JP3936999B2 - 天然生体高分子を含有するコンタクトレンズ及びその製造方法 - Google Patents

天然生体高分子を含有するコンタクトレンズ及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然生体高分子を含有するコンタクトレンズ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
絹フィブロイン膜表面では、抗血液凝固性、生体細胞の付着増殖性が良好であり、絹フィブロイン膜は医療用材料として重要な新素材であるので各種産業分野から強い関心が寄せられている。湿潤状態の絹膜は酸素をよく通すため、絹蛋白質の特性からコンタクトレンズ(以下CLと略記)への応用が望まれていた。さらに、絹蛋白質製のCL用材料は生体に優しく装着性が良いため、CL用材料として付加価値の高い材料が望まれていた。
【0003】
絹フィブロイン水溶液からCL用材料を調製するには、絹フィブロイン水溶液を水蒸気透過膜に入れることで蒸発速度を遅くして調製する方法があった(特開平5−313105号公報)。しかし、この方法では、比較的濃度の高い絹フィブロイン水溶液を徐々に蒸発乾固させて塊状物を調製するため、塊状物外部の乾燥速度が内部に比べて速く、塊状物の部位により塊状物の光学的また機械的に異方性が高いものとなり、均質なCL用材料は得にくかった。
【0004】
また、絹フィブロインを臭化リチウムや塩化カルシウムなどの中性塩溶液に溶解し、中性塩成分の存在下でビニル化合物を添加したCL組成物をグラフト重合させて得られる重合体から絹フィブロイン含有のCL用材料を調製する方法があった。一例としては、得られた重合体を蒸留水に浸漬して重合体に含まれる中性塩成分を脱塩除去してCL用材料を調製していた(特開平7−314569号公報)。この場合、CL用材料を調製する過程で、溶解、脱塩、切削などの複雑で複数の工程が必要となり、特に得られた絹フィブロイン塊状物から中性塩成分を除去するのに長時間かかるという問題があった。他の例としては、絹フィブロインの他に中性塩などの不要な不純物を含んだモノマー混合物をモールドキャスト法でグラフト重合させて絹フィブロイン含有CLを作製していた。この場合、モールドキャスト法で作製したCLから中性塩を除去するにはCLを水中に長く放置しておく必要があり、CLが水を吸い変形するのでCLに精度の高い曲率を付与することが困難であった。また、上記方法では、透明度の高い、加工性に優れた素材が得られるが、絹フィブロインに基づく生化学特性をCLに十分発揮させることが困難であった。CL組成に添加する絹フィブロインの量を1重量%以上とするとCL組成物中で絹フィブロインが沈澱して、不均一なCL組成となってしまい、その結果、均一な組成のCLが得られないのみならず、この方法で製造したCLの一部、特に周辺部が白濁してしまうなどの問題があった。
【0005】
また、特願平8−133733号公報のCL製造方法では、水、HEMA、絹フィブロイン水溶液からなるCL組成物を重合させてCLを製造する際、絹フィブロイン含有量が1重量%以上になるとCL組成物中で絹が沈澱してしまったり、その結果、製造後のCLは透明であっても吸水状態においては白濁してしまうという問題があった。このような理由で、CL組成に添加できる絹フィブロイン量の上限はCL中で0.2〜0.3重量%程度であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の方法でCL組成物を重合して、絹フィブロインを含むCLを作製する場合、CLとして所望する形状は得られるものの、CL組成に絹フィブロインを多量に含有させるとCL組成物中で絹フィブロインが沈澱してしまうこと、製造したCLを含水させるとCLの全部あるいは周辺部が白濁してしまうことなどの問題が生じた。また、従来の方法ではモノマー混合物に絹フィブロインを十分な量含有させることが困難であるため絹フィブロインの生化学特性に基づく機能をCLに十分付与することができなかったりするなどの問題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は、かかる課題を解決するために検討した結果、絹糸を溶解させるために必要であるが最終ポリマー組成には不要な中性塩を用いずに、カチオン性のラジカル重合性単量体を用いることで中性塩と同等の効果を与え、さらに蛋白質の含有量が増加しても均一で透明性の高いCLを製造するに至った。
【0008】
つまり、本発明の最大の特徴であるカチオン性のラジカル重合性単量体は、重合反応においてポリマー組成中の低分子化蛋白質が有するカルボキシル基及びアミノ基の分子間の水素結合による凝集を妨げ相溶性を向上させ、さらに、低分子化蛋白質が持つカルボキシル基とアミノ基の電解質性分子側鎖とイオン結合すなわちアミナイド結合を形成するために透明性の良好なCLが得られるのである。また、低分子化蛋白質を添加して重合したCLは、所定の条件で膨潤させても低い膨潤率を示すにも拘らず高い含水率を示している。これは、蛋白質が親水性であるのに加えて、CL中では、ビニル化合物、低分子化蛋白質、カチオン性のラジカル重合性単量体が互いにからみあって架橋構造をとるためである。そのため、カチオン性のラジカル重合性単量体は、ビニル化合物と蛋白質との相互作用を強める効果を持つと共に、3次元架橋構造形成に有効であると考えられる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する蛋白質は、絹糸あるいは羊毛を加水分解した後乾燥処理により得られる低分子化蛋白質であり、水溶性の低分子化蛋白質であれば種類を問わず使用できる。
【0010】
低分子化絹蛋白質は、繭糸、生糸、絹糸を加水分解することにより、経済的で効率的に調製できる。その他、低分子化方法としては、ペプチド主鎖を切断し低分子化する物理化学的手法であれば通常のいかなる方法も用いることができる。また、低分子化絹蛋白質としては、絹糸を中性塩で溶解し透析処理して調製した再生絹フィブロイン水溶液、絹糸を有機酸で加水分解して得られる低分子絹粉末、さらに再生絹フィブロイン水溶液を凍結乾燥して得られる分子量の低い絹粉末も同様に使用できる。その他、低分子化した絹フィブロインの分子側鎖に化学修飾して溶解性を高めたN−アシル化シルクペプタイドが使用できる。
【0011】
低分子化蛋白質の量は、CL組成中0.1〜19.5重量部が好ましい。この範囲を越えると、CLの良好な透明性が得られ難くなる。家蚕あるいは野蚕由来の絹糸から得られる低分子化フィブロインの水に対する溶解性は高いのでCL組成中の量はより好ましくは3〜8重量部、羊毛由来の低分子化ケラチンは溶解性が低いのでより好ましくは1〜5重量部である。
【0012】
低分子化蛋白質としては、酸またはアルカリにより加水分解して分子量を160〜2000の範囲にした低分子化蛋白質が好ましい。より好ましい分子量範囲は800〜1500である。この範囲より小さいと蛋白質の特性が発現し難く、この範囲より大きいとCL組成への溶解性が低下しやすい。
【0013】
本発明に用いるビニル化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水溶性モノマー、メチル(メタ)アクリレート、シロキサニル(メタ)アクリレート、フルオロ(メタ)アクリレートなどの水不溶性モノマーが挙げられが、共重合可能なものであれば特に限定されない。ヒドロキシメタクリレート(以下HEMAと略記)が特に好ましい。CL組成に添加するビニル化合物の量は好ましくは0〜98.8重量部で、より好ましくは20〜80重量部であり、特に好ましくは50〜80重量部である。ビニル化合物の含有量がこの範囲より少ないと作製後のCLに吸水させたとき強度が十分となり難く、またこの範囲より多いとCLに含まれる蛋白質の比率が低下しやすく、蛋白質の生化学特性に基づく機能をCLに付与することが難しい。
【0014】
本発明において、カチオン性のラジカル重合性単量体、アニオン性のラジカル重合性単量体としては、ビニル化合物と水の存在下で低分子化蛋白質を容易に相溶状態にし、かつ、低分子化蛋白質が持つ電解質性分子側鎖とイオン結合、すなわちアミナイド結合をさせるために用いられるもので、加水分解性がなく、重合性のよいものであれば特に限定されない。
【0015】
カチオン性のラジカル重合性単量体としては、好ましくは、2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリル酸ハイドロキサイド、2−トリメチルアンモニウムアクリル酸ハイドロキサイド、2−トリメチルアンモニウムメチルアクリル酸クロライド、2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの四級アンモニウム塩、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、アミノエチルメタクリレート、メチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエタノールアミノエチルメタクリレート、アミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ビニルアミン、アミノスチレン、2−ビニルピリジン、モルホリノメタクリレートなどの三級アミンが挙げられる。また、二級アミン及び一級アミンの利用も可能である。もちろん一種類であっても、二種類以上使用してもよい。CL組成に添加するカチオン性のラジカル重合性単量体量は、0.5〜30重量部が好ましい。
【0016】
アニオン性のラジカル重合性単量体としては、好ましくは、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基より選ばれた少なくとも1種類のアニオン性基を有するものであればよい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−ビニルプロピオン酸、4−ビニルプロピオン酸、プロトン酸などのエチレン系不飽和カルボン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、ビニルスルホン酸、P−スチレンスルホン酸などのエチレン系不飽和スルホン酸、また2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどのリン酸モノエステルが挙げられる。CL組成に添加するアニオン性のラジカル重合性単量体量は、0.5〜30重量部が好ましい。
【0017】
カチオン性のラジカル重合性単量体とアニオン性のラジカル重合性単量体の量は、グラフト混合系の低分子化蛋白質の含有量によっても若干変わるが、両者の含有量はモル比で4:1〜0.5:1が好ましい。より好ましくは1:1〜1.2:1である。この範囲よりカチオン性ラジカル単量体の含有量が多いときには、作製後のCLが乾燥状態や湿潤状態で脆くなり実用的なCLになり難くなる。この範囲よりカチオン性ラジカル単量体の含有量が少ないときには、CL組成に添加する低分子化蛋白質の量を多くすることができないという不都合が生じやすく、また作製後は透明なCLが吸水し膨潤した場合に白濁する恐れがある。
【0018】
CL組成に添加する水の量は、好ましくは0〜50重量部、より好ましくは20〜40重量部、特に好ましくは25〜35重量部である。
【0019】
ビニル化合物として水溶性ビニル化合物であるHEMAを用いる場合には、まず水とHEMAを好ましくは重量比1:1〜1:3で混合する。より好ましい両者の重量比は1:2程度である。低分子化蛋白質の添加量によりCL素材の特性は大きく変化するので、低分子化蛋白質の添加量を多くすれば蛋白質の特性を強く発現でき、逆にビニル化合物の添加量を多くすればビニル化合物の特性を強く発現できる。水/HEMA混合物に添加する蛋白質の量は、形成後のCLの特性を考慮すると1〜4重量部が最も好ましい。メチルメタクリレートなどの水不溶性のビニル化合物を用いるときには、界面活性剤をCL組成に添加し、乳化熱重合させることでモノマーを溶液に分散させた状態でCLを作製することができる。
【0020】
架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ノナエチレングリコールジメタクリレート、テトラデカエチレングリコールジメタクリレートなどのエチレングリコール鎖を有する二官能性重合性モノマーが、分子間で架橋結合を形成する働きを持つため好ましい。添加量は0.1〜5重量部が好ましい。
【0021】
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸カリウム、ベンゾイルパーオキサイドなどの熱開始剤や光開始剤が好適である。これらの重合開始剤量は、CL組成に0.02〜0.3重量部程度添加すればよい。
【0022】
本発明によれば、本発明者が従来技術に記載した発明に比べてCL組成に約3倍以上の低分子化蛋白質を含有させることができ、蛋白質の機能に基づく特性をCLに十分付与させることが可能である。
【0023】
【作用】
本発明で用いる、重合反応基を持つカチオン性のラジカル重合性単量体は、カチオンを有するのでCL組成に含まれる両性イオンを持つ低分子化蛋白質を均一に分散させる働きを持つ。さらに、重合反応基を持つので相溶性を改善した状態でビニル化合物と共重合する利点がある。アニオン性のラジカル重合性単量体は、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基の少なくとも1種類を有するので、両性イオンの低分子化蛋白質と水素結合を形成しやすいため、本発明のCL組成を共重合した場合には、低分子化蛋白質、アニオン性ラジカル、カチオン性ラジカルの三次元的な立体構造が形成できる。したがって、CL組成に多量の低分子化蛋白質を添加させることができ、かつCL組成に含まれる複数成分の相溶性が向上できるため、機械的性能が優れ、成形後吸水させても白濁することのない光学的に透明度の高いCLが製造できる。
【0024】
本発明には、CL組成に水が多量に含まれる点に特徴があり、従来には全くない重合反応、あるいはこれに基づき製造物に新しい機能を付与できる。水が存在することで低分子化蛋白質、カチオン性のラジカル重合性単量体、アニオン性のラジカル重合性単量体、ビニル化合物、架橋剤との反応がスムーズに進む。さらに、化学反応的な視野からすると、CL組成に多量に含まれる水により、グラフト重合に供するモノマー混合物に多量の低分子化蛋白質を含有させることができ、さらに、カチオン性のラジカル重合性単量体と低分子化蛋白質、あるいはアニオン性のラジカル重合性単量体と低分子化蛋白質とで水素結合をとって分子間相互作用が高まるため分子親和性に基づく吸引性を向上させることができるので、高強度、高透明度、蛋白質汚れ量の軽減と除去率を増加させることができる。こうした点において、CL組成中に含まれる微量な水分で重合反応が阻害される従来の方法とは大きく異なっている。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、それぞれの実施例について下記に示す方法により外観形状、膨潤率、含水率、光線透過率、酸素透過係数、HAZE値による蛋白質付着率及び蛋白質洗浄率、破断強度、ビュレット法によるフィブロインの同定の評価を行った。
【0026】
1.外観形状:
形成後のCLを50%メタノール水溶液に20分間浸漬した後、純水で60分間煮沸(98℃)する方法で膨潤させ、目視観察で透明度を下記の判定基準による4段階で評価した。
【0027】
○:透明
△:ほぼ透明
△×:やや白濁
×:白濁
【0028】
2.膨潤率
膨潤率=(含水状態の試験片サイズ)/(乾燥状態の試験片サイズ)
【0029】
3.含水率
含水率(重量%)=(含水状態の試験片重量−乾燥状態の試験片重量)/(含水状態の試験片重量)×100
【0030】
4.光線透過率
CLの透明性は(株)島津製作所製分光光度計(UV−2200型)を用い、光線透過率の測定で評価した。CLを専用の金属製ホルダーに入れ380nm〜780nmの可視光領域における透過率の平均値を光線透過率とした。
【0031】
5.破断強度
厚さ0.2mmのプラノレンズを作製し、生理食塩水で含水状態とした後に、幅2mm程度の短冊状の試験片とした。試験片を温度37℃の生理食塩水中で6mm間隔で上下端を挟み、引き延ばして、試験片が破断したときの荷重を測定した。
【0032】
6.酸素透過係数
製科研式フィルム酸素透過測定計(理科精機工業(株)製)により、35℃、0.9%生理食塩水中で測定した。単位:×10-11 cc(STP)cm/cm2 ・sec・mmHg)
【0033】
7.ビュレット法によるフィブロインの同定
硫酸銅(II)5水和物1.5g、酒石酸カリウムナトリウム4水和物6.0gを1Lのメスフラスコに入れ、500mlの水を加えて全量を溶解する。さらに、300mlの10%水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加え、水を添加して全量を1Lとした。このようにしてビュレット試薬を調製した。ビュレット試薬4mlにCLを入れ、室温で30分間浸漬し、水で洗浄した後、レンズの呈色状態を下記の判定基準による3段階で評価した。
【0034】
○…レンズが濃い青紫色に呈色した。
【0035】
△…レンズが部分的または、うっすらと青紫色に呈色した。
【0036】
×…レンズに全く呈色反応がみられなかった。
【0037】
8.HAZE値による蛋白質付着率及び蛋白質除去率
8−1.HAZE値
CLの曇価に対応する物理量が測定できる。HAZE値はスガ試験機(株)製の全自動直続ヘーズコンピューター(HGM−2DP型)で測定した。なお、HAZE値(Td/Tt×100)の測定原理は次の通りである。
【0038】
光源から出た光束はレンズ系で平行光線となり試料に入射する。試料台に設置した試料を透過する光、拡散する光などの成分光をマイコンが制御して下記の式でHAZE値が得られる。
【0039】
T1 :入射光線(試料ナシ、標準板セット)
T2 :全光線透過光(試料アリ、標準板セット)
T3 :装置の拡散光(試料ナシ、暗箱セット)
T4 :拡散透過光(試料アリ、暗箱セット)
拡散透過率 :Td(%)={T4−T3(T2/T1)}/T1×100
全光線透過率 :Tt(%)=T3/T1×100
【0040】
蛋白質成分を含む汚れ液にCLを浸漬した際のCL表面の汚れの度合を次のようにして評価した。表1に示す組成の人工涙液にCLを浸漬し、乾燥させ表面の汚れ度を測定する。まず、測定に先立ってCLの表面の汚れを除去するため、ソフリンス(商品名、(株)シード)で軽く洗浄し、HAZE値を測定した。次にCL1枚につき2mlの人工涙液を用い35℃で15時間浸漬した後、純水で軽くすすいだ。その後、HAZE測定を行い、このCLを37℃で送風乾燥機中で5時間乾燥してCL外観を目視(1サイクル)で評価した。1サイクル後、再び上記で述べた汚れ液に前記のCLを浸漬して2サイクル目の評価を行い、またさらに同様に3サイクル目の評価を行った。本発明では第3サイクルの評価まで行った。
【0041】
表1
人工涙液(タンパク汚れ液)
ヒト血清アルブミン 0.388(%)
牛製グロブリン 0.161
鶏卵白リゾチーム 0.120
豚胃ムチン 0.100
トリパルミチン 0.010
塩化ナトリウム 0.900
塩化カルシウム2水和物 0.015
りん酸二水素ナトリウム2水和物 0.104
【0042】
8−2.蛋白質付着率
サイクル処理後のCLのHAZE値を測定し、下記式より蛋白質付着率を求めた。
【0043】
付着率(%)=(浸漬後のHAZE値−浸漬前のHAZE値)/(浸漬後のHAZE値−初期HAZE値)×100
【0044】
8−3.蛋白質除去率
(株)シード製のソフトCL洗浄剤であるコンセプトF処理後のHAZE値を測定し、下記式より洗浄率を求めた。
【0045】
洗浄率(%)=(洗浄前のHAZE値−洗浄後のHAZE値)/(洗浄前のHAZE値−初期HAZE値)×100
以下本発明の実施例を示すが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【0046】
実施例1〜3
低分子化絹フィブロインの調製
家蚕が作った繭の繭層を1/4に切断し、エタノール/ベンゼンの混合溶液(容積比1:2)を用いて、ソックスレー抽出器で繊維に含まれるワックス、色素を除去した。次に、繭糸外層の接着物質であり繭層に含まれるセリシンを取り除くため、マルセル石鹸0.2%、炭酸ナトリウム0.05%の混合溶液に入れ98℃で30分間煮沸した。サンプルと混合溶液の浴比は1:100とした。こうして調製した10gの絹フィブロイン繊維を14容積%硫酸50ml中、60℃で12時間処理して加水分解した。200mlの冷水を加えて1昼夜室温で放置した後、10N水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ加えてpH7.24に調整する。濾過して得られる330mlの上澄みを凍結乾燥して水可溶性の粉末状低分子化絹フィブロインを調製した。
【0047】
CLの作製
56.6重量部の2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、三菱レイヨン(株)製)、6.0重量部の先に調製した低分子化絹フィブロイン、6.9重量部のカチオン性のラジカル重合性単量体としてのN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)、3.0重量部のアニオン性のラジカル重合性単量体としてのメタクリル酸(MAA)、26.8重量部の水からなる組成物、及び架橋剤として作用する3ED(トリエチレングリコールジメタクリレート)0.6重量部、重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.1重量部を上記組成物に添加した後樹脂型に入れ、紫外線のエネルギーで重合反応を進めた。光源には三菱レイヨンエンジニアリング(株)製の紫外線ランプ(50W,80W/cm)を用いた。80W/cmの紫外線ランプを用い、ランプとサンプル間の距離を20cmにセットし、15分間紫外線を照射させることにより重合体を得た。重合後はCLの機械的ならびに光学的歪を除去するためアニーリングを80℃で16時間行った。
【0048】
カチオン性のラジカル重合性単量体を2−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(DQ−75)6.9重量部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(AEMA)6.9重量部にして実施例1と同様の方法でCLを作製したものをそれぞれ実施例2、3とする。
【0049】
実施例4
低分子化ケラチンの調製
メリノ種羊毛(64’S)に含まれる色素、脂肪分を、ベンゼン−エタノール50/50容積%の混合液を用い、ソックスレー抽出器で2.5時間処理することで除去した。実施例1と同様の方法で、10gの羊毛繊維を14容積%硫酸50ml中、60℃で12時間処理して加水分解し、粉末状の低分子化ケラチンを調製した。
【0050】
CLの作製
59.6重量部のHEMA、1.1重量部の低分子化ケラチン、7.3重量部のDMAPMA、3.1重量部のMAA、28.2重量部の水、0.6重量部の3ED、0.1重量部のAIBNからなる組成物を実施例1と同様の方法で重合し、CLを作製した。
【0051】
比較例1
フィブロイン繊維を臭化リチウムで溶解し、セルロース製透析膜で脱塩することで、調製した絹フィブロイン水溶液を水蒸気透過膜に入れて遅い蒸発速度で蒸発させて絹フィブロイン塊状物を製造し、この絹フィブロイン塊状物よりCLを作製した。
【0052】
比較例2
89.4重量部のHEMA、6.9重量部のDMAPMA、3.0重量部のMAA、0.6重量部の3ED、0.1重量部のAIBNからなる組成物を実施例1と同様の方法で重合しCLを作製した。
【0053】
比較例3
65.7重量部のHEMA、0.8重量部の低分子化絹フィブロイン、32.9重量部の8.5mol/L臭化リチウム水溶液、0.5重量部の3ED、0.1重量部のAIBNからなる組成物を実施例1と同様の方法で重合し、カチオン性のラジカル重合性単量体もアニオン性のラジカル重合性単量体も一切含まず低分子化絹フィブロインを含むCLを製造した。
【0054】
比較例4
59.6重量部のHEMA、6.0重量部の低分子化絹フィブロイン、6.9重量部のDMAPMA、26.8重量部の水、0.6重量部の3ED、0.1重量部のAIBNからなる組成物を実施例1と同様の方法で重合し、アニオン性のラジカル重合性単量体を含まず、カチオン性のラジカル重合性単量体と低分子化絹フィブロインを含むCLを作製した。
【0055】
比較例5
63.6重量部のHEMA、5.9重量部の低分子化絹フィブロイン、3.0重量部のMAA、26.8重量部の水、0.6重量部の3ED、0.1重量部のAIBNからなる組成物を実施例1と同様の方法で重合し、カチオン性のラジカル重合性単量体を含まず、アニオン性のラジカル重合性単量体と低分子化絹フィブロインを含むCLを製造した。
【0056】
【表1】
Figure 0003936999
【0057】
【表2】
Figure 0003936999
【0058】
【発明の効果】
本発明では、絹糸を溶解させるのに必要な中性塩を全く含有せずに、アニオン性のラジカル重合性単量体、カチオン性のラジカル重合性単量体がCL組成に含まれるので、両性イオンをもつ低分子化蛋白質との相溶性が改善され、かつ、アニオン性ラジカル単量体が含まれるため、製造されたCLの強度が上がり、光透過性に優れ、蛋白質汚れが起こりにくく、蛋白質が一旦付着しても除去しやすい特性を持つCLが製造できる。
【0059】
本発明のCL組成は、水を多量に含むので溶解できる低分子化蛋白質量を増すことができ、カチオン性のラジカル重合性単量体と低分子化蛋白質、あるいはアニオン性のラジカル重合性単量体と低分子化蛋白質との分子間相互作用を高めることができ、さらに分子親和性に基づく吸引性を向上させることができるので、高強度、高透明性、蛋白質汚れ量の軽減と除去率を増加させることができる。

Claims (9)

  1. 低分子化蛋白質、ビニル化合物、アミン類を有するカチオン性のラジカル重合性単量体、アニオン性のラジカル重合性単量体、水及び架橋剤からなる混合物をラジカル重合して得られる天然生体高分子を含有することを特徴とするコンタクトレンズ。
  2. 前記アミン類を有するカチオン性のラジカル重合性単量体が、三級アミンまたは四級アンモニウム塩を有するカチオン性のラジカル重合性単量体であることを特徴とする請求項1に記載の天然生体高分子を含有するコンタクトレンズ。
  3. 前記低分子化蛋白質が家蚕または野蚕由来の蛋白質であり、それを酸処理、アルカリ処理または酵素分解処理で加水分解した分子量160〜2000の絹蛋白質であることを特徴とする請求項1に記載の天然生体高分子を含有するコンタクトレンズ。
  4. 前記低分子化蛋白質が羊毛由来の蛋白質であり、それを酸処理またはアルカリ処理で加水分解した羊毛蛋白質であることを特徴とする請求項1に記載の天然生体高分子を含有するコンタクトレンズ。
  5. 前記三級アミンを有するラジカル重合性単量体が、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートまたはN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドであることを特徴とする請求項1に記載の天然生体高分子を含有するコンタクトレンズ。
  6. 前記四級アンモニウム塩を有するラジカル重合性単量体が、2−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドまたは2−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドであることを特徴とする請求項1に記載の天然生体高分子を含有するコンタクトレンズ。
  7. 前記アニオン性のラジカル重合性単量体が、カルボキシル基、スルホン基及びリン酸基より選ばれた少なくとも1種類のアニオン性基を有することを特徴とする請求項1に記載の天然生体高分子を含有するコンタクトレンズ。
  8. 前記架橋剤がエチレングリコールジメタクリレートまたはトリエチレングリコールジメタクリレートであることを特徴とする請求項1に記載の天然生体高分子を含有するコンタクトレンズ。
  9. 低分子化蛋白質、ビニル化合物、アミン類を有するカチオン性のラジカル重合性単量体、アニオン性のラジカル重合性単量体、水及び架橋剤からなる混合物をラジカル重合させることを特徴とする天然生体高分子を含有するコンタクトレンズの製造方法。
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