JP3937652B2 - 平面アンテナ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体導波路を用いた平面アンテナに係り、特に、構成が簡素で製造が容易な平面アンテナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、小型化された移動端末や車載レーダ等の固定局、半固定局或いは移動局に用いられる平面アンテナは、導体線路によるマイクロストリップアンテナなどが主流である。しかしながら、従来の平面アンテナは、電磁波の伝送路に導体を使用するため、周波数の上昇と共に導体に電磁波を励振した際に生じる損失(導体損失)が大きく、高効率な送受信特性を得ることが困難である。そこで、高い周波数で用いるアンテナは、マイクロストリップアンテナから誘電体導波路を用いたアンテナへと推移する傾向がある。誘電体導波路を用いたアンテナにおける従来技術として、グレーティング型の誘電体アンテナが、アイ・イー・イー・イー トランザクション マイクロウェイブセオリーアンドテクニクス VOL.MMT−31,No.2 1981年2月 P199−208、及びアイ・イー・イー・イー トランザクション アンテナアンドプロパゲイション VOL.MMT−39,No.7 1991年6月 P883−891に詳細に述べられている。グレーティング型の誘電体アンテナは、アンテナ内部を一方向に進行する電磁波が外部に漏洩するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術は、誘電体導波路が棒状の直方体になっており、この誘電体導波路を金属導体板上に取り付ける際、微妙な位置調整が必要であり、このとき位置が少しでもずれると放射効率が低下したり、所望の指向性が得られなくなるという問題がある。
【0004】
また、分岐構造のある誘電体導波路を含む平面アンテナを構成する場合、全部の導波路を一括で作製することが難しく、各導波路を別々に成形して組み立てる必要があり、作製が難しく、コストが高いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、構成が簡素で製造が容易な平面アンテナを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、誘電体基板の一方の面上に直線状に伸び前記誘電体基板と同じ誘電率を有する放射用凸部を複数形成すると共に、これら複数の放射用凸部の一端を連絡する給電用凸部を形成し、前記複数の放射用凸部の上面に前記誘電体基板とは誘電率の異なる誘電体ブロックを設け、前記給電用凸部の長手方向一端に給電素子を設け、前記誘電体基板の他方の面に金属導体板を設けたものである。
【0007】
前記放射用凸部の上面に複数の前記誘電体ブロックを配置し、その誘電体ブロックの配置間隔を使用周波数における約1波長の整数倍としてもよい。
【0009】
また、本発明は、誘電体基板の一方の面上に直線状に伸び前記誘電体基板を同じ誘電率の放射用凸部を複数形成すると共に、これら複数の放射用凸部の一端を連絡する給電用凸部を形成し、前記複数の放射用凸部の上面に凹部を形成し、前記給電用凸部の長手方向一端に給電素子を設け、前記誘電体基板の他方の面に金属導体板を設けたものである。
【0010】
前記放射用凸部の上面に複数の前記凹部を配置し、その凹部の配置間隔を使用周波数における約1波長の整数倍としてもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0013】
図1に示されるように、本発明に係る平面アンテナは、誘電体基板1と、誘電体基板1の上面に設けられた直線状(ストライプ状)の凸部2と、誘電体基板1とは誘電率の異なる誘電体ブロック3と、凸部2に外部からの電力を給電するための給電素子4と、誘電体基板1の下面を覆う金属導体板5とにより構成されている。
【0014】
誘電体基板1は、矩形に形成されている。凸部2は、複数設けられている。ひとつの凸部2aは、誘電体基板1の長辺近傍に配置されている。この凸部2aは、誘電体基板1の長手方向に長く伸びており、誘電体基板1の短手方向に切った断面において両側辺が誘電体基板1の上面から垂直に立上がり、上辺が平坦となるものである。この凸部2aの一端より誘電体基板1の短手方向に向けて分岐された凸部2bが設けられている。さらに、この凸部2bより誘電体基板1の長手方向に向けて分岐された複数の凸部2cが誘電体基板1の短手方向に所定間隔で設けられている。従って、誘電体基板1上には、互いに並行な複数の凸部2a,2cと、これらの凸部2a,2cの一端を連絡するひとつの直交した凸部2bとが設けられていることになる。ここで、これら互いに並行な複数の凸部2a,2cを放射用凸部と称し、放射用凸部2a,2cを連絡する凸部2bを給電用凸部と称する。誘電体ブロック3は、直交した給電用凸部2bを除く全ての放射用凸部2a,2cに、それぞれ同じ個数設けられている。各誘電体ブロック3の形状は同一であり、その形状は一辺が放射用凸部2a,2cの幅に等しい矩形となっている。誘電体基板1の長手方向における誘電体ブロック3の配置間隔は一定である。従って、誘電体ブロック3は、縦横それぞれ所定の間隔でアレイ状に配置されていることになる。誘電体ブロック3は、放射用凸部2a,2cの上面に密着させて設けられている。給電素子4は、誘電体基板1の下面より誘電体基板1を貫通して給電用凸部2の一端に挿入されている。金属導体板5は、誘電体基板1と同じ大きさの矩形に形成され、誘電体基板1の下面に密着させて設けられている。
【0015】
図1の平面アンテナの製造工程を図2により説明する。
【0016】
まず、第一工程では、アルミナなどのセラミックを用い、誘電体基板1に凸部2を含めた形状の金型6により、凸部2を有する誘電体基板1を成形し、焼結する。このとき誘電体基板1の下面には給電素子4を取り付ける孔7を設けておく。なお、成形は、金型によるものなので、複数の凸部2を設けることや孔7を設けることで製作費が増加することはほとんどない。第二工程では、誘電体基板1の下面に金属をイオンプレーティングや無電界メッキすることによって金属導体板5を作製する。第三工程では、給電素子4用の孔7についた金属をエッチングなどにより金属導体板5から分離し、給電素子4用の孤立電極9としておく。第四工程では、誘電体ブロック3を凸部2の上面にセラミック用の接着剤で取り付ける。第五工程では、給電素子4を給電素子4用の孔7に取り付ける。給電素子4には同軸コネクタ等を用い、内部導体が孤立電極に接し、外部導体が金属導体板5に接するように取り付ける。なお、第四工程と第五工程とは、順序を入れ替えてもよい。
【0017】
次に、この平面アンテナの動作を説明する。
【0018】
給電素子4によって外部から誘電体基板1に給電された電力は、凸部2内を導波される。凸部2内を導波される電力(電磁波)は、給電用凸部2bによって誘電体基板1全体に分配され、各放射用凸部2a,2c内を導波されてその導波路の途中にある各誘電体ブロック3に到達する。誘電体ブロック3に到達した電磁波のうち、一部は放電用凸部2a,2cに沿って誘電体ブロック3の下を通過し、残りは誘電体基板1と誘電体ブロック3との誘電率差によってこの平面アンテナの外部に放射される。誘電体ブロック3の下を通過した電磁波は、次の誘電体ブロック3に到達して同様の通過と放射とを繰り返す。この結果、誘電体基板1の上面全体から電磁波が放射されることになり、高利得な平面アンテナが実現される。
【0019】
この平面アンテナは、誘電体基板1の誘電率、誘電体基板1の厚さ、凸部2の段差を調整することで、従来の棒状の直方体誘電体導波路と同じ導波路の機能を持たせることができる。
【0020】
また、この平面アンテナは、分岐構造を有する導波路の全体を一括成形できるので、従来の棒状の直方体誘電体導波路を用いたアンテナに比べて、安価に製作できる。
【0021】
また、この平面アンテナは、導波路が誘電体基板と共に成形されるので、微妙な位置調整を必要としない。
【0022】
また、この平面アンテナは、上面の導波路部にも放射素子部にも金属導体が使われていないので、金属導体による導体損失を低減することができ、特にミリ波帯などの高い周波数における利得の改善が図れる。
【0023】
これらの特性を利用し、アンテナとして作用させる励振周波数に対して適切なアンテナのサイズ、構造、材料定数を与えることで、所望の指向性を形成し、かつ所望のエネルギの電波を放射させることができる。また、この平面アンテナは、導体損失の影響が小さいことから、高い電力利得が得られ、結果として、従来の平面アンテナに比べて安価で微妙な調整の必要がない平面アンテナを構成することができる。
【0024】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
【0025】
図3に示されるように、本発明に係る平面アンテナは、誘電体基板1と、誘電体基板1の上面に設けられた直線状の凸部2と、凸部2の上面に設けられた凹部8と、凸部2に外部からの電力を給電するための給電素子4と、誘電体基板1の下面を覆う金属導体板5とにより構成されている。
【0026】
誘電体基板1の形状、凸部2、給電素子4及び金属導体板5の配置は、図1のものと同様であるから説明を省略する。凹部8は、直交した給電用凸部2bを除く全ての放射用凸部2a,2cに、それぞれ同じ個数設けられている。各凹部8は、一辺が放射用凸部2a,2cの幅に等しく、放射用凸部2a,2cの上面からの深さ及び誘電体基板1の長手方向の長さが一定となっている。誘電体基板1の長手方向における凹部8の配置間隔は一定である。従って、凹部8は、縦横それぞれ所定の間隔でアレイ状に配置されていることになる。
【0027】
図3の平面アンテナの製造工程を図4により説明する。
【0028】
まず、第一工程では、アルミナなどのセラミックを用い、誘電体基板1に凸部2及び凹部8を含めた形状の金型により、凸部2及び凹部8を有する誘電体基板1を成形し、焼結する。このとき誘電体基板1の下面には給電素子4を取り付ける孔7を設けておく。なお、成形は、金型によるものなので、複数の凸部2及び凹部8を設けることや孔7を設けることで製作費が増加することはほとんどない。第二工程では、誘電体基板1の下面に金属をイオンプレーティングや無電界メッキすることによって金属導体板5を作製する。第三工程では、給電素子4用の孔7についた金属をエッチングなどにより金属導体板5から分離し、給電素子4用の孤立電極9としておく。第四工程では、給電素子4を給電素子4用の孔7に取り付ける。給電素子4には同軸コネクタ等を用い、内部導体が孤立電極9に接し、外部導体が金属導体板5に接するように取り付ける。
【0029】
次に、この平面アンテナの動作を説明する。
【0030】
給電素子4によって外部から誘電体基板1に給電された電力は、凸部2内を導波される。凸部2内を導波される電力(電磁波)は、給電用凸部2bによって誘電体基板1全体に分配され、各放射用凸部2a,2c内を導波されてその導波路の途中にある各凹部8に到達する。凹部8に到達した電磁波のうち、一部は放射用凸部2a,2cに沿って凹部8の下を通過し、残りは凹部8の形状によって(導波路の途中にギャップがあるという形状によって)この平面アンテナの外部に放射される。凹部8の下を通過した電磁波は、次の凹部8に到達して同様の通過と放射とを繰り返す。この結果、誘電体基板1の上面全体から電磁波が放射されることになる。
【0031】
この平面アンテナは、誘電体ブロック3をアレイ状に配置するという工程を必要としない。給電素子4用の孔7、凸部2及び凹部8が金型で一括成形できるので、いっそう安価に製作できると共に微妙な位置調整を必要としない。
【0032】
さらに、他の実施形態を説明する。
【0033】
図5は、平面アンテナの製造工程を示すものである。この平面アンテナは、図1の平面アンテナにおいて誘電体ブロック3がゾルゲル法で作製した誘電体薄膜の孤立パターン11(第六工程参照)となっているもので、それ以外は図1の平面アンテナと同じ構成を有する。
【0034】
この平面アンテナの製造工程を説明すると、第一工程では、アルミナなどのセラミックを用い、誘電体基板1に凸部2及び給電素子4を取り付ける孔7を含めた形状の金型により、凸部2を有する誘電体基板1を成形し、焼結する。第二工程では、凸部2による段差を埋めるように誘電体基板1の上面に樹脂12を塗布し、硬化させる。第三工程では、樹脂12の上面を研削、研磨し、凸部2の上面を露出させる。第四工程では、アレイ状に穴14の空いたメタルマスク13を誘電体基板1の上面に密着させる。第五工程では、メタルマスク13を密着させたまま、ゾルゲル法で誘電体薄膜15を形成する。その後、メタルマスク13を取り外して孤立パターン11を形成し、乾燥させる。第六工程では、樹脂12の残りを除去して洗浄した後、再度、焼結する。この孤立パターン11が誘電体ブロック3に相当する。第七工程では、誘電体基板1の下面に金属をイオンプレーティングや無電界メッキすることによって金属導体板5を作製する。この後、給電素子4用の孔7についた金属をエッチングなどにより金属導体板5から分離し、給電素子4を給電素子4用の孔7に取り付ける。
【0035】
図2の製造方法では、複数の誘電体ブロック3を個別に接着剤で取り付けていたが、図5の製造方法では、誘電体基板1とは誘電率の異なる材料をメタルマスク13及びゾルゲル法を用いて一括成形しているので、さらに安価に製作が可能となる。
【0036】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0037】
(1)所望配置の複数の導波路を一括で形成することができ、位置調整も不要であるため、高効率・高利得な平面アンテナを安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す平面アンテナの図であり、(a)は上面側斜視図、(b)は下面側斜視図である。
【図2】図1の平面アンテナの製造工程図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す平面アンテナの図であり、(a)は上面側斜視図、(b)は下面側斜視図である。
【図4】図3の平面アンテナの製造工程図である。
【図5】図1の平面アンテナの他の実施形態による製造工程図である。
【符号の説明】
1 誘電体基板
2 凸部
3 誘電体ブロック
4 給電素子
5 金属導体板
6 金型
7 給電素子取付用孔
8 凹部
9 孤立電極
11 誘電体薄膜の孤立パターン
12 樹脂
13 メタルマスク
14 アレイ状の孔
15 誘電体薄膜

Claims (4)

  1. 誘電体基板の一方の面上に直線状に伸び前記誘電体基板と同じ誘電率を有する放射用凸部を複数形成すると共に、これら複数の放射用凸部の一端を連絡する給電用凸部を形成し、前記複数の放射用凸部の上面に前記誘電体基板とは誘電率の異なる誘電体ブロックを設け、前記給電用凸部の長手方向一端に給電素子を設け、前記誘電体基板の他方の面に金属導体板を設けたことを特徴とする平面アンテナ。
  2. 前記放射用凸部の上面に複数の前記誘電体ブロックを配置し、その誘電体ブロックの配置間隔を使用周波数における約1波長の整数倍としたことを特徴とする請求項1記載の平面アンテナ。
  3. 誘電体基板の一方の面上に直線状に伸び前記誘電体基板を同じ誘電率の放射用凸部を複数形成すると共に、これら複数の放射用凸部の一端を連絡する給電用凸部を形成し、前記複数の放射用凸部の上面に凹部を形成し、前記給電用凸部の長手方向一端に給電素子を設け、前記誘電体基板の他方の面に金属導体板を設けたことを特徴とする平面アンテナ。
  4. 前記放射用凸部の上面に複数の前記凹部を配置し、その凹部の配置間隔を使用周波数における約1波長の整数倍としたことを特徴とする請求項記載の平面アンテナ。
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