JP3934533B2 - ブラシレスモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体ポンプ装置等に用いられるブラシレスモータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の流体ポンプ装置等は、ブラシレスモータを用いたものがある。ブラシレスモータは、放射状に延びるように複数設けられるティースを有するステータコアと、前記ティースに巻装される巻線と、ステータコアの内側に回転可能に配設されるロータとを備える。そして、このようなブラシレスモータにおいて、ステータコアとロータとの間には、それらを仕切る(隔てる)キャンが配設される。尚、上記キャンとしては、ステンレス鋼板(SUS)等の非磁性材料よりなるもの(例えば、特許文献1参照)や、樹脂材料よりなるものがある。このようなブラシレスモータ(流体ポンプ装置等)では、ステータコアとロータとがキャンにて仕切られるため、ロータが液体に浸かっていてもステータ側の巻線や電気的接続部分が被水する(液体がかかる)といったことが防止される。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−317682号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ステンレス鋼板(SUS)等の非磁性材料よりなるキャンを用いた場合、駆動時に渦電流が発生することから、それに伴って大きな損失が生じることになる。又、樹脂材料よりなるキャンを用いた場合、キャンの強度(耐圧性)を確保すべくその厚みを厚くすることになり、エアギャップが大きくなることから、有効磁束密度(実際に働く磁力)が減少してしまうことになる。よって、上記のようなブラシレスモータでは効率が低くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、キャンを有するブラシレスモータにおいて、その効率を向上させることができるブラシレスモータを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、放射状に延びるように複数設けられるティースを有するステータコアと、前記ティースに巻装される巻線と、前記ステータコアの内側に回転可能に配設されるロータと、前記巻線と前記ロータとを隔てるためのキャンとを備えたブラシレスモータにおいて、前記各ティースの各径方向内側端部を連結する円筒部の一端に該円筒部の一端を封鎖する底部を一体形成し、該円筒部及び該底部により前記キャンを構成し、前記ティース、前記円筒部及び前記底部を、磁性粉体を用いて一体成形した。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のブラシレスモータにおいて、前記底部の厚さを、前記円筒部の厚さより厚くした。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のブラシレスモータにおいて、前記ティース、前記円筒部及び前記底部を、前記磁性粉体及び前記磁性粉体を結合させるための樹脂材料よりなる結合材にて一体成形するとともに、前記底部における前記結合材の比率を、その他の箇所における前記結合材の比率より多くした。
【0009】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、各ティースの各径方向内側端部を連結する円筒部の一端に該円筒部の一端を封鎖する底部が一体形成され、該円筒部及び該底部によりキャンが構成される。よって、ステータコアと非磁性材料よりなるキャンとを別体で構成したブラシレスモータに比べて渦電流による損失を低減することができる。又、ステータコアと樹脂材料よりなるキャンとを別体で構成したブラシレスモータに比べてエアギャップを小さくすることができ有効磁束密度を増加させることができる。
【0010】
また、前記ティース、前記円筒部及び前記底部は、磁性粉体が用いられて一体成形される。このようにすると、複雑な形状であるティース、円筒部及び底部を有する一部材を容易に形成することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、底部の厚さは、円筒部の厚さより厚くされる。ここで、円筒部はティースの各径方向内側端部にて比較的強度が高くなる。そして、底部の厚さが円筒部の厚さより厚くされることで、底部の強度が確保される。よって、このようにすると、エアギャップを小さくしながら、キャンの強度(耐圧性)を確保することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、ティース、前記円筒部及び前記底部は、前記磁性粉体及び前記磁性粉体を結合させるための樹脂材料よりなる結合材にて一体成形される。そして、底部における結合材の比率は、その他の箇所における結合材の比率より多くされるため、底部での磁気通過が抑制され、モータの効率が向上される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を流体ポンプ装置に具体化した一実施の形態を図1〜図5に従って説明する。図1に示すように、流体ポンプ装置は、第1及び第2ケース1,2と、ブラシレスモータ3とを備える。
【0014】
第1ケース1は、円盤部1aと、円盤部1aの外縁から立設した第1筒部1bとからなる。第2ケース2は、その基端部が第1筒部1bと連続するように固定される第2筒部2aと、第2筒部2aの先端部から径方向内側に延びる内延部2bと、内延部2bの内縁から第2筒部2aと同軸方向に延びる小径筒部2cとからなる。この小径筒部2cにおいて、軸方向の中間部には該小径筒部2c内を仕切るように内部円盤部2dが形成され、その内部円盤部2dには、外部と軸方向に連通する吸入口2eが形成されている。又、小径筒部2cにおいて、軸方向の基端側(図1中、右側)には、外部と径方向に連通する吐出口2fが形成されている。
【0015】
ブラシレスモータ3は、ステータ4とロータ5とを備える。ステータ4は、図2〜図5に示すように、ステータコア6と巻線7とを備える。尚、図2〜図5では、3組(U相、V相、W相)ある内の1組の巻線7のみ図示し、他の組のものは同様であるため図示及びその詳細な説明を省略する。ステータコア6は、図3に示すように、インナコア8とアウタコア9とからなる。
【0016】
インナコア8は、放射状に延びるように複数設けられるティース10と、各ティース10の各径方向内側端部(基端部)を連結する円筒部11と、円筒部11の軸方向の一端を封鎖する底部12とが一体形成されてなる。そして、本実施の形態では、円筒部11及び底部12とによりキャンが構成されている。又、本実施の形態では、ティース10は18個形成されている。
【0017】
ティース10の径方向外側端部(先端部)には、先端に向かうほど幅が広くなる楔状の係止凸部10aが形成されている。又、底部12の底面には円筒状の支持筒部12a(図1及び図5参照)が立設されている。又、底部12の厚さは、円筒部11の厚さより厚く設定されている(図1参照)。尚、図1及び図5では、円筒部11の厚さを実際より厚く(模式的に)図示している。このインナコア8は、磁性粉体が用いられて一体成形される。詳しくは、インナコア8は、磁性粉体及び磁性粉体を結合させるための樹脂材料よりなる結合材にて一体成形(圧縮成形)されている。そして、底部12における結合材の比率は、その他の箇所(ティース10、円筒部11)における結合材の比率より多くされて成形されている。
【0018】
アウタコア9は、ティース10の各径方向外側端部を連結すべく円筒状に形成されている。アウタコア9の内周側には、前記係止凸部10aと係止可能な係止凹部9aが形成されている。そして、アウタコア9は、係止凹部9aに係止凸部10aが嵌合されることで、インナコア8に固定される。
【0019】
巻線7は、ティース10に巻装される。詳しくは、3組(U相、V相、W相)ある内の1組(1つの相)の巻線7は、離間した(隣り合わない)ティース10に連続して(1本で)巻装される。本実施の形態では、1組(1つの相)の巻線7は、隣り合う3つのティース10に巻装されるとともに、180度反対側の3つのティース10に巻装される。そして、巻線7において、離間したティース10に渡る渡り線7aは、前記底部12に沿って配設される。この渡り線7aは、直線的に(底部12の中央を通って)配設される。又、渡り線7aの中央には、導線を一回転させることでテンション調整リング部7bが形成されている。本実施の形態の巻線7は、ティース10に巻装する前に、図3に示すように、図示しない治具にて巻装されることで、予めサブアッセンブリ化されている。尚、サブアッセンブリ化された巻線7において、テンション調整リング部7bは、その径が小さく設定されている(図3では、テンション調整リング部7bの径が小さくされていない状態の巻線7を示す。)。そして、テンション調整リング部7bの径が小さく設定されることで渡り線7aが長くされたサブアッセンブリ状態の巻線7は、まず一方(隣り合う3つのティース10に対応した一方)が3つのティース10に嵌め合わ(装着)される。そして、次に他方が180度反対側の3つのティース10に嵌め合わされるとともに、テンション調整リング部7bの径が治具等により大きくされることで、渡り線7aの長さが短くされ(たるみが解消され)、上記したように配設される(図2及び図4参照)。尚、1組(1つの相)の巻線7の一端7c(図5参照)はその相に応じた電源端子に接続され、他端7d(図5参照)は他の相の巻線における同様の他端(図示しない)に接続される。又、前記アウタコア9は、3組の巻線7が全てのティース10に巻装された後、前記インナコア8に固定されることになる。
【0020】
上記のように構成されたステータ4は、図1に示すように、第1及び第2ケース1,2内部に収容保持される。このとき、ステータ4は、その円筒部11の他端部(底部12が形成されない側端部)が第2ケース2における内延部2bの内縁に液密に固定される。
【0021】
ロータ5は、図1に示すように、略円筒形状の本体部21の外周に複数(本実施の形態では、16個)のマグネット22が固定されてなる。又、ロータ5の軸方向一端側には、軸方向の液体を吸い込み径方向に導くための遠心ファン23が固定されている。このロータ5は、前記第2ケース2の内部円盤部2dと底部12の支持筒部12aとに支持された固定シャフト24に回転可能に支持される。尚、このとき、マグネット22は、前記ティース10の径方向内側端部(基端部であって、円筒部11)と対向配置される。又、図1では、マグネット22と円筒部11との間隔を実際より大きく(模式的に)図示している。
【0022】
上記のように構成された流体ポンプ装置では、図示しない制御装置から各組の巻線7に3相(U相、V相、W相)の駆動電流が供給されることで回転磁界が発生され、該回転磁界に応じてロータ5が回転駆動される。すると、ロータ5と共に遠心ファン23が回転し、吸入口2eから液体が吸入されるとともに吐出口2fから液体が吐出される(図1中、矢印参照)。尚、このとき、ロータ5が収容される円筒部11及び底部12から構成されるキャンの内部には液体が浸入することになるが、該キャンによりステータ4の巻線7やその電気的接続部分(一端7cや他端7d)が被水するといったことは防止される。
【0023】
次に、上記実施の形態の特徴的な作用効果を以下に記載する。
(1)各ティース10の各径方向内側端部(基端部)を連結する円筒部11の一端に該円筒部11の一端を封鎖する底部12が一体形成され、該円筒部11及び該底部12によりキャンが構成される。よって、従来のステータコアと非磁性材料よりなるキャンとを別体で構成したブラシレスモータに比べて渦電流による損失を低減することができる。又、従来のステータコアと樹脂材料よりなるキャンとを別体で構成したブラシレスモータに比べてエアギャップを小さくすることができ有効磁束密度(実際に働く磁力)を増加させることができる。その結果、モータの効率を向上させることができる。又、従来に比べて部品点数が少なくなる。
【0024】
(2)インナコア8(ティース10、円筒部11及び底部12)を、磁性粉体を用いて一体成形したため、複雑な形状であるティース10、円筒部11及び底部12を有する一部材(インナコア8)を容易に形成することができる。
【0025】
(3)底部12の厚さは、円筒部11の厚さより厚く設定される。ここで、円筒部11はティース10の各径方向内側端部(基端部)にて比較的強度が高くなる。そして、底部12の厚さが円筒部11の厚さより厚くされることで、底部12の強度が確保される。よって、このようにすると、例えば、底部12及び円筒部11の厚さが一定の場合等に比べて、エアギャップを小さくしながら、キャンの強度(耐圧性)を確保することができる。
【0026】
(4)インナコア8(ティース10、円筒部11及び底部12)は、磁性粉体及び磁性粉体を結合させるための樹脂材料よりなる結合材にて一体成形される。そして、底部12における結合材の比率は、その他の箇所(ティース10、円筒部11)における結合材の比率より多くされるため、底部12での磁気通過が抑制され、モータの効率が向上される。
【0027】
(5)ティース10の各径方向外側端部(先端部)はアウタコア9にて連結されるため、モータの効率が向上される。
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
【0028】
・上記実施の形態では、インナコア8(ティース10、円筒部11及び底部12)を、磁性粉体及び樹脂材料よりなる結合材にて一体成形(圧縮成形)したが、他の製法にて成形してもよい。
【0029】
・上記実施の形態では、底部12における結合材の比率を、その他の箇所(ティース10、円筒部11)における結合材の比率より多く設定したが、前記比率を(例えば、均等に)変更してもよい。各箇所における前記比率を均等とした場合、その成形が容易となる。
【0030】
・上記実施の形態では、底部12の厚さを、円筒部11の厚さより厚く設定したが、これに限定されない。例えば、底部12及び円筒部11の厚さを一定にしてもよい。
【0031】
・上記実施の形態のステータ4(インナコア8)は、ティース10を18個有するとしたが、ティース10の数は適宜変更してもよい。又、ロータ5は、16個のマグネット22を有するとしたが、マグネット22の個数も適宜変更してもよい。例えば、ティースを12個有したステータとし、マグネットを14個有したロータとしてもよい。
【0032】
・上記実施の形態では、巻線7は、ティース10に巻装する前に予めサブアッセンブリ化され、その状態でティース10に嵌め合わされるとしたが、サブアッセンブリ化せずに直接ティース10に巻装するようにしてもよい。尚、この場合、テンション調整リング部7bを形成する必要はなくなる。
【0033】
上記各実施の形態から把握できる技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
(イ) 前記ティースの各径方向外側端部を連結するように固定される円筒状のアウタコアを備えた。このようにすると、ティースの各径方向外側端部がアウタコアにて連結されるため、モータの効率が向上される。
【0034】
(ロ) 前記ブラシレスモータを有した流体ポンプ装置。このようにすると、流体ポンプ装置において、その効率を向上させることができる。
【0035】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、キャンを有するブラシレスモータにおいて、その効率を向上させることができるブラシレスモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の流体ポンプ装置を説明するための要部断面図。
【図2】本実施の形態のステータの斜視図。
【図3】本実施の形態のステータの分解斜視図。
【図4】本実施の形態のステータの一端面図。
【図5】本実施の形態のステータの斜視図。
【符号の説明】
5…ロータ、6…ステータコア、7…巻線、10…ティース、11…円筒部、12…底部。
Claims (3)
- 放射状に延びるように複数設けられるティースを有するステータコアと、
前記ティースに巻装される巻線と、
前記ステータコアの内側に回転可能に配設されるロータと、
前記巻線と前記ロータとを隔てるためのキャンと
を備えたブラシレスモータにおいて、
前記各ティースの各径方向内側端部を連結する円筒部の一端に該円筒部の一端を封鎖する底部を一体形成し、該円筒部及び該底部により前記キャンを構成し、
前記ティース、前記円筒部及び前記底部を、磁性粉体を用いて一体成形したことを特徴とするブラシレスモータ。 - 請求項1に記載のブラシレスモータにおいて、
前記底部の厚さを、前記円筒部の厚さより厚くしたことを特徴とするブラシレスモータ。 - 請求項1又は2に記載のブラシレスモータにおいて、
前記ティース、前記円筒部及び前記底部を、前記磁性粉体及び前記磁性粉体を結合させるための樹脂材料よりなる結合材にて一体成形するとともに、前記底部における前記結合材の比率を、その他の箇所における前記結合材の比率より多くしたことを特徴とするブラシレスモータ。
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