JP3924207B2 - 応力の測定方法および応力測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁等の構造物を構成する鋼材にどの程度の応力が作用しているかを測定する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、橋梁等の構造物を構成している鋼材について、その鋼材にどの程度の内在応力が作用しているかを定量的に測定することは、該構造物の安全性を評価するうえで重要なことである。
【0003】
内在応力を測定する方法のひとつに磁歪による応力の測定方法が挙げられる。この応力測定方法は、例えば特開平5-231961号公報に開示されているように、強磁性体である鋼材に荷重が作用すると磁化特性に異方向性が生じる(荷重の作用方向に磁化されやすくなり、荷重の作用方向に垂直な方向に磁化されにくくなる)という現象を利用し、両方向の磁化特性の差を磁歪センサによって検出して、鋼材に作用する内在応力の方向とその大きさとを測定するというものである。
【0004】
上記のような応力測定方法を高精度に実施するためには、鋼材の応力感度を可能な限り正確に承知しておくことが重要であるが、既設の構造物、つまり実構造物の鋼材については応力感度が不明である場合がほとんどである。
【0005】
応力感度は、被測定物である鋼材と磁歪センサとの間隔(これを"リフトオフ"という)に影響を受けて変化する。一般に、実構造物には防錆、防蝕のために塗装が施されるが、この塗膜の厚さは一定ではなくばらつきを生じている。そのため応力感度を正確に認知しようとすれば、測定個所の塗膜を剥がしてリフトオフを測定するか、塗膜の上から膜厚を計測できる膜厚計を使用する必要がある。
【0006】
しかしながら、塗膜を剥がしてリフトオフを測定する場合は塗膜の除去作業を手作業で行わなければならず、作業量が増大する。応力測定を複数箇所にわたって実施する場合はなおさらである(複数箇所に実施する場合、1箇所の塗膜だけ除去してリフトオフを測定し、他の測定個所については除去作業を行わずに当該リフトオフ量を流用したとしても、上記のように膜厚は一定ではないため、正確ではない)。
【0007】
また、膜厚計(例えば超音波パルス式距離計)を使用する場合は塗膜を除去する必要はないが、この場合も膜厚計を使って測定作業を行わなければならず、作業量は少なからず増大する。
【0008】
このような、塗膜のばらつきに起因してリフトオフを確定し難いという事情を考慮して、リフトオフによる影響を受けることなく被測定物に作用する応力を測定する方法が特開平05-231960号、特開平06-307948号、特願2000-02600号の各公報に開示されている。この応力測定方法においては、被測定物について、リフトオフに対するリフトオフ電圧(励磁によって誘起される起電力)の関係、ならびにリフトオフと磁歪感度(応力感度)との関係を求め、さらにこれらの関係からリフトオフ電圧と磁歪感度との関係をあらかじめ求めておく。
【0009】
被測定物に作用している応力の測定時には、磁歪センサによってリフトオフ電圧を測定し、あらかじめ求めておいたリフトオフ電圧と磁歪感度との関係をもとに測定電圧値に対応する磁歪感度を求める。そして、測定電圧値および磁歪感度をもとに応力を算出するというものである。
【0010】
上記の応力測定方法以外にも、次のような方法が提案されている。
まず、事前に被測定物と同材質の試料を対象として、該試料に任意の応力を作用させながら磁歪センサと試料とのリフトオフを段階的に変化させ、各段階において磁歪センサの励磁用コイルに通電し、通電によって磁歪センサの励磁用コイルに発生する励磁電圧と電流、および励磁によって検出用コイルに誘起される出力電圧を検出する。これをもとに、まず、リフトオフの各段階における出力電圧と応力との関係を求める。図8はリフトオフ(L)を2.03mm(◆)、0.67mm(×)、0.25mm(■)、0.05mm(●)の4段階に変化させたときの出力電圧(E)と応力(σ)との関係を示すグラフである。
【0011】
次に、図8に示す出力電圧(E)と応力(σ)との関係から、リフトオフ(L)の各段階におけるインピーダンス(Z)とリフトオフ(L)との関係、ならびにリフトオフ(L)と応力感度(S)との関係を求める。図9、図10はこれらの関係を示すグラフである。なお、この場合のインピーダンス(Z)とは、励磁コイルにかけられた励磁電圧を励磁電流で除した値であり、応力感度(S)とは出力電圧(E)を対象物に作用させた応力(σ)で除した値である。
【0012】
さらに、図9に示すインピーダンス(Z)とリフトオフ(L)との関係、ならびに図10に示すリフトオフ(L)と応力感度(S)との関係から、試料に関するインピーダンス(Z)と応力感度(S)との関係を求める。図11はインピーダンス(Z)と応力感度(S)との関係を示すグラフである。以上が被測定物に作用する内在応力を測定するにあたり事前に必要となる作業である。
【0013】
実際の測定に際しては、磁歪センサをリフトオフ不明のままで近接させ、励磁用コイルに通電して被測定物を励磁し、通電した励磁電流と通電によって励磁用コイルに発生する励磁電圧、および励磁によって検出用コイルに誘起される出力電圧(E)を検出する。
次に、磁歪センサに通電した励磁電流値と通電によって発生する励磁電圧とからインピーダンス値を算出する。
続いて、あらかじめ取得しておいたインピーダンス(Z)と応力感度(S)との関係(図11参照)を参照してインピーダンス値に対応する応力感度(S)を抽出する。被測定物に作用する内在応力は出力電圧(E)を応力感度(S)で除した値として与えられるから、これによって実際に被測定物に作用している内在応力の大きさが求まることになる。
【0014】
上記のような応力の測定方法によれば、被測定物と同材質の試料または被測定物そのものを使って被測定物に関するインピーダンス(Z)と応力感度(S)との関係を事前に取得しておき、実際の測定に際してこの関係を利用して応力感度(S)を特定することにより、リフトオフが不明のままでも、既設の橋梁を構成する被測定物に実際に作用している内在応力を測定することができる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の応力測定方法は、図8に示すように出力電圧(E)と応力(σ)との関係が直線で近似できるものについては有効であるが、被測定物には、図8のような特性を示すものだけでなく、直線で近似することが難しく、もし近似したとすれば誤差を大きく含むことになる特性を示すものも少なくない。こういった特性を示す被測定物に対しては、図9に示すインピーダンス(Z)とリフトオフ(L)との関係から実際のリフトオフ(L)の大きさを求め、そのリフトオフ(L)における出力電圧(E)と応力(σ)との関係を測定するか、出力電圧(E)と応力(σ)との関係から推定する方法が考えられるが、いずれも手間がかかり現実的ではない。
【0016】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、被測定物の特性に関係なく、磁歪センサにおける測定誤差を少なくして正確に応力測定を行うことができる応力測定方法を提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための手段として、次のような構成の応力の測定方法および応力測定装置を採用する。すなわち本発明に係る請求項1記載の応力の測定方法は、
励磁用コイル、リフトオフ検出用コイルおよび応力検出用コイルを有する磁歪センサを使って被測定物に作用する応力を測定する応力の測定方法であって、
前記被測定物またはこれと同材質の試料を対象として、前記磁歪センサと前記対象物との間隔を段階的に変化させ、各段階において前記対象物に任意の応力を作用させながら前記励磁用コイルに通電して前記対象物を励磁し、前記応力検出用コイルに発生する出力電圧を検出し、前記各段階ごとに前記出力電圧と前記対象物に作用させた応力との関係を求め、この関係から前記対象物に前記各段階に共通する応力基準値を作用させたときの前記各段階ごとの出力電圧基準値を設定し、前記各段階ごとに前記出力電圧基準値に対する前記出力電圧の比すなわち相対出力電圧を求めるとともに前記応力基準値に対する前記対象物に作用させた応力の比すなわち相対応力を求め、前記被対象物に関する前記相対出力電圧と前記相対応力との関係を求める一方、
前記対象物を励磁するべく通電した励磁電流と前記リフトオフ検出用コイルに発生した電圧とから前記各段階におけるインピーダンスを算出し、既知のインピーダンス基準値に対する前記インピーダンスの比すなわち相対インピーダンスを求め、さらに各段階における相対インピーダンスと前記間隔との関係、ならびに該間隔と前記出力電圧基準値との関係を求め、さらにこれらの関係から前記対象物に関する前記相対インピーダンスと前記出力電圧基準値との関係を求めておき、
実際の測定にあたって未知の応力が作用している状態の前記被測定物に前記磁歪センサを近接させ、
前記励磁用コイルに通電して前記被測定物を励磁し、通電によって前記リフトオフ検出用コイルに発生する電圧、および励磁によって前記応力検出用コイルに誘起される出力電圧を検出し、前記磁歪センサに前記被測定物を励磁するべく通電した励磁電流と前記リフトオフ検出用コイルに発生した電圧とからインピーダンスを算出し、
該算出されたインピーダンスを前記インピーダンス基準値で除して相対インピーダンスを算出し、該算出された相対インピーダンスに対応する出力電圧基準値を、あらかじめ求めておいた前記相対インピーダンスと前記出力電圧基準値との関係を参照して推定し、
前記出力電圧を該推定された出力電圧基準値で除して相対出力電圧を算出し、該算出された相対出力電圧に対応する相対応力を、あらかじめ求めておいた前記相対出力電圧と前記相対応力との関係を参照して推定し、
該推定された相対応力に前記応力基準値を乗じることにより前記未知の応力を算出することを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の応力測定装置は、励磁用コイル、リフトオフ検出用コイルおよび応力検出用コイルを有する磁歪センサと;
被測定物またはこれと同材質の試料を対象として、前記磁歪センサと前記対象物との間隔を段階的に変化させ、各段階において前記対象物に任意の応力を作用させながら前記励磁用コイルに通電して前記対象物を励磁し、前記応力検出用コイルに発生する出力電圧を検出し、前記各段階ごとに前記出力電圧と前記対象物に作用させた応力との関係を求め、この関係から前記対象物に前記各段階に共通する応力基準値を作用させたときの前記各段階ごとの出力電圧基準値を設定し、前記各段階ごとに前記出力電圧基準値に対する前記出力電圧の比すなわち相対出力電圧を求めるとともに前記応力基準値に対する前記対象物に作用させた応力の比すなわち相対応力を求めることによって得られた前記被対象物に関する前記相対出力電圧と前記相対応力との関係、
前記対象物を励磁するべく通電した励磁電流と前記リフトオフ検出用コイルに発生した電圧とから前記各段階におけるインピーダンスを算出し、既知のインピーダンス基準値に対する前記インピーダンスの比すなわち相対インピーダンスを求め、さらに各段階における相対インピーダンスと前記間隔との関係、ならびに該間隔と前記出力電圧基準値との関係を求めることによって得られた前記対象物に関する前記相対インピーダンスと前記出力電圧基準値との関係、以上2つの関係を記憶する記憶手段と;
実際の測定にあたって未知の応力が作用している被測定物を励磁するべく前記磁歪センサに通電した励磁電流と該通電によって前記リフトオフ検出用コイルに発生した電圧とからインピーダンスを算出し、該算出されたインピーダンスを前記インピーダンス基準値で除して相対インピーダンスを算出し、該算出された相対インピーダンスに対応する出力電圧基準値を、前記記憶手段に記憶された前記相対インピーダンスと前記出力電圧基準値との関係を参照して推定し、前記励磁によって前記応力検出用コイルに誘起される出力電圧を該推定された出力電圧基準値で除して相対出力電圧を算出し、該算出された相対出力電圧に対応する相対応力を、あらかじめ求めておいた前記相対出力電圧と前記相対応力との関係を参照して推定し、該推定された相対応力に前記応力基準値を乗じることにより前記未知の応力を算出する演算手段と;
を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、直線では近似し得ない特性を示す被測定物についても、磁歪センサにおける測定誤差を少なくして正確に応力測定を行うことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明に係る応力の測定方法および応力測定装置の実施形態を図1ないし図7に示して説明する。
図1には本発明に係る応力測定装置を示しており、符号1は既設の橋梁を構成している鋼材(被測定物)、2は磁歪センサ、3は出力信号を処理する解析用コンピュータである。磁歪センサ2は鋼材1に近接して配置されている。
【0021】
磁歪センサ2は、図2に示すように、一対の軸部21a,21bからなるコア21、およびコア21の配列方向に直交して配置された同じく一対の軸部22a,22bからなるコア22を一体化したセンサ本体23に、コア21に導線24および導線27を巻回して励磁用コイルを構成し、コア22には導線25を巻回して応力検出用コイルを構成したものである。
【0022】
センサ本体23には、円柱状の基部26に、軸部21a,22a,21b,22bが基部26の中心軸線を取り囲むように立設されている。センサ本体23は、円柱状の基体の一方の端面に中心軸線方向から十字に切り込みを入れることによって形成される。
【0023】
励磁用コイルを構成するコア21の軸部21aまたは軸部21bの少なくともいずれか一方には、導線24とは独立して導線27が巻回されてリフトオフ検出用コイルが構成されている。磁歪センサ2を被測定物に近接させて励磁用コイルに通電すると、被測定物が磁化されることによって応力検出用コイルにはリフトオフと励磁電流とに見合った起電力が発生するが、これと同時にリフトオフ検出用コイルにもリフトオフと励磁電流とに見合った起電力(これを"リフトオフ電圧"という)が発生するようになっている。
【0024】
解析用コンピュータ3には、あらかじめ求めておいた鋼材1に関する情報を記憶する記憶手段31と、鋼材1を励磁するべく磁歪センサ2に通電した励磁電流、通電によってリフトオフ検出用コイルに発生する電圧、および励磁によって応力検出用コイルに誘起される出力電圧、ならびに記憶手段31に記憶された情報をもとに鋼材1に作用する応力の大きさを算出する演算手段32とが設けられている。
【0025】
記憶手段31に記憶される情報は、次のようにしてあらかじめ求められる。
まず、鋼材1と同材質の試料(または鋼材1そのものでもよい)を対象として、磁歪センサ2と該試料とのリフトオフ(L)を段階的に変化させ、各段階において試料に任意の応力を作用させながら励磁用コイルに励磁電流(I)を通電して試料を励磁し、応力検出用コイルに発生する出力電圧(E)を検出する。これをもとに、まず、リフトオフ(L)の各段階ごとに出力電圧(E)と試料に作用させた応力(σ)との関係を求める。図3はリフトオフ(L)を1.98mm(◇)、1.03mm(△)、0.62mm(□)、0.41mm(○)の4段階に変化させたときの出力電圧(E)と試料に作用させた応力(σ)との関係を示すグラフである。ここで採用した試料は、図3からわかるように直線で近似することが難しい特性を示している。
【0026】
次に、図3に示す出力電圧と応力との関係から、リフトオフ(L)の各段階に共通する応力基準値(σm)を試料に作用させたときの出力電圧基準値(Em)を各段階ごとに推定する。ここでは応力基準値(σm)を180MPaとしており、リフトオフ;1.98mmのときの出力電圧基準値はおよそ0.65ボルト、リフトオフ;1.03mmのときの出力電圧基準値はおよそ1.50ボルト、リフトオフ;0.62mmのときの出力電圧基準値はおよそ2.48ボルト、リフトオフ;0.41mmのときの出力電圧基準値はおよそ3.70ボルトである。
【0027】
続いて、リフトオフ(L)の各段階において、出力電圧基準値(Em)に対する出力電圧(E)の比すなわち相対出力電圧(Er;=E/Em)を求めるとともに応力基準値(σm)に対する試料に作用させた応力(σ)の比すなわち相対応力(σr;=σ/σm)を求める。
【0028】
図4は相対出力電圧(Er)と相対応力(σr)との関係を示すグラフである。図4には、リフトオフ;1.98mmのときの相対出力電圧(Er)と相対応力(σr)との関係が(◇)で、リフトオフ;1.03mmのときの相対出力電圧(Er)と相対応力(σr)との関係が(△)で、リフトオフ;0.62mmのときの相対出力電圧(Er)と相対応力(σr)との関係が(□)で、リフトオフ;0.41mmのときの相対出力電圧(Er)と相対応力(σr)との関係が(○)でそれぞれ示される。リフトオフの各段階を共通して評価した相対出力電圧(Er)と相対応力(σr)との関係は、相対応力(σr)をy、相対出力電圧(Er)をxとすると、[y=ax4+bx3+cx2+dx+e]なる4次式で近似される曲線で表される。
【0029】
次に、試料を励磁するべく通電した励磁電流(I)とリフトオフ検出用コイルに発生した電圧(Ec)とから各段階におけるインピーダンス(Z;=Ec/I)を算出し、既知のインピーダンス基準値(Z0;この場合はリフトオフ無限大のときすなわち磁歪センサ2を試料から十分に離間させた位置でのインピーダンス)に対するインピーダンス(Z)の比すなわち相対インピーダンス(Zr;=Z/Z0)を求め、さらに各段階における相対インピーダンス(Zr)とリフトオフ(L)との関係、ならびにリフトオフ(L)と出力電圧基準値(Em)との関係を求める。図5は相対インピーダンス(Zr)とリフトオフ(L)との関係を示すグラフ、図6はリフトオフ(L)と出力電圧基準値(Em)との関係を示すグラフである。
【0030】
さらに、図5に示す相対インピーダンス(Zr)とリフトオフ(L)との関係、ならびに図6に示すリフトオフ(L)と出力電圧基準値(Em)との関係から、試料に関する相対インピーダンス(Zr)と出力電圧基準値(Em)との関係を求める。図7は相対インピーダンス(Zr)と出力電圧基準値(Em)との関係を示すグラフである。出力電圧基準値(Em)と相対インピーダンス(Zr)との関係は、出力電圧基準値(Em)をy、相対インピーダンス(Zr)をxとすると、[y=fx3+gx2+hx+i]なる3次式で近似される曲線で表される。
【0031】
記憶手段31に記憶される情報は、4次式で近似される相対出力電圧(Er)と相対応力(σr)との関係(図4参照)、3次式で近似される相対インピーダンス(Zr)と出力電圧基準値(Em)との関係(図7参照)、以上の2つである。
【0032】
続いて、上記のように構成された応力検出装置を用い、既設の橋梁を構成する鋼材1に実際に作用している未知の内在応力(σ')を測定する方法について説明する。
まず、鋼材1の測定個所に、磁歪センサ2をリフトオフ不明のままで近接させ、励磁用コイルに励磁電流(I')を通電して鋼材1を励磁し、通電によってリフトオフ検出用コイルに発生するリフトオフ電圧(Ec')、および励磁によって応力検出用コイルに誘起される出力電圧(E')を検出する。
【0033】
次に、通電によって発生するリフトオフ電圧(Ec')を磁歪センサ2に通電した励磁電流値(I')で除してインピーダンス(Z';=Ec'/I')を算出し、算出されたインピーダンス(Z')に対応する出力電圧基準値(Em')を、記憶手段31に記憶させた相対インピーダンス(Zr)と出力電圧基準値(Em)との関係(図7参照)を参照して推定する。
【0034】
次に、出力電圧(E')を推定された出力電圧基準値(Em')で除して相対出力電圧(Er';=E'/Em')を算出し、算出された相対出力電圧(Er')に対応する相対応力(σr')を、記憶手段31に記憶させた相対出力電圧(Er)と相対応力(σr)との関係(図4参照)を参照して推定する。
【0035】
最後に、推定された相対応力(σr')に応力基準値(σm)を乗じることにより鋼材1に作用している内在応力(σ')を算出する。
【0036】
上記のように、鋼材1またはこれと同材質の試料を使って鋼材1に関する相対出力電圧(Er)と相対応力(σr)との関係、ならびに相対インピーダンス(Zr)と出力電圧基準値(Em)との関係を事前に取得しておき、実際の測定に際してこれら関係を参照して、インピーダンス(Z')に対応する出力電圧基準値(Em')、ならびに相対出力電圧(Er')に対応する相対応力(σr')を推定することにより、鋼材1が如何なる特性を示そうとも、既設の橋梁を構成する鋼材1に実際に作用している内在応力(σ')を精度良く測定することができる。
【0037】
しかも、リフトオフの正確な数値を必要としないので、鋼材1から磁歪センサ2を離間させていても、また塗膜の上からでも、精度の高い測定を行うことができる。また、磁歪センサ2を塗膜上に接触させた状態で検出を行い、インピーダンス(Z')が明らかになれば、既知のインピーダンス基準値(Z0)と相対インピーダンス(Zr)とリフトオフ(L)との関係(図5参照)とにもとづいてリフトオフすなわち塗膜の厚さが算出されるので、膜厚計としても使用できる。
【0038】
上記の応力測定装置は、多くの一般的な材質の鋼材について、各鋼材ごとにその特性を、相対出力電圧(Er)と相対応力(σr)との関係、ならびに相対インピーダンス(Zr)と出力電圧基準値(Em)との関係としてあらかじめ記憶されており、実際の測定にあたって測定対象となる鋼材の材質から参照すべき関係を選択し、選択された関係を上記のごとく参照して測定を行う。
【0039】
ところで、応力測定装置を構成する磁歪センサ2は、同じ構造であってもコイルの巻き方やコアとなる部分の微妙な形状の違いによって大きく個性が異なってしまう。例えば、2つの磁歪センサについて同じ鋼材に対し同じリフトオフで同じ励磁電流を通電しても、励磁電圧や出力電圧が異なってしまうのである。
【0040】
そのため、応力測定装置の量産を考えた場合、従来であれば個々の応力測定装置についてひとつずつ磁歪センサ2のキャリブレーション(calibration)を行わなければならなかった。しかしながら、上記応力測定装置においては、基準となる磁歪センサ(原器)についてのみキャリブレーションを行って3次式で近似される相対インピーダンス(Zr)と出力電圧基準値(Em)との関係(図7参照)を取得し、その他の磁歪センサについては、相対インピーダンス(Zr)と出力電圧基準値(Em)との関係が原器のそれに一致するように増幅度を調整すればよい。そのため、原器以外の磁歪センサについてキャリブレーションを行う手間が省けるので、応力測定装置の生産性向上が図れる。
【0041】
なお、本実施形態においては励磁用コイルに別個にリフトオフ検出用コイルを設けた構成としたが、励磁電流の通電によって励磁用コイルに発生する電圧値が検出可能である場合、例えば励磁電流の周波数を極端に早くすることによって励磁用コイルにより大きな電圧が発生する場合や、温度の変化やリード線の長さの変更等によるインピーダンスの変化を無視できる場合等には、特にリフトオフ検出用コイルを設ける必要はない。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る応力の測定方法および応力測定装置によれば、被測定物固有の特性に関係なく、該被測定物に実際に作用している応力を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る応力測定装置の構成を示す概略図である。
【図2】 応力測定装置を構成する磁歪センサの構造を示す斜視図である。
【図3】 リフトオフの各段階における出力電圧(E)と試料に作用させた応力(σ)との関係を示すグラフである。
【図4】 相対出力電圧(Er)と相対応力(σr)との関係を示すグラフである。
【図5】 相対インピーダンス(Zr)とリフトオフ(L)との関係を示すグラフである。
【図6】 リフトオフ(L)と出力電圧基準値(Em)との関係を示すグラフである。
【図7】 相対インピーダンス(Zr)と出力電圧基準値(Em)との関係を示すグラフである。
【図8】 リフトオフの各段階におけるリフトオフ電圧と応力との関係を示すグラフである。
【図9】 インピーダンスとリフトオフとの関係を示すグラフである。
【図10】 リフトオフと応力感度との関係を示すグラフである。
【図11】 インピーダンスと応力感度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 鋼材(被測定物)
2 磁歪センサ
3 解析用コンピュータ
31 記憶手段
32 演算手段
Claims (2)
- 励磁用コイル、リフトオフ検出用コイルおよび応力検出用コイルを有する磁歪センサを使って被測定物に作用する応力を測定する応力の測定方法であって、
前記被測定物またはこれと同材質の試料を対象として、前記磁歪センサと前記対象物との間隔を段階的に変化させ、各段階において前記対象物に任意の応力を作用させながら前記励磁用コイルに通電して前記対象物を励磁し、前記応力検出用コイルに発生する出力電圧を検出し、前記各段階ごとに前記出力電圧と前記対象物に作用させた応力との関係を求め、この関係から前記対象物に前記各段階に共通する応力基準値を作用させたときの前記各段階ごとの出力電圧基準値を設定し、前記各段階ごとに前記出力電圧基準値に対する前記出力電圧の比すなわち相対出力電圧を求めるとともに前記応力基準値に対する前記対象物に作用させた応力の比すなわち相対応力を求め、前記被対象物に関する前記相対出力電圧と前記相対応力との関係を求める一方、
前記対象物を励磁するべく通電した励磁電流と前記リフトオフ検出用コイルに発生した電圧とから前記各段階におけるインピーダンスを算出し、既知のインピーダンス基準値に対する前記インピーダンスの比すなわち相対インピーダンスを求め、さらに各段階における相対インピーダンスと前記間隔との関係、ならびに該間隔と前記出力電圧基準値との関係を求め、さらにこれらの関係から前記対象物に関する前記相対インピーダンスと前記出力電圧基準値との関係を求めておき、
実際の測定にあたって未知の応力が作用している状態の前記被測定物に前記磁歪センサを近接させ、
前記励磁用コイルに通電して前記被測定物を励磁し、通電によって前記リフトオフ検出用コイルに発生する電圧、および励磁によって前記応力検出用コイルに誘起される出力電圧を検出し、前記磁歪センサに前記被測定物を励磁するべく通電した励磁電流と前記リフトオフ検出用コイルに発生した電圧とからインピーダンスを算出し、
該算出されたインピーダンスを前記インピーダンス基準値で除して相対インピーダンスを算出し、該算出された相対インピーダンスに対応する出力電圧基準値を、あらかじめ求めておいた前記相対インピーダンスと前記出力電圧基準値との関係を参照して推定し、
前記出力電圧を該推定された出力電圧基準値で除して相対出力電圧を算出し、該算出された相対出力電圧に対応する相対応力を、あらかじめ求めておいた前記相対出力電圧と前記相対応力との関係を参照して推定し、
該推定された相対応力に前記応力基準値を乗じることにより前記未知の応力を算出する
ことを特徴とする応力の測定方法。 - 励磁用コイル、リフトオフ検出用コイルおよび応力検出用コイルを有する磁歪センサと;
被測定物またはこれと同材質の試料を対象として、前記磁歪センサと前記対象物との間隔を段階的に変化させ、各段階において前記対象物に任意の応力を作用させながら前記励磁用コイルに通電して前記対象物を励磁し、前記応力検出用コイルに発生する出力電圧を検出し、前記各段階ごとに前記出力電圧と前記対象物に作用させた応力との関係を求め、この関係から前記対象物に前記各段階に共通する応力基準値を作用させたときの前記各段階ごとの出力電圧基準値を設定し、前記各段階ごとに前記出力電圧基準値に対する前記出力電圧の比すなわち相対出力電圧を求めるとともに前記応力基準値に対する前記対象物に作用させた応力の比すなわち相対応力を求めることによって得られた前記被対象物に関する前記相対出力電圧と前記相対応力との関係、
前記対象物を励磁するべく通電した励磁電流と前記リフトオフ検出用コイルに発生した電圧とから前記各段階におけるインピーダンスを算出し、既知のインピーダンス基準値に対する前記インピーダンスの比すなわち相対インピーダンスを求め、さらに各段階における相対インピーダンスと前記間隔との関係、ならびに該間隔と前記出力電圧基準値との関係を求めることによって得られた前記対象物に関する前記相対インピーダンスと前記出力電圧基準値との関係、以上2つの関係を記憶する記憶手段と;
実際の測定にあたって未知の応力が作用している被測定物を励磁するべく前記磁歪センサに通電した励磁電流と該通電によって前記リフトオフ検出用コイルに発生した電圧とからインピーダンスを算出し、該算出されたインピーダンスを前記インピーダンス基準値で除して相対インピーダンスを算出し、該算出された相対インピーダンスに対応する出力電圧基準値を、前記記憶手段に記憶された前記相対インピーダンスと前記出力電圧基準値との関係を参照して推定し、前記励磁によって前記応力検出用コイルに誘起される出力電圧を該推定された出力電圧基準値で除して相対出力電圧を算出し、該算出された相対出力電圧に対応する相対応力を、あらかじめ求めておいた前記相対出力電圧と前記相対応力との関係を参照して推定し、該推定された相対応力に前記応力基準値を乗じることにより前記未知の応力を算出する演算手段と;
を備えることを特徴とする応力測定装置。
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