JP3939557B2 - 耐テンパーカラー性に優れたステンレス鋼・焼鈍仕上げ材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、従来のステンレス鋼とほぼ同等の延性,加工性をもち、大気中で加熱されてもテンパーカラーによる着色が生じない安価なステンレス鋼・焼鈍仕上げ材に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子レンジ,焼肉プレート内面,マフラーカッター,自動車用ヘッドライトシェード等では、使用中にテンパーカラーのつかない材料としてホーロー加工した炭素鋼やクロムめっき材等が使用されてきた。ホーロー加工した炭素鋼やクロムめっき材は、耐熱性,耐久性に優れているが、割れが生じやすく製造コストが高いことが欠点である。そこで、最近ではこれらの材料に代えて耐食性,加工性等に優れたステンレス鋼が使用される傾向にある。しかし、SUS304,430に代表されるステンレス鋼では,使用中に200〜500℃の高温雰囲気に曝されるとテンパーカラーによる着色が生じ、意匠性が著しく損なわれ、材質が劣化することもある。
【0003】
テンパーカラーは、Si,Alを増量したステンレス鋼を光輝焼鈍して鋼板表面にSiO2,Al2O3を含む酸化皮膜を形成することにより抑制できる。すなわち、Si又はAl含有量の増加に伴ってSi,Alが富化した酸化皮膜が形成されやすくなり,耐テンパーカラー性が向上する。このようなステンレス鋼として、電子レンジ,ガスレンジ等の内装用高珪素耐熱ステンレス鋼(特開昭56−259号公報),テンパーカラー着色が少ないステンレス鋼(特開昭62−156253号公報)等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
Si含有量を高めたステンレス鋼では、Siの固溶強化によって製品材が硬質化するため客先での加工性が劣化する。他方、比較的高価な元素であるAlの含有量を高めることは、原料コストの上昇を招き経済的に不利となる。また、電子レンジ,焼肉プレート内面,マフラーカッター,自動車用ヘッドライトシェード等をステンレス鋼板から製造する場合、大半は客先で曲げ,深絞り等の加工を施している。この点でも、従来の鋼材と遜色ない延性,加工性,曲げ性等の特性を備えていることが必要である。
したがって、加工性の低下やコストの上昇なく耐テンパーカラー性を向上させる上では、Si,Alの含有量を可能な限り低く抑えた状態でテンパーカラー生成に対して抵抗力のある酸化皮膜を形成することが要求される。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような要求に応えるべく案出されたものであり、延性,加工性確保のためにSi,Alの含有量を抑えたステンレス鋼材であっても、鋼板表面に形成される酸化皮膜に含まれるAl2O3,SiO2の濃度分布を規制することにより、従来の鋼材に匹敵する延性,加工性を呈し、優れた耐テンパーカラー性をもつ安価なステンレス鋼・焼鈍仕上げ材を提供することを目的とする。
【0006】
本発明のステンレス鋼・焼鈍仕上げ材は、その目的を達成するため、C:0.03〜0.10質量%,Si:0.2〜2.0質量%(ただし1.0質量%以下を除く),Mn:0.2〜1.0質量%,Ni:0.5質量%以下,Cr:12.0〜18.0質量%,N:0.03質量%以下,Al:0.05〜0.80質量%,Ti:0.03質量%以下,Nb:0.03質量%以下,S:0.005質量%以下を含み、更に0.005質量%以下のMg及び0.005質量%以下のCaの1種又は2種を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなるステンレス鋼板であって、その表面にAl2O3及びSiO2を含む酸化皮膜が形成されており、酸化皮膜中のSiO2のピークよりも下地鋼側にAl2O3のピークがある濃度分布をもつことを特徴とする。
【0007】
ステンレス鋼板は、Cu:0.3〜1.2質量%を含むことができる。
このステンレス鋼・焼鈍仕上げ材は、所定組成の熱延鋼帯を焼鈍,酸洗,冷間圧延した後、表面研磨することなく光輝焼鈍を施すことにより製造される。焼鈍・酸洗されたステンレス鋼帯を冷間圧延前に表面研磨できるが、冷間圧延後に表面研磨しないことが必要である。
【0008】
【実施の形態】
本発明者等は、ステンレス鋼に含まれるSi,Alの含有量と加工性,耐テンパーカラー性との関係を調査した。その結果、Si,Alの含有量を適正に管理することにより、従来の鋼材とほぼ同等の延性,加工性を維持したままで耐テンパーカラー性を付与できることを見出した。しかし、単にSi,Alの含有量を調整するだけでは、350〜500℃付近の高温雰囲気にステンレス鋼が曝されると、場合によっては局部的なテンパーカラーに起因する着色が発生し、優れた耐テンパーカラー性が安定的に発現しないことがある。
そこで、テンパーカラーの発生機構について更に調査・検討を進めた結果、Sに加えて、耐食性,加工性向上のために添加されるTi,Nbが耐テンパーカラー性に悪影響を及ぼしていることを解明し、S,Ti,Nbの含有量を規制することにより優れた耐テンパーカラー性の安定した発現が可能になった。不純物として微量含まれるMg,Caについても、Mg,Ca含有量を規制することにより、耐テンパーカラー性が一層向上することを見出した。
【0009】
Si,Al含有量の低減は、製造コスト及び加工性の点では有利であるが、SiO2,Al2O3を含む強固な酸化皮膜の生成を困難にする原因である。酸化皮膜の生成が不十分であると、ステンレス鋼自体の成分調整による耐テンパーカラー性の改善効果が損なわれる。本発明では、強固な酸化皮膜の生成を保証するため、冷間圧延後の表面研磨を省略している。表面研磨が必須の製造工程では、冷間圧延前にステンレス鋼帯を表面研磨する。
ステンレス鋼に含まれるSi,Alは、熱延,焼鈍等の製造工程で表面層に移行し、光輝焼鈍で生成する酸化皮膜のソースとなる。光輝焼鈍では、酸素親和力の高いSiが雰囲気中のOと結合してステンレス鋼表面にSiO2リッチの酸化物層となる。SiO2リッチの酸化物層の内側にAl2O3リッチの酸化物層が形成されるが、Al2O3リッチの酸化物層は、Alを単独添加したステンレス鋼表面に形成されるAl2O3系酸化皮膜に比較してAl原子の含有比率が高く、皮膜自体も厚く成長する。その結果、耐テンパーカラー性にとって好適な酸化皮膜になる。
【0010】
以下、本発明が対象とするステンレス鋼の合金成分,含有量等を説明する。
C:0 . 03〜0 . 10質量%
含有量の増加に応じて光輝焼鈍で生成する酸化皮膜に濃化する傾向が強くなり、耐テンパーカラー性に悪影響を及ぼす成分である。また、強度の上昇に起因して延性,曲げ性,加工性を劣化させやすく、この弊害は0.10質量%を超えるC含有量で顕著になる。したがって、C含有量は低いほど好ましいが、0.03質量%未満のC含有量を低下させることは製鋼工程での製造コストや原料コストの上昇を招き、C低減による耐テンパーカラー性の改善効果も飽和する。
Si:0 . 2〜2 . 0質量%
ステンレス鋼表面にSiO2リッチの酸化物層を形成させるために必須の合金成分である。また、Si,Alの含有量を規制することにより、SiO2リッチの酸化物層の内側にAl2O3リッチの酸化物層が生成する。このような効果は、0.2質量%以上のSi含有量で顕著になる。しかし、Si含有量の増加に伴い鋼材の強度が上昇し、延性,靭性等が劣化する。そこで、従来の鋼材と同等レベルの材料特性を得るために、Si含有量の上限を2.0質量%に規制した。
【0011】
Mn:0 . 2〜1 . 0質量%
鋼中のSをMnSとして捕捉し、耐テンパーカラー性を向上させる合金成分であり、0.2質量%以上のMn含有量で添加効果が顕著になる。しかし、1.0質量%を超える過剰量のMnが含まれると、MnOの酸化物が生じやすくなり、却って耐テンパーカラー性が劣化する。
Ni:0 . 5質量%以下
C,Nを過飽和に固溶させるオーステナイトを光輝焼鈍時に生成しやすくする合金成分であり、過飽和に固溶したC,Nによって耐テンパーカラー性が劣化する。固溶C,Nに起因する弊害を避けるため、Ni含有量の上限を0.5質量%以下に規制した。
Cr:12 . 0〜18 . 0質量%
良好な耐テンパーカラー性が得られるフェライト相及びステンレス鋼としての優れた耐食性を得るために、12.0質量%以上のCrが必要である。しかし、18.0質量%を超える過剰量のCrを添加しても、Cr増量に見合った耐テンパーカラー性の改善効果が飽和するばかりでなく、加工性が低下する。
【0012】
N:0 . 03質量%以下
Cと同様に光輝焼鈍時にステンレス鋼表面にある酸化皮膜に濃化して耐テンパーカラー性を劣化させる成分であり、強度上昇,延性低下の原因にもなる。このようなことから、N含有量の上限を0.03質量%に規制した。
Al:0 . 05〜0 . 80質量%
優れた耐テンパーカラー性を付与するために重要な合金成分であり、0.05質量%以上の含有量でAlの添加効果が顕著になる。Al含有量の増加に応じて耐テンパーカラー性は向上するものの、0.80質量%を超える過剰量のAlを添加するとステンレス鋼が脆化しやすく、従来の鋼材と同程度の靭性が得られがたくなる。
Ti:0 . 03質量%以下,Nb:0 . 03質量%以下
何れもNとの親和力が大きく、それぞれTiN,NbN等の大型介在物になりやすいこと、光輝焼鈍の条件によってはTiC,NbC等の炭化物としても析出する。これらの介在物や析出物が耐テンパーカラー性に悪影響を及ぼすものと推察される。耐テンパーカラー性向上の上ではTi,Nb共に少ないほど好ましいが、0.03質量%以下でほとんど無害化できる。
【0013】
S:0 . 005質量%以下
MnS等の硫化物を形成すると共に、含有量が0.005質量%を超えると粒界や表層部に偏析しやすくなり、耐テンパーカラー性を著しく劣化させる。したがって、S含有量は低いほど好ましく、本発明ではS含有量の上限を0.005質量%に規定した。
Cu:0 . 3〜1 . 2質量%
必要に応じて添加される合金成分であり、Si,Alを含む成分系において従来の鋼材と同等レベルの耐食性を付与する作用を呈する。耐食性の改善は、0.3質量%以上のCu含有で顕著になる。しかし、1.2質量%を超える過剰量のCuを添加すると強度上昇を招き、加工性、靭性が劣化する。
Mg:0 . 005質量%以下,Ca:0 . 005質量%以下
耐テンパーカラー性は、Mg,Caの含有量を規制することによって一層向上する。Mgは他の成分と結合してスピネル型介在物を形成し、Caはステンレス鋼表面に濃化することにより、何れも耐テンパーカラー性に悪影響を及ぼす。Caは、耐食性にとっても有害である。このような悪影響は、Mg,Caの含有量を共に0.005質量%以下に規制することにより抑制される。
【0014】
酸化皮膜
前述のようにSi,Alの含有量を規制したステンレス鋼を光輝焼鈍すると、SiO2のピークよりも下地鋼側にAl2O3のピークがある濃度分布をもつ酸化皮膜がステンレス鋼表面に形成される。SiO2,Al2O3を含む酸化皮膜中では、O,金属イオンの自己拡散係数が小さく,昇温時にFe等の金属原子の酸化が抑制される。Fe等の金属元素の拡散や酸化に対する抑制効果は、一般に、酸化皮膜に含まれるSi,Alの含有量が高いほど、酸化皮膜が厚いほど大きくなる。
【0015】
本発明の成分系では、光輝焼鈍されたステンレス鋼の極表面にSiO2リッチの酸化物層が形成され、SiO2リッチの酸化物層の直下にAl2O3リッチの酸化物層が形成される。Al2O3リッチの酸化物層は、ステンレス鋼のAl含有量が同一であってもAl単独添加のステンレス鋼に比較してAl原子の含有比率が高く、酸化物層自体も厚い。したがって、光輝焼鈍で生成した酸化皮膜は、Fe等の金属原子の拡散や酸化を抑え、耐テンパーカラー性の改善に有効に寄与する。
不純物元素の量を規制しても表面研磨後に光輝焼鈍すると、使用条件によってはテンパーカラーが付く場合がある。このようなテンパーカラーは、Si含有量が0.8質量%以下,Al含有量が0.15質量%以下と比較的低いステンレス鋼で散見される。この種のテンパーカラーは、拡散によってSi,Alが濃化した表面層が表面研磨によって除去されることに原因があり、光輝焼鈍前の表面研磨を省略することにより防止できる。表面研磨が組み込まれた製造工程であっても、表面研磨後に冷間圧延することにより研磨肌が破壊され,光輝焼鈍後に良好な耐テンパーカラー性をもつ表面層に調質される。冷間圧延前に表面研磨する場合、圧延率を20%以上に設定した冷間圧延によって表面研磨の影響を消去することが好ましい。
【0016】
【実施例1】
表1の組成をもつステンレス鋼を溶解し、100kgの鋼塊に鋳造し、熱延工程を経て板厚3.0mmの熱延鋼帯を製造した。表中、Aグループが本発明で規定した成分条件を満足するステンレス鋼,Bグループが比較のためのステンレス鋼,C1がSUS430ステンレス鋼である。
【0017】
【0018】
何れの熱延鋼帯も850℃×9時間の中間焼鈍を経て酸洗,冷間圧延し、板厚1.0mmの冷延鋼帯とした。各冷延鋼帯を表面研磨することなく光輝焼鈍した。光輝焼鈍では、露点−50℃の75体積%H2+25体積%N2雰囲気中で均熱温度900℃に60秒加熱保持する条件を採用した。
光輝焼鈍後の各ステンレス鋼について、耐テンパーカラー性を調査した。テンパーカラー試験では、大気雰囲気の電気炉を使用し、350℃×200時間の熱処理を施した後、テンパーカラー着色による色差変化をJIS Z8729,JIS Z8730に準じて測定数5で測定した。測定値から、L*a*b*表色系による色差ΔE*abの平均値を算出した。算出結果を表2に示す。
【0019】
ΔE*abとテンパーカラー着色との対応は、次の通りである。
ΔE*ab=0〜5:テンパーカラー着色がほとんど観察されない。
ΔE*ab=5〜10で全体的にテンパーカラー着色するものの着色程度が非常に軽微
ΔE*ab=10〜20:全体的には着色程度が軽微であるが、局部的に着色程度が大きくムラが生じたもの
ΔE*ab≧20:全体的に着色程度が大
【0020】
表2の調査結果にみられるように、本発明例のステンレス鋼(Aグループ)では、何れも色差ΔE*abが10以下であり、耐テンパーカラー性に優れていることが確認される。A1のステンレス鋼について、鋼板表面に形成されている酸化皮膜をグロー放電発光分光分析装置で分析し、皮膜厚み方向の濃度分布を求めた。図1の調査結果にみられるように、Al2O3は下地鋼に近い側にピークがあり、SiO2はAl2O3のピークよりも表層側にピークがある濃度勾配をもち、Fe又は酸化鉄は低濃度に抑えられていた。Aグループの他のステンレス鋼も、同様な濃度分布をもつ酸化皮膜が形成されていた。なお、図1では、Si,Alともにピーク濃度を基準値(1.0)とし、基準値に対する比率(相対濃度)でSi,Alの濃度分布を表した。
【0021】
他方、Si,Alの含有量が本発明で規定した下限を下回るステンレス鋼(B1,B2)では、色差ΔE*abが10を超えており、Aグループに比較して耐テンパーカラー性に劣っていた。具体的には、ステンレス鋼B2では、皮膜厚み方向に沿ったSi,Alの濃度分布を示す図2にみられるように、ステンレス鋼A1に比較してSi含有量が高く、Siのピーク濃度もステンレス鋼A1より若干高くなっており、Alも低濃度であった。図2では、ステンレス鋼A1のピ−ク濃度に対する比率(相対濃度)でSi,Alの濃度分布を表した。図2にみられるSi,Al酸化皮膜が薄いことが耐テンパーカラー性に劣っていることに現れている。Si含有量が低い場合も同様にSi,Al酸化皮膜が薄くなるため、優れた耐テンパーカラー性が得られがたくなる。
【0022】
S含有量が高いB3のステンレス鋼は、Si,Al含有量がほぼ同じであるにも拘らず、A1のステンレス鋼に比較して色差ΔE*abが大きくなっていた。Ti含有量が高いB4,Nb含有量が高いB5のステンレス鋼でも色差ΔE*abが拡大している。このことは、耐テンパーカラー性の向上にS,Ti,Nbの量的規制が効いていることを意味する。
また、A2とA7,A8のステンレス鋼を比較すると、Mg,Ca含有量が高いA7,A8のステンレス鋼が大きな色差ΔE*abになっており、耐テンパーカラー性が低下していることが窺われる。この結果から、Mg,Ca含有量を規制すると、耐テンパーカラー性が一層向上することが理解される。
他方、従来のSUS430ステンレス鋼(C1)は、Al含有量が不足するため色差ΔE*abが17.9と大きな値で耐テンパーカラー性に劣る材料であった。
【0023】
【0024】
【実施例2】
Aグループ,B6,B7,C1のステンレス鋼について、光輝焼鈍後のビッカース硬さ,引張り特性,加工性を調査した。ビッカース硬さに関しては、JISZ2244に準拠し試験荷重49N(HV5)で表面の硬さを測定し、5回測定の平均値を算出した。加工性に関しては、一般的なフェライト系ステンレス鋼の深絞り性の指標であるr値をL方向(圧延方向),D方向(圧延方向に対して45度傾斜した方向),T方向(圧延方向に直交する方向)に沿った引張試験で測定し、測定数3の平均値として算出した。
【0025】
表3の測定結果にみられるように、Aグループのステンレス鋼は、従来のSUS430ステンレス鋼に比較すると硬さ,0.2%耐力,引張強さが若干高くなっているが、伸び及びr値はほぼ同レベルであった。
他方、B6,B7のステンレス鋼は、硬さ,強度が更に高くなっており、伸び,r値がSUS430ステンレス鋼よりも劣っていた。強度上昇,加工性低下は、Si,Alの含有量が本発明で規定した上限を超えていることに原因がある。すなわち、Si,Alの過剰添加によって耐テンパーカラー性は改善されるが、SUS430ステンレス鋼に比較して加工性に劣り、客先での加工性が要求される用途には不適であるといえる。
この対比から、本発明で規定した範囲にSi,Alの含有量を維持するとき、優れた耐テンパーカラー性と従来の鋼材と同等レベルの延性,加工性が両立することが判る。
【0026】
【0027】
【実施例3】
A1,A6のステンレス鋼について、以下に示す複数工程で光輝焼鈍材を製造した。
工程a:(実施例1と同じ工程)
板厚3.0mmの熱延鋼帯を850℃×9時間で中間焼鈍し、酸洗後の冷間圧延で板厚1.0mmの冷延鋼帯とし、表面研磨することなく露点−50℃の75体積%H2+25体積%N2雰囲気で均熱温度900℃に60秒加熱保持する光輝焼鈍を施した。
工程b:
板厚3.0mmの熱延鋼帯を850℃×9時間で中間焼鈍し、酸洗を経て番手#400のサンドペーパでステンレス鋼表面を50往復する機械研磨を施し、更に冷間圧延で板厚を1.0mmにした後、表面研磨することなく露点−50℃の75体積%H2+25体積%N2雰囲気で均熱温度900℃に60秒加熱保持する光輝焼鈍を施した。
【0028】
工程c:
板厚3.0mmの熱延鋼帯を850℃×9時間で中間焼鈍し、酸洗後の冷間圧延で板厚を1.0mmにした後、番手#400のサンドペーパでステンレス鋼表面を50往復する機械研磨を施し、次いで露点−50℃の75体積%H2+25体積%N2雰囲気で均熱温度900℃に60秒加熱保持する光輝焼鈍を施した。工程d:
板厚3.0mmの熱延鋼帯を850℃×9時間で中間焼鈍し、酸洗後の冷間圧延で板厚を1.0mmにした後、ステンレス鋼表面を鏡面研磨し、次いで露点−50℃の75体積%H2+25体積%N2雰囲気で均熱温度900℃に60秒加熱保持する光輝焼鈍を施した。
【0029】
各工程で得られた光輝焼鈍材について、実施例1と同じ条件下で色差ΔE*abを測定し、耐テンパーカラー性を調査した。
表4の調査結果にみられるように、A1,A6何れのステンレス鋼においても、光輝焼鈍の直前に表面研磨すると光輝焼鈍後の耐テンパーカラー性が劣化していた。他方、表面研磨しなかったステンレス鋼では、色差ΔE*abが10以下とテンパーカラーによる着色が抑えられていた。
Si,Al含有量が比較的高いA1のステンレス鋼では、用途に応じた表面研磨を光輝焼鈍前に施しても、耐テンパーカラー性が改善されていた。しかし、Si,Al含有量が共に低いA6のステンレス鋼では、光輝焼鈍の前に表面研磨すると十分な耐テンパーカラー性が発現しなかった。他方、表面研磨されたステンレス鋼を冷間圧延すると、表面研磨で生じた研磨肌を冷間圧延によって破壊するされ、光輝焼鈍されたステンレス鋼表面の耐テンパーカラー性が向上した。したがって、Si,Al含有量の低いステンレス鋼で良好な耐テンパーカラー性を得るためには、光輝焼鈍前の表面研磨を極力回避することが好ましい。
【0030】
【0031】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のステンレス鋼・焼鈍仕上げ材は、耐テンパーカラー性に有効なSi,Alの含有量を従来の鋼材と同レベルの延性,加工性が得られる程度に低減し、ステンレス鋼表面に生成する酸化皮膜の濃度勾配を規制することにより、良好な耐テンパーカラー性を維持しながらも客先で要求される加工性を備えた材料である。そのため、客先で製品形状に容易に成型加工でき、美麗な表面性状を呈する電子レンジ,焼肉プレート内面,マフラーカッター,自動車用ヘッドライトシェード等の製品として使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Si,Alの含有量が本発明で規定した範囲にあるステンレス鋼の表面に生成した酸化皮膜の濃度勾配を示すグラフ
【図2】 Al含有量が少なすぎるステンレス鋼の表面に生成した酸化皮膜の濃度勾配を示すグラフ
Claims (2)
- C:0.03〜0.10質量%,Si:0.2〜2.0質量%(ただし1.0質量%以下を除く),Mn:0.2〜1.0質量%,Ni:0.5質量%以下,Cr:12.0〜18.0質量%,N:0.03質量%以下,Al:0.05〜0.80質量%,Ti:0.03質量%以下,Nb:0.03質量%以下,S:0.005質量%以下を含み、更に0 . 005質量%以下のMg及び0 . 005質量%以下のCaの1種又は2種を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなるステンレス鋼板であって、その表面にAl2O3及びSiO2を含む酸化皮膜が形成されており、酸化皮膜中のSiO2のピークよりも下地鋼側にAl2O3のピークがある濃度分布をもつことを特徴とする耐テンパーカラー性に優れたステンレス鋼・焼鈍仕上げ材。
- ステンレス鋼板が更に0.3〜1.2質量%のCuを含む請求項1記載のステンレス鋼・焼鈍仕上げ材。
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