JP3932209B2 - 皮膚外用剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メリッサ(Melissa officinalis)の抽出物と、特定の細胞膜親和性物質から選ばれた1種又は2種以上を併用することを特徴とする、皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、皮膚の潤滑性、柔軟性を保ち、皮膚の小ジワやかさつきを防ぐ効果に優れしかも美白効果を有する皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
メリッサ(Melissa officinalis)は、シソ科の多年生の植物で、柑橘類のレモンのような香りがすることから、古くからハーブとして利用されている。このメリッサについてはすでに、チロシナーゼ活性阻害作用を有することを見出し、これを配合した美白化粧料を開示している(特開平6−199647)。また、最近この抽出物がヒアルロニダーゼ阻害作用を有することが知られてきた。
【0003】
ここで、ヒアルロニダーゼは、生体に広く分布するヒアルロン酸を分解する酵素である。このヒアルロニダーゼが分解するヒアルロン酸は、β-D-N-アセチルグルコサミンとβ-D-グルクロン酸が交互に結合してできた直鎖状の高分子多糖であって、酸性ムコ多糖の1種で、コンドロイチン硫酸などとともに結合組織に広く分布している。結合組織内での機能として、細胞間隙に水を保持し、また組織内にジェリー状のマトリックスを形成して細胞を保持したり、皮膚の潤滑性と柔軟性を保ち、外力及び細菌感染を防止していると考えられる。皮膚各部位における酸性ムコ多糖の分布は、表皮・真皮ともにヒアルロン酸がコンドロイチン硫酸やヘパリンよりも多く存在する。そのため、このヒアルロン酸の水分保持が、皮膚のみずみずしさに寄与しており、皮膚にみずみずしさがなくなり、しわが形成されるのは、皮下の結合組織から水分を豊富に含むヒアルロン酸が減少するからではないかと言われている(光井武夫編,新化粧品学,南山堂,1993,p.146)。
【0004】
また、炎症及びアレルギーの発症には、ヒスタミンが関与することが知られている。ヒスタミンが肥満細胞から遊離される際には、ヒアルロニダーゼが介在している可能性が高い。ヒアルロニダーゼは、さらに結合組織のマトリックスを破壊し、炎症系細胞の組織への浸潤や血管の透過性を促進する役割を演じているので、ヒアルロニダーゼの活性を阻害することにより、炎症やアレルギー反応が抑制される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
メリッサの有するヒアルロニダーゼ阻害作用及び美白作用を相乗的に高め、しかも安全性、安定性に優れた皮膚外用剤を得ることを本発明の目的とした。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、メリッサ抽出物と特定の細胞膜親和性を有する物質を併用することにより、相乗的にヒアルロニダーゼ阻害作用及び美白作用が向上し、しかも安定性,安全性に優れることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明に使用されるメリッサ抽出物は、メリッサの全草又はそれらの葉、茎、根、種子及び花のうち何れかを単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いる。また、生のまま若しくは乾燥した状態で抽出することができる。
【0008】
抽出溶媒としても特に限定されないが、水、エタノール,メタノール,1,3−ブチレングリコール,グリセリン,ジグリセリン,ポリグリセリン,イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン,エーテル,テトラヒドロフラン等の有機溶媒等が例示され、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、抽出効率を高めるために界面活性剤を添加してもよい。
【0009】
さらに、抽出方法としては、室温,冷却又は加温した状態で含浸させて抽出する方法、水蒸気蒸留等の蒸留法を用いて抽出する方法、生のメリッサから圧搾して抽出物を得る圧搾法等が例示され、これらの方法を単独で又は2種以上を組み合わせて抽出を行う。
【0010】
また、抽出物としては、粗抽出物をそのまま、若しくは粗抽出物を精製,分画したものを用いることができる。
【0011】
本発明では併用する細胞膜親和性物質として、リン脂質,糖脂質,ステロール類及びトリテルペンアルコールから選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0012】
本発明で用いるリン脂質及び糖脂質の起源は問わず、合成品及び動植物組織より抽出したものが用いられる。リン脂質及び糖脂質としては、ホスファチジン酸,コリンホスホグリセリド,エタノールアミンホスホグリセリド,N-アシルホスファチジルエタノールアミン,セリンホスホグリセリド,グリセロールホスホグリセリド,グリセロリン酸ホスホグリセリド,ホスファチジルグリセロールホスホグリセリド等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン,セラミドホスホエタノールアミン,セラミドホスホグリセロール,セラミドホスホグリセロールリン酸,セラミドホスホイノシトール等のスフィンゴリン脂質、グリコシルセラミド,ガラクトシルセラミド硫酸,ラクトシルスルファチド,ガングリオシド等のスフィンゴ糖脂質、グリコシルジアシルグリセロール,ホスホグリセロ糖脂質,グルクロン酸含有グリセロ糖脂質,スルホグリセロ糖脂質等のグリセロ糖脂質が例示される。
【0015】
さらに、本発明で用いられる高級アルコールとしては、ステロール類及びトリテルペンアルコールも好ましい。具体的には、コレステロール,ジヒドロコレステロール,セレブロステロール,ラノステロール,ジヒドロラノステロール,アグノステロール,ジヒドロアグノステロール,シトステロール,スチグマステロール,カンペステロール及びこれらの混合物であるラノリンアルコール,フィトステロール等が例示される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明において、上記メリッサ抽出物及び特定の細胞膜親和性物質の皮膚外用剤への配合量はそれぞれ、0.001〜3重量%及び0.1〜20重量%が適当であり、配合比は特に限定されない。
【0017】
本発明にかかる皮膚外用剤は、ローション,油剤,乳剤,クリーム,軟膏等の形態をとることができる。またさらに、化粧水,クリーム,乳液,パック,美容液,洗浄料等の様々な形態の化粧料として提供することができる。
【0018】
また、本発明における皮膚外用剤の適用部位は、顔面のみならず、頭皮,肩,腕,腹,背中,脚部等全身に使用できる。
【0019】
本発明においてはさらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬品等に一般に用いられている各種成分、すなわち、油分、保湿剤、ビタミン類、紫外線吸収剤、水溶性高分子、酸化防止剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、金属イオン封鎖剤、ソウハクヒエキス,グルタチオン,コウジ酸及びその誘導体類,ハイドロキノングルコピラノシド等のハイドロキノン及びその誘導体類等の美白剤、収れん剤、清涼化剤、抗ヒスタミン剤、皮脂抑制剤、角質剥離・溶解剤、抗菌防腐剤、温感剤等を配合できる。
【0020】
【実施例】
本発明の特徴について、実施例により詳細に説明する。まず、各実施例で用いたメリッサ抽出物の調製方法を示す。
【0021】
[メリッサ抽出物調製方法]
メリッサの全草30gを2倍量のエタノールに1週間浸漬した後濾過して植物抽出物を得る。これを凍結乾燥し、さらに0.2mg/ml水溶液を調製し、メリッサ抽出物とした。
【0022】
実施例1 水中油型乳液状美容液
製法:(1)〜(4)の油相及び(5)〜(7)の水相の成分をそれぞれ75℃に加熱し混合均一化した後、水相に油相を添加し攪拌しながら予備乳化する。さらに、70℃に加熱した(8)の成分を添加した後、ホモミキサーにて乳化する。冷却後40℃で、(9)〜(11)の成分を混合均一化して添加する。
【0023】
実施例2 油中水型乳液
(1)ミツロウ 2.0(重量%)
(2)マイクロクリスタリンワックス 1.0
(3)ラノリンアルコール 2.0
(4)流動パラフィン 30.0
(5)ステアリン酸アルミニウム 0.2
(6)ソルビタンセスキオレエート 4.0
(7)ショ糖脂肪酸エステル 1.0
(8)グリセリン 8.0
(9)精製水 51.4
(10)メリッサ抽出物 0.1
(11)フェノキシエタノール 0.3
製法;(1)〜(6)の油相及び(7)〜(9)の水相の成分をそれぞれ75℃に加熱し混合均一化した後、油相に水相を添加し乳化する。冷却後40℃で、(10)と(11)の成分を添加する。
【0024】
実施例3 油中水型軟膏
(1)ミツロウ 3.0(重量%)
(2)リンゴ酸ジイソステアリル 8.0
(3)スクワラン 34.0
(4)固形パラフィン 2.0
(5)マイクロクリスタリンワックス 9.0
(6)スフィンゴミエリン 0.2
(7)白色ワセリン 5.0
(8)アジピン酸ヘキシルデシル 10.0
(9)セスキオレイン酸ソルビタン 3.5
(10)ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油 1.0
(11)プロピレングリコール 2.0
(12)精製水 22.1
(13)メリッサ抽出物 0.2
製法;(1)〜(10)の油相及び(11)〜(12)の水相の成分をそれぞれ75℃に加熱し混合均一化した後、油相に水相を添加し乳化する。冷却後40℃で、(13)の成分を添加する。
【0025】
実施例4〜8 水中油型乳化クリーム
(1)ミツロウ 10.0(重量%)
(2)白色ワセリン 5.0
(3)細胞膜親和性物質 適量
(4)スクワラン 27.5
(5)ステアリン酸モノグリセリル 4.0
(6)セスキオレイン酸ソルビタン 2.0
(7)ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油 2.0
(8)グリセリン 5.0
(9)精製水 適量
(10)メリッサ抽出物 0.1
製法;(1)〜(7)の油相及び(8)〜(9)の水相成分をそれぞれ75℃に加熱し混合均一化した後、油相に水相を徐々に攪拌しながら添加し、転相乳化する。攪拌しながら40℃まで冷却し、(10)を添加する。(9)の精製水の配合量は、(3)の細胞膜親和性物質の配合量により変化し、全体で100重量%になるように調製する。
【0026】
実施例4〜8において配合した細胞膜親和性物質とその配合量を表1にまとめる。同時に細胞膜親和性物質を配合せずに上記水中油型乳化クリームを調製し、比較例とした。
【表1】
【0027】
本発明の実施例4〜8及び比較例について、皮膚の老化防止効果を、皮膚のしわ発生防止効果の評価により検討した。ヘアレスマウス10匹を一群とし、各群について本発明の実施例及び比較例をそれぞれ1日1回背部に塗布し、1J/平方cm/週のUVAを50週間照射し、しわの発生状況を経時的に肉眼観察により評価した。しわの発生状況は、「発生せず;0点」,「微小なしわがわずかに発生;1点」,「軽微なしわが明確に発生;2点」,「中程度のしわが発生;3点」,「深いしわが発生;4点」として点数化し、各群の平均点を算出して、表2に示した。その際、精製水を塗布した群を対照とした。
【0028】
【表2】
表2より、メリッサ抽出物のみを配合し、細胞膜親和性物質を配合していない比較例では、ほぼ中程度のシワが発生していたのに対し、メリッサ抽出物と細胞膜親和性物質を併用した実施例4〜8では、シワの発生が顕著に抑制されており、UVAを50週間照射した後においても、各群とも微小なしわの発生を認めただけであった。
【0029】
実施例4〜8及び比較例を用いて官能評価を行った。官能評価は、シワ等の老化症状の気になる40〜60歳のパネル10人(R群)、及び20〜40歳のしみ,そばかすの気になるパネル10人(W群)を1群として実施例及び比較例をそれぞれ1日2回,3カ月間連続使用してもらい、3カ月後の肌状態についてアンケート調査を行った。
【0030】
【表3】
官能評価の結果として、各項目における評価者の数を表3に示した。メリッサ抽出物のみを配合した比較例使用群では、皮膚の老化症状の改善及び美白効果があると回答したパネルが、4割以下しかいなかったのに対し、メリッサ抽出物と細胞膜親和性物質を併用した実施例4〜8使用群では、8割以上のパネルが皮膚の老化症状の改善効果及び美白効果があると回答しており、メリッサ抽出物と細胞膜親和性物質を併用することにより、相乗的に老化症状の改善効果及び美白効果が高まることが認められた。
【0031】
なお、上記の使用期間において、いずれの実施例を使用した群においても、痛み、痒み等の皮膚刺激やアレルギー反応等の皮膚症状を訴えたパネラーはいなかった。また、乳化状態の悪化や配合成分の沈降,変質等も認められなかった。
【0032】
【発明の効果】
以上詳述したように、メリッサ抽出物と特定の細胞膜親和性物質を併用してなる皮膚外用剤は、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用及びチロシナーゼ活性阻害作用が相乗的に高まり、非常に良好なシワ,ハリ,ツヤ,タルミ等の皮膚老化症状を改善する効果及び美白効果を発揮し、さらに安全性も良好である。
Claims (1)
- メリッサ(Melissa officinalis)の抽出物と、卵黄レシチン,ガングリオシド,コレステロールから選ばれた1種又は2種以上の細胞膜親和性物質を併用してなる、ヒアルロニダーゼ阻害用皮膚外用剤。
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