JP3927789B2 - 焼結体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック粉末又は金属粉末を含む層とバインダ,可塑剤等の有機物層とを積層した積層体を焼結してなる焼結体の製造方法及び製造装置、並びにその関連技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、セラミック層と導体層とを混在させて積層して構成される積層セラミック部品の小型化、高性能化が進められている。その一種である積層セラミックコンデンサを例にとって、積層セラミック部品について説明する。積層セラミックコンデンサは、携帯電話に代表される移動体通信システム中の移動局(小型携帯端末)の主要部品として用いられていることから、その小型化と大容量化という相反する特性の向上が求められている。このため、誘電体層の薄膜化、多層化及び誘電体層の高誘電率化が進められている。しかしながら、誘電体膜の薄膜化や誘電体層の材料開発による高誘電率化には限度があることから、大容量化のためには、積層セラミックコンデンサは年々大面積化される傾向にある。
【0003】
ここで、積層セラミックコンデンサは、一般に以下のような製造方法で形成される。まず、誘電体材料粉末と、バインダと、可塑剤,分散剤,溶剤等とを混合攪拌し、適度な粘性を持った誘電体スラリを作成する。このとき、誘電体材料としてはチタン酸バリウムが、バインダとしてはアクリル系樹脂が、可塑剤としてはジブチルフタレート等のエステル系可塑剤が、分散剤としてはカルボン酸塩等のアニオン界面活性剤が、溶剤としては酢酸ブチル等のエステル類やアルコール、エーテル、炭化水素類がよく用いられる。一方、ニッケル等の金属粉末と有機物とを混合してペースト状にして内部電極ペーストを作成する。
【0004】
次に、印刷積層機等を用いて、誘電体スラリを直接スクリーン印刷して誘電体膜を形成する。続いて、スクリーンを変えて、同様に内部電極ペーストを直接スクリーン印刷して内部電極パターンを形成する。このように、誘電体膜と内部電極パターンとのスクリーン印刷を所望の回数だけ繰り返し交互に行うことにより、電極と誘電体膜とを交互に積層してなるグリーンシートを形成する。この積層工程の完了後、印刷された個々のチップサイズに応じてグリーンシートを切断し、グリーン積層体とする。その後、焼成するためにさや詰めが行われ、脱脂工程、焼成工程へと進む。脱脂工程とは、グリーン積層体内に含まれるバインダ,可塑剤,溶剤などの有機物を除去する工程をいう。焼成工程とは、セラミック粒同士の反応による焼結を行なう工程をいう。焼成工程の完了後、内部電極同士を接続すると同時に外部へ端子を取り出すため、必要に応じて側面などの研磨等を行った後、外部電極等を形成する。セラミック積層部品の構造によっては、下地電極、中間電極等を形成する場合もある。
【0005】
ここで、上記積層セラミックコンデンサの製造において、大きな時間割合を占めるのが脱脂工程である。上述のように、脱脂工程では、グリーンシートの形状を維持するために用いたバインダや可塑剤等の有機物が分解除去される。通常、脱脂工程は空気中で行われる。製造能率を上げるには、炉を高速で昇温,降温して脱脂を行うことが好ましいが、炉を高速で昇温すると、バインダや可塑剤等の有機物が急激に気化・分解するので、デラミネーションやクラックなどの構造欠陥を誘発するおそれがある。そして、これらの欠陥は、製品の品質に大きな影響を与える。このため、現在では、150〜300℃の温度域で20時間から数日をかけてゆっくりと昇温,降温を行なってグリーン積層体の脱脂が行われる。近年、コンデンサの大容量化に伴うチップの大型化(特に大面積化)により、脱脂工程に要する時間はさらに長時間化する傾向にある。また、脱脂は、前述の通り、グリーン積層体中の有機物を除去するために行われるが、グリーン積層体が含有している有機物はバインダや可塑剤、分散剤、溶剤等の多種多様な混合物であり、これらが異なる気化温度,分解温度を有するため、極めて高精度の温度制御,工程制御が求められる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述の通り、脱脂工程においては、極めて高精度の温度制御,工程制御が必要で、かつコンデンサの大容量化・大型化に伴い脱脂工程に要する時間がさらに長くなる傾向があるが、従来の空気中の加熱分解除去法では、脱脂工程の高速化による工程時間の短縮は非常に困難であった。一方、バインダ等の有機物が十分除去されずに焼成工程を行うと、多くの問題が生じる。特に、可塑剤が脱脂工程において十分除去されずに残留していると、焼成工程において可塑剤中のベンゼン環が反応してグラファイト状物質を形成し、このグラファイト状物質が積層セラミック部品の各種の不良を引き起こす。まず、グラファイト状物質がセラミックスや内部電極材料等と膨張係数が異なるため、前述のデラミネーションやクラックなどの構造欠陥を誘発しやすい。また、グラファイト状物質はパイ電子を有するため伝導率が高いので、グラファイト状物質は内部電極間にリーク電流が発生する原因となる。このように、脱脂工程において、可塑剤を除去しないと、製品の歩留が低下し、積層セラミック部品の性能も低下する。このことから、長時間の脱脂工程を行なわざるを得なかった。
【0007】
さらに、従来の空気中の加熱分解除去法では、脱バインダ工程で排出されるガス中に有機物が混在している場合があるため、環境面でも課題があった。有機物を完全に分解焼却するか、あるいは吸着などにより有機物を除去するなどの必要があり、コスト面でも課題があった。
【0008】
一方、超臨界流体を用いたセラミックスからの脱脂方法は以前より提案されてきた(ケミカル・エンジニアリング、1986年5月号、P46〜P49、斎藤正三郎 超臨界流体の科学と技術 三共ビジネス 等)。一般に、超臨界流体は高い溶解能力を持つ。超臨界流体を用いてバインダを除去すれば、セラミックス成形体の脱脂を極めて短時間に行うことができる。ところが、この方法では、グリーン積層体から可塑剤,バインダが除去されたときに、グリーン積層体の形状を維持する機能が悪化して、製品の形状精度が悪化するという不具合があった。
【0009】
本発明の目的は、グリーンシートを構成するために用いられる各種有機物のうち可塑剤だけを迅速に除去することができれば、脱脂工程全体の時間短縮が可能な点に着目し、超臨界流体の特性を利用して、グリーン積層体の形状を高精度に保ちつつ、製造能率の向上を可能とする積層セラミック体の製造方法及びその製造装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決する手段】
本発明の焼結体の製造方法は、少なくとも導体材料の粉末を含む内部電極層と、セラミック材料の粉末,バインダ及び可塑剤を含む誘電体層とを積層してグリーン積層体を形成する工程(a)と、上記グリーン積層体を超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体と接触させて、上記グリーン積層体中の可塑剤を抽出・除去する工程(b)と、上記工程(b)の後に、上記グリーン積層体中のバインダを分解除去する工程(c)と、上記工程(c)の後に、上記グリーン積層体を焼結する工程(d)と、上記工程(b)の後で、上記工程(d)の前のいずれかの時点で、上記グリーン積層体内の可塑剤濃度分布を、顕微レーザラマン分光法を用いて評価する工程とを含んでいる。
【0011】
従来の脱脂工程で、グリーン積層体から可塑剤とバインダとを加熱分解により除去する方法では、急激に加熱するとグリーン積層体中に構造欠陥が発生し、構造欠陥の発生を防止すべく徐々に加熱すると処理時間が長くなる。それに対し、本発明の方法によると、脱バインダ工程の前に、超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体を用いてグリーン積層体から可塑剤を選択的に抽出・除去することにより、続く脱バインダ工程において高速で昇温してもグラファイト状物質の形成を抑制することができる。よって、グリーン積層体ひいては焼結体中の構造欠陥の発生による品質の劣化を抑制しつつ、製造能率を高めることができる。
【0012】
上記工程(a)では、上記バインダとして、ブチラール樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレンのうちから選ばれる少なくとも1種類の樹脂を用いることができる。
【0013】
上記工程(a)では、上記可塑剤として、エステル,ステアリン酸,ステアリルアルコール,パラフィンのうちから選ばれる少なくとも1種類の物質を用いることができる。特に、フタル酸エステルを用いることが好ましい。
【0014】
上記工程(a)では、上記可塑剤として、上記工程(b)の処理時に固体状態となるようなパラフィンを用いることが好ましい。
【0015】
上記工程(b)では、上記超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体として、二酸化炭素,炭化水素及びポリハロゲン化炭化水素のうちから選ばれる少なくとも1つの物質を用いることが好ましい。
【0016】
上記工程(b)では、上記超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体として二酸化炭素を用い、二酸化炭素の温度を、室温以上で50℃以下の範囲、または140℃以上で工程(c)の温度以下の範囲に保持して行なうことが好ましい。
【0017】
上記工程(b)では、上記超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体中に、エントレーナ(抽出助剤)として、アルコール,ケトン及び炭化水素のうちから選ばれる少なくとも1つの物質を混合して用いることができる。
【0018】
上記工程(b)では、上記グリーン積層体から抽出・除去された上記可塑剤を含む上記流動体の圧力を低下させて上記流動体を気体状態とし、上記流動体と上記可塑剤とを分離させて、上記可塑剤を回収することにより、可塑剤の廃棄処理の手間やコストを省くことができる。
【0019】
上記工程(a)では、上記導体材料の粉末として、Pt,Pd及びNiのうちから選ばれる少なくとも1つの金属を用いることができる。
【0020】
上記工程(b)では、上記臨界状態又は亜臨界状態の流動体の圧力を時間的に変動させることにより、可塑剤の抽出・除去効率をさらに高めることができる。
【0021】
上記工程(b)では、上記流動体に超音波振動を印加することによっても、可塑剤の抽出・除去効率をさらに高めることができる。
【0022】
上記工程(a)と工程(b)との間に、上記グリーン積層体を真空中又は気体中において250℃以下で加熱処理を加える工程をさらに含むことにより、グリーン積層体、ひいては焼結体中の構造欠陥の発生をより効果的に抑制することができる。
【0023】
上記工程(b)では、加圧媒体を用いて上記グリーン積層体を加圧した後、上記加圧媒体を上記超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体に置換することにより、グリーン積層体、ひいては焼結体中の構造欠陥の発生をより効果的に抑制することができる。
【0024】
上記加圧媒体として不活性ガスを用い,上記超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体として二酸化炭素,炭化水素及びポリハロゲン化炭化水素のうちから選ばれる少なくとも1つの物質を用いることが好ましい。
【0025】
上記工程(b)では、上記流動体を1MPa/min以上の速度で急速に加圧して超臨界状態もしくは亜臨界状態にすることにより、グリーン積層体、ひいては焼結体中の構造欠陥の発生をより効果的に抑制することができる。
【0026】
上記ラマンスペクトルの可塑剤起因吸収帯ピーク強度をセラミック起因の吸収帯ピーク強度で規格化して相対強度を求めることで相対的な濃度分布を得ることがより好ましい
【0027】
【発明の実施の形態】
(第1の参考形態)
参考形態においては、超臨界流体(本発明の参考形態及び実施形態においては、超臨界状態にある流動体を意味する)を利用したグリーン積層体の脱脂工程を含むセラミック積層体の製造方法について、図10を参照しながら説明する。図10は、本参考形態及び後述する第2の参考形態におけるセラミック積層体(焼結体)の製造工程を示すフローチャート図である。
【0028】
まず、ステップST1で、誘電体材料粉末と、バインダと、可塑剤,分散剤,溶剤等とを混合攪拌し、適度な粘性を持った誘電体スラリを作成する。このとき、セラミック誘電体材料としてはチタン酸バリウムを、バインダとしてはポリビニルブチラール等のブチラール樹脂やアクリル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンが、可塑剤としてはジブチルフタレートやブチルベンジルフタレート等のエステル、ステアリン酸、ステアリルアルコール、パラフィン等を、分散剤としてはカルボン酸塩等のアニオン界面活性剤を、溶剤としては酢酸ブチル等のエステル類やアルコール、エーテル、炭化水素類を用いることができる。一方、ステップST2で、ニッケル(Ni)やパラジウム(Pd)等の金属粉末と有機物とを混合してペースト状にして内部電極ペーストを作成する。
【0029】
次に、ステップST3で、印刷積層機等を用いて、誘電体スラリを直接スクリーン印刷して誘電体膜を形成する。続いて、スクリーンを変えて、同様に内部電極ペーストを直接スクリーン印刷して内部電極パターンを形成する。このように、誘電体膜と内部電極パターンとのスクリーン印刷を所望の回数だけ繰り返し交互に行うことにより、内部電極と誘電体膜とを交互に積層してなるグリーンシート(グリーン積層体)を形成し、予備プレスする。
【0030】
予備プレス工程の完了後、ステップST4で、印刷された個々のチップサイズに応じてグリーンシートを切断し、個別のグリーン積層体100とする。
【0031】
図1(a),(b)は、それぞれ順に、上記工程によって形成されたグリーン積層体100の縦断面図及び斜視図である。図1(a)に示すように、グリーン積層体100は、誘電体膜101と、基端部が第1側面A(一方の側面)で露出して先端部が、第1側面Aに対向する第2側面B(他方の側面)の近くまで延びている第1内部電極102と、基端部が第2側面Bで露出して先端部が第1側面Aの近くまで延びている第2内部電極103とが積層されたものである。ただし、本参考形態においては、第1内部電極102と第2内部電極103とは、互いにおなじ材料で構成されおなじ厚みや平面上の大きさを有している。そして、第1内部電極102の先端部から側面Aまでの間の領域、及び第2内部電極103の先端部から側面Bまでの間の領域は、誘電体膜101によって埋められている。いわば、誘電体膜101がマトリクスとして存在していて、そのマトリクス中に内部電極102,103がそれぞれ側面A,Bから交互に突出して上面E及び下面Fにほぼ平行に延びた構造となっている。そして、上面E及び下面Fは、誘電体層101の表面によって構成されている。また、グリーン積層体100の側面A,Bに直交する2つの側面C,Dには、内部電極102,103の端面が露出している。
【0032】
次に、図10に示すステップST5で、グリーン積層体100を、超臨界流体が流れる圧力容器121中に設置して、脱可塑剤処理を施す。
【0033】
図2は、グリーン積層体100を、超臨界流体が流れる圧力容器121中に設置した状態を示す図である。圧力容器121には、超臨界状態にするための流体を導入する導入ポート123と、超臨界流体を排出するための排出ポート125とが設けられている。また、図2には示されていないが、圧力容器121の外部には、後述する図9に示すガスボンベ,液体ポンプ,温度調節装置,加圧装置,圧力制御装置などが配備されている。なお、圧力容器121内に多量のグリーン積層体100を設置する場合は、前述のさやなどを用いて、各グリーン積層体100同士の間に空間を確保できるよう配慮することが好ましい。これは、後述するように、グリーン積層体100の表面をできるだけ超臨界流体と接触させることにより、効率よく可塑剤を抽出するためである。
【0034】
次に、圧力容器121の温度を40℃にした後、導入ポート123から徐々に気体状態の二酸化炭素122を導入した後、圧力容器121内で二酸化炭素を10MPaまで加圧する。この時、圧力は急激に変化させるのではなく、一般に、10MPa/時間以下の圧力変化率で加圧していく方が、グリーン積層体100中における構造欠陥の発生を抑制する点で好ましい。ただし、グリーン積層体100の大きさや前述の予備プレス条件により、圧力変化率の上限が大きく異なるため、グリーン積層体100の大きさや前述の予備プレス条件に応じて、圧力変化率を最適化する必要がある。
【0035】
図4は、二酸化炭素の状態図である。同図において、横軸は温度を表し縦軸は圧力を表している。温度が臨界温度Tcで圧力が臨界圧力Pcの点(Tc,Pc)が臨界点である。温度が臨界温度Tc以上で圧力が臨界圧力Pc以上の範囲が超臨界領域Rcpである。温度が臨界温度Tc以上で圧力が臨界圧力Pcよりもやや低い範囲及び圧力が臨界圧力Pc以上で温度が臨界温度Tcよりもやや低い範囲が亜臨界領域Rpcpである。この超臨界領域Rcpにおいては、二酸化炭素が気体,液体,固体とは異なる相である超臨界状態(超臨界流動体)となっており、気体,液体,固体などとは異なる性質を示すことが知られている。
【0036】
二酸化炭素の臨界温度Tcは31.0℃であり、二酸化炭素の臨界圧力Pcは7.4MPaである。よって、圧力容器121内における二酸化炭素124の温度を40℃に、圧力を10MPaにすることにより、圧力容器121内の二酸化炭素124は、ほぼ完全に超臨界状態となっている。
【0037】
次に、圧力容器121内の圧力が10MPaに達した後も導入ポート123から超臨界状態の二酸化炭素122を導入し、圧力容器121内の圧力が安定して10MPaになった後、約100分間その状態を保つことにより、超臨界状態の二酸化炭素124によってグリーン積層体100から可塑剤を抽出・除去する処理,つまり脱可塑剤処理を行なう。このとき、グリーン積層体100中の誘電体膜101と各内部電極102,103とは互いに熱膨張係数が異なるため、40℃においては、誘電体膜101と内部電極102,103との界面に非常に微細な空隙が形成される。そして、この空隙を通って超臨界状態の二酸化炭素124がグリーン積層体100内部に浸透し、グリーン積層体100の表面部を除く内部の可塑剤,特に誘電体膜101中の可塑剤は、主として上記誘電体膜−内部電極間の空隙を通って外部へ抽出・除去される。
【0038】
このように、超臨界流体のグリーン積層体100内部への浸透や、超臨界流体及び可塑剤のグリーン積層体100の内部からの流出は、主として、上記誘電体膜−内部電極間の空隙を通して行われるため、グリーン積層体100内部には応力が発生しにくく、誘電体膜101中に構造欠陥を発生させることなく可塑剤を高速で気化・分解・除去することができる。
【0039】
その後、抽出された可塑剤を含む超臨界状態の二酸化炭素124は、排出ポート125より圧力容器121の外側に排出される。グリーン積層体100からの可塑剤の抽出・除去処理(脱可塑剤工程)が完了した後は、まず、最初に圧力容器121内の圧力を低下させる。この時にも、圧力は急激に変化させるのではなく、一般に、10MPa/時間以下の圧力変化率で減圧していく方が、グリーン積層体100中における構造欠陥の発生を抑制する点で好ましい。
【0040】
次に、圧力容器121内の圧力が常圧に戻った後、温度を低下させ、室温に戻した後、グリーン積層体100を圧力容器121から取り出す。
【0041】
この後、図10に示すステップST6,ST7で、グリーン積層体100の脱バインダ工程及び焼成工程を行う。このとき、すでに可塑剤が除去されているので、続く脱バインダ工程及び焼成工程において高速で昇温しても、グリーン積層体100中におけるグラファイト状物質の形成を抑制することができる。つまり、従来のように、150〜300℃の温度域で20時間から数日をかけてゆっくりと昇温,降温を行なう必要はない。
【0042】
そして、図3に示すように、焼成工程が完了すると、グリーン積層体100中の誘電体膜101,各内部電極102,103が固相反応などによって強固な構造となり、コンデンサの主要部である構造体130(焼結体)が形成される。その後、構造体130の必要箇所の表面を研磨した後、Ag膜の塗布,焼き付けにより、第1側面A上には第1下地電極131を、第2側面B上には第2下地電極132をそれぞれ形成する。次に、電解メッキなどによるはんだ(SnPb)の付着により、第1下地電極131の上には第1外部電極133を、第2下地電極132の上には第2外部電極134をそれぞれ形成する。つまり、複数の第1内部電極102は第1外部電極133に接続され、複数の第2内部電極103が第2外部電極134に接続される。これにより、セラミック積層体が得られる。
【0043】
参考形態によると、脱バインダ工程の前に、超臨界流体を用いてグリーン積層体100から可塑剤を選択的に抽出・除去することにより、続く脱バインダ工程及び焼成工程において高速で昇温してもグラファイト状物質の形成を抑制することができる。よって、製造歩留の低下や製品性能の低下を引き起こすことなく、製造能率を高めることができる。また、他のバインダ成分は、脱可塑剤工程の際に形成された空隙を通って外部へ抽出除去されるため、内部応力が増大することはない。よって、脱脂工程の後の脱バインダ工程によって構造欠陥が誘発されることもない。
【0044】
次に、脱可塑剤のための最適条件について説明する。図5は、圧力容器内の圧力が10MPaの時の可塑剤の抽出・除去速度の温度依存性を示す図である。同図に示すように、40℃以下ではかなり可塑剤の抽出速度が大きく、本参考形態で述べたように、高い能率での可塑剤の抽出・除去処理が可能である。一方、40℃以上になると、逆に温度の上昇につれて可塑剤の抽出速度が低下していく。特に、二酸化炭素の温度が50℃〜140℃の範囲においては、可塑剤の抽出・除去速度が低く、80℃〜100℃で最低となっている。ところが、二酸化炭素の温度が100℃を越える温度においては、可塑剤の抽出・除去速度が再び上昇する。そして、二酸化炭素の温度が150℃程度に達すると、高速で可塑剤の抽出・除去処理が可能となる。
【0045】
本発明によると、セラミック粉末,バインダ,可塑剤などを含む誘電体層と、金属電極とを積層した構造を有するグリーン積層体からほぼ可塑剤のみを効率よく抽出・除去する際には、経験的事実として、図5に示すような除去効率の悪い領域があることがわかった。そこで、可塑剤の抽出・除去処理は、室温〜50℃の範囲か、140℃〜脱バインダ温度の範囲で行なうことが好ましい。また、可塑剤のより高い抽出・除去効率を実現するためには、室温〜40℃の範囲か、150℃〜脱バインダ温度の条件で脱可塑剤処理を行なうことが好ましい。また、温度上昇のための加熱時間を節約するためには、室温〜40℃の範囲がもっとも好ましいといえる。
【0046】
また、本参考形態においては、可塑剤の抽出除去工程において、超臨界状態の二酸化炭素のみを用いたが、場合によっては、超臨界状態の二酸化炭素にエントレーナ(抽出助剤)として適量の別の物質を混入するとさらに高速、高効率で可塑剤を抽出除去することができる。エントレーナとしては、メタノール、エタノールなどのアルコール類や、アセトンなどのケトン類、メタン、エタン等の炭化水素類等が用いられる。
【0047】
図6は、温度が40℃における超臨界状態の二酸化炭素による可塑剤の抽出・処理速度の圧力依存性を示す図である。図7は、温度が150℃における超臨界状態の二酸化炭素による可塑剤の抽出・処理速度の圧力依存性を示す図である。図6,図7において、横軸は圧力容器内の二酸化炭素の圧力を表し、縦軸はグリーン積層体の重量の減少によって可塑剤の抽出・除去量を表している。図6,図7に示すように、可塑剤の抽出・除去速度は、二酸化炭素の圧力の上昇につれて上昇するが、圧力12MPaに達するとその上昇量が小さくなっている。つまり、圧力が大きいほど圧力容器の構造が強固であることが必要であることを考慮すると、二酸化炭素の圧力は9MPa〜12MPaの範囲であることが好ましいといえる。
【0048】
また、図8(a),(b)は、超臨界状態の二酸化炭素の温度が50℃における抽出物の吸収スペクトル,DBP(ジブチルフタレート)の標準吸収スペクトルをそれぞれ示す図である。図8(a)と図8(b)とを比較すると、この条件においては、可塑剤以外の物質はほとんど抽出・除去されていないことがわかる。つまり、本参考形態の脱可塑剤処理により、グリーン積層体中にバインダを残しつつ、可塑剤をグリーン積層体から効率よく取り出すことができる。
【0049】
ところで、本参考形態においては、図2に示す排出ポート125から圧力容器121の外側に排出された超臨界状態の二酸化炭素124は、圧力が低下して気体状態となる。この時、比較的低温状態なので、二酸化炭素の可塑剤に対する溶解度が低下することから、気体状態の二酸化炭素と液体状態の可塑剤とを容易に分離させることができる。すなわち、比較的高い純度の可塑剤が液体状態で回収されるので、これを再使用することもできる。一方、気体状態に戻った二酸化炭素は、加圧装置等を用いて加圧することにより、グリーン積層体100の形成のために再使用することが可能となり、二酸化炭素の大気中への放出量を極めて小さく抑えることができる。
【0050】
前述の通り、従来の空気中の加熱分解による脱脂工程においては、可塑剤とバインダとを同時に除去する脱脂工程において、排出される高温の気体中に有機物が混在している場合があるため、有機物を完全に分解焼却するか、あるいは有機物を他の物質中に吸着させるなど、気体中の有機物を除去する必要があり、製造コストがかさんでいた。また、ベンゼン環を含む化学物質が装置や配管に付着し、メンテナンスのためのコストもかさんでいた。
【0051】
それに対し、本参考形態を用いると、超臨界状態の二酸化炭素が圧力の低下と共に気体状態に変化する際の可塑剤に対する溶解度の著しい低下を利用して、気体状態の二酸化炭素と可塑剤とを容易に分離することができるので、可塑剤を回収、再利用が可能となり、環境問題の発生を回避することができると共にコストの低減を図ることができる。
【0052】
参考形態においては、グリーン積層体100の内部電極102,103を構成する材料として、NiやPd等を用いたが、この内部電極に用いる金属材料と可塑剤を構成する材料との組合せによっては、金属材料の表面が触媒となって可塑剤の抽出・除去が促進される場合がある。この現象は、特に触媒活性が高くなる高温領域で顕著であり、150℃以上においては、非常に高速で可塑剤の抽出・除去が行われる場合がある。金属材料として特に顕著な触媒効果が期待できるのは、Pt,Pd,Ni等である。
【0053】
参考形態においては、二酸化炭素122を一定流量で流し、かつ圧力容器121内の圧力を一定になるよう制御を行ったが、グリーン積層体100内から効率よく可塑剤を抽出・除去するために、圧力容器121内の圧力を微妙に変化させて圧力容器121を振動させる方がよい場合がある。圧力容器121内の圧力を微妙に変化させるためには、二酸化炭素122の供給流量を時間的に変化させる方法や、圧力容器121の圧力を制御している圧力制御装置161(リリーフ弁など)の圧力設定値を時間的に変動させる方法などがある。また、局所的に圧力を変動させるために、圧力容器121の一部に超音波を印可してもよい。
【0054】
なお、本参考形態においては、温度及び圧力が各々臨界点における臨界温度Tc、臨界圧力Pc以上である超臨界領域の二酸化炭素を用いたが、抽出・除去される可塑剤の種類,分解温度などに応じて、二酸化炭素の温度,圧力に制約がある場合は、温度あるいは圧力のどちらか一方のみが臨界温度又は臨界圧力を超えた亜臨界領域を用いても良い。この場合、抽出・除去効率は低下する場合があるが、超臨界領域では分解してしまうような可塑剤を分解することなく回収できるため、可塑剤のリサイクルが可能となるメリットを有する。また、可塑剤などの種類によっては、エタン等の炭化水素類や、テトラフロロエチレンなどのポリハロゲン化炭化水素類を主溶媒として超臨界状態もしくは亜臨界状態にして用いても良い。
【0055】
(第2の参考形態)
図9は、本発明の方法を用いた第2の参考形態における積層体の製造装置の構成を概略的に示す図である。この製造装置は、可塑剤の抽出・除去を行うためのものであり、図2に示す圧力容器121に加えて、二酸化炭素の供給源である液化二酸化炭素ボンベ151と、液体状態の二酸化炭素122を加圧するための液体ポンプ152と、圧力容器121内に供給される二酸化炭素122の温度を調節するための温度調整装置153と、圧力容器121の温度を直接制御するヒータ,冷却器などを有する温度制御装置155と、可塑剤の抽出・除去処理の完了時を検知するための分光装置160と、リリーフ弁などを含み圧力容器121内の圧力を制御するための圧力制御装置161と、圧力容器121内から超臨界状態の二酸化炭素124を排出するための減圧装置162と、可塑剤回収装置163と、減圧装置162から取り出される気体状態の二酸化炭素を加圧するための加圧装置164とを備えている。
【0056】
この製造装置内における脱可塑剤処理の手順について説明する。まず、グリーン積層体100を圧力容器121内に設置し、温度制御装置155により、圧力容器205内の温度を40℃に保つ。次に、液体ポンプ152により液体二酸化炭素を液化二酸化炭素ボンベ151から汲み上げて、温度調整装置153により液体状態の二酸化炭素122の温度を40℃に上昇させた後、二酸化炭素122を導入ポート123から圧力容器121内に導入する。その後、圧力容器121内の温度及び圧力は、温度制御装置155及び圧力制御装置161により、二酸化炭素が超臨界状態又は亜臨界状態になる条件(本参考形態の場合には、40℃、10MPa)に制御される。その結果、圧力容器121内は、超臨界状態の二酸化炭素124によって満たされる。
【0057】
そして、グリーン積層体100から抽出・除去された可塑剤を含む超臨界状態の二酸化炭素124は、排出ポート125を通って圧力制御装置161に送られた後、圧力容器121内の圧力をそのまま維持するために、適量ずつ連続的に減圧装置162に送られる。減圧装置162において、超臨界状態の二酸化炭素124が、その圧力の低下によって気体状態の二酸化炭素に変わる。この時、二酸化炭素の可塑剤に対する溶解度が急激に低下するとともに、50℃程度の低温であることから、液体状態の可塑剤が気体状態の二酸化炭素と分離して可塑剤回収装置163中に回収される。気体状態に戻った二酸化炭素は、加圧装置164により再度加圧され、液体ポンプ152に送られ、再び液化されて再使用される。一方、可塑剤回収装置163に回収された可塑剤は、グリーン積層体100の形成のために再使用することができる。
【0058】
なお、常態が液体である流動体を超臨界状態もしくは亜臨界状態で用いる場合には、可塑剤が固体である場合に、両者の分離が容易になる。本参考形態のごとく、常態が気体である二酸化炭素を用いる場合には、可塑剤が液体又は固体である場合に、両者の分離が容易になる。ただし、流動体が亜臨界状態であっても、可塑剤を溶解する能力を失っている範囲であれば、流動体と可塑剤とを容易に分離することができるので、必ずしも可塑剤を回収するために流動体を常態になるまで減圧しなければならないことはない。
【0059】
前述の通り、従来の空気中の加熱分解による脱脂工程においては、可塑剤とバインダとを同時に除去する脱脂工程において、排出される高温の気体中に有機物が混在している場合があるため、有機物を完全に分解焼却するか、あるいは有機物を他の物質中に吸着させるなど、気体中の有機物を除去する必要があり、製造コストがかさんでいた。それに対し、本参考形態を用いると、超臨界状態の二酸化炭素が圧力の低下と共に気体状態に変化する際に、可塑剤に対する溶解度が著しく低下することを利用して、気体状態の二酸化炭素と可塑剤とを容易に分離することができるので、可塑剤を回収、再利用が可能となり、環境問題の発生を回避することができると共にコストの低減を図ることができる。
【0060】
ここで、グリーン積層体の形成に用いられる可塑剤としては、一般にジブチルフタレートやブチルベンジルフタレート等のエステルが使用されることが多いが、これらの物質は紫外領域に吸収帯を持つ。よって、図9に示すように、排出ポート125と圧力制御装置161との間に分光装置160を設置し、排出されてくる超臨界流体(二酸化炭素124)の紫外線領域における分光分析をin-situ で行なうと、流体中の可塑剤の濃度を知ることができる。つまり、可塑剤の抽出・除去が行われている間に検出されている特定の紫外線領域の吸収帯が、可塑剤の抽出・除去がほぼ完了した後は検出されなくなる。これを利用して、可塑剤の抽出・除去処理が完了したかどうかの終点を分光学的に検出することが可能となる。ただし、分光装置160は、必ずしも排出ポート125と圧力制御装置161との間に配置されている必要はなく、例えば圧力容器121に直接取り付けた構造であっても、上述と同じ機能を発揮することができる。
【0061】
なお、一般には、グリーン積層体中の内部電極には、誘電体粉末やバインダ,可塑剤などは含まれていることが多いが、積層セラミック部品の種類によっては内部電極がこれらを含んでいなくてもよいものとする。
【0062】
ここで、脱可塑剤処理を行なう温度として、上記図5に示す領域80℃〜100℃を挟む高温側領域と低温側領域とのうち低温側領域を採用することが工程上好ましいことはすでに述べたとおりである。反面、低温側領域においては、バインダの柔軟性がないので、可塑剤を抽出・除去するとグリーン積層体にクラックが発生するおそれがある。そこで、温度範囲が低温側領域となる条件で可塑剤の抽出・除去処理を行なう場合には、二酸化炭素に可溶で高分子との親和性が良好なアルコール等を微量添加することにより、誘電体層の柔軟性を保ち、グリーン積層体におけるクラックなどの発生を防止することができる点で好ましい。
【0063】
また、加圧媒体としては、窒素の他アルゴン,ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0064】
(実施形態)
−適正条件の検討のための実験−
前述の通り、上記第1の参考形態を用いると、グリーン積層体ひいてはセラミック積層体(焼結体)中の構造欠陥の発生による品質の劣化を抑制しつつ、製造能率を高めることができる。これは、第1の参考形態における脱可塑剤の工程が比較的低温で行なわれるので、脱可塑剤の工程中では、グリーン積層体内の誘電体層の可塑剤濃度と、内部電極中の可塑剤濃度とがほぼ均一であることも1つの要因と考えられる。しかし、どのような条件下においても、不具合が生じないかどうかについて、もう少し吟味する必要がある。そこで、以下のような手順により、適正条件の検討を行なった。
【0065】
図11(a),(b)は、それぞれ順に、適正条件を検討するための測定点を説明するためのグリーン積層体の断面図、及び未処理のサンプルからのラマン分光スペクトルを示す図である。
【0066】
図11(a)は、大容量タイプのグリーン積層体を、内部電極の主面に垂直な方向からほぼ2分するように切断した時の断面図である。同図に示すように、グリーン積層体の誘電体層内の中心部に位置する各点A1,A2,A3,…の可塑剤濃度を試料端からの距離100μm毎に評価した。また、内部電極(ニッケル層)内の試料端からの距離が500μmの点Bの可塑剤濃度を評価した。グリーン積層体には、可塑剤のほか、バインダ他各種の有機物,セラミックス粉末等の無機物が含まれており、元素分析の手法ではバインダ他各種の有機物の存在のために、可塑剤の濃度を正確に評価することが困難である。この種のグリーン積層体では可塑剤としてベンゼン環やエステル基を含むBBPを用いているが、ベンゼン環やエステル基はバインダなど他の有機物には含まれていない。よって、ベンゼン環やエステル基の濃度を評価できればBBP濃度を評価することができる。そこで、顕微レーザラマン法を用いると、ベンゼン環やエステル基の濃度評価が可能なことがわかった。
【0067】
顕微レーザラマン法の原理の概略は以下の通りである。物質の表面にレーザ光を照射すると、照射光波長λ0 の散乱光以外に、λ0 ±λのラマン散乱光が発生する。この遷移波長λは物質あるいはその中の一部の官能基に固有の値であり、遷移波長λの強度を測定することで、物質の存在量(濃度)がわかる。そこで、レーザ光のビーム径を1μm以下に絞って被測定物に照射し、光学顕微鏡を通してラマン散乱光を集光して測定すると、試料の表面をμmオーダで所望の場所を微小に分析することが可能となる。ここでは,レーザ光としてArイオンレーザのうち波長514.5nmの光を用い、100倍の対物レンズを用いて測定を行った。レーザパワーは30〜150mWの範囲で用いた。なお、点Aから得られたラマン分光スペクトルが、点B近傍の誘電体層におけるラマン分光スペクトルとほぼ等しいことは数点で確認されている。
【0068】
図11(b)は、未処理のグリーン積層体の誘電体層上のラマン分光スペクトルを示している。ラマン分光スペクトルには、ベンゼン環起因の1607cm−1の吸収ピーク,エステル基起因の1735cm−1の吸収ピークが見られる。これらは、試料断面形状に応じてピーク強度が変化するため、各々のピーク強度をセラミクス起因の525cm−1の吸収ピーク強度で規格化して、つまり、ベンゼン環起因の1607cm−1のピーク強度と、セラミクス起因の525cm−1のピーク強度との相対強度比を測定することにより、可塑剤濃度の評価を行なった。
【0069】
図12(a),(b)は、それぞれ従来の方法と本発明の超臨界状態もしくは亜臨界状態の媒体を用いた方法とにおける可塑剤の除去効果を調べるためのデータを示す図である。図12(a),(b)において、縦軸は1607cm−1のピーク強度と525cm−1のピーク強度との相対強度比を表し、横軸は各測定点の試料端からの距離(μm)を表している。
【0070】
図12(a)に示されるように、未処理チップにおいては、深さ方向に沿った点A1,A2,A3,…の可塑剤の濃度の差が小さく、また、試料端からの距離が互いに同じである点Bと点A7との可塑剤の濃度の差が小さい。よって、未処理チップにおいては、可塑剤の濃度が比較的均一であるといえる。一方、200℃での加熱処理が施されたチップにおいては、点Bでの濃度が、点Aの濃度と比較して減少している。これは加熱により、点Bつまり内部電極中での温度上昇速度が他の部分よりも速いために、脱可塑剤が他の部分よりも速く進行したためと考えられる。
【0071】
一方、図12(b)に示されるように、超臨界状態の二酸化炭素による処理を行ったものでは、点Aと点Bとにおける可塑剤の濃度の相違はほとんど見られない。その理由は、超臨界状態の二酸化炭素による処理は低温で行なわれるため、誘電体膜中の可塑剤と内部電極中の可塑剤とがほぼ均一な速度で抽出・除去されるからであると考えられる。誘電体膜と内部電極とは、μmオーダのピッチで積層されているので、可塑剤の濃度に局所的なばらつきがあると、グリーン積層体に構造欠陥が形成される原因となりうる。よって、超臨界状態の二酸化炭素による処理によって可塑剤の濃度を均一化することは非常に有効である。
【0072】
また、顕微レーザラマン法を用いた可塑剤の濃度の評価手法は、超臨界状態の二酸化炭素による処理以外にも多く応用展開が可能である。例えば、グリーン積層体の加熱処理後のグリーン積層体中の深さ方向の可塑剤の濃度分布を評価しておけば、その後の工程で、グリーン積層体中に構造欠陥が生じた場合に、グリーン積層体中における深さ方向への可塑剤の濃度の分布がどのようになった時に構造欠陥が発生するかが明らかとなり、処理条件の最適化や可塑剤の濃度の限界勾配の推定が可能となる。また、次工程に進むことができる条件が確立した後に、不良が発生した時にも、この評価を行うことにより、脱可塑剤工程に当該不良の原因があったかどうかを推定することができる。
【0073】
さらに、セラミック以外の無機物と可塑剤とバインダとの混合物の成形体中の可塑剤濃度を測定する場合にも、この濃度測定方法を適用することができる。その場合、ラマンスペクトルの可塑剤起因吸収帯ピーク強度を無機物質起因の吸収帯ピーク強度で規格化して、相対強度を求めることで相対的な濃度分布が得られることになる。
【0074】
本実施形態においては、主として可塑剤としてジブチルフタレートやブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステルを用いる場合に関して述べてきた。前述の通り、フタル酸エステルは優れた可塑剤であり、超臨界状態の二酸化炭素への溶解度も高い。ところが、グリーン積層体の形成に用いられる誘電体スラリ中の可塑剤と誘電体材料とバインダとの混合比率や、誘電体材料の粒径や、グリーンシート形成後に行う予備プレスの条件等が不適正である場合には、グリーン積層体中に構造欠陥が発生する場合がある。その主たる原因は、昇圧時に可塑剤であるフタル酸エステル中に二酸化炭素が溶解し、フタル酸エステルの体積が増加して、体積膨張による構造欠陥を発生させるからと考えられる。よって、このフタル酸エステルの体積膨張の限界値を定量的に求めておいて、体積膨張が生じてもその限界値に達しないようにグリーン積層体の可塑剤以外の材料や形成条件を設計すれば、グリーン積層体における構造欠陥の発生を抑制することができる。あるいは、体積膨張率の小さい他の可塑剤を用いても、グリーン積層体における構造欠陥の発生を抑制することができる。この2つの方法のうちいずれを採用すべきかは、グリーン積層体の種類や大きさなどに応じて、判断することができる。
【0075】
−体積膨張の評価方法及び装置−
ここで、可塑剤などの物質の超臨界状態もしくは亜臨界状態の媒体(流動体)中における振る舞いを観察し、できれば可塑剤などの体積膨張を定量的に評価するには、以下のような装置を用い、以下の手順に沿って行なうことが適している。
【0076】
図13は、特に可塑剤などの体積膨張を定量的に評価するための装置の構成を示す部分断面図である。同図に示すように、この装置は、目的に応じて用いられる媒体(本実施形態では、二酸化炭素)を超臨界状態又は亜臨界状態にするための圧力容器205と、超臨界状態又は亜臨界状態にされる媒体を供給するためのボンベ201と、ボンベ201から流出する媒体を冷却するための冷却器200と、媒体(本実施形態では液体状態の媒体)を圧力容器205に送り込むための強制送給手段である流体ポンプ202(本実施形態では、液体ポンプ)と、圧力容器205中の媒体の温度を制御するための温度制御装置203と、圧力容器205から流出する媒体を冷却するための冷却コイル207と、圧力容器205から流出した媒体の紫外分光測定を行なうための紫外分光測定装置208と、圧力容器205から流出する媒体の圧力を設定値に制御するためのリリーフ弁209と、圧力容器205から流出する媒体を回収するための抽出捕集容器210とを備えている。
【0077】
圧力容器205には、圧力容器205を加熱するためのヒータ206と、圧力容器205の温度を測定するための熱電対204とが配置されている。そして、温度制御装置203により、熱電対204の指示温度と設定温度の差に応じてヒータ206の通電量を制御することにより、圧力容器205の温度が制御される。媒体(本実施形態では液体状態の二酸化炭素)は、ボンベ201から供給され、冷却器200を経て流体ポンプ202により押し出されて圧力容器205内に導入される。圧力容器205から流出した媒体(二酸化炭素)は冷却コイル207にて冷却された後、紫外分光測定装置208を経てリリーフ弁209に達する。圧力容器205およびこれにつながる配管系の圧力は、リリーフ弁209の設定圧力になっている。つまり、流体ポンプ202から圧力容器205を経てリリーフ弁209に至る領域に高圧が印加される。リリーフ弁209から排出された媒体中の液体成分もしくは固体成分は抽出捕集容器210に捕集される。
【0078】
ここで、本実施形態の装置においては、可塑剤などの体積膨張を定量的に測定するために、以下のような部材が設けられている。
【0079】
圧力容器205の天井にはサファイア窓211が設けられており、圧力容器205内部の様子を外部から観測することができる。また、圧力容器205の天井の上方には、圧力容器205内を照らすためのライト213と、圧力容器205内部を撮影した画像を形成するためのCCD215と、圧力容器205内から反射する光をCCD215に集光するためのレンズ214と、CCD215によって撮影された刻一刻と変化する画像を連続的に記録するためのビデオ録画装置216と、CCD215によって撮影された画像を観測するためのモニタ217とが設けられている。また、レンズ214保護のための熱吸収ガラス212が、サファイア窓211とレンズ214との間に挿入されている。CCD215によって撮影された画像は、ビデオ録画装置216に記録され、かつ、モニタ217によっても観測することができる。
【0080】
一方、圧力容器205内には、可塑剤などの毛管現象を生ぜしめる臨界径(本実施形態では、約1mm)以下の内径を有する透明ガラス管218と、このガラス管218の支持部材220とが配置されている。本発明の可塑剤などの濃度を定量的に測定する方法の実施においては、透明ガラス管218の内部の一部に可塑剤219を導入する。そして、圧力容器205内の媒体(本実施形態では、二酸化炭素)を常態から超臨界状態までの範囲に保持し、可塑剤219の体積変化を種々の温度,圧力条件下で評価することにより、可塑剤などの体積膨張を定量的に評価することができる。また、可塑剤などの材質によっては、紫外分光測定装置208で検出できないものもあるが、このように可塑剤などの体積変化を観測する方法を用いることにより、可塑剤などの被測定物の材質如何に拘わらず、被測定物の媒体への溶解速度を評価することが可能となる。
【0081】
ただし、透明ガラス管218及びその支持部材220は必ずしも設ける必要はない。その場合にも、圧力容器205の内部の観察が可能であるので、超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体中における被処理物の振る舞いを正確に把握することができ、製造工程の条件を設定する際の重要な指針を得ることができる。また、この評価装置を製造のために用いる場合には、in-situ で内部の状態を観察しながら、超臨界状態又は亜臨界状態の流動体を利用したプロセスを行なうことが可能になる。
【0082】
図14は、種々の可塑剤の体積の圧力依存性を評価した結果を示す図である。同図において、横軸は大気圧に対して加重する追加圧力(MPa)を表し、縦軸は追加圧力が0のときを1とする各種被測定物の相対体積を表している。評価に際しては、圧力容器205内の温度を一定(40℃)に保持した状態で、圧力がテスト圧力値に達した後10分間経過してから可塑剤の相対体積を測定している。そして、テスト圧力を、0MPaから4MPaまでは2MPaずつ、4MPaから10MPaまでは1MPaずつ上昇させて、各テスト圧力における可塑剤の相対体積を測定している。
【0083】
同図から、以下のことがわかる。DBP(ジブチルフタレート)の体積は、圧力の増大と共に増大し、7MPa近傍では常圧における体積の約1.5倍となり、その後圧力の増大と共に体積は急速に減少する。DBPの体積が常圧から7MPa近傍まで増大しつづける理由は、DBP中に二酸化炭素が溶解するためと考えられる。よって、この実験と同様の条件下でグリーン積層体を製造するのであれば、DBPの体積が約1.5倍に膨張しても構造欠陥を発生しないような工夫が必要となる。また、DBPの相対体積が7MPa以上で急激に減少するのは、二酸化炭素がDBP中に溶解するのとは少し遅れて、DBPが二酸化炭素に溶解するからである。DBPの二酸化炭素への溶解量は、時間に大きく依存する。一方、超臨界状態もしくは亜臨界状態の二酸化炭素は極めて迅速にDBP中に溶解するので、二酸化炭素のDBP中への溶解量は、時間にはあまり依存しないと考えられる。図14に示す縦軸の値は、DBP中への二酸化炭素溶解量と、DBPの溶解量との差し引きに依存する量であるので、実験条件によっては多少変化すると考えられる。しかし、この体積膨張の測定方法を用いると、可塑剤などの物質への媒体の溶解度の評価を簡便に行なうことができる。本実施形態では、これ以降も、図14に示す結果を用いて説明する。
【0084】
BBP(ブチルベンジルフタレート)を用いた場合は、DBPを用いた場合と比較して、体積膨張率は若干小さいものの、その相対体積の圧力依存性はDBPと同様の傾向を示している。つまり、追加圧力が8MPaに達するまでは、BBPの相対体積が増大し、その後、減少に転じている。
【0085】
一方、グリセリンの相対体積の変化はほとんど生じていない。これは、二酸化炭素へのグリセリンの溶解もグリセリンへの二酸化炭素の溶解も生じていないこと、つまり、二酸化炭素のみではグリセリンの溶解が困難なことを示している。
【0086】
流動パラフィンの相対体積の圧力依存性は、DBPやBBPなどのフタル酸エステル類における相対体積の圧力依存性と同様の傾向を示す。
【0087】
流動パラフィンよりも分子量が大きいパラフィン52(52℃以上で液化するパラフィン)の相対体積は、圧力が増大しても増大することはなく、減少するだけである。その理由は、パラフィン52はこの実験温度である40℃では固体であるため、パラフィン52中に二酸化炭素が溶解することが困難であり、パラフィン52の二酸化炭素への溶解だけが進行するからであると考えられる。
【0088】
以上の評価手法は、単一の可塑剤だけでなく、少なくとも二種類以上の可塑剤を混合したものにも応用することができる。また、以上の評価方法は、可塑剤以外の物質を含む混合物で、高温高圧中の当該物質の体積変化を評価する場合にも、一般に広く応用することができる。
【0089】
以上のような、実験結果を総合すると、混合物から可塑剤などの特定の物質を除去するための方法として、以下のような好ましい具体的方法が考えられる。
【0090】
−第1の具体的方法−
パラフィン52を可塑剤として用い、超臨界あるいは超臨界に近い状態にある媒体(例えば二酸化炭素)を用いる場合、グリーンシートの形成工程(図10に示すステップST3)においては、可塑剤が流動性を有していることが必要なので、加熱してパラフィン52が液体で存在する状態とし、脱可塑剤工程(図10に示すステップST5)においては、パラフィン52が固体で存在する温度を保てば、可塑剤の体積膨張に起因するグリーン積層体(成形体)中の構造欠陥、ひいてはセラミック積層体(焼結体)中の構造欠陥の発生を抑制することができる。
【0091】
−第2の具体的方法−
既に説明したように、可塑剤としてジブチルフタレートやブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステルを用い、第1の参考形態の脱可塑剤工程を行なうと、グリーン積層体中の構造欠陥が発生する場合がある。このような場合は、先に、常圧下で200℃〜250℃前後の加熱脱可塑剤を図10に示すステップST4の後でステップST5の前に行った後、第1の参考形態のような脱可塑剤工程を行うと、構造欠陥を発生することなくほぼ完全に脱可塑剤を実現することができる。例えば、窒素中で220℃,3時間の加熱脱可塑剤を行った後、第1の参考形態の脱可塑剤工程を行うと、構造欠陥は発生せず、加熱脱可塑剤を行なった後には、さらに質量減少があった。質量計算上はすべての可塑剤が抽出除去されたことになる。
【0092】
この手順によってグリーン積層体に構造欠陥が発生しないのは、加熱による脱可塑剤の際に、グリーン積層体中に外部とつながった微小な空隙(マイクロオープンポア)が多く生成し、それが可塑剤の体積膨張を緩衝する空間となっているためと考えられる。加熱による脱可塑剤の後に、第1の参考形態の脱可塑剤工程を行うとさらに質量減少があるのは、超臨界状態の二酸化炭素は粘度が低く、可塑剤を溶解する能力も高いため、グリーン積層体中に残留している可塑剤を効率的に抽出できるからと考えられる。よって、加熱による脱可塑剤工程と第1の参考形態の脱可塑剤工程との組み合わせは、体積膨張を生じる可塑剤を特定の条件下でどうしても用いたい場合には有効な手段となる。
【0093】
−第3の具体的方法−
もう1つの有効な方法としては、流体置換の方法がある。例えばBBP(ブチルベンジルフタレート)を用いて、第1の参考形態の脱可塑剤工程(図10に示すステップST5)を行う場合を例にとって説明する。第1の参考形態を行なう場合、圧力容器121の温度を40℃にした後、導入ポート123から徐々に液体状態の二酸化炭素122を導入した後、図2の圧力容器121内で二酸化炭素を10MPaまで加圧した。この時に、常圧から約8MPaに達するまでの間にBBP中に二酸化炭素が溶解するためBBPに約25%の体積膨張が生じ、ひいては、グリーン積層体中に構造欠陥を生じる場合がある。よって、最初に二酸化炭素以外の他の物質でBBPを溶解する能力がないかその能力が極めて小さい物質,例えば窒素を用いて圧力容器121内を満たし、圧力容器205内における窒素などの圧力を例えば10MPaまで加圧した後、圧力を10MPaに保持した状態で、窒素を二酸化炭素と徐々に置換していく。その場合には、二酸化炭素によるBBPの体積膨張を生じることなくグリーン積層体からのBBPの抽出除去を行うことが可能となる。この例では、窒素を用いたが、可塑剤を溶解する能力がないか、その能力が極めて小さい物質であれば何を用いても良い。
【0094】
−第4の具体的方法−
また別の方法として、圧力容器205内を急速に加圧する方法がある。第1の参考形態の説明の中では、一般に、脱可塑剤の工程では10MPa/時間以下の圧力変化率で加圧していく方が、グリーン積層体100(成形体)、ひいてはセラミック積層体(焼結体)中の構造欠陥の発生を抑制する点で好ましいと述べたが、体積膨張が顕著な可塑剤を用いる場合には、かえって急速に加圧した場合が良い場合がある。例えば可塑剤としてBBPを用いる場合は、常圧から約8MPaに達するまでの間は1MPa/分以上の高速昇圧をした方が構造欠陥が少なかった。その理由は、BBPへの二酸化炭素の溶解が不十分である状態で高圧状態に保持されるために、BBPの体積膨張が小さいからと考えられる。
【0095】
なお、可塑剤に限らず一般に有機物と無機物との混合物を焼結する工程を有する焼結体の製造工程において、混合物から有機物だけを除去する場合には、上記実施形態における超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体による脱有機物を行なうことができる。その場合、有機物が複数種類ある場合には、そのうちの一部の種類の有機物だけを除去するために本実施形態の各具体的な方法を用いてもよいし、複数の有機物すべてを除去するために本実施形態の各具体的な方法を用いてもよい。
【0096】
参考例
実施形態及び第1,第2の参考形態では、誘電体材料とバインダと可塑剤と金属粉末との混合物であるグリーン積層体から可塑剤のみ抽出除去できることを示したが、本発明はこれらの実施形態以外にも応用することが可能である。以下、タンタル固体電解コンデンサを例に説明する。
【0097】
図15は、タンタル固体電解コンデンサ製造工程の概略を示す工程図である。図16は、図15に示す工程によって完成したタンタル固体電解コンデンサの構造を示す断面図である(「コンデンサ最新技術と材料’86年版(総合技術出版)1985年10月出版」より)。
【0098】
図15及び図16に示すように、高純度化された微細なタンタル金属粉末と、ショウノウやナフタレンなどの有機バインダを有機溶剤に溶解させたものとを混合し、この混合物中にリード線を埋没させて一定形状に加圧成型して、多孔質体を得る。その後、真空中などで脱バインダを行い、ショウノウやナフタレンなどの有機バインダを除去した後、10−3〜10−4Pa程度の高真空中、1500〜2000℃の高温下で、焼結工程により、タンタル粒子間の結合と、タンタル粒子−リード線間の結合とを行い、多孔質焼結体251を得る。つぎに、リン酸などの電解液中での電気化学的な陽極酸化により、多孔質焼結体の上に誘電体酸化皮膜252(Ta酸化物)を形成する。次に、第1の検査を行なった後、硝酸マンガンの熱分解により、誘電体酸化皮膜252の上に二酸化マンガン層253を形成し、その後、二酸化マンガン層253の上に接触抵抗低減のためのコロイダルカーボン層254を形成する。つぎに、コロイダルカーボン層254の上に銀塗料層などの陰極金属層である導電性塗料層255を形成した後、第2の検査を行なう。その後、リード及び導電性塗料層255の一部に外部端子257,258を各々接続する。最後に、コンデンサの表面に樹脂外装を施して、エージング工程,仕上げ工程を経てコンデンサが完成する。
【0099】
以上の製造工程において、脱バインダが不完全であると誘電体酸化皮膜252(Ta酸化物)が均一な厚みで形成することができず、製品の不良につながる。よって、このようなタンタル固体電解コンデンサにおいても、有機バインダの完全な除去が重要となる。そのために、図15に示すように、誘電体酸化皮膜252の形成後には、第1の検査を行なっている。
【0100】
そこで、第1,第2の参考形態の方法、又は、実施形態の各具体的方法を、タンタル固体電解コンデンサ製造工程における脱バインダ工程に適用することにより、有機バインダのほぼ完全な除去が可能となる。この場合は、先に述べた誘電体材料とバインダと可塑剤と金属粉末との混合物であるグリーン積層体から可塑剤のみを選択的に抽出除去するのとは異なり、タンタル金属粉末と有機バインダとの混合物から有機バインダのみを選択的に抽出除去する工程となる。したがって、タンタル金属粉末とショウノウやナフタレンなどの有機バインダとの混合物を圧力容器内に設置し、前述の各参考形態及び実施形態の方法(各具体的方法を含む)により、超臨界状態もしくは亜臨界状態(超臨界状態に近い状態)の二酸化炭素と接触させることにより、有機バインダのみを選択的に短時間で抽出除去することが可能となる。また、抽出除去されたショウノウやナフタレンなどの有機バインダは回収・再利用することが可能となり、製造効率や製品の品質を向上することができる。
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、積層セラミック部品などの焼結体の製造工程において、グリーン積層体からの脱バインダ処理の前に、超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体を用いて、グリーン積層体から可塑剤を選択的かつ高速に抽出除去することにより、その後の脱バインダ工程及び焼成工程において高速で昇温してもかつグラファイト状物質の形成を抑制することができるため、製造歩留や製品性能を低下させることなく、コスト低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a),(b)は、それぞれ順に、第1の参考形態の製造工程中で形成されたグリーン積層体の縦断面図及び斜視図である。
【図2】 第1の参考形態の製造工程において、グリーン積層体を超臨界流体が流れる圧力容器中に設置した状態を示す図である。
【図3】 第1の参考形態の製造工程において、グリーン積層体の焼成工程が完了して形成された構造体の断面図である。
【図4】 本発明の各参考形態及び実施形態において超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体として用いた二酸化炭素の温度−圧力に関する状態を示す図である。
【図5】 第1の参考形態における圧力容器内の可塑剤の抽出・除去速度の温度依存性を示す図である。
【図6】 第1の参考形態における温度が40℃における超臨界状態の二酸化炭素による可塑剤の抽出・処理速度の圧力依存性を示す図である。
【図7】 第1の参考形態における温度が150℃における超臨界状態の二酸化炭素による可塑剤の抽出・処理速度の圧力依存性を示す図である。
【図8】 (a),(b)は、超臨界状態の二酸化炭素の抽出物の吸収スペクトル,DBP(ジブチルフタレート)の標準吸収スペクトルをそれぞれ示す図である。
【図9】 本発明の第2の参考形態における積層体の製造装置の構成を概略的に示す図である。
【図10】 本発明の第1,第2の参考形態におけるセラミック積層体の製造工程を示すフローチャート図である。
【図11】 (a),(b)は、それぞれ順に、本発明の適正条件を検討するための測定点を説明するためのグリーン積層体の断面図、及び未処理のサンプルからのラマン分光スペクトルを示す図である。
【図12】 (a),(b)は、それぞれ従来の方法と本発明の超臨界状態もしくは亜臨界状態の媒体を用いた方法とにおける可塑剤の除去効果を調べるためのデータを示す図である。
【図13】 可塑剤などの体積膨張を定量的に評価するための装置の構成を示す部分断面図である。
【図14】 種々の可塑剤の体積の圧力依存性を評価した結果を示す図である。
【図15】 参考例におけるタンタル固体電解コンデンサ製造工程の概略を示す工程図である。
【図16】 図15に示す工程によって完成したタンタル固体電解コンデンサの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
100 グリーン積層体
101 誘電体膜
102 第1内部電極
103 第2内部電極
121 圧力容器
122 二酸化炭素
123 導入ポート
124 二酸化炭素
125 排出ポート
130 構造体
131 第1下地電極
132 第2下地電極
133 第1外部電極
134 第2外部電極
135 第1内部電極
136 第2内部電極
151 液化二酸化炭素ボンベ
152 流体ポンプ
153 温度調整装置
154 導入ポート
155 温度制御装置
160 分光装置
161 圧力制御装置
162 減圧装置
163 可塑剤回収装置
164 加圧装置

Claims (17)

  1. 少なくとも導体材料の粉末を含む内部電極層と、セラミック材料の粉末,バインダ及び可塑剤を含む誘電体層とを積層してグリーン積層体を形成する工程(a)と、
    上記グリーン積層体を超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体と接触させて、上記グリーン積層体中の可塑剤を抽出・除去する工程(b)と、
    上記工程(b)の後に、上記グリーン積層体中のバインダを分解除去する工程(c)と、
    上記工程(c)の後に、上記グリーン積層体を焼結する工程(d)と
    上記工程(b)の後で、上記工程(d)の前のいずれかの時点で、上記グリーン積層体内の可塑剤濃度分布を、顕微レーザラマン分光法を用いて評価する工程と
    を含む焼結体の製造方法。
  2. 請求項1記載の焼結体の製造方法において、
    上記工程(a)では、上記バインダとして、ブチラール樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレンのうちから選ばれる少なくとも1つの樹脂を用いることを特徴とする焼結体の製造方法。
  3. 請求項1又は2記載の焼結体の製造方法において、
    上記工程(a)では、上記可塑剤として、エステル,ステアリン酸,ステアリルアルコール,パラフィンのうちから選ばれる少なくとも1つの物質を用いることを特徴とする焼結体の製造方法。
  4. 請求項3記載の焼結体の製造方法において、
    上記工程(a)では、上記可塑剤として、フタル酸エステルを用いることを特徴とする焼結体の製造方法。
  5. 請求項1又は2記載の焼結体の製造方法において、
    上記工程(a)では、上記可塑剤として、上記工程(b)の処理時に固体状態となるようなパラフィンを用いることを特徴とする焼結体の製造方法。
  6. 請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の焼結体の製造方法において、
    上記工程(b)では、上記超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体として、二酸化炭素,炭化水素及びポリハロゲン化炭化水素のうちから選ばれる少なくとも1つの物質を用いることを特徴とする焼結体の製造方法。
  7. 請求項6記載の焼結体の製造方法において、
    上記工程(b)では、上記超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体として二酸化炭素を用い、二酸化炭素の温度を、室温以上で50℃以下の範囲、または140℃以上で工程(c)の温度以下の範囲に保持して行なうことを特徴とする焼結体の製造方法。
  8. 請求項1〜7のうちいずれか1つに記載の焼結体の製造方法において、
    上記工程(b)では、上記超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体中に、エントレーナ(抽出助剤)として、アルコール,ケトン及び炭化水素のうちから選ばれる少なくとも1つの物質を混合して用いることを特徴とする焼結体の製造方法。
  9. 請求項1〜8のうちいずれか1つに記載の焼結体の製造方法において、
    上記工程(b)では、上記グリーン積層体から抽出・除去された上記可塑剤を含む上記流動体の圧力を低下させて上記流動体を気体状態とし、上記流動体と上記可塑剤とを分離させて、上記可塑剤を回収することを特徴とする焼結体の製造方法。
  10. 請求項1〜9のうちいずれか1つに記載の焼結体の製造方法において、
    上記工程(a)では、上記導体材料の粉末として、Pt,Pd及びNiのうちから選ばれる少なくとも1つの金属を用いることを特徴とする焼結体の製造方法。
  11. 請求項1〜10のうちいずれか1つに記載の焼結体の製造方法において、
    上記工程(b)では、上記臨界状態又は亜臨界状態の流動体の圧力を時間的に変動させることを特徴とする焼結体の製造方法。
  12. 請求項1〜10のうちいずれか1つに記載の焼結体の製造方法において、
    上記工程(b)では、上記流動体に超音波振動を印加することを特徴とする焼結体の製造方法。
  13. 請求項1〜10のうちいずれか1つに記載の焼結体の製造方法において、
    上記工程(a)と工程(b)との間に、上記グリーン積層体を真空中又は気体中において250℃以下で加熱処理を加える工程をさらに含むことを特徴とする焼結体の製造方法。
  14. 請求項1〜13のうちいずれか1つに記載の焼結体の製造方法において、
    上記工程(b)では、加圧媒体を用いて上記グリーン積層体を加圧した後、上記加圧媒体を上記超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体に置換することを特徴とする焼結体の製造方法。
  15. 請求項14記載の焼結体の製造方法において、
    上記加圧媒体として不活性ガスを用い,上記超臨界状態もしくは亜臨界状態の流動体として二酸化炭素,炭化水素及びポリハロゲン化炭化水素のうちから選ばれる少なくとも1つの物質を用いることを特徴とする焼結体の製造方法。
  16. 請求項1〜13のうちいずれか1つに記載の焼結体の製造方法において、
    上記工程(b)では、上記流動体を1MPa/min以上の速度で急速に加圧して超臨界状態もしくは亜臨界状態にすることを特徴とする焼結体の製造方法。
  17. 請求項1〜16のうちいずれか1つに記載の焼結体の製造方法において、
    上記ラマンスペクトルの可塑剤起因吸収帯ピーク強度をセラミック起因の吸収帯ピーク強度で規格化して相対強度を求めることで相対的な濃度分布を得ることを特徴とする焼結体の製造方法。
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