10,r40)を室温(25℃)において全て同一の抵抗値に設定するとともに、それらブリッジ接続された各温度補償用ピエゾ抵抗素子(R2,R3)および各温度補償用薄膜抵抗(r10,r40)と各給電点との間には同じく室温(25℃)において全て同一の抵抗値を有して同半導体基板上に薄膜形成された補助抵抗としての温度補償用薄膜抵抗(r11,r21,r31,r41)がそれぞれ直列接続されてなる温度補償用ブリッジ回路を備え、
    前記圧力検出用ブリッジ回路からの出力と前記温度補償用ブリッジ回路からの出力とを共通のオペアンプ(71)を介して取り込みつつ、演算回路(74)にて前記圧力検出用ブリッジ回路からの出力を前記温度補償用ブリッジ回路からの出力にて温度補償するようにしたことを特徴とする圧力センサ装置。
  2. 前記温度補償用薄膜抵抗は、CrSiよりなる請求項1に記載の圧力センサ装置。
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