JP3924011B2 - 下水消化汚泥の脱水方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、下水処理場より発生する消化汚泥を効率的に処理する汚泥の脱水方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水、し尿処理場及び有機性産業排水等より生じる有機質汚泥は、高分子凝集剤を添加してスクリューデカンター、ベルトプレス等で脱水する方法が行われている。脱水処理された汚泥は、埋め立て等に用いられることもあるが主には焼却処分されている。脱水処理された汚泥の焼却に使用される燃料の大部分は、脱水された汚泥(以下、脱水ケーキという。)中の水分蒸発に使用されている。一般的に脱水ケーキ中の水分が1%低下すると焼却に使用される燃料を10%程度節約することが可能とされている。
【0003】
ところが、近年、水処理の高度化、水処理対象廃水の性状の変化、多様化等により汚泥が脱水し難い性状のものとなり、焼却処分における燃料費用が増大しており、脱水ケーキの低含水率化が要望されている。
【0004】
特に、消化処理を実施している下水処理場より発生する消化汚泥は、次のような特徴があり他の汚泥に比較して大変脱水しにくい性状である。
イ.浮遊物質(SS)の粒子径が小さく、強度が弱く、更に低比重であること。ロ.凝集フロックの核になる砂分、繊維分が極端に少ないこと。
ハ.汚泥コロイド値に示される腐敗性有機物を多く含有し、粘着性が強いこと。
【0005】
この結果、下水消化汚泥の脱水処理においてはベルトプレスによる方法では、脱水ケーキの剥離不良、サイドリーク、高含水率ケーキとなり良好な処理ができない。また、スクリューデカンターによる方法では、含水率が高く、得られた脱水ケーキの形状が高粘着性の固まり状となり、搬送、焼却処理が大変困難となる。ちなみに、脱水ケーキの含水率は汚泥の性状にもよるが84〜88%の範囲のものが多い。
また、最近下水処理施設においても分流式の流入方式の増加により汚泥中の有機質が増加傾向にあり、更に含水率は悪化する傾向にある。
【0006】
汚泥脱水に関して、脱水ケーキ含水率を低下させる方法としては、カチオン系及びアニオン系凝集剤の両方を併用する方法(特開昭57−32797号公報)、汚泥に鉱酸を加え、pHを低下させた後脱水する方法(特開昭57−204299号公報)及び無機凝集剤添加後両性系凝集剤により脱水する方法(特開昭63−158200号公報)、無機凝集剤添加後アニオン系及びカチオン系凝集剤により脱水する方法(特開昭61−200897号公報)等が提案されている。
【0007】
しかしながら、カチオン系及びアニオン系凝集剤の併用法は、カチオン系凝集剤を単独で用いる場合に比べ凝集剤の使用量が多く、薬品コストが倍以上かかること、又、無機系凝集剤を添加後両性系凝集剤あるいはアニオン系及びカチオン系凝集剤で脱水する方法は、有効な手段であるが、消化汚泥のアルカリ度が大変高いため無機系凝集剤の使用量を多く必要とし、カチオン系凝集剤を単独で用いる場合に比べ薬品コストが倍以上かかる結果となり実用的でない。さらに、無機系凝集剤を消化汚泥に添加後、一般的なカチオン系凝集剤で処理する方法は、生成フロックが小さく、弱くなり良好な脱水処理が困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように従来の技術では、下水消化汚泥の脱水にあたって脱水ケーキの含水率を低減し、良好な脱水処理を行いたいという要望にもかかわらず、薬品コストを増加させることなしに脱水ケーキの含水率を低下せしめる方法はなかった。本発明の目的は、これらの問題点を解決する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下水処理場にて発生する消化汚泥に無機系凝集剤を加えた後、pH3におけるカチオン当量値が2meg/g以上、極限粘度[η]が5dl/g以上であるジメチルアミノエチルアクリレート4級塩の単独重合体又はジメチルアミノエチルアクリレート4級塩と共重合可能な他のカチオン系ビニルモノマー或いは非イオン性ビニルモノマーより選ばれたモノマーとの共重合体からなるアクリレート系カチオン高分子凝集剤を用いて脱水処理することを特徴とする汚泥の脱水方法にある。
【0010】
本発明において、下水消化汚泥とは、下水処理場より発生する混合生汚泥[初沈汚泥と余剰(濃縮)汚泥の混合汚泥]を嫌気性消化処理した汚泥を意味する。本発明者等は、このような下水消化汚泥について、その性状及び脱水性に与える影響を調査、検討した結果下水消化汚泥中には各種の多糖類、タンパク質等が多量に存在しておりこれらの物質が汚泥に粘着性を与えるとともに、汚泥脱水性能(特に脱水ケーキ含水率及びケーキ剥離性)に重要な影響を与えることをつきとめた。
【0011】
上述した下水消化汚泥中に含まれる各種の多糖類やタンパク質等の物質は、無機系凝集剤と良く反応し凝結、下水消化汚泥を疎水化する。しかし、単に無機凝集剤で凝結させたフロックは、非常に細かいために現在一般的に用いられている脱水機であるスクリューデカンター、ベルトプレス機では脱水処理することができず高分子凝集剤を併用しフロックを粗大化させる必要がある。
【0012】
一方、下水消化汚泥中にはアルカリ金属塩類が多量に存在するため、各種の多糖類、タンパク質等と無機系凝集剤が反応しても汚泥pHが高く、汚泥のコロイド値がマイナスである。
【0013】
従来技術である無機系凝集剤と両性系高分子凝集剤又はアニオン系高分子凝集剤との組み合わせによる脱水処理方法では、汚泥のコロイド値をプラスに帯電させることが不可欠であり、アルカリ金属塩等を中和し、pHが低下し、プラス荷電になる迄大量の無機系凝集剤を添加する必要があった。そこで、一般的なカチオン系高分子凝集剤でフロックを粗大化させる試みを実施したが、充分な効果が得られなかった。
【0014】
本発明者等は鋭意検討した結果、高分子凝集剤としてアクリレート系カチオン高分子凝集剤を使用することにより、下水消化汚泥の脱水処理に関しても無機系凝集剤の添加量を押さえ、汚泥脱水処理コストを従来方法と遜色のない範囲で飛躍的に高めることができた。
【0015】
本発明において用いる無機系凝集剤としては、PAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸バンド、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄等市販品が何れも使用できるが、鉄系の無機凝集剤が好ましく用いられる。
【0016】
また、無機凝集剤を添加したときの反応に要する時間は、特に考慮する必要はなく、高分子凝集剤添加前に汚泥に混合されれば構わない。
【0017】
本発明で用いるアクリレート系高分子凝集剤は、ジメチルアミノエチルアクリレート4級塩の単独重合体又はジメチルアミノエチルアクリレート4級塩とこれと共重合可能な他のカチオン系ビニルモノマー或いは非イオン性ビニルモノマーより選ばれたモノマーとの共重合体をいう。カチオン系ビニルモノマーの例としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート3級塩或いは4級塩、さらには下記化学式で示されるジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。また、非イオン性ビニルモノマーの例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
【0018】
【化1】
Figure 0003924011
【0019】
これらのアクリレート系高分子凝集剤は、pH3におけるカチオン当量値CV が2meq/g以上である。この数値未満の値では脱水性能が低下する傾向となるため好ましくない。また、高分子凝集剤の分子量を示す極限粘度[η]は、5dl/g以上である。極限粘度[η]が高いほど、大きく強いフロックになり安定した脱水処理が可能となる。極限粘度[η]が5dl/g未満のものではフロックが小さく、弱くなり脱水処理効率が低下する傾向となるため好ましくない。
【0020】
本発明において、前記の有機高分子凝集剤のカチオン当量値CV は、以下に示すコロイド滴定法によって求めることができる。
[カチオン当量値CV の測定]
I.コニカルビーカーに脱イオン水90mlをとり、試料500ppm溶液10mlを加え、塩酸水溶液でpHを3.0とし、約1分間撹拌する。
次に、トルイジンブルー指示薬を2〜3滴加え、N/400−ポリビニル硫酸カリウム試薬(N/400−PVSK)で滴定する。
滴定速度は2ml/分とし、検水が青から赤紫色に変色、10秒間以上保持する時点を終点とする。
II.試料500ppm水溶液の調整
試料0.2g(乾品換算しない)を精秤し、共栓付三角コルベンにより、脱イオン水100mlで溶解する。この25mlを100mlメスフラスコにて脱イオン水でメスアップする。
III.計算法
【0021】
【数1】
Figure 0003924011
【0022】
また、極限粘度[η]は、次のようにして求めることができる。
I.溶媒ブランクの粘度の測定
30±0.05℃に調整した恒温槽中にウベローデ型粘度計をセットし、この粘度計の中に1N−硝酸ナトリウム溶液を入れ、10〜30分間放置後、この溶液を上昇させてから自然流下させたときの粘度計に表示されている上下標線間を通過するのに要する流下時間を3回以上測定して、その平均値をもって溶媒ブランクの粘度(t0 )とする。
II.還元粘度の算出
上記と同様の操作を試料濃度0.10〜0.02%の1N−硝酸ナトリウム溶液を用いて行い、各々の溶液の、粘度計に表示されている上下標線間を通過するのに要する平均の流下時間を測定し、それらの平均値をもって各試料溶液の粘度(t)とする。
次にそれぞれの試料についての比t/t0 を求めて相対粘度ηr とし、これらからそれぞれの比粘度ηsp=ηr −1を求め、これらを各々それぞれの試料濃度で除して各試料の還元粘度ηsp/Cを算出する。
III.極限粘度の算出
試料溶液の濃度(g/d1)と還元粘度をプロットし、外挿法により極限粘度[η]を求める。
【0023】
本発明においてはアクリレート系高分子凝集剤を添加し、フロックを形成させた後は、公知の手法により脱水されるが、脱水機としては、例えばスクリューデカンター型脱水機、ベルトプレス型脱水機等を適用することができる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
[実施例1〜4及び比較例1〜8]
pH:7.0、TS(蒸発残留物):2.2%、VTS(強熱減量):67.8%、M−アルカリ度:5,520mg/lの性状を有する下水消化汚泥を使用して、ベルトプレスによる脱水試験を行った。なお、ベルトプレス機は出願人会社にて製作したテスト機を用いた。このベルトプレス機は、ベルト上にて汚泥を濾過濃縮後、二枚のベルトの間に濃縮した汚泥を挟みエアシリンダーにてプレス脱水する構造である。ベルトは敷島カンバス社製、T−1189を使用した。
【0025】
まず、500mlのビーカーに汚泥300mlを採取し、表2に示す各種の無機凝集剤を原液にてそれぞれ添加混合する。さらに、表1に示す各種高分子凝集剤の各0.5%水溶液をそれぞれ所定量注射器により添加した後、スパチュラで撹拌混合し、種々の凝集フロックを生成させた。
生成したフロックをベルト上に開け、濃縮後二枚のベルトに挟み0.5kg/cm2 、1.0kg/cm2 の条件で各1分間脱水した。これらの試験結果を表2に示す。
表2から明らかなように本発明による方法は、従来法に比較して含水率を5〜6%低下させることが可能になり、更にケーキ剥離性を向上させることができた。
【0026】
【表1】
Figure 0003924011
【0027】
【表2】
Figure 0003924011
【0028】
[実施例5〜12及び比較例9〜12]
pH:6.9、TS:2.43%、VTS:57.6%、M−アルカリ度:3,775mg/lの性状の下水消化汚泥を使用して、スクリューデカンター(石川島播磨重工業製、HS−40L)による脱水試験を行った。試験結果を表3に示す。なお、概略のフローは次の通りとした。
1.汚泥はモーノポンプにより脱水機に供給し、脱水機内で表1に示す各種の高分子凝集剤とそれぞれ混合(脱水機内注入)し脱水処理する。
2.表3に示す各種無機凝集剤の供給は汚泥供給ポンプの出口にサービスノズルを付け、ダイヤフラムポンプによりそれぞれ所定量注入した。
3.各種高分子凝集剤は0.3%濃度に溶解して使用した。
【0029】
【表3】
Figure 0003924011
表3から明らかなように、本発明による方法では従来法に比較して含水率を4〜5%低下させることができ、脱水ケーキの形状も向上した。

Claims (1)

  1. 下水処理場にて発生する消化汚泥に無機系凝集剤を加えた後、pH3におけるカチオン当量値が2meg/g以上、極限粘度[η]が5dl/g以上であるジメチルアミノエチルアクリレート4級塩の単独重合体又はジメチルアミノエチルアクリレート4級塩と共重合可能な他のカチオン系ビニルモノマー或いは非イオン性ビニルモノマーより選ばれたモノマーとの共重合体からなるアクリレート系カチオン高分子凝集剤を用いて脱水処理することを特徴とする汚泥の脱水方法。
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