JP3930962B2 - 放電加工用電源装置における障害検知方法、放電加工用電源装置の制御方法及び放電加工用電源装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極とワークとの間に形成される放電加工間隙に加工用電圧を印加するための放電加工用電源装置に障害が生じたことを検知するための方法、これを用いた放電加工用電源装置の制御方法及び放電加工用電源装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
放電加工間隙に加工用電圧を間歇的に印加するように構成された従来の放電加工用電源装置は、バイポーラ型のスイッチングトランジスタを多数並列接続して成る半導体スイッチ回路を介して直流電圧を放電加工間隙に印加しておき、半導体スイッチ回路を構成するスイッチングトランジスタを所望のオン、オフ時間で駆動するようになっている。
【0003】
したがって、何らかの理由によって半導体スイッチ回路に過電流が流れると、これらのスイッチングトランジスタが過熱し、熱暴走を生じるという事故が発生し、スイッチングトランジスタが破損する虞がある。このような熱暴走に有効な対策としてバイポーラ型のスイッチングトランジスタに代えてMOS−FET型のスイッチングトランジスタを採用する構成も公知であるが、放電加工間隙に過電流が流れたり、過電圧が印加されたりした場合、また装置の設置環境が悪いため導電性の微細な導電粉等がトランジスタ回路部分に付着して絶縁を失った場合など、それらの破損を生じる虞がある。
【0004】
このような問題を回避するため、特開昭61−111821号公報には、放電加工用電源装置において、並列接続されたスイッチング素子に流れる電流を検出する過電流検出手段、これらスイッチング素子の開閉を制御する制御回路の出力端に接続された過電圧検出手段、および前記スイッチング素子の電流入出力端間の状態を監視する監視手段のうちの少なくとも1つを設けた構成が開示されている。すなわち、特開昭61−111821号公報の発明の構成では、過電流検出手段、過電圧検出手段、スイッチング素子のD−S間の状態を監視する監視手段のうち少なくとも1つを設け、異常の場合電源を遮断するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来では、警報型フューズ、フューズ特性を有する抵抗あるいは過電流検出器を回路中に設け、加工間隙に過電流がTr部分を通して流れたときフューズが溶断することを利用して回路を遮断している。
【0006】
しかし、そのような対処方法では回路が作動するまでの間に過電流が加工間隙に流れてしまうので、例えばワイヤカット放電加工装置ではワイヤ電極が断線したり、形彫り放電では過電流によるアーク痕を残すという別の問題を引き起こす恐れがある。しかも、前記遮断手段の作動時間が長い場合にはかなりの過電流が流れることになり、被加工物に大きな損傷を与えるばかりでなく他の回路への影響も避けられない。
【0007】
さらに、従来技術では、異常が発生した場合には警報を発したり加工運転を中止するしかない。加工途中で加工を中断すると、被加工物を別の装置に再度取り付け直して加工作業を続けるか、製造メーカーに依頼して装置を修理するなどの手間が生じ、生産計画を大幅に狂わせることになる。
【0008】
本発明の目的は、したがって、従来技術における上述の問題点を解決することができる、放電加工用電源装置における障害検知方法、及びこれを用いた放電加工用電源装置の制御方法及び放電加工用電源装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明によれば、加工用電極と被加工物との間に形成される加工間隙に直流電源から放電加工用のパルス電流を供給するため前記直流電源と前記加工間隙との間に直列接続されるようにして放電加工用電源装置に設けられゲートパルス信号によってオン、オフ制御される複数のスイッチング素子の作動状態に不具合が生じたか否かを検出するため、前記スイッチング素子の夫々に導通状態にあることを示す電気的信号を得るためのチェック用直流電圧を印加しておき、前記ゲートパルス信号が前記スイッチング素子をオフ制御する状態にあるときの前記電気的信号の状態から前記スイッチング素子の良否を判定するようにした放電加工用電源装置における障害検知方法が提案される。
【0010】
スイッチング素子がゲートパルス信号によってオフ制御されている場合、チェック用直流電圧の印加により得られた電気的信号が導通状態を示した場合、スイッチング素子が不良であると判定される。
【0011】
本発明では、上記構成において、チェック用直流電圧を複数のスイッチング素子の夫々に独立して印加するように構成することもできる。また、複数のスイッチング素子が複数組に分けられており、チェック用直流電圧を複数組の夫々に独立して印加するように構成することもできる。
【0012】
本発明では、上記構成において、ゲートパルス信号がスイッチング素子をオフ制御する状態にある期間中において、電気的信号の有無を放電加工開始に先立ってチェックを開始するように構成することもできる。
【0013】
本発明では、上記構成において、ゲートパルス信号がスイッチング素子をオン状態からオフ状態にするためにレベル変化してから所定時間が経過するまでは前記電気的信号による前記スイッチング素子の良否判定を行わないように構成することもできる。
【0014】
本発明では、上記構成において、ゲートパルス信号がスイッチング素子をオン制御する状態にある期間中、電気的信号の有無に基づいてスイッチング素子がオンとならない障害が発生しているか否かをも判定するように構成することができる。
【0015】
本発明によれば、直流電源と、複数のスイッチング回路が並列に接続されて成り、加工用電極と被加工物との間に形成される加工間隙と該直流電源との間に直列接続されるスイッチングユニットと、前記加工間隙に放電加工用のパルス電圧を間歇的に供給するため前記複数のスイッチング回路にオン、オフ制御のためのゲートパルス信号を与える制御ユニットとを備えて成る放電加工用電源装置において、前記複数のスイッチング回路の夫々の作動状態を示す検出信号を得るための検出回路と、前記検出信号と前記ゲートパルス信号とに応答し前記スイッチング回路がオフ制御状態にあるときの対応する検出信号の状態から前記スイッチング回路の夫々の良否を判定する良否判定回路と、該良否判定回路の出力に応答して前記スイッチングユニットの不良部位に関する表示を行う表示部とを備えた放電加工用電源装置が提案される。
【0016】
ゲートパルス信号によってスイッチング回路がオフ制御状態にある場合において検出回路から得られた検出信号が良否判定回路においてチェックされ、該検出信号がスイッチング回路のオン動作を示している場合にはスイッチング回路が不良と判定される。この結果に基づき、表示部においてこれらのスイッチング回路の不良部位に関する表示が行われる。ここで、検出回路を、複数のスイッチング回路の夫々に対応して1つづつ設ける構成としてもよい。
【0017】
本発明によれば、直流電源と、並列的に接続される複数のスイッチング素子を含んで成り加工用電極と被加工物との間に形成される加工間隙と該直流電源との間に直列接続されるスイッチング回路と、前記加工間隙に放電加工用のパルス電圧を間歇的に供給するため前記スイッチング素子にオン、オフ制御のためのゲートパルス信号を選択的に与えることができる制御ユニットとを備えて成る放電加工用電源装置において、前記複数のスイッチング素子の夫々の作動状態を示す検出信号を得るための検出回路と、前記検出信号と前記ゲートパルス信号とに応答し前記スイッチング素子がオフ制御状態にあるときの対応する検出信号の状態から前記スイッチング素子の夫々の良否を判定する良否判定回路と、該良否判定回路の出力に応答して前記複数のスイッチング素子のそれぞれの良否に関する表示を行う表示部とを備えた放電加工用電源装置が提案される。
【0018】
本発明によれば、直流電源と、複数のスイッチング回路が並列に接続されて成り加工用電極と被加工物との間に形成される加工間隙と該直流電源との間に直列に接続されるスイッチングユニットと、前記加工間隙に放電加工用のパルス電圧を間歇的に供給するため前記複数のスイッチング回路にオン、オフ制御のためのゲートパルス信号を与える制御ユニットとを備えて成り、前記複数のスイッチング回路が、それぞれ、並列的に接続される複数の半導体スイッチ素子を含んで構成され、前記複数の半導体スイッチを対応するスイッチング回路から選択的に切り離すスイッチを設けた放電加工用電源装置において、前記複数のスイッチング回路の夫々の作動状態を示す検出信号を得るための検出回路と、前記検出信号と前記ゲートパルス信号とに応答し前記スイッチング回路がオフ制御状態にあるときの対応する検出信号の状態から前記スイッチング回路の夫々の良否を判定する良否判定回路と、該良否判定回路の出力に応答して前記スイッチング回路の不良部位に関する表示を行う表示部とを備えた放電加工用電源装置が提案される。
【0019】
本発明では、直流電源と、加工用電極と被加工物との間に形成される加工間隙と該直流電源との間に直列接続される複数のスイッチング素子と、前記加工間隙に放電加工用のパルス電圧を間歇的に供給するため前記スイッチング素子にオン、オフ制御のためのゲートパルス信号を与える制御ユニットとを備えて成る放電加工用電源装置において、前記複数スイッチング素子が、複数スイッチング素子からなるスイッチング回路ユニットを構成され、該夫々のスイッチング回路ユニットと前記直流電源との間に直列接続された遮断スイッチ素子と、前記スイッチング回路ユニットの夫々の作動状態を示す検出信号を得るための検出回路と、前記検出信号と前記ゲートパルス信号とに応答し前記スイッチング素子がオフ制御状態にあるときの対応する検出信号の状態から前記スイッチング回路ユニットの夫々の良否を判定する良否判定回路と、該良否判定回路に応答し不良と判定されたスイッチング回路ユニットに接続されている前記遮断スイッチ素子をオフとする遮断制御回路とを備えた放電加工用電源装置が提案される。
【0020】
遮断制御回路によって不良と判定されたスイッチング回路ユニットが直流電源が切り離されるので、他の正常なスイッチング回路ユニットを用いて放電加工を続けることが可能となる。
【0021】
本発明では、直流電源と、加工用電極と被加工物との間に形成される加工間隙と該直流電源との間に直列接続される複数のスイッチング素子と、前記加工間隙に放電加工用のパルス電圧を間歇的に供給するため前記スイッチング素子にオン、オフ制御のためのゲートパルス信号を与える制御ユニットとを備えて成る放電加工用電源装置において、前記直流電源と前記夫々の複数のスイッチング素子との間に直列接続された遮断スイッチ素子と、前記複数のスイッチング素子の夫々の作動状態を示す検出信号を得るための検出回路と、前記検出信号と前記ゲートパルス信号とに応答し前記スイッチング素子がオフ制御状態にあるときの対応する検出信号の状態から前記スイッチング素子の夫々の良否を判定する良否判定回路と、該良否判定回路に応答し不良と判定されたスイッチング素子に接続されている前記遮断スイッチ素子をオフとする遮断制御回路とを備えた放電加工用電源装置が提案される。
【0022】
本発明では、加工用電極と被加工物との間に形成される加工間隙に直流電源から放電加工用のパルス電流を供給するため前記直流電源と前記加工間隙との間に直列接続されるようにして放電加工用電源装置に設けられゲートパルス信号によってオン、オフ制御される複数のスイッチング素子の作動状態に応じて前記放電加工用電源装置を制御する方法であって、前記スイッチング素子の夫々に導通状態にあることを示す電流信号を得るためのチェック用直流電圧を印加しておき、前記ゲートパルス信号が前記スイッチング素子をオフ制御する状態にあるときの前記電流信号の有無から前記スイッチング素子の良否を判定し、動作不良と判定されたスイッチング素子を示す情報を表示装置に出力し、不良スイッチング素子の異常を表示するようにした放電加工用電源装置の制御方法が提案される。
【0023】
本発明では、加工用電極と被加工物との間に形成される加工間隙に直流電源から放電加工用のパルス電流を供給するため前記直流電源と前記加工間隙との間に直列接続されるようにして放電加工用電源装置に設けられゲートパルス信号によってオン、オフ制御される複数のスイッチング素子の作動状態に応じて前記放電加工用電源装置を制御する方法であって、前記スイッチング素子の夫々に導通状態にあることを示す電流信号を得るためのチェック用直流電圧を印加しておき、前記ゲートパルス信号が前記スイッチング素子をオフ制御する状態にあるときの前記電流信号の有無から前記スイッチング素子の良否を判定し、動作不良と判定されたスイッチング素子を前記直流電源から切り離すようにした放電加工用電源装置の制御方法が提案される。
【0024】
本発明では、加工用電極と被加工物との間に形成される加工間隙に直流電源から放電加工用のパルス電流を供給するため前記直流電源と前記加工間隙との間に直列接続されるようにして放電加工用電源装置に設けられゲートパルス信号によってオン、オフ制御される複数のスイッチング素子の作動状態に応じて前記放電加工用電源装置を制御する方法であって、前記スイッチング素子の夫々に導通状態にあることを示す電流信号を得るためのチェック用直流電圧を印加しておき、前記ゲートパルス信号が前記スイッチング素子をオフ制御する状態にあるときの前記電流信号の有無から前記スイッチング素子の良否を判定し、動作不良と判定されたスイッチング素子を前記直流電源から切り離すと共に、未使用状態にあるスイッチング素子から加工電流の供給を行うようにした放電加工用電源装置の制御方法が提案される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例につき詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明による放電加工用電源装置の実施の形態の一例を示す概略構成図である。
【0027】
図1に示した放電加工用電源装置において、1は電圧可変型の直流電源、4は被加工物Wと加工用電極Eとによって形成される加工間隙、3は直流電源1から加工間隙4に所要の放電加工用のパルス電流を供給するため直流電源1と加工間隙4との間に直列に接続されるようにして設けられた電源出力供給ユニットである。
【0028】
電源出力供給ユニット3は、並列的に設けられた3つのトランジスタユニット31〜33を有している。トランジスタユニット31〜33は対応する電流制限用の抵抗器R1、R2、R3を介して遮断ユニット2に接続されている。なお、これらの抵抗器R1、R2、R3は、ワイヤカット放電加工機の場合には配線のインピーダンスとすることができる。
【0029】
遮断ユニット2は、トランジスタユニット31〜33を直流電源1と加工間隙4との間から選択的に切り離すためのリレーを用いて構成されたスイッチ回路であり、トランジスタユニット31〜33に対応して設けられたスイッチCD1〜CD3から成っている。したがって、スイッチCD1〜CD3が全てオンとなっていると、トランジスタユニット31〜33は直流電源1と加工間隙4との間に並列的に接続される。遮断ユニット2と直流電源1との間には加工時にオンとされる電磁開閉器PSRが設けられている。
【0030】
5は、トランジスタユニット31〜33の導通状態を制御するためのゲート制御回路であり、ゲート制御回路5からトランジスタユニット31〜33に出力されるゲートパルス信号Gateに応答して、トランジスタユニット31〜33の導通が制御される。
【0031】
例えば、ゲートパルス信号Gateに応答してトランジスタユニット31が導通状態とされると、抵抗器R1の値に応じたレベルの放電加工用パルス電流を直流電源1から加工間隙4に流すことができる。したがって、トランジスタユニット31〜33の導通、非導通の組み合わせを変えることにより最大で8通りの電流制御状態を実現できる。トランジスタユニットの数を増すことによりより多くの電流制御状態を実現できる。
【0032】
10は、放電加工装置本体に設けられた数値制御(NC)装置、9はブラウン管、LCD等の表示装置であり、NC装置10は本発明による放電加工用電源装置の制御回路7と接続されている。
【0033】
制御回路7はマイクロコンピュータシステムを含んで構成されており、制御回路7及びNC装置10は入出力ユニット(I/O)8を介してゲート制御回路5、遮断ユニット2、電源出力供給ユニット3及び電磁開閉器PSRと接続されている。なお、NC装置10において設定された電気的加工条件は、入出力ユニット8を介して遮断ユニット2及び電源出力供給ユニット3の回路状態を変えることにより行われる。また、制御回路7はNC装置10の機能の一部としてソフトウェアーによる制御とすることも可能である。
【0034】
本実施の形態では、トランジスタユニット31〜33のそれぞれは、後述するように加工間隙4に放電加工エネルギーを供給するための複数のスイッチング素子と、これらのスイッチング素子の作動状態を示す検出信号を得るための検出回路とを有している。トランジスタユニット31〜33の各ユニットの検出回路において得られた検出信号DS1〜DS3は、スイッチング素子の破損を判断する機能を有する良否判断回路6に入力されている。
【0035】
良否判断回路6での判断結果を示す良否判断信号NGSは入出力ユニット8を介して制御回路7に取り込まれ、所定のプログラムに従ってソフト処理され、NC装置10を介して表示装置9でその良否判断結果が表示される。すなわち、入出力ユニット8、制御回路7、NC装置10、表示装置9は、良否判断回路6の出力に応答してスイッチング素子の不良箇所などの表示を行う表示部を構成している。
【0036】
本装置は、良否判断回路6においてトランジスタユニット31〜33のうちのいずれかが不良と判断された場合、良否判断回路6の出力に基づいて不良と判断されたトランジスタユニットを直流電源1と加工間隙4との間から切り離すように遮断ユニット2の各スイッチCD1〜CD3のオン、オフを制御する機能を具えている。この機能は制御回路7に予めセットされているプログラムにより遂行される。
【0037】
次に、図2を参照してトランジスタユニット31の構成について詳しく説明する。
【0038】
トランジスタユニット31は、スイッチング素子として使用されるトランジスタTr1〜Trnとこれらに対応するスイッチS1〜Snとが図示の如く接続されて成るスイッチング回路311と、ゲート信号Gateに応答してトランジスタTr1〜Trnをそれぞれオン、オフ制御するためのドライブ信号DV1〜DVnを出力するドライブ回路312と、これらのトランジスタTr1〜Trnの作動状態を示す検出信号DS1を得るための検出回路313とから成っている。
【0039】
スイッチS1〜Snは、入出力ユニット8から供給されるスイッチ制御信号I/OS1〜I/OS2にそれぞれ応答してオン、オフされる。
【0040】
検出回路313において、E2は検出信号DS1を得るためにスイッチング回路311に印加する直流電圧を出力するための直流電圧源であり、直流電圧源E2からの電圧はフォトカップラPT内の発光ダイオードPT1、抵抗器DR、逆流防止用のダイオードD1を介してスイッチング回路311に図示の如く印加されている。
【0041】
発光ダイオードPT1に電流が流れて発光した場合、この発光信号は受光素子PT2により電気的信号に変換され、検出信号DS1として取り出される。
【0042】
以上、トランジスタユニット31の構成について説明したが、他のトランジスタユニット32、33も同様の構成となっている。
【0043】
図3は良否判断回路6の回路図である。ここで、DFF1〜DFF6はD型フリップフロップ、TFFはT型フリップフロップ、SRFFはR−Sフリップフロップ、DELAYはゲート信号Gateを500nS遅延させる遅延素子、INV1〜INV4はインバータ、DIF1〜DIF3はフィルタ、OR1〜OR3はオアゲート、CKはクロックパルス発生器である。これらは図3に示すように接続されている。
【0044】
良否判断回路6は検出信号DSを構成する検出信号DS1〜DS2及びゲート信号Gateに応答して以下のように動作し、良否判断信号NGSを構成する第1〜第3良否判断信号NGS1〜NGS3を出力する。
【0045】
以下、図4に示した図3の各部の信号のタイムチャートを参照しながら、図3に示す良否判断回路6の動作について説明する。
【0046】
ここで、DGateは、ゲート信号Gateと500nSの時間差を有する遅延ゲート信号、SETはR−SフリップフロップSRFFのセット信号、RESETはR−SフリップフロップSRFFのリセット信号、INHはR−SフリップフロップSRFFから出力される禁止信号、CP1はT型フリップフロップTFFからのパルス出力信号、CP2はフィルタDIF1からのクロック信号、/DS1〜/DS3は検出信号DS1〜DS3の各反転検出信号、Sourceは図2の端子SOUに流れるソース電流である。なお、ソース電流は、放電加工中の良否判定動作の場合に端子SOUから加工間隙4に流れる電流波形を示している。
【0047】
ゲート信号Gateは、ゲート制御回路5から出力され、トランジスタTr1〜Trnを開閉制御するための信号である。遅延ゲート信号DGateは、ゲート信号Gateの発生から検出信号DS1〜DS3が出力されるまでの回路上の検出遅れ時間を考慮したもので、その遅れ時間以上(この例では500nS)を設定している。
【0048】
セット信号SETは、ゲート信号Gateの立ち上がりを微分した信号である。リセット信号RESETは、遅延ゲート信号DGateの立ち下がりを微分した信号である。禁止信号INHは、R−SフリップフロップSRFFをセット信号SETでセットし、リセット信号RESETでリセットして得られたものである。
【0049】
パルス出力信号CP1は、禁止信号INHのハイレベルでクリアーされるT型フリップフロップTFFで作られ、各トランジスタTr1〜Trnの破損判断をゲート信号Gateによるオフ時間中にチェックするためのパルスである。クロック信号CP2は遅延ゲート信号DGateの立ち上がりを微分した信号で、各トランジスタTr1〜Trnの破損判断をゲート信号Gateによるオン時間中にチェックするためのパルスである。
【0050】
検出信号DS1〜DS3の各レベルは、トランジスタTr1〜Trnの導通状態でLとなる。
【0051】
時点t1から時点t2において、禁止信号INHが出力されるので、パルス出力信号CP1のクロックは発生しない。時点t2から時点t3は、トランジスタTr1〜Trnの破損がない場合の波形で、良否判断信号NGSはHレベルのままである。
【0052】
時点t4でいずれかのトランジスタが破損しているとすると、検出信号DSはこの時点でLレベルを出力する。この時点では、パルス出力信号CP1がないので、次の時点t5において良否判断信号NGSがLレベルに変化し、保持される。ここで、放電加工中の良否判定動作では、Source電流に示されるように時点t4でトランジスタが導通破壊したとすると、端子SOUから電流が加工間隙4に流れ始めるが、直ちにスイッチCDが開状態となり加工間隙に過電流が流れることが防止される。
【0053】
時点t6からは、ゲート信号GateがHレベルにある期間中にトランジスタが非導通で破損した場合を検出するタイムチャートである。時点t6で、クロック信号CP2は、遅延ゲート信号DGateの立ち上がりに同期して出力される信号である。この時点ではトランジスタは導通状態で正常に動作しているので、良否判断信号NGSはHレベルのままである。次に、時点t7では、トランジスタが非導通であるため、検出信号DSはレベル変化せず、したがって、良否判断信号NGSとしてLレベルが出力される。
【0054】
通常、MOSFETは導通状態で破損することが多いが、この状態で破損すると、大きな電流が間隙に流れ込み、ワークを損傷してしまう。並列的に接続してあるトランジスタTr1〜Trnのうちの1つでも破損していれば検出可能であるため、検出回路は、トランジスタユニット31〜33にそれぞれ1つで十分である。
【0055】
また、非導通での破損は、一度導通状態で破損の結果大電流が流れたことで起きる場合と、ゲート信号Gateが出ないという場合が考えられる。前者の場合、導通状態での異常を先に検出しているので、その時点で処理されている。一方後者の場合は、ゲート信号Gateが、並列的に接続されたトランジスタTr1〜Trnすべて同じ信号を使っているため、すべてのトランジスタTr1〜Trnが非導通となるので、この場合も検出回路は各ユニットに1つづつで十分である。
【0056】
次に、破損が判断された後の処理について説明する。第1〜第3良否判断信号NGS1〜NGS3は、一度NC装置10に送られ、ここで、緊急時の割り込み処理により、すぐに入出力ユニット8に信号を送る。異常のあったトランジスタユニットに接続されているスイッチはオフとされ、また、予備として使用していないトランジスタユニットに接続してあるスイッチをオンとする。この時点では、加工は継続しているが、アラームを出し、作業者へ通知する構成となっている。スイッチとしてはリレーでも良いが、遮断するまでの速度に遅延を生じるので、サイリスタやIGBT等を使った方が高速で動作し加工間隙に過電流が流れるのを防ぐことができるので安全である。
【0057】
図5は制御回路7の動作を説明するためのフローチャートである。
【0058】
ステップST1では、NC装置10からの加工開始指令があったか否かが判定される。NC装置10からの加工開始指令がなければ、ステップST1の結果はNOとなり、制御回路7は待機状態にあることになる。
【0059】
ステップST1で加工開始指令があれば、判別結果はYESとなってステップST2に進み、制御回路7にトランジスタの良否チェック指令を出力する。制御回路7がトランジスタ良否チェック指令を受け取ると、図4のタイミングチャートに示すチェックが行われる。すなわち、NC装置10は、作業者により指定された放電加工条件の設定信号を入出力ユニット8を通してゲート制御回路5に送り、ゲート制御回路5からはゲート信号Gateを各トランジスタユニット31〜33に送る。このゲート信号Gateによりトランジスタユニット31〜33が、設定条件のオンオフ周期で導通非導通状態となっている。なお、この時点では加工が開始されていないので加工電流は流れない。制御回路7は、チェック動作のためトランジスタユニット31〜33内のスイッチS1からSnをすべて開放してからスイッチS1、S2、・・・Snと順次1つづつスイッチを開閉し、スイッチが閉じた状態のとき導通か非導通かのチェックを検出回路で行う。
【0060】
ステップST3では、このチェックにおいてトランジスタの不良が検出されたか否かが判別される。ステップST3でトランジスタの不良が発見されなかった場合は、ステップST3の結果はNOとなってステップST4に入る。ステップST4では、制御回路7は、スイッチS1からSnをすべて閉じて、トランジスタの不良が発見されなかったことを示す信号NOTをNC装置10に出力する。このNOT信号に応答してNC装置10は、設定された加工電流が出力できる数のトランジスタユニットあるいはトランジスタを、スイッチCD1〜CD3を導通させて電源に接続し、電磁開閉器PSRを閉じて、設定された加工条件で加工を開始する。そしてステップST5へ進む。
【0061】
ステップST3でトランジスタの不良があると判別されると、結果はYESとなり、ステップST7で不良部分の表示指令が出力される。ここで作業者は、表示装置11上の警報表示から異常を知ることになるが、このステップST7の異常表示処理後NC装置10による運転を止め加工作業を中止して、他の装置に作業を継続するか、装置の修理を行うか判断することができる。作業の中止を決定した時は、制御回路7の処理はST7で終了する。図5のフローチャートでは、加工を行うのに支障がないと判断し、加工を行う指令をNC装置10に与えて加工を行う場合の動作を示している。
【0062】
ステップST7で不良部分の表示指令を出力した後、ステップST8では、設定加工条件に基づいて、正常なトランジスタユニットを電源に接続し加工を開始する。すなわち、不良となったトランジスタに接続されたスイッチSm(トランジスタに接続されているスイッチS1からSn中の不良トランジスタに接続されているスイッチSm)を開放のままにしておき、他の正常なトランジスタユニットを選択し設定された加工電流が出力できる数のトランジスタユニットのスイッチCDを選択して導通させて直流電源1に接続するかあるいは未使用のトランジスタに設定をかえた後、電磁開閉器PSRを閉じて、設定された加工条件で加工を行う指令をNC装置に送り加工が開始される。そして、ステップST5の処理に進む。
【0063】
ステップST5では、加工中にも図4のタイミングチャートに示すチェックが行われ、トランジスタの不良が検出されたか否かが判別される。なお、この処理では、ステップST2で説明したトランジスタに接続されたスイッチS1からSnを順次開閉してのチェックは行わずトランジスタの状態を監視する。ステップST5でトランジスタの不良が発見されないと、結果はNOとなり、ステップST6に進んで加工終了信号がNC装置10から送られてきたか否かを判別する。加工終了信号があればステップST6はYESとなり、処理は終了するか、又は再びステップST1に戻る。加工終了信号がなければステップST6はNOとなって再びステップST5の処理を繰り返す。
【0064】
ステップST5でトランジスタの不良が検出されると、結果はYESとなり、ステップST9に進む。ステップST9で、制御回路7は、不良検出されたトランジスタユニットに接続されているスイッチCDを直ちに遮断する指令を出力し、不良部位を直流電源1から切り離した後、ステップST10で不良となったトランジスタユニットの表示指令をNC装置10に出力する処理が行われる。
【0065】
ここで、次のステップST11に進む前に、放電加工を一時停止してステップST2と同じチェックを行い、不良のトランジスタを特定する処理をしてもよい。また、1ユニットのトランジスタの数を1個あるいは2個として構成している場合ではトランジスタユニットの予備が十分あるのでそのままステップST11に進むこともでき、回路設計上の選択となる。
【0066】
ステップST11では、未使用のトランジスタユニットの有無があるか否かを調べ、なければ結果はNOとなってステップST6に進む。なお、未使用ユニットの数が十分でない場合は加工終了するようにしても良い。未使用状態のトランジスタユニットがある場合はステップST11はYESとなり、ステップST12において未使用のトランジスタユニットを電源に接続した後、ステップST6に進む。
【0067】
なお、上記の処理フローチャートでは、加工開始指令を待って動作するようにしたが、装置に電源を投入した時点でステップST2、3、及び7の処理を行うようにすれば、段取り作業を始める前に装置の異常を確認し他の装置を利用することも可能になるため、無駄な時間をなくすことができる。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、加工を開始する前にスイッチング素子あるいはトランジスタユニットをオンオフ制御した場合のスイッチング素子あるいはトランジスタユニットの良否を判断することができ、加工中においてもスイッチング素子あるいはトランジスタユニットの良否の判定が可能であり、加工中にスイッチング素子あるいはトランジスタユニットの破損が生じた場合、これを直ちに検知することができる。
【0069】
また、スイッチング素子の非導通のチェックも行うことができるので、スイッチング素子をドライブするドライブ回路とゲート制御回路との間で何らかの支障が生じても検知することが可能となる。
【0070】
さらに、スイッチング素子の破損が検知された場合、不良となったスイッチング素子を切り離す構成とすることにより、被加工物に損傷を与えるのを有効に防止することができる。
【0071】
また、スイッチング素子が破損した場合、予備のものに切り換えるようにすれば、加工を中断することがないので、目的の加工が計画通りにでき、サービスマンが修理に来るまで機械を使えないということがないので、生産性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による放電加工用電源装置の実施の形態の一例を示す概略構成図。
【図2】図1に示したトランジスタユニットの回路図。
【図3】図1に示した良否判断回路の回路図。
【図4】図3に示した良否判断回路の動作を説明するためのタイムチャート。
【図5】図1に示した制御回路の動作を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
1 直流電源
2 遮断ユニット
3 電源出力供給ユニット
4 加工間隙
5 ゲート制御回路
6 良否判断回路
7 制御回路
9 表示装置
10 NC装置
31〜33 トランジスタユニット
311 スイッチング回路
313 検出回路
CD1〜CD3 スイッチ
DS1〜DS3 検出信号
E 加工用電極
E2 直流電圧源
Gate ゲートパルス信号
NGS 良否判断信号
S1〜Sn スイッチ
Tr1〜Trn トランジスタ
W 被加工物
Claims (2)
- NC装置に応答して入出力ユニットからのスイッチ制御信号によって開閉され電流を設定するスイッチとゲート制御回路からのゲートパルス信号によってオン・オフ制御されるスイッチング素子との直列接続体を複数個並列に接続した複数のトランジスタユニットを有しており、
該トランジスタユニットのそれぞれは、一対の端子を有しており、一方の端子が、抵抗器、当該トランジスタユニットを加工用直流電源と加工間隙との間から選択的に切り離すための遮断ユニットの対応するスイッチ、及び電磁開閉器を直列に介して前記加工用直流電源の一方の端子に接続されており、他方の端子が、加工間隙を直列に介して前記加工用直流電源の他方の端子に接続されており、
前記一対の端子には、前記スイッチング素子の作動状態を示す検出信号を得るため直流電圧源を有している検出回路が接続されており、
前記トランジスタユニットの各検出回路からの検出信号は良否判別回路に入力されており、
該良否判別回路は、前記ゲート制御回路から出力されるゲート信号のゲートオンの期間中のチェックパルスの出力に応答し、使用中のトランジスタユニット内のスイッチング素子が非道通で破損か否かを判断する回路と、前記ゲートオンの期間に続くゲートオフの期間中のチェックパルスに応答し、使用中のトランジスタユニット内のスイッチング素子が導通状態で破損か否かを判断する回路とを有し、
前記良否判別回路における判断結果を示す信号は制御回路に入力されており、
該制御回路は、破損したスイッチング素子を有する使用中のトランジスタユニットを切り離し、正常な未使用のトランジスタユニットを選択して使用するように前記遮断ユニットを制御するようになっている
ことを特徴とする放電加工用電源装置。 - 放電加工の開始に先立って、前記トランジスタユニットの各スイッチング素子に直列に接続されている前記スイッチを独立して順次に閉とし、前記ゲート制御回路から前記ゲートパルス信号を出力させ、前記スイッチング素子のそれぞれに対して加工開始前良否判断を行なうようにしたこ請求項1に記載の放電加工用電源装置。
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