JP3933537B2 - 交流電源装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気二重層コンデンサ等を蓄電素子に用い、交流負荷電力の急変をインバータにより補償するようにした交流電源装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図2は、交流電源により負荷に交流電力を供給すると共に、負荷電力の急変時にコンデンサ、チョッパ及びインバータにより負荷電力の変動分を補償するようにした交流電源装置の従来技術を示すブロック図である。
図2において、1は蓄電素子を構成する電気二重層コンデンサ等の大容量コンデンサ、2はチョッパ、3はインバータ、4は交流電源、5は負荷である。
また、101は負荷電力の平均値演算器、102は充放電電流指令発生器、103,104は調節器、105は交流電流指令発生器である。
【0003】
この交流電源装置は、平常時は交流電源4から負荷5に給電しており、負荷5が消費する電力PLの急変時に、その変動分をコンデンサ1からインバータ3の出力電力Piとして供給することにより補償し、交流電源4から負荷5への供給電力Psを急変させないように動作している。
【0004】
制御回路の動作としては、まず、負荷電力PLの平均値が平均値演算器101により演算されて瞬時値との偏差が加算器301により求められる。また、コンデンサ1の電圧指令値Vc *と検出値Vcとの偏差が加算器303により求められ、この偏差が調節器103により増幅されて加算器302に入力される。加算器302では、加算器301の出力を調節器103の出力により補正すると共に、補正後の負荷電力PLに応じたコンデンサ1に対する充放電電流指令が充放電電流指令発生器102により生成され、チョッパ2に与えられる。
【0005】
また、インバータ3の直流電圧指令値Ed *と検出値Edとの偏差が加算器304により求められ、この偏差が調節器104により増幅されて交流電流指令発生器105に入力される。交流電流指令発生器105では、調節器104の出力に応じた交流電流指令を生成し、この電流指令に従ってインバータ3が運転される。
【0006】
いま、負荷5の消費電力PLの変動分をインバータ3が補償するためにインバータ3による供給電力Piを正にするときには、チョッパ2を動作させてコンデンサ1を放電させ、その直流電力をインバータ3に伝達する。インバータ3は、直流電力を交流電力に変換して出力し、電力Piを負荷5に供給する。
また、インバータ3による供給電力Piを負にするときには、インバータ3は交流電源4の電力Psを直流電力に変換してチョッパ2に伝達し、チョッパ2がコンデンサ1を充電する。
【0007】
ここで、コンデンサ1とインバータ3との間にチョッパ2を設ける理由は、コンデンサ1の電圧Vcが充放電に伴って大きく変化する一方で、インバータ3の直流電圧Edは極力一定値であることが望ましいので、これらの電圧Vc,Edをそれぞれ独立に制御可能とするためである。
【0008】
負荷電力PLの急変量は、図示されていない電力検出器により検出した負荷電力PLを、平均値演算器101により演算した平均値と加算器301にて差し引きすることにより求め、その偏差を充放電電流指令発生器102に入力して得た充放電電流指令により、負荷電力PLの変動分に応じてコンデンサ1を充放電させる。この際、制御誤差や主回路の充電損失、放電損失のアンバランス等によりコンデンサ1の電圧Vcが増加または減少し過ぎるのを防止するため、コンデンサ1の電圧指令値Vc *と検出値Vcとの偏差Vcを調節器103に入力し、その出力により加算器301の出力を補正した値を用いて充放電電流指令を発生させ、この指令をチョッパ2に与えている。
【0009】
また、チョッパ2の動作に伴うコンデンサ1の充放電によってインバータ3の直流電圧Edが変化するので、直流電圧指令値Ed *と検出値Edとの偏差を同様に求めて調節器104に入力し、交流電流指令発生器105により生成した交流電流指令によりインバータ3を制御することにより、直流電圧Edがその指令値Ed *に一致するように制御が行われる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
図2に示した従来技術には、次のような問題がある。
(1)負荷電力PLの急変時には、まずコンデンサ1の放電電力が制御され、結果としての直流電圧Edの変化によりインバータ3の電力Piが制御されるので、負荷電力PLに対するインバータ電力Piの追従遅れが発生する。
【0011】
(2)この交流電源装置が放出または吸収できるエネルギーは、コンデンサ1の容量により規定される。コンデンサ1の充電または放電の進行によりその電圧Vcが上限値または下限値に近付いた場合には、電力を制限する必要がある。
この制限動作は調節器103により行われるが、調節器103のゲインが大き過ぎると電圧Vcが僅かに変化しただけで電力が制限されてしまい、コンデンサ1の容量を有効利用することができない。逆に調節器103のゲインが小さ過ぎると、条件によっては電圧Vcが上限値または下限値に達して装置が動作不能となり、結局は電源装置の停止に伴う電力急変を交流電源4に与えてしまうおそれがある。
【0012】
(3)平均値演算器101の時定数がコンデンサ1の容量や負荷電力PLの変動周期に対して適正に設定されていないと、不都合を生じる。
例えば、負荷電力PLがステップ状に変化してその状態が持続したとすると、平均値演算器101の時定数に相当する時間にわたって充放電電流指令発生器102に負荷急変量が入力されるが、時定数が長過ぎるとコンデンサ1の電圧Vcが上限値または下限値に達して運転不能となる問題が生じる。これに対し、時定数が短か過ぎると負荷急変量も速やかに減衰し、これによってインバータ3の電力Piも絞られるため、コンデンサ1のエネルギーが有効利用されなくなる。
このように負荷電力PLが不規則に変動する場合には、時定数の最適化が困難である。
【0013】
そこで本発明は、負荷電力の急変時における追従遅れをなくすと共に、コンデンサ容量の有効利用を可能にし、また、装置の運転不能や交流電源の電力急変が助長されるのを防止するようにした交流電源装置を提供しようとするものである。して
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、負荷に交流電力を供給する交流電源装置であって、蓄電素子としてのコンデンサと、交流電源及び前記負荷に接続されて交流−直流相互間の電力変換を行うインバータと、前記コンデンサと前記インバータとの間に接続されて直流電力を授受するチョッパとを備え、
負荷電力の増減に応じ前記チョッパにより前記コンデンサを放電または充電して負荷電力の変動分を補償する交流電源装置において、
前記コンデンサの電圧をその指令値に一致させるように動作して前記負荷電力に対する補正量を出力する第1の調節手段を備えたコンデンサ電圧制御手段と、
負荷電力を前記補正量により補正した値に基づいて前記インバータに対する交流電流指令を発生する手段を備えた電力制御手段と、
前記インバータの直流電圧を制御する直流電圧制御手段と、を設け、
前記電力制御手段により前記インバータを制御し、かつ、前記直流電圧制御手段により前記チョッパを制御するものである。
【0015】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した交流電源装置において、
前記直流電圧制御手段は、前記インバータの直流電圧をその指令に一致させるように動作する第2の調節手段と、この第2の調節手段の出力に基づいて前記チョッパに対し前記コンデンサの充放電電流指令を発生する手段と、を備えたものである。
請求項1または2に記載した発明によれば、負荷電力の変動によって瞬時にインバータの交流電力が応答するので、制御遅れによる交流電源の電力変動を未然に防止することができる。
【0016】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した交流電源装置において、
前記インバータの交流電力は、前記負荷電力から、前記コンデンサの電圧指令値の二乗と前記コンデンサの電圧の二乗との偏差にゲインを乗じた値を減じて決定するものである。
本発明によれば、コンデンサのエネルギー容量に応じた最適な電力補償量を簡単に求めることができる。
【0017】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した交流電源装置において、
前記ゲインは、前記負荷の定格電力または最大電力と、前記コンデンサの電圧指令値の二乗と前記コンデンサの電圧最大許容値または最小許容値の二乗との偏差に前記ゲインを乗じた値とが等しくなるように設定するものである。
本発明によれば、コンデンサのエネルギーを最大限に利用し、しかもコンデンサ電圧が上限値または下限値を超えないような補償電力を簡単に求めることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1はこの実施形態の構成を示すブロック図であり、図2と同一の構成要素には同一の参照符号を付してある。以下では、図2と異なる部分を中心に説明する。
【0019】
図1において、主回路の構成は図2と同様であり、電気二重層コンデンサ等の大容量コンデンサ1、チョッパ2、インバータ3、交流電源4及び負荷5によって構成されている。
201はコンデンサ1の電圧Vcが入力される二乗器であり、その出力であるVc 2は加算器306の一方の入力端子に入力されている。加算器306の他方の入力端子にはコンデンサ1の電圧指令値の二乗値Vc *2が入力されており、加算器306から出力される両入力信号の偏差(Vc *2−Vc 2)が所定のゲインを有する比例調節器202に入力されている。
【0020】
比例調節器202の出力は補正量として加算器305の一方の入力端子に入力され、加算器305の他方の入力端子には電力検出器(図示せず)により検出した負荷電力PLが入力されている。
加算器305の出力は交流電流指令発生器105に入力され、この発生器105から出力される交流電流指令がインバータ3に与えられている。
【0021】
また、図2と同様にインバータ3の直流電圧指令値Ed *と検出値Edとの偏差が加算器304により求められ、この偏差が調節器104により増幅されるが、調節器104の出力は図2と異なって充放電電流指令発生器102に入力され、その出力である充放電電流指令がチョッパ2に入力されている。
【0022】
ここで、二乗器201、加算器306及び比例調節器202は本発明におけるコンデンサ電圧制御手段の一部を構成し、加算器305及び交流電流指令発生器105は本発明における電力制御手段の一部を構成し、加算器304、調節器104及び充放電電流指令発生器102は本発明における直流電圧制御手段の一部を構成している。
【0023】
本実施形態の図2との第1の相違点は、チョッパ2の制御をインバータ3の直流電圧Edに基づいて行い、インバータ3の制御を負荷電力PL及びコンデンサ1の電圧Vcに基づいて行う点である。
例えば負荷電力PLが急増した場合、交流電流指令発生器105を介してインバータ電力Piも直ちに急増するので、従来のような制御遅れによる交流電源4の電力Psの急変が最低限に抑えられる。インバータ電力Piの急増により直流電圧Edが低下するため、調節器104及び充放電電流指令発生器102の動作によりチョッパ2がコンデンサ1を放電させ、チョッパ2のインバータ3側の出力電力が増加して直流電圧Edを指令値に戻す。
つまり、制御遅れは電源装置内部の直流電圧Edの変動という形でのみ現れることになり、装置外部には現れない。
【0024】
次に、図2との第2の相違点は、コンデンサ電圧Vcを二乗した後にVcの指令値Vc *の2乗値Vc *2との偏差を求め、比例調節器202によって前記偏差に適当なゲインを乗じた後、これを加算器305にて負荷電力PLから減算した値により交流電流指令を生成してインバータ電力Piを制御する点である。
【0025】
例えば、前述した如く負荷電力PLが急増するとインバータ電力Piが直ちに急増し、結果としてコンデンサ1が急激に放電するが、この放電により電圧Vcが低下すると(Vc *2−Vc 2)が大きくなるので加算器305を介して交流電流指令発生器105に入力される値は小さくなり、結果的にインバータ電力Piは減少してやがて0となる。
これにより、図2のように負荷電力PL及びその平均値から変動分を算出する構成にしなくても、負荷電力PLの変動分のみを供給することが可能となる。変動分として与えられる値は電圧Vcの変化自体に基づくものであるので、負荷電力の平均値計算の時定数とコンデンサVcの放電時間との差を考慮する必要はない。
【0026】
ここで電圧Vcの二乗値を用いた理由は、コンデンサ1の電圧ではなく電圧の二乗に比例する蓄積エネルギーを直接的にフィードバックするためである。例えば、コンデンサVcの初期電圧が300Vであったとすると、これが100Vに低下するまでに放出できるエネルギーと、400Vに上昇するまでに吸収できるエネルギーとはほぼ同じ程度の値であるが、Vc *−Vcはそれぞれ−200V,+100Vとなり、コンデンサ1の電圧に基づいて制御すると電力制御へのフィードバック量が2倍異なるので、コンデンサの電圧低下時にフィードバック量が過大となるか、または電圧上昇時にフィードバック量が不足することとなる。これに対し、本発明のようにコンデンサ電圧Vcの二乗値を用いれば、コンデンサ1の電力供給能力に応じた適正な電力制御を行うことができ、コンデンサ1のエネルギーを有効利用することができる。
【0027】
また、この際に比例調節器202の適切なゲイン設定により電圧Vcの変化範囲を規定することができる。例えば、電圧Vcの最大値(最大許容値)を400Vとすると、Vcの最小値(最小許容値)、すなわち最大限に放電したときの電圧は100V程度とするのが望ましい。これは、コンデンサ1が放電してその電圧が400Vから100Vに低下することで、コンデンサ1に蓄積されたエネルギーの93.75%を放出できる一方、これ以上、最小許容値を小さくしても残りの数%が回収できるだけなのに対し、定電力の場合には電圧Vcに反比例して電流が増えるので、最小許容値を更に低下させることが装置に過大な電流容量を要求することになるためである。
【0028】
このとき、例えば、Vc *を290V(Vc *2を84100V2)に設定する。Vc *を290Vに設定した場合、電圧Vcが100Vまで低下した場合の(Vc *2−Vc 2)は74100V2なので、この値に比例調節器202のゲインGpを掛けた値が負荷電力PLの定格値に等しくなるようにゲインGpを設定する。
これにより、負荷電力PLが定格値として正の値で連続的に与えられた場合、Pi=PL−Gp(Vc *2−Vc 2)はコンデンサ1の電圧Vcが100Vに達するとほぼ0となり、コンデンサ1の放電がそれ以上行われなくなるので電圧Vcが更に低下することがない。
【0029】
また、電圧Vc *を290V(Vc *2を84100V2)に設定した場合において電圧Vcが400Vまで上昇した時の(Vc *2−Vc 2)は−75900V2となり、前述した100Vまで低下した時の値と絶対値がほぼ等しい。従って、同様に負荷電力PLが定格値として負の値で連続的に与えられた場合、この値にゲインGpを掛けた値が負荷電力PLの定格値に等しくなるようにゲインGpを設定すれば、Vc=400V付近でPiがほぼ0となり、コンデンサ1の充電がそれ以上行われなくなるので電圧Vcが更に上昇することがない。
【0030】
このように、本実施形態では、比例調節器202のゲインGpの設定だけでコンデンサ電圧Vcの変化範囲を規定することができる。
また、インバータ電力Piはコンデンサ電圧Vcの変化のみにより緩やかに絞られるので、電圧Vcの上限または下限でのインバータ電力Piの急変も防止することができる。
なお、上記説明では負荷電力PLを定格値としたが、負荷電力PLに定格以上の値が予想される場合、コンデンサ電圧Vcの変化を所定範囲内に収めるためには、負荷電力PLの最大値に基づき比例調節器202のゲインGpを定めるか、制御に用いる負荷電力PLは定格相当のリミッタを介して加算器305に入力する必要がある。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、請求項1または2に記載した発明によれば、負荷電力が変動してもその変動分を補償するように瞬時にインバータの交流電力が応答するため、制御遅れによる交流電源の電力変動を未然に防止することができる。
また、請求項3に記載した発明によれば、コンデンサのエネルギー容量に応じた最適な補償値を簡単に求めることができ、請求項4に記載した発明によれば、コンデンサのエネルギーを最大限に利用し、しかもコンデンサ電圧が上限値または下限値を超えないような補償電力を簡単に求めることができるため、コンデンサのエネルギーの有効利用に資するところが大きい。
更に、電源装置が運転不能に陥ったり交流電源の電力急変が助長されるようなおそれもなく、信頼性の高い交流電源装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】従来技術を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 コンデンサ
2 チョッパ
3 インバータ
4 交流電源
5 負荷
102 充放電電流指令発生器
104 調節器
105 交流電流指令発生器
201 二乗器
202 比例調節器
304〜306 加算器
Claims (4)
- 負荷に交流電力を供給する交流電源装置であって、蓄電素子としてのコンデンサと、交流電源及び前記負荷に接続されて交流−直流相互間の電力変換を行うインバータと、前記コンデンサと前記インバータとの間に接続されて直流電力を授受するチョッパとを備え、
負荷電力の増減に応じ前記チョッパにより前記コンデンサを放電または充電して負荷電力の変動分を補償する交流電源装置において、
前記コンデンサの電圧をその指令値に一致させるように動作して前記負荷電力に対する補正量を出力する第1の調節手段を備えたコンデンサ電圧制御手段と、
負荷電力を前記補正量により補正した値に基づいて前記インバータに対する交流電流指令を発生する手段を備えた電力制御手段と、
前記インバータの直流電圧を制御する直流電圧制御手段と、を設け、
前記電力制御手段により前記インバータを制御し、かつ、前記直流電圧制御手段により前記チョッパを制御することを特徴とした交流電源装置。 - 請求項1に記載した交流電源装置において、
前記直流電圧制御手段は、前記インバータの直流電圧をその指令に一致させるように動作する第2の調節手段と、この第2の調節手段の出力に基づいて前記チョッパに対し前記コンデンサの充放電電流指令を発生する手段と、を備えたことを特徴とする交流電源装置。 - 請求項1または2に記載した交流電源装置において、
前記インバータの交流電力は、前記負荷電力から、前記コンデンサの電圧指令値の二乗と前記コンデンサの電圧の二乗との偏差にゲインを乗じた値を減じて決定することを特徴とした交流電源装置。 - 請求項3に記載した交流電源装置において、
前記ゲインは、前記負荷の定格電力または最大電力と、前記コンデンサの電圧指令値の二乗と前記コンデンサの電圧最大許容値または最小許容値の二乗との偏差に前記ゲインを乗じた値とが等しくなるように設定することを特徴とした交流電源装置。
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