JP3940607B2 - 弾性表面波装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波装置の構造に関し、容器内部に圧電素子を接着固定する構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、弾性表面波装置の構造の1つとして、図4に示すように圧電基板上に櫛歯状電極109aを形成した弾性表面波素子109を、キャビティ部112を有する容器101内のキャビティ部底面105に接着剤108を介して接着固定し、弾性表面波素子109上の櫛歯状電極109aと容器101の内部両側に有した段差部104に形成した電極パッド110とをワイヤボンディング(不図示)で結線した後、容器101の側壁上面に設けたシールリング107と金属製蓋体111とをシーム溶接にて気密封止したものが知られている。
【0003】
このシ−ム溶接は、金属製蓋体111上の対向する2辺に各々ローラ状の電極を1kg程度の加圧力をかけながら接触させ、この電極間に通電することで金属製蓋体111と金属リングとの当接部に電流を流し、その電気抵抗による発熱により金属製蓋体111とシールリング107とを溶融接合する。この溶融接合はローラ状の電極を移動させることで金属製蓋体111の全周にわたって溶接され、金属製蓋体111と容器101とを気密封止する。このとき、全周を封止する1〜2秒間通電が行われるため金属製蓋体111の温度は200〜500℃程度になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
容器101のキャビティ部底面105に塗布する接着剤108の塗布量のばらつきにより弾性表面波素子109と容器101のキャビティ部底面105間の接着剤108の広がり具合を均一にするのが困難であり、その結果、弾性表面波素子109の搭載高さがばらついたり、弾性表面波素子109が傾いてしまったり、更には、ワイヤボンディングの結線不良が発生していた。
【0005】
これらの対策として、検査工程を入れて選別を行う多くの作業工数を要し、また、製品歩留まりを低下させ、製品が高価なものになるという問題がある。
【0006】
また、例えば、金属製蓋体111を容器101の側壁上面に設けられたシールリング107に載せてシーム溶接すると、容器101のキャビティ部底面105よりもリッド部111の温度の方が高くなり、また容器101よりも熱伝達係数の大きな金属製蓋体111全体が昇温して熱膨張した状態で溶接され、気密封止が終了し常温に戻ったときには逆に金属製蓋体111が収縮し容器101が下に凸になるような変形応力が生じるようになる。
【0007】
このように容器101が変形すると、そのキャビティ部底面105に接着固定されている弾性表面波素子109にも変形応力が伝わるという問題が発生する。
【0008】
その結果、封止前後で弾性表面波素子109の特性に変化を生じ、例えば、弾性表面波素子109をフィルタとして用いた場合は、フィルタの中心周波数f0が変化したり、共振子であった場合は共振周波数frが変化したり、温度特性が変化するなどで所望の特性が得られない。
【0009】
本発明は上述の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的はセラミック容器の変形応力の影響を受けず、弾性表面波素子の搭載高さが常に均一で、弾性表面波素子が傾くことのない、高い信頼性の弾性表面波装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために本発明の弾性表面波装置は、圧電基板の表面に櫛歯状電極が形成された短冊状の弾性表面波素子と、キャビティ部を有する容器とから成り、該容器のキャビティ部底面に前記弾性表面波素子を搭載して成る弾性表面波装置において、前記キャビティ部底面は、前記弾性表面波素子の裏面縁部を支持する搭載部を有し、前記キャビティ部底面で、弾性表面波素子裏面の中央領域と対向する位置に、前記搭載部よりも高さが低い凸部を設けるとともに、該凸部上面と前記弾性表面波素子裏面とを接着剤を介して接着したことを特徴としている。また、凸部は、前記弾性表面波素子の幅方向に延在するように形成されていることを特徴とする弾性表面波装置を提供するものである。
【作用】
本発明の構成によれば、キャビティ部底面は、弾性表面波素子の裏面縁部を支持する搭載部を有し、キャビティ部底面で、弾性表面波素子裏面の中央領域と対向する位置に、搭載部よりも高さが低い凸部を設けるとともに、凸部上面と弾性表面波素子裏面とを接着剤を介して接着したので、接着剤の塗布量がばらついたとしても搭載部が高さ方向の規制部材として働き、キャビティ部底面側に向かって接着剤が流動していくだけで、キャビティ部底面と弾性表面波素子との距離を常に一定に保つことができる。
【0011】
しかも、凸部は、弾性表面波素子の幅方向に延在するように形成されているので、容器が下に凸になるような変形応力が生じた場合でも、弾性表面波素子裏面の中央領域を幅方向に支持し、充分な接合面積が得られるので、接合強度を維持しつつ、弾性表面波素子への影響は小さくなり、フィルタの中心周波数f0、共振子の共振周波数fr、温度特性等の特性を充分得ることができるものである。
【0012】
また、弾性表面波素子の裏面縁部を支持する搭載部は同一高さになっているので弾性表面波素子が傾くことがなく、高さが一定となり、ワイヤボンディング時の結線不良の発生を防止できる。
【0013】
更に、搭載部の高さが凸部の高さよりも高いことで、接着剤塗布量が増加しても、搭載部により規制されてキャビティ部底面と弾性表面波素子との距離を一定に保ちつつ、確実に接着領域を一定にすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の圧電装置を図面に基づいて詳説する。図1及び図2、図3に本発明の実施例を示す。図1は容器1にキャビティ部2が形成された状態を示した図であり、(a)は金属製の蓋体を省略した平面図を示し、(b)はX−X線断面図を示している。また、図2は図1で示したダイアタッチ面中央部の凸部6が形成された部分に接着剤8を塗布した状態の図であり、(a)は平面図を示し、(b)はX−X線断面図を示している。図3は図2で示した接着剤8により弾性表面波素子9を接着固定した状態の図であり、(a)は平面図を示し、(b)はX−X線断面図を示している。
【0015】
本発明の弾性表面波装置は、容器1のキャビティ部2内に弾性表面波素子9が収容されるとともに、金属製蓋体11で封止して成る。
【0016】
容器1はアルミナ基板等からなるセラミック絶縁板を複数積層した積層体4とシールリング7とから成り、内部に弾性表面波素子9を収容するキャビティ部2を形成するように側壁部5が形成されて断面凹状に形成してなる。シールリング7はコバールなどの金属製で、容器1の側壁部5の上面に銀ろう溶接で接合されている。
【0017】
キャビティ部2のキャビティ部底面12中央側には、凸部6が形成されており、凸部6上に接着剤8を形成してなる。この凸部6が接着剤8を介して矩形状の圧電基板の表面に櫛歯状電極90が形成された弾性表面波素子9の中央領域と接合される。
【0018】
接着剤8の接着領域としては、弾性表面波素子9の幅方向に延在するように形成されている。これにより、シーム溶接後に生じる容器1と金属製蓋体11の熱膨張の差による応力を弾性表面波素子9が受けるのを抑制できる。しかし、接着領域はこれに限定されることなく、点接触できるように凸部6を柱状に形成しても良い。これでも同様な作用効果を有する。
【0019】
接着剤8はシリコン樹脂系の接着剤からなり、容器1のキャビティ部2の凸部6に接着剤8を予めデイスペンサなどで滴下し、温度200℃で加熱して硬化させたものである。この接着剤8に用いるシリコン系樹脂は弾性特性をもつ樹脂であるため封止前後に生じる容器1の変形応力緩和に効果的である。
【0020】
接着剤8の硬度は20〜40度のものが良い。これ以上柔らかいと保持が不安定になり、外からのショックで弾性表面波素子9が傾きワイヤボンディング時の結線不良が多発することになる。
【0021】
また、キャビティ部底面12には、弾性表面波素子9の裏面縁部を支持する搭載部3が形成されている。搭載部3は弾性表面波素子9の裏面の長手方向の両端を支持しているが、これに限定されることなく、弾性表面波素子9裏面の幅方向の両端を支持しても構わない。
【0022】
更に容器1のキャビティ部2の弾性表面波素子9が搭載される部分の両側には弾性表面波素子9が搭載された際の表面の高さと同じ高さの段差部10が形成されており、そこに電極パッド10aが形成されている。この電極パッド10aは弾性表面波素子9に形成された櫛歯状電極90と不図示であるがボンディングワイヤにより接続されるようになっており、不図示であるが、容器1の外表面にまで延出されている。
【0023】
金属製蓋体11は図3(b)に示すように、シールリング7上に搭載されるとともに、シーム溶接にて容器1に接合される。材質としては実質的にコバールや42アロイなどの金属材料の平板状板体の表面にメッキ層が被着形成されている。
【0024】
以上のように図1、図2、図3によれば、容器1のキャビティ部2に形成した凸部6上に接着剤8を介して弾性表面波素子9を接着固定する構造になっている。即ち、凸部6上にシリコン樹脂を滴下すると、その両側のキャビティ部底面12にシリコン樹脂が広がる。そしてシリコン樹脂は表面張力により弾性表面波素子9の裏面中央領域でとどまる。この状態で熱硬化させることによりシリコン樹脂層を形成することができる。接着剤8の厚みはキャビティ部2をはみ出すことのないよう塗布量が管理される。
【0025】
このように、キャビティ部底面12は、接着剤8を介して弾性表面波素子9の裏面中央領域を支持する凸部6を有することにより、接着剤8の塗布量がばらついたとしても弾性表面波素子9の接着の際に上から押さえつけるので、キャビティ部底面12側に接着剤8が流れるだけで、凸部6が高さ方向の規制部材の役割をしてキャビティ部底面12と弾性表面波素子9との距離を常に一定に保つことができる。また、弾性表面波素子9の搭載と同時に搭載部3が当接するので弾性表面波素子9が傾くことがなくワイヤボンディング時の特性不良の発生がない。
【0026】
シーム溶接時に容器1と金属製蓋体11の熱膨張の差が発生した後、容器1が室温状態に戻った時に容器1に変形が生じるが、凸部6のみで接着剤8を介して接着固定し、その接着剤8と弾性表面波素子9の裏面の中央領域とを接合させる構成にしたことで内部応力が直接弾性表面波素子9の底面全体に伝わらない。
【0027】
ここで、従来例に示した構成(図4)と本発明に示した構成(図3)におけるシーム溶接前後の特性変化を比較した実験結果を表1に示す。表1は実験試料として通信機用IF帯弾性表面波フィルタ(中心周波数248.45MHz)を用い封止前後の挿入損失の変化と3dB中心周波数の変化の比較を示したものである。
【0028】
【表1】
【0029】
表1より従来品の3dB中心周波数変化量は平均値で+24.6KHzの変化であるのに対して、本発明における3dB中心周波数変化量は平均値で−0.7KHzと僅かな変化量であった。
【0030】
これは、シーム溶接する際に生じる容器1の変形による弾性表面波素子9への影響が小さくなったためである。即ちこれにより、シーム溶接等による容器1に生じた変形によって弾性表面波素子9に加わる応力が効果的に吸収されていることがわかる。よって弾性表面波素子9にはほとんど応力が加わらないため、封止前後の弾性表面波素子9の特性変化量及びそのばらつきを抑制できる効果を備えるものである。
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明の構成によれば、キャビティ部底面は、弾性表面波素子の裏面縁部を支持する搭載部を有し、接着剤を介して弾性表面波素子裏面の中央領域を支持する搭載部よりも高さが低い凸部を有するので、接着剤の塗布量がばらついたとしても搭載部が高さ方向の規制部材として働き、キャビティ部底面側に向かって接着剤が流動していくだけで、キャビティ部底面と弾性表面波素子との距離を常に一定に保ちつつ接着領域を一定にすることができる。
【0032】
また、シーム溶接による容器に生じた変形によって弾性表面波素子に加わる応力を効果的に抑圧することができる。よって弾性表面波素子には応力がほとんど加わらないため、封止前後の弾性表面波素子の中心周波数変化量及びそのばらつきを抑制できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は容器の上面図、(b)本発明の容器のX−X線断面図である。
【図2】(a)は容器内の凸部に接着剤を付着させた上面図、(b)はそのX−X線断面図である。
【図3】(a)は弾性表面波素子を搭載した状態の容器の上面図、(b)そのX−X線断面図である。
【図4】(a)は従来の弾性表面波素子を搭載した状態の容器の上面図、(b)そのY−Y線断面図である。
【符号の説明】
1: 容器
2: キャビティ部
3: 搭載部
6: 凸部
7: シールリング
8: 接着剤
9: 弾性表面波素子
10: 段差部
10a:電極パッド
11: 金属製蓋体
12: キャビティ部底面
Claims (2)
- 圧電基板の表面に櫛歯状電極が形成された短冊状の弾性表面波素子と、キャビティ部を有する容器とから成り、該容器のキャビティ部底面に前記弾性表面波素子を搭載して成る弾性表面波装置において、
前記キャビティ部底面は、前記弾性表面波素子の裏面縁部を支持する搭載部を有し、
前記キャビティ部底面で、弾性表面波素子裏面の中央領域と対向する位置に、前記搭載部よりも高さが低い凸部を設けるとともに、該凸部上面と前記弾性表面波素子裏面とを接着剤を介して接着したことを特徴とする弾性表面波装置。 - 前記凸部は、前記弾性表面波素子の幅方向に延在するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の弾性表面波装置。
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