JP3925240B2 - 歩行者用エアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のフードパネルとフロントガラスとの間に配置されるカウルの部位に、折り畳まれて収納されるとともに、インフレーターから吐出される膨張用ガスを流入させて、上方へ向かって突出するように展開膨張して、歩行者を保護可能なエアバッグを備える歩行者用エアバッグ装置に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、上記構成の歩行者用エアバッグ装置としては、特開2000−264146に示す構成のものがあった。
【0003】
このエアバッグ装置は、インフレーターから吐出される膨張用ガスを流入させて展開膨張するエアバッグを備えるとともに、車両におけるフードパネルとフロントガラスとの間に位置するカウルパネルで構成される凹部に、収納されていた。そして、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて、エアバッグが、フロントピラー及びワイパの前面側を覆うように、展開膨張する構成であった。
【0004】
しかし、上記構成のエアバッグ装置は、車両を構成する部材と全く別体として、形成されて、エアバッグやインフレーターを収納するケースや、エアバッグの上方を覆うとともにエアバッグの展開膨張時に開く扉部等が必要となり、エアバッグやインフレーターを収納したケースごと、カウルパネルで構成される凹部に収納されていることから、車両全体の部品点数が増加し、組付工数を低減させることにも寄与できず、さらには、車両の重量を増加させることにもなっていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、車両の部品点数の増加を抑えて、エアバッグ装置の車両への組付工数を低減でき、さらに、軽量化を図ることも可能な歩行者用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る歩行者用エアバッグ装置は、エアバッグが、車両のフードパネルとフロントガラスとの間に配置されるカウルの部位に、折り畳まれて収納されるとともに、インフレーターから吐出される膨張用ガスを流入させて、上方へ向かって突出するように展開膨張して、歩行者を保護可能とされ、
カウルが、車両のボディ側に配置される板金製のカウルパネルと、カウルパネルの上方に配置される合成樹脂製のカウルルーバと、を備える構成の歩行者用エアバッグ装置であって、
カウルルーバが、一体的に成形されて形成されるとともに、折り畳まれたエアバッグの上方側に配置される上壁部と、上壁部の前部側における下部側に配置されて折り畳まれたエアバッグとインフレーターとを収納させる収納部と、を備える構成とされ、
上壁部の後部側に、雨水やエアをカウルパネル側に流す複数の挿通孔が、形成され、
上壁部の前部側に、収納部の上部側を覆うとともに、周縁に薄肉の破断予定部と、開き時の回転中心となるインテグラルヒンジからなるヒンジ部と、を配設させた構成とされて、収納されたエアバッグの展開膨張時に、エアバッグに押されて、破断予定部を破断させつつヒンジ部を回転中心として開き可能な扉部が、形成されて、
収納部が、カウルパネルにより、保持されていることを特徴とする。
【0007】
また、カウルルーバの収納部が、下面側を、カウルパネルに当接支持されている構成とすることが好ましい。
【0008】
さらに、カウルルーバの収納部が、カウルパネルの上部側の部位に、保持されている構成とすることが好ましい。
【0009】
さらにまた、エアバッグの外表面側に、耐水性の良好なシリコンゴムからなるコーティング層が形成され、
インフレーターが、エアバッグにより周囲を覆われ、
折り畳まれたエアバッグとインフレーターとが、外周側を、耐水性の良好な合成樹脂製のラッピング材により覆われて、収納部内に収納される構成とすることが好ましい。
【0010】
さらにまた、エアバッグが、カウルルーバの収納部とともに、カウルパネルに連結固定されている構成とすることが好ましい。
【0011】
【発明の効果】
本発明の歩行者用エアバッグ装置では、車両を構成する部材である合成樹脂製のカウルルーバが、エアバッグとインフレーターとを収納させる収納部と、収納部の上部側を覆うとともに、収納されたエアバッグの展開膨張時に、エアバッグに押されて開き可能とされる扉部と、を備える構成である。すなわち、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、インフレーターとエアバッグとを収納する収納部と、エアバッグの車外側を覆う扉部と、を、車両を構成する部材である合成樹脂製のカウルルーバ自体で構成している。そのため、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、従来のケースや扉部等を必要としていた歩行者用エアバッグ装置を車両に搭載させる場合に比して、車両を構成する部品点数を低減することができるとともに、軽量化を図ることもできる。
【0012】
また、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、カウルルーバにエアバッグ装置を組み付けた状態で、カウルルーバを車両に組み付ければ、エアバッグ装置を車両に搭載することができるため、エアバッグ装置の車両への組付工数を低減させることができる。
【0013】
従って、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、車両の部品点数の増加を抑えて、エアバッグ装置の車両への組付工数を低減でき、さらに、軽量化を図ることもできる。
【0014】
また、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、収納部が、板金製のカウルパネルにより、保持されていることから、エアバッグの展開膨張時に作用する下方への押圧力を、剛性の高いカウルパネルで受けることができて、エアバッグを安定して展開させることができる。
【0015】
さらに、請求項3に記載したような構成とすれば、収納部が、下面側を、カウルパネルに当接支持されることとなることから、エアバッグの展開膨張時に作用する下方への押圧力を、一層確実に、カウルパネルで受けることができて、エアバッグを、一層安定して展開させることができる。
【0016】
さらにまた、請求項4に記載したような構成とすれば、収納部が、カウルパネルの上部側の部位に、保持されていることから、カウルパネルに大量の雨水等が溜まった場合にも、雨水が、収納部の部位に到達し難く、雨水に対する収納部の構造を簡素化することができる。
【0017】
さらにまた、請求項5に記載したような構成とすれば、エアバッグの外表面側に、耐水性の良好なシリコンゴムからなるコーティング層が形成されて、インフレーターもエアバッグに周囲を覆われるとともに、さらに、折り畳まれたエアバッグとインフレーターとが、外周側を、耐水性の良好な合成樹脂製のラッピング材により覆われて収納部位内に収納されることから、仮に、収納部内に雨水等が侵入しても、エアバッグとインフレーターとの耐久性を損なうことなく、収納させることができて、雨水に対する収納部の構造を、一層、簡素化することができる。
【0018】
さらにまた、請求項6に記載したような構成とすれば、エアバッグが、カウルパネルに連結固定されていることから、エアバッグの膨張完了時において、エアバッグの展開時の慣性力として、上方側への引張力が強く作用することとなっても、カウルパネルにより、エアバッグを確実に保持できることから、安定して、エアバッグを配置させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、実施形態における前後上下左右方向は、特に断らない限り、車両の上下方向を上下方向とし、車両の前後方向を前後方向とするとともに、車両の前方側から後方側を見た際の左右方向を左右方向として、前後上下左右方向を示すものである。
【0020】
本発明の一実施形態である歩行者用エアバッグ装置Mを図1〜5に示す。エアバッグ装置Mは、図2に示すように、車両Vにおけるフードパネル3とフロントガラス5との間のカウル12の部位に配置されるもので、折り畳まれたエアバッグ60と、エアバッグ60に膨張用ガスを供給するインフレーター50と、を備えて構成されている。
【0021】
そして、実施形態の場合、折り畳まれたエアバッグ60を覆う扉部28を有したエアバッグカバー、及び、エアバッグ60とインフレーター50とを収納させるケースとしての収納部30は、カウルパネル13の上方に配設されるカウルルーバ21から構成されている。
【0022】
なお、カウル12は、車両Vのボディ1側に配置される剛性の高いカウルパネル13と、カウルパネル13の上方のカウルルーバ21と、を備えて構成されている。
【0023】
また、車両Vには、フロントバンパ9に、歩行者との衝突を検知又は予知可能なセンサ10が配設され、図示しないエアバッグ作動回路が、歩行者との衝突を検知又は予知した信号をセンサ10から入力させた際、インフレーター50を作動させて、エアバッグ60を展開膨張させるように、構成されている。
【0024】
カウルパネル13は、図例の場合、三枚の鋼板からなるパネル材16・17・18を溶接させて構成されるとともに、カウルルーバ21側から流入するエアAを室内側に導く流路13aと、カウルルーバ21側から流入する雨水を車両Vの左右両縁から滴下させる流路13bと、を配設させて構成されている。
【0025】
なお、フロントガラス5は、接着剤47を利用して、周縁が、カウルパネル13のボディ1側に固定されている。
【0026】
カウルルーバ21は、ポリプロピレン製とされて、図2に示すように、フードパネル3の後縁3aとフロントガラス5との間の三日月状のスペースに、車両Vの左右方向両縁付近まで延びるように配設されている。カウルルーバ21を構成するポリプロピレン(PP)としては、耐衝撃性に優れたものを使用することが好ましい。具体的には、ホモPP、PPと少量のオレフィン系モノマーとの共重合体、耐衝撃性を付与する繊維性フィラーを含有させたPP、さらには、それらにエチレンプロピレンゴム(EPR)等の軟質成分を含有させたもの等を例示することができる。
【0027】
カウルルーバ21は、一体的に成形されて形成されるとともに、折り畳まれたエアバッグ60の上方側に配置されてエアバッグカバーを構成することとなる上壁部22と、上壁部22の下部側に配置されて折り畳まれたエアバッグ60とインフレーター50とを収納させる収納部30と、を備える構成である。
【0028】
上壁部22は、図6に示すように、上方から見て三日月状として、後端22aに、フロントガラス5の下端を嵌め込むウェザストリップ45を一体的に配設させている。上壁部22における後部側には、雨水やエアA等をカウルパネル13側に流す複数の挿通孔24が形成されている。また、上壁部22には、ワイパ11を貫通させる貫通孔23が、2箇所に形成されている。そして、上壁部22における前部側には、エアバッグ60の展開膨張時に、エアバッグ60に押されて開く扉部28が、配設されている。
【0029】
扉部28は、カウルルーバ21を構成するポリプロピレンと成形時の熱により融着可能なオレフィン系熱可塑性エラストマー若しくはスチレン系熱可塑性エラストマーから形成されるもので(実施形態では、オレフィン系熱可塑性エラストマーから形成される)、カウルルーバ21と一体的に構成されている。また、扉部28は、収納部30の上部を覆うように配置されて、上方から見て三日月状とし、後縁側を、開き時のヒンジ部27として、車両後方側に開くように構成されている。そして、扉部28の周縁におけるヒンジ部27側を除いたU字状の部位には、エアバッグ60に押されて破断可能な薄肉の破断予定部26が形成されている。ヒンジ部27は、インテグラルヒンジとして構成されている。そして、実施形態の場合、扉部28の左右両端28a・28bは、左右のフロントピラー7L・7Rの下端7aより、車両中央側に入り込んだ位置に、配設されている(図2・6参照)。
【0030】
なお、この扉部28は、開き完了時、フロントガラス5の下方で、車両の略左右方向に沿って配設される初期位置のワイパ11の前部側を覆うように、配設されている(図3・4の二点鎖線参照)。
【0031】
収納部30は、折り畳まれたエアバッグ60及びインフレーター50の前後左右を覆う4つの側壁部32・34・35・36から構成される周壁部31と、周壁部31で囲まれる部位の下部側を塞ぐように配設される底壁部38と、を備えて構成されている。前側壁部32は、上壁部22の前端から下方に延びるように形成されており、左・右側壁部35・36及び後側壁部34は、扉部28の左右両端及び後端付近から、下方に延びるように形成されている(図3・7〜9参照)。前側壁部32は、図3・4に示すように、フードパネル3の後端3a側に上下方向に配設される後縦壁部3dに対して、車両後方側から接近して対向するように、上下方向に沿って配設されている。
【0032】
また、前側壁部32は、下端側に、前方側へ屈曲するように配設される鍔部33を備えている。鍔部33には、フードパネル3の後端3a側の下面3bをシールするためのウェザストリップ46が、組み付けられている。このウェザストリップ46は、フードパネル3の後端3a側における左右方向の略全域に、圧接可能に配設されている。また、鍔部33には、エアバッグ60の後述する取付片68を、カウルルーバ21とともにカウルパネル13に連結固定させるためのボルト74を挿通可能な挿通孔33aが、複数箇所(実施形態では4箇所)に形成されている。
【0033】
底壁部38は、車両左右方向に沿って複数個に分割されて形成されるもので(図5・9参照)、各分割底壁部39は、後端側に形成されるヒンジ部40を介して、後側壁部34と連続的に形成される構成である。すなわち、各分割底壁部39は、図7の二点鎖線に示すように、カウルルーバ21製造時に、後側壁部34と同一面を構成するように形成され、エアバッグ60及びインフレーター50を収納させる際に、周壁部31の下部側を覆うように、ヒンジ部40の部位で折曲されることとなる。
【0034】
また、底壁部38において、左右方向の中央付近に配置される分割底壁部39Aは、図4・5に示すごとく、インフレーター50を収納可能なように、周囲の分割底壁部39より下部側に位置して、配設されている。そして、分割底壁部39Aの後部側に配置される後側壁部34の部位には、分割底壁部39Aの後端と連結される延設壁部34aが、後側壁部34から下方に延設されて形成されており、分割底壁部39Aは、ヒンジ部40を介して、延設壁部34aと連続的に形成される構成である。また、分割底壁部39Aは、前端側に、上方に延びるように形成される縦壁部41を備えている。この縦壁部41は、車両搭載時に、前側壁部32と略面一となるように、形成されている。さらに、分割底壁部39Aにおいて、インフレーター50の後述するコネクタ52側となる右縁付近には、収納部30内への雨水等の侵入を防ぐためのリブ39aが、上方に突出するように、配設されている。そして、実施形態では、延設壁部34aと分割底壁部39Aと縦壁部41とで囲まれる部位が、インフレーター収納部30bとされ、インフレーター収納部30bの上方側において、周壁部31と各分割底壁部39とで囲まれる部位が、折り畳まれたエアバッグ60を収納するエアバッグ収納部30aとされている。インフレーター収納部30bは、右方側部位の下端付近を、リブ39aにより塞がれているが、左方側部位は、開口とされている(図5参照)。
【0035】
各分割底壁部39・39Aの下方側には、図3・4に示すごとく、カウルパネル13の上部側部位14を構成するパネル材17が、各分割底壁部39・39Aと当接するように、配設されている。このパネル材17は、インフレーター収納部30bが配置される部位においても、分割底壁部39Aの下面側に当接するように、部分的に凹ませた形状とされている。また、各分割底壁部39には、それぞれ、突起部39bが、下方に突出して形成されている(図3・9参照)。この突起部39bは、図3に示すように、カウルパネル13に形成される挿通孔13eに挿通されるもので、カウルルーバ21をカウルパネル13に取り付ける際に、パネル17に対しての位置決めとなるように、形成されている。また、分割底壁部39Aの所定位置には、図4・9に示すように、インフレーター50の後述するボルト56bを挿通させるための挿通孔39cが、形成されている。
【0036】
各分割底壁部39の前端側及び縦壁部41の上端側には、鍔部33と当接するように、屈曲して配設される鍔部43が、形成されている。そして、この鍔部43には、図4・9に示すように、鍔部33に形成される挿通孔33aと連通される挿通孔43aが、形成されている。この挿通孔43aは、エアバッグ60の後述する取付片68を、カウルルーバ21とともにカウルパネル13に連結固定させるためのボルト74を挿通させるためのものである。
【0037】
インフレーター50は、図5に示すように、軸方向を車両の左右方向に沿って配設されるシリンダタイプとして構成され、略円柱状の本体51とディフューザー54とを備えて構成されている。本体51は、円柱状の一般部51aと、一般部51aの一端側に配置される頭部51bと、を備え、頭部51bの外周側に複数のガス吐出口51cを配設させて、構成されている。また、頭部51bの先端側と一般部51aの元部側近傍とには、外方に突出するフランジ部51d・51dが、配設されている。これらのフランジ部51dは、ディフューザー54の後述する挟持部54cを圧接させて、ディフューザー54を本体51に固定するためのものである。そして、一般部51aにおける元部側端面には、作動信号入力用のリード線53を結線させたコネクタ52が、接続されることとなる。
【0038】
ディフューザー54は、本体51を覆い可能に、頭部51b側の端部を閉塞させた略円筒状とされるとともに、頭部51bから離れた側の端部を、本体51の一般部51aを挿通可能に開口させて構成されている。また、ディフューザー54の周壁部54aには、本体51のガス吐出口51cから吐出される膨張用ガスを流出可能な複数のガス流出口54bが、車両搭載状態の周壁部54aにおける上方側の面に、形成されている。さらに、ディフューザー54の周壁部54aにおける両端付近には、本体51を保持するための挟持部54cが、形成されている。各挟持部54cは、周壁部54aの全周にわたって、周壁部54a内に湾曲して、フランジ部51dの外周面側に圧接させるように、塑性変形させて構成されている。そして、本体51のディフューザー54への固定は、後端側の開口から、頭部51bを先頭にして、本体51を挿入させ、各挟持部54cを、本体51におけるフランジ部51dの外周面側に圧接させるように塑性変形させれば、本体51をディフューザー54に固定することができる。
【0039】
また、ディフューザー54におけるコネクタ52側となる端部には、図5に示すごとく、開口を覆うように、合成樹脂又はゴムからなるシールキャップ55が、配設されている。このシールキャップ55は、ディフューザー54内に雨水等が侵入するのを防止するもので、略円板状とされて、中央付近に、コネクタ52を挿通可能な穴部55aを備えている。
【0040】
そして、インフレーター50は、保持環部56aと、保持環部56aから突出するボルト56bと、を備えて構成される取付ブラケット56を利用して、カウルルーバ21の分割底壁部39A側に固定されることとなる。保持環部56aは、エアバッグ60の後述する流入口部64を外装させた状態のインフレーター50を、外周側から挟持可能とされている。実施形態では、取付ブラケット56は、インフレーター50の先端側と後端側との2箇所に、配設されている。そして、エアバッグ60の流入口部64を外装させたインフレーター50に、取付ブラケット56の保持環部56aを外装させ、分割底壁部39A・カウルパネル13・補強パネル19の挿通孔39c・13c・19aを挿通させて補強パネル19から突出したボルト56bにナット57を螺合させて、インフレーター50をエアバッグ60とともに、分割底壁部39Aを介してカウルパネル13に取付固定している。なお、補強パネル19は、インフレーター50の分割底壁部39Aへの固定を強固にするために、配設されている。また、実施形態では、インフレーター50は、エアバッグ60の外周側を覆う後述するラッピング材72により外周側を覆われた状態で、カウルパネル13に取付固定されることとなる。
【0041】
エアバッグ60は、図1・2・10・11に示すように、膨張用ガスを流入させて膨らむ膨張部61と、膨張部61の周囲に配置されて膨張用ガスを流入させない周縁部67と、を備えて構成されている。膨張部61は、内部に膨張用ガスを流入させれば、表側壁部61aと裏側壁部61bとを離すように、膨張することとなる。そして、エアバッグ60は、表側壁部61aと裏側壁部61bとの平面形状を同一として、壁部61a・61b相互を重ねれば平らに展開可能な平面エアバッグタイプとしており、ポリエステル糸・ポリアミド糸等を使用した袋織りにより製造されている。また、エアバッグ60の外表面側には、図11に示すように、耐水性の良好なシリコンゴム等からなるコーティング層70が、形成されている。そして、エアバッグ60は、折り畳まれた状態で、外周側を、耐水性の良好な合成樹脂製のシート材からなるラッピング材72により覆われて、収納部30内に収納されている(図3〜5参照)。具体的には、ラッピング材72としてのシート材は、耐水性の良好なポリエチレンやポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等で形成することが好ましく、実施形態では、ポリエチレン製のシート材が使用されている。
【0042】
なお、エアバッグ60の展開膨張完了時、裏側壁部61bは、その大部分が車両V側に配置され、表側壁部61aは、その大部分が、車両V側から離れた自由空間側に配置されることとなる。
【0043】
そして、エアバッグ60の膨張部61は、図1・2・10に示すように、車両非搭載状態での展開膨張完了時の形状を、正面から見て、左右方向に幅広とした略U字形状に形成されている。左右両側に配置される縦膨張部62・62は、エアバッグ60の展開膨張完了時に、左右のフロントピラー7L・7Rの前面を覆うこととなる。縦膨張部62・62の下端側を連結するように配置される横膨張部63は、エアバッグ60の展開膨張完了時、車両Vの車幅方向に略沿って、フロントガラス5の下端前面付近からフードパネル3の後端3aの上面3c付近までのカウルルーバ21の上方付近を覆うこととなる。
【0044】
また、横膨張部63の前縁63a側(車両搭載状態における膨張完了時では、下縁側となる)には、前方へ延びて先端側を車両右方側に屈曲して形成される流入口部64が、配設されている。流入口部64は、インフレーター50を挿入可能に、端部を開口64aとされている。この流入口部64は、インフレーター50からの膨張用ガスを、エアバッグ60の膨張部61内に流入させるものであり、インフレーター50に外装されて、取付ブラケット56・56を利用して、インフレーター50に連結されている。
【0045】
また、横膨張部63の前縁63a側における周縁部67の部位には、板状に延びる取付片68が、4箇所に形成されている。各取付片68には、取付孔68aが形成されている。各取付片68は、カウルルーバ21をカウルパネル13に固定させるためのボルト74を、取付孔68aに挿通させてナット75を螺合させることにより、カウルルーバ21とともに、カウルパネル13に連結固定されるものである(図3参照)。
【0046】
次に、歩行者用エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について述べる。まず、エアバッグ60を折り畳む。具体的には、表側・裏側壁部61a・61b相互を重ねた状態から、図10の二点鎖線で示すように、横膨張部63の前縁63aと平行な山折りや谷折りの折目Cを付けて、前縁63aに接近させるように、流入口部64と取付片68の部位とを除いて、蛇腹折りする。そして、収納部30内に収納可能なように、エアバッグ60の左右両端60a・60b側を、蛇腹折りで折り重ねた側(横膨張部63の後縁63b側)に折り返して、エアバッグ60の折り畳みを完了する。同時に、エアバッグ60の流入口部64に、開口64a側からインフレーター50を挿入させ、各取付ブラケット56の保持環部56aを、流入口部64を外装させたインフレーター50に外装させて、インフレーター50をエアバッグ60の流入口部64に接続させる。
【0047】
次いで、折り畳まれたエアバッグ60と、ボルト56bの部位を除いたインフレーター50と、の外周側を略全面にわたって覆うように、ラッピング材72により、エアバッグ60とインフレーター50とを包む。その後、予めウェザストリップ45を組み付けて、上下を反転させた状態のカウルルーバ21において周壁部31により周囲を囲まれた収納部30内に、上下を反転させてボルト56bを上方に突出させたインフレーター50と折り畳まれたエアバッグ60とを収納させる。そして、各分割底壁部39・39Aを、ヒンジ部40の部位で折曲させて、収納部30を塞ぐように配置させる。このとき、分割底壁部39Aは、ボルト56bを挿通孔39aから突出させるように、配置されることとなる。そして、挿通孔39aから突出したボルト56bに、図示しないスプリングワッシャを、嵌めておく。その後、鍔部33・43の先端側を、ウェザストリップ46に挿入させるようにして、ウェザストリップ46をカウルルーバ21に組み付け、エアバッグ装置Mとともにカウルルーバ21をアッセンブリー化する。
【0048】
そして、アッセンブリー化されたカウルルーバ21を、各分割底壁部39に形成される突起部39bを挿通孔13eに挿通させるようにして、底壁部38の下面側がカウルパネル13の上部側部位14としてのパネル材17に当接支持されるように、組み付け、ボルト56bをカウルパネル13・補強パネル19の挿通孔13c・19aに挿通させて、補強パネル19から突出したボルト56bをナット57止めする。同時に、カウルルーバ21を、鍔部33・43の部位において、エアバッグ60の各取付片68とともに、カウルパネル13に、ボルト74止めする。次いで、リード線53を結線させたコネクタ52を、インフレーター50の外周側を覆うラッピング材72を破るようにして、インフレーター50の本体51に接続させれば、エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0049】
そして、エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後に、ワイパ11のアームやフードパネル3等を車両Vに搭載させることとなる。
【0050】
歩行者用エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後、リード線53を経て、インフレーター50の本体51に作動信号が入力されれば、インフレーター50のガス吐出口50cから膨張用ガスが吐出され、エアバッグ60が、流入口部64から膨張用ガスを流入させて膨張する。そのため、カウルルーバ21の扉部28が、エアバッグ60に押されて、周縁の破断予定部26を破断させ、ヒンジ部27を回転中心として、車両Vの後方側に開き、エアバッグ60が、展開膨張することとなる。
【0051】
また、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ60が展開膨張を完了させれば、図1・2の二点鎖線に示すように、縦膨張部62・62が、フロントピラー7L・7Rの前面を覆い、横膨張部63が、フロントガラス5の下端前方付近におけるカウルルーバ21の上方を覆うこととなる。
【0052】
そして、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、車両Vを構成する部材である合成樹脂製のカウルルーバ21が、エアバッグ60とインフレーター50とを収納させる収納部30と、収納部30の上部側を覆うとともに、収納されたエアバッグ60の展開膨張時に、エアバッグ60に押されて開き可能とされる扉部28と、を備える構成である。すなわち、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、インフレーター50とエアバッグ60とを収納する収納部30と、エアバッグ60の車外側を覆う扉部28と、を、車両Vを構成する部材である合成樹脂製のカウルルーバ21自体で構成している。そのため、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、従来のケースや扉部等を必要としていた歩行者用エアバッグ装置を車両に搭載させる場合に比して、車両Vを構成する部品点数を低減することができるとともに、軽量化を図ることもできる。
【0053】
また、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、カウルルーバ21にエアバッグ装置Mを組み付けた状態で、カウルルーバ21を車両に組み付ければ、エアバッグ装置Mを車両に搭載することができるため、エアバッグ装置Mの車両への組付工数を低減させることができる。
【0054】
従って、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、車両Vの部品点数の増加を抑えて、エアバッグ装置Mの車両Vへの組付工数を低減でき、さらに、軽量化を図ることもできる。
【0055】
また、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、収納部30が、板金製のカウルパネル13により、保持されていることから、エアバッグ60の展開膨張時に作用する下方への押圧力を、剛性の高いカウルパネル13で受けることができて、エアバッグ60を安定して展開させることができる。
【0056】
さらに、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、収納部30の底壁部38が、下面側を、カウルパネル13に当接支持されることとなることから、エアバッグ60の展開膨張時に作用する下方への押圧力を、一層確実に、カウルパネル13で受けることができて、エアバッグ60を、一層安定して展開させることができる。
【0057】
さらにまた、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、収納部30が、カウルパネル13の上部側の部位14により、保持されていることから、カウルパネル13に大量の雨水等が溜まった場合にも、雨水が、収納部30の部位に到達し難い。そのため、雨水に対する収納部30の構造を簡素化することが可能となって、実施形態のごとく、底壁部38を分割して配置させることが可能となる。
【0058】
さらにまた、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ60が、外表面側に耐水性を付与するコーティング層70を配設させて構成されるとともに、折り畳まれた状態で、外周側を、耐水性を備えたラッピング材72に覆われて、防水処理を施された状態で収納部30内に収納されている。そして、インフレーター50もエアバッグ60に周囲を覆われるとともに、ラッピング材72に周囲を覆われて、収納部30内に収納されている。そのため、仮に、収納部30内に雨水等が侵入しても、エアバッグ60とインフレーター50との耐久性を損なうことなく、収納させることができて、雨水に対する収納部30の構造を、一層、簡素化することができる。
【0059】
さらにまた、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ60が、取付片68の部位と、インフレーター50における取付ブラケット56が配設される部位と、で、カウルパネル13に連結固定されていることから、エアバッグ60の膨張完了時において、エアバッグ60の展開時の慣性力として、上方側への引張力が強く作用することとなっても、カウルパネル13により、エアバッグ60を確実に保持できることから、安定して、エアバッグ60を配置させることができる。
【0060】
なお、実施形態のエアバッグ装置Mでは、カウルルーバ21として、一部材からなるものを使用しているが、例えば、カウルルーバとして、扉部を備える上部側部材と、収納部を構成する下部側部材と、の二部材を組み付けて構成されるものを使用してもよい。
【0061】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、扉部28が、オレフィン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性エラストマー等の軟質合成樹脂から形成されている。そのため、扉部28が、車両左右方向に沿って長尺状とされ、かつ、車両前方側に突出するような湾曲形状とされていても、扉部28自体を構成する材料が若干伸縮可能であることから、扉部28の開き時に、エアバッグ60に押されて延び、部分的に破損することなく、円滑に開くこととなる。そのため、エアバッグ60を迅速に展開膨張させることができる。勿論、扉部28の形成材料はこれに限られるものではなく、円滑に開き可能であれば、カウルルーバ21とともにポリプロピレンにより、一体的に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施形態の歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の側面図である。
【図2】同実施形態のエアバッグ装置を搭載させた車両の平面図である。
【図3】同実施形態のエアバッグ装置の車両前後方向に沿った概略縦断面図であり、図2のIII−III部位に対応する。
【図4】同実施形態のエアバッグ装置の車両前後方向に沿った概略縦断面図であり、図2のIV−IV部位に対応する。
【図5】同実施形態のエアバッグ装置の車両左右方向に沿った概略縦断面図であり、図4のV−V部位に対応する。
【図6】同実施形態のエアバッグ装置に使用するカウルルーバの平面図である。
【図7】カウルルーバの部分拡大端面図であり、図6のVII−VII部位に対応する。
【図8】カウルルーバの部分拡大端面図であり、図6のVIII−VIII部位に対応する。
【図9】同実施形態のエアバッグ装置に使用するカウルルーバの底面図である。
【図10】同実施形態のエアバッグ装置に使用するエアバッグを単体で膨張させた状態を示す平面図である。
【図11】エアバッグの断面図であり、図9のXI−XI部位に対応する。
【符号の説明】
3…フードパネル、
5…フロントガラス、
7…フロントピラー、
11…ワイパ、
12…カウル、
13…カウルパネル、
14…上部側部位、
21…カウルルーバ、
28…扉部、
30…収納部、
31…周壁部、
38…底壁部、
39・39A…分割底壁部、
50…インフレーター、
60…エアバッグ、
68…取付片、
V…車両、
M…歩行者用エアバッグ装置。
Claims (6)
- エアバッグが、車両のフードパネルとフロントガラスとの間に配置されるカウルの部位に、折り畳まれて収納されるとともに、インフレーターから吐出される膨張用ガスを流入させて、上方へ向かって突出するように展開膨張して、歩行者を保護可能とされ、
前記カウルが、前記車両のボディ側に配置される板金製のカウルパネルと、該カウルパネルの上方に配置される合成樹脂製のカウルルーバと、を備える構成の歩行者用エアバッグ装置であって、
前記カウルルーバが、一体的に成形されて形成されるとともに、折り畳まれた前記エアバッグの上方側に配置される上壁部と、該上壁部の前部側における下部側に配置されて折り畳まれた前記エアバッグと前記インフレーターとを収納させる収納部と、を備える構成とされ、
前記上壁部の後部側に、雨水やエアを前記カウルパネル側に流す複数の挿通孔が、形成され、
前記上壁部の前部側に、前記収納部の上部側を覆うとともに、周縁に薄肉の破断予定部と、開き時の回転中心となるインテグラルヒンジからなるヒンジ部と、を配設させた構成とされて、収納された前記エアバッグの展開膨張時に、前記エアバッグに押されて、前記破断予定部を破断させつつ前記ヒンジ部を回転中心として開き可能な扉部が、形成されて、
前記収納部が、前記カウルパネルにより、保持されていることを特徴とする歩行者用エアバッグ装置。 - 前記収納部が、折り畳まれた前記エアバッグ及び前記インフレーターの前後左右を覆う前・後・左・右側壁部から構成される周壁部と、該周壁部で囲まれる部位の下部側を塞ぐように配設される底壁部と、を備える構成とされ、
前記底壁部が、前記後側壁部との間に折曲可能なヒンジ部を設けて、前記後側壁部と同一面を形成するように、前記後側壁部と連続的に成形されて形成され、
前記収納部が、前記底壁部を、前記ヒンジ部の部位で折曲させて前記周壁部の下部側を塞ぐように配設させて、構成されていることを特徴とする請求項1記載の歩行者用エアバッグ装置。 - 前記カウルルーバの収納部が、下面側を、前記カウルパネルに当接支持されていることを特徴とする請求項1又は2記載の歩行者用エアバッグ装置。
- 前記カウルルーバの収納部が、前記カウルパネルの上部側の部位に、保持されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の歩行者用エアバッグ装置。
- 前記エアバッグの外表面側に、耐水性の良好なシリコンゴムからなるコーティング層が形成され、
前記インフレーターが、前記エアバッグにより周囲を覆われ、
折り畳まれた前記エアバッグと前記インフレーターとが、外周側を、耐水性の良好な合成樹脂製のラッピング材により覆われて、前記収納部内に収納されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の歩行者用エアバッグ装置。 - 前記エアバッグが、前記カウルルーバの収納部とともに、前記カウルパネルに連結固定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の歩行者用エアバッグ装置。
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