JP3926914B2 - 3,4−ジヒドロキシ安息香酸の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は医薬の中間体として有用な3,4−ジヒドロキシ安息香酸の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
3,4−ジヒドロキシ安息香酸は、3,4−ジヒドロキシベンゾイル基を有する種々の化合物、特に医薬等の中間体として有用である。
【0003】
この3,4−ジヒドロキシ安息香酸の製造法としては、化学合成反応によるものと、微生物を用いた酵素反応によるものとがある。これらのうち、微生物を用いた方法は、化学合成反応による方法に比べ、反応が常温常圧の穏和な条件で進行すること、有害な触媒を使用しないことなど省エネルギーで安全性の高い方法である。微生物を用いた3,4−ジヒドロキシ安息香酸の製造法としては、グルコースをコリネバクテリウム属の菌に作用させる方法、イソフタル酸やバニリンをシュードモナス属の菌に作用させる方法等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの微生物を用いる方法は、3,4−ジヒドロキシ安息香酸の収率が低く、また原料以外に高価な栄養源を必要とすることから、工業的に利用できるものではなかった。
従って、本発明は、原料からの変換効率が高く、かつ安価な、微生物を用いた3,4−ジヒドロキシ安息香酸の製造法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らはバニリンやバニリン酸を炭素源として利用する微生物を探索し、その代謝過程を研究してきたところ、バニリン酸のメチル基脱離反応を触媒する酵素によりバニリン酸から3,4−ジヒドロキシ安息香酸が生成し、その後3,4−ジヒドロキシ安息香酸は開裂酵素によりそのベンゼン環が開裂してしまうことが判明した。そして更に研究を重ねた結果、スフィンゴモナス属に属し、バニリン酸のメチル基脱離反応を触媒する酵素活性を有する微生物から、組み換えDNA技術を用いて3,4−ジヒドロキシ安息香酸の開裂酵素活性を消失せしめることに成功し、かかる新規微生物を用いればバニリン又はバニリン酸から極めて効率よく3,4−ジヒドロキシ安息香酸が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、スフィンゴモナス属に属し、バニリン酸のメチル基脱離反応を触媒する酵素活性を有し、かつ3,4−ジヒドロキシ安息香酸の開裂酵素活性を有さない微生物に、バニリン又はバニリン酸を接触させることを特徴とする3,4−ジヒドロキシ安息香酸の製造法を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、スフィンゴモナス エスピー.CR−0310201と命名され、FERM P−16624として寄託された、バニリン酸のメチル基脱離反応を触媒する酵素活性を有し、かつ3,4−ジヒドロキシ安息香酸の開裂酵素活性を有さない微生物(FERM BP−6748)を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる微生物は、上記の如くスフィンゴモナス属に属し、バニリン酸のメチル基脱離反応を触媒する酵素活性を有し、3,4−ジヒドロキシ安息香酸の開裂酵素活性を有さない微生物であれば、野生株でも突然変異株でも特に制限されないが、スフィンゴモナス属に属し、バニリン酸のメチル基脱離反応を触媒する酵素活性を有する微生物から、組み換えDNA技術により3,4−ジヒドロキシ安息香酸の開裂酵素活性を消失せしめた組み換え微生物が特に好ましい。
【0009】
このような組み換え微生物としては、シリンガアルデヒド又はシリンガ酸を単一炭素源として生育可能な微生物であることが好ましい。なぜなら、これらの化合物は、パルプ製造廃液中に存在するので、当該廃液を含む培地でこの微生物を培養すれば、シリンガアルデヒドやシリンガ酸をエネルギー源とし、バニリン又はバニリン酸から3,4−ジヒドロキシ安息香酸が生成するからである。
【0010】
すなわち、資源の有効利用が求められる中、未利用のバイオマスの有効利用が切望されている。その中でもバイオマスとして大量に存在するリグニンは、パルプ製造工程から様々な芳香族化合物資源を含む残渣として大量に放出されている。これらパルプ製造廃液中には使用する樹種・パルプ化法によっても異なるが、バニリン、バニリン酸、シリンガアルデヒド、シリンガ酸などが多く含まれている。パルプ製造廃液の利用方法としては、廃液中に含まれる糖類を利用しての酵母類の培養などが行われているが、芳香族化合物資源は更に廃液として放出される。この発酵廃液からバニリンのみを製造する方法も知られているが、大部分が濃縮後焼却されているにすぎない。パルプ製造廃液中に存在するバニリン、バニリン酸、シリンガアルデヒド、シリンガ酸などを原料に有用物質を製造する方法が切望されている。このような観点から、上記の性質を有する微生物が特に好ましいのである。
【0011】
このような組み換え微生物を作製するための野生株としては、スフィンゴモナス属に属し、バニリンのメチル基脱離反応を触媒する酵素活性を有し、かつ3,4−ジヒドロキシ安息香酸の開裂酵素活性を有する微生物であれば、特に制限されないが、更にバニリン、バニリン酸、シリンガアルデヒド、シリンガ酸を単一炭素源として生育可能な菌株が好ましい。このような性質を有する菌株としては、スフィンゴモナス エスピー.CR−0300100株を例示することができる。当該CR−0300100株は、例えば土壌中よりバニリン、バニリン酸、シリンガアルデヒド、シリンガ酸を炭素源として含有する培地で集積培養することで得られる。このように土壌より分離したバニリン、バニリン酸、シリンガアルデヒド、シリンガ酸を単一炭素源として生育できる微生物のうち、3,4−ジヒドロキシ安息香酸を開裂によって代謝する微生物を選ぶ。このような微生物は以下のように判定される。
【0012】
バニリン、バニリン酸、シリンガアルデヒド、シリンガ酸を単一炭素源として生育できる微生物を適当な培地で培養し、集菌し、菌体を適当な緩衝液に懸濁し、超音波破砕機などを用いて細胞を破砕する。これを遠心して得られた上清を0.01〜10mM、好ましくは、0.1〜2mMの3,4−ジヒドロキシ安息香酸を含む緩衝液に添加する。1〜30分間、30℃でインキュベーションした後に、2Mの水酸化ナトリウムを添加し、黄色の発色の有無を調べる。黄色の発色は、3,4−ジヒドロキシ安息香酸の開裂物質(特にメタ開裂物質)の生成を意味する。
【0013】
このような菌株から組み換えDNA技術により3,4−ジヒドロキシ安息香酸の開裂酵素活性を消失した菌株を作製するには、まず、上記菌株からDNAを抽出し、このDNAの制限酵素断片をプラスミドベクターに連結し、大腸菌等の微生物内に形質転換して、3,4−ジヒドロキシ安息香酸の開裂酵素遺伝子を有するプラスミドを選択する。該プラスミドを制限酵素処理し、再連結させたときに3,4−ジヒドロキシ安息香酸の開裂活性の消失したプラスミドを選択し、このプラスミドをスフィンゴモナス属の微生物に取り込ませることにより行うことができる。より詳細には次の如くして行うことができる。
(1)まず、例えばCR−0300100株からDNAを抽出し、適当な制限酵素で切断する。これを、例えばpUC18、pKT230などのプラスミドベクターに連結し、大腸菌内に形質転換する。このようにして構築された組み換え大腸菌は、CR−0300100株のゲノムの様々な断片をプラスミドベクターに持つ集合体として得られる。大腸菌の集合体を寒天プレートなどに展開して、個々のコロニーに分離し、適当な培地を含む96穴マイクロプレートなどで培養する。次に培養液にリゾチームなどの細胞壁を穏和に溶解する酵素を添加し、細胞内容物を菌体外に漏出させる。ここで添加するリゾチームなどは細胞壁を溶解する濃度であればいかなる濃度でもよい。次に、3,4−ジヒドロキシ安息香酸を含む水溶液を添加し、しばらくインキュベートし、水酸化ナトリウム水溶液を添加する。ここで、添加する3,4−ジヒドロキシ安息香酸は、0.01〜10mM、好ましくは0.1〜2mM程度がよく、インキュベート時間は、1分〜数時間、好ましくは3分〜30分が適当である。また、添加する水酸化ナトリウム水溶液は、最終的にpHが10以上になれば良い。
【0014】
(2)このように、3,4−ジヒドロキシ安息香酸を添加し、その後、水酸化ナトリウム水溶液の添加によってpHが10以上としたとき上記大腸菌の集合体の中から黄色の発色を示すものが区別される。黄色の発色は、3,4−ジヒドロキシ安息香酸のメタ開裂物質の生成を意味する。このようにして区別された大腸菌の持つプラスミド中には3,4−ジヒドロキシ安息香酸のメタ開裂酵素遺伝子が含まれている。このようにして得られたプラスミドとしてpPX150を例示することができる。
【0015】
(3)次にこのようにして得られたプラスミドを適当な制限酵素で切断し、再連結させたときに3,4−ジヒドロキシ安息香酸のメタ開裂酵素活性(黄色の発色)の消失したプラスミドを作成する。このようにして得られたプラスミドとしてpPX151を例示することができる。
【0016】
(4)次に、CR−0300100株が感受性であるような抗生物質に対する耐性遺伝子を上記制限酵素で切断したプラスミドと連結した新たなプラスミドを作成する。pPX151をもとに、抗生物質耐性遺伝子としてカナマイシン耐性遺伝子として用いて作成したプラスミドとして、pPX152を例示することができる。
【0017】
(5)次に、上記によって作成したプラスミドから適当な制限酵素を用いてベクター部分と挿入部分を分離する。分離された挿入部分のDNAをCR−0300100株のコンピテント細胞を混合し、DNAを細胞内に取り込ませる。このような方法として、エレクトロポレーション法を挙げることができる。このようにDNAを取り込ませた細胞を適当な培地で数時間培養し、抗生物質(この場合カナマイシン)を含む寒天プレート上に展開し、カナマイシンに耐性なコロニーを得る。このようにして得られたカナマイシン耐性株は、3,4−ジヒドロキシ安息香酸のメタ開裂酵素活性(黄色の発色)を完全に消失している。
【0018】
CR−0300100株を用いて上記操作を行って得られた菌株の例としてはCR −0310201株(FERM BP−6748)が挙げられる。このCR−031 0201株は、スフィンゴモナス属に属し、バニリン酸のメチル基脱離反応を触媒す る酵素活性を有し、3,4−ジヒドロキシ安息香酸のメタ開裂酵素活性を有さない株 であり、かつシリンガアルデヒド又はシリンガ酸を単一炭素源として生育可能である 。
【0019】
上記本菌株を用いてバニリン又はバニリン酸から3,4−ジヒドロキシ安息香酸を製造するには、本菌株にバニリン又はバニリン酸を接触させればよいが、好ましくはバニリン又はバニリン酸を含有し、バニリン又はバニリン酸に加えて、シリンガアルデヒド又はシリンガ酸を含有する培地で、本菌株を培養し、該培養物から3,4−ジヒドロキシ安息香酸を採取することにより行われる。
【0020】
培養条件は、本菌株が生育可能な条件であれば特に制限されないが、pH5〜8、20〜37℃で25〜32時間が好ましい。また、培地には、上記成分の外、窒素源、ビタミン類等を添加することができる。培養物から3,4−ジヒドロキシ安息香酸を分離するには、例えば有機溶媒による抽出等により行われる。
【0021】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0022】
実施例1
(1)21mm試験管に0.2%のシリンガ酸を含む表1の組成の培地を10ml調製し、土壌サンプルを0.5gずつ入れ、30℃で3日間培養した。
【0023】
【表1】
【0024】
(2)次に、上記を約5分間静置し、僅かに濁った上清0.1mlを(1)と同じ組成の新しい試験管に植え継ぎ、30℃で3日間培養した。
(3)上記操作を1〜2回繰り返し、最後の上清を滅菌した蒸留水に適当に希釈し、0.2%のシリンガ酸を含む表1の組成の寒天培地に展開し、30℃で3日間培養し、コロニーを形成させた。
(4)上記コロニーを0.2%のバニリン酸を含む表1の組成の寒天培地に爪楊枝を用いて接種して、生育してくる菌株を得た。
(5)バニリン酸で生育した菌株を再び、0.2%のシリンガ酸を含む表1の組成の培地を10mlに植菌して、30℃で3日間培養した。培養液を滅菌した蒸留水に適当に希釈し、LB寒天培地に展開し、30℃で1日間培養し、コロニーを形成させた。
(6)生じたコロニーを同じコロニーについて、0.2%のバニリン酸及びシリンガ酸を含む表1の組成の2種の寒天培地に爪楊枝を用いて接種して、生育してくる菌株を得た。
(7)バニリン酸及びシリンガ酸を含む2種の寒天培地でともに生育可能な菌株1株を得た。本菌株をCR−0300100とし、菌学的性質を調べたところ、以下の通りであった。
【0025】
a、形態的特徴
・細胞の大きさ形 0.5×1.1〜1.3μm 桿菌
・胞子の有無 なし
・鞭毛 極鞭毛
・運動性 +
【0026】
b、寒天培地における生育状況
・表1の培地において 円形のコロニー、光沢があり、黄色
【0027】
【0028】
d、化学分類学的性質
・DNAのG/C含量(モル%) 68
・キノンタイプ Q−10
・色素 +(疎水性yellow pigment)
・細胞壁脂質 スフィンゴ脂質
e、その他の特性
・3,4−ジヒドロキシ安息香酸酸化酵素 メタ開裂
【0029】
上記の性質から、CR−0300100株はスフィンゴモナス(Sphingomonas)属と同定した。
【0030】
実施例2
(1)実施例1で得られたスフィンゴモナス エスピー.CR−0300100を100mlのLB培地(トリプトン10g、酵母エキス5g、塩化ナトリウム5g、グルコース1g/L)を用いて30℃で24時間振とう培養した。遠心にて菌体集菌後、Marmurの方法(Marmur,J.1961.J.Mol.Biol.3:208−218)で全DNAを抽出し、常法により精製した。
(2)(1)で得たスフィンゴモナス エスピー CR−0300100全DNAを制限酵素XhoI及びSphIで完全分解し、制限酵素SalI及びSphIで完全に消化したベクタープラスミドpUC19と混合しT4DNAリガーゼで処理して、ハイブリッドプラスミドを形成させた。
(3)(2)で得たハイブリッドプラスミドを大腸菌HB101株に形質転換し、100mg/Lのアンピシリンを含むLB培地に、プレート1枚あたり200〜300コロニーが出現するように塗布し、37℃で18時間培養した。
(4)上記で得られたコロニーを100mg/Lのアンピシリンを含むLB培地に、プレート1枚あたり96個ずつ継代し、これをマスタープレートとした。この操作で合計2000株のコロニーを得た。それぞれを100mg/Lのアンピシリンを含むLB培地を0.2ml調製した96穴マイクロプレートに植菌した。37℃でマイクロプレートシェーカーを用いて振とう培養した。
(5)18時間培養後、それぞれのウェルに最終濃度が50μg/mlとなるようにリゾチームを添加して、37℃で2時間インキュベートした。次に3,4−ジヒドロキシ安息香酸の20mM溶液を各ウェルに2μlずつ添加し、30℃で5分間インキュベートした。
(6)上記の処理を行った各ウェルに2Mの水酸化ナトリウムを10μlずつ添加したところ、2000株中1株において黄色の発色が見られた。
(7)黄色の発色のあった株からプラスミドを抽出し、いくつかの制限酵素について切断パターンを調べたところ、図1に示す構造であることがわかった。このプラスミドをpPX150と名付けた。
【0031】
実施例3
(1)pPX150を制限酵素ApaIで切断し、セルフライゲーションしたプラスミドpPX151を作成した。このプラスミドで形質転換した大腸菌HB101株及びpPX150で形質転換した大腸菌HB101株を100mg/Lのアンピシリンを含むLB培地10mlで18時間培養し、集菌した。菌体を50mMのリン酸緩衝液1mlに懸濁し、超音波破砕機を用いて細胞を破砕した。これを5000gで20分間遠心して得られた上清20μlを0.2mMの3,4−ジヒドロキシ安息香酸を含むリン酸緩衝液1mlに添加した。5分間、30℃でインキュベーションした後に、2Mの水酸化ナトリウムを0.1ml添加したところ、pPX150で形質転換した大腸菌HB101株では黄色の発色が見られたが、pPX151で形質転換した大腸菌HB101株では黄色の発色が見られなかった。
(2)プラスミドpUC4K(ファルマシア バイオテク社)を制限酵素EcoRIで消化し、blunting kit(宝酒造社)を用いて平滑化し、1%アガロースゲル電気泳動によって分離した。
(3)1.3kbpの断片を上記ゲルから切り出し、フェノール抽出を3度行い、エタノール沈殿によりDNAを精製した。
(4)pPX151を制限酵素ApaIで切断し、blunting kit(宝酒造社)を用いて平滑化した。これと上記(3)で得られたDNAを混合してligation kit(宝酒造社)を用いて連結反応を行い、大腸菌HB101株に形質転換した。形質転換した大腸菌HB101株は、カナマイシンとアンピシリンに対して耐性な菌株を選抜し、その株の保有するプラスミドとしてpPX152を得た(図1)。
【0032】
実施例4
(1)前実験で得られたプラスミドpPX152を制限酵素XbaIで消化し、1% アガロース電気泳動にて分離し、2.3kbpの断片を切り出した。次に凍結融解法 によりDNAを抽出し、十分にフェノール抽出を行いエタノール沈殿により精製した 。
(2)スフィンゴモナス エスピー CR−0300100株をLB液体培地(ナリ ジキシン酸25mg/Lを含む)500mlで28℃、23時間培養し氷中で15分冷却 した。
(3)4℃、10分、10000rpm で遠心集菌し、500mlの0℃蒸留水で穏和に 洗浄後再び、遠心集菌した。続いて250mlの0℃蒸留水で穏和に洗浄後、遠心集菌 した。更に、125mlの0℃蒸留水で穏和に洗浄後、遠心集菌した。
(4)上記の菌体を10%グリセロールを含む蒸留水に懸濁し0℃にて保持した。
(5)(1)のDNA約0.05μgを含む蒸留水4μlを0.2cmのキュベットに 入れ、(4)のコンピテントセル40μlを加え、(25μF、2500V、12ms ec)の条件でエレクトロポレーションにかけた。
(6)上記処理した細胞全量を10mlのLB液体培地に接種し、30℃で6時間培養 した。培養後、遠心によって菌体を集め25mg/Lのカナマイシンを含むLB平板に 展開し、30℃で48時間培養した。
(7)上記の条件で非常に強いカナマイシン耐性株、1株を得た。本菌株をスフィン ゴモナス エスピー CR−0310201株と名付けた。
(8)スフィンゴモナス エスピー CR−0310201株及びCR−03001 00株をLB培地10mlで24時間培養し、集菌した。菌体を50mMのリン酸緩衝液 1mlに懸濁し、超音波破砕機を用いて細胞を破砕した。これを5000gで20分間 遠心して得られた上清100μlを0.2mMの3,4−ジヒドロキシ安息香酸を含む リン酸緩衝液1mlに添加した。5分間、30℃でインキュベーションした後に、2M の水酸化ナトリウムを0.1ml添加したところ、CR−0300100株では黄色の 発色が見られたが、CR−0310201株では黄色の発色が全く見られなかった。 CR−0310201株は上述の性質及びカナマイシンに耐性であることを除きCR −0300100株と全く同一の菌学的性質を示した。本菌株は、工業技術院生命工 学工業技術研究所にFERM BP−6748として寄託した。
【0033】
実施例5
(1)CR−0310201株をカナマイシンを25mg/L含むLB培地で前培養し、2g/Lのシリンガ酸(SA)を含む表1の組成の培地に6%植菌した。
(2)30℃、24時間培養後、シリンガ酸、バニリン酸をそれぞれ、2g/Lとなるように添加し、更に24時間培養を続けた。培養液中のシリンガ酸、バニリン酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸の消長をHPLC分析(column:BONDASPHERE 5μ C18 3.9×150mm,MILLIPORE;mobile phase:2% acetic acid and 10% methanol;flow rate:0.7ml/min;detection 295nm)により調べた。菌体増殖量を660nmの光学密度(OD660)によって調べた。
(3)図2に示したように、CR−0310201株はシリンガ酸、バニリン酸の減少に伴い、バニリン酸に対して3,4−ジヒドロキシ安息香酸を定量的に生成し、変換収率は90%であった。
【0034】
実施例6
(1)CR−0310201株をカナマイシンを25mg/L含むLB培地で前培養し、1g/Lのシリンガ酸(SA)を含む表1の組成の培地に6%植菌した。
(2)30℃、24時間培養後、シリンガアルデヒド、バニリンをそれぞれ、1g/Lとなるように添加し、更に24時間培養を続けた。培養液中のシリンガアルデヒド、バニリン、3,4−ジヒドロキシ安息香酸の消長をHPLC分析(column:BONDASPHERE 5μ C18 3.9×150mm,MILLIPORE;mobile phase:2% acetic acid and 10% methanol;flow rate:0.7ml/min;detection 295nm)により調べた。菌体増殖量を660nmの光学密度(OD660)によって調べた。
(3)図3に示したように、CR−0310201株はシリンガアルデヒド、バニリンの減少に伴い、バニリンに対して3,4−ジヒドロキシ安息香酸を定量的に生成し、変換収率は90%であった。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、バニリン又はバニリン酸から極めて効率良く3,4−ジヒドロキシ安息香酸が製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラスミドpPX150からプラスミドpPX152への作製ストラテジー及びこれらのプラスミドの制限酵素地図を示す。
【図2】培地中のバニリン酸、シリンガ酸及び3,4−ジヒドロキシ安息香酸の濃度の経時変化を示す。
【図3】培地中のバニリン、シリンガアルデヒド及び3,4−ジヒドロキシ安息香酸の濃度の経時変化を示す。
Claims (3)
- スフィンゴモナス属に属し、バニリン酸のメチル基脱離反応を触媒する酵素活性を有し、かつ3,4−ジヒドロキシ安息香酸の開裂酵素活性を有さない微生物に、バニリン又はバニリン酸を接触させることを特徴とする3,4−ジヒドロキシ安息香酸の製造法。
- 当該微生物が、シリンガアルデヒド又はシリンガ酸を単一炭素源として生育可能な微生物である請求項1記載の製造法。
- スフィンゴモナス エスピー.CR−0310201と命名され、FERM P−16624として寄託された、バニリン酸のメチル基脱離反応を触媒する酵素活性を有し、かつ3,4−ジヒドロキシ安息香酸の開裂酵素活性を有さない微生物(FERM BP−6748)。
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