JP3935289B2 - パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、油圧制御弁の圧油流量をステッピングモータによって駆動される可変絞り弁により調整するパワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
油圧式のパワーステアリング装置では、操舵トルクに応じて開度が変化する複数の絞り部を有する油圧制御弁が備えられている。これにより、操舵トルクに応じた油圧が操舵補助力発生用油圧アクチュエータに伝達され、適切な操舵補助力が発生される。
【0003】
上記アクチュエータに作用する油圧に対する操舵抵抗の関係を車速や操舵角等の運転条件に応じて変化させるために、運転条件に応じて開度が変化する可変絞り弁を油圧制御弁に接続し、この可変絞り弁によって圧油流量を制御するようになっている。これにより、高速になる程に操舵の安定性を向上すると共に低速になる程に操舵の応答性を向上するようにして、運転条件に応じた適切な操舵補助が実現される。
【0004】
可変絞り弁は、ハウジングと、このハウジングに軸方向移動可能に挿入されたスプールと、このスプールに螺合するネジ部材とを有している。ネジ部材は、ステッピングモータによって回転されるようになっていて、このネジ部材の回転に伴ってスプールが軸方向に移動し、可変絞り弁の開度が変化する構成となっている。
【0005】
ステッピングモータは、図10に示すように、自己発熱による温度上昇に伴って発生トルクが減少することが知られている。発生トルクが不足して上記ネジ部材の駆動を良好に行うことができなくなれば、圧油流量の制御が不良になり、操舵フィーリングの悪化を招く。
そこで、従来では、ステッピングモータの作動デューティを、発熱を抑制できる一定値(たとえば、30%)として、ステッピングモータを駆動している。
【0006】
また、図11に示すように、ステッピングモータの発生トルクは、パルスレートが高くなるほど低くなる。そこで、従来では、ステッピングモータに与える駆動パルスのパルスレートを、発熱時であっても十分な発生トルクを確保できる一定値(たとえば、100PPS(Pulse Per second))として、ステッピングモータを駆動している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述のような制御では、車両が急加速または急減速するときの応答精度が悪く、そのために、操舵フィーリングの悪化を招いていた。
そこで、この発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、可変絞り弁駆動用のステッピングモータの発熱を抑制しながら、操舵フィーリングを向上できるパワーステアリング装置を提供することである。
【0008】
また、この発明の他の目的は、ステッピングモータの発熱状態に応じたパルスレートを設定することにより、応答精度の向上を図ったパワーステアリング装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、油圧制御弁の圧油流量をステッピングモータによって駆動される可変絞り弁により調整するパワーステアリング装置であって、制御周期毎に直前の所定時間中におけるステッピングモータへの通電時間を繰り返し計測する通電時間計測手段と、この通電時間計測手段により計測された通電時間に応じて、ステッピングモータの制御態様を変更する制御手段とを含み、この制御手段は、上記所定時間中の通電時間が予め定めるしきい値以下の場合には、上記ステッピングモータを高速駆動し、当該通電時間が上記しきい値を超える場合には、上記ステッピングモータを低速駆動するものであることを特徴とするパワーステアリング装置である。
【0010】
上記の構成によれば、直前の所定時間中におけるステッピングモータへの通電時間に応じて、ステッピングモータの制御態様が変更される。すなわち、直前の所定時間中の通電時間が予め定めるしきい値以下の場合には、ステッピングモータの温度がさほど高くないと考えられるから、ステッピングモータを高速駆動する。また、当該通電時間が当該しきい値を超える場合には、ステッピングモータの温度が高まっているおそれがあるので、ステッピングモータを低速駆動する。これにより、ステッピングモータの発熱を抑制でき、かつ、直前の期間の通電期間が短い限りにおいて、高速な応答性を確保できる。また、ステッピングモータの自己発熱を抑制できるので、減磁や潤滑油の揮発を抑制でき、これにより、ステッピングモータの寿命を長期化できる。
【0011】
請求項2記載の発明は、上記制御手段は、上記通電時間計測手段により計測された通電時間が、予め定めるしきい値以下の場合には、第1の作動デューティで上記ステッピングモータを駆動し、上記通電時間が上記しきい値を超えている場合には、上記第1の作動デューティよりも小さな第2の作動デューティで上記ステッピングモータを駆動するものであることを特徴とする請求項1記載のパワーステアリング装置である。
【0012】
この構成によれば、直前の所定時間中の通電時間がしきい値以下の場合には、比較的大きな第1の作動デューティによりステッピングモータが高速に駆動され、通電時間がしきい値を超えている場合には、比較的小さな第2の作動デューティでステッピングモータが駆動される。これにより、ステッピングモータの自己発熱を抑制しながら、操舵フィーリングの向上が図られる。
【0013】
請求項3記載の発明は、上記制御手段は、上記通電時間計測手段により計測された通電時間が、予め定めるしきい値以下の場合には、第1のパルスレートで上記ステッピングモータを駆動し、上記通電時間が上記しきい値を超えている場合には、上記第1のパルスレートよりも小さな第2のパルスレートで上記ステッピングモータを駆動するものであることを特徴とする請求項1または2記載のパワーステアリング装置である。
【0014】
この構成によれば、直前の所定時間中の通電時間がしきい値以下の場合には、比較的大きな第1のパルスレートによりステッピングモータが高速に駆動され、通電時間がしきい値を超えている場合には、比較的小さな第2のパルスレートでステッピングモータが低速に駆動される。これにより、低温時には、応答精度の高い絞り弁の開度調整が可能になり、ステッピングモータが高温になっているおそれがある時には、絞り弁の駆動のために十分なトルクが確実に発生される。これに加えて、ステッピングモータの自己発熱が抑制されるから、ステッピングモータの長寿命化にも寄与できる。
【0015】
車両の通常の走行状態では、たとえば、60秒の期間内に、5秒程度の時間だけ、ステッピングモータへの通電が行われる。このような通常の状態では、ステッピングモータの自己発熱は少ない。したがって、上述のしきい値をたとえば、15秒程度に設定しておけば、車速に応じて可変絞り弁の開度を変更することとしている場合に、車両が急加速または急減速する際には、ステッピングモータを高速に駆動して、応答精度の高い制御を実現できる。したがって、急加速時または急減速時の操舵フィーリングを向上できる。
【0016】
一方、急加速/急減速が繰り返されるような状況では、一定時間内におけるステッピングモータへの通電時間が長くなるが、このような場合には、作動デューティおよび/またはパルスレートを小さくすることにより、ステッピングモータの自己発熱が抑制され、可変絞り弁の確実な動作が確保される。
なお、所定時間中の通電時間の計測を、たとえば20秒ごとの移動平均値として求めることにより、制御精度の向上を図ってもよい。この場合、最初の計測のみ、たとえば60秒間の計測とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るラックピニオン式油圧パワーステアリング装置1の構成を示す断面図である。このパワーステアリング装置1は、車両のハンドル(図示省略)に連結される入力軸2と、この入力軸2にトーションバー6を介し連結される出力軸3とを備えている。トーションバー6は、ピン4により入力軸2に連結され、セレーション5により出力軸3に連結されている。入力軸2は、ベアリング8を介しバルブハウジング7により支持され、また、ベアリング12を介して出力軸3により支持されている。出力軸3はベアリング10、11を介してラックハウジング9により支持されている。
【0018】
出力軸3には、ピニオン15が形成されており、このピニオン15に噛み合うラック16に操舵用車輪(図示省略)が連結されている。これにより、操舵による入力軸2の回転は、トーションバー6を介してピニオン15に伝達され、このピニオン15の回転がラック16の車両幅方向移動に変換されて、操舵用車輪の転舵が達成される。
【0019】
操舵補助力発生用油圧アクチュエータとして油圧シリンダ20が設けられている。この油圧シリンダ20は、ラックハウジング9により構成されるシリンダチューブと、ラック16に一体化されたピストン21とを備えている。ピストン21により仕切られる油室22、23に、操舵方向と操舵抵抗とに応じて圧油を供給するために、ロータリー式油圧制御弁30が設けられている。
【0020】
この油圧制御弁30は、バルブハウジング7に相対回転可能に挿入されている筒状の第1バルブ部材31と、この第1バルブ部材31に同軸中心に相対回転可能に挿入されている第2バルブ部材32とを備えている。第1バルブ部材31は、出力軸3に、同行回転するよう連結されている。また、第2バルブ部材32は、入力軸2と一体的に成形されている。すなわち、入力軸2の外周部により第2バルブ部材32が構成され、第2バルブ部材32は入力軸2と同行回転する。よって、第1バルブ部材31と第2バルブ部材32とは、操舵抵抗に応じて前記トーションバー6がねじれることで、同軸中心に相対回転する。
【0021】
バルブハウジング7には、ポンプ70に接続される入口ポート34と、油圧シリンダ20の一方の油室22に接続される第1ポート37と、他方の油室23に接続される第2ポート38と、直接にタンク71に接続される第1出口ポート36と、後述の可変絞り弁60を介しタンク71に接続される第2出口ポート61とが設けられている。各ポート34、36、37、38、61は、第1バルブ部材31と第2バルブ部材32との内外周間の弁間流路27を介して互いに接続されている。
【0022】
すなわち、図2に示すように、第1バルブ部材31の内周に8ケの凹部50a、50b、50cが周方向に関し互いに等間隔に形成され、第2バルブ部材32の外周に8ケの凹部51a、51b、51cが周方向に関し互いに等間隔に形成されている。そして、第1バルブ部材31に形成された凹部50a、50b、50cの間に第2バルブ部材32に形成された凹部51a、51b、51cが位置している。
【0023】
第1バルブ部材31に形成された凹部は、2ケの右操舵用凹部50aと、2ケの左操舵用凹部50bと、4ケの連絡用凹部50cとを構成する。2ケの右操舵用凹部50aは、第1バルブ部材31に形成された流路53と第1ポート37とを介して油圧シリンダ20の右操舵補助力発生用油室22に接続され、互いに周方向に180°離れて配置されている。また、2ケの左操舵用凹部50bは、第1バルブ部材31に形成された流路54と前記第2ポート38とを介して油圧シリンダ20の左操舵補助力発生用油室23に接続され、互いに周方向に180°離れて配置されている。
【0024】
第2バルブ部材32に形成された凹部は、4ケの圧油供給用凹部51aと、2ケの第1圧油排出用凹部51bと、2ケの第2圧油排出用凹部51cとを構成する。4ケの圧油供給用凹部51aは、第1バルブ部材31に形成された圧油供給路55と入口ポート34とを介しポンプ70に接続され、互いに周方向に90°離れて配置されている。2ケの第1圧油排出用凹部51bは、入力軸2に形成された流路52aから入力軸2とトーションバー6との間を通り、入力軸2に形成された流路52b(図1参照)と第1出口ポート36とを介してタンク71に接続され、互いに周方向に180°離れて配置されている。2ケの第2圧油排出用凹部51cは、第1バルブ部材31に形成された流路59と第2出口ポート61とを介して可変絞り弁60に接続され、互いに周方向に180°離れて配置されている。
【0025】
各第1圧油排出用凹部51bは右操舵用凹部50aと左操舵用凹部50bとの間に配置され、各第2圧油排出用凹部51cは連絡用凹部50cの間に配置され、右操舵用凹部50aと連絡用凹部50cとの間および左操舵用凹部50bと連絡用凹部50cとの間に圧油供給用凹部51aが配置されている。
第1バルブ部材31に形成された凹部50a、50b、50cの軸方向に沿う縁と第2バルブ部材32に形成された凹部51a、51b、51cの軸方向に沿う縁との間が絞り部A、A′、B、B′、C、C′、D、D′を構成する。このように、各絞り部A、A′、B、B′、C、C′、D、D′はポンプ70とタンク71と油圧シリンダ20とを接続する弁間流路27に配置されている。
【0026】
第1バルブ部材31と第2バルブ部材32との間の各絞り部は、複数の絞り部A、B、C、Dからなる第1の組と、第1の組に属する各絞り部A、B、C、Dよりも閉鎖角度の大きな複数の絞り部A′、B′、C′、D′からなる第2の組とに組分けされる。また、第2の組に属する絞り部は、圧油供給用凹部51aと連絡用凹部50cとの間の絞り部A′、C′と、この絞り部A′、C′よりも閉鎖角度の大きな連絡用凹部50cと第2圧油排出用凹部51cとの間の絞り部B′、D′の2種類とされる。
【0027】
入力軸2と出力軸3は、路面から操舵用車輪を介して伝達される抵抗によるトーションバー6のねじれによって相対回転する。この相対回転により第1バルブ部材31と第2バルブ部材32とが相対回転することで、各絞り部A、B、C、D、A′、B′、C′、D′の流路面積が変化し、油圧シリンダ20が、操舵方向と操舵抵抗に応じた操舵補助力を発生する。第1の組に属する絞り部A、B、C、Dは第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′よりも、閉鎖角度が小さいので、その操舵抵抗の変化に対する油圧変化割合は大きくなる。
【0028】
操舵が行われていない状態では、両バルブ部材31、32の間の絞り部A、B、C、D、A′、B′、C′、D′は全て開かれ、入口ポート34と各出口ポート36、61とは弁間流路27を介して連通する。したがって、ポンプ70から油圧制御弁30に流入する油はタンク71に還流し、操舵補助力は発生しない。この状態から右方へ操舵することによって生じる操舵抵抗により両バルブ部材31、32が相対回転すると、図2に示すように、圧油供給用凹部51aと右操舵用凹部50aとの間の絞り部Aおよび左操舵用凹部50bに隣接する圧油供給用凹部51aと連絡用凹部50cとの間の絞り部A′の流路面積が大きくなり、右操舵用凹部50aと第1圧油排出用凹部51bとの間の絞り部Bおよび左操舵用凹部50bに隣接する圧油供給用凹部51aに隣接する連絡用凹部50cと第2圧油排出用凹部51cとの間の絞り部B′の流路面積が小さくなり、圧油供給用凹部51aと左操舵用凹部50bとの間の絞り部Cおよび右操舵用凹部50aに隣接する圧油供給用凹部51aと連絡用凹部50cとの間の絞り部C′の流路面積が小さくなり、左操舵用凹部50bと第1圧油排出用凹部51bとの間の絞り部Dおよび右操舵用凹部50aに隣接する圧油供給用凹部51aに隣接する連絡用凹部50cと第2圧油排出用凹部51cとの間の絞り部D′の流路面積が大きくなる。これにより、図中矢印で示す圧油の流れにより油圧シリンダ20の右操舵補助力発生用油室22に操舵方向と操舵抵抗に応じた圧力の圧油が供給され、また、左操舵補助力発生用油室23からタンク71に油が還流し、車両の右方への操舵補助力が油圧シリンダ20からラック16に作用する。
【0029】
左方へ操舵すると、第1バルブ部材31と第2バルブ部材32とは、右方に操舵した場合と逆方向に相対回転し、絞り部A、A′の流路面積が小さくなり、絞り部B、B′の流路面積が大きくなり、絞り部C、C′の流路面積が大きくなり、絞り部D、D′の流路面積が小さくなる。よって、車両の左方への操舵補助力が油圧シリンダ20からラック16に作用する。
【0030】
図3に拡大して示すように、第2出口ポート61に連通する可変絞り弁60は、バルブハウジング7に接続された第2バルブハウジング7′と、この第2バルブハウジング7′に形成された挿入孔66に軸方向(図1および図3において上下方向)に移動可能に挿入されたスプール62とを有する。
スプール62には、通孔62dが形成されており、この通孔62dの内周下部に雌ねじ孔62d′が形成され、この雌ねじ孔62d′にねじ合わされるネジ部材64が設けられている。
【0031】
挿入孔66の一端は、プラグ68がシールを介しねじ込まれることで閉鎖されている。挿入孔66の他端は、第2バルブハウジング7′に形成されたアクチュエータ室72に、第2支持孔73を介して連絡している。この第2支持孔73に、上記ネジ部材64が挿通されている。
アクチュエータ室72には、ネジ部材64を回転駆動するステッピングモータ80が内蔵されている。このステッピングモータ80の出力シャフト80aにブロック91が圧入され、そのブロック91にネジ部材64の端部が凹部64aを介して嵌め合わされている。これにより、ステッピングモータ80の出力シャフト80aの回転がネジ部材64に伝達されるようになっている。
【0032】
ステッピングモータ80を駆動制御するためのコントローラ63は、車速センサ105に接続され、ステッピングモータ80を車速に応じて制御する。すなわち、高速になるとネジ部材64は一方向に回転されてスプール62は図中下方に変位し、低速になるとネジ部材64は他方向に回転されてスプール62は図中上方に変位する。
【0033】
スプール62の外周には周溝62aが形成され、挿入孔66の内周には周溝66aが形成され、両周溝62a、66aの間に絞り部67が形成されている。この絞り部67の開度は、車速が高速になってスプール62が図中下方に変位すると大きくなり、車速が低速になってスプール62が上方に変位すると小さくなる。
【0034】
第2バルブハウジング7′には、挿入孔66の内周の周溝66aと第2出口ポート61とを連通する連絡流路58が形成されている。また、スプール62の外周の周溝62aとスプール62の通孔62dとを連通する径方向孔62cがスプール62に形成されていて、通孔62dはスプール62の上方空間に連絡している。そして、スプール62の上方空間と第1出口ポート36とを連通する流路76が、バルブハウジング7と第2バルブハウジング7′とに亘って形成されている。これにより、ポンプ70から供給される圧油は、弁間流路27および第2出口ポート61から連絡流路58に導かれ、この連絡流路58から絞り部67に至り、この絞り部67から第1出口ポート36を介しタンク71に至る。なお、スプール62には通孔62dと平行にドレン流路62hが形成されていて、スプール62の上方空間と下方空間とを接続している。
【0035】
プラグ68とスプール62の一端との間には、圧縮コイルバネ90が配置され、バネ90によってスプール62に軸方向の弾力が付与されている。
このような構成により、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′とタンク71との間の油路の流路面積が、車速に応じた可変絞り弁60の作動により変化する。すなわち、第1の組に属する絞り部A、B、C、Dにより制御される圧油流量の、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′により制御される圧油流量に対する割合が、可変絞り弁60の作動により変化する。
【0036】
低速走行時においては、スプール62は図1および図3において上方に変位し、これにより可変絞り弁60の絞り部67は全閉状態になる。この場合、操舵入力トルクが小さく、両バルブ部材31、32の相対回転角が小さくても、第1の組に属する絞り部A、B、C、Dの流路面積を小さくし、操舵補助力を発生させる油圧の増加割合を大きくし、低速走行時における操舵の高応答性を満足させることができる。
【0037】
高速走行時においては、スプール62は図1および図3において下方に変位し、これによって可変絞り弁60の絞り部67の流路面積は、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の全流路面積の最大値以上になる。この場合、操舵入力トルクを大きくし、両バルブ部材31、32の相対回転角を大きくしない限り、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の流路面積は小さくなることなく大きく保持され、操舵補助力を発生させる油圧の増加割合は小さいので、高速走行時における操舵の安定性を満足させることができる。
【0038】
中速走行時においては、スプール62の変位により可変絞り弁60の絞り部67の流路面積は、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の全流路面積の最小値よりも大きくその最大値よりも小さくなる。これにより、操舵補助力は、操舵抵抗に応じて制御されることになる。
図4は、コントローラ63に関連する電気的構成を示すブロック図である。コントローラ63(制御手段)は、マイクロコンピュータ101と、ステッピングモータ80に駆動パルスを与える駆動回路102とを備えている。また、マイクロコンピュータ101は、ステッピングモータ80への通電時間を計測するための計測部103(通電時間計測手段)を備えている。
【0039】
この構成により、コントローラ63は、車速センサ105の出力信号から得られる車速情報に基づいて、可変絞り弁60の開度を車速に応じて制御すべく、ステッピングモータ80を制御する。図5には、ステッピングモータ80の回転位置(ステップ数)と車速との関係の一例を示す。ステッピングモータ80の回転位置は可変絞り弁60の開度に1対1に対応するから、このような制御によって、車速に応じた適切な操舵補助力を発生させることができる。
【0040】
図6は、この実施形態におけるステッピングモータ80の通電制御処理を説明するためのフローチャートである。この処理は、マイクロコンピュータ101によって一定の制御周期(たとえば、20秒)毎に繰り返し実行される。
まず、計測部103により、直前の所定時間(たとえば60秒)内におけるステッピングモータ80への通電時間PT(通電時間の総和)が計測される(ステップS1)。車両がほぼ定速で走行している場合には、ステッピングモータ80の回転位置はほぼ一定に保持されるから、ステッピングモータ80への通電時間PTは短くなる。一方、車両が急加速/急減速を繰り返すような場合には、ステッピングモータ80への通電時間PTが長くなる。
【0041】
次に、マイクロコンピュータ101は、上記計測された通電時間PTが、予め定めるしきい値Th(たとえば15秒)以下かどうかを判断する(ステップS2)。マイクロコンピュータ101は、通電時間PTがしきい値Th以下であれば、ステッピングモータ80の自己発熱が少ないものと見なして、ステッピングモータ80の作動デューティを100%(第1の作動デューティ)に設定する(ステップS3)。一方、通電時間PTがしきい値Thを超えていれば、マイクロコンピュータ101は、ステッピングモータ80の自己発熱が多いものと見なして、ステッピングモータ80の作動デューティを25%(第2の作動デューティ)に設定する(ステップS4)。
【0042】
このようにして定められた作動デューティにより、次の制御周期での車速感応型制御が行われる(ステップS5)。すなわち、マイクロコンピュータ101は、当該設定された作動デューティでステッピングモータ80を駆動し、このステッピングモータ80の回転位置を車速に応じた位置に制御する。作動デューティは、制御周期(たとえば20秒)ごとに更新されることになる。
【0043】
なお、イグニッションスイッチがオンされてコントローラ63に電源が供給された直後には、マイクロコンピュータ101は、作動デューティを100%に設定する。
図7(a)は、作動デューティを100%としたときのステッピングモータ80の動作例を示す図であり、図7(b)は、作動デューティを25%としたときの動作例を示す図である。いずれも、ステッピングモータ80の回転位置を「2ステップ」から「5ステップ」へと変化させる場合の動作例を示している。斜線部分は、ステッピングモータ80への通電状態を表しており、この期間の長さが計測部103によって計測される。
【0044】
たとえば、駆動回路102からステッピングモータ80に与えられる駆動パルスのパルスレートが100PPS(Pulse Per Second)に設定されているとすると、10msec毎に駆動パルスが発生され、ステッピングモータ80の回転位置が変化する。したがって、作動デューティが100%であれば、40msecで「2ステップ」から「5ステップ」へとステッピングモータ80の回転位置が変化する。
【0045】
これに対して、作動デューティ25%のときには、マイクロコンピュータ101は、2パルス周期分(20msec)だけ駆動パルスを発生した後に6パルス周期分(60msec)の休止期間(駆動パルスが出力されない期間)がおかれるように、駆動回路102を制御する。これにより、全体で1/4の期間だけステッピングモータ80に通電されることになり、25%の作動デューティが達成される。
【0046】
ステッピングモータ80を停止状態から再び回転させるときには、最初に、停止直前と同じ励磁パターンの駆動パルスが与えられるので、2パルス周期分の駆動により、ステッピングモータ80の回転位置は、1ステップだけ変化する。よって、「2ステップ」から「5ステップ」への移行には、180msecの時間を要することになる。
【0047】
以上のようにこの実施形態によれば、所定時間内の通電時間PTがしきい値Th以であれば作動デューティを100%として高い応答精度でステッピングモータ80を駆動制御し、所定時間内の通電時間PTがしきい値Thを超える場合には作動デューティを25%としてステッピングモータ80の発熱を抑制するようにしている。これにより、ステッピングモータ80の発熱を抑制しつつ、急加速および急減速時における良好な操舵フィーリングを達成できる。また、ステッピングモータ80の発熱が抑制されることにより、ステッピングモータ80の減磁を抑制でき、また、ステッピングモータ80内外の潤滑油の揮発を抑制できるので、ステッピングモータ80の寿命を長くすることができるという効果をも奏することができる。
【0048】
なお、この実施形態では、第1の作動デューティを100%とし、第2の作動デューティを25%としているが、これらの値は必要に応じて適当な他の値に定められてもよい。この場合に、第1の作動デューティは、良好な応答精度が得られる値に定めればよい。また、第2の作動デューティは、ステッピングモータ80の発熱を抑制してステッピングモータ80の温度をその発生トルクがネジ部材64の駆動に十分な値を下回ることのない温度に保持できるように定められればよい。
【0049】
図8は、この発明の第2の実施形態に係るパワーステアリング装置における可変絞り弁駆動用のステッピングモータの通電制御を説明するためのフローチャートである。この実施形態の説明では、上述の図1ないし図5を再び参照することとする。また、図8において、上述の図6に示された各ステップと同様の処理が行われる各ステップには、図6の場合と同じ参照符号を付して示す。
【0050】
この図8のフローチャートの処理は、一定の制御周期(たとえば、20秒)ごとに、マイクロコンピュータ101によって繰り返し実行される。
この実施形態では、直前の所定時間(たとえば、60秒)におけるステッピングモータ80への通電時間PTがしきい値Th(たとえば、15秒)以下である場合には(ステップS2でYES)、パルスレートが200PPS(第1のパルスレート)に設定され(ステップS13)、通電時間PTがしきい値Thを超える場合には(ステップS2でNO)、パルスレートが100PPS(第2のパルスレート)に設定される(ステップS14)。
【0051】
そして、マイクロコンピュータ101は、設定されたパルスレートで駆動パルスが発生されるように駆動回路102を制御し、ステッピングモータ80の回転位置を車速に応じた回転位置へと導く(ステップS15)。
図9(a)は、パルスレートを200PPSとしたときのステッピングモータ80の動作例を示す図であり、図9(b)は、パルスレートを100PPSとしたときの動作例を示す図である。いずれも、ステッピングモータ80の回転位置を「2ステップ」から「5ステップ」へと変化させる場合の動作例を示している。斜線部分は、ステッピングモータ80への通電状態を表している。
【0052】
パルスレートが200PPSの場合には、駆動パルスの発生周期は、5msecとなる。したがって、20msecで「2ステップ」から「5ステップ」へと回転位置が変化する(図9(a))。
一方、パルスレートが100PPSの場合には、駆動パルスの発生周期は、10msecとなる。したがって、40msecで「2ステップ」から「5ステップ」へと回転位置が変化する(図9(b))。
【0053】
上述の図11に示すように、ステッピングモータの発生トルクは、駆動パルスのパルスレートが高くなるほど小さくなり、ステッピングモータが自己発熱により高温になっている状態では、発生トルクが所要のトルクを下回るおそれがある。
そこで、この実施形態では、直前の所定時間内の通電時間PTがしきい値Th以下である場合には、ステッピングモータ80の自己発熱が少ないと見なし、高いパルスレート(200PPS)でステッピングモータ80を高速に駆動することとし、通電時間PTがしきい値Thを超える場合には、ステッピングモータ80が自己発熱のために高温になっているおそれがあると見なして、低いパルスレート(100PPS)でステッピングモータ80の発生トルクを所要の値以上に維持するようにしている。
【0054】
これにより、急加速および急減速時における可変絞り弁60の制御を良好な応答性で行えるので良好な操舵フィーリングを実現できる。また、通電時間PTに応じて適切なパルスレートが設定されるので、ステッピングモータ80の自己発熱を効果的に抑制することができ、これにより、ステッピングモータ80の長寿命化を図ることができる。
【0055】
なお、上述の第1および第2のパルスレートの値は、一例にすぎない。すなわち、第1のパルスレートは、良好な応答性が得られる適切な値に設定されればよく、また、第2のパルスレートはネジ部材64を駆動するのに十分なトルクが得られる適切な値に定められればよい。
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。たとえば、上述の図6および図8の制御内容を組み合わせて、直前の所定時間内におけるステッピングモータ80への通電時間PTがしきい値Th以である場合には、パルスレートを高く(たとえば200PPS)設定するとともに作動デューティを高く(たとえば100%)設定することとし、当該通電時間PTがしきい値Thを超える場合には、パルスレートを低く(たとえば100PPS)設定するとともに作動デューティを低く(たとえば25%)設定するようにしてもよい。
【0056】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る油圧パワーステアリング装置の縦断面図である。
【図2】上記油圧パワーステアリング装置の油圧制御弁の横断面構造を示す断面図である。
【図3】上記油圧制御弁に接続された可変絞り弁の構成を拡大して示す縦断面図である。
【図4】コントローラに関連する電気的構成を示すブロック図である。
【図5】ステッピングモータの回転位置(ステップ数)と車速との関係の一例を示す図である。
【図6】ステッピングモータの通電制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】 (a)は、作動デューティを100%としたときのステッピングモータの動作例を示す図であり、(b)は、作動デューティを25%としたときの動作例を示す図である。
【図8】この発明の第2の実施形態に係るパワーステアリング装置における可変絞り弁駆動用のステッピングモータの通電制御を説明するためのフローチャートである。
【図9】 (a)は、パルスレートを200PPSとしたときのステッピングモータの動作例を示す図であり、(b)は、パルスレートを100PPSとしたときの動作例を示す図である。
【図10】ステッピングモータの温度−トルク特性例を示す図である。
【図11】ステッピングモータのパルスレート−トルク特性例を示す図である。
【符号の説明】
1 パワーステアリング装置
20 油圧シリンダ
21 ピストン
30 油圧制御弁
60 可変絞り弁
62 スプール
63 コントローラ
64 ネジ部材
80 ステッピングモータ
101 マイクロコンピュータ
102 駆動回路
103 計測部
105 車速センサ

Claims (3)

  1. 油圧制御弁の圧油流量をステッピングモータによって駆動される可変絞り弁により調整するパワーステアリング装置であって、
    制御周期毎に直前の所定時間中におけるステッピングモータへの通電時間を繰り返し計測する通電時間計測手段と、
    この通電時間計測手段により計測された通電時間に応じて、ステッピングモータの制御態様を変更する制御手段とを含み、
    この制御手段は、上記所定時間中の通電時間が予め定めるしきい値以下の場合には、上記ステッピングモータを高速駆動し、当該通電時間が上記しきい値を超える場合には、上記ステッピングモータを低速駆動するものであることを特徴とするパワーステアリング装置。
  2. 上記制御手段は、上記通電時間計測手段により計測された通電時間が、予め定めるしきい値以下の場合には、第1の作動デューティで上記ステッピングモータを駆動し、上記通電時間が上記しきい値を超えている場合には、上記第1の作動デューティよりも小さな第2の作動デューティで上記ステッピングモータを駆動するものであることを特徴とする請求項1記載のパワーステアリング装置。
  3. 上記制御手段は、上記通電時間計測手段により計測された通電時間が、予め定めるしきい値以下の場合には、第1のパルスレートで上記ステッピングモータを駆動し、上記通電時間が上記しきい値を超えている場合には、上記第1のパルスレートよりも小さな第2のパルスレートで上記ステッピングモータを駆動するものであることを特徴とする請求項1または2記載のパワーステアリング装置。
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