JP3939382B2 - アミノ基含有脂肪酸誘導体の製造法 - Google Patents

アミノ基含有脂肪酸誘導体の製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、イミダゾリン化合物、アミドアミン、アルカノールアミド等のアミノ基含有脂肪酸誘導体の製造法に関する。さらに詳しくは、脂肪酸又はそのエステルと、ポリアミン又はアルカノールアミンとを反応させアミノ基含有脂肪酸誘導体を製造するに際し、特定の脂肪酸又はそのエステルを用いて、色相の良好なアミノ基含有脂肪酸誘導体を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
アミノ基含有脂肪酸誘導体、例えばイミダゾリン環構造を有し、一位をアルキロール基で置換された化合物(以後イミダゾリン化合物と記す)はイミダゾリン型界面活性剤(アミドアミノ酸型界面活性剤ともいわれている)の有用な中間体として知られており、またアミドアミンはベタイン型界面活性剤の有用な中間体として知られている。事実、市販されているシャンプーの一部にはこれらの界面活性剤が使用されている。特に近年、洗浄剤等に用いられる界面活性剤は、界面活性能の他に生分解性、安全性、皮膚に対して低刺激である等、諸特性に優れたものが要望されており、これらの要件を満たす界面活性剤としてイミダゾリン型界面活性剤やベタイン型界面活性剤がある。
【0003】
イミダゾリン型界面活性剤やベタイン型界面活性剤は優れた起泡力、洗浄力に加え、眼や皮膚に対する刺激が極めて低い特徴があり、近年、低刺激性シャンプー等の主要成分としてその使用量が増加している。このように、イミダゾリン化合物やアミドアミン等のアミノ基含有脂肪酸誘導体は種々のイミダゾリン型界面活性剤やベタイン型界面活性剤の中間体として有用であるのみならず、それ自体も界面活性剤として多用されている。
【0004】
この様なイミダゾリン化合物、アミドアミン、更にアルカノールアミド等のアミノ基含有脂肪酸誘導体に要求される品質の一つに色相が挙げられる。
イミダゾリン化合物、アミドアミン、アルカノールアミド等のアミノ基含有脂肪酸誘導体は、脂肪酸又はそのエステルと、ポリアミン又はアルカノールアミンとを脱水縮合させることにより製造できる。一般的にこの縮合反応は、高級脂肪酸又はそのエステルと、ポリアミン又はアルカノールアミンとを反応温度80〜200 ℃、常圧もしくは減圧下で反応させることにより進行する。
この様な反応においては、一般に原料中に存在する僅かな量の不純物が熱的にあるいは微量の空気の存在下に着色物質へ転化し著しい着色が起こり、製品の色調あるいは最終製品の色調に大きく影響を及ぼす。
【0005】
淡色化アミノ基含有脂肪酸誘導体に関する製造特許として、例えば米国特許第3,468,904号明細書があり、該明細書では、ソディウムボロハイドライド(NaBH4)等のアルカリ金属のボロハイドライドの使用が開示されているが、なお、淡色化が不十分であり、その改善が望まれている。
また、過酸化物処理や吸着剤処理による原料の精製も考えられるが、下記の比較例にも示すように誘導体化すると着色が生じ効果がない。
【0006】
従って、本発明の目的は、脂肪酸又はそのエステルと、ポリアミン又はアルカノールアミンとを反応させて、十分に淡色化された色相の良好なアミノ基含有脂肪酸誘導体を製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の問題点を改善し、色相の良好な高品質のアミノ基含有脂肪酸誘導体を簡単な操作で効率的に製造する方法を鋭意検討した結果、原料として用いられる天然物より誘導される脂肪酸又はそのエステルが、天然物由来の不安定な物質を含んでおり、これらが変化又は反応して色相を悪化させることを見いだし、この脂肪酸又はそのエステルとしてカルボニル価が4以下のものを用いることにより上記課題を解決できることを見いだし本発明を完成するに到った。
【0008】
即ち、本発明は、脂肪酸又はそのエステルと、ポリアミン又はアルカノールアミンとを反応させてアミノ基含有脂肪酸誘導体を製造するに際し、脂肪酸又はそのエステルとして、カルボニル価(COV)が4以下のものを用いることを特徴とするアミノ基含有脂肪酸誘導体の製造法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
本発明に用いられる脂肪酸又はそのエステルとしては、一般式(I)
R1COOR2 (I)
(式中、R1は炭素数7〜23の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R2はH 又は炭素数1〜3のアルキル基又はグリセライドから一つのアシルオキシ基を除いた残基を示す。)
で表される高級脂肪酸又はそのエステルが挙げられる。具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸、12−ヒドロキシステアリン酸や、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、とうもろこし油脂肪酸、牛脂脂肪酸、ババス油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、鯨油脂肪酸等の植物油又は動物油脂肪酸又はこれらのメチルエステル、エチルエステル、グリセライドや、これらの混合物が例示される。これらの中では、R2が、H 又は炭素数1〜3のアルキル基である高級脂肪酸又はその低級アルキルエステルが好ましく、特に好ましいものは、R1が炭素数が9〜17の直鎖アルキル基で、R2がH 又はCH3 であるものであり、植物油及び動物油由来の高級脂肪酸が特に好ましい。
【0011】
また、本発明で用いられるポリアミンとしては、アルキレンポリアミン、ヒドロキシアルキルポリアミン、N−ヒドロキシ低級アルキルアルカノールアミン等が挙げられる。アルキレンポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノエチルアミン等が挙げられ、ヒドロキシアルキルポリアミンとしては、アミノエチルエタノールアミン、アミノエチルプロパノールアミン、アミノエチルブタノールアミン、N−β−ヒドロキシプロピルプロピレンジアミン、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルトリエチレンテトラミン等が挙げられ、N−ヒドロキシ低級アルキルアルカノールアミンとしては、N−β−ヒドロキシエチルエタノールアミン等が挙げられる。
これらの中では、一般式(II)又は(III) で表されるジアミンが好ましい。
【0012】
H2NC2H4NHX (II)
(式中、X は炭素数2〜4のアルキロール基を示す。)
【0013】
【化5】
Figure 0003939382
【0014】
(式中、R3及びR4は同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基を示し、a は2〜3の数を示す。)
一般式(II)で表されるジアミンとしてはアミノエチルエタノールアミン(H2NC2H4NHC2H4OH) が、一般式(III) で表されるジアミンとしてはジメチルアミノプロピルアミンが特に好ましい。
【0015】
また、本発明で用いられるアルカノールアミンとしては、一般式 (IV)
【0016】
【化6】
Figure 0003939382
【0017】
〔式中、R5及びR6は同一又は異なって、H 、炭素数1〜3のアルキル基又は式
-(AO)nH (A は炭素数2〜8のアルキレン基、n は1〜10の数を示す。)で表される基を示し、R5及びR6のうち少なくとも一方は式 -(AO)nHで示される基である。〕
で表される化合物が挙げられる。
一般式 (IV) で表されるアルカノールアミンとしては、エタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、エタノールアミンのエチレンオキサイド付加物、N−メチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0018】
本発明において、アミノ基含有脂肪酸誘導体としては、脂肪酸又はそのエステルと、ヒドロキシアルキルポリアミン又はヒドロキシアルキルアルキレンポリアミンとの反応により得られるイミダゾリン化合物、脂肪酸又はそのエステルと、N−β−ヒドロキシ低級アルキルアルカノールアミンとの反応により得られるオキサゾリン化合物、脂肪酸又はそのエステルと、ジアルキルアミノアルキレンアミンとの反応により得られるアミドアミン、脂肪酸又はそのエステルと、アルカノールアミンとの反応により得られるアルカノールアミド等が挙げられる。好ましいものは、一般式(V)
【0019】
【化7】
Figure 0003939382
【0020】
(式中、R1及びX は前記の意味を示す。)
で表されるイミダゾリン化合物、一般式 (VI)
【0021】
【化8】
Figure 0003939382
【0022】
(式中、R1, R3, R4及び aは前記の意味を示す。)
で表されるアミドアミン、あるいは一般式(VII)
【0023】
【化9】
Figure 0003939382
【0024】
(式中、R1, R5及びR6は前記の意味を示す。)
で表されるアルカノールアミドである。
【0025】
本発明においては、脂肪酸又はそのエステルと、ポリアミン又はアルカノールアミンとを反応させてアミノ基含有脂肪酸誘導体を製造するに際し、脂肪酸又はそのエステルとして、カルボニル価(COV)が4以下、好ましくは3以下、更に好ましくは2以下のものを用いる。カルボニル価が4より大きいものを用いると色相の良好なアミノ基含有脂肪酸誘導体を得ることができない。
【0026】
尚、本発明において、脂肪酸又はそのエステルのカルボニル価とは、以下の方法で測定した値である。
【0027】
<カルボニル価の測定法>
試料を規定の条件で、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンで発色させ、吸光度法で求めた時の試料1g中のカルボニル化合物のμmol 数を言う(JAOCS, 31,88(1954)、油化学, , 275(1958) 参照)。
【0028】
カルボニル価が4以下の脂肪酸又はそのエステルを得る方法としては、特に限定されないが、脂肪酸又はそのエステルに対してアミノ化合物を 0.005〜5重量%添加後、あるいは添加後加熱したのち、蒸留する方法が好ましい。
【0029】
ここで、脂肪酸又はそのエステルに添加するアミノ化合物としては、低級アミン、アルカノールアミン、ポリアミン、又は長鎖アルキルあるいはアルケニルアミン等が挙げられる。
低級アミンとしては、例えば、アンモニアの他、炭素数1〜6のアルキル基を有するアミン、例えばモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミンなどが挙げられる。アルカノールアミンとしては、炭素数2〜8のアルカノール基を有するアミン、例えばエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン等が挙げられる。ポリアミンとしては、アミノエチルエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンなどのポリアミンや、ステアリルアミノプロピルアミン等の炭素数10〜18の長鎖アルキル基を有するポリアミンなどが挙げられる。長鎖アルキルあるいはアルケニルアミンとしては、炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するアミン、例えばオクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ベヘニルアミン、オレイルアミン、ジステアリルアミン、ジドデシルアミン等の長鎖アルキルあるいはアルケニルアミンが挙げられる。
【0030】
これらのアミノ化合物の中では、長鎖アルキルあるいはアルケニルアミン、アルカノールアミン、ポリアミンが好ましく、特に炭素数12〜18の長鎖アルキルあるいはアルケニル基を有するアミン、炭素数12〜18の長鎖アルキル基を有するポリアミン、式 H2(NC2H4)mNHY
(式中、Y はH 又は炭素数2〜4のアルキロール基を示し、m は1又は2の数を示す。)
で表されるポリアミンが好ましい。
【0031】
本発明において、アミノ化合物の添加量は、原料脂肪酸又はそのエステルに対して 0.005〜5重量%が好ましく、0.05〜1重量%が更に好ましい。アミノ化合物を0.005 重量%以上添加することにより色相の改良効果に優れ、また経済的面から5重量%以下が好ましい。
【0032】
本発明においては、脂肪酸又はそのエステルにアミノ化合物を添加後すぐに蒸留しても、あるいは添加後加熱したのち蒸留してもいずれでもよいが、添加後、、30〜250 ℃、好ましくは70〜150 ℃で1〜8時間加熱処理してから蒸留するのが好ましい。
【0033】
本発明においては、アミノ化合物を用いて原料脂肪酸又はそのエステルを上記の条件で処理することにより、原料脂肪酸又はそのエステル中に含まれているカルボニル化合物、ヒドロキシ化合物、エポキシ化合物、フェノール系化合物などの有色、発色及び有臭性の含酸素不純物が、アミノ化合物と反応して不活性重質物(重合物)になり、この不活性重質物を蒸留残渣として効率よく除去でき、蒸留留分として不純物の少ない、カルボニル価が4以下の精製脂肪酸又はそのエステルが得られる。
【0034】
本発明においては、カルボニル価が4以下の脂肪酸又はそのエステルを用い、ポリアミン又はアルカノールアミンと反応させてアミノ基含有脂肪酸誘導体を製造するが、脂肪酸又はそのエステルと、ポリアミン又はアルカノールアミンとの反応条件は特に限定されず、例えば上記のようなイミダゾリン化合物やオキサゾリン化合物を製造する場合には、反応温度を180 〜220 ℃、反応圧力760 〜1mmHg、好ましくは400 〜5mmHgの範囲にてイミダゾリン化等を行うのが望ましい。
また、上記のようなアミドアミンやアルカノールアミドを製造する場合には、アミド化の反応温度は80〜220 ℃、好ましくは90〜200 ℃の範囲であり、反応時間は1〜10時間、好ましくは2〜6時間である。また、脂肪酸エステルを用いた場合には必要に応じてソディウムメチラート等の触媒の存在下に反応させるのが好ましい。
【0035】
本発明の方法において脂肪酸又はそのエステルと、ポリアミン又はアルカノールアミンとの反応モル比は、通常脂肪酸又はそのエステル:ポリアミン又はアルカノールアミン=1:1〜1:2であり、好ましくは1:1〜1:1.5 である。
【0036】
本発明においては、カルボニル価が4以下の脂肪酸又はそのエステルを用いることにより、著しく色相が良好なアミノ基含有脂肪酸誘導体が得られる。
【0037】
【実施例】
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0038】
実施例1
<脂肪酸の精製法>
未蒸留ヤシ油脂肪酸(中和価 262.2、ヨウ素価 9.8) 300gとオレイルアミン 0.3g(対脂肪酸 0.1重量%)を温度計、攪拌器、ジムロートを備えた 500mlフラスコに入れ、加熱した。温度は 110℃に保ち、2時間攪拌を続けた後、予め用意しておいた 500ml容ナシ型フラスコの蒸留装置に移し、5mmHgの真空下、ボトム温度 220℃まで蒸留し、282g(蒸留収率94%)の留分(中和価 258.5、ヨウ素価 8.0、カルボニル価1.5)を得た。
【0039】
<アミド化>
次に蒸留脂肪酸 217g(MW217)を、温度計、攪拌器、冷却管、N2 吹き込み装置を備えた1リットル容5ツ口フラスコに移し、N2 を吹き込みながら(25ml/min) 、温度を180℃まで昇温した。その後、ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)107.3 g(MW 102.2、1.05モル)を同温度で3時間で滴下し、酸化(AV)が10以下に到った時点でN2 の吹き込み量を増加し(500ml/min)、残存DMAPAがガスクロマトグラフ 0.1%以下に到達した時に反応を終了し、冷却した。
蒸留脂肪酸及びアミド化反応生成物の色相を比色管にて測定した結果を表1に示す。
【0040】
実施例2
オレイルアミンの添加量を 0.9g(対脂肪酸 0.3重量%)にする以外は実施例1と同様の条件下で処理及び蒸留を行い、276 g(蒸留収率92%)の留分の脂肪酸(カルボニル価1.4 )を得た。
次に得られた蒸留脂肪酸を用い、実施例1と同様の条件でアミド化を行った。
蒸留脂肪酸及びアミド化反応生成物の色相を比色管にて測定した結果を表1に示す。
【0041】
実施例3
実施例1と同様の脂肪酸の精製法を行って、カルボニル価1.7 の蒸留脂肪酸を得た。この蒸留脂肪酸 217g(MW 217) とアミノエチルエタノールアミン(AEEA)135.2 g(MW 104.0、 1.3モル) を実施例1と同様の反応容器に仕込んだ後に、400mmHg の真空下で 200℃へ昇温し、真空度を200mmHg に調整して3時間保持した。その後、温度を 200℃に保持しながら真空度を5mmHgまで2時間で低下させてイミダゾリン化反応を終了した。反応生成物はアミン価から94%の1−ヒドロキシエチル−2−ココイルイミダゾリン化合物を含む混合物であることを確認した。
蒸留脂肪酸及びイミダゾリン化反応生成物の色相を比色管にて測定した結果を表1に示す。
【0042】
実施例4
未蒸留パーム核油脂肪酸(中和価 245、ヨウ素価 17) 300gにラウリルアミン 0.3g(対脂肪酸 0.1重量%)を添加し、実施例1と同様の処理を行った後に同条件下で蒸留を行い、285 g(蒸留収率95%)の留分の蒸留脂肪酸(カルボニル価1.6 )を得た。
次に得られた蒸留脂肪酸 227g(MW 227) を用い、実施例1と同様の条件下でアミド化を行った。
蒸留脂肪酸及びアミド化反応生成物の色相を比色管にて測定した結果を表1に示す。
【0043】
実施例5
未蒸留牛脂脂肪酸(中和価 195、ヨウ素価 50) 350gにステアリルアミノプロピルアミン 0.3g(対脂肪酸 0.1重量%)を添加し、実施例1と同様の処理を行った後に同条件下で蒸留を行い、 325.5g(蒸留収率93%) の留分の蒸留脂肪酸を得た(カルボニル価1.8 )。
次に得られた蒸留脂肪酸 283g(MW 283) を用い、実施例3と同様の条件下でイミダゾリン化を行った。
蒸留脂肪酸及びイミダゾリン化反応生成物の色相を比色管にて測定した結果を表1に示す。
【0044】
実施例6
実施例1のオレイルアミンの替わりにアミノエチルエタノールアミン 0.3g(対脂肪酸 0.1重量%)を添加する以外は、実施例1と同様の処理、蒸留を行い、カルボニル価2.0 の蒸留脂肪酸を得た。得られた蒸留脂肪酸を用いて同様にアミド化を行った。
蒸留脂肪酸及びアミド化反応生成物の色相を比色管にて測定した結果を表1に示す。
【0045】
実施例7
実施例1のオレイルアミンの替わりに、ジエチレントリアミン 0.9g(対脂肪酸 0.3重量%)を添加し、80℃で処理する以外は実施例1と同様の処理、蒸留を行い、カルボニル価2.0 の蒸留脂肪酸を得た。得られた蒸留脂肪酸を用いて同様にアミド化を行った。
蒸留脂肪酸及びアミド化反応生成物の色相を比色管にて測定した結果を表1に示す。
【0046】
実施例8
未蒸留ヤシ油脂肪酸メチルエステル(鹸化価246.6 、ヨウ素価6.2) 300gにオレイルアミン 0.3g(対脂肪酸メチルエステル 0.1重量%)を添加し、実施例1と同様の処理を行った後に同条件下で蒸留を行い、 291g(蒸留収率97%) の留分の蒸留脂肪酸メチルエステルを得た(カルボニル価1.3 )。得られた蒸留脂肪酸メチルエステルを用いて同様にアミド化を行った。
蒸留脂肪酸メチルエステル及びアミド化反応生成物の色相を比色管にて測定した結果を表1に示す。
【0047】
実施例9
実施例1と同様のヤシ油脂肪酸の精製法を行って、カルボニル価1.5 の蒸留脂肪酸を得た。この蒸留脂肪酸 217g(MW 217) を実施例1と同様の反応容器に仕込んだ後に、エタノールアミン61g(MW61)を添加し、150 ℃迄昇温し、同温度で5時間反応させて、アミド化生成物を得た。
蒸留脂肪酸及びアミド化反応生成物の色相を比色管にて測定した結果を表1に示す。
【0048】
比較例1
実施例1の未蒸留ヤシ油脂肪酸を、オレイルアミンの添加処理を行わずにそのまま実施例1と同条件で蒸留を行い、 282g(蒸留収率94%)の留分の蒸留脂肪酸を得た(カルボニル価6.0 )。
次に、得られた蒸留脂肪酸を用いて、実施例1と同様の条件でアミド化を行った。
蒸留脂肪酸及びアミド化反応生成物の色相を比色管にて測定した結果を表2に示す。
【0049】
比較例2
実施例1の未蒸留ヤシ油脂肪酸 300gとジ−t−ブチルパーオキサイド(DTBPO) 1.5g(対脂肪酸 0.5重量%)を、温度計、攪拌器、ジムロートを備えた 500mlフラスコに入れ加熱した。温度は 190℃に保ち、2時間加熱を続けた。約 120℃まで冷却後、減圧下、DTBPOの分解物であるアセトン、t−ブチルアルコールを留去した。その後、ボトム温度 220℃まで5mmHgの真空下で蒸留して、 282g(蒸留収率94%)の留分の蒸留脂肪酸を得た(カルボニル価5.5 )。
次に得られた蒸留脂肪酸を用いて、実施例1と同様の条件でアミド化を行った。
蒸留脂肪酸及びアミド化反応生成物の色相を比色管にて測定した結果を表2に示す。
【0050】
比較例3
実施例1の未蒸留ヤシ油脂肪酸 300gと活性炭3g(対脂肪酸1重量%)を、温度計、攪拌器、ジムロートを備えた 500mlフラスコに仕込んだ後に、 110℃へ加熱し、2時間保持した。その後、処理物を加圧、濾過器にて濾過し、実施例1と同様の条件下で蒸留を行い蒸留脂肪酸を得た(カルボニル価6.2 )。
次に得られた蒸留脂肪酸を用いて、実施例1と同様の条件でアミド化を行った。
蒸留脂肪酸及びアミド化反応生成物の色相を比色管にて測定した結果を表2に示す。
【0051】
比較例4
実施例4の未蒸留パーム核油脂肪酸を、オレイルアミンの添加処理を行わずにそのまま実施例1と同条件で蒸留し、282 g(蒸留収率94%)の留分の蒸留脂肪酸を得た(カルボニル価4.5 )。
次に得られた蒸留脂肪酸を用いて、実施例1と同様の条件でアミド化を行った。
蒸留脂肪酸及びアミド化反応生成物の色相を比色管にて測定した結果を表2に示す。
【0052】
比較例5
実施例5の未蒸留牛脂脂肪酸を、オレイルアミンの添加処理を行わずにそのまま実施例1と同条件で蒸留し、326 g(蒸留収率93%)の留分の蒸留脂肪酸を得た(カルボニル価6.1 )。
次に得られた蒸留脂肪酸を用いて、実施例3と同様の条件でイミダゾリン化を行った。
蒸留脂肪酸及びイミダゾリン化反応生成物の色相を比色管にて測定した結果を表2に示す。
【0053】
【表1】
Figure 0003939382
【0054】
【表2】
Figure 0003939382
【0055】
表1及び表2の結果から明らかなように、本発明の方法により色相の良好なアミノ基含有脂肪酸誘導体を得ることができた。特に、本発明のようなアミノ化合物の添加・蒸留処理を行って得られた蒸留脂肪酸は、従来の精製法により得られた蒸留脂肪酸と同程度の色相を有するにもかかわらず、この蒸留脂肪酸を用いて得られるアミノ基含有脂肪酸誘導体は、従来の蒸留脂肪酸を用いて得られるアミノ基含有脂肪酸誘導体に比べ色相が著しく優れていることがわかる。

Claims (5)

  1. 脂肪酸又はそのエステルと、ポリアミン又はアルカノールアミンとを反応させてアミノ基含有脂肪酸誘導体を製造するに際し、脂肪酸又はそのエステルとして、脂肪酸又はそのエステルに対して炭素数 12 18 のアルキル基あるいはアルケニル基を有するアミン、炭素数 12 18 のアルキル基を有するポリアミン、又は式 H 2 (NC 2 H 4 ) m NHY
    (式中、 Y H 又は炭素数2〜4のアルキロール基を示し、 m は1又は2の数を示す。)
    で表されるポリアミンから選ばれる少なくとも1種のアミノ化合物を 0.005〜5重量%添加後、あるいは添加後加熱したのち、蒸留して得られる、カルボニル価(COV)が4以下の精製脂肪酸又はそのエステルを用いることを特徴とするアミノ基含有脂肪酸誘導体の製造法。
  2. 脂肪酸又はそのエステルが、一般式(I)
    R1COOR2 (I)
    (式中、R1は炭素数7〜23の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R2はH 又は炭素数1〜3のアルキル基又はグリセライドから一つのアシルオキシ基を除いた残基を示す。)
    で表される高級脂肪酸又はそのエステルである請求項1記載の製造法。
  3. 脂肪酸又はそのエステルと反応させるポリアミンが、アルキレンポリアミン、ヒドロキシアルキルポリアミン又はN−ヒドロキシ低級アルキルアルカノールアミンである請求項1又は2記載の製造法。
  4. 脂肪酸又はそのエステルと反応させるアルカノールアミンが、一般式 (IV)
    Figure 0003939382
    〔式中、R5及びR6は同一又は異なって、H 、炭素数1〜3のアルキル基又は式-(AO)nH (A は炭素数2〜8のアルキレン基、n は1〜10の数を示す。)で表される基を示し、R5及びR6のうち少なくとも一方は式 -(AO)nHで示される基である。〕
    で表される化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造法。
  5. アミノ基含有脂肪酸誘導体が、一般式(V)で表されるイミダゾリン化合物、一般式 (VI) で表されるアミドアミン又は一般式(VII) で表されるアルカノールアミドである請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造法。
    Figure 0003939382
    (式中、R1前記の意味を示し、X は炭素数2〜4のアルキロール基を示す。)
    Figure 0003939382
    (式中、R1は前記の意味を示し、R3及びR4は同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基を示し、a は2〜3の数を示す。)
    Figure 0003939382
    (式中、R1, R5及びR6は前記の意味を示す。)
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