JP3933764B2 - 水溶性潤滑剤組成物 - Google Patents
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Description
本発明は牛乳、ビール、酒、清涼飲料、調味料、加工食品等のビン、缶詰め工程における缶類等の搬送コンベア用潤滑剤として利用される水溶性潤滑剤組成物に係り、特に潤滑性および殺菌性に優れていることはもちろん、搬送コンベア上あるいはドレイン受け等での発泡が抑制され、さらにCOD値を低く保って排水負荷の軽減に有効であり、かつ希釈水の硬度による影響を受けず、さらに、液安定性にも優れた水溶性潤滑剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
牛乳、ビール、酒、清涼飲料、調味料、加工食品等のビン、缶詰め工程における缶類は一般に、工場内での移送に際して搬送コンベアが使用されている。
【0003】
搬送コンベアは通常自動制御により連続運転されており、このためビン、缶類の流れが停止しても搬送コンベアのみがそのまま連続して運転されることになる。この場合にはビン、缶類とコンベア表面との動摩擦力は低下している方が好ましい。
【0004】
また、洗浄機から運ばれてきたビン、缶類をそのまま搬送コンベアの流れに乗せるためには、コンベア表面の静止摩擦力は適度に低下することが好ましい。これら両要求を満たすため、通常、コンベア表面に所望の潤滑剤を塗布することが行われている。
【0005】
これらの必要性を満たす潤滑剤組成物として、従来、脂肪酸アルカリ塩、アルキルリン酸エステルアリカリ塩あるいはアルキルジアミン酢酸塩または塩酸塩を潤滑主成分とし、これに必要に応じて界面活性剤等を添加してなるそれぞれ脂肪酸石鹸潤滑剤、アルキルリン酸エステルアルカリ塩潤滑剤、アルキルジアミン酢酸塩または塩酸塩の潤滑剤が知られている。
【0006】
これらは通常、それぞれ水で200〜400倍、あるいはそれ以上に希釈してステンレス製や樹脂製の搬送コンベア表面に塗布することにより使用に供されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述の潤滑剤において、脂肪酸石鹸潤滑剤およびアルキルリン酸エステルアルカリ塩潤滑剤は、潤滑性に優れ、しかも抑泡しやすい利点がある。しかし、一方では、使用水の硬度成分と反応し、水不溶性のスケールを生成して潤滑性が低下したり、洗浄性が劣る等の問題が生じるため、金属イオン封鎖剤を添加したり、軟水の使用を余儀なくされる。
【0008】
さらに、これら潤滑剤は洗浄効果や殺菌効果等を生ぜしめるために多量の界面活性剤や殺菌剤を添加したり、原液の安定性を保つために可溶化剤を添加したり等各種の添加剤を添加するため、組成が複雑になり、高いCODを余儀なくされた。
【0009】
上述のアルキルジアミン酢酸塩または塩酸塩からなる潤滑剤は、潤滑主成分であるアルキルジアミン自体が洗浄性と殺菌効果を有するため、特別な界面活性剤あるいは殺菌剤を必要とせず、したがって、可溶化剤も必要とせず、このため、組成そのものがシンプルとなってCODが低くなる。
【0010】
しかし、一方、スピードの早いコンベアでは泡が立ち易く、しかも発生した泡は硬く、破泡性に極めて劣る。したがって、製造ラインに設置されている容器の欠陥検査機は泡により誤作動を起こしてしまい、作業性に支障を来す。
【0011】
しかも、発生した泡は破泡性に劣るため、コンベア下のドレイン受けに蓄積されて床面に溢れ出てしまい、このため、外観上見苦しいのみならず、作業中、スリップ事故を起こす危険もある。
【0012】
そこで、本発明の目的は潤滑性に優れていることはもちろんのこと、搬送コンベア上あるいはドレイン受け等での発泡が抑制され、さらにCOD値を低く保って排水負荷の軽減に有効であり、かつ希釈水の硬度による影響を受けず、さらに、液安定性にも優れ、上述の公知技術に存する欠点を改良した水溶性潤滑剤組成物を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明によれば、次の成分(A)および(B)を必須成分として含むことを特徴とする。
【0014】
(A)一般式
【化3】
(ただし、R1 は炭素数8〜22の飽和または不飽和アルキル基であり、R2 は水素、炭素数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基、またはA−NH2 であり、Aは炭素数1〜3のアルキレン基である。)を有する脂肪族アルキルアミン。
【0015】
(B)一般式
【化4】
(ただし、m+nは8〜16の整数で、かつmとnの比が1:1〜1:3の範囲内である。)を有する二価のカルボン酸。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に詳述する。
【0017】
本発明の必須成分として使用される上述成分(A)の脂肪族アルキルアミンはオレイルプロピレンジアミン、ココナットプロピレンジアミン、タロ−プロピレンジアミン、ラウリルプロピレンジアミン、大豆プロピレンジアミン等の脂肪族アルキルジアミン、オレイルジプロピレントリアミン、ココナットジプロピレントリアミン、タロ−ジプロピレントリアミン等の脂肪族アルキルトリアミン等である。
【0018】
これら脂肪族アルキルアミンは単独で、または複数種組み合わせて用いられるが、特に、脂肪族アルキルジアミンの使用が好ましく、さらに、オレイルプロピレンジアミンの単独使用が好ましい。
【0019】
さらに、本発明の必須成分として使用される上述成分(B)の二価のカルボン酸は非共役直鎖不飽和エチレン脂肪酸に、ヨウ素、鉄、ペンタンカルボニル等の触媒の存在下でアクリル酸を付加させてなる上述成分(B)の一般式で示される化合物である。
【0020】
ここで、上述の非共役直鎖不飽和エチレン脂肪酸としては、ミリストレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、またはこれらの混合物であり、好ましくはオレイン酸、リノール酸またはこれらの混合物である。このような二価のカルボン酸の具体例としてはジアシッド1550(ハリマ化成(株)製)が挙げられる。
【0021】
本発明にかかる潤滑剤組成物は上述の成分(A)にかかる脂肪族アルキルアミンと、上述の成分(B)にかかる二価のカルボン酸とを、脂肪族アルキルアミン1重量部に対して二価のカルボン酸が0.2〜0.4重量部の配合比率で配合して得られる。
【0022】
二価のカルボン酸が脂肪族アルキルアミンに対して0.2重量部より少ない配合比率では、抑泡性が低下し、さらに錆発生の防止効果も低下する。また、0.4重量部を越える配合比率では溶解性が悪くなって可溶化剤の使用が必要となる。
【0023】
このようにして得られる本発明組成物は通常、成分(A)の脂肪族アルキルアミン含有量を5〜15重量%の範囲内となるように、かつ、成分(A)の脂肪族アルキルアミンと、成分(B)の二価のカルボン酸との合計含有量を好ましくは5〜21%の範囲内となるように水で希釈し、かつ、pH値を4〜9に調整し、原液組成物とする。この原液組成物は潤滑性に優れることはもちろんのこと、錆の発生を防止し、さらに液安定性にも優れている。
【0024】
このpH値の調整には有機酸あるいは無機酸が使用されるが、特に、有機酸を用いることにより、原液の安定性が良好となり、かつ、接触する鉄材質の錆の発生が軽減される。また、この有機酸として、特に、酢酸が好ましく、他に蟻酸、グリコール酸、乳酸、炭素数2〜8のモノまたはジカルボン酸、炭素数10のジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用される。
【0025】
本発明の潤滑剤組成物は実際にコンベア上に適用する際には、上述の原液組成物をさらに300〜500倍に水で希釈して希釈水溶液とする。このときの成分(A)の含有量は0.012重量%以上を保持することが好ましい。
【0026】
なお、本発明にかかる潤滑剤組成物は必要に応じて、殺菌剤、界面活性剤、可溶化剤等を含有することもできる。
【0027】
上述の構成からなる本発明水溶性潤滑剤組成物は、成分(A)の脂肪族アルキルアミンと成分(B)の二価カルボン酸とを必須成分として含有することにより、かつ、これら成分(A)および(B)の配合比率を、好ましくは1:0.2〜0.4(重量)に定めることにより、潤滑性に優れることはもちろん、洗浄性や殺菌性にも優れ、かつ、搬送コンベア上やドレイン受けでの発泡を抑制し、かつ、使用水の硬度成分の影響を受けることがなく、このため、金属イオン封鎖剤や抑泡性の非イオン界面活性剤等の使用を必要とせず、かつ、軟水の使用も必要としない。このため、含有成分の種類を少なくすることができて低CODに保つことができ、環境的にも好ましい。さらに、本発明水溶性潤滑剤組成物はpHを4〜9に調整することにより、鉄材質の錆発生を軽減し、潤滑性も向上せしめることはもちろん、液安定性をも向上する。
【0028】
以上のとおり、本発明水溶性潤滑剤組成物は潤滑性はもとより、洗浄性と殺菌力にも優れ、併せて、抑泡性に優れるため、従来の脂肪族アルキルジアミン潤滑剤組成物の問題点を解決するとともに、低CODに保つことができ、スケールの発生を起こさず、鉄材質の錆発生をも軽減し、搬送コンベアに最適な潤滑剤である。
【0029】
【発明の実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】
実施例 1
表1に示す各潤滑剤試料を調製した。これら各試料を抑泡性、潤滑性および希釈水の安定性について試験し、結果を表1に示した。各試料は試料No.1〜3については、本発明の成分(B)の化合物を使用せず、試料No.4〜11については本発明の組成物とした。また、試料No.1〜11は全て、pH6.0〜6.5の範囲内に調整した。
【0031】
試験方法は次のとおりである。
(1)抑泡性試験
実際にビンが置かれたステンレス製コンベアに各試料の400倍希釈水溶液を150ml/min 、30秒噴霧、30秒停止の条件で噴霧し、コンベアを30cm/sec のスピードで稼働した時のコンベア上の泡立ちおよびドレイン板に残る泡量を目視にて観察した。
【0032】
(2)潤滑性試験
ステンレス製コンベア上に、ビールビンを2本置き、各試料の400倍希釈水溶液を30ml/min の条件で噴霧し、コンベアを60cm/sec のスピードで稼働した時の摩擦係数を測定した。
【0033】
(3)希釈水の安定性試験
各試料の400倍希釈水溶液を5℃、室温40℃の3条件下に5日間放置し、希釈水溶液の濁りの発生を目視にて観察した。表1中、×は作業性に支障あり、△および○は作業性に支障なし、を意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
表1の結果から、明らかなように、本発明の潤滑剤組成物(試料No.4〜11) は、ジアシッド1550(成分B)を添加するものであり、これにより成分(B)を含まない試料No.1〜3と比較すると、抑泡効果が著しく高くなることが認められる。しかも、成分(A)としてオレイルプロピレンジアミンを使用すると、特に優れた抑泡効果を発揮することも認められた。さらに、ジアシッド1550を潤滑剤主成分として併用しても、潤滑性能へ影響を及ぼさず、しかも希釈水の安定性も低下しないことも認められた。
【0036】
実施例 2
表2に示す各潤滑剤試料(試料No.1〜13) を調製した。これら各試料についてコンベア上の抑泡性、潤滑性および原液安定性を試験し、結果を表2に示した。これら試料No.1〜13のpH値は全て、酢酸を用いてpH6.0〜6.5に調整した。
【0037】
抑泡性試験は、実施例1と同条件下でステンレス製コンベア上の泡立ちとドレイン板上の泡量を目視で測定することにより行った。また、潤滑性試験は、実施例1と同様にして摩擦係数を測定することによって行った。さらに、原液の安定性試験は各試料を5℃、室温40℃の条件下に7日間放置し、試料の濁りの発生を目視にて観察することにより行った。表2中、×は実際の使用時に作業上支障あり、△および○は支障なし、を意味する。
【0038】
【表2】
【0039】
表2の結果から、成分(A)のオレイルプロピレンジアミンが5%以上であると、潤滑性に優れ、15%以上になると原液の安定性が悪くなることがわかる。さらに、成分(B)のジアシッド1550が成分(A)のオレイルプロピレンジアミンに対して、20%以下になると、抑泡性の効果がみられず、40%以上および成分(A)と成分(B)の合計が21%以上になると、原液の安定性に影響がみられた。
【0040】
実施例 3
表3に示す各試料No.1〜5を調製し、これらのCOD値を測定するとともに、各試料の400倍希釈水について硬度成分(CaCO3 として100ppm)の影響を観察し、結果を表3に示した。
【0041】
【表3】
【0042】
表3の結果から、試料No.1および2の本発明組成物は従来の石鹸を主成分とする試料No.5に比べ、COD値が低く、また、ジアシッド1550〔本発明成分(B)〕を使用しない試料No.3〜5と比較して希釈水の硬度成分の影響がないことがわかる。
【0043】
実施例 4
表4に示す各潤滑剤試料No.1〜6を調製し、これら各試料の潤滑性、錆の発生、原液安定性について試験し、結果を表4に示した。また、pH調整には酢酸を用いた。
【0044】
潤滑性試験および原液安定性試験は実施例1と同様に行った。また、錆の発生試験は各試料の400倍希釈水溶液中に、よく研磨したスチール製テストピースを25℃の水温条件下で、7日間浸漬し、錆の発生状況を観察することにより行った。
【0045】
表4中、×印は錆の発生の欄の場合、錆の発生が著しい、△および○印は錆の発生が少ないか、存在せず、実用上問題ないことを意味する。なお、潤滑性および原液安定性の欄の×、△、○印は実施例1と同じである。
【0046】
【表4】
【0047】
表4の結果から、本発明組成物にかかる試料No.2〜5はpH4〜9の範囲に調整され、すべての試験において良好な結果を示しており、一方、このpH範囲からはずれた試料No.1および6はいずれかの試験において、好ましくない結果を示していることがわかる。
【0048】
【発明の効果】
上述の本発明水溶性潤滑剤組成物は次の効果を奏し得る。
【0049】
(1)成分(A)の脂肪族アルキルアミンと成分(B)の二価カルボン酸とを必須成分として含有することにより、かつ、これら成分(A)および(B)の配合比率を、好ましくは1:0.2〜0.4(重量)に定めることにより、潤滑性に優れることはもちろん、洗浄性や殺菌性にも優れ、かつ、搬送コンベア上やドレイン受けでの発泡を抑制し、かつ、使用水の硬度成分の影響を受けることがなく、このため、金属イオン封鎖剤や抑泡性の非イオン界面活性剤等の使用を必要とせず、かつ、軟水の使用も必要としない。このため、含有成分の種類を少なくすることができて低CODに保つことができ、環境的にも好ましい。
【0050】
(2)pHを4〜9に調整することにより、鉄材質の錆発生を軽減し、かつ、潤滑性も向上せしめ、さらに液安定性も向上する。
Claims (10)
- 請求項1の成分(A)と、成分(B)との配合比率が成分(A):成分(B)=1:0.2〜0.4(重量)である請求項1に記載される水溶性潤滑剤組成物。
- 請求項1または2の水溶性潤滑剤組成物がpH4〜9に調整されてなる請求項1または2に記載される水溶性潤滑剤組成物。
- 請求項1または2の成分(A)の含有量を5〜15重量%とし、かつ、pH値を4〜9に調整することにより、液安定性に優れた原液組成物として調整される請求項1または2に記載される水溶性潤滑剤組成物。
- 請求項1の脂肪族アルキルアミンがオレイルプロピレンジアミンである請求項1に記載される水溶性潤滑剤組成物。
- 請求項1の脂肪族アルキルアミンがココナットプロピレンジアミン、タロ−プロピレンジアミン、ラウリルプロピレンジアミンおよび大豆プロピレンジアミンの群から選択される脂肪族アルキルジアミンである請求項1に記載される水溶性潤滑剤組成物。
- 請求項1の脂肪族アルキルアミンがオレイルジプロピレントリアミン、ココナットジプロピレントリアミンおよびタロ−ジプロピレントリアミンの群から選択される脂肪族アルキルトリアミンである請求項1に記載される水溶性潤滑剤組成物。
- 請求項1の二価のカルボン酸が非共役直鎖不飽和エチレン脂肪酸にアクリル酸を付加させてなる請求項1に記載される水溶性潤滑剤組成物。
- 請求項8の非共役直鎖不飽和エチレン脂肪酸がミリストレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸またはこれらの混合物である請求項8に記載される水溶性潤滑剤組成物。
- 請求項3または4のpH値が有機酸によって調整される請求項3または4に記載される水溶性潤滑剤組成物。
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