JP3932766B2 - アレイアンテナ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体導波路を用いたアレイアンテナに係り、特に、分岐部の放射損失を低減させた高利得・高効率なアレイアンテナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
移動体通信および無線通信機器、車載レーダ等に用いられる固定、半固定または移動端末の平面アンテナに、誘電体導波路を用いたアレイアンテナ(誘電体アンテナ)が適用される。
【0003】
従来、小型化された移動端末、車載レーダ等に用いられる平面アンテナは、導波系にマイクロストリップ線路やトリプレート線路等を用いたアンテナが主流である。しかしながら、上記のような従来の平面アンテナは、電磁波の伝送路に細い導体線を使用するため、周波数の上昇とともに、導体に電磁波を励振した際に生ずる損失(導体損失)や放射による損失(放射損失)が大きくなり、高効率な送受信特性を得ることが困難となる。そこで、高い周波数で用いるアンテナにおいて、誘電体導波路を用いたアレイアンテナが提案されている。
【0004】
図5に示されるように、従来のアレイアンテナは、誘電体導波路12と、誘電体導波路12とは異なる誘電率の誘電体ブロック4と、金属導体板5とにより構成されており、誘電体導波路12は金属導体板5の上面に密着して配置されており、誘電体導波路12は分岐を有し、誘電体導波路12の一端に外部電力源(図示せず)から供給された電力を各分岐に導波させ、分岐上の誘電体ブロック4を配置した部分から外部空間に電力を放射するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術では、誘電体導波路12による分岐構造に屈曲部10が存在するため、この屈曲部10から導波するべき電磁波がアンテナ外部に放射されてしまい、アンテナ全体の効率を低下させてしまう問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、分岐部の放射損失を低減させた高利得・高効率なアレイアンテナを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、誘電体導波路と、該誘電体導波路とは異なる誘電率の誘電体ブロックと、金属導体板と、金属導体ピンと、外部電力源から電力を供給する給電素子とにより構成されており、前記誘電体導波路は給電用誘電体導波路と分岐用誘電体導波路と放射用誘電体導波路とからなり、前記金属導体板の上面には前記給電用誘電体導波路と前記放射用誘電体導波路とが密着して配置されており、前記放射用誘電体導波路の上面には複数の前記誘電体ブロックが密着して配置されており、前記金属導体板の下面には前記分岐用誘電体導波路が密着して配置されており、これら金属導体板の上下に配置されている誘電体導波路同士は互いに交差する方向を向き、これら誘電体導波路が交差する位置に両方の誘電体導波路を貫通する前記金属導体ピンが埋め込まれており、前記給電用誘電体導波路には前記給電素子が取り付けられており、該給電素子によって外部電力源から供給された電力を前記給電用誘電体導波路に導波させ、その電力を前記金属導体ピンを介して前記分岐用誘電体導波路に導波させ、さらにその電力を前記金属導体ピンを介して複数の前記放射用誘電体導波路に分配導波させ、これら放射用誘電体導波路の前記誘電体ブロックを配置した部分から外部空間に電力を放射するものである。
【0008】
また、誘電体導波路と、金属導体板と、金属導体ピンと、外部電力源から電力を供給する給電素子とにより構成されており、前記誘電体導波路は凹部を設けた放射用誘電体導波路と凹部を設けない給電用誘電体導波路と凹部を設けない分岐用誘電体導波路とからなり、前記金属導体板の上面には前記給電用誘電体導波路と前記放射用誘電体導波路とが密着して配置されており、前記金属導体板の下面には前記分岐用誘電体導波路が密着して配置されており、これら金属導体板の上下に配置されている誘電体導波路同士は互いに交差する方向を向き、これら誘電体導波路が交差する位置に両方の誘電体導波路を貫通する前記金属導体ピンが埋め込まれており、前記給電用誘電体導波路には前記給電素子が取り付けられており、該給電素子によって外部電力源から供給された電力を前記給電用誘電体導波路に導波させ、その電力を前記金属導体ピンを介して前記分岐用誘電体導波路に導波させ、さらにその電力を前記金属導体ピンを介して複数の前記放射用誘電体導波路に分配導波させ、これら放射用誘電体導波路の前記凹部から外部空間に電力を放射するものである。
【0009】
前記金属導体板の前記金属導体ピンが貫通する位置に該金属導体ピンの径より大きい孔を設け、前記金属導体ピンを芯線とし前記孔の内側を外部導体とした同軸線路によって上下の誘電体導波路を接続してもよい。
【0010】
前記誘電体導波路の両端に金属導体ブロックを密着して配置し、該金属導体ブロックを利用して前記誘電体導波路に定在波を励振させてもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1、図2、図3に基づいて詳述する。
【0012】
本発明に係る平面アンテナ(アレイアンテナ)は、所定の誘電率を有する給電用誘電体導波路1と、前記と同じ誘電率を有する分岐用誘電体導波路2と、前記と同じ誘電率を有する放射用誘電体導波路3と、これらの誘電体導波路とは誘電率の異なる誘電体ブロック4と、金属導体板5と、金属導体ブロック6と、金属導体ピン7と、外部電力源(図示せず)からの電力を供給する給電素子となる同軸コネクタ8とにより構成されている。
【0013】
以下、これら1〜8の構成要素の特徴をアンテナ製造方法と共に説明する。
【0014】
誘電体導波路1,2,3の素材にはアルミナなどのセラミックを用いる。誘電体導波路1,3は、長方形に形成されている金属導体板5の奥行き方向(図では右上がりの方向)を長手方向とする所定長(ただし、誘電体導波路1は金属導体板5の中央まで)、所定幅、所定高さの直方体に形成する。誘電体導波路2は、金属導体板5の幅方向(図では左上がりの方向)を長手方向とする所定長、所定幅、所定高さの直方体に形成する。それぞれの誘電体導波路1,2,3には、金属導体ピン7を取り付ける孔11を設けておく。また、金属導体板5にも、分岐用誘電体導波路2に設けた孔11と同じ間隔で孔(図示せず)を設け、さらに、金属導体板5には、同軸コネクタ8を取り付けるネジ孔(図示せず)を一辺に近い位置に設けておく。孔11の位置に設ける金属導体板5の孔は、金属導体ピン7の径より大きい孔とする。これにより、孔11に差し込んだ金属導体ピン7を芯線とし金属導体板5の孔の内側を外部導体とした同軸線路によって上下の誘電体導波路を接続できる。次に、金属導体板5に設けたネジ孔に同軸コネクタ8を取り付ける。
【0015】
次に、金属導体板5の裏面(下面)に分岐用誘電体導波路2を配置し、この分岐用誘電体導波路2を金属導体板5に密着させて固定すると共に、金属導体板5の表面(上面)に給電用誘電体導波路1と放射用誘電体導波路3とを配置し、これら給電用誘電体導波路1と放射用誘電体導波路3とを金属導体板5に密着させて固定する。このとき分岐用誘電体導波路2は、金属導体板5に設けた孔と分岐用誘電体導波路2に設けた孔11とが一致するように取り付ける。また、給電用誘電体導波路1は、給電用誘電体導波路1に設けた孔11がそれぞれ同軸コネクタ8を取り付けた位置と金属導体板5に設けた孔とに一致するように固定する。放射用誘電体導波路3は、放射用誘電体導波路3に設けた孔11が金属導体板5に設けた孔に一致するように固定する。さらに、これらの誘電体導波路1,2,3間を接続するように金属導体ピン7を孔11に差し込んで上下の誘電体導波路1,2,3及び金属導体板5に貫通させ、孔11に金属導体ピン7を固定する。これにより、金属導体板5の上下に配置されている誘電体導波路同士(1と2、2と3)は互いに交差する方向を向き、これら誘電体導波路が交差する位置に両方の誘電体導波路(1と2、2と3)を貫通する金属導体ピン7が埋め込まれたことになる。
【0016】
次に、分岐用誘電体導波路2の両端に密着するように金属導体ブロック6を金属導体板5に固定し、放射用誘電体導波路3の両端に密着するように金属導体ブロック6を金属導体板5に固定する。また、給電用誘電体導波路1の両端にも金属導体ブロック6を密着して金属導体板5に固定する。各金属導体ブロック6は、金属導体板5の奥行き方向または幅方向を長手方向とする所定長、所定幅、所定高さの直方体に形成する。
【0017】
そして、放射用誘電体導波路3の上面に、誘電体ブロック4をセラミック用接着剤等で密着するように取り付ける。このとき、誘電体ブロック4同士が等間隔となるよう取り付ける。取り付ける間隔はこのアレイアンテナを動作させる周波数によって決定される。誘電体ブロック4の形状は、所定長、所定幅、所定高さの直方体であり、放射用誘電体導波路3の幅と同じ長さを有する。
【0018】
次に、このアレイアンテナの動作を説明する。
【0019】
同軸コネクタ8によってアンテナ外部(図示しない外部電力源)から給電された電力(電磁波)は、給電用誘電体導波路1を導波し、金属導体ピン7を伝わって金属導体板5下面の分岐用誘電体導波路2に導波する。分岐用誘電体導波路2を導波する電力は、各金属導体ピン7を伝わって金属導体板5上面の放射用誘電体導波路3に導波する。放射用誘電体導波路3を導波する電力は、導波路内部で定在波を励振させ、誘電体ブロック4を設けた部分からアンテナ外部(空間)へ漏洩する。
【0020】
このアレイアンテナの分岐構造には、導波路の屈曲部がないので、望まない電磁波の放射が少なく、放射損失による効率の低下が少ない。よって、小さいサイズで高利得・高効率なアンテナを実現することができ、従来の平面アンテナに比べて低消費電力動作が可能となる。
【0021】
以上のように、本発明では、上下2層にした誘電体導波路1,2,3を金属導体ピン7等の同軸線路で接続することによって、従来は屈曲部51となる分岐部が上下で交差する誘電体導波路に同軸線路を差し込んだ形となるので、分岐部からの放射損失を低減させることができる。
【0022】
また、誘電体導波路と金属導体板に設けた孔と金属導体ピンとを用いることで、製造が容易なT字形の分岐回路とすることができる。
【0023】
以下、本発明の別の実施形態を図4に基づいて詳述する。
【0024】
このアレイアンテナは、給電用誘電体導波路1と、分岐用誘電体導波路2と、放射用誘電体導波路3と、金属導体板5と、金属導体ブロック6と、金属導体ピン7と、外部電力源(図示せず)からの電力を供給する給電素子となる同軸コネクタ8とにより構成されている。
【0025】
放射用誘電体導波路3には、複数の凹部9を等間隔に設けておく。凹部9の間隔は、このアレイアンテナを動作させる周波数によって決定される。凹部9の空間形状は所定長、所定幅、所定高さの直方体であり、放射用誘電体導波路3の幅と同じ長さを有する。
【0026】
以下、これら1〜8の構成要素の特徴をアンテナ製造方法と共に説明する。
【0027】
誘電体導波路1,2,3の素材には前記実施形態と同様にアルミナなどのセラミックを用いる。また、給電用誘電体導波路1、分岐用誘電体導波路2、放射用誘電体導波路3、金属導体板5に、前記実施形態と同様に金属導体ピン7を取り付ける孔、同軸コネクタ8を取り付けるネジ孔を設けておく。次に、前記実施形態と同様に、金属導体板5に、給電用誘電体導波路1、分岐用誘電体導波路2、放射用誘電体導波路3、金属導体ピン7、同軸コネクタ8を取り付け、さらに金属導体ブロック6を固定する。このとき、放射用誘電体導波路3に設けた凹部9がアンテナの上面に来るように放射用誘電体導波路3を固定する。
【0028】
次に、このアレイアンテナの動作を説明する。
【0029】
同軸コネクタ8によってアンテナ外部から給電された電力は、前記実施形態と同様に給電用誘電体導波路1から金属導体ピン7を経由して分岐用誘電体導波路2に導波する。分岐用誘電体導波路2を導波する電力は、各金属導体ピン7を伝わって金属導体板5上面の放射用誘電体導波路3に導波する。放射用誘電体導波路3を導波する電力は、導波路内部で定在波を励振させ、凹部9を設けた部分からアンテナ外部へ漏洩する。
【0030】
この実施形態によれば、前記実施形態と同様に導波路の屈曲部をなくして高利得・高効率なアレイアンテナを実現できると共に、前記実施形態に比べて放射用誘電体導波路3に誘電体ブロック4を接着する必要がないため安価に製造することができる。
【0031】
なお、各誘電体導波路2,3の個数、誘電体ブロック4または凹部9の個数は図1〜図4に示した個数に限定されるものではない。
【0032】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0033】
(1)従来技術による誘電体アンテナに代わり、高利得・高効率な平面アンテナが安価に実現でき、固定端末、半固定端末、移動端末、車載レーダ等に好適な平面アンテナを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すアレイアンテナの斜視図であり、(a)は上面斜視図、(b)は下面斜視図である。
【図2】図1に示したアレイアンテナのA−A’断面図である。
【図3】図1に示したアレイアンテナのB−B’断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態を示すアレイアンテナの斜視図であり、(a)は上面斜視図、(b)は下面斜視図である。
【図5】従来のアレイアンテナの斜視図である。
【符号の説明】
1 給電用誘電体導波路
2 分岐用誘電体導波路
3 放射用誘電体導波路
4 誘電体ブロック
5 金属導体板
6 金属導体ブロック
7 金属導体ピン
8 同軸コネクタ(給電素子)
9 凹部

Claims (4)

  1. 誘電体導波路と、該誘電体導波路とは異なる誘電率の誘電体ブロックと、金属導体板と、金属導体ピンと、外部電力源から電力を供給する給電素子とにより構成されており、前記誘電体導波路は給電用誘電体導波路と分岐用誘電体導波路と放射用誘電体導波路とからなり、前記金属導体板の上面には前記給電用誘電体導波路と前記放射用誘電体導波路とが密着して配置されており、前記放射用誘電体導波路の上面には複数の前記誘電体ブロックが密着して配置されており、前記金属導体板の下面には前記分岐用誘電体導波路が密着して配置されており、これら金属導体板の上下に配置されている誘電体導波路同士は互いに交差する方向を向き、これら誘電体導波路が交差する位置に両方の誘電体導波路を貫通する前記金属導体ピンが埋め込まれており、前記給電用誘電体導波路には前記給電素子が取り付けられており、該給電素子によって外部電力源から供給された電力を前記給電用誘電体導波路に導波させ、その電力を前記金属導体ピンを介して前記分岐用誘電体導波路に導波させ、さらにその電力を前記金属導体ピンを介して複数の前記放射用誘電体導波路に分配導波させ、これら放射用誘電体導波路の前記誘電体ブロックを配置した部分から外部空間に電力を放射することを特徴とするアレイアンテナ。
  2. 誘電体導波路と、金属導体板と、金属導体ピンと、外部電力源から電力を供給する給電素子とにより構成されており、前記誘電体導波路は凹部を設けた放射用誘電体導波路と凹部を設けない給電用誘電体導波路と凹部を設けない分岐用誘電体導波路とからなり、前記金属導体板の上面には前記給電用誘電体導波路と前記放射用誘電体導波路とが密着して配置されており、前記金属導体板の下面には前記分岐用誘電体導波路が密着して配置されており、これら金属導体板の上下に配置されている誘電体導波路同士は互いに交差する方向を向き、これら誘電体導波路が交差する位置に両方の誘電体導波路を貫通する前記金属導体ピンが埋め込まれており、前記給電用誘電体導波路には前記給電素子が取り付けられており、該給電素子によって外部電力源から供給された電力を前記給電用誘電体導波路に導波させ、その電力を前記金属導体ピンを介して前記分岐用誘電体導波路に導波させ、さらにその電力を前記金属導体ピンを介して複数の前記放射用誘電体導波路に分配導波させ、これら放射用誘電体導波路の前記凹部から外部空間に電力を放射することを特徴とするアレイアンテナ。
  3. 前記金属導体板の前記金属導体ピンが貫通する位置に該金属導体ピンの径より大きい孔を設け、前記金属導体ピンを芯線とし前記孔の内側を外部導体とした同軸線路によって上下の誘電体導波路を接続することを特徴とする請求項1又は2記載のアレイアンテナ。
  4. 前記誘電体導波路の両端に金属導体ブロックを密着して配置し、該金属導体ブロックを利用して前記誘電体導波路に定在波を励振させることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のアレイアンテナ。
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