JP3929719B2 - 脱臭装置および脱臭方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、脱臭装置および脱臭方法に係り、特に下水道管渠、下水道処理施設またはし尿処理施設から発生する悪臭ガスの悪臭成分を吸着除去する脱臭装置および脱臭方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水道処理施設などで発生する硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル、およびアンモニアなどの悪臭ガスの処理には通常、土壌脱臭、生物脱臭、薬品洗浄、活性炭吸着などの処理技術が用いられている。これらの処理は、単独または組み合わせて採用される。
【0003】
悪臭ガス除去用(脱臭用)の脱臭剤として一般に用いられているのは活性炭であるが、この活性炭は、悪臭ガスの湿度が高い場合に除去(脱臭)性能が大幅に低下するという問題がある。これは、結露により活性炭の表面が水分で覆われ、活性炭の細孔が水分により塞がれることにより吸着能力が十分に発揮できなくなるためである。このような問題に対処するために、活性炭の湿潤対策として次のような処理がなされてきた。なお、活性炭などによる脱臭の場合は、除湿が必要なのではなく、活性炭の表面に水分が吸着しない程度に除湿すれば問題がない。
【0004】
(1)ミストセパレータによるミスト除去
通常の活性炭装置は、ミストセパレータ、脱臭ファン、および活性炭塔から構成される。ミストセパレータは、被処理ガス中に存在するミスト(液体状の湿分)を除去するものであり、通常は脱臭ファンの手前に設けられる。
【0005】
こうした構成においては、少量含まれるミスト状の液体成分がミストセパレータで分離された後、脱臭ファンにより加圧される。その後、活性炭塔を通過させて有害ガス成分を吸着し、排気を無害化して外部に放出することができる。
【0006】
しかしながら、ミストセパレータはミスト状の水分しか除去することができない。すなわち、相対湿度100%の空気を導入しても、基本的には相対湿度100%のまま通過することになる。
【0007】
また、ミストセパレータによるミスト除去率も100%ではなく、向上が試みられている(例えば、特開昭58−45719号公報)。しかしながら、この場合でも、ミストの除去率が向上するだけであり、ミストセパレータを通過した後に発生するミストの低減にはならない。
【0008】
(2)シリカゲルなどの吸湿剤による除湿
空気中の水分を吸湿除去する方法としては、シリカゲルやゼオライトなどに湿分を吸着させる方法、塩化リチウム水溶液に水分を吸収させる方法、塩化リチウムや臭化リチウムや塩化カリウム等の結晶によって吸湿させる方法などが知られている。
【0009】
特開平1−56794号公報には、空気圧縮機の前で除湿するためにガラス繊維または活性炭等の吸着剤を利用した吸湿ロータを用いることが記載されている。また、湿分を含んだ除湿ロータは再生側にまわり、オイルクーラで熱交換され温度上昇した冷却風の排気の一部は、再生用空気フィルター、再生空気用ヒータを介して除湿ロータに導かれ、湿分を含んだ除湿ロータは再生される。
【0010】
しかしながら、連続して脱臭を行なっている場合は、再生される除湿ロータの予備を用意しなければならない。
【0011】
(3)ウォーターセパレータ
特開平8−215533号公報には、活性炭層の下部に斜め上向きの通路を多数設けた、いわゆるウォーターセパレータを設置することが記載されている。これによって、ミスト状の細かな水分を充分に分離することができ、上方の吸着剤の本来有する吸着能力の水分に起因する低下を防止することができる。しかしながら、このウォーターセパレータは単なる斜め上向き通路を多数設けたものであり、結露した水分を速やかに下部に排出することはできるものの、単位容積当りの表面積が小さい。このため、十分に高い効果を得ることができない。
【0012】
(4)脱臭剤の加温
特許公報2709036号には、結露を防止するために脱臭剤の加温を行なうことが記載されている。これにより、活性炭層と臭気ガス温度とを同等にして、結露を防止することができる。しかしながら、活性炭層全体を液体、気体または多孔質固体で加温するためには装置が大きくなる。このため、加温を行なうことは、大規模な活性炭塔の場合には現実的でない。
【0013】
(5)被脱臭ガスの加熱
特開昭60−87832号公報には、活性炭層導入前に被脱臭ガスを加熱して、相対湿度を低下させることが記載されている。この場合は、配管の途中に加熱機を設けなければならない。また、活性炭塔自体が冬季夜間に急速に冷却された場合は、結露を避けることはできない。
【0014】
(6)予め冷却することによる除湿
特開平3−126421号公報に記載されている方法では、活性炭塔に被処理ガスを導入する前に、熱交換器により除湿・冷却が行なわれる。被処理ガスを冷却して除湿することによって、絶対湿度を下げることはできるものの、冷却・除湿後のガスの総体湿度は100%となる。したがって、極めて結露しやすい状態となっており、新たに被処理ガスの加温が必要となる。
【0015】
また、特開平3−126421号公報では、活性炭塔の後にファンを設けているため、ファン通過による温度上昇を期待できない。
【0016】
特公平6−85854号公報では、着火ガスを50℃以下に冷却し、冷却した着火ガスを除湿した後に若干加温している。これにより相対湿度を下げることができるが、設備が煩雑になるという問題点がある。
【0017】
(7)乾燥空気の導入
この方法は、一般に経験的に行なわれているものであり、高湿度の被処理ガスに乾燥した外気を導入して、全体ガスの相対湿度を下げるものである。
【0018】
特開昭58−86166号公報には、湿度を検知して乾燥ガスの風量を制御する方法が記載されている。この方法では、希釈用ガスのためにファン容量が大きくなるという問題点がある。
【0019】
(8)結露した水分の排出
特開昭55−165126号公報では、活性炭充填層通過後に壁面に結露した水分が活性炭層に接触・吸着されないように、この水分を活性炭充填塔外に導くための、壁面に沿って設けられた樋および排気孔を設けている。
【0020】
(9)吸湿した活性炭の再生
特許公報1347414号においては、水分および臭気成分を吸着した活性炭に乾燥空気を通気し、水分を選択的に脱離させることによって、活性炭を再生している。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような従来の活性炭の湿潤対策を、下水処理場などで一般的に用いられている上向流カートリッジ式活性炭吸着塔に適用するためには、過大なコストが必要とされる。適用したところで、得られる効果は少ない。そのため、適用事例は、これまでにほとんど存在していない。
【0022】
一般に下水処理場で行なわれている結露対策としては、臭気ファンを脱臭塔の上流に設置して、昇圧に伴なう臭気ガスの温度上昇により相対湿度を下げること、脱臭塔の入口側にミストセパレータを設置して、臭気ガスに同伴するミストを除去すること、および脱臭塔を室内に設置して、冬季の外気によって臭気が冷却されるのを防止することなどが挙げられる。これらの手法は、単独であるいは複数を組み合わせて行なわれているが、結露対策としては不十分であるため、活性炭の早期劣化を生じさせる。したがって、活性炭の能力を十分に発揮させることができない。
【0023】
そこで本発明は、活性炭の湿潤による性能低下を防止し、悪臭成分を含む被処理ガスの脱臭を安定して行なうことが可能な脱臭装置および脱臭方法を提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、活性炭を収容したカートリッジが単数または複数積層されてなり、悪臭成分を含む昇圧された被処理ガスが、最下段のカートリッジに導入される上向流カートリッジ式活性炭吸着塔と、前記上向流カートリッジ式活性炭吸着塔の天井板の上に設けられた保温手段と、前記天井板と前記保温手段との間に設けられた電気式ヒータとを具備することを特徴とする脱臭装置を提供する。
【0025】
また本発明は、被処理ガスを、活性炭を収容したカートリッジが単数または複数積層されてなる上向流カートリッジ式活性炭吸着塔の最下段に導入する工程と、前記上向流カートリッジ式活性炭吸着塔の天井板を保温手段により保温しつつ、前記天井板と前記保温手段との間に設けられた電気式ヒータにより前記天井板を加熱して、前記被処理ガス中の悪臭成分を前記活性炭に吸着させることにより悪臭を除去する工程とを具備することを特徴とする脱臭方法を提供する。
【0026】
本発明者らは、カートリッジ式活性炭吸着塔における結露状況を観察し鋭意検討した結果、以下の現象を見出し、本発明を成すに至ったものである。
【0027】
(1)活性炭吸着塔の外気温度が臭気温度より低い場合には、吸着塔天井下側に水分が付着する。
【0028】
(2)最上段のカートリッジに充填された活性炭の水分量が最大であり、下段のカートリッジになるにしたがって、水分量が減少する。
【0029】
(3)同一カートリッジ内での外周部と中央部とでは、水分量の差異は認められない。
【0030】
これらに基づいて、カートリッジ式活性炭吸着塔における活性炭の湿潤の原因を次のように推測した。すなわち、通常のカートリッジ式活性炭吸着塔においては、天井板(通常よく用いられる材質はFRP)は外気により冷却されているので、カートリッジ内の活性炭を通気後の臭気ガスは、天井付近に到達して冷却される。こうして、臭気ガス中の水分が結露する。結露した水は、まず最上段の活性炭に落下することによって、活性炭の湿潤が発生する。
【0031】
活性炭が湿潤する条件下においては、通気時間の経過に伴なって上段の活性炭に含まれる水分量が増加し、ある時点で飽和に達する。活性炭中の水分は、その後落下して、下段の活性炭を順に湿潤させる。最終的には、湿潤に起因して臭気吸着性能がなくなるために、活性炭を交換せざるを得ない。
【0032】
なお、上向流カートリッジ式活性炭吸着塔の側面は、以下の理由から、保温処置をすることは費用対効果が少ない。
【0033】
下水処理場で一般的に使用されている上向流カートリッジ式活性炭吸着塔においては、活性炭カートリッジ側板は5cm程度の厚みを有している。また、カートリッジ側板外面と吸着塔側面との間には、流動しない10cm以上の空気層が保たれているので、外気と活性炭との間に充分な断熱効果がすでに確保されている。
【0034】
本発明においては、上向流カートリッジ式活性炭吸着塔の天井板の上に保温手段を設置しているので、臭気ガスが冷却されるのを効率よく抑制して、活性炭の湿潤を防止することが可能となった。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【0036】
図1は、本発明の脱臭装置を用いた脱臭プロセスを表わす概略図である。図1に示されるように、臭気発生源1から発生した悪臭成分を含む被処理ガスは、ミストセパレータ2および脱臭ファン3を通過する。悪臭成分を含む被処理ガスは、脱臭ファン3において昇圧され、これに伴なって昇温する。その結果、被処理ガス中の相対湿度は低下する。こうして相対湿度の低下した被処理ガスは、上向流カートリッジ式活性炭吸着塔4に導入される。
【0037】
上向流カートリッジ式活性炭吸着塔4は、活性炭が収容されたカートリッジ5を単数または複数積層することにより構成され、天井板6の上には、保温材7が設けられている。上向流カートリッジ式活性炭吸着塔4と保温材7とにより、本発明の脱臭装置が構成される。
【0038】
各カートリッジ5は、図2に示されるように、底部に活性炭支持網9が設けられた箱8と、これに収容された活性炭10とを含む。
【0039】
本発明の脱臭装置における保温手段としては、例えば、上向流カートリッジ式活性炭吸着塔4の天井板6の外面に貼り付けられた厚さ1〜10cmの保温材とすることができる。あるいは、図3に示されるように、天井板6と保温材7との間に、電気式のヒータ11を配置して、天井板を加温してもよい。この場合には、図4に示されるように、天井板6と保温材7との間のヒータ11は、電源12に接続される。電気式のヒータとしては、リボンヒータ、シート状ヒータ、面状ヒータ等を使用することができる。
【0040】
本発明の脱臭装置は、例えば下記表1に示すような設計とすることができる。
【0041】
【表1】
総括伝熱係数Uは、下記数式に基づいて算出した。
【0042】
【数1】
【0043】
上記数式中、
αg:臭気ガスの境膜伝熱係数(気体流動の場合で30W/m2・Kとする)
αa:外気の境膜伝熱係数(気体流動の場合で30W/m2・Kとする)
δw:保温材の厚さ(0.02m)
λw:保温材の伝熱係数(0.03W/m2・K)
上述の設計例においては、保温材7により保温処置を施した天井板6での臭気ガスの放散熱量は5.5Wである。リボンヒータを用いる場合には、その容量はこれと同程度とすればよい。
【0044】
保温材7により保温する温度は、カートリッジ5の周囲において臭気ガスの温度以上であれば十分である。ヒータ温度を制御することによって最適保温制御ができ、省エネ化を図ることもできる。
【0045】
【実施例】
図1に示した構成の脱臭装置を用い、ミストセパレータ2および脱臭ファン3を介して、被処理ガスを上向流カートリッジ式活性炭吸着塔4に導入に供給して、活性炭吸着塔の出口における硫化水素濃度および活性炭吸着塔での圧力損失(脱臭塔の入口圧力と出口圧力との差圧)の経時変化を測定した。活性炭吸着塔の出口における硫化水素濃度に基づいて、破過日数を活性炭の破過日数を求めた。なお、ここでは、硫化水素濃度20ppm、相対湿度80%、温度20℃程度のガスを被処理ガスとして用い、出口濃度が入口濃度の5%となったときを破過とした。
【0046】
さらに、上向流カートリッジ式活性炭吸着塔4の天井板6の上に保温材7を設置しない以外は図1と同様の構成の装置を用いて、前述と同様の被処理ガスを供給して、活性炭吸着塔の出口における硫化水素濃度および活性炭吸着塔での圧力損失の経時変化を測定し、比較例とした。
【0047】
実施例および比較例における硫化水素濃度の経時変化を図5のグラフに示し、圧力損失の経時変化を図6のグラフに示す。
【0048】
図5のグラフ中、曲線aおよびbは、実施例および比較例の結果をそれぞれ表わす。また、図6のグラフ中、曲線cおよびdは、実施例および比較例の結果をそれぞれ表わす。
【0049】
保温材を設置しない比較例の脱臭装置の場合には、脱臭剤の破過日数が3日であったのに対し、保温材を設置した本発明の脱臭装置の場合の破過日数は30日であった。
【0050】
また、活性炭塔の圧力損失の経時変化は、比較例の脱臭装置については、破過日数までの圧力損失の上昇が30mmAqであった。これに対して、本発明の装置を用いた場合には、圧力損失の上昇はみられなかった。
【0051】
その他の臭気項目については、実施例および比較例とも差は認められなかった。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、活性炭の湿潤による性能低下を防止し、悪臭成分を含む被処理ガスの脱臭を安定して行なうことが可能な脱臭装置および脱臭方法が提供される。
【0053】
本発明により、以下の効果が得られる。
【0054】
(1)脱臭用活性炭の湿潤を防止し、交換頻度を長くすることができる。
【0055】
(2)脱臭用活性炭の湿潤を防止し、活性炭塔における圧力損失の増大を防止することができる。
【0056】
(3)ヨウ素酸添着活性炭を用いた脱臭塔の場合には、吸着力が向上して交換頻度を長くするとができる。
【0057】
本発明は、下水道管渠、下水道処理施設またはし尿処理施設から発生する悪臭ガスの悪臭成分の吸着除去に有効であり、その工業的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る脱臭装置を用いた脱臭プロセスの一例を表わす概略図。
【図2】本発明の脱臭装置におけるカートリッジの構成を表わす概略図。
【図3】本発明に係る脱臭装置の天井部分の拡大図。
【図4】本発明に係る脱臭装置の天井部分に設置したヒータの平面図。
【図5】出口硫化水素濃度の経時変化を表わすグラフ図。
【図6】圧力損失の経時変化を表わすグラフ図。
【符号の説明】
1…臭気発生源
2…ミストセパレータ
3…脱臭ファン
4…上向流カートリッジ式活性炭脱臭塔
5…カートリッジ
6…天井板
7…保温材
8…枠
9…活性炭支持網
10…活性炭
11…電気式ヒータ
12…電源
Claims (2)
- 活性炭を収容したカートリッジが単数または複数積層されてなり、悪臭成分を含む昇圧された被処理ガスが、最下段のカートリッジに導入される上向流カートリッジ式活性炭吸着塔と、
前記上向流カートリッジ式活性炭吸着塔の天井板の上に設けられた保温手段と、
前記天井板と前記保温手段との間に設けられた電気式ヒータと
を具備することを特徴とする脱臭装置。 - 被処理ガスを、活性炭を収容したカートリッジが単数または複数積層されてなる上向流カートリッジ式活性炭吸着塔の最下段に導入する工程と、
前記上向流カートリッジ式活性炭吸着塔の天井板を保温手段により保温しつつ、前記天井板と前記保温手段との間に設けられた電気式ヒータにより前記天井板を加熱して、前記被処理ガス中の悪臭成分を前記活性炭に吸着させることにより悪臭を除去する工程とを具備することを特徴とする脱臭方法。
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