ところで、近年、自動車用ドアの製造ラインにおいては、例えば、異なる車種のドアや、同じ車種の左ドア及び右ドアを1つの製造ラインで製造する多種混合生産方式が導入されている。この方式を採用することで、製造ラインの数を削減しながら多種類のドアを製造することができ、ドアの低コスト化が図られる。
しかしながら、異なる種類のドアを1つのラインで製造しようとすると、サッシュ矯正装置には、サッシュの形状の異なるドアが流れてくることになる。サッシュの形状が異なると、矯正装置の矯正部の位置を変更しなければならないが、特許文献1の矯正装置は、矯正部が駆動源を介して装置本体に取り付けられているため、サッシュの形状が異なるドアが流れてくる度に、矯正部や駆動源を装置本体から外して該矯正部の位置を変更するという大がかりな作業が必要になる。また、そのように矯正部の位置を変更した後には、変更後の矯正部の位置が適正位置にあるか否かを作業者が確認検査しなければならない。このように、特許文献1のサッシュ矯正装置を多種混合生産方式のドア製造ラインに設置した場合には、サッシュ矯正装置を異なる種類のドアに対応させる作業が煩雑で時間がかかり、ひいては、ドアの製造工数の増大を招く。
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、多種混合生産方式のドア製造ラインにおいて、矯正部の位置を短時間で自在に設定できるようにして、ドアの製造工数を低減することにある。
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、矯正部を矯正用ロボットのロボットアームに取り付け、このロボットの制御部により、矯正部を移動させてサッシュを矯正するようにした。
具体的には、自動車に取り付けられるドアのサッシュの建付位置が所定の公差範囲から外れているときに、その建付位置を所定の公差範囲に収めるための矯正量に基づいて得た変形量だけ上記サッシュを変形させることにより、該サッシュの矯正を行うように構成された自動車用ドアサッシュ矯正装置において、上記サッシュに当接して変形力を作用させる矯正ヘッドを有する矯正部と、上記ドアのボディー部を位置決めした状態で固定する治具を有する治具部と、上記サッシュの建付位置を測定するためのサッシュ建付位置測定センサーと、上記矯正部が取り付けられたロボットアームを有する矯正用ロボットと、上記サッシュ建付位置測定センサーが接続されるとともに、上記矯正用ロボットを制御する制御部とを備え、上記制御部は、上記サッシュ建付位置測定センサーにより得られた上記サッシュの建付位置が所定の公差範囲から外れているときに、上記変形量だけ上記サッシュが変形するように、上記ロボットアームを動かして上記矯正部を移動させるように構成されているものとする。
この構成によれば、サッシュの建付位置が所定の公差範囲から外れている場合には、矯正部を矯正用ロボットのロボットアームにより移動させることでサッシュに変形力を作用させてサッシュの矯正が行われる。また、異なる種類のドアのサッシュを矯正する場合には、矯正用ロボットのロボットアームを動かすことで、矯正部をサッシュの形状に合う位置まで移動させることが可能になる。これにより、矯正部を取り外すことなく、該矯正部の駆動源としてのロボットを利用して該矯正部の位置を容易にかつ素早く変更することが可能になる。さらに、そのように矯正部をロボットアームに取り付けたまま位置変更することで、変更後の矯正部の位置を作業者が確認検査する必要もなくなる。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、治具部は、第1ドア及び第2ドアをそれぞれ位置決めした状態で固定する第1ドア用治具及び第2ドア用治具を有する構成とする。
この構成によれば、例えば、第1ドア用治具に固定した第1ドアを矯正している間に、第2ドア用治具に第2ドアを固定して矯正の準備を行うことが可能になる。
請求項3の発明では、請求項2の発明において、矯正用ロボットは、第1ドアの長手方向一方及び他方にそれぞれ配置されている構成とする。
この構成によれば、一方及び他方の矯正用ロボットによりサッシュのドア長手方向両方に変形力を作用させることが可能になる。
請求項4の発明では、請求項1から3のいずれか1つの発明において、サッシュ建付位置測定センサーは、着脱装置を介して治具部に取り付けられている構成とする。
この構成によれば、ドアの種類が変更になる場合のように、現在設置されている治具を交換する際、その現在設置されている治具からサッシュ建付位置測定センサーを外しておき、そのセンサーを交換後の治具に取り付けて使用することが可能になる。
請求項5の発明では、請求項3の発明において、一方の矯正用ロボットのロボットアームには、矯正部と、ドアに取り付けられたドアヒンジが有する車体への位置決め用ピンを該ドアヒンジに締結固定するための締付装置とが設けられ、他方の矯正用ロボットのロボットアームには、矯正部と、着脱式のサッシュ建付位置測定センサーを保持する保持装置とが設けられている構成とする。
この構成によれば、一方の矯正用ロボットを用いてドアヒンジの位置決め用ピンを締結固定し、他方の矯正用ロボットの保持装置を用いてサッシュ建付位置測定センサーを着脱することが可能になる。
請求項6の発明では、請求項1から5のいずれか1つの発明において、ドアを搬送するドア搬送用ロボットを備え、治具には、第1着脱部と第2着脱部とが設けられ、治具部に設けられた治具フレームには、上記治具の第1着脱部に着脱する治具フレーム側着脱部が設けられ、上記ドア搬送用ロボットが有するロボットアームには、上記治具の第2着脱部に着脱するアーム側着脱部が設けられている構成とする。
この構成によれば、治具は、第1着脱部が治具フレーム側着脱部に装着されることで、治具フレームに固定された状態になる。一方、ドア搬送用ロボットのアーム側着脱部が治具の第2着脱部に装着されるとともに、第1着脱部が治具フレーム側着脱部から外れると、ドア搬送用ロボットにより、治具を治具フレームから外して搬出することが可能になる。この治具を外した後、異なる種類のドアに対応する治具をドア搬送用ロボットにより搬入して治具フレームに固定することが可能になる。
請求項7の発明では、請求項1から6のいずれか1つの発明において、矯正部は、サッシュの車室側から当接する内側矯正ヘッドと、該サッシュの車外側から当接する外側矯正ヘッドと、該外側矯正ヘッドを上記サッシュの当接面に沿うように動かす可動機構とを備えている構成とする。
この構成によれば、サッシュを車外側に変形させる際には、内側矯正ヘッドがサッシュに車室側から当接して車外側に変形力を作用させることになる。一方、サッシュを車室側に変形させる際には、外側矯正ヘッドがサッシュに車外側から当接して車室側に変形力を作用させることになる。このサッシュを車室側に変形させる際には、自動車の意匠面を構成するサッシュの車外側の面に外側矯正ヘッドが当接することになる。このとき、外側矯正ヘッドが可動機構によりサッシュの当接面に沿うように動くので、サッシュの車外側の面に外側矯正ヘッドを安定した状態で当接させることが可能になる。
請求項8の発明では、自動車に取り付けられるドアのサッシュの建付位置が所定の公差範囲から外れているときに、その建付位置を所定の公差範囲に収めるための矯正量に基づいて得た変形量だけ上記サッシュを変形させることにより、該サッシュの矯正を行うように構成された自動車用ドアサッシュ矯正装置において、上記サッシュに当接して変形力を作用させる矯正ヘッドを有する矯正部と、上記ドアのボディー部を位置決めした状態で固定する治具と、上記サッシュの建付位置を測定するサッシュ建付位置測定センサーと、
上記矯正部及び上記サッシュ建付位置測定センサーが取り付けられたロボットアームを有する矯正用ロボットと、上記治具が取り付けられたロボットアームを有する治具用ロボットと、上記サッシュ建付位置測定センサーが接続されるとともに、上記矯正用及び治具用ロボットを制御する制御部とを備え、上記制御部は、上記サッシュ建付位置測定センサーにより得られた上記サッシュの建付位置が所定の公差範囲から外れているときに、上記変形量だけ上記サッシュが変形するように、上記矯正用ロボットのロボットアームを動かして上記矯正部を移動させるように構成されているものとする。
この構成によれば、請求項1の発明と同様に、矯正部を矯正用ロボットのロボットアームにより移動させることでサッシュの矯正作業が行われ、また、異なる種類のドアのサッシュを矯正する場合には、矯正用ロボットのロボットアームを動かすことで、矯正部をサッシュの形状に合う位置まで移動させることが可能になる。これにより、矯正部の位置を容易にかつ素早く変更することが可能になるとともに、変更後の矯正部の位置を作業者が確認検査する必要がなくなる。
請求項9の発明では、自動車に取り付けられるドアのサッシュの建付位置が所定の公差範囲から外れているときに、その建付位置を所定の公差範囲に収めるための矯正量に基づいて得た変形量だけ上記サッシュを変形させることにより、該サッシュの矯正を行う自動車用ドアサッシュ矯正方法において、上記ドアのボディー部を治具に位置決めした状態で固定するドア固定工程と、上記ドア固定工程で固定したドアのサッシュの建付位置をサッシュ建付位置測定センサーにより測定するサッシュ建付位置測定工程と、上記サッシュ建付位置測定センサーにより得られたサッシュの建付位置が所定の公差範囲から外れているときに、上記変形量だけ上記サッシュが変形するように、矯正用ロボットのロボットアームに取り付けられた矯正部を移動させてサッシュを矯正するサッシュ矯正工程とを備えている構成とする。
この構成によれば、請求項1の発明と同様に、矯正用ロボットにより矯正部を移動させるようにしているので、矯正部の位置を容易にかつ素早く変更することが可能になるとともに、変更後の矯正部の位置を作業者が確認検査する必要がなくなる。
請求項10の発明では、請求項9の発明において、ドアをドア搬送用ロボットにより治具まで搬送するドア搬送工程と、上記ドアに取り付けられたドアヒンジが有する車体への位置決め用ピンを位置決めした後、該ドアヒンジに締結固定する位置決め用ピン固定工程と、ドア固定工程と、サッシュ建付位置測定工程と、サッシュ矯正工程と、上記サッシュ矯正工程の後、サッシュ建付位置測定センサーによりサッシュの建付位置を再び測定して所定の公差範囲にあるか否かを確認する建付位置確認工程と、上記建付位置確認工程の後、搬出用ロボットにより治具からドアを外して搬出する搬出工程とを1つのステーションで実施する構成とする。
この構成によれば、治具に固定したドアのドアヒンジの位置決め用ピンを締結固定し、サッシュの矯正作業を行い、さらに、その矯正の結果を確認した後、ドアを搬出するまでの各工程をドア製造ライン上の1つのステーションでまとめて実施することが可能になる。
請求項11の発明では、請求項10の発明において、サッシュ矯正工程を行うドアの種類が変更される場合に、矯正用ロボットと、ドア搬送用ロボットとをドア種類変更モードに切り替える第1モード切替工程と、上記ドア種類変更モード切替工程の後、治具に取り付けられている建付位置測定用センサーを、上記矯正用ロボットのロボットアームに取り付けた保持装置で保持した後、治具から外してセンサー格納部に格納するセンサー格納工程と、上記センサー格納工程の後、上記ドア搬送用ロボットのロボットアームに固定されたドア支持用アタッチメントを取り外して、該ロボットアームにより現在設置してある治具を保持した後、該治具を治具格納部に格納する治具格納工程と、上記治具格納工程後、上記ドア搬送用ロボットのロボットアームにより、次にサッシュ矯正を行うドアの種類に対応した治具を上記治具格納部から取り出して設置する治具設置工程と、上記治具設置工程の後、上記ドア搬送用ロボットのロボットアームに、次のドアの種類に対応した上記ドア支持用アタッチメントを取り付けるとともに、上記矯正用ロボットの保持装置により、上記センサー格納部にある上記建付位置測定用センサーを保持し、上記治具設置工程で設置された治具に取り付けるセンサー取付工程と、上記センサー取付工程の後、上記矯正用ロボットと、上記ドア搬送用ロボットとを次のドアの種類に対応したサッシュ矯正モードに切り替える第2モード切替工程と実施する構成とする。
この構成によれば、ドアの種類が変更される場合に、矯正用ロボットによりサッシュ建付位置測定センサーが治具に着脱され、ドア搬送用ロボットにより治具の交換が行われる。
請求項1の発明によれば、矯正部を矯正用ロボットのロボットアームに取り付け、このロボットの制御部により矯正部を移動させてサッシュを矯正するようにしたので、多種混合生産方式のドア製造ラインにおいて、矯正部の位置を異なる種類のドアのサッシュに容易にかつ素早く対応させることができ、ドアの製造工数を削減できる。
請求項2の発明によれば、治具部が第1ドア用治具と第2ドア用治具とを有しているので、例えば、第1ドアの矯正作業と、第2ドアの矯正準備作業とを並行して行うことができ、ドアの製造工数をより一層削減することができる。
請求項3の発明によれば、矯正用ロボットをドアの長手方向一方及び他方にそれぞれ配置したので、サッシュのドア長手方向両側を同時に矯正することができる。
請求項4の発明によれば、サッシュ建付位置測定センサーを着脱装置を介して治具に取り付けるようにしたので、ドアの種類が変更になっても、同一のサッシュ建付位置測定センサーを使用することができ、サッシュ矯正装置のコストを低減することができる。
請求項5の発明によれば、一方の矯正用ロボットを用いてドアヒンジの位置決め用ピンを締結固定することができ、また、他方の矯正用ロボットを用いてサッシュ建付位置測定センサーを着脱することができる。
請求項6の発明によれば、現在設置されている治具をドア搬送用ロボットにより治具フレームから外して搬出し、異なる種類のドアに対応した治具を新たに設置することができる。これにより、ドアの種類によって治具が変更になる場合に、治具の交換を自動化することができる。
請求項7の発明によれば、矯正部の外側矯正ヘッドを可動機構によりサッシュの当接面に沿うように動かすことができるので、サッシュの車外側の面に外側矯正ヘッドが当接したことにより損傷が生じてしまうのを抑制することができる。
請求項8、9の発明によれば、請求項1の発明と同様に、多種混合生産方式のドア製造ラインにおいて、矯正部の位置を異なる種類のドアのサッシュに容易にかつ素早く対応させることができ、ドアの製造工数を削減できる。
請求項10の発明によれば、ドアのドアヒンジの位置決め用ピンを締結固定し、サッシュの矯正作業を行い、その結果を確認した後、ドアを搬出するまでの各工程を1つのステーションで実施することができる。これにより、ドア製造ラインのステーション数を削減できる。
請求項11の発明によれば、ドアの種類が変更される場合に、治具の交換をロボットにより自動的に行うことができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る自動車用ドアサッシュ矯正装置1が設置された工場の平面図である。この工場にはドア製造ラインが設置されている。このドア製造ラインは、自動車の前側に配設される左ドアD1及び右ドアD2、後側に配設される左ドア及び右ドア(図示せず)や、異なる車種の左ドア及び右ドア(図示せず)の製造を行うように構成された多種混合生産方式を採用した製造ラインである。このドア製造ラインの上流側には、図示しないが、各ドアD1、D2のインナパネルやアウタパネル等を接合してドアD1、D2を得る接合ステーションが設けられている。尚、このドア製造ラインにおいては、ウインドガラスを保持するサッシュS(図3や図4に示す)を有するドアD1、D2を製造している。また、この実施形態の説明では、ドアD1、D2の車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。
上記接合ステーションで得られたドアD1、D2は、下流側の矯正ステーションTに搬送され、サッシュSの矯正作業が行われるとともに、ドアヒンジH(図4に示す)に設けられた車体への位置決め用ピンPの締結固定作業が行われるようになっている。矯正ステーションTでサッシュSが矯正されたドアD1、D2には、図示しないが、別のステーションにおいて、ウインドガラスやドアトリム等が組み付けられて完成品となり、別の工場に設置された自動車の製造ラインまで搬送されて車体に取り付けられるようになっている。
上記矯正ステーションTの製造ライン上流側(図1の上側)には、第1支持台10、第2支持台11、第1ドア搬送用ロボット12及び第2ドア搬送用ロボット13が設けられている。矯正ステーションTの製造ライン下流側(図1の下側)には、サッシュSの矯正作業中に左ドアD1及び右ドアD2を固定しておくための治具部としての治具装置15、治具格納部としての第1及び第2治具格納用スタンド17、18、第1矯正用ロボット20、第2矯正用ロボット21及びサッシュSを矯正した後のドアD1、D2を搬出する搬出用ロボット22とが設けられている。
上記第1支持台10は、接合ステーションで得られた左ドアD1を支持しておくためのものである。上記第2支持台11は同様に右ドアD2を支持しておくためのものである。接合ステーションで得られた左ドアD1及び右ドアD2は、図示しないロボットに把持されて第1支持台10及び第2支持台11まで搬送されるようになっている。
上記第1治具格納用スタンド17は、第1ドア搬送用ロボット12の側方に配置され、ドアD1を位置決めして固定しておくための治具Yを格納しておくためのものである。この第1治具格納スタンド17には、前側ドア用のものや、後側ドア用のものの他、それらとは異なる車種のドア用のもの等、複数種の治具Yが格納されるようになっている。上記第1治具格納用スタンド17の下部には、鉛直軸周りに回転するターンテーブル23が設けられている。ターンテーブル23の上部には、治具支持部材24が鉛直軸の周方向に間隔をあけて3つ配設されるとともに、上下方向に複数段配設されている。これら治具支持部材24の位置や個数は任意に設定することができる。上記各治具支持部材24に上記治具Yが支持され、この状態で治具Yが格納されている。鉛直軸の周方向に隣り合う治具支持部材24の間には、径方向外方に突出する棒状部25が合計3つ設けられている。これら棒状部25の先端部には、上方へ突出するピン25aが固定されている。上記治具支持部材24及び棒状部25は一体化されており、上記鉛直軸周りに一体に回転するようになっている。
上記第1ドア搬送用ロボット12は、周知の多軸制御型産業用ロボットであり、第1支持台10に支持された左ドアD1を上記治具装置15まで搬送するように構成されている。尚、以下に登場するロボットは、全て多軸制御型産業用ロボットである。
上記第1ドア搬送用ロボット12のロボットアーム12aの先端部には、オートツールチェンジャ19が設けられており、このオートツールチェンジャ19を介してドア支持用アタッチメント26が取り付けられている。ドア支持用アタッチメント26は、左ドアD1をクランプ支持するように構成された周知の構造のものである。図1における符号28は、詳細は後述するが、次のドアの種類に対応した上記治具Yを交換する際に、ドア支持用アタッチメント26を仮に置いておくためのアタッチメント用スタンドである。上記オートツールチェンジャ19は、例えば空気圧駆動方式の自動工具交換装置で構成されており、ロボット側アダプタ19a(図5に示す)と、ドア支持用アタッチメント26側のツール側アダプタ(図示せず)とを有する周知の構造のものである。これら2つのアダプタ19aを空気圧アクチュエータで結合状態とすることで、ロボットアーム12aにドア支持用アタッチメント26が固定され、一方、2つのアダプタ19aを結合解除状態とすることで、ドア支持用アタッチメント26がロボットアーム12aから離脱する。次のドアに対応した上記治具Yには、ロボットアーム12aのロボット側アダプタ19aに結合するツール側アダプタ30b(後述する)が設けられており、同様にロボットアーム12aに固定されるようになっている。また、同図に示すように、上記ロボットアーム12aの先端部と上記オートツールチェンジャ19のロボット側アダプタ19aとの間には、上記第1治具格納用スタンド17のピン25aに係合するピン係合部29が設けられている。このピン係合部29には、第1及び第2治具格納用スタンド17、18のピン25aが挿通して係合する穴29aが設けられている。
上記第2ドア搬送用ロボット13は、上記第1ドア搬送用ロボット12と同様に、右ドアD2を治具装置15まで搬送するように構成され、ロボットアーム13aの先端部には、ドア支持用アタッチメント26がオートツールチェンジャ19を介して着脱可能に取り付けられている。
上記第2治具格納用スタンド18は、上記第2ドア搬送用ロボット13の側方に配置され、上記第1治具格納用スタンド17と同様に、ターンテーブル23、治具支持部材24、棒状部25及びピン25aを備えている。
上記治具装置15は、図2及び図3に示すように、工場の地面に固定された治具フレーム33を備えている。治具フレーム33には、左ドア用治具Y1及び右ドア用治具Y2が取り付けられるようになっている。この治具フレーム33は、基部の上面に立設された2本の支柱34と、これら支柱34を繋ぐように設けられた連結部材に固定されたオートツールチェンジャ36の治具フレーム側アダプタ36aとを備えている。この治具フレーム側アダプタ36aは、治具フレーム側着脱部を構成している。また、上記支柱34の上部及び下部には、治具Y1、Y2側へそれぞれ突出する支え部材41が設けられている。
上記左ドア用治具Y1は、上記左ドアD1をその車外面が支柱34側に向くように位置決めした状態で固定しておくためのものであり、枠状の本体部40を備えている。本体部40の略中央部には、上記治具フレーム側アダプタ36aに結合する第1着脱部としての第1治具側アダプタ36bが設けられ、この第1治具側アダプタ36bが治具フレーム側アダプタ36aに結合した状態で左ドア用治具Y1が治具フレーム33に固定されるようになっている。
図3に示すように、左ドア用治具Y1が治具フレーム33に固定された状態では、上記治具フレーム33の支え部材41が治具Y1の本体部40に当接するようになっている。この支え部材41が本体部40に当接することにより、左ドア用治具Y1の傾動が抑止されるようになっている。また、本体部40の略中央部の第1治具側アダプタ36bと反対側には、上記第1ドア搬送用ロボット12のロボットアーム12aの先端部に装着されている上記ロボット側アダプタ19aに結合する第2着脱部としての第2治具側アダプタ30bが設けられている。
上記本体部40には、左ドアD1の前部の上下にそれぞれ取り付けられたドアヒンジHをクランプする前側固定機構42と、左ドアD1の後部の上下方向中間部に設定されたドアラッチ取付部をクランプする後側固定機構43とが設けられている。これら前側及び後側固定機構42、43は、空気圧シリンダを動力源として作動するものであり、この空気圧シリンダの伸縮動作により、前側及び後側固定機構42、43の固定部が固定状態と固定解除状態とに切り替えられるようになっている。また、固定状態にある左ドアD1は、ベルトラインの後側近傍が治具Y1により車外側から支えられるようになっている。上記固定機構42、43により、ドアD1のサッシュSよりも下側のボディー部が治具Y1に固定されるようになっている。
上記2つのドアヒンジHは、製造ラインの上記矯正ステーションTよりも上流側で、左ドアD1に締結部材によって締結固定されている。下側のドアヒンジHには、左ドアD1を車体に組み付ける際に該車体の位置決め孔(図示せず)に挿入される位置決め用ピンPが設けられ、この位置決め用ピンPを位置決め孔に挿入することで、左ドアD1が車体に対し位置決めされるようになっている。位置決め用ピンPは、下側のドアヒンジHに対してナット(図示せず)により締結固定されるようになっているが、この位置決め用ピンPは、製造公差に対応して位置調整する必要があることから、左ドアD1が矯正ステーションTに搬送されるまでの間、下側ドアヒンジHに対してナットの締め付けが緩い状態で仮固定されている。そして、矯正ステーションTにおいて位置決め用ピンPが所定位置に締結固定されるようになっている。
この位置決め用ピンPの左ドアD1に対する位置決め及び締結固定作業に対応して、上記本体部40には、左ドアD1の周縁部を支持して該左ドアD1を所定位置に位置決めする位置決め機構44が設けられている。この位置決め機構44は、空気圧シリンダを動力源として作動するものであり、この空気圧シリンダの伸縮動作により、位置決め状態と位置決め解除状態とに切り替えられるようになっている。左ドアD1の位置決め状態では、上記位置決め機構44が有するピン挟持部(図示せず)によって上記位置決め用ピンPが左ドアD1に対し位置決めされた状態で挟持されるようになっている。
上記本体部40には、第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51が取り付けられている。第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51は、検出対象にレーザー光を照射して検出対象までの距離を非接触で検出するように構成された周知の非接触型距離センサーである。上記第1サッシュ建付位置測定センサー50のレーザー光は、サッシュSの車外面における上縁部の前後方向略中央部に設定された第1測定面に照射されるようになっている。上記第2サッシュ建付位置測定センサー51のレーザー光は、サッシュSの車外面における上縁部の後部に設定された第2測定面に照射されるようになっている。上記第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51により第1及び第2測定面の位置が得られ、この2箇所の測定面の位置に基づいてサッシュSの建付位置が得られるようになっている。
上記第1サッシュ建付位置測定センサー50は、上記本体部40の上部に固定された固定ブラケット53と、該固定ブラケット53に着脱する着脱ブラケット54とを介して、該本体部40に取り付けられている。上記固定ブラケット53と着脱ブラケット54とは、着脱装置としてのオートツールチェンジャ55により着脱可能となっている。上記着脱ブラケット54は、略L字形状をなしており、この着脱ブラケット54の上部に上記第1サッシュ建付位置測定センサー50が固定されている。上記固定ブラケット53には、オートツールチェンジャ50の固定側アダプタ50aが設けられ、着脱ブラケット54には、上記固定側アダプタ55aに結合する着脱側アダプタ55bが設けられている。
上記着脱ブラケット54の上部には、後述するセンサー保持装置68に保持される保持部56が設けられている。図6に示すように、この保持部56には、上方に開口する2つの孔部56a、56aが形成されている。各孔部56aの内周面には、スリーブ57が嵌め込まれて固定されている。スリーブ57の内部には、筒部材58がスリーブ57の中心線方向である大略上下方向に移動可能に、かつ、スリーブ57から上方へ抜け出ないように配設されている。筒部材58の上縁部には、センサー保持装置68に係合する係合部58aが筒部材58の内方へ突出するように設けられている。また、各孔部56aの底面と筒部材58との間には、該筒部材58を上方に付勢するコイルバネ59が配設されている。
また、上記第2サッシュ建付位置測定センサー51も、図2に示すように、固定ブラケット53と着脱ブラケット54とオートツールチェンジャ55とを介して上記本体部40の上部に着脱可能に固定されている。この第2サッシュ建付位置測定センサー51の着脱ブラケット54にも保持部56が設けられている。
第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51を着脱可能にしている理由は、治具Y1を異なる治具(図示せず)と交換した場合に、センサー50、51は同じものを使えるようにするためである。すなわち、第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51の位置は、治具Y1の固定ブラケット53の形状により、各ドアD1、D2のサッシュSの形状に対応する位置とされるようになっている。例えば、大型のドアにおいては小型のドアに比べてサッシュSが大きく上縁部が上に位置することになるため、これに対応するように、固定ブラケット53を上方に延ばした形状として、第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51を上方に位置付けるようにしている。
図3に示すように、上記右ドア用治具Y2は、左ドア用治具Y1と同様に、本体部40、第1及び第2治具側アダプタ36b、30b、前側及び後側固定機構42、43、位置決め機構44、第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51、固定及び着脱ブラケット53、54、オートツールチェンジャ55並びに保持部56を備えている。上記右ドア用治具Y2には、右ドアD2がその車外面を治具フレーム33の支柱34側に向けた状態で固定されるようになっている。つまり、左ドアD1及び右ドアD1が治具Y1及びY2に固定された状態では、両ドアD1、D2の車外面が互いに向かい合っている。また、左ドアD1の前部と右ドアD2の前部とは、同じ方を向いている。
また、上記治具フレーム33の上部には、上記左ドア用治具Y1の第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51と、右ドア用治具Y2の第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51とを各治具Y1、Y2から取り外して保持しておくためのホルダ61が設けられている。このホルダ61には、着脱ブラケット54のアダプタ55bに結合する4つのアダプタ61aが設けられている。このアダプタ61aに着脱ブラケット54のアダプタ55bを結合させることにより4つのサッシュ建付位置測定センサー50、51が保持されて格納状態とされるようになっている。ホルダ61がセンサー格納部を構成している。
上記第1矯正用ロボット20は、サッシュSの矯正作業と、第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51を治具Yから取り外す作業とを行うように構成されており、図7に示すように、治具装置15に固定された両ドアD1、D2の後方(ドア長手方向一方)に配置されている。上記第1矯正用ロボット20のロボットアーム20aの先端部には、図8に示すように、第1矯正用アタッチメント65が取り付けられている。この第1矯正用アタッチメント65は、ロボットアーム20aの先端部に固定されたベース部材66と、矯正部67と、センサー保持装置68とを備えている。ベース部材66の先端側は、全体としてL字状をなすように屈曲した屈曲部66aで構成されている。ベース部材66の基端側には、上記屈曲部66aに対向するように、ブラケット69が固定されている。上記屈曲部66aにおけるブラケット69と対向する面には、樹脂ブロックからなる内側矯正ヘッド70が固定されている。この内側矯正ヘッド70は、矯正作業時に、サッシュS(図8には仮想線で示す)に対し車室側から当接して車外側へ変形力を作用させるためのものである。
上記第1矯正用アタッチメント65のブラケット69には、上記内側矯正ヘッド70と対向するように、外側矯正ヘッド71が設けられている。外側矯正ヘッド71は、矯正作業中に、サッシュSに対し車外側から当接して車室側へ変形力を作用させるためのものであり、樹脂ブロック製の基部71aと、基部71aの内側矯正ヘッド70側に固着された板状ゴム製のクッション材71bとで構成されている。上記外側矯正ヘッド71は、ネジ軸及び複数のナットからなる位置調整機構72により、内側矯正ヘッド70に接離する方向に移動するようになっている。
また、上記位置調整機構72と外側矯正ヘッド71との間には、ユニバーサルジョイント73が設けられ、このユニバーサルジョイント73を介して、外側矯正ヘッド71が位置調整機構72に取り付けられている。このユニバーサルジョイント73は、図示しないが、上記ネジ軸における外側矯正ヘッド71側に設けられた球状部と、外側矯正ヘッド71に設けられた嵌合部とで構成され、球状部が嵌合部に嵌合するようになっている。この嵌合状態では、外側矯正ヘッド71は、ネジ軸の球状部に対して、該球状部の外周に沿う多方向に自在に首振り動作するようになっている。このユニバーサルジョイント73が、外側矯正ヘッド71の可動機構を構成している。上記内側矯正ヘッド70、外側矯正ヘッド71、位置調整機構72及びユニバーサルジョイント73により、上記矯正部67が構成されている。
上記センサー保持装置68は、上記ベース部材66の矯正部67と反対側に設けられており、図6に示すように、上記着脱ブラケット54の保持部56の孔部56a、56aの間隔と同じ間隔で配置された2つの円柱状挿入部74、74を備えている。各挿入部74は、保持部56の筒部材58に挿入可能な大きさとされている。挿入部74には可動爪74aが設けられており、この可動爪74aは、空気圧等を利用したアクチュエータによって挿入部74の外周面から突出した状態と、外周面と略同じ位置まで後退した状態とに切り替えられるようになっている。上記挿入部74を筒部材58に挿入して可動爪74aを突出させると、可動爪74aと筒部材58の係合部58aとが係合して第1サッシュ建付位置測定センサー50が第1矯正用ロボット20に保持された状態となる一方、可動爪74aを後退させると係合部58aとの係合が解除されて、第1サッシュ建付位置測定センサー50が第1矯正用ロボット20から外れるようになっている。
上記第2矯正用ロボット21は、サッシュSの矯正作業と、上記ドアヒンジHの位置決め用ピンPの締結固定作業とを行うように構成され、図7に示すように、治具装置15に固定された両ドアD1、D2の前方(ドア長手方向他方)に配置されている。
上記第2矯正用ロボット21のロボットアーム21aの先端部には、図9に示すように、第2矯正用アタッチメント76が取り付けられている。この第2矯正用アタッチメント76は、上記第1矯正用アタッチメント65と同様に、ベース部材66、屈曲部66a、ブラケット69を備えているとともに、内側矯正ヘッド70、外側矯正ヘッド71、位置調整機構72及びユニバーサルジョイント73からなる矯正部67を備えている。
上記第2矯正用アタッチメント76には、ベース部材66の矯正部67と反対側に、位置決め用ピンPの締結用ナットを締結するための締付装置としてのナットランナ77が取り付けられている。このナットランナ77は、空気圧等を動力源として作動するように構成されている。
また、図1に示すように、上記搬出用ロボット22は、スライド装置80のスライド台80aに搭載固定され、移動するようになっている。搬出用ロボット22のロボットアーム22aの先端部には、上記ドア搬送用ロボット12、13のドア支持用アタッチメント26と同様なドア支持用アタッチメント26が取り付けられている。また、スライド台80aの移動方向は、左ドア用治具Y1と右ドア用治具Y2との並ぶ方向と略同じ方向とされている。左ドア用治具Y1から左ドアD1を搬出する際には、搬出用ロボット22は、スライド装置80により左ドア用治具Y1側に移動するようになっており、一方、右ドア用治具Y2から右ドアD2を搬出する際には、反対側に移動するようになっている。
上記ドア製造ラインには、図10に示すように、ライン制御盤81、第1矯正用ロボット20を制御する第1ロボット制御装置82、第2矯正用ロボット21を制御する第2ロボット制御装置83、センサーコントローラー84が配設されている。ライン制御盤81は、ドア製造ラインの各ロボット12、13、20、21、22の制御装置82、83や、様々なセンサーが接続されており、これらを統括して制御するように構成されている。尚、図示しないが、上記第1ドア搬送用ロボット12、第2ドア搬送用ロボット13、搬出用ロボット22の各々にもロボット制御装置が接続されており、これらロボット制御装置はライン制御盤81に接続されている。
上記左ドア用治具Y1に取り付けられている第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51は、センサーコントローラー84に接続されている。第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51の測定結果は、センサーコントローラー84に入力されるようになっている。また、右ドア用治具Y2に取り付けられている第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51も、センサーコントローラー84に接続されている。センサーコントローラー84は、第1ロボット制御装置82に接続されており、各センサー50、51の測定結果は第1ロボット制御装置82に入力されるようになっている。
第1ロボット制御装置82は、センサーコントローラー84から入力される測定結果に基づいてサッシュSの建付位置が所定の公差範囲内であるか、公差範囲から外れているかを判定するように構成されている。所定の公差範囲から外れているときには、第1ロボット制御装置82は、所定のプログラム及び予め記憶されたサッシュSに関するデータ等に基づいて、サッシュSの建付位置を所定の公差範囲に収めるための矯正量を得て、この矯正量に基づいて得た変形量だけサッシュSを変形させるように、第1及び第2矯正用ロボット20、21の各々のロボットアーム20a、21aの移動量を決定するようになっている。第1ロボット制御装置82で得られた第2矯正用ロボット21用の移動量は、ライン制御盤81に出力され、このライン制御盤81から第2ロボット制御装置83に入力されるようになっている。そして、第1及び第2ロボット制御装置82、83により、矯正用ロボット20、21が動作する。上記ライン制御盤81、第1ロボット制御装置82及び第2ロボット制御装置83が制御部を構成している。
次に、上記のように構成された矯正装置1により左ドアD1及び右ドアD2のサッシュSを矯正する場合について説明する。接合ステーションから第1支持台10まで搬送された左ドアD1にはドアヒンジHが締結固定され、また、第2支持台10まで搬送された右ドアD2にもドアヒンジHが締結固定されている。
上記左ドアD1を第1ドア搬送用ロボット12により、左ドア用治具Y1まで搬送し、該治具Y1に保持させる。これがドア搬送工程である。そして、左ドア用治具Y1は、位置決め機構44により左ドアD1及び位置決め用ピンPを位置決めした後、第2矯正用ロボット21の第2矯正用アタッチメント76に設けたナットランナ77により位置決め用ピンPを締結固定する。これが位置決め用ピン固定工程である。その後、位置決め機構44が解除状態になる。上記位置決め用ピン固定工程の後、第2支持台11に支持されている右ドアD2を第2ドア搬送用ロボット13により、右ドア用治具Y2まで搬送し、該治具Y2に保持させる。
その後、図11のフローチャートに示すように、左ドアD1のサッシュSの矯正作業が行われる。始めに、左ドアD1を左ドア用治具Y1の前側及び後側固定機構42、43により位置決めした状態で固定しておく。これがドア固定工程である。そして、フローチャートのスタート後のステップSA1において、第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51がONとされ、サッシュSの第1及び第2測定面にレーザー光が照射される。この測定結果は、センサーコントローラー84を介して第1ロボット制御装置82に入力され、この第1ロボット制御装置82では、サッシュSの建付位置が得られる。これがサッシュ建付位置測定工程である。サッシュSの建付位置が得られると、センサー50、51はOFFとされる。続くステップSA2において、第1ロボット制御装置82により、サッシュSの建付位置が所定の公差範囲内であるか、公差範囲から外れているかを判定する。このステップSA2においてYESと判定されて公差範囲内であるとされた場合には、ステップSA3に進んで、第1及び第2矯正用ロボット20、21のロボットアーム20a、21aが左ドアD1等と干渉しないように、ロボット20、21を元位置とする。その後のステップSA4では、当該左ドアD1のサッシュSの建付位置が合格であるとして、ライン制御盤81に当該左ドアD1の識別番号と共に合格信号が出力される。
上記ステップSA2において、サッシュSの建付位置が所定の公差範囲から外れていてNOと判定されると、ステップSA5に進み、第1ロボット制御装置82が、サッシュSの建付位置を所定の公差範囲に収めるための矯正量を得て、この矯正量に基づいて得た変形量だけサッシュSを変形させるように、第1及び第2矯正用ロボット20、21の各々のロボットアーム20a、21aの移動量を決定する。その後、ステップSA6に進み、サッシュSの矯正を行う前に、第1及び第2矯正用ロボット20、21は、第1及び第2矯正用アタッチメント65、76を矯正原点に移動させる。第1矯正用アタッチメント65が矯正原点にあるときには、図8に示すように、内側矯正ヘッド70と外側矯正ヘッド71との間にサッシュSの上縁部における後部が位置するようになっている。第2矯正用アタッチメント76が矯正原点にあるときには、図9に示すように、内側矯正ヘッド70と外側矯正ヘッド71との間にサッシュSの上縁部における前後方向中間部が位置するようになっている。
その後、ステップSA7に進み、上記第1及び第2矯正用ロボット20、21が1回目の矯正作業を行う。これがサッシュ矯正工程である。この矯正作業について詳しく説明する。サッシュSの建付位置によっては、例えば、サッシュSの後部を車室側へ変形させ、前後方向中間部を車外側へ変形させる場合がある。この場合、第1矯正用ロボット20の第1矯正用アタッチメント65を左ドアD1の車室側へ向けて移動させて、外側矯正ヘッド71をサッシュSの車外面(当接面)に当接させる。このとき、外側矯正用ヘッド71がサッシュSの当接面に沿うように動くので、サッシュSの当接面に外側矯正用ヘッド71を安定した状態で当接させることが可能になる。これと同時に、第2矯正用ロボット21の第2矯正用アタッチメント76を左ドアD1の車外側へ向けて移動させて、内側矯正ヘッド70をサッシュSの車内面に当接させる。両アタッチメント65、76が、第1ロボット制御装置82で設定された変形量だけ移動することで、サッシュSの後部と中間部とに異なる変形力が作用し、サッシュSが変形する。尚、サッシュSの建付位置によっては、一方の矯正用アタッチメントのみを移動させることもあるし、両方の矯正用アタッチメントを同じ方向に移動させることもある。また、第1矯正用アタッチメント65の移動量と、第2矯正用アタッチメント76の移動量とは同じ場合もあるし、異なる場合もある。
この1回目の矯正作業が終了すると、ステップSA8に進み、第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51がONとされ、続くステップSA9においては上記ステップSA2と同様に、サッシュSの建付位置が所定の公差範囲内であるか、公差範囲から外れているかを判定する。これが建付位置確認工程である。この2回目の判定の結果、YESの公差範囲内であると判定されれば、ステップSA3、SA4に進む。
一方、上記ステップSA9において、サッシュSの建付位置が所定の公差範囲から外れていてNOと判定されると、ステップSA10に進み、ステップSA5と同様に第1及び第2矯正用ロボット20、21の各々のロボットアーム20a、21aの移動量を決定する。そして、ステップSA11に進んでステップSA7と同様に、2回目の矯正作業を行う。
2回目の矯正作業が終了すると、ステップSA12に進み、第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51がONとされ、続くステップSA13においては上記ステップSA2と同様に、サッシュSの建付位置が所定の公差範囲内であるか、公差範囲から外れているかを判定する。この3回目の判定の結果、YESの公差範囲内であると判定されれば、ステップSA3、SA4に進む。
一方、ステップSA13において、サッシュSの建付位置が所定の公差範囲から外れていてNOと判定されると、ステップSA14に進み、ステップSA5と同様に第1及び第2矯正用ロボット20、21の各々のロボットアーム20a、21aの移動量を決定し、ステップSA15に進んで3回目の矯正作業を行う。しかる後、ステップSA16に進んで、第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51をONにするとともに、第1及び第2矯正用ロボット20、21を元位置とする。
そして、ステップSA17に進み、ステップSA2と同様に、サッシュSの建付位置が所定の公差範囲内であるか、公差範囲から外れているかを判定する。その結果、YESの公差範囲内であると判定されれば、ステップSA4に進む。
一方、ステップSA17において、サッシュSの建付位置が所定の公差範囲から外れていると判定されると、ステップSA18に進み、ライン制御盤81に、当該左ドアD1の識別番号と共に不合格の信号を出力する。この左ドアD1は、ドア製造ラインの下流側において、抜き取られるようになっている。
上記のようにして矯正作業が終わると、左ドア用治具Y1の固定機構42、43が解除状態となって、左ドアD1が搬出用ロボット22により把持されて搬出される。これが搬出工程である。搬出工程が終わると、次に矯正作業を行う左ドアD1が左ドア用治具Y1に新たに搬送されて保持される。
一方、右ドアD2は、右ドア用治具Y2の第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51により得られたサッシュSの建付位置に基づいて、左ドアD1と同様に、第1及び第2矯正用ロボット20、21によりサッシュSの矯正作業が行われる。この際、矯正部67は、第1及び第2矯正用ロボット20、21のロボットアーム20a、21aに取り付けられているので、該ロボット20、21により右ドアD1のサッシュSの形状に合う位置まで移動する。これにより、異なる種類のドアD1、D2のサッシュSの矯正作業を同じロボット20、21及び矯正部67で行うことができる。尚、右ドアD1においても、位置決め用ピンPの締結固定作業が行われる。また、この実施形態1では、治具装置15に左ドア用治具Y1及び右ドア用治具Y2を設けているので、左ドアD1のサッシュSの矯正作業と、右ドアD2の搬送作業とを並行して行うことも可能である。
次に、上記ドア製造ラインで製造するドアが、上記前側の左ドアD1及び右ドアD2から後側の左ドア及び右ドア(図示せず)に変更になる場合について、図12に示すフローチャートに基づいて説明する。ドアの種類が変更になる場合には、始めに、ステップSB1においてライン制御盤81からドア種類変更信号が出力される。これにより、第1及び第2ドア搬送用ロボット12、13と、第1及び第2矯正用ロボット20、21とがドア種類変更モードに切り替わる。これが第1モード切替工程である。その後、治具フレーム33に現在固定されている治具Y1、Y2を外して、次のドアに対応する治具(図示せず)に交換する。
まず、左ドア用治具Y1及び右ドア用治具Y2を治具フレーム33から外す前に、ステップSB2において、第1矯正用ロボット20により、左ドア用治具Y1の第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51と、右ドア用治具Y2の第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51とを1つずつ外していく。すなわち、上記ドア種類変更信号を受けた第1ロボット制御装置82は、第1矯正用ロボット20により第1矯正用アタッチメント65を移動させて、図9に仮想線で示すように、挿入部74を保持部56の筒部材58に挿入した後、可動爪74aを突出させて係合部58aに係合させる。挿入部74を筒部材58に挿入する際、ロボットアーム20aの停止位置が若干ずれて挿入部74が狙いとする位置よりも深く挿入されることが考えられるが、この場合にはコイルバネ59が縮むことによって筒部材58が挿入部74の挿入方向に容易に移動することになる。これにより、保持部56等に無理な力がかかりにくく、破損が抑止される。
上記可動爪74aを係合部58aに係合させた後、オートツールチェンジャ55の結合状態を解除すると、第1サッシュ建付位置測定センサー50が着脱ブラケット54と共に左ドア用治具Y1の本体部40から離脱する。この第1サッシュ建付位置測定センサー50は、治具フレーム33のホルダ61に保持させておく。このようにして4つのサッシュ建付位置測定センサー50、51を順に外してホルダ61に保持させる。これがセンサー格納工程である。その後、ステップSB3に進み、第1及び第2矯正用ロボット20、21のロボットアーム20a、21aを、交換する治具Y1、Y2が干渉しない不干渉位置に移動させておく。
次いで、ステップSB4に進む。このステップSB4では、始めに、第1ドア搬送用ロボット12のドア支持用アタッチメント26をアタッチメント用スタンド28に置く。そして、図5に示すように、上記第1ドア搬送用ロボット12のロボットアーム12aの先端部に装着されている上記ロボット側アダプタ19aを左ドア用治具Y1のアダプタ30bに結合させた後、治具アダプタ36bの結合を解除して左ドア用治具Y1を治具フレーム33から外す。この左ドア用治具Y1を第1治具格納用スタンド17まで搬送し、該スタンド17に保持させる。これが治具格納工程である。
しかる後、上記ロボットアーム12aの先端部と上記オートツールチェンジャ19のロボット側アダプタ19aとの間に装着されているピン係合部29の穴29aを第1治具格納用スタンド17のピン25aに係合させて引っ張るか、押すことにより、スタンド17を回転させて次のドアの種類に対応する治具を第1ドア搬送用ロボット12と向かい合う位置まで持ってくる。そして、上記第1ドア搬送用ロボット12のロボットアーム12aの先端部に装着されている上記ロボット側アダプタ19aを次のドアに対応する治具のアダプタ(図示せず)に結合させた後、該治具をスタンド17から外して治具フレーム33まで搬送し、治具フレーム33のアダプタ36aを結合させて該治具フレーム33に固定する。これが治具設置工程である。上記右ドア用治具Y2を交換する際には、第2ドア搬送用ロボット13を用い、同様にして行う。治具Y1を交換した後、第1及び第2ドア搬送用ロボット12、13のロボットアーム12a、13aの先端部に装着されている上記ロボット側アダプタ19aをドア支持用アタッチメント26のツール側アダプタに結合する。
その後、ステップSB5に進み、ホルダ61に保持されている4つのサッシュ建付位置測定センサー50、51を順に第1矯正用ロボット20で保持した後、新たな治具まで搬送して固定する。これがセンサー取付工程である。サッシュ建付位置測定センサー50、51を取り付けた後、ステップSB6に進み、第1及び第2矯正用ロボット20、21のロボットアーム20a、21aを元の位置に移動させる。そして、ライン制御盤81は、第1及び第2ドア搬送用ロボットと、第1及び第2矯正用ロボット20、21とを、次のドアのサッシュ矯正モードに切り替える。これが第2モード切替工程である。
このようにして治具Yを交換した後、上記した前側のドアD1、D2と同様にして後側のドアのサッシュの矯正作業を行う。この後側のドアのサッシュの形状は、前側のドアD1、D2のサッシュの形状とは異なっているが、第1及び第2矯正用ロボット20、21のロボットアーム20a、21aを動かすことで、矯正用アタッチメント65、76をサッシュSの形状に合う位置まで移動させることが可能になる。これにより、多種混合生産方式のドア製造ラインにおいて、矯正部67を取り外すことなく、ロボット20、21を利用して該矯正部67の位置を容易にかつ素早く変更することが可能になる。さらに、そのように矯正部67をロボットアーム20a、21aに取り付けたまま位置変更することで、変更後の位置を作業者が確認検査する必要もない。
以上説明したように、この実施形態1に係る矯正装置1によれば、矯正用アタッチメント65、76を矯正用ロボット20、21のロボットアーム20a、21aに取り付け、このロボット20、21を用いてサッシュSを矯正するようにしたので、多種混合生産方式のドア製造ラインにおいて、矯正部67の位置を異なる種類のドアD1、D2のサッシュSに容易にかつ素早く対応させることができ、ドアD1、D2の製造工数を削減できる。
また、治具装置15に、左ドア用治具Y1及び右ドア用治具Y2を固定したので、例えば、左ドア用治具Y1に固定した左ドアD1のサッシュSを矯正している間に、右ドア用治具Y2に右ドアD2を搬送し固定して矯正の準備を並行して行うことが可能になる。これにより、ドアD1、D2の製造工数をより一層削減することができる。
また、第1及び第2矯正用ロボット20、21を左ドアD1の後方及び前方にそれぞれ配置したので、サッシュSの前後方向両側を同時に矯正することができる。
また、サッシュ建付位置測定センサー50、51を着脱可能に治具Y1、Y2に取り付けるようにしたので、ドアD1、D2の種類が変更になっても、同一のサッシュ建付位置測定センサー50、51を使用することができ、サッシュ矯正装置1のコストを低減することができる。
また、ドアD1、D2を治具Y1、Y2に固定したまま、第1矯正用ロボット20を用いてドアヒンジHの位置決め用ピンPの締結固定作業を行うことができる。これにより、作業現場での省力化を図ることができる。
また、製造するドアD1、D2の種類が異なる場合には、第1及び第2ドア搬送用ロボット12、13により治具Yの交換を自動化でき、より一層の省力化を図ることができる。
また、サッシュSの矯正時、外側矯正ヘッド71をサッシュSの当接面に沿うように動かすことができるので、サッシュSの車外側の面に外側矯正ヘッド71が当接したことによる打痕等の損傷を抑制することができる。
また、ドアヒンジHの位置決め用ピンPを締結固定し、サッシュSの矯正作業を行ってその結果を確認し、ドアD1、D2を搬出するまでの各工程を1つの矯正ステーションTで実施することができる。これにより、ドア製造ラインのステーション数を削減できる。
また、第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51を非接触型としているので、測定時に該センサー50、51がサッシュSに当たることはなく、該センサー50、51の損傷を防止できる。
尚、この実施形態1では、治具フレーム33に2つの治具Y1、Y2を固定するようにしているが、治具フレーム33には、治具Yを1つだけ固定するようにしてもよいし、3つ以上固定するようにしてもよい。
また、ドアヒンジHの位置決め用ピンPの締結固定作業は、別のステーションで行うようにしてもよい。この場合は、治具Y1、Y2の位置決め機構44及び矯正用アタッチメント76のナットランナ77を省略することができる。
《発明の実施形態2》
図13は、本発明の実施形態2に係るサッシュ矯正装置1を示すものである。この実施形態2のサッシュ矯正装置1は、実施形態1のものに対し、治具Y1と第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51とをロボット20、21、90に持たせている点で異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付し、異なる部分について詳細に説明する。
この矯正装置1は、第1及び第2矯正用ロボット20、21と、ドアD1を位置決めした状態で固定する治具Y1と、治具Y1を持つ治具把持用ロボット90とを備えている。第1及び第2矯正用ロボット20、21のロボットアーム20a、21aの先端部には、矯正用アタッチメント91が取り付けられている。これら矯正用アタッチメント91、91には、上記実施形態1と同様に構成された矯正部67が設けられている。さらに、第2矯正用ロボット21の矯正用アタッチメント91には、ブラケット92を介して第1サッシュ建付位置測定センサー50が取り付けられ、また、第1矯正用ロボット20の矯正用アタッチメント91には、ブラケット92を介して第2サッシュ建付位置測定センサー51が取り付けられている。図14に示すように、治具把持用ロボット90のロボットアーム90aの先端部には、オートツールチェンジャ93を介して上記治具Y1が取り付けられている。この治具Y1は、実施形態1と同様に構成されており、異なる種類のドア用の治具Yと交換可能となっている。
この実施形態2の矯正装置1を用いてサッシュSを矯正する場合には、まず、搬送用ロボット12により搬送されたドアD1を治具Y1に固定する。この左ドアD1が矯正準備位置となるように治具把持用ロボット90のロボットアーム90aを動かして停止させる。その後、第1及び第2矯正用ロボット20、21のロボットアーム20a、21aを動かして第1及び第2サッシュ建付位置測定センサー50、51をサッシュSの第1及び第2測定面に対向する位置まで移動させる。そうしてサッシュSの建付位置を測定し、所定の公差範囲から外れているときには、矯正用アタッチメント91を移動させて矯正作業を行う。また、治具Y1を他の治具に交換する際には、現在固定されている治具Y1を第1治具格納スタンド17に格納した後、このスタンド17から次の治具をロボットアーム90aに固定する。
以上説明したように、この実施形態2に係る矯正装置1によれば、実施形態1のものと同様に、矯正部67を第1及び第2矯正用ロボット20、21で移動させるようにしたので、多種混合生産方式のドア製造ラインにおいて、矯正部67の位置を異なる種類のドアD1、D2のサッシュSに容易にかつ素早く対応させることができ、ドアD1、D2の製造工数を削減できる。
この実施形態2において、治具Y1に位置決め機構を取り付けるとともに、矯正用アタッチメント92にナットランナを取り付けて、ドアヒンジHの位置決め用ピンPの締結固定作業を行うようにしてもよい。
尚、上記実施形態1、2では、自動車の側部にドアヒンジHを介して取り付けられるドアD1、D2のサッシュを矯正する場合について説明したが、本発明は、スライドドアやバックドア等のサッシュを矯正する場合に適用することも可能である。