JP3927340B2 - バランス能力判定方法およびその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人のバランス能力の客観的な評価を可能にするバランス能力判定方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、バランス能力を客観的に評価する技術が各種提案されている。たとえば、特開昭64−52441号公報には、人が乗る台板をモータにより傾動させるとともに、重心の移動形態を検出し、その移動形態に応じてバランス能力についての障害パタ−ンを検出するとともに、台板を傾動させるプログラムを選択する装置が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記公報に記載のものは、主としてバランス能力の障害を検出するとともに、その障害を取り除くように訓練するものであって、健常者の運動能力としてのバランス能力の評価を行なうものとしては必ずしも適しているものではない。つまり、上記構成に記載されたものは主として障害の有無を判断するためにバランス能力を判定するものであるから、バランス能力の高さについて評価するのは難しいものである。
【0004】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、バランス能力の高さを評価することができるようにしたバランス能力判定方法およびその装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、一連の揺動パターンで繰り返して揺動駆動されている座席状の台座に乗っている人がバランスを保っている期間中の適宜のタイミングで、台座の揺動パターンを変化させ、揺動パターンを変化させた後の人の反応を検出し、検出された反応パターンに基づいてバランス能力を判定することを特徴とするのであって、常時は台座を一連の揺動パターンで繰り返して揺動させ、揺動している台座に乗っている人がバランスを保っている期間中の適宜のタイミングで揺動パターンを変化させるから、揺動パターンの変化に対してバランスを崩した程度やバランスを崩してからバランスを保つ状態に戻るまでの時間などを検出することにより、バランス能力の高さを評価することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記反応パターンが、揺動パターンを変化させた後にバランスを保つように動作するまでの時間、揺動パターンを変化させた後にバランスを崩している時間、揺動パターンを変化させたときの移動量、揺動パターンの変化の程度と反応までの時間の少なくとも1要素であることを特徴とするのであって、これらの情報を用いればバランス能力を容易に評価することができる。
【0009】
請求項3の発明は、人が乗る座席状の台座と、制御情報を用いて制御され台座を揺動駆動する駆動手段と、繰り返し用いる制御情報を格納した基本データ記憶部と、基本データ記憶部に格納された制御情報に重ね合わせて用いる制御情報を格納した刺激データ記憶部と、人の反応を検出するセンサと、基本データ記憶部の制御情報を駆動手段に繰り返し与えることにより一連の揺動パターンで繰り返して揺動駆動されている台座に乗っている人がバランスを保っている期間中の適宜のタイミングで、刺激データ記憶部の制御情報を基本データ記憶部の制御情報に重ね合わせて駆動手段を揺動させることにより台座の揺動パターンを変化させ、揺動パターンを変化させた後にセンサにより検出される反応パターンに基づいてバランス能力を判定する判定手段とを備えるものであり、常時は基本データ記憶部に格納された制御情報を繰り返し用いて台座を一連の揺動パターンで繰り返して揺動させ、揺動している台座に乗っている人がバランスを保っている期間中の適宜のタイミングで刺激データ記憶部に格納した制御情報を用いて台座の揺動パターンを変化させるから、揺動パターンの変化に対してバランスを崩した程度やバランスを崩してからバランスを保つ状態に戻るまでの時間などを検出することにより、バランス能力の高さを評価することができる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記センサが、台座とは別に設けられ台座に乗っている人を撮像した画像の時間変化から人の所望部位の動きを非接触で検出するものである。この構成によれば、台座とは別にセンサが設けられ、かつセンサによって非接触で人の所望部位の動きを検出するから、台座に搭乗した人にセンサを意識させることなく人の動きを検出することができる。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記判定手段が、前記センサにより検出された所望部位の動きの振幅が規定の閾値を超える期間を求め、この期間が短いほどバランス能力が高いと判定するものである。この構成によれば、人の動きの振幅によってバランス能力を定量的かつ客観的に評価することが可能になる。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4の発明において、前記判定手段が、前記センサにより検出された所望部位の動きについて短時間内のパターンを抽出し、パターンの変化が少ないほどバランス能力が高いと判定するものである。この構成によれば、人の動きのパターンに基づいてバランス能力を客観的に評価することができる。
【0013】
請求項7の発明は、請求項4の発明において、前記判定手段が、前記センサにより検出された所望部位の動きについて台座の動きとの時間差を求め、この時間差が小さいほどバランス能力が高いと判定するものである。この構成によれば、台座の動きと人の動きとの時間差に基づいてバランス能力を数値化して客観的に評価することができる。
【0014】
請求項8の発明は、請求項5ないし請求項7のいずれかに記載のバランス能力判定装置に用いる判定手段のうちの複数を組み合わせてバランス能力を判定するものである。この構成によれば、複数種類の判定条件を用いることで、バランス能力についてより正確な評価が可能になる。
【0017】
請求項9の発明は、請求項3の発明において、前記台座が人が手で持つ握り部を備え、前記センサが、握り部を掴むときの力、握り部を押し引きする力、人の重心位置の少なくとも1要素を検出するものであり、これらの情報を用いればバランス能力を容易に評価することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
本実施形態は、図2に示すように、人が着席する座席状の台座1をパラレルメカニズムよりなる駆動装置(駆動手段)2により移動させる例を示すが、たとえば馬の鞍形の台座1を用い、台座1に跨る形で乗るようにしてもよい。駆動装置2の動作制御は後述する制御装置3により行なわれる。台座1には人が操作するハンドル4が設けられ、ハンドル4の操作はセンサ5により検出される。このセンサ5はハンドル4の移動量、ハンドル4に作用する荷重、ハンドル4を握る力を検出することができる。ハンドル4は台座1の後部に上下動可能となるように枢着され、前端部に設けた握り部を両手で持つように構成されている。また、台座1には着座した人の重心位置を検出するセンサ5が設けられる。
【0019】
駆動装置2は、図3に示すように、定位置に固定される固定台21と、6本の脚23を介して固定台21の上方に支持された可動台22とを備える。各脚23は、固定台21および可動台22に対してそれぞれユニバーサルジョイント24a,24bを介して結合されている。また、各脚23は、固定台21にユニバーサルジョイント24aを介して結合したサポート筒23aと、サポート筒23aの中に進退自在に挿入されたボールねじよりなるロッド23bと、ロッド23bに噛合するギアを備え正逆の回転に伴ってロッド23bを進退させるアクチュエータ23cとからなる。ロッド23bの先端部はユニバーサルジョイント24bを介して可動台22に結合される。したがって、各脚23のアクチュエータ23cをそれぞれ制御してロッド23bの進退量を調節すれば固定台21に対する可動台22の位置を適宜に調節することができる。
【0020】
6本の脚23は、2本ずつが近接するように固定台21に結合され、また、固定台21に対して近接して結合されている脚23同士を離して可動台22に結合してある。このような構成によって、互いに直交する3方向の平行移動と、各方向の軸を中心とする回転移動との6自由度の制御が可能になる。つまり、可動台22は前後、左右、上下の直進往復移動と前後軸、左右軸、上下軸の回りでの回転往復移動とを組み合わせた移動が可能になり、結果的に可動台22に結合された台座1は6自由度で移動する。駆動装置2の可動台22は、現実的には上述のような直進移動と回転移動とに分解した動作よりも、むしろそれらの複合した動作を行なうことになる。
【0021】
以下の説明を容易にするために、台座1を中心とする座標系を導入する。すなわち、台座1の前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、原点を駆動装置2の固定台21の中心とする右手系の直交座標系を設定する。しかして、駆動装置2の可動台22は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の3方向の位置が可変であるとともに、X軸、Y軸、Z軸の各軸回りの傾きが可変になる。X軸回りの回転をロール、Y軸回りの回転をピッチ、Z軸回りの回転をヨーと呼ぶ。
【0022】
図2に示す例では台座1の前方に大型のディスプレイ装置6を配置するとともに、ディスプレイ装置6の両側にスピーカ7を配置してあり、ディスプレイ装置6に表示される映像を台座1の揺動に応じて変化させたり、その映像に応じた音声をスピーカ7から出力させたりすることができるが、本実施形態においてはディスプレイ装置6やスピーカ7は必ずしも必要ではない。
【0023】
制御装置3はコンピュータ装置を用いて構成されたものであり、上述のように駆動装置2を制御するほか、ディスプレイ装置6に表示される画像やスピーカ7から出力する音声についても制御する。すなわち、制御装置3は、図1に示す構成を有し、データ入力部31から入力された制御情報を基本データ記憶部32aおよび刺激データ記憶部32bに格納しておき、これらのデータを用いて駆動装置2のアクチュエータ23cを駆動する。データ入力部31は乗馬中の人の要部の動きを分析するなどして制御情報を生成するものである。
【0024】
基本データ記憶部32aおよび刺激データ記憶部32bはそれぞれ半導体メモリよりなり、基本データ記憶部32aおよび刺激データ記憶部32bに格納された制御情報に基づいて演算部30において駆動装置2を揺動させるデータが生成される。演算部30からは駆動装置2の各脚23の長さに相当するデータが出力され、アクチュエータ制御部33aではこのデータに応じたアクチュエータ23cの動作量を決め、駆動部33bを介してアクチュエータ23cを駆動する。駆動部33bはアクチュエータ制御部33aで決められた動作量に基づいてアクチュエータ23cへの通電を制御する。つまり、本実施形態においては、演算部30とデータ記憶部31とアクチュエータ制御部33aと駆動部33bとにより制御手段が構成される。
【0025】
ところで、基本データ記憶部32aや刺激データ記憶部32bに格納される制御情報は、図4に示すように、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の位置Xi ,Yi ,Zi (iは正数)と、Z軸回り、Y軸回り、X軸回りの傾き(ヨー、ピッチ、ロール)αi ,βi ,γi (iは正数)との6つ組を一定時間間隔で設定したものである(図4 (a)は基本データ記憶部32aの制御情報、図4 (b)は刺激データ記憶部32bの制御情報)。制御情報は時系列データであり、一連の揺動パターンを形成するように設定されている。このような一連の振動パターンは十分に短い一定時間間隔で区切られ、各区切りごとに上記6つ組が設定されている。要するに、単位パターンは6つ組の時系列データにより構成されている。
【0026】
演算部30では図4 (a) (b)のような制御情報に基づいて各時刻における駆動装置2の各脚23の長さを決定する。こうして決定された脚23の長さに応じてアクチュエータ制御部33aによりアクチュエータ23cの動作量を決めて駆動部33bを介してアクチュエータ23cを駆動するのである。
【0027】
ここに、本実施形態では、常時は基本データ記憶部32aに格納された制御情報を繰り返し用いて駆動装置2を制御しておき、適宜のタイミングで刺激データ記憶部32bに格納された制御情報を重ね合わせて駆動装置2を制御する。つまり、基本データ記憶部32aに格納された制御情報を繰り返し用いて繰り返して同じ揺動パターンになるように駆動装置2を制御しているが、刺激データ記憶部32bに格納された制御情報を用いることによって揺動パターンを変化させることができるのである。なお、刺激データ記憶部32bに格納された制御情報の6つ組の個数は、基本データ記憶部32aに格納された制御情報の6つ組の個数よりも少ない。いま、図4 (a) (b)の制御情報が格納されているものとして、時刻T11〜T1nの6つ組を重ね合わせるとすれば、図4 (c)のようにデータが生成されることになる。ここに、時刻T11〜T1nの各6つ組には、図4 (a) (b)における同時刻の6つ組をそれぞれ加算した値を用いている。たとえば、図4 (c)における時刻T11の値X21は、X21=X01+X11であり、他の値も同様である。
【0028】
上述のようにして台座1の揺動パターンを変化させると、基本データ記憶部32aに格納された制御情報だけでは慣れによってバランスを保つことができるとしても、刺激データ記憶部32bに格納された制御情報を与えたときにバランスを崩すから、ハンドル4を動かしたり、強く握ったり、台座1の上で常時とは異なる重心移動が生じたりする。これらの情報はセンサ5により検出できるから、センサ5の出力の変化パターン、つまり刺激データ記憶部32bの制御情報を用いて台座1を駆動したときの人の反応に関する反応パターンをパターン検出部34で検出し、反応パターンを評価部35において評価することによって、バランス能力の程度を知ることができる。
【0029】
パターン検出部34は、センサ5の出力の変化の大きさや速度を検出するのであって、たとえば、ハンドル4を引いている(あるいは押している)時間、重心が所定量移動していた時間、刺激データ記憶部32bの制御情報を用いてからハンドル4の位置やハンドル4を握る力に特徴的な変化が生じるまでの時間、ハンドル4に加えた力などの時間変化を反応パターンとして求める。これらの情報を用いて、判定手段としての評価部35では統計的ないしファジー論理による処理を行なってバランス能力の指標を数値化するのである。ここに、バランス能力の指標を得るために、多人数について測定を行ない、測定結果の平均値を求めるなどの統計的処理を施す。
【0030】
いま、一定時間内にハンドル4に所定値以上の力を加える(押すか引く)回数をバランス能力の指標として用いるものとする。図5に示すように、刺激データ記憶部32bに格納した制御情報を与え始めることにより駆動変化を開始した後(S1)、ハンドル4に所定値以上の力が作用したか否かを判断する(S2)。ここで、バランス能力の指標として点数を用いとすれば、点数の上限値から減点法でバランス能力を評価することができる。たとえば、所定値以上の力が作用したときにはバランスを崩したと考えられるから減点するのであり(S3)、刺激データ記憶部32bに格納された制御情報による駆動が終了した時点で(S4)、バランス能力の評価を終了する(S5)。たとえば、図6 (a)に示すように、ハンドル4に所定値以上の力が作用するか否かを判断し、力が作用したときをオン、作用しないときをオフとする。図5の手順で評価すれば、図6 (b)のようにオンの回数が多いほど点数が下がるのであって、バランス能力を指標化することができる。
【0031】
上述のように台座1としては馬形のものを用いることができ、この場合にはハンドル4に代えて手綱を設ければよい。また、基本データ記憶部32aに格納された制御情報としては、馬の歩様を模擬するように、常歩、速歩、駆歩などに対応する一連のパターンを用い、常時はこれを繰り返すようにすればよい。ここで、図7に示すように、常歩W1と速歩W2とではパターンが大きく変化するから、安全性を考慮して、パターンを変更するときには、つなぎパターンW3を間に挿入する。このようにして、パターンの変化を滑らかに行なうことができる。
【0032】
なお、ディスプレイ装置6に表示される画像は、画像記憶部36に格納しておき演算部30で台座1の駆動に連動するように制御すればよく、またスピーカ7から出力される音声は、音声記憶部37に格納しておき演算部30でディスプレイ装置6の画面表示に合うように制御すればよい。ディスプレイ装置6に表示する画像は実写あるいはコンピュータグラフィックスを用いる。実写映像は主観移動により撮影されたものを用いる。画像記憶部36や音声記憶部37には大容量が必要であるから、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクなどを記録媒体とする記憶装置を用いるのが望ましい。とくに、記録媒体を交換可能としておけば、ディスプレイ装置6の表示内容やスピーカ7から出力される音声の内容を容易に変えることができ、単調さを緩和することができる。
【0033】
(参考例)
実施形態1では、ディスプレイ装置6は単調さを緩和するために用いているだけであるが、本例ではディスプレイ装置6の表示内容によって人に何らかの動作を促し、揺動中の台座1の上での動作に対応させることでバランス能力の程度を測定できるようにしている。つまり、ディスプレイ装置6の表示内容に対して人がどのように動作するかのルールを決めておき、ルールに従った動作を人が行なえるか否かによってバランス能力の程度を測定しようとするものである。この方法によってゲーム性を与えることができ、バランス能力の測定を楽しみながら行なうことが可能になる。
【0034】
本例では、図8に示すように、挿入画像記憶部38およびスーパーインポーズ処理部39を設ける。挿入画像記憶部38は画面内に適宜に表示する画像を記憶しており、スーパーインポーズ処理部39を通して画像記憶部36からの画像に重ね合わせるものである。たとえば、ゲーム性を与えるために、ハードル、毒りんごと普通のりんごのようなものを表示し、ハードルが表示されたときには飛び越える動作を行ない、毒りんごなら避ける動作を行ない、普通のりんごなら取る動作を行なうというようにルールを決めておくのである。ここに、これらの動作は重心移動を伴うものが望ましいが、バランス能力の低い人には揺動中の台座1の上で指先で釦を操作するだけでも難しいから、必ずしも重心移動を伴う動作でなくてもよい。つまり、ルールは各人のバランス能力の程度を考慮して設定することが可能である。なお、本例では刺激データ記憶部32bは設けなくてもよい。
【0035】
この種のスーパーインポーズを伴うもののほか、人に動作を指示する表示としては、ディスプレイ装置6の画面に道を表示しておき、道に分岐や傾斜を設け、これらの道の変化に応じた操作をハンドル4で行なうようにルールを決めておいてもよい。とくに、馬を模擬する場合には、手綱の引き方にルールを設定しておき、たとえば右側を引けば右に曲がり、左側を引けば左に曲がり、引きの強さで傾斜に対応するというようなルールを決めておく。このように馬を模擬する場合のバランス能力の程度の測定手順を図9に示す。
【0036】
ここにおいて、センサ5での測定値を定量的に評価するために、手綱を引いている時間、重心が所定量移動していた時間、画像を表示してから手綱を所定量引くまでの反応時間、手綱を引いた力、画像を表示したときの駆動装置2の移動速度(これは台座1の移動速度が大きいほど操作が難しくなるからである)などの情報の時間変化を反応パターンとして用いる。
【0037】
いま、何らかの指示がディスプレイ装置6に表示されるとすると(S1)、まず手綱を引いたか否かが判断され(S2)、引いていれば引き方が正しいか否かが判断される(S3)。正しくない場合には減点し(S4)、指示が終了すれば (S5) 終了する。また、ステップS2において手綱を引いておらず、しかも指示が終了していないのであれば(S6)、減点する(S7)。このようにして減点法で指標化すればバランス能力を客観的に評価することができる。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
【0038】
上述した実施形態1、参考例では人の反応を検出するセンサ5を人が搭乗する台座1に設けてセンサ5により人の重心位置を検出するようにしていたが、図10に示すように、ディスプレイ装置6の両側に配置した2台の撮像装置8を用いるとともに、両撮像装置8により撮像した2つの画像の視差を利用して3次元の情報を得る画像処理装置(図示せず)を用いてセンサ5を構成してもよい。撮像装置8にはTVカメラを用いている。画像処理装置では2つの画像内における共通の対象に対する画素の位置を抽出し、両画素の位置関係に基づいて3次元空間内における対象物の位置を求める。また、画像処理装置では画像内で位置に変化が生じない部位と位置変化が生じる部位とを分離することにより背景から人に関する情報を分離する。このようにして、人の動きを連続的に検出することが可能になる。しかもセンサ5は台座1とは別に設けられ人の動きを非接触で検出することができるから、台座1や人にセンサ5を取り付ける必要がなく、人に何らかのマーカを付ける必要もないのであって、センサ5を人に意識させることなく人の動きの検出が可能になる。ここに、人のどの部位の動きを検出するかは画像処理装置において任意に指示することができ、たとえば頭部や肩の動きのみを抽出することができる。
【0039】
撮像装置8と画像処理装置とをセンサとして用いる場合には、抽出した動きの大きさ、安定性、応答性のうちの少なくとも1つの要素を用いてバランス能力を判断することができる。
【0040】
動きの大きさは、台座1を揺動させたときの人の頭部や肩の揺れの振幅を意味する。一般に、バランス能力が高いほど台座1の揺動に対する頭部や肩の揺れの振幅は小さいから、振幅に対して閾値を設定しておき、あらかじめ定めたプログラムに従って台座1を駆動したときに、台座1の駆動期間中で閾値を超える期間を計測すれば、この期間が短いほどバランス能力が高いと判定することができる。振幅に対する閾値は実験的に決定されるものであり、実際には振幅について複数人のデータを収集し、データの収集対象となった人のバランス能力を勘案して閾値を決定する。
【0041】
図11〜図13は、馬の常足を模擬して台座1を揺動させた場合について、それぞれ異なる人の頭部の揺れの程度を上述のセンサ5を用いて測定した結果を示す。図11は29歳で乗馬部に所属する男性、図12は58歳で乗馬経験のない男性、図13は63歳で乗馬経験のない男性について測定した結果である。各図における▲1▼のデータは左右の揺れ(上が右)、▲2▼のデータは前後の揺れ(上が前)を示す。また、画像のピクセル数は左右について160ピクセル、前後については120ピクセルとした。各図の横軸の数値は画像のフレーム数を示し、1フレームは1/33秒とした。さらに、各図では台座1を揺動させる振幅を3段階に変化させた例を示してあり、各振幅を左右3区画で示している。つまり、左の区画はもっとも振幅が大きく、この振幅を10の振幅とすれば、中央の区画は8の振幅、右の区画は6の振幅としてある。ここに、撮像装置8は台座1の振動の影響を受けないように天井から吊下した。
【0042】
各図を比較するとわかるように、図11の例では台座1の振幅の大きさに応じて頭部の揺れの大きさも変化し、振幅の変化は安定しておりリズムに乱れはないと言える。また、図12の例では台座1の振幅の大きさの変化に対して頭部の揺れの大きさの変化は少ないが、振幅の変化は安定しておりリズムに乱れは少ない。図13の例では台座1の振幅の大きさに応じて頭部の揺れの大きさも変化する傾向にはあるが、台座1の振幅とは関係なく頭部の揺れが大きくなる場合もあり、振幅の変化は不安定でリズムに乱れがある。さらに、図には表していないが、台座1が揺動してから頭部が揺れるまでの遅れ時間(つまり応答性)も各個人によって異なる。
【0043】
したがって、人の動きの大きさ、安定性、応答性はバランス能力の判定に用いることができる。いま、人の頭部(肩部でもよい)の揺れの大きさを用いてバランス能力を判断するとすれば、図14に示す手順になる。すなわち、まず複数人について台座1の揺動のパターンと頭部の揺れのパターンとを格納した測定データファイルF1に基づいて頭部の振幅に対する閾値を決定する(S1)。測定データファイルF1に格納されているデータについては、バランス能力の程度が既知であるから、測定データファイルF1に格納されたデータを参考にしてバランス能力の判断基準となる適宜の閾値を設定する。その後、台座1に人を搭乗させた状態で台座1の揺動を開始させる(S2)。ここで、人の頭部の揺れの程度を上述したセンサ5により検出し、センサ5により検出した頭部の揺れの振幅をステップS1で設定した閾値とサンプリング毎に比較する(S3)。頭部の揺れの振幅が閾値以上であるときには、その回数を計数してカウントファイルF2に格納する(S4)。このような処理を、あらかじめ定めた駆動のプログラムが終了するまで継続し(S5)、プログラムの終了後にカウントファイルF2に格納した計数値に基づいて台座1に搭乗した人のバランス能力を判定する(S6)。つまり、バランス能力が高いほど計数値は小さくなるから、計数値の大小によってバランス能力を客観的に評価することができる。
【0044】
バランス能力の判定に安定性を用いる場合には、図15に示す手順になる。安定性を判断するには個々人におけるリズム(つまり頭部の揺れのパターン)の変化を知る必要があるから、揺れのパターンを数値化するために、パターンを一定期間毎にフーリエ変換して、振幅、周波数、位相を求める。すなわち、図15のように、台座1に人を搭乗させた状態で台座1の揺動を開始させ(S1)、この状態でパターンをサンプリング毎に数値化し、数値化したパターンをパターンファイルF3に格納する(S2)。次に、パターンファイルF3に格納された数値に基づいて適宜の代表値を決定する(S3)。代表値は台座1を駆動している期間に適宜周期で設定され、パターンファイルF3に格納した値のうちの数種類の値についての移動平均などを用いることができる。求めた代表値は代表値ファイルF4に格納される。代表値を求めた後にはステップS2において得たパターンを代表値と比較し(S4)、代表値と異なるときにはその回数を計数する(S5)。ここで、代表値には適宜の幅を持たせておき、ステップS2で求めた値が幅内であれば代表値に一致すると判断する。このような処理を、あらかじめ定めた駆動のプログラムが終了するまで継続し(S6)、プログラムの終了後に計数値に基づいて台座1に搭乗したバランス能力を判定する(S7)。すなわち、バランス能力が高いほど揺れのパターンに変化が生じないから、ステップS5における計数値は小さくなるのであり、計数値の大小によってバランス能力を客観的に評価することができる。
【0045】
バランス能力の判定に応答性を用いる場合には、図16に示す手順になる。すなわち、応答性については揺れの大きさと同様に、複数人について台座1の揺動のパターンと頭部の揺れのパターンとを格納した測定データファイルF1に基づいて台座1の駆動に対する頭部の揺れの時間差に関しての閾値を決定する(S1)。測定データファイルF1に格納されているデータはバランス能力の程度が既知であるから、測定データファイルF1に格納されたデータに基づいてバランス能力の判断基準となる閾値を決定することができる。その後、台座1に人を搭乗させた状態で台座1の駆動を開始させる(S2)。ここで、台座1の駆動と人の頭部の揺れとの時間差をサンプリング毎に求め、時間差ファイルF5に格納する(S3)。求めた時間差をステップS1で求めた閾値と比較し(S4)、求めた時間差がステップS1で求めた閾値を超える場合には、その回数を計数する(S5)。このような処理を、あらかじめ定めた駆動のプログラムが終了するまで継続し(S6)、プログラムの終了後に計数値に基づいて台座1に搭乗したバランス能力を判定する(S7)。すなわち、バランス能力が高いほど台座1の駆動から頭部が揺れるまでの時間差が小さいと考えられるから、ステップS5における計数値は小さくなるのであり、計数値の大小によってバランス能力を客観的に評価することができる。
【0046】
上述した揺れの大きさ、安定性、応答性は個々にバランス能力の判定に用いてもよいが、これらを適宜に組み合わせることによって総合的にバランス能力を判定するようにしてもよい。ただし、複数種類の判定値を組み合わせるときには、重み付き加算などによってバランス能力を判断することが必要である。
【0047】
【発明の効果】
請求項1の発明の構成によれば、常時は台座を一連の揺動パターンで繰り返して揺動させ、揺動している台座に乗っている人がバランスを保っている期間中の適宜のタイミングで揺動パターンを変化させるから、揺動パターンの変化に対してバランスを崩した程度やバランスを崩してからバランスを保つ状態に戻るまでの時間などを検出することにより、バランス能力の高さを評価することができる。
【0050】
請求項2の発明の構成によれば、バランス能力を容易に評価することができる。
【0051】
請求項3の発明の構成によれば、常時は基本データ記憶部に格納された制御情報を繰り返し用いて台座を一連の揺動パターンで繰り返して揺動させ、揺動している台座に乗っている人がバランスを保っている期間中の適宜のタイミングで刺激データ記憶部に格納した制御情報を用いて台座の揺動パターンを変化させるから、揺動パターンの変化に対してバランスを崩した程度やバランスを崩してからバランスを保つ状態に戻るまでの時間などを検出することにより、バランス能力の高さを評価することができる。
【0052】
請求項4の発明の構成によれば、台座とは別にセンサが設けられ、かつセンサによって非接触で人の所望部位の動きを検出するから、台座に搭乗した人にセンサを意識させることなく人の動きを検出することができるという利点がある。
【0053】
請求項5の発明の構成によれば、人の動きの振幅によってバランス能力を定量的かつ客観的に評価することが可能になる。
【0054】
請求項6の発明の構成によれば、人の動きのパターンに基づいてバランス能力を客観的に評価することができる。
【0055】
請求項7の発明の構成によれば、台座の動きと人の動きとの時間差に基づいてバランス能力を数値化して客観的に評価することができる。
【0056】
請求項8の発明の構成によれば、複数種類の判定条件を用いることで、バランス能力についてより正確な評価が可能になる。
【0059】
請求項9の発明の構成によれば、バランス能力を容易に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態1を示すブロック図である。
【図2】 同上の全体構成を示す斜視図である。
【図3】 同上に用いる駆動装置を示す斜視図である。
【図4】 同上に用いる制御情報を示す図である。
【図5】 同上における測定手順を示す図である。
【図6】 同上の動作説明図である。
【図7】 同上の動作説明図である。
【図8】 参考例を示すブロック図である。
【図9】 同上における測定手順を示す図である。
【図10】 異なる形態のセンサを示し、(a)は要部平面図、(b)は要部側面図である。
【図11】 図10に示したセンサによる測定結果を示す図である。
【図12】 図10に示したセンサによる測定結果を示す図である。
【図13】 図10に示したセンサによる測定結果を示す図である。
【図14】 図10に示したセンサを用いる場合の動作説明図である。
【図15】 図10に示したセンサを用いる場合の動作説明図である。
【図16】 図10に示したセンサを用いる場合の動作説明図である。
【符号の説明】
1 台座
2 駆動装置
4 ハンドル
5 センサ
6 ディスプレイ装置
32a 基本データ記憶部
32b 刺激データ記憶部
34 パターン検出部
35 評価部

Claims (9)

  1. 一連の揺動パターンで繰り返して揺動駆動されている座席状の台座に乗っている人がバランスを保っている期間中の適宜のタイミングで、台座の揺動パターンを変化させ、揺動パターンを変化させた後の人の反応を検出し、検出された反応パターンに基づいてバランス能力を判定することを特徴とするバランス能力判定方法。
  2. 前記反応パターンは、揺動パターンを変化させた後にバランスを保つように動作するまでの時間、揺動パターンを変化させた後にバランスを崩している時間、揺動パターンを変化させたときの移動量、揺動パターンの変化の程度と反応までの時間の少なくとも1要素であることを特徴とする請求項1記載のバランス能力判定方法。
  3. 人が乗る座席状の台座と、制御情報を用いて制御され台座を揺動駆動する駆動手段と、繰り返し用いる制御情報を格納した基本データ記憶部と、基本データ記憶部に格納された制御情報に重ね合わせて用いる制御情報を格納した刺激データ記憶部と、人の反応を検出するセンサと、基本データ記憶部の制御情報を駆動手段に繰り返し与えることにより一連の揺動パターンで繰り返して揺動駆動されている台座に乗っている人がバランスを保っている期間中の適宜のタイミングで、刺激データ記憶部の制御情報を基本データ記憶部の制御情報に重ね合わせて駆動手段を揺動させることにより台座の揺動パターンを変化させ、揺動パターンを変化させた後にセンサにより検出される反応パターンに基づいてバランス能力を判定する判定手段とを備えることを特徴とするバランス能力判定装置。
  4. 前記センサは、台座とは別に設けられ台座に乗っている人を撮像した画像の時間変化から人の所望部位の動きを非接触で検出することを特徴とする請求項3記載のバランス能力判定装置。
  5. 前記判定手段は、前記センサにより検出された所望部位の動きの振幅が規定の閾値を超える期間を求め、この期間が短いほどバランス能力が高いと判定することを特徴とする請求項4記載のバランス能力判定装置。
  6. 前記判定手段は、前記センサにより検出された所望部位の動きについて短時間内のパターンを抽出し、パターンの変化が少ないほどバランス能力が高いと判定することを特徴とする請求項4記載のバランス能力判定装置。
  7. 前記判定手段は、前記センサにより検出された所望部位の動きについて台座の動きとの時間差を求め、この時間差が小さいほどバランス能力が高いと判定することを特徴とする請求項4記載のバランス能力判定装置。
  8. 請求項5ないし請求項7のいずれかに記載のバランス能力判定装置に用いる判定手段のうちの複数を組み合わせてバランス能力を判定することを特徴とするバランス能力判定装置。
  9. 前記台座は人が手で持つ握り部を備え、前記センサは、握り部を掴むときの力、握り部を押し引きする力、人の重心位置の少なくとも1要素を検出することを特徴とする請求項3記載のバランス能力判定装置。
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