JP3940623B2 - ウェーハ研磨治具とその製造方法及びこれを用いたウェーハ研磨装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は研磨装置、より詳しくはスライスされたシリコンウェーハ、ガリウムヒ素等のウェーハや各種厚み精度及び平坦度を要する基板等の研磨プロセスにおいて、厚みばらつきをより少なくし、高精度に仕上げるための耐磨耗性に優れたセラミックス製ウェーハ研磨治具とその製造方法及びこれを用いたウェーハ研磨装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ウェーハ研磨治具は、これまでシリコンウェーハやガリウムヒ素ウェーハ又は薄物基板等平坦度等の精度を必要とする加工物や、厚みばらつきが規定される加工物の研磨やラッピング用の治具として使用されている。
【0003】
例えば、半導体ウェーハ等の板状体を研磨加工する際には、図5に示すようなウェーハ研磨治具10の貼付面10aに複数又は1枚のウェーハ12をワックス13で貼付して保持し、このウェーハ研磨治具10を、研磨布15を貼付した下定盤14上にセットして、押圧力Fを加えるとともに下定盤14にコロイダルシリカにアルカリまたはアミンを添加した研磨剤を供給しながらウェーハ研磨治具10と研磨布15を相対的に摺動させることで、ウェーハ12の表面を研磨するようになっている。
【0004】
また、このウェーハ研磨治具10はアルミナや炭化珪素等のセラミックスにより形成されており、ウェーハ12の貼付面10aは、平坦度5μm以下の滑らかな面となっている(特開平6−270055号公報参照)。
【0005】
研磨加工されたウェーハ12の平行度あるいは平坦度の精度を決定づけているのは、ウェーハ研磨装置40のウェーハ研磨治具10の表面形状であり、上記のようなウェーハ研磨装置40において使用されるウェーハ研磨治具10は、ウェーハ12の研磨精度を向上させるため高い平坦度と、ウェーハ貼付面10aの平滑性が要求される。
【0006】
特に半導体チップの原料となるウェーハ12の平坦度は、例えば表面基準のサイトフラットネス(1チップの平坦度)でクォーターミクロン以下の精度が要求されているため、ウェーハ研磨治具10は僅かな変形も許されない。このため、ウェーハ研磨治具10は熱膨張率の低いアルミナセラミックスや炭化珪素セラミックスを用いて、ウェーハ研磨治具10そのものの精度を向上させ、ウェーハ12の精度を向上させてきた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、今日例えば半導体チップの配線ルールの微細化等に伴い、さらなるウェーハ12の高精度化が望まれている中、ウェーハ研磨治具10そのものの精度にも限界がある上、ウェーハ12をウェーハ研磨治具10に貼付けて、回転させながら研磨を行う方法では、ウェーハ研磨治具10の中心部と外周部との周速の違いや研磨中の発熱等により、ウェーハ12の磨耗度が異なり、ウェーハ12の精度を悪くするという問題があった。
【0008】
なお、上記問題を解決するために、図4に示すようにウェーハ研磨治具10のウェーハ貼付面10aの外周部に、ウェーハ12の仕上がり厚み寸法と同等の高さのガイド部10bを形成することにより、ウェーハ12の平行度等の精度を向上させる方法も考えられるがウェーハ研磨治具10とガイド部10bを一体形成して、ウェーハ貼付面10aとガイド部10bの端面との平行度や平坦度等を高精度にすることは大変困難であるという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであって、その目的は、半導体ウェーハ等の板状体の研磨加工に使用されるセラミックス製ウェーハ研磨治具10において、ウェーハ貼付面10aとウェーハ研磨治具10の上面との平行度や平坦度等の精度を出すことができる構造を提供し、更にはウェーハ研磨治具10の洗浄工程で使用されるアルカリ性の薬液や超音波等にも侵されることなく、ウェーハ12の平坦度、平行度等の精度を向上させることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のウェーハ研磨治具は、ウェーハ貼付面を有するセラミックス製貼付板の外周に、ウェーハの仕上がり厚みと同じ突出高さのセラミックス製ガイド部材を接合してなり、上記貼付板と上記ガイド部材とを接着剤で接合するとともに、Oリングを介在させてシールしてウェーハ研磨治具を構成したものである。本発明のウェーハ研磨治具は、さらに上記ウェーハ貼付面と、上記ガイド部材の端面との平行度を2μm以下とすることが好ましい。
【0012】
そして、本発明のウェーハ研磨装置は、上定盤と下定盤との間に上記ウェーハ研磨治具を配置してウェーハ研磨装置を構成したものである。
【0013】
また本発明のウェーハ研磨治具の製造方法としては、セラミックス製貼付板を貼付面とその裏面との平行度が1μm以下となるように加工した後、上記貼付板の外周にセラミックス製ガイド部材を接着剤で接合するとともに、Oリングを介在させてシールし、このガイド部材の端面と上記貼付板の裏面との平行度が2μm以下となるように加工する工程からなるものとした。
【0014】
これにより、高精度なウェーハ及び薄物基板の加工ができるウェーハ研磨治具を提供することが出来る。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明のウェーハ研磨治具11を示す断面図、図2はこのウェーハ研磨治具11を用いたウェーハ研磨装置を示した概略分解斜視図であり、図3はその装置の拡大断面図である。
【0017】
図1に示すウェーハ研磨治具11は、機械的、熱的変形が少なく、しかも平坦な材料、例えば高純度アルミナや炭化珪素等のセラミックス材料からなり、ウェーハ貼付面11aを備えた貼付板19の外周部に、同様のセラミックス材料からなるガイド部材16を接合したものである。
【0018】
このウェーハ研磨治具11を用いて、シリコン製のウェーハ12等を研磨加工する際には、ウェーハ研磨治具11の貼付面11aに1枚のウェーハ12をワックスで貼付して保持し、図2、3に示すウェーハ研磨装置41を用いて、複数のウェーハ研磨治具11を、保持具22の貫通孔22a内に保持し、研磨布15を貼付した下定盤14上にセットして、上定盤17側より押圧力Fを加えるとともに、下定盤14にコロイダルシリカにアルカリまたはアミンを添加した研磨剤(不図示)を供給しながらウェーハ研磨治具11と研磨布15を相対的に摺動させることで、ウェーハ12の表面を研磨するようになっている。
【0019】
本発明においては、貼付面11aを有するセラミックス製貼付板19の外周に、上記ウェーハ12の仕上がり厚みと同じ突出高さのセラミックス製ガイド部材16を接合してあるため、ウェーハ12を貼付面11aに貼付けて図2,3のように研磨すれば、回転させながら研磨を行う方法でも、ガイド部材16の端面16a以上にウェーハ12が研磨されないことから、ウェーハ12の磨耗度をほぼ均一にすることができ、ウェーハ12の厚み精度や加工面の表面形状を向上することができる。
【0020】
これにより、貼付けられたウェーハ12を回転しながら研磨をする際に、ウェーハ12の外周部と中心部との周速の差によって、研磨量のばらつきによる加工物の厚み精度や加工面の表面形状が悪化するのを防ぐことができる。
【0021】
また、このウェーハ研磨治具11は高精度を要求されるウェーハ12を研磨するのに使用されるため、ウェーハ研磨治具11そのものについても高精度に仕上げる必要があり、図4のような一体物構造では、その精度を守ることが出来ないため、貼付板19とガイド部材16とを分割構造とし後述する加工方法により、高精度に仕上げられる構造にしている。
【0022】
具体的には、ウェーハ12の厚みばらつきを少なくし、高精度に仕上げるため、上記貼付面11aと、ガイド部材16の端面16aの平行度を2μm以下とすることが好ましい。これは、ウェーハ12に要求される厚みばらつきの規格が2μm以下であるためである。
【0023】
ここで、貼付面11aとガイド部材16の端面16aの平行度が2μmを超えると、ウェーハ12の厚みのバラツキが大きくなる。
【0024】
また、分割構造とした本発明のウェーハ研磨治具11は、両者の接合に無機系やエポキシ系の接着剤21を使用するが、定盤の洗浄に使用されるアルカリ系の薬液や強力な超音波、さらに研磨時に使用されるスラリー等により接着剤21が剥がれたり、腐食したりして、貼付板19とガイド部材16との接着が外れ、ウェーハ12の精度を悪くしたり、接着剤21の一部が研磨中に出てきてウェーハ12にキズを付けたりする。
【0025】
このため、直接薬液やスラリーが接着剤21に触れないように、耐薬品性のOリング18でシールする構造とした。即ち、貼付板19とガイド部材16の当接面を段状とし、中央部に、0.1mm以上の厚さで接着剤21を塗布し、外部からの薬液等の進入を防ぐために、上記当接面の接着剤21の両側の2箇所にOリング18を備えてシールする。ここで接着剤21の厚みを0.1mm以上としたのは、0.1mm以下では接着強度が極端に弱くなるためである。また通常、ウェーハ研磨冶具11の使用に際して、Oリング18には流体圧力はほとんどかからないため、Oリング18が腐食しない限り、薬液が接着層に進入することはない。よって、耐酸・耐アルカリ性の材質からなるOリング18を使用すると良い。
【0026】
これにより、ウェーハ研磨プロセスにおいて、ウェーハ研磨治具11の洗浄工程で使用されるアルカリ性の薬液や超音波等に接着剤21が侵されたり、接着剤21の一部がウェーハ12の研磨中に剥がれ落ち、ウェーハ12表面にキズをつける等の問題も解決される。
【0027】
次に本発明のウェーハ研磨治具11の製造方法について説明する。まず、セラミックスからなる貼付板19の貼付面11aと裏面(反対面)19aの平行度をラップ加工により1μm以下に仕上げる。この時に、貼付面11aの平坦度は0.5μm以下とする。このように貼付板19の精度を規定するのは後にガイド部材16を接着し加工した際に、貼付面11aとガイド部材16の端面16aとの平行度を2μm以下に仕上げるためである。次に、ガイド部材16を接着剤21とOリング18を介して接着後、ガイド部材16の端面16aの加工を行う。この時貼付面11aを基準に研削加工ならびにラップ加工を行うことは大変困難である。そこで、貼付板19の裏面19aを基準にガイド部材16の端面16aをラップ加工にて仕上げる。この時に基準となる貼付板19の裏面19aとガイド部材16の端面16aの平行度は1μm以下に仕上げる。このような手順と精度加工を行うことで、貼付面11aとガイド部材16の端面16aとの平行度を2μm以下に仕上げることが可能となる。
【0028】
そして、このようにして製造されたウェーハ研磨治具11を図2、3のように、上定盤17と下定盤14の間に配置してウェーハ研磨装置41を構成することにより、ウェーハの研磨精度を向上させ、歩留りの高いウェーハ加工を行うことができる。
【0029】
【実施例】
(実験例1)
本発明及び比較例のウェーハ研磨治具10、11を用いてウェーハ12を研磨し、研磨後のウェーハ12の平坦度を評価した。
【0030】
まず、本発明実施例として、図1に示す構造で、直径がφ230mm、厚さ25mmのアルミナセラミックスからなるウェーハ研磨治具11を製作した。貼付面11aからガイド部材16端面16aまでの高さを0.7mmとした。このウェーハ研磨治具を用いて図2,3のウェーハ研磨装置41にてウェーハ12の研磨を行った。
【0031】
比較例1として、図5に示すような直径φ210mm、厚さ25mmの円盤状のウェーハ研磨治具10と、比較例2として直径φ580mm、厚さ25mmの円盤状のウェーハ研磨治具10、そして比較例3として図4に示すように貼付面10aを研削にて0.7mm座ぐり加工した直径φ230mm、厚さ25mmの一体構造のウェーハ研磨治具10を準備した。比較例1〜3は図5に示すウェーハ研磨装置40にてウェーハ12の研磨を行った。
【0032】
また、ウェーハ12としては、導電型がp型で抵抗率が10Ω・cm程度の直径200mmのシリコンウェーハ(エッチングウェーハ)を用いた。このウェーハ12の裏面にワックスをスピンコーティングにより塗布後、各々のウェーハ研磨治具10、11に固着させ、このウェーハ研磨用治具10、11を表面に研磨布15を貼付した下定盤14上に設置して、押圧力Fを加えるとともに、下定盤14にコロイダルシリカを主成分とする研磨剤を供給しながら、ウェーハ研磨治具11と研磨布15を相対的に摺動させることで、ウェーハ12の表面を研磨代10μmとして各々60枚を研磨した。
【0033】
研磨後のウェーハ12の平坦度はフラットネス測定機を使用して測定し、表面のうねりを魔境により測定した。表1に平坦度及びうねりの合格率を示す。
【0034】
表1の結果より、比較例1〜3については、ウェーハ平坦度合格率、ウェーハうねり合格率ともにレベルが悪く、特に比較例2,3では総合評価が×となっているのに対し、本発明実施例は位置の違いや発熱等による磨耗度に影響されず、精度良く研磨できるという良好な結果が得られた。
【0035】
【表1】
【0036】
(実験例2)
次に、本発明実施例として、直径がφ230mm、厚さ25mmのアルミナセラミックスからなる図1のウェーハ研磨治具11において、貼付面11aからガイド部材16の端面16aまでの高さを0.7mmとし、平行度を2μmとした。この時に耐薬品性のOリング18により接着剤21の両側をシールしたものと、Oリング18を使用せず接着剤21で接着のみ行ったものとを準備し、耐食性の比較を行った。
【0037】
各ウェーハ研磨治具11をそれぞれの薬液の入った容器内に浸け、貼付面11aとガイド部材16の端面16aとの平行度を各時間毎に電気マイクロメータを使用し、測定した。その結果を表2に示す。
【0038】
表2の結果より、耐薬品性のOリング18でシールされたウェーハ研磨冶具11は各薬液に浸漬しても貼付面11aとガイド部材16の端面16aの平行度は大きな変化が見られなかったが、Oリング18でシールされていない接着剤21のみで固定された冶具は長時間の浸漬では精度が劣化し、接着剤21が剥がれるものもあった。
【0039】
これより、本発明のウェーハ研磨治具11においてOリング18を用いれば高い耐食性が示され、シリコンや化合物半導体等の半導体ウェーハの研磨に限らず、石英基板やガラス基板あるいは磁気ディスク基板といった高精度を要求される板状ワークの研磨にも用いることが可能である。
【0040】
【表2】
【0041】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ウェーハ貼付面を有するセラミックス製貼付板の外周に、ウェーハの仕上がり厚みと同じ突出高さのセラミックス製ガイド部材を接合してなり、上記貼付板と上記ガイド部材とを接着剤で接合するとともに、Oリングを介在させてシールする構造とし、好ましくは上記ウェーハ貼付面と、上記ガイド部材の端面との平行度を2μm以下とすることにより、研磨時に発生する研磨ムラをなくすことができ、ウェーハの平坦度を向上させることができる。
【0042】
また、上記貼付板と上記ガイド部材とを接着剤で接合するとともに、Oリングを介在させてシールする構造とし、直接薬液やスラリーが接着剤に触れない構造とすることにより、研磨時に使用されるスラリー等により接着剤が剥がれたり、腐食したりして、上記貼付板と上記ガイド部材との接着剤が外れたり、接着剤の一部が研磨中に出てきてウェーハにキズを付けたりするのを防止することができる。
【0043】
また本発明のウェーハ研磨治具の製造方法によれば、セラミックス製貼付板を貼付面とその裏面との平行度が1μm以下となるように加工した後、上記貼付板の外周にセラミックス製ガイド部材を接着剤で接合するとともに、Oリングを介在させてシールし、このガイド部材の端面と上記貼付板の裏面との平行度が1μm以下となるように加工することにより、上記貼付面と上記ガイド部材の端面との平行度を2μm以下に仕上げることが可能となる。
【0044】
そして、好ましくは上定盤と下定盤との間に上記ウェーハ研磨治具を配置してウェーハ研磨装置を構成したことにより、高精度なウェーハを提供することができる。
【0045】
従って、本発明のウェーハ研磨冶具を用いれば、ウェーハの研磨精度を向上させ、歩留りの高いウェーハ加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のウェーハ研磨冶具の断面図である。
【図2】本発明のウェーハ研磨治具を用いたウェーハ研磨装置の概略分解斜視図である。
【図3】本発明のウェーハ研磨冶具を用いたウェーハ研磨装置の概略断面図である。
【図4】従来のウェーハ研磨治具を示す断面図である。
【図5】従来のウェーハ研磨装置の概略断面図である。
【符号の説明】
11:ウェーハ研磨冶具
11a:貼付面
12:ウェーハ
13:ワックス
14:下定盤
15:研磨布
16:ガイド部材、16a:端面
17:上定盤
18:Oリング
19:貼付板
21:接着剤
22:保持具
40、41:ウェーハ研磨装置
Claims (4)
- ウェーハ貼付面を有するセラミックス製貼付板の外周に、ウェーハの仕上がり厚みと同じ突出高さのセラミックス製ガイド部材を接合してなり、上記貼付板と上記ガイド部材とを接着剤で接合するとともに、Oリングを介在させてシールする構造としたことを特徴とするウェーハ研磨治具。
- 上記ウェーハ貼付面と、上記ガイド部材の端面との平行度が2μm以下であることを特徴とする請求項1記載のウェーハ研磨治具。
- セラミックス製貼付板を貼付面とその裏面との平行度が1μm以下となるように加工した後、上記貼付板の外周にセラミックス製ガイド部材を接着剤で接合するとともに、Oリングを介在させてシールし、このガイド部材の端面と上記貼付面の裏面との平行度が2μm以下となるように加工する工程からなるウェーハ研磨治具の製造方法。
- 上定盤と下定盤との間に請求項1または2記載のウェーハ研磨治具を配置してなるウェーハ研磨装置。
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