JP3925344B2 - 高周波加熱装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被加熱物を電極間に挟んで誘電加熱する高周波加熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
高周波加熱装置の代表である電子レンジは、被加熱物を直接的に加熱できるのでなべ釜を準備する必要がない簡便さでもって生活上の不可欠な機器になっている。また、この電子レンジの加熱の特徴は加熱エネルギを食品内部にまで供給できることであり、この特徴を冷凍食品の解凍に利用するということで冷凍食品が大量に流通してきた。
【0003】
電子レンジは、被加熱物を収納する加熱室の大きさが大概、幅寸法および奥行き寸法がそれぞれ30〜40cm、高さ寸法が20cm前後である。一方使用している周波数の波長は約12cmであり、加熱室内には強弱の電界分布が必ず生じ、さらには被加熱物の形状やその物理特性の影響が相乗されて局所加熱が発生することがある。冷凍食品の解凍においては、氷が解けて水になった領域に加熱エネルギが集中するので局所加熱現象が顕著に現れ、部分煮えと未解凍とが共存してしまう問題を有している。
【0004】
波長の長い高周波を利用し、加熱用電極を用いて被加熱物を誘電加熱する方法は、歴史が古くいまでも工業用としてバッチ方式やベルトコンベア方式が用いられている。これらは大型の冷凍品の処理や冷凍品の多量処理のために大型の装置構成であり、かつ装置の操作も熟練者が行っている。
【0005】
一方、この加熱用電極を用いた装置の家庭用装置への展開も古くから検討されてきたが、生活上の利便性あるいは使用上の利便性の価値をユーザに提供できるまでには至っていない。家庭用装置としての実用価値を提供することを目的とした従来技術としては、たとえば特開平9−92455号公報がある。この公報には、電子レンジとの併用を考慮した加熱用電極の構成が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
家庭用装置の実用価値は、形状は大きくても電子レンジ並であり、かつ電子レンジと同様に簡単操作と短時間処理が主要な解決すべき課題である。
【0007】
形状のコンパクト化に関しては、加熱用電極と高周波発生手段とのインピーダンスの整合を図る各種インピーダンス整合素子の小型化が主要な課題である。また、簡単操作に関しては、可変制御対象を極小化することであり、短時間処理に関しては、加熱用電極間への加熱エネルギの集中化である。
【0008】
従来技術の特開平9−92455号公報は、回転する載置台を加熱用電極の一つにしているが、被加熱物である冷凍品を加熱用電極に直接置いた場合、接触部での発熱が生じて加熱むらが生じる危険性がある。また、マグネトロンが発生するマイクロ波で加熱する際には、被加熱物の中央にマイクロ波が伝播しずらく中央部の加熱が弱くなる危険性も有している。
【0009】
本発明は上記課題を解決するもので、被加熱物を非金属材料の載置部に載置し、被加熱物を挟む形で配置した加熱用電極に高周波を効率よく供給して被加熱物を高周波加熱する装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の高周波加熱装置は上記課題を解決するために、被加熱物を収納載置する非金属材料の載置部を有する加熱室と、前記加熱室壁面を一方の電極とし他方の電極を前記被加熱物を挟む形で配置した加熱用電極と、前記加熱用電極に供給する高周波を発生する高周波発生手段と、前記高周波発生手段と前記加熱用電極との間に直列に接続した固定インピーダンス素子と可変インピーダンス素子とを備え、前記加熱用電極の一つは可動する構成とし、この加熱用電極に前記固定インピーダンス素子を一体的に配置した構成としている。
【0011】
上記発明によれば、被加熱物の載置部を非金属材料としたことにより安全性という安心感を提供できるとともに被加熱物を加熱用電極から絶縁したことにより被加熱物の局所加熱を防止できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、被加熱物を収納載置する非金属材料の載置部を有する加熱室と、前記加熱室壁面を一方の電極とし他方の電極を前記被加熱物を挟む形で配置した加熱用電極と、前記加熱用電極に供給する高周波を発生する高周波発生手段と、前記高周波発生手段と前記加熱用電極との間に直列に接続した固定インピーダンス素子と可変インピーダンス素子とを備え、前記加熱用電極の一つは可動する構成とし、この加熱用電極に前記固定インピーダンス素子を一体的に配置したもので、これにより被加熱物の載置部を非金属材料としたことにより安全性という安心感を提供できるとともに被加熱物を加熱用電極から絶縁したことにより被加熱物の局所加熱を防止できる。
【0013】
また、加熱用電極に供給する高周波を発生する高周波発生手段と、前記高周波発生手段と前記加熱用電極との間に直列に接続した固定インピーダンス素子と可変インピーダンス素子とを備え、前記加熱用電極の一つは可動する構成とし、この加熱用電極に前記固定インピーダンス素子を一体的に配置したものであり、これにより高電圧を分圧するとともに加熱用電極と固定インピーダンス素子との結線を短くして結線部での発熱を抑制することができる。
【0014】
請求項に記載の発明は、特に、請求項に記載の高周波加熱装置が、固定インピーダンス素子のインピーダンス値は可変インピーダンス素子の最大インピーダンス値の2倍以上としたものであり、これにより高電圧を加熱用電極と固定インピーダンス素子に集中化させることで固定インピーダンス素子と可変インピーダンス素子との結線部の発熱を抑制でき、この結線に可撓性の高い導線を使用することができる。
【0015】
請求項に記載の発明は、特に、請求項に記載の高周波加熱装置が、可変インピーダンス素子と高周波発生手段との間に並列に固定インピーダンス素子を備えたものであり、これにより高周波発生手段と加熱用電極側とのインピーダンス整合の調整を直列に接続した可変インピーダンス素子に一本化して可変制御を単純化でき操作性の簡便化を図ることができる。
【0016】
請求項に記載の発明は、特に、請求項に記載の高周波加熱装置の直列に接続した可変インピーダンス素子は、コイル構成とし、複数のタップを設け、タップ切替によりインピーダンスを可変する構成としたものであり、これにより切替操作という単純な制御により最適なインピーダンス整合を選択させることができる。
【0017】
請求項に記載の発明は、特に、請求項に記載の高周波加熱装置の並列配置の固定インピーダンス素子は、誘電体と電極との多層構造からなるコンデンサで構成したものであり、これにより扁平で小型形状の固定インピーダンス素子を構成でき、装置への実装を容易に行うことができる。
【0018】
請求項に記載の発明は、特に、請求項に記載の高周波加熱装置の直列に接続した可変インピーダンス素子は、誘電体と電極との多層構造からなるコンデンサで構成し、一方の電極を回転させることで対向面積を変化させる構成としたものであり、これにより扁平で小型形状の固定インピーダンス素子を構成でき、装置への実装を容易に行うことができる。
【0019】
請求項に記載の発明は、特に、請求項に記載の高周波加熱装置が直列に接続した可変インピーダンス素子と高周波発生手段との間に並列に固定インピーダンス素子と可変インピーダンス素子とをそれぞれ備えたものであり、高周波発生手段と加熱用電極側とのインピーダンスの整合の範囲が拡大でき、高周波発生手段の高周波を効率よく被加熱物に供給でき、短時間に加熱することができる。
【0020】
請求項に記載の発明は、特に、請求項に記載の高周波加熱装置の可変インピーダンス素子は、誘電体と電極との多層構造からなるコンデンサで構成し、一方の電極を回転させることで対向面積を変化させる構成としたものであり、これにより扁平で小型形状の可変インピーダンス素子を構成でき、固定インピーダンスとともに装置への実装を容易に行うことができる。
【0021】
請求項に記載の発明は、被加熱物を収納する加熱室においてこの被加熱物を挟む形で配置した加熱用電極の一方を兼ねる前記加熱室の壁面と、マイクロ波発生手段と、前記マイクロ波発生手段が発生したマイクロ波を前記加熱室の壁面から前記加熱室内に供給する構成としたものであり、これにより電極を用いた高周波加熱とマイクロ波を用いた高周波加熱との併用を可能にした装置を提供できる。
【0022】
請求項10に記載の発明は、特に、請求項に記載の高周波加熱装置が、マイクロ波を供給する加熱室壁面と被加熱物との間に被加熱物を載置する非金属材料の載置部を備えたものであり、これにより被加熱物を移動させることなく電極を用いた高周波加熱とマイクロ波を用いた高周波加熱とを連続的に実行させることができる。
【0023】
請求項11に記載の発明は、特に、請求項に記載の高周波加熱装置が、供給したマイクロ波を攪拌する攪拌手段を備えたものであり、これにより被加熱物を移動させることなくマイクロ波供給の下で加熱の均一化を促進させることができる。
【0024】
請求項12に記載の発明は、特に、請求項11に記載の高周波加熱装置の攪拌手段は、板状構成とし、板面をマイクロ波を供給する加熱室壁面と略平行に配置したものであり、これにより電極を用いた高周波加熱において電極間の電界分布の乱すことなく高周波加熱を実行することができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0026】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1を示す高周波加熱装置の正面断面構成図、図2は図1において加熱用電極を可動させた時の正面断面構成図、図3は図1の並列配置の固定インピーダンス素子の部品構成図、図4は図1のA−A‘断面矢視図、図5は図1の回路構成図である。
【0027】
図1および図2において、10は被加熱物を収納する加熱室であり、加熱室10の底面11は加熱用電極を兼ねている。この加熱室の底面11には、マイクロ波発生手段12が発生するマイクロ波(2450MHz帯)を加熱室10内に供給する放射部13を設けている。14はマイクロ波を放射部13に伝送する導波管である。この放射部13まわりの構成は後述する。
【0028】
また、15は金属材料(非磁性金属材料、たとえばアルミ)の板状構成からなる攪拌手段であり、モータ16によって回転駆動する。攪拌手段15を覆って被加熱物を載置する非金属材料(たとえば、耐熱ガラス、セラミックスあるいは耐熱樹脂)の載置部17を配置させている。このように被加熱物の載置部を非金属材料としたことにより安全性という安心感を提供できるとともに被加熱物を加熱用電極11から絶縁したことにより被加熱物の局所加熱を防止できる。
【0029】
一方、18は他方の加熱用電極(非磁性金属材料、たとえばアルミ、SUS304)であり、絶縁材料(PPSやPS)からなるアーム19、20によって支持されている。このアーム19、20の他端はそれぞれラック21、22に固定接続している。23はモータであり、その出力シャフトに樹脂材料からなるピニオン24を配し、モータ23を駆動することでピニオン24の歯車と噛み合ったラックが図において左右方向に移動する構成としている。モータ23は回転方向を規制していない同期モータとしている。なお、モータ23はステッピングモータを利用しても構わない。
【0030】
25は加熱室の底面11と加熱用電極18との間に供給する高周波(たとえば13.56MHz、27.12MHz)を発生する高周波発生手段、26は高周波発生手段25の出力側に設けた出力電力および反射電力を検出する電力検出部(CM型SWR回路など)、27は電力供給線である。電力供給線27は同軸ケーブルで構成し、外部導体27aは加熱室10の壁面11と電気的に導通するように接続している。また、同軸ケーブルからなる電力供給線27の中心導体27bは可変インピーダンス素子であるタップ切替端子付きのコイル28に結線している。
【0031】
可変インピーダンス素子であるタップ切替端子付きコイル28の他端と固定インピーダンス素子29の一端とは表面に絶縁体を付帯させた可撓性の板状導体30で結線している。
【0032】
固定インピーダンス素子29はコイル構成とし、加熱用電極18に固定した絶縁材料からなるボディ31に導線を数回巻きして構成している。固定インピーダンス素子29の他端は加熱用電極18に結線している。ボディ31は加熱用電極18に固定組立しており、この構成により、加熱用電極18と固定インピーダンス素子29とは一体構造となり、加熱用電極18の可動に伴って固定インピーダンス素子29が一体的に昇降する。
【0033】
また、この構成により固定インピーダンス素子29と可変インピーダンス素子28は高周波発生手段25と加熱用電極18との間に直列に接続 した構成からなる。また可変インピーダンス素子28と高周波発生手段25との間に並列配置の固定インピーダンス素子32を設けている。
【0034】
この固定インピーダンス素子32はコンデンサとしている。このコンデンサの詳細構成を図3に示す。図3において、321と322とは一方の電極、323は他方の電極、324と325はそれぞれの電極間に積層する誘電体(比誘電率が高い材料が好ましい。たとえば、アルミナ)である。
【0035】
また、各電極および誘電体には中央部に所定の寸法の穴加工を配しており、これらを順に積層した後、中央部の穴に金属を挿入して電極321と電極322とを導通させてコンデンサを構成している。電極321、322に配したそれぞれの穴326および327は一方の電極の結線用の穴、電極323に配した穴328は他方の電極の結線用穴である。なお、図1および図2においては中央部に通した金属ねじを加熱室の底面11と導通する金属面とともにねじ組み立てした構成としている。
【0036】
次に図4を用いて放射部13の説明をする。
放射部13は、導波管14のマイクロ波発生手段を装着する側から遠い側の導波管端面33とこの端面33から導波管14を伝送する周波数の伝送波長の略1/2の距離だけ離れた位置との間の壁面(導波管のH面)に配置している。放射部13は、それぞれL字形状の開口13a、13bから構成し点対称に配置している。点対称の位置は導波管14の管軸上であり図4において穴34の中心である。放射部13の各開口13a、13bは導波管14の管軸に対して平行な部分と垂直な部分とを有し、かつ各開口は管軸を横切らないように配置している。
【0037】
穴34は攪拌手段15と連結し攪拌手段15を回転させるモータ16の出力シャフト(絶縁材料にて構成)が貫通する。攪拌手段15は上述したとおり金属材料からなる板状構成であり、その板面は加熱室底面11と略平行に配置している。また攪拌手段15は加熱室10の壁面11から絶縁した配置としている。このような攪拌手段15の構成により、加熱用電極間に生じる高周波電界の分布の乱れを極小化している。なお、35はマイクロ波発生手段12の出力アンテナを挿入組み立てする穴、36は加熱室壁面に施した開口部である。
【0038】
導波管14を伝送したマイクロ波は放射部13から回転電界を生じながら加熱室10内に放射していく。この放射は攪拌手段15によってかき乱され、加熱室10内全体に万遍なくマイクロ波が放射されて、被加熱物の加熱の均一化を促進する。なお、攪拌手段15は、たとえば、幅20mm、長さ90mm以上の板や、直径90mm以上の円板の内部に所定の開口を複数個設けた構成などを用いることができる。
【0039】
上記した構成の回路図を図5に示す。図5において、25は高周波発生手段、26は電力検出部、32は並列配置の固定インピーダンス素子、28はタップ切替付の可変コイルからなる直列に接続した可変インピーダンス素子、29は直列に接続した固定インピーダンス素子、18は可動する加熱用電極、11は加熱室底面、17は載置部、37は被加熱物である。
【0040】
次に加熱用電極18の可動動作について説明する。
図1に示す状態においてモータ23を動作させるとラック21、22が移動自由な方向にモータ23の回転方向が規制され、これにより加熱用電極18が下降する方向にモータ23が回転動作する。加熱用電極18の下降は、図2に示すように、アーム19、20が略鉛直方向になるまで続く。この状態においてラック21、22の一端が加熱室の壁面38、39に当たる。そして、モータ23は現在の回転方向に対する駆動トルクが増大し、それを解消するべく反対方向に回転を始める。これにより、加熱用電極18は上昇に転じ、図1に示すような最高位置に戻る。
【0041】
図1に示す最高位置は、加熱用電極18は金属板40、41によって上昇を規制させている。この位置に到達したことをリミットスイッチ(図示していない)で検知してモータ23の動作を停止させる。
【0042】
この加熱用電極18の昇降動作に対して、被加熱物を収納した場合の加熱用電極18の制御方法を以下に説明する。被加熱物を載置した後、モータ23を動作させると加熱用電極18は下降を始め、被加熱物あるいは被加熱物の収納容器などに加熱用電極18が当接すると下降動作が停止する。このときにモータ23に駆動トルクが発生し、これに伴ってモータの駆動電流が増大する。この駆動電流をモニターしておき、駆動電流の増大を検知した後、所定時間経過後にモータの動作を停止させることで加熱用電極18を加熱室10内に停止固定させている。
【0043】
この後、高周波発生手段25を動作させ、電力検知部26の検出信号に基づき、反射電力が最小になるように可変インピーダンス素子28のタップ切替位置を選択し、反射電力が最小となるタップ位置にて高周波加熱を連続し、所定時間あるいは反射電力量の時間的変化に基づいて加熱を停止する。
【0044】
次に上記構成の電極を用いた高周波加熱の有効性について図6を用いて説明する。図6は、それぞれの被加熱物に対して、加熱用電極18と被加熱物とのすきまを10mmとし可変インピーダンス素子の値を反射電力が最小となるように選択した時の図5の点P1から加熱用電極側を見たインピーダンス値をスミス図表の上にプロットしたものである。測定周波数は13.56MHzであり、並列配置の固定インピーダンス素子32は690pFのコンデンサ、直列に接続した固定インピーダンス素子29は2μHのコイル、可変インピーダンス素子28は0.7μH、0.8μH、0.9μHを用いた。また加熱用電極18の形状は250mmx200mm、被加熱物として牛スライス肉(図中の□印)、ミンチ肉(図中の△印)、まぐろブロック(図中の●印)の各100g、300g、500gを用いた。
【0045】
図中の破線の円42は電圧定在波比の値が2を示し、電力反射率に換算すると約11%である。使用した被加熱物に対して可変インピーダンス素子28の値を選択するだけのインピーダンス整合調整であるが、反射電力は十分に小さくすることができ、高周波発生手段25の出力電力を被加熱物に効率よく供給できることが認められ、また短時間に被加熱物を良好に解凍することができた。
【0046】
つまり、可変インピーダンス素子を一つだけ用いる構成で十分に実用性がある高周波加熱装置を実現できる。この場合、直列に接続した二つのインピーダンス素子(固定インピーダンス素子と可変インピーダンス素子)において、加熱用電極側に設ける固定インピーダンス素子のインピーダンス値を可変インピーダンス素子の最大インピーダンス値の2倍以上とする。これにより、加熱用電極間と直列に接続した二つのインピーダンス素子とに高電圧を分圧する。固定インピーダンス素子は高電圧を分担するので固定インピーダンス素子と加熱用電極との間の結線は太く短くを基本とし加熱用電極に固定インピーダンス素子を一体組み立てする構成としている。これにより、結線部の発熱を抑制することができる。
【0047】
また、高電圧を加熱用電極と固定インピーダンス素子に集中化させることで固定インピーダンス素子と可変インピーダンス素子との結線部の発熱を抑制でき、この結線に可撓性の高い導線を使用することができる。
【0048】
なお、インピーダンス値の比率は、大きいほど有効であるが、可変インピーダンスの可変範囲を確保することを考慮して実用的には最大で4〜5倍程度までが使用できる。
【0049】
以上より、並列配置の固定インピーダンス素子と直列に接続した固定インピーダンス素子と同じく直列に接続した可変インピーダンス素子とを用い直列に接続した各インピーダンス素子のインピーダンス比率を最適化することでインピーダンス整合に係わる各インピーダンス素子をコンパクトに構成できるとともにインピーダンス整合の調整を簡単な制御にて実現することができる装置を実現させることができる。
【0050】
(実施例2)
次に本発明の実施例2について図7を用いて説明する。実施例2が実施例1と相違する点は、可変インピーダンス素子をコンデンサで構成する点ある。
【0051】
図7は対向面積を変化させることで容量を可変するコンデンサ形式の可変インピーダンス素子50の構成を示す。図において、501と502とは回転させる一方の電極、503は他方の電極、504と505はそれぞれの電極間に積層する誘電体(比誘電率が高い材料が好ましい。たとえば、アルミナ)である。各電極は略半円形状の開穴501a、502a、503aを備えている。
【0052】
また回転する電極501、502の中央部にはそれぞれDカット部を有する開穴501b、502b、電極503の中央部には半円の開穴503b、各誘電体504、505にはそれぞれ中央部に丸穴504a、505aを配している。そして一方の電極となる金属性の回転軸にこれらを順に積層した後、電極501と電極502とをこの回転軸に導通固定する構成としている。そしてこの金属性の回転軸に対して電極503を絶縁材料を介して非回転状態に固定し電極501および502を回転させることで電極間の対向面積を変える構造物としている。電極503に配した503cは結線用の穴である。具体的な構成として、直径50mm、厚さ1mmのアルミナを誘電体に用いた場合、15pF〜100pF程度の可変容量素子が実現できる。
【0053】
このような構成からなる可変インピーダンス素子は、汎用のエアーバリコンと比べて扁平な構成になるので、高周波加熱装置への実装の自由度が確保できる。
【0054】
具体的な回路図の例を図8に示す。図8はコンデンサ形式の可変インピーダンス素子を直列配置および並列配置としたものである。すなわち、タップ切替付きのコイル形式の可変インピーダンス素子をコンデンサ形式の可変インピーダンス素子51に置換することで、連続的にインピーダンスを可変でき、インピーダンス整合の調整を高周波を供給中に行うことができる。また、並列配置の固定インピーダンス32素子にコンデンサ形式の可変インピーダンス素子52を並列配置することでインピーダンス整合範囲を拡大できるので、より広範囲の被加熱物を効率よく高周波加熱する装置を提供することができる。
【0055】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、被加熱物の載置部を非金属材料としたことにより安全性という安心感を提供できるとともに被加熱物を加熱用電極から絶縁したことにより被加熱物の局所加熱を防止できる。
【0056】
また、各インピーダンス可変素子のインピーダンス値の配分、インピーダンス値の選定および扁平構成などにより、装置への実装の自由度を高めるとともに簡単な制御にて加熱を実行することができる。
【0057】
さらに、被加熱物を挟む形で配置した加熱用電極の一方を前記加熱室の壁面とし、この加熱室の壁面から前記加熱室内にマイクロ波を供給する構成とすることにより電極を用いた高周波加熱とマイクロ波を用いた高周波加熱との併用を可能にした装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1の高周波加熱装置の正面断面図
【図2】 同高周波加熱装置の加熱用電極を可動した時の正面断面図
【図3】 同高周波加熱装置の固定インピーダンス素子の部品構成図
【図4】 同高周波加熱装置のA−A‘断面矢視図
【図5】 同高周波加熱装置の回路構成図
【図6】 同高周波加熱装置の各種被加熱物に対する負荷インピーダンス特性図
【図7】 本発明の実施例2の可変インピーダンス素子の部品構成図
【図8】 同高周波加熱装置の回路構成図
【符号の説明】
10 加熱室
11 加熱室の底面(一方の加熱用電極)
12 マイクロ波発生手段
13 マイクロ波放射部(供給部)
15 攪拌手段
17 載置部
18 加熱用電極(可動する加熱用電極)
25 高周波発生手段
28 直列に接続した可変インピーダンス素子
29 直列に接続した固定インピーダンス素子
32 並列配置の固定インピーダンス素子(積層構成コンデンサ)
37 被加熱物
50、51、52 可変インピーダンス素子(積層構成コンデンサ)

Claims (12)

  1. 被加熱物を収納載置する非金属材料の載置部を有する加熱室と、前記加熱室壁面を一方の電極とし他方の電極を前記被加熱物を挟む形で配置した加熱用電極と、前記加熱用電極に供給する高周波を発生する高周波発生手段と、前記高周波発生手段と前記加熱用電極との間に直列に接続した固定インピーダンス素子と可変インピーダンス素子とを備え、前記加熱用電極の一つは可動する構成とし、この加熱用電極に前記固定インピーダンス素子を一体的に配置した高周波加熱装置。
  2. 固定インピーダンス素子のインピーダンス値は可変インピーダンス素子の最大インピーダンス値の2倍以上とした請求項に記載の高周波加熱装置。
  3. 可変インピーダンス素子と高周波発生手段との間に並列に固定インピーダンス素子を備えた請求項に記載の高周波加熱装置。
  4. 直列に接続した可変インピーダンス素子は、複数のタップを設け、タップ切替によりインピーダンスを可変する請求項に記載の高周波加熱装置。
  5. 並列配置の固定インピーダンス素子は、誘電体と電極との多層構造からなるコンデンサで構成した請求項に記載の高周波加熱装置。
  6. 直列に接続した可変インピーダンス素子は、誘電体と電極との多層構造からなるコンデンサで構成し、一方の電極を回転させることで対向面積を変化させる請求項に記載の高周波加熱装置。
  7. 直列に接続した可変インピーダンス素子と高周波発生手段との間に並列に固定インピーダンス素子と可変インピーダンス素子とをそれぞれ備えた請求項に記載の高周波加熱装置。
  8. 可変インピーダンス素子は、誘電体と電極との多層構造からなるコンデンサで構成し、一方の電極を回転させることで対向面積を変化させる請求項に記載の高周波加熱装置。
  9. 被加熱物を収納する加熱室においてこの被加熱物を挟む形で配置した加熱用電極の一方を兼ねる前記加熱室の壁面と、マイクロ波発生手段と、前記マイクロ波発生手段が発生したマイクロ波を前記加熱室の壁面から前記加熱室内に供給する高周波加熱装置。
  10. マイクロ波を供給する加熱室壁面と被加熱物との間に被加熱物を載置する非金属材料の載置部を備えた請求項に記載の高周波加熱装置。
  11. 供給したマイクロ波を攪拌する攪拌手段を備えた請求項に記載の高周波加熱装置。
  12. 攪拌手段は、板状構成とし、板面をマイクロ波を供給する加熱室壁面と略平行に配置した請求項11に記載の高周波加熱装置。
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