JP3928120B2 - 表示インク - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、染料と顔料を含有する表示インク及びこの表示インクを密閉空間に保持した表示媒体に関する。また、本発明は、上記の表示インクを用いる印刷方法及び該印刷方法により得られた被印刷物に関する。
【0002】
【従来の技術】
電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる表示媒体に用いられる表示要素としては、液晶、エレクトロクロミック素子、電気泳動素子、磁気泳動素子等が知られている。それらを用いた表示媒体の多くは、一対の電極基板とその間に挿入された表示要素からなり、該表示媒体には各電極に画像を表示するための信号を印加する駆動回路が接続されている。
【0003】
これらの表示媒体のうち、電気泳動表示媒体には、液状媒体に対して染料を溶解させかつ顔料粒子を非溶解状で分散させた表示インク、または2種の顔料粒子を分散させた表示インクが用いられる。これらの表示媒体としては、特公昭50−1519号公報またはUSP3,668,106号明細書に記載させている。
しかしながら、上記の染料を用いた表示媒体の場合には、古くは、D.W.Vace,Proc.SID,vol18/3&4,p267,1977またはJ.Jacobson,Nature,vol.394/16,p252,1998に示されるように、紙への印刷が困難である上、電子写真等に近づいたコントラストおよび反射率の獲得が困難である。これは、顔料粒子表面に吸着された染料や顔料粒子間に存在する染料溶液が純粋な顔料粒子に固有の着色をさまたげ、その顔料の色に染料の色が加色されることによるためである。
また、上記の2種の顔料粒子を用いた表示媒体の場合には、そのコントラストは容易に向上できるが、2種の異なる電荷の粒子は分散安定性に欠けるため、電気泳動時の応答速度が低下するという問題が生じる。さらには、2種の粒子同士の凝集による混色によりコントラストの低下が生じるという問題もある。
【0004】
また、この電気泳動表示媒体に類似した分極した粒子を含む液体を用いた表示媒体としては、特公昭54−15217号、特公昭57−25811号各公報等に記載されている。しかしながら、これらのものもコントラストは比較的よいものの、実際の長期安定性、応答速度、表示ムラ等に問題がある。
【0005】
一方、磁界の作用により可逆的に視認状態を変化させる磁気泳動表示媒体としては、液状媒体に対して磁性粒子と隠蔽粒子である着色顔料粒子を分散させたものを密閉空間に保持しかつこれに磁石により磁界を作用させることにより磁性粒子を磁気泳動させ可逆的な表示を可能としたものがあり、子供用玩具や黒板等に用いられている。この磁気泳動表示媒体は、特公昭51−10959号、特公昭57−27463号の各公報等に記載されている。
しかしながら、この磁気泳動表示媒体は、前記の電気泳動性の2種の顔料粒子を用いる表示媒体の場合と同様に、2種の粒子同士の凝集による混色が生じてコントラストが低下しやすいという問題を含む。このため、磁性粒子にかえて磁性流体を使用する表示媒体が、特開昭51−93827号公報に記載されているが、この表示媒体の場合、長期的にはこの磁性流体の不安定さに起因するコントラストの低下が指摘されている。
【0006】
上記の磁性粒子あるいは磁性流体を用いた表示媒体を改良する手段として、特開平10−116038号公報には、2種の異なる相分離する分散媒のそれぞれに色の異なる着色顔料粒子を分散してなる表示インクが記載されている。これは、着色粒子と隠蔽粒子とを完全に分離することにより、コントラストを改善しようとするものであり、このためにそれぞれの分散媒に色の異なる着色粒子が分散しており、分散媒同士が互いに二相分離する物性を有し、かつそれぞれの分散媒に分散する着色粒子は各分散媒に対して高い親和性を有することを特徴としている。
しかしながら、上記表示インクは、2種の着色を顔料粒子で表示しているため、可逆表示をおこなった場合には、その位置を入れ替える2種の粒子間での物理的な衝突が生じやすい。このため、この衝突による2種の粒子間で凝集が起り、これが応答速度を低下させると同時に、混色を生じさせてコントラストも低下させる。とくに、2種の顔料を電気泳動させた場合には、その衝突による顔料の特性劣化は非常に大きくなる。また、2種の顔料粒子の凝集により液体中の顔料粒子濃度が大きくなるので液状媒体の分散液としての粘性が増大し、これもまた応答速度を低下させる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、単一の成分組成を有しながら少なくともコントラストまたは白色度に優れた2種の着色が可能な表示インク及び該インクを用いた表示媒体を提供するとともに、該表示インクを用いた印刷方法及び該印刷方法により得られる印刷物を提供することをその課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、染料Aと、顔料Bと、該染料Aを実質的に溶解させる溶媒Xと、該染料Aを実質的には溶解させない溶媒Yとからなり、該溶媒Xと該溶媒Yとは相互に完全混和しない表示インクであって、該溶媒Xは該溶媒Yよりも密度が大きく、該溶媒Xが下層を形成するとともに、該溶媒Yが上層を形成し、かつ、該顔料Bは、その少なくとも一部に電気泳動粒子を含有することを特徴とする表示インクが提供される。また、本発明によれば、前記表示インクを、その少なくとも一方が透明板である2つの平板間に介在させた構造を有することを特徴とする表示媒体が提供される。さらに、本発明によれば、前記表示インクを、被印刷物に付着させた後、インク中の溶媒を除去することを特徴とする印刷方法及び該方法によって得られる印刷物が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の表示インクは、単一の成分組成でありながら、少なくとも2種の色に着色させることができる。
図1に本発明の表示インクを用いた表示媒体の原理説明図を示す。
図1において、X(A)は染料Aを溶媒Xに溶解させた溶液を示す。斜線は染料Aが溶解していることを示す。Yは染料Aを実質的に溶解させない溶媒Yを示す。溶液X(A)と溶媒Yとは相分離しており、溶液X(A)が下層を形成し、溶媒Yが上層を形成する。Bは顔料Bを示す。4は密閉容器であり、5はこの容器の上部にある透明な天窓であり、6はこの天窓から目視観察する人の眼を示しており、8は磁石である。
【0010】
図1(a)は、2相に分離する2種の溶媒Xと溶媒Yとからなる液状媒体に、染料Aと顔料Bを添加し、撹拌、超音波振動により染料Aを溶解し顔料Bを分散せしめた表示インクを、密閉容器4に充填した状態を示す図である。このとき2相に分離する2種溶媒のうちの溶媒Xとして油性混合液体を用い、溶媒Yとして水を用いた。油性混合液体Xにはテトラクロルエチレン3重量部とn−ヘキサン7重量部を混合したもので比重を水よりも大きくしてあるものを用い、水及び油性混合液体とも約2.5ml用いた。また、染料Aには青色のアントラキノン系油性染料(Bayer社製、Macrolex BlueRR)を用いており、その油性混合液体X中の濃度は約1.0wt%とした。顔料Bとしては黒色の鉄粉(和光純薬社製)を用い、その溶媒XとYからなる液状媒体中濃度は10wt%とした。
【0011】
この表示インクは、上部が透明な密閉容器4に封入され、この透明な密閉容器の上部から目視でその状態を観測することができる。表示インクの密閉容器への封入直後においては、表示インクは図1(a)の状態にある。すなわち、染料Aが油性混合液体(溶媒X)に溶解し、この染料溶液X(A)と水(溶媒Y)とは直ちに相分離しているが、これらの溶液X(A)中および溶媒Y(水)中には鉄粉(顔料B)が分散している状態にある。このとき、天窓5を通して水に分散した黒色の鉄粉と背景の青色染料により、青をおびた黒色が認識される。
【0012】
10分以上経過後は、表示インクは図1(b)の状態になる。即ち、容器の下部に鉄粉Bがほぼ沈降している状態になる。このとき、下層の溶媒Xに溶解した青色染料Aにより、鉄粉Bは見えず、染料Aの青色のみが認識される。
【0013】
この図1(b)の状態において、強力な磁石を容器側面に密着させた後、該磁石を容器の上部に少し離して設置したときに生じる状態を図1(c)に示す。容器上部に鉄粉Bが付着した状態になり、鉄粉の黒色が観察され、青色はわずかにしか視認されない。この若干の青色は、顔料B(鉄粉)に若干に付着した染料溶液X(A)、または顔料Bに物理吸着した染料Aによると考えられる。
【0014】
次に、磁石を容器側面に再び密着させた後、容器の下部に少し離して設置すると、図1(b)とほぼ同様の状態すなわち容器下部に鉄粉Bが付着した状態になり、天窓5を通しては再び鉄粉は見えず、染料Aの青色のみが認識される。
本発明の表示インクにおいては、図1(b)と図1(c)の状態において、染料Aと顔料Bとが2相分離液体X、Yにより分離されているために、顔料Bの隠蔽力が十分であるならば、これらの着色の混色を大いに減少させることができ、その表示品質を大いに向上させることができる。
【0015】
これに対して、従来例の表示媒体の原理説明図を図11に基づいて以下に説明する。図11において、9は染料を溶解しかつ顔料粒子を分散した溶媒からなる表示インクであり、斜線は染料が溶解していることを示す。10は顔料粒子である。
【0016】
図11(a)は、1種類の溶媒に染料と顔料を添加し、撹拌、超音波振動により染料を溶解し顔料粒子を分散せしめた表示インクを、容器4に充填した状態図を示す。このとき、溶媒としては図1の説明において使用したのと同じ油性混合液体を約5ml用いた。また、染料には青色のアントラキノン系油性染料を用いており、その濃度は約0.5wt%とし、顔料10としては黒色の鉄粉を用い、その濃度は5wt%である。この表示インクは、上部が透明な密閉容器4に封入され、この透明な密閉容器の上部から目視でその状態を観測することができる。表示インクの密閉容器への封入直後においては、表示インクは図11(a)の状態にあり、鉄粉10が分散している状態になる。このとき、分散した黒色の鉄粉10と背景の青色染料により、黒みをおびた青色が認識される。図中、9は染料が溶解している溶媒を示す。
【0017】
10分以上経過後は、表示インクは図11(b)の状態になり、容器の下部に鉄粉10がほぼ沈降している状態になる。このとき、溶媒に溶解した青色染料により、鉄粉は見えず、染料の青色のみが認識される。
【0018】
この図11(b)の状態において、強力な磁石を容器側面に密着させた後、容器の上部に少し離して設置したときに生じる状態を図11(c)に示す。容器上部に鉄粉が付着した状態になり、染料によりかなり青みをおびた鉄粉の黒色が観察される。
【0019】
次に、磁石を容器側面に再び密着させた後、容器の下部に少し離して設置すると、図11(b)とほぼ同様の状態すなわち容器下部に鉄粉が付着した状態になり、再び鉄粉は見えず、染料の青色のみが認識される。
【0020】
この図11(c)の状態においては、鉄粉粒子の隙間には溶媒に溶解した染料が多量に存在し、また鉄粉表面自体にも染料が物理吸着しているため、鉄粉の黒色だけで黒色を観察することは難しい。この染料の影響を減少させるためには、染料濃度を小さくすることにより、主に鉄粉粒子の隙間の染料を減少させることができる。しかしながら、D.W.Vace,Proc.SID,vol.18/3&4,p267,1977にも示される様に、ランバートベールの法則に従い、染料濃度を小さくしてかつ着色力を保持しようとすると、鉄粉粒子層の厚さを100μm以上と大きくしなければならず、これでは高解像度、高応答速度、薄型軽量の表示媒体を得ることが困難となる。
【0021】
これに対して、本発明では、図1に示したように、顔料粒子Bを染料Aを溶解し難い溶媒Y中に存在させた状態で顔料粒子Bの色調を得ているので、上記の従来の顔料粒子への染料の混色の問題を解消することができる。さらには、2色の顔料粒子を用いていないため、顔料粒子同士の衝突や顔料の凝集はなく、その凝集の結果として生じる混色や応答速度の減少といった問題を生じることもない。
【0022】
本発明の表示インクに用いられる2相以上に分離する溶媒Xと溶媒Yの組み合せとしては、極性溶媒と非極性溶媒との組み合せ、極性溶媒同志の組み合せ、非極性溶媒同志の組合せ等がある。これらの溶媒の組み合せは、使用する染料の種類により適宜決定される。
本発明で用いる溶媒X及び溶媒Yは、いずれも、単一溶媒である必要はなく、複数の溶媒からなる混合溶媒であることができる。これらの溶媒Xと溶媒Yは、それらの溶媒が完全混合せずに2相に相分離するように組み合せる。
【0023】
ここでいう2相に分離する溶媒X、Yの組み合せとは、お互い相溶性が小さく、室温において所定の混合比で溶媒Xと溶媒Yを混合した場合に、相溶しない部分が必ず存在する2種の溶媒X、Yの組み合せである。たとえば、水とベンゼンの組み合せであるが、ベンゼンに対して50ppmの水を組み合せた場合では、水がベンゼンにほとんど溶解するために2相分離可能な組み合せとはならない。ところが、ベンゼンに対して1wt%の水は、ベンゼンに溶解しきれない水が相分離するため、本発明でいう2相分離する溶媒の組み合せとなる。
【0024】
本発明では、溶媒X及び/又はYは極性溶媒であることができる。極性溶媒としては、極性基を有し、常温で液状を示すものであれば、任意のものを用いることができる。この場合、極性基には、水酸基、エーテル基、ハロゲン基、ケトン基、エステル基、カーボネート基、カルボン酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホン基、ホスホン酸基、スルホン酸基、アミド基等が包含される。
水酸基を有する極性溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
エーテル基を有する極性溶媒としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
カーボネート基を有する極性溶媒としては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
ハロゲン基としてフッ素基を有するフッ素化合物の場合には、フッ素基の有する位置、数により置換前の極性が必ずしも保持されるわけではなく、場合によって非極性的な挙動を示すこともあるので注意する必要がある。
極性溶媒の具体例としては、前記のものの他、γ−ブチロラクタム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド、ヘキサメチルホスホアミド、ニトロメタン等が挙げられる。
【0025】
本発明では、溶媒X及び/又はYは、非極性溶媒であることができる。本発明では、常温において液状を示す非極性溶媒であれば任意のものを用いることができる。このような非極性溶媒としては、n−ヘキサン、オクタン、ドデカン、ケロシン、アイソパー(エクソン社)、シクロヘキサン等のパラフィン系炭化水素、ヘキサン、ドデセン等のオレフィン系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。さらに、炭素数が12〜22の長鎖アルキル基又はアルケニル基を有するアルコール、ケトン、エステル、グリセリド(ナタネ油、大豆油等)等が挙げられる。
また、フッ素基を有する非極性溶媒としては、完全フッ素化のものとしては、パーフルオロ−n−オクタン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロベンゼン、パーフルオロブチルアミン等が挙げられ、部分フッ素化としては、2H−パーフルオロ−5,8−ジメチル−3,6−9−トリオキサデカン、ジクロロベンゾトリフロリド等が挙げられる。
【0026】
本発明では、染料Aを溶解させ顔料Bを分散させる液状媒体としては、好ましくは2相に分離する溶媒X溶媒Yとの組合せを用いる。このような溶媒の組合せとしては、水とテトラクロルエチレン、水とトリクロロエチレン、水とヘキサン、水とアイソパー、水とキシレン、水とパーフルオロオクタン、アセトンとFC40(フッ素化炭化水素、3M社製)、水とHFE7200(フッ素化エーテル、3M社製)、水とリン酸トレクレシル、さらにはテトラクロルエチレンとパーフルオロオクタン、テトラクロルエチレンとHFE7200、テトラクロルエチレンとHFE7200、キシレンとFC40、さらには、水とキシレンとHFE7200、水とヘキサンとFC40とHFE7200、キシレンとFC40とHFE7200、トルエンとFC40とHFE7200等の組み合せが挙げられる。
【0027】
本発明では、3相に分離する溶媒の組み合せを用いることができる。この場合の染料Aを溶解させ、顔料Bを分散させる液状媒体は、溶媒Xと溶媒Yと溶媒Zとの組み合せからなる。溶媒Zは、溶媒X及び溶媒Yと完全混合しないものであれば単一溶媒又は複数溶媒の混合物からなることができる。
前記3種の溶媒X、Y、Zの組み合せを例示すると、ヘキサンとキシレンと水、キシレンと水とFC40、ヘキサンと水とHFE7200、水とテトラクロルエチレンとFC40等が挙げられる。
【0028】
なお、本明細書で溶媒X、Yに関して言う相互に完全に混和しないという意味は、2種の溶媒X、Yを攪拌した後、静置したときに、上層と下層の2つの層に分離した状態を示すことを示す。一方、溶媒X、Y、Zに関して言う相互に完全に混和しないという意味は、3種の溶媒X、Y、Zを攪拌した後、静置した時に、上層と中間層と下層の3つの層に分離した状態を示すことを示す。
【0029】
本発明で用いる染料及び顔料用の液状媒体を構成する各溶媒の密度(比重)は、それらの各溶媒の機能に応じて適宜定める。本発明の表示媒体が、図1に示されているように、上方からその表示インクの着色を視認する構造のものである場合には、下層に染料Aを溶解した溶媒Xが位置し、その上層に染料Aを溶解しない溶媒Yが位置するように、各溶媒X及びYの各密度を定めることが好ましい。この場合、溶媒Xの密度をd(X)、溶媒Yの密度をd(Y)及び染料Aを溶媒Xに溶解させた溶液X(A)の密度をd[X(A)]とすると、それらの密度の関係は次式(1)及び(2)のようになる。
d(X)>=d(Y) (1)
d[X(A)]>=d(Y) (2)
前記溶媒XとYとの密度比d(X)/d(Y)は、1.0〜5.0、特に好ましくは1.0〜2.0である。これは、d(X)/d(Y)が大きすぎると、表示面を上面から視認する構造でしか表示インクが使用できなくなる場合が生じる。このため、顔料粒子濃度が与える分散液の体積固形分比によっても変化するが、表示面の方向や視認の方向に紙のような自由度を持たせたいときに、d(X)/d(Y)を1.0近くにすることが好ましくなる。また、顔料粒子や染料の重量も含めた2相に分離した状態での密度を考慮することにより、より良好な密度の最適化を行うことができる。また、溶媒Yに分散する顔料粒子の体積固形分比が0.15以上の場合は、分散液としての粘性が大きくなってくると同時に、顔料粒子と溶媒Yとが一体で移動する場合が生じてくる。このような場合には、d(X)/d(Y)が1.0から大きく異なってくる2.0以上の場合でも、表示面の方向に関わらず顔料粒子の密閉空間壁への固着力により、顔料粒子と溶媒Yの一部分を固定することができる。
【0030】
一方、前記の場合とは逆に、下方からその表示媒体の表示インクの着色を視認する構造のものである場合には、上層に染料Aを溶解した溶媒Xが位置し、その下層に染料Aを溶解しない溶媒Yが位置するように、各溶媒X及びYの各密度を定める。この場合、溶媒Xの密度をd(X)、溶媒Yの密度をd(Y)及び染料Aを溶媒Xに溶解させた溶液X(A)の密度をd[X(A)]とすると、それらの密度の関係は次式(3)及び(4)のようになることが好ましい。
d(X)=<d(Y) (3)
d[X(A)]=<d(Y) (4)
前記溶媒XとYとの密度比d(Y)/d(X)は、好ましくは1.0〜5.0、特に好ましくは1.0〜2.0である。前記と同様に、表示面の方向や視認の方向に紙のような自由度を持たせたいときに、d(X)/d(Y)を1.0近くにすることが好ましくなる。
【0031】
本発明で染料及び顔料用の液状媒体が、3種の溶媒X、Y、Zからなる場合には、溶媒Zの密度は、溶媒Zが、(i)溶媒XとYとの間の中間層、(ii)最上層又は(iii)最下層を形成する位置になるように選定する。
【0032】
本発明で用いる各溶媒は、前記密度(比重)の他、その表示インクの用途との関連において、その粘度、誘電率、比抵抗、屈折率、透過率分布、染料の溶解度等を調整することが望ましい。これらの特性は、一般的には、各溶媒間においてほぼ同じとすることが好ましい。この溶媒特性の調整には、単独溶媒を選定して行うことによる以外にも、複数の溶媒を混合することにより容易に行うことができる。
また、液状媒体又はそれを構成する各溶媒の親水性、疎水性、親油性、極性、表面張力等も適宜調整することが好ましい。
さらには、2相分離した溶媒X、Yの体積分離比は、等比である必要はなく、好ましくは染料の溶解度の大きい溶媒Xが、もう一方の染料溶解度の小さい溶媒Yよりも多いこと、特に2倍以上、さらには10倍以上の量であることがよい。溶媒Yの量は、理想的には、顔料粒子Bを容器内に充填して形成した充填層の隙間を無駄なく埋める状態にする程度の量であるのがよい。本発明においては、その溶媒Xの容積V(X)と溶媒Yの容積V(Y)との比V(X)/V(Y)を、0.50〜20、好ましくは2.0〜20の範囲に規定するのがよい。
【0033】
本発明の表示インクに用いられる染料Aには、水性染料及び油性染料のどちらでも使用できるが、これは上記2相に分離する溶媒Xと溶媒Yの組み合わせに応じて決定されるものである。また、同時に用いられる顔料Bとの着色の違いからも決定されるものでもある。一般的には、染料Aと顔料Bの粒子との着色のコントラストもしくは染料Aと顔料Bとの間のΔL***を大きくするように組み合わせるのが好ましい。さらには、2相に分離する溶媒X、Yのうち少なくとも染料の溶解度の小さい方の溶媒Yに対して優先的に溶解する第2番目の染料を組み合わせて用い、これと顔料粒子との混色で着色することも効果的である。
【0034】
通常的には、染料Aとして、油性染料を用いた場合には、その溶媒Xとして疎水性、親油性または非極性の溶媒を用いるのが好ましい。一方、水性染料を用いた場合には、その溶媒Xとして、親水性、疎油性または極性の溶媒を用いることが好ましい。しかしながら、油性染料でもその種類により、ケトン類、アルコール類といった極性の溶媒に対する溶解度が、非極性の場合より大きいものもあることから、染料Aと染料Xとの組み合わせは上記に限られるものではない。染料Aの具体例としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジコイド染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料等が挙げられる。また、直接染料以外にも、酸性染料または塩基性染料を用いてもかまわない。これらの染料は、同時に複数用いてもかまわない。
【0035】
水性染料の具体例としては、Direct Blue119、Direct Red226といった一般的なもの以外にも、IJ Red207H(ダイワ化学社製)、IJ Yellow307H(ダイワ化学社製)等のインクジェット用染料、青1号、赤2号等の食用染料等が挙げられるが、これらの染料以外にも、紙用、皮革用、繊維用等の非常に多数の水性染料または水溶性染料が挙げられる。
【0036】
また油性染料の具体例としては、Macrolex BlueRR、Sudan BlueII(BASF社製)、Oil YellowSS special(白土社製)、Oil RedRR extra(白土社製)、Diaresin GreenA(三菱化成社製)、Diaresin BlueG,C,K,N(三菱化成社製)、Sumisol BlackARsol(住友化学社製)等が挙げられるが、これらの染料以外にも非常に多数の油性染料または油溶性染料が挙げられる。
【0037】
さらに、2相に分離する溶媒XとYと染料の組み合わせの具体例としては、水とテトラクロルエチレンとMacrolex BlueRR、水とキシレンとMacrolex BlueRR、水とパーフルオロオクタンとDirect Blue119、アセトンとFC40(3M社製)とDirect Blue119、アセトンとFC40(3M社製)とMacrolex BlueRR、水とリン酸トレクレシルとMacrolex BlueRR、水とリン酸トレクレシルとDirect Blue119、さらには水とヘキサンとFC40とHFE7200とMacrolex BlueRR等が挙げられる。しかしながらこれらの組み合わせは上記に限定されるものではない。
【0038】
本発明の表示用インクに用いられる顔料粒子には、染料と組み合わせるためにほぼすべての色の種類の粒子を用いることができるが、一般の顔料粒子または黒色粒子が好ましく、これらを数種混合して用いても構わない。その粒子径は、隠蔽力からは0.1から0.5μmが特に好ましいが、0.05μmから15μmの範囲であればよく、要求する解像力、隠蔽力、応答速度等から最適値がさらには決定される。
【0039】
顔料粒子の具体例としては、酸化亜鉛、酸化チタン、カーボンブラック、アイボリーブラック、アニリンブラック、合成黄土、ベンジイエロー、ベンガラ、カーミン6B、フタロシアニンブルー、ビリジアングリーン、フタロシアニングリーン、鉄粉、マグネタイト、磁性流体、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。これらは、複数を同時に用いても構わない。またこれらは、着色改質のための表面被覆層を有していてもかまわない。また、顔料粒子の形状は特に限定されるものではないが、流体中に粘性抵抗を発現させて多数の粒子が平均的に泳動しやすくせしめるためには、針状形状や直方体形状よりも、球形もしくはそれに準ずる形状が好ましい。
【0040】
溶媒Xと溶媒Yと染料Aと顔料Bの組み合わせの具体例を示すと、テトラクロルエチレンとMacrolex BlueRRと水と酸化チタン、テトラクロルエチレンとMacrolex BlueRRと水とポリエチレン、キシレンとMacrolex BlueRRと水と酸化チタン、テトラクロルエチレンとMacrolex BlueRRと水と鉄粉、水とキシレンとDirect Blue119とポリエチレン、水とキシレンとDirect Blue119と酸化チタンFC40とアイソパーH(エクソン社)とMacrolex BlueRRとフッ素化酸化チタン、FC40(3M社)とアイソパーHとMacrolex BlueRRとテフロン粒子(三井デュポンフルロケミカル社7A−J)等が挙げられるが、これらの組み合わせは非常に多く、これらに限定されるものでは全くない。
【0041】
本発明の表示インクにおいて、溶媒Yは、染料Aを実質的には溶解しない。この場合、染料Aを実質的には溶解しないということは、その溶媒Yに対する染料Aの溶解度が0.1wt%以下であることを意味する。染料Aを実質的に溶解させない溶解Yを用いることにより、顔料粒子Bと染料Aの混色を減少させることができる。特に、この溶解度が0.01wt%であることが好ましい。また、優先的に染料を溶解する溶媒Xとしては、染料Aに対する溶解度が0.3wt%以上であることが好ましく、特に0.6wt%以上の溶解度であることが好ましい。その上限値は、通常、20%程度である。
染料Aの溶解度が0.1wt%以下である溶媒Yを使用することにより、顔料粒子と染料の混色を減少することができる。この場合の染料Aの溶解度とは、飽和溶解時の溶媒重量に対する染料重量比(%)であり、密度の大きい溶媒と吸収係数の大きい染料とを組み合せても、染料Aの溶解度が0.1wt%以下であれば、白地の反射率として紙レベルの反射率を確保することができ、良好な白地表示を行うことができる。
【0042】
溶媒Xとして油性溶媒を用い、この油性溶媒中に染料AとしてMacrolex BlueRRを0.1wt%で溶解させた溶液X(A)は、厚さ1cmのD65での吸光度約27.2を示し、同様にして、染料AとしてMacrolexViolet3Rを用いた場合の溶液X(A)は吸光度52.9を示し、また、Merck Oil Redを用いた場合の溶液X(A)は吸光度は62.0を示す。表示インクの厚さは、表示媒体の解像度300dpiを得るために84.7μmを最大値として設定し、体積比として1:1に溶媒XとYとが2相分離し、その分離したときの0.1wt%の溶液X(A)層は42μmの厚さがあり、この溶液X(A)の10vol%に相当する溶媒Yの上部に厚さ4.2μmの顔料Bの粒子層があるとする。この場合の粒子層の吸光度は0.011となり、このことから、この顔料粒子層の粒子の隙間のみではなく、すべての層厚部分に染料Aを0.1wt%溶解した溶媒溶液X(A)が存在したとしても、この染料による顔料粒子への混色は実質的に問題のない水準にあることがわかる。
【0043】
実際に、所定重量の酸化チタンを用いて、上記染料Aの溶解度の低い方の溶媒Yによる光の吸収の影響を目視において観察したところ、染料濃度が0.1wt%以下であれば、染料AとしてMacrolex BlueRRを用いた場合、顔料粒子への染料の混色が大きく減少していることが確認された。また、吸光度の比較的大きいMacrolex Violet3R、Merck Oil Redを用いた場合にも同様であった。
【0044】
また、解像度を大きくするために、表示インクの厚みを減少させた場合には、顔料粒子の隙間に存在する染料による混色の程度が少なくなるのはいうまでもないが、実際には顔料表面へ物理吸着した染料も影響してくるため、溶媒Y中の染料濃度が0.1wt%より大きいことは好ましくない。0.01wt%以下では、この物理吸着量も大きく低減するためか、非常に鮮明な顔料粒子の着色を観察できた。逆に、染料濃度が0.2wt%以上では、顔料粒子の色に対する染料による混色が視認性を劣化させていることが確認された。
【0045】
また、染料Aの溶解度の高い方の溶媒X中の染料濃度が0.3wt%以上であれば、有効な表示インク厚さが、42−4.2=37.8μmと大きいので、下地が100%反射としても吸光度0.792、つまりは光学濃度が0.792となり、表示インクとしての十分な着色特性が得られる。実際に、染料濃度が0.3wt%以上では、十分な着色が視認されるのに対して、0.2%以下では着色が不十分であることが確認された。
【0046】
溶媒X中に染料Aを溶解させた溶液X(A)中の染料Aの濃度は、ある程度濃い方が好ましく、実験的には特に好ましかったのは0.6wt%以上である。これは、計算上は、光学濃度1.5以上に相当し、視認上十分な光学濃度を与える。また、解像度を視認上十分な600dpiと2倍で使用するためには、インクの厚さが2分の1でも十分な着色を有することが必要であるため、この点から表示インク濃度はある程度濃い方が好ましく、0.6wt%以上が好ましい。
【0047】
本発明の表示インクは、顔料Bに対する溶媒Xの親和性を、顔料Bに対する溶媒Yの親和性と比較して小さくすることにより、顔料粒子Bの表面に存在する溶媒Xの吸着量を減少させることができ、これににより、顔料粒子と染料との混色を減少させることができる。
【0048】
本発明の表示媒体の一つの形態を図2に基づいて以下に説明する。図2は、本発明の表示インクを用いた表示媒体の概念図である。図2において、Bは酸化チタンからなる顔料粒子である。X(A)は、染料Aとして油性染料Macrolex BlueRRを溶媒Xとしてのヘキサンとテトラクロルエチレンからなる非極性の溶媒に溶解させた溶液であり、斜線が染料が溶解していることを示す。Yは油性染料の溶解度の小さい水からなる溶媒である。X(A)とYとBにより表示インクが構成される。14は密閉容器であり、15はこの容器の下部にある透明な天窓であり、16はこの天窓から目視観察する人の眼を示す。
【0049】
前記表示インクにおいて、顔料Bとしての酸化チタン粒子の表面は、酸化物としてのO原子やOH基による極性を有する。溶媒Xは、油性染料を優先的に溶解するヘキサンとテトラクロルエチレンからなる非極性の溶媒であり、溶媒Yは油性染料の溶解度の小さい水(極性溶媒)である。この表示インクにおいて、顔料Bと溶媒Xとの親和性は、顔料Bと溶媒Yとの親和性よりも小さくなっている。前記顔料Bと溶媒X、Yとの親和性は、以下のようにして測定されたものである。
500mlビーカー中に、2つの溶媒X、Yを各100mlを入れ、次いで一次粒子の平均粒径を少なくとも1ミクロン以下、好ましくは0.4ミクロンに十分に微細した顔料粒子B5gを入れ、攪拌子で10分間攪拌した後、30分間静置する。次いで、顔料粒子Bが2つの溶媒X、Yのうちのいずれの方に主体的に含まれるかを目視により判断する。
顔料粒子Bの含有量が溶媒Xの方が多い場合には、顔料Bに対する親和性は溶媒Yよりも溶媒Xの方が大きいと判定され、一方、その逆の場合には、顔料Bに対する親和性は溶媒Xよりも溶媒Yの方が大きいと判定される。
これは、十分に微細にした粒子は、顔料粒子と溶媒とに密度の差があっても、密度差による沈降よりも顔料粒子に対する溶媒同士の親和性の差による分離能力が大きく影響することに基づく。
【0050】
この表示インクは、下部が透明な密閉容器に封入され、この透明な下部から目視でその状態を観測する。表示インクの封入直後においては、染料の溶媒溶液X(A)は直ちに相分離しているが、その下部の溶媒Yに酸化チタンBが分散している状態になる。30分以上経過して、表示インクは図2の状態に示されるように、比重が分散媒Yより大きい酸化チタンが沈降した場合には、青色のほとんど認められない白色が確認された。これは、顔料粒子に付着した染料溶液X(A)の付着量が少ないことによる。
【0051】
染料と溶媒との親和性及び顔料と溶媒との親和性は、その疎水性、親水性、親油性、撥油性の違い等を組み合わせることにより、また定量的には、その表面張力、溶解度パラメータ、水素結合力、ファンデルワールス力、さらにはエンタルピー等を一定値以上に異ならせることにより調節できる。このため、染料、顔料粒子、および溶媒の組み合わせは、上記に限定されるものではなく、さらにはフッ素化化合物の疎水性、撥油性材料等を組み合わせたり、長鎖アルキル基を含有するアクリル系ポリマーのように極性基と非極性基を同時に有する材料等を用いることにより、疎水性と親水性といっただけの単純な組み合わせ以外にも、多くの複雑な組み合わせが実現可能である。
【0052】
続いて、図3に基づいて以下に説明する。図3は、本発明の表示インクの概念図である。図3(b)は、顔料粒子に対する溶媒Xと溶媒Yの親和性がと同じ場合であり、全体としては顔料粒子は溶媒Yに分散している。顔料に対する溶媒XとYの親和性が同じである故に、染料を含む溶液X(A)が顔料粒子表面をわずかに被覆して、顔料粒子19を包囲する被覆層17が形成される場合がある。このとき、被覆した染料溶液X(A)に含まれる染料Aが原因となって、顔料粒子と染料との混色が生じることになる。しかしながら、顔料粒子と溶媒Xとの親和性を小さくすることにより、この被覆層17を生じにくくさせることができる。ただし、この場合、顔料粒子が酸化チタンのような極性部分または親水性部分を有するときには、油性染料ではあっても、染料粒子の顔料分子への吸着18がある程度生じて、図3(c)に示される状態となり、わずかに顔料粒子と染料との混色が生じる。
【0053】
また、本発明における表示インクは、顔料粒子表面に疎水性部分または非極性部分を存在させることにより、その顔料粒子表面に染料または染料を溶解した非極性の溶媒の付着を低減し、染料と顔料粒子との混色を低減させることができる。
【0054】
図3(a)において、19はポリエチレン粒子(Merk社製、PE、1.707422.0100、Charge/Lot L150522747、光学顕微鏡観察により平均粒径は1μm以下)からなる顔料粒子であり、顔料Bを形成する。2相に分離する2種の溶媒X、Yのうちの一つである溶媒Xは、水であり、この水には水性染料Direct Blue 119を優先的に溶解させて溶媒X(A)とする。もう一つの溶媒Yは、水性染料の溶解度の小さいヘキサンとテトラクロルエチレンからなる非極性の溶媒であり、顔料粒子と非極性の溶媒との比重は、ほぼ同じとしている。この表示インクにおいて、ポリエチレン粒子の表面は、メチレン基による非極性部分でかつ疎水性部分を有する。さらには、水性染料Direct Blue 119を優先的に溶解する水は極性溶媒であり、水性染料の溶解度の小さい溶媒Yは、ヘキサンとテトラクロルエチレンからなる非極性の溶媒である。この表示インクにおいて、染料に対する溶解度の大きい溶媒Xと顔料粒子Bとの親和性が、他の溶媒Y(水)と顔料粒子Bとの親和性よりも小さい。
【0055】
この表示インクは、上部が透明な密閉容器に封入され、この透明な上部から目視でその状態を観測することができる。表示インクの封入直後においては、溶液X(A)は直ちに相分離しているが、その上部の溶媒Yにポリエチレン粒子が分散している状態になる。30分以上経過して、若干比重の小さいポリエチレン粒子が浮上した場合には(図1(c)に示す状態に近い状態)、青色の全く認められない白が確認された。これは、顔料粒子にわずかに付着した染料を溶解した溶媒溶液X(A)を低減した以外に、顔料粒子に物理吸着した染料分子による着色が大きく低減したことによる。これは、染料のほとんどがπ結合を有する若干の極性部分もしくは親水性部分をその分子の一部にもつ材料であるため、この部分が極性部分または親水性部分を有する顔料粒子に吸着しやすくなるのに対して、顔料粒子の表面を疎水性または非極性染料とすることにより、染料の吸着量を低減したことによる。
【0056】
さらには、染料を溶解させる溶媒Xとして、極性の溶媒または撥油性の溶媒を用いた場合には、顔料粒子を被覆する溶液X(A)の影響を除外できるので、合わせて効果的である。また、染料、顔料粒子、および溶媒の組み合わせは、上記に限定されるものではない。
【0057】
また、本発明における表示インクに用いる顔料Bとして、表面が疎水性または非極性である粒子を用い、その表面に被覆層、化学吸着層または物理吸着層を設けることにより、顔料粒子Bに対する染料Aの吸着、または染料を溶解した溶媒溶液X(A)の顔料粒子Bへの被覆層の形成を低減し、染料と顔料粒子との混色を低減することができる。
【0058】
本発明の表示インクを状態図を図4に示す。図4(a)は、顔料粒子20(顔料B)のそのままの状態を示す図であり、染料を溶解した溶媒の顔料粒子への被覆層の形成や染料の顔料粒子表面への吸着は、顔料粒子の表面特性に大きく影響され、これを改善するには顔料粒子を変更することが必要である。しかしながら、図4(b)に示されるように、顔料粒子20の表面に無機材料、高分子等からなる被覆層21を設けることにより、この被覆層の親和性を、染料を溶解した溶媒および染料に対応して最適化することができる。
【0059】
顔料粒子の表面の溶媒Xに対する親和性を低減させるための被覆用材料を例示すると、酸化チタン顔料粒子に対する被覆用材料としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、ポリエチレン、フェノール樹脂、ポリエメルアクリレート、メラミン樹脂、ウレア樹脂、テフロン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等が挙げられ、ナイロン粒子に対する被覆用材料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられる。顔料粒子表面に形成する被覆は、単核の被覆が好ましいが、複数核の被覆でもかまわない。
これらの被覆には、高分子材料を溶媒に溶解せしめた後に貧溶媒を添加するか、低温状態にして溶解度を低減せしめて析出させる方法を用いることができる。また、バリタイザー、コートマイザー等のメカのケミカル的被服装置を用いることもできる。
【0060】
図4(c)は、顔料粒子20の表面に、共有結合による被覆層を形成せしめた状態を示す図であり、この化学物質(A−B)22のイオン、またはその側鎖または末端基等の特性により、顔料表面の親和性を、染料を溶解した溶媒および染料に対応して最適化することができる。その化学物質の結合方法としては、チタンカップリング、シランカップリング、アルミニウムカップリング、グラフト重合等が挙げられる。これらの方法を実施する場合、あらかじめ顔料粒子を処理しておいてもよいが、反応試薬を溶媒にあらかじめ混合しておいてもよい。
【0061】
チタンカップリング剤としては、具体的には、イソプロピル・トリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルフォスファイト)チタネート、イソプロピル(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトライソプロイルビス(ジオクチルホソファイト)トタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート等が挙げられる。
【0062】
シランカップリング剤としては、具体的には、ビニルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等、さらにはフルオロシランカップリング剤であるペンタデカフルオロデシリルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0063】
アルミニウムカップリング剤としては、具体的には、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが挙げられる。
【0064】
グラフト重合としては、具体的には、酸化チタンに対しては、メトキシシラン基、クロルシラン基等を用いたポリエチレンのグラフト重合、ビニルイソシアナート基の利用によるポリスチレンのグラフト重合、さらには酸化珪素に対しては、シラノール基を利用した種々のグラフト重合、シロキサン基、ハロゲン基を利用した種々のグラフト重合が挙げられる。
【0065】
図4(d)は、顔料粒子20の表面に、界面活性剤を物理吸着させた状態を示す図であり、物理吸着物質23のイオン、またはその側鎖または末端基等の特性により、親和性を、染料を溶解した溶媒および染料に対応して最適化することができる。その物理吸着物質としては、アニオン系、カチオン系、両性系、ノニオン系の界面活性剤を用いることができるが、その他、微量の有機溶媒が表面に被覆されて効果的な場合があり、このような場合には、その有機溶媒も使用可能である。さらには、一部フツ素基により置換した界面活性剤も、その親和性を制御するうえで特に効果的である。
【0066】
物理吸着する界面活性剤としては、具体的には、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸、オレイン酸、イノレイン酸、ラルリルアルコール硫酸エステルアンモニウム、ラルリルアルコール硫酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、エアロゾルOT、ソロミンA、サパミンA、アーコベルA、ラウリルチルネチルアンモニウムクロライド、ラウルリアミノプロピオン酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ノニルフェニルエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。さらには、フッ素系界面活性剤としては、具体的には、3M社製のFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170、FC−171、FC−430、FC−431等が挙げられる。
【0067】
粒子表面に被覆層、化学吸着層または物理吸着層を形成させるための材料等は上記に限定されるものではない。
また、被覆層、化学吸着層または物理吸着層の複数を組み合わせて用いても構わない。
【0068】
また、本発明の表示インクにおいて、その顔料Bは、その少なくとも1部の粒子が磁性粒子であることができ、これにより、磁石または電磁石を用いて、その表示インクの着色を可逆的に容易に変化させることができる。この磁石を用いた動作については、先に説明した通りである。
【0069】
また、本発明の表示インクにおいて、その顔料Bは、その少なくとも1部の粒子が電気泳動粒子であることができ、これにより、電圧の印加により表示インクの着色を可逆的に変化させることできる。
本発明の表示媒体の1つの実施態様を、図5に基づいて以下に説明する。図5は、本発明の表示媒体の概念図である。図5において、ポリエチレン粒子(Merck社製、PE)からなる顔料粒子26であり、顔料Bを形成する。2相に分離する2種の溶媒X、Yのうち一つは水であり、この水には水性染料Direct Blue119を溶解させて溶液X(A)24とする。もう一つの溶媒Yは、水性染料の溶解度の小さいヘキサンとテトラクロルエチレンからなる非極性の溶媒25である。27、28はITO電極であり、これが直流電源29または30に接続される。
【0070】
ポリエチレン粒子26は、溶媒中でその電荷を負に帯電しており、図5(a)に示すように、上部の電極27にプラス10Vを短時間印加すると、ポリエチレン粒子が上部に電気泳動し、ポリエチレン粒子のきれいな白色が観察され、染料の混色は確認されない。また、図5(b)に示すように、上部の電極27にマイナス10Vを短時間印加すると、ポリエチレン粒子26が下部に電気泳動し、染料のきれいな青色が観察され、ポリエチレン粒子の混色は確認されない。
【0071】
これらの動作は、電気的に簡単にスイッチングできかつ可逆的である。また、一度電極に付着した粒子はファンデルワールス力により、印加電圧による電界が消滅した後もその状態をほぼ維持できる。この場合、エレクトクロミックと同様の見やすさ(高コントラスト、高視野角)を有し、かつ電流がほとんど流れないため消費電力が小さいという長所がある。
【0072】
また、本発明の表示インクにおいて、その顔料の少なくとも1部の粒子が磁性粒子でありかつ電気泳動粒子であることができ、これにより、電圧により表示インクの着色を可逆的にできると同時に、磁力によりメモリー性を増加させることができる。
【0073】
本発明の他の表示媒体を図6に基づいて以下に説明する。図6は、本発明の表示媒体の概念図である。図6において、50はフェノール樹脂で被覆した鉄粉からなる顔料粒子であり、顔料Bを形成する。2相に分離する2種の溶媒X、Yのうち一つ(溶媒X)は水であり、この水には水性染料Direct Blue119を溶解させて溶液X(A)24とする。もう一つの溶媒Yは、水性染料の溶解度の小さいヘキサンとテトラクロルエチレンからなる非極性の溶媒25である。27、28はITO電極であり、これが直流電源29または30に接続されている。31は上部に設けたリング状永久磁石であり、32は下部に設けたリング状永久磁石である。
【0074】
顔料粒子50は、溶媒中でその電荷を負に帯電しており、図6(a)に示すように、上部の電極27にプラス10Vを短時間印加すると、顔料粒子が上部に電気泳動し、顔料粒子50の少し黄みを帯びた黒色が観察された。また、図6(b)に示すように、上部の電極27にマイナス10Vを短時間印加すると、顔料粒子50が下部に電気泳動し、染料のきれいな青色が観察された。図6(a)の状態のときに、この密閉容器全体に超音波洗浄機により超音波を印加しても、顔料粒子はそのままであり、見た目の変化はなかった。これに対し、磁石31、32を取り外して同様に超音波を印加したところ、ほとんどの顔料粒子が、上部の電極27から剥がれて沈殿し、図6(b)のようになり、染料の青色が観察された。このように、電気泳動粒子と磁性粒子を組み合わせることにより、そのメモリー性を大きく向上させることができる。
【0075】
また、本発明における表示媒体は、上記表示インクが平板間に保持されていることにより、溶媒X、Yの相分離状態を均一に保つことで、画素ごとに明瞭な表示を行うことができる。
【0076】
本発明のさらに他の表示媒体を図7に基づいて以下に説明する。図7は、本発明の表示媒体の概念図である。図7において、ポリエチレン粒子(Merck社製、PE)からなる顔料粒子26が本発明の顔料Bを形成する。2相に分離する2種の溶媒のうち一つ(溶媒X)は水であり、この水には、水性染料Direct Blue119を溶解させて、溶液X(A)24とする。もう一つの溶媒Yは、水性染料の溶解度の小さいヘキサンとテトラクロルエチレンからなる非極性の溶媒25である。33、34は表示インクを保持する表示媒体の一部である平板である。この片面には電極36が設けられている。35はこれらの平板を支えるピラー兼隔板である。図7は、直流電源38により、電極36と、表示媒体上部に設けた書き込み電極37との間の該上部電極37にプラス電圧を印加している状態を示す。
【0077】
図7に示すように、この表示媒体においては、2つの平板33、34およびこの間に設けたピラー兼隔板35により、本発明の表示インクが孤立して保持されるため、2種の相分離した溶媒X、Yの比重が異なる場合においても、傾けたりした場合に、表示インクの組成がミクロ的に均一であることができる。また、画像を形成した場合には、発生する横方向の電界により、顔料粒子が移動してしまい不均一になることがなくなった。
平板な基板材料としては、具体的には、ガラス、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは多層構造を有していてもかまわない。
【0078】
また、本発明における表示媒体は、上記表示インクをマイクロカプセルに含有させることにより、2相分離の溶媒X、Yの混合比を均一に保つことで、画素ごとに明瞭な表示を行うことができる。
【0079】
本発明のさらに他の表示媒体を図8に基づいて以下に説明する。図8は、本発明の表示媒体の概念図である。図8において、表示インクを含有するマイクロカプセル39が、平板33、34間に設けられている。この場合、平板は、必ずしも必要ではなく、このマイクロカプセルにより、本発明の表示インクが孤立して保持されているため、2種の相分離した溶媒X、Yの比重が異なる場合においても、傾けたりした場合に表示インクの組成がミクロ的に均一であることができる。また、画像を形成した場合には、発生する横方向の電界により、顔料粒子が移動してしまい不均一になることがなくなった。
マイクロカプセルの壁材としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ゼラチン、アクリレート等が使用できる。マイクロカプセルは界面重合法、In−Situ重合法、コアセルベーション法等で形成される。カプセル径は1〜1000μm、好ましくは5〜200μmとされる。上記のような方法で形成されるマイクロカプセルは一般に水分を含むスラリー状となる。これを乾燥させて粉末状にすることも可能であるが、バインダ材として、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、尿素−ホルマリン系、メラミン−ホルマリン系、イソブチレン−無水マレイン酸系等の水溶性の高分子(またはプレポリマー)材料を使用する場合には、バインダ材の水溶液にマイクロカプセルのスラリーを混合して塗布液を作製すればよい。
【0080】
本発明の表示インクは、前記表示媒体用インクとして適用される他、通常のインクの場合と同様に、サインペンやマジックインク用インクとしても適用することができ、さらに、各種の印刷用インク、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、電子写真法印刷等の印刷等のインクとして適用することができる。本発明の表示インクは、特にインクジェット印刷用インクとして好適のものである。
本発明の表示インクを印刷用インク等として用いる場合には、そのインクの具体的用途に応じて2つの手法があり、1つは表示インクを表示媒体上で密閉空間に入れたまま利用する方法であり、2つめは表示インクを直接に表示媒体に付着せしめる方法である。後者の方法では、さらにその用途に応じて、適当な補助成分、例えば、高分子バインダ、界面活性剤、発色剤、消色剤等を用いることができる。
本発明の表示インクを用いる印刷方法は、該表示インクを、被印刷物(被印刷媒体)に付着させた後、該インク中に含まれる溶媒を除去することによって実施される。被印刷物としては、通常は紙が用いられるが、その他、金属板、高分子フィルム、高分子シート等を用いることも可能である。
本発明の表示インクをインクジェット印刷用インクとして用いることにより、単一の表示インクにおいて2色以上の着色を得ることができる。
【0081】
本発明の表示インクを用いる印刷方法の1つの態様を図9および図10に基づいて以下に説明する。
図9および図10は、本発明の印刷方法の概念図である。図9において、40は、表示インクを保持する容器であり、上部に不活性ガスまたは別の液体で満たし、これは41a、41bの矢印に示す方向にピエゾ素子により力を加えることにより、水性染料を溶解した水X(A)24、非極性の分散媒Y25、顔料粒子26からなる表示インクを紙に向けて噴出させる。このとき、図12に示すような、従来の単相の液体に染料と顔料を添加した表示用インクを用いる場合の印刷では、図13に示すように、紙46のなかに染料47が染み込むと同時に顔料粒子26を覆うように染料の被覆層49が形成され、顔料と染料とが混合した色の着色が得られる。
【0082】
これに対して、本発明では図9(a)に示すように、左右から上部電極42a、43aが下部電極42b、43bに対して正になるように電圧を44a、44bの直流電源によって印加しながら、41a、41bの方向に力を印加すると、図10(a)で示されるように、顔料粒子26の下側に染料の層48が形成され、その結果、顔料粒子層が最上面に形成され、観察者6からは顔料粒子26の着色が視認される。また、図9(b)に示すように、電圧を逆に印加して、同様に本発明の表示インクを噴出させると、図10(b)で示されるように、顔料粒子26を覆うように染料の被覆層49が形成され、顔料と染料とが混合した色の着色として観察される。このように、単一の組成の表示インクでありながら、複数の着色を表示することができる。
【0083】
前記インクジェット方式による印刷の場合には、紙に対する顔料粒子の付着状態を改善することができるため、無色(白色)の染料を用いて紙質の改善をおこなったり、無色(白色)の顔料粒子を用いて染料に対するオーバーコートをおこなったり、染料と顔料粒子の色をほぼ同じにして耐光性を改善する場合にも効果的である。また、この場合、顔料粒子の一部分が、紙の中に染み込んでもかまわない。また、一部の染料層が顔料粒子の上面に形成されても構わない。
【0084】
本発明の表示インクは、上記インクジェット用インクにした表示媒体に限定されるわけではなく、スクリーン印刷、オフセット印刷、電子写真法、サインペン、マジックインク等におけるインクに用いても構わない。また被印刷物としても、紙以外でも構わなく、具体的には金属、高分子膜、セラミックス膜などの表面や、塗膜表面等が挙げられる。
また、2相に分離可能な片方の溶媒をエマルジョン化したり、その界面付近に顔料粒子を凝集させることも効果的である。
【0085】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明を具体的に説明する。
【0086】
参考例1
テトラクロルエチレン3重量部とn−ヘキサン7重量部を混合した液体(溶媒X)に対して、Macrolex BlueRR(染料A)を約1.0wt%溶解した。これは容易に溶解した。一方、水(溶媒Y)に10wt%鉄粉(顔料B)を加えた。これは沈降が生じ易いため、撹拌により分散状態を保持した。これらの溶液X(A)および分散液Y(B)を2.5mlづつ秤量して混合し、これを上部がガラスを主とする密閉容器に封入したのち、超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうし、ガラス上のテーブルに静置し、目視により上部から観察した。30分後、ガラス容器の上部付近に、フェライト系磁石を配置し、鉄粉を上部に移動させて後、ガラス容器の下部、ガラス上のテーブルの下に磁石を配置し、鉄粉を下部に移動させた。磁石の配置に際しては、一旦、ガラス容器の壁面に磁石を接触させた。以下に目視による2相分離液体中での着色変化等の観察結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
比較例1
テトラクロルエチレン3重量部とn−ヘキサン7重量部を混合した液体に対して、Macrolex BlueRRを約0.5wt%溶解した。さらに、これに鉄粉(和光純薬社)5wt%を加えた。しかし、この混合物は鉄粉の沈降が生じ易いため、撹拌により分散状態を保持した。これを上部がガラスを主とする密閉容器に封入したのち、超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうし、ガラス上のテーブルに静置し、目視により上部から着色変化等を観察した。結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
参考例2
染料濃度の小さい方の溶媒Yに対する染料Aの溶解度の白地の反射率に対する影響を調べる。また、染料濃度の大きい方の溶媒Xに対する染料Aの溶解度の青地の反射率に対する影響を調べた。この白地の反射率は、顔料粒子の十分な量が確保され、十分な隠蔽性がある場合には、染料濃度の大きい方の溶媒Yの状態によらないため、単一相で調べることができる。また、青地の反射率は、この染料濃度の大きい方の溶媒Xに対して観察方向と反対となる部分の白地反射率が十分に大きい場合には、染料濃度が十分に小さい方の溶媒Yからなる単一の相の状態によらないため、単一相で調べることができる。このため、従来の単一相において、染料濃度を変化させることにより、2相分離の状態の白地反射と、青地反射の状態を調べることができる。テトラクロルエチレン3重量部とn−ヘキサン7重量部を混合した液体(溶媒X)に対して、染料Aとして、Macrolex BlueRRを約0.005wt%〜1wt%まで濃度変化させて溶解した溶液X(A)を作製し、これに酸化チタン(顔料B)を10wt%を分散させ、超音波を10分間印加した後、撹拌して顔料Bの分散を保持した。この分散液を、その高さが約50μmとなる液量を下部が薄いFEPフィルム(25μm)から成る容器に入れ、30分間静置した後、下面から光学濃度測定装置(東京電飾社製、DENSITOMETERTC−6MC)で白地反射率を測定した。また、上部がガラスからなる容器を用いて、上面から青地反射率を測定した(大塚電子社製、:LCD EVALUATIONS SYSTEM、試料の下面に反射率80%のコピー用紙を配置)併せて、目視による評価も行った。ただし、大塚電子社製の測定器は、細い光ビームを特定方向(30度)から入射させたときの、垂直方向の反射率を硫酸バリウムからなる標準拡散板に対して比較した相対値であり、さらに厚い3mmのガラスを用いており、この値はガラスからの出射の際に全反射や光束角度の広がりが大きく影響するため、直接に光学濃度装置と比較することができない。例えば、FEPフィルムを使用して光学濃度測定装置の方で90%以上の反射率となる酸化チタンの粒子を、透明液体に分散せしめてこの大塚電子社製の測定機で測定すると45%の反射率となり、絶対的な比較はできない。
【0091】
なお下面の反射率は、2相分離する溶媒X、Yを用いた場合において、染料を溶解した溶媒(溶媒X)が、顔料粒子の周囲に完全に被覆されている場合に、その影響がどの程度になるかということを測定したものである。これは、その反射率の高さまたは白さから、溶解度の小さい方の溶媒(溶媒Y)に対する染料Aの好ましい溶解度を与えることができる。
一方、上面の反射率は、染料を溶解した溶媒Xの反射率がどの程度になるかを測定したものである。これは、その反射率の低さまたは青さから、溶解度の大きい方の溶媒Xに対する染料Aの好ましい溶解度または溶解濃度を与えることができる。
結果をまとめて表3に示す。表3中、◎は極めて良好、○は良好、△はやや不良、×は不良、を表し、−は未評価である。
【0092】
【表3】
【0093】
表3より、2相分離する溶媒のうち溶解度の小さい方の溶媒Yの染料に対する好ましい溶解度は、基準となる白地光学濃度を0.13以下とし、特に、0.1wt%以下にすることが好ましいことが解る。白地光学濃度が0.13のとき、白地反射率は70%以上であり、通常のコピー用紙の80%には劣るものの、ほぼ同等の白さを確保できることになる。また、2相分離する溶媒のうち溶解度の大きい方の溶媒Xに対する好ましい溶解度としては、0.6wt%以上であることが、目視評価の結果よりわかる。この場合の反射率は、相対的であり、反射率から判断することは難しいが、一般には、白地光学濃度で0.8以上を与えるに十分な溶解度以上であることが好ましく、さらには、白地光学濃度で1.0以上を与えるに十分な溶解度以上であることが好ましい。
【0094】
参考例3
電気泳動表示セルを作製して評価した。比抵抗約100Ω/□のITO付き3mm厚の青板ガラス基板30mm×50mmを用いて、その1枚に2液型エポキシ樹脂の液晶用室温硬化封止剤を、幅約1.5mm、外側サイズ約25mmでスクリーン印刷し、また80ミクロンのスペーサを両端に用いた。この封止剤の内側に、超音波を印加後さらに激しく振とうした表示用インクをデスペンサーで適量を秤量、滴下し、もう1枚のITO付きガラスを押し付けて、余分な表示用インクを排除した後、これに約5kgの重量を加えて12時間放置して電気泳動セルを作製した。一方のITOには、溶媒とのITOとの親和性を大きくするために、新油処理シランカップリング剤(信越シリコーン社、KBM3103Cを)で前処理したものを用いた。この電気泳動表示セルに、導伝ペーストにより配線し、これを直流電源に接続した。また、電気泳動表示セルは、反射率測定機(大塚電子社製:LCD EVALUATIONS SYSTEM)の中にセットした。反射率は、硫酸バリウム反射板(公称反射率99.6%)を基準として評価した。ただし、この電気泳動表示セルは、拡散反射型であるため3mm厚のガラスでは、全反射成分によるロスがあり、実際の目視と異なる直接反射の反射光のみを測定する。染料を添加しない酸化チタンを測定したところ、白地の反射率が36.2%であった。電圧をプラスまたはマイナス1Vまたは10Vで10秒〜10分の間で印加した後、反射率を、スポット系約3mm、30度入射、0度反射で測定した。また、同時に目視による確認を行った。実験データとしては、最も良好な値を用いた。表示用インクは以下に示すように調製した。テトラクロルエチレン3重量部とn−ヘキサン7重量部を混合した液体に対して、Macrolex BlueRRを約1.0wt%溶解した。これは容易に溶解した。一方、水に20wt%酸化チタンを加えた。これは沈降が生じ易いため、撹拌により分散状態を保持した。これら2つの溶液および分散液を1:1の重量比で容器中で混合し、この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。
【0095】
実施例1
表示用インクは、以下に示すように調製した。水に対して、Direct Blue119を約1.0wt%溶解した。これは容易に溶解した。一方、テトラクロルエチレン2重量部とn−ヘキサン8重量部を混合した液体にポリエチレン粒子(Merc社製、PE)20wt%を加えた。これは浮上し易いため、撹拌により分散状態を保持した。これら2つの溶液および分散液を1:1の重量比で容器中で混合し、この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。これ以外は、参考例3と同様である。
【0096】
実施例2
表示用インクは、以下に示すように調製した。水に対して、Direct Blue119を約1.0wt%溶解した。これは容易に溶解した。一方、テトラクロルエチレン2重量部とn−ヘキサン8重量部を混合した液体にポリエチレン粒子(Merc社製、PE)40wt%を加えた。これは浮上し易いため、撹拌により分散状態を保持した。これら2つの溶液および分散液を3:1の重量比で容器中で混合し、この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。これ以外は、参考例3と同様である。
【0097】
実施例3
表示用インクは、以下に示すように調製した。水に対して、Direct Blue119を約1.0wt%溶解した。これは容易に溶解した。一方、テトラクロルエチレン2重量部とn−ヘキサン8重量部を混合した液体にポリエチレン粒子(Merc社製、PE)80wt%を加えた。これは浮上し易いため、撹拌により分散状態を保持した。これら2つの溶液および分散液を7:1の重量比で容器中で混合し、この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。これ以外は、参考例3と同様である。
【0098】
実施例4
表示用インクは、以下に示すように調製した。水に対して、Direct Blue119を約1.0wt%溶解した。これは容易に溶解した。一方、テトラクロルエチレン2重量部とn−ヘキサン8重量部を混合した液体にシリル化剤処理した酸化チタン20wt%を加えた。このシリル化剤処理した酸化チタンは、あらかじめ酸化チタンを酸性水溶液中にてイソプロピル・トリイソステアロイルチタネート(プレーンアクトKRTTS、味の素社製)1wt%と混合したのち洗浄、乾燥して調製したものである。これにより、このシリル化剤処理した酸化チタンの表面は親油性になっている。この調製した溶液(分散媒)は沈降し易いため、撹拌により分散状態を保持した。これら2つの溶液および分散液を1:1の重量比で容器中で混合し、この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。これ以外は、参考例3と同様である。
【0099】
実施例5
表示用インクは、以下に示すように調製した。水に対して、Direct Blue119を約1.0wt%溶解した。これは容易に溶解した。一方、テトラクロルエチレン2重量部とn−ヘキサン8重量部を混合した液体に酸化チタン(石原産業社製:タイペックR60−2)20wt%を加えた。この酸化チタンの表面は、表面をアルミナと有機物で被覆することにより親油性になっている。この調製した溶液(分散媒)は沈降し易いため、撹拌により分散状態を保持した。これら2つの溶液および分散液を1:1の重量比で容器中で混合し、この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。これ以外は、参考例3と同様である。
【0100】
実施例6
表示用インクは、以下に示すように調製した。水に対して、Direct Blue119を約1.0wt%溶解した。これは容易に溶解した。一方、テトラクロルエチレン2重量部とn−ヘキサン8重量部を混合した液体に酸化チタン20wt%とオレイン酸2.5wt%を加えた。これにより、この酸化チタンの表面は、親油性になっている。オレイン酸は、水に対する溶解性が小さいため、相分離した後も水に溶解することはない。この調製した分散媒は沈降し易いため、撹拌により分散状態を保持した。これら2つの溶液および分散液を1:1の重量比で容器中で混合し、この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。これ以外は、参考例3と同様である。
【0101】
比較例2
表示用インクは、以下に示すように調製した。テトラクロルエチレン3重量部とn−ヘキサン7重量部を混合した液体に対して、Macrolex BlueRRを約0.5wt%溶解した。これは容易に溶解した。さらに、これに酸化チタン10wt%を加えた。これは沈降が生じ易いため、撹拌により分散状態を保持した。この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。これ以外は、参考例3と同様である。
【0102】
比較例3
表示用インクは、以下に示すように調製した。テトラクロルエチレン3重量部とn−ヘキサン7重量部を混合した液体に対して、Macrolex BlueRRを約0.5wt%溶解した。これは容易に溶解した。さらに、これにポリエチレン粒子(Merc社製、PE)10wt%を加えた。これは沈降が生じ易いため、撹拌により分散状態を保持した。この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。これ以外は参考例3と同様である。
【0103】
比較例4
表示用インクは、以下に示すように調製した。水に対して、Direct Blue119を約0.5wt%溶解した。これは容易に溶解した。さらに、これにポリエチレン粒子(Merc社製、PE)10wt%を加えた。これは浮上し易いため、撹拌により分散状態を保持した。この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。これ以外は、参考例3と同様である。
【0104】
比較例5
表示用インクは、以下に示すように調製した。水に対して、Direct Blue119を約0.5wt%溶解した。これは容易に溶解した。さらに、これに酸化チタン(関東化学社製)10wt%を加えた。これは浮上し易いため、撹拌により分散状態を保持した。この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。これ以外は、参考例3と同様である。
【0105】
以下に参考例3、及び実施例1から6の場合、および比較例2から5の場合の結果を示す。評価基準は表3と同様である。Direct Blue119とMacrolexBlueRRのモル吸光係数、ポリエチレンと酸化チタンとの隠蔽力とに差があることを留意しなければならない。
【0106】
【表4】
【0107】
参考例4
マイクロカプセルを用いた電気泳動表示セルを作製して評価した。表示用インクは、以下に示すように調製した。テトラクロルエチレン3重量部とn−ヘキサン7重量部を混合した液体に対して、Macrolex BlueRRを約1.0wt%溶解した。これは、容易に溶解した。一方、水にポリエチレン粒子(Merc社製、PE)80wt%を加えた。さらに、水を一時的にエマルジョン化するために、複数の界面活性剤を加えた。これは沈降が生じ易いため、撹拌により分散状態を保持した。これら2つの溶液および分散液を7:1の重量比で容器中で混合し、この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。さらに、これと予め溶解させてあるポリビニルアルコール(呉羽化学社製:ポバール)、その他の界面活性剤、メラミン樹脂のプレポリマーを溶解せしめてある1.5倍量の水とを混合撹拌し、60〜80℃においてマイクロカプセルを合成した。1時安定的なW/O/W(水相/油相/水相)の混合液を用い、マイクロカプセル合成後に、W/O構造のWを消失せしめることにより、ほぼ仕込みに近い2相分離した表示用インクを含有するマイクロカプセルを合成できた。次に、ポリビニルアルコール(関東化学社製:#500)1重量部、水10重量部を2時間室温で混合撹拌して完全に溶解した後、マイクロカプセルのスラリーを9重量部加えて、これをホモジナイザーで5000回転、5分間撹拌した。これをギャップ250μmのアプリケータを用いて、比抵抗約200Ω/□のITO付きポリカーボネート基板に、計量塗工した後、90℃で10分間乾燥した。膜厚は、約60〜100μmであった。この一部を切り取り、比抵抗約100Ω/□のITO付き3mm厚の青板ガラスとで挿んで密着して、テープで張り合わせて電気泳動セルを作製した。この電気泳動表示セルに対して、参考例3と同様の測定を行った。
【0108】
比較例6
表示用インクは、以下に示すように調製した。テトラクロルエチレン3重量部とn−ヘキサン7重量部を混合した液体に対して、Macrolex BlueRRを約0.5wt%溶解した。これは容易に溶解した。さらに、これにポリエチレン(Merc社製、PE)10wt%を加えた。これは沈降が生じ易いため、撹拌により分散状態を保持した。この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。これを、参考例4とほぼ同様にしてマイクロカプセルを合成後、電気泳動セルを作製し、測定を行った。
【0109】
参考例5
表示用インクは、以下に示すように調製した。テトラクロルエチレン3重量部とn−ヘキサン7重量部を混合した液体に対して、Macrolex BlueRRを約1.0wt%溶解した。これは、容易に溶解した。一方、水に鉄粉(和光純薬社製)80wt%を加えた。さらに、水を一時的にエマルジョン化するために、複数の界面活性剤を加えた。これは沈降が生じ易いため、撹拌により分散状態を保持した。これら2つの溶液および分散液を7:1の重量比で容器中で混合し、この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。この表示用インクを用い、参考例4とほぼ同様にしてマイクロカプセルを合成後、電気泳動セルを作製し、測定を行った。ただし、ITO付きガラス基板とマイクロカプセルとの間に、鉄からなる金属メッシュ(200メッシュ)を挿んで密着して、テープで張り合わせて電気泳動セルを作製した。さらに、このメッシュの一部を磁石に接触させた。
【0110】
比較例7
金属メッシュを挿まないで電気泳動セルを作製した以外は、参考例5と同じである。
【0111】
以下に参考例4及び5の場合、および比較例6、7の場合の結果を表5に示す。カプセル化により、黒地に相当する染料反射率が上昇した。また、参考例5において、金属メッシュの影響により、染料反射率が増加した。メモリー性を、電気泳動セルに超音波を10分間照射し、その色の変化によって確認した。ただし、金属メッシュの色、マイクロカプセルによる散乱白色は除外した。
【0112】
【表5】
【0113】
参考例(マイクロカプセルの製造例)
約60℃のイソオクタン(2,2,4−トリメチルペンタン)とフッ素系溶媒(フロリナートFC40、住友3M社)とを混合して単一の相の混合溶媒とした。混合比は、容積でイソオクタン:フッ素系溶媒=1:1である。この単一相の溶液約200gを温度を60℃前後に保ちながら、ポリビニルアルコール(ポパール203:クラレ社)約3%、その他の界面活性剤、添加剤、さらにメラミン−ホルムアルデヒドの初期重合物(Sumirez Resin613:住友化学社)約70gを混合溶解した約60℃に保持した約300gの水溶液中へ投入し、これを攪拌機(特殊機械工業社:T.K.ホモミキサー)を用いて、約60℃を保ちながら約8000rpmで約5分間攪拌してエマルジョンを形成した後に、低速攪拌機を用いて約300rpmで約3時間攪拌を続けてマイクロカプセルを作製した。
【0114】
製作したマクロカプセルを多量の水で洗浄すると同時に約80℃で乾燥させて、この乾燥したマイクロカプセルを室温約25℃で反射型光学顕微鏡において200〜1000倍で観察した。
マイクロカプセルは、直径が約10〜100μmと広い分布であった。また、どのカプセルにも相分離した界面が観察され、かつこの界面はマイクロカプセル球の中心線付近であり、芯軸に対して50〜55:50〜45と、ほぼ仕込んでかつ溶解した比でマイクロカプセル中に分離していることが確認できた。このマイクロカプセルを、昇温しながら観察したところ、約47℃より高い温度で単一の相となって、界面が消失することが確認できた。
【0115】
参考例(マイクロカプセルの製造例)
参考例においてイソオクタン:フッ素系溶媒=1:1の混合溶媒に対して、さらに0.2重量%の青色染料(マクロレックスブルーRR:バイエル社)と、表面をAl系材料で処理した平均粒径0.21μmの二酸化チタン(CR60:石原産業(株))を15重量%、オレイン酸を0.3重量%添加した混合溶媒を使用した以外は同様である。マイクロカプセルは、分級して50〜150μmになるようにした。
【0116】
光学顕微鏡で観察すると、マイクロカプセル中で相分離した片方のみが、室温付近で青色に強く着色しており、もう一方の相はほとんど着色していないことが確認できた。これは、主にイソオクタンとフッ素系溶媒との青色染料の溶解度の差に起因していることが、マイクロカプセル化前の混合溶媒を室温で観察することにより確認できた。また、マイクロカプセルにおいて、青色の相のほうに多くの二酸化チタンが含有されているのが確認できた。これは、2相分離により、染料の着色相と、無着色相という2つの吸光度の異なる状態を1つのマイクロカプセル中に包含でき、かつこれに白色粒子を含包できたことを示す。
【0117】
参考例8
表示用インクを、ディスペンサーに100マイクロリットル取った後、これを手動でインクジェット用紙に滴下して、自然乾燥させた。ディスペンサーのチップの先端には、あらかじめ上下方向に電圧がかかり電界強度分布ができるように直流電源に接続した2枚金属板を貼りつけてある。また、電圧を上部が正と負に10V印加される2種類で、30秒間印加した後に滴下した。表示用インクは、以下に示すように調製した。テトラクロルエチレン3重量部とn−ヘキサン7重量部を混合した液体に対して、Macrolex BlueRRを約0.5wt%溶解した。これは容易に溶解した。一方、水にポリエチレン粒子(Merc社製、PE)10wt%を加えた。これは凝集が生じ易いため、撹拌により分散状態を保持した。これら2つ溶液および分散液を1:1の重量比で容器中で混合し、この容器に対して超音波を10分印加したのち、さらに激しく振とうして表示用インクとした。
【0118】
比較例8
表示用インクの調整を比較例3と同様にした以外は、参考例8とほぼ同様にして、表示用インクをインクジェット用紙に滴下して、自然乾燥させた。
【0119】
以下に参考例8の場合、および比較例8の場合の結果を表6に示す。
【表6】
【0120】
【発明の効果】
(1)本発明の表示インクは、染料Aに対する溶解度が最も大きい溶媒Xと、顔料粒子Bと、溶媒Yとからなる。この場合、顔料粒子と溶媒Xとの親和性を、顔料粒子と他の相分離した溶媒との親和性と比較して小さくしたことにより、顔料粒子表面に存在する染料に対する溶解度が最も大きい溶媒Xの吸着層を減少させることができ、これにより、顔料粒子と染料との混色を減少することができる。
【0121】
(2)本発明の表示インクは、具体的には、染料を優先的に溶解しない溶媒Yとして、染料に対する溶解度が0.1wt%以下である溶媒を使用することにより、顔料粒子と染料の混色を減少することができる。
【0122】
(3)本発明の表示インクは、染料に対する溶解度が最も大きい溶媒Xと、顔料粒子Bとの親和性を、顔料粒子Bと他の相分離した溶媒Yの親和性と比較して小さくすることにより、顔料粒子表面に存在する染料に対する溶解度が最も大きい溶媒Xの吸着層を減少することができ、これにより顔料粒子と染料との混色を減少することができる。
【0123】
(4)また、本発明における表示インクは顔料、粒子表面に疎水性部分または非極性部分を存在させることにより、その顔料粒子表面に染料または染料を溶解した非極性の溶媒による染料と顔料粒子との混色を低減できる。
【0124】
また、本発明における表示インクは、顔料Bとして、表面が疎水性または非極性である粒子を用いるとともに、その粒子の表面に被覆層、化学吸着層または物理吸着層を設けることにより、顔料粒子に対する染料の吸着、または染料を溶解した溶媒の顔料粒子への被覆層の形成を低減させ、染料と顔料粒子との混色を低減することができる。
【0125】
また、本発明における表示インクは、その顔料Bの少なくとも1部の粒子が電気泳動粒子であることにより、電圧により表示インクの着色を可逆的にできる。
【0126】
また、本発明における表示インクは、その顔料Bの少なくとも1部の粒子が磁性粒子であることにより、磁石または電磁石をもちいて、その表示インクの着色を可逆に容易に変化することができる。
【0127】
また、本発明における表示インクは、その顔料Bの少なくとも1部の粒子が磁性粒子でかつ電気泳動粒子であることにより、電圧により表示インクの着色を可逆的にできると同時に、磁力にメモリー性を増加させることができる。
【0128】
また、本発明における表示媒体は、上記表示インクを平板間に介在させることにより、2相分離の溶媒X、Yの混合状態を均一に保つことができ、これにより画素ごとに明瞭な表示を行うことができる。
【0129】
また、本発明における表示媒体は、上記表示インクをマイクロカプセルに含有させることにより、2相分離の溶媒X、Yの混合状態を均一に保つことができ、これにより、画素ごとに明瞭な表示を行うことができる。
【0130】
また、本発明における表示媒体は、上記表示インクを被印刷表示媒体に付着せしめかつ溶媒を除去させることにより、単一の表示インクにおいて、2種以上の着色を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)(b)及び(c)は本発明の表示インクによって表示がなされる様子を説明するための表示媒体の概念図である。
【図2】本発明の他の表示インクによって表示がなされることを説明するための図である。
【図3】本発明の他の表示インクによって表示がなされる様子を説明するための表示媒体の概念図であり、図3(a)は顔料にポリエチレン粒子が用いられている図、図3(b)は顔料粒子表面に染料粒子が吸着されている状態を表した図である。
【図4】本発明の他の表示インクの概念図であり、図4(a)はインク中の顔料粒子を表わした図、図4(b)は顔料粒子の表面に被膜層が形成されている状態を表した図、図4(c)は顔料粒子の表面に化学吸着を形成せしめた状態の図、図4(b)は顔料粒子の表面に物理吸着を形成せしめた状態の図である。
【図5】図5(a)及び(b)は本発明の他の表示インクによって表示がなされる様子を説明するための図である。
【図6】図6(a)及び(b)は本発明の他の表示インクによって表示がなされる様子を説明するための図である。
【図7】本発明の表示媒体の概略図である。
【図8】本発明の他の表示媒体の概略図である。
【図9】図9(a)及び(b)はインクジェット方式によって本発明の表示インクを紙などに付着させることの説明図である。
【図10】図10(a)は図9(b)の方法によって紙面上に形成された記録、図10(b)は図9(b)の方法によって紙面上に形成された記録である。
【図11】図11(a)(b)及び(c)は従来の表示インクによって表示がなされる様子を説明するための表示媒体の概念図である。
【図12】インクジェット方式によって従来の表示インクを紙等に付着させることの説明図である。
【図13】図12の方法によって紙面上に形成された記録である。
【符号の説明】
1 染料を優先的に溶解した溶媒/分散媒(染着溶媒)
2 染料の溶解度の小さい媒体
3 顔料粒子
4 密閉容器
5 天窓
6 人の眼
8 磁石
10 顔料粒子
11 油性染料の溶解度の小さい水
12 油性染料を優先的に溶解した非極性の溶媒
13 顔料粒子
14 密閉容器
15 天窓
16 人の眼
17 被覆層
18 染料分子の吸着
20 顔料粒子
21 被覆層
23 物理吸着物質
24 水性染料を優先的に溶解した水
26 顔料粒子(ポリエチレン粒子)
29、30 直流電源
31、32 磁石
33、34 平板
35 ピラー兼隔板
36、37 電極
38 電源
39 マイクロカプセル
40 容器
44a、44b 電源
46 紙
47 染料
49 染料の被覆層
50 顔料粒子

Claims (10)

  1. 染料Aと、顔料Bと、該染料Aを実質的に溶解させる溶媒Xと、該染料Aを実質的には溶解させない溶媒Yとからなり、該溶媒Xと該溶媒Yとは相互に完全混和しない表示インクであって、該溶媒Xは該溶媒Yよりも密度が大きく、該溶媒Xが下層を形成するとともに、該溶媒Yが上層を形成し、かつ、該顔料Bは、その少なくとも一部に電気泳動粒子を含有することを特徴とする表示インク。
  2. 該溶媒Yに対する該染料Aの溶解度が0.1wt%以下であることを特徴とする請求項1記載の表示インク。
  3. 該顔料Bに対する溶媒Xの親和性が、該顔料Bに対する溶媒Yの親和性よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2の表示インク。
  4. 該顔料Bの少なくとも一部は、その表面に疎水性部分または非極性部分を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示インク。
  5. 該疎水性部分又は非極性部分が、被覆層、化学吸着層又は物理吸着層からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表示インク。
  6. 該顔料Bは、その少なくとも一部に磁性粒子を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表示インク。
  7. 該顔料Bは、その少なくとも一部に磁性を有する電気泳動粒子を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の表示インク。
  8. 第3溶媒Zを含有し、該溶媒Zは前記溶媒X及び溶媒Yとは相互に完全混和しないものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表示インク。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の表示インクを、その少なくとも一方が透明板である2つの平板間に介在させた構造を有することを特徴とする表示媒体。
  10. 該表示インクが、マイクロカプセルに含有されていることを特徴とする請求項9に記載の表示媒体。
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