JP3923358B2 - 光合成機能を用いたバイオアッセイ法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、光合成機能を用いたバイオアッセイ法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、試験物質存在下での光合成機能を測定し、該試験物質の環境への影響を試験するバイオアッセイ法とそれを用いたバイオアッセイ用装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、工業排水や農薬による環境汚染への関心が高まっており、これらに含まれる環境汚染物質の分析技術の向上がますます重要な課題となっている。環境汚染物質の分析方法としては、一般に、化学分析法とバイオモニタリング法が用いられている。しかし、化学分析法は、既知の化学物質の種類と濃度を特定するには有効な手法であるが、未知の物質に対してはほとんど分析が不可能であるという問題があるため、最近では、生物を用いて土壌や排水の汚染の度合いを監視するバイオモニタリング法が重要なバイオアッセイ法として注目されている。具体的には、魚を排水中で飼育して工業排水の安全性を確認するマクロバイオテストや、酵母を用いたマイクロバイオテストが知られている。
【0003】
バイオアッセイ法は、化学分析で検出されない構造や組成を有する物質、あるいは極微量の物質であっても、生物に対する影響が大きければ、鋭敏な生物反応により検出できること、種々の試薬や分析機器を用いる化学分析法よりも安価であることなどの特徴を有する。しかし、これまで知られている多くのバイオアッセイ法は、生物個体の生死をモニタリングするものであり、いわゆるオン・オフ的な評価手法であるため、生物の成長度等に関わるアナログ的な解析を行うことが難しいという問題があった。また、生物個体の増加をモニタリングする比較的アナログ的なバイオアッセイ法も知られているが、これらは対象とする環境下での生物の成長を長期間観察する必要があり、結果を得るまでに時間がかかるという問題があった。さらに、これら従来のバイオアッセイ法では、一生物において一種類の応答のみを評価できたが、環境汚染物質の生物に対する影響は、一般的に複数の物質による多角的な生物反応として現れるものであるため、このような一生物一応答のみに対応した分析方法は、十分な信頼性を有するものとは言い難かったのが実情である。
【0004】
そこでこの出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、環境汚染物質に対し短期間でアナログ的な生物反応を評価できる、簡便で信頼性の高いバイオアッセイ法を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、これまで動植物細胞の培養に関するバイオリアクターの設計を行っており(例えば、J.Chem.Eng.J.pn、 Vol.25, No.5, pp.490-495 (1992); Plant Tissue Culture Lett., Vol.12、 No.2、 pp.201-204 (1995); J.Chem.Eng.Jpn., Vol.31、 No.5、 pp.856-859 (1998); Chem.Eng.Sci., Vol.54, No.15-16, pp.3179-3186 (1999))、最近では画像処理技術を応用した細胞観察ツールを開発し、報告している(Biotechnol.Bioeng., Vol.67, No.2, pp.234-239 (2000))。また、発明者らは、とくに植物毛状根について、その形態的特長を捉えた増殖および代謝産物生成の解析を行い、報告している(例えばJ.Chem.Eng.Jpn., Vol.22, No.6, pp.698-700 (1989); J.Chem.Eng.Jpn., Vol.32, No.3, pp.370-373 (1999); Biochem.Eng.J., Vol.6, No.1, pp.1-6 (2000)他)。
【0006】
発明者らは、これまで、大量生産、大量増殖が目的とされてきた以上のとおりの植物細胞の培養技術に関する知見をもとに、さらに鋭意研究を進めた結果、植物細胞をその光合成機能と形態特徴に基づく新たなセンシングツールとして利用する方法を見出し、この出願の発明に至ったのである。
【0007】
すなわち、この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、まず第1には、試験物質存在下における白色根と緑色根の伸長度を各々測定してそれらの伸長度差から試験物質の存在を検知するとともに、毛の先端部および基部のクロロフィル含量を経時で測定して、その変化量から試験物質を識別することを特徴とする光合成機能を用いたバイオアッセイ法を提供する。
【0010】
さらに、第には、この出願の発明は、根が毛状根である前記のバイオアッセイ法を、さらに、第には、根がパックブンの毛状根である前記のバイオアッセイ法を提供する。
【0011】
そして、この出願の発明は、第には、前記のいずれかのバイオアッセイ方法により試験物質の植物成長への影響を測定するための装置であって、少なくとも、植物部位として白色根と緑色根を設置し、培養するための培養ユニットと、試験物質を含有する培養液を前記培養ユニットに循環させるための送液手段と、前記培養液にガスを導入するための通気手段と、前記植物部位に光を照射するための光源と、該植物部位におけるクロロフィル量および伸長度を測定するための測定手段を有することを特徴とする光合成機能を用いたバイオアッセイ用装置をも提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明のバイオアッセイ法は、試験物質の存在下での光合成機能を有する、または有さない植物部位のクロロフィル量や伸長度を測定するというものである。このとき、試験物質は、既知の物質であっても、未知の物質であってもよい。例えば、特定の物質を、該植物部位に与える水や置かれている雰囲気中に任意の濃度で導入し、その植物部位のクロロフィル量や伸長度への影響を測定してもよいし、排水や屋外等の特定の環境に該植物部位を曝してクロロフィル量や伸長度を測定してもよい。
【0013】
また、この出願の発明のバイオアッセイ法では、使用される植物部位は、光合成機能を有するものおよび/または有さないものが考慮される。
【0014】
光合成は、高等植物から紅藻までの植物において行われる生物反応であり、植物はこれにより光をエネルギー源として、空気中の二酸化炭素と水を有機物に変換し、同時に水から酸素を作り出し、地球上の動植物の生命を支えている。すなわち、光合成は、植物によって光エネルギーを生物学的に利用できる自由エネルギーに変換する過程といえる。
【0015】
光合成は緑色植物の細胞中の葉緑体で行われる。図1に葉緑体における光合成の概略を示した。
【0016】
葉緑体は、一般に2〜8μmの長さの楕円体で細胞あたり数十個含まれる細胞小器官である。葉緑体は二重膜によって包まれており、ラメラ構造を有する内膜系(チラコイド膜:1)と水溶性部分のストロマ(2)を内包するが、チラコイド膜(1)には各種の光合成色素、光合成の電子伝達系の酵素、リン酸化の共役因子などが局在しており、光エネルギーの吸収からNADPHの生成に至る過程は、チラコイド膜中(1)で起こる。一方、NADPHとATPを用いるCO2の固定はストロマ中で起こる。葉緑体はクロロフィルa、b、c、dとカロチン、キサントフィルなどの色素を含むが、高等植物以外ではフィコシアニンやフィコエリトリンを含むものもある。
【0017】
光合成は同化色素(クロロフィルa)が光エネルギーを吸収することによって始まり、光量子によって励起された光合成色素(3)は、他の光合成色素にエネルギーを伝達して最終的に「光合成の反応中心」と呼ばれるクロロフィルa−蛋白質複合体(4、5)に到達し、そこで光化学反応が行われる。光合成が進行するためには、クロロフィルの周囲に存在するカロチノイドやフィコピリン等の集光性色素に吸収される光によって進行する割合の大きい光化学系II(A)と、主として同化色素(クロロフィルa)に吸収される光によって行われる光化学系I(B)の2種類の光化学反応が起こらなければならない。
【0018】
光化学系II(A)の反応中心であるクロロフィルa(P680:4)が励起されると、初発過程の電子受容体(3)が還元され、水が酸化して酸素が発生する(C)。電子は、還元された電子受容体(3)から種々の電子伝達成分(6、7、8、9)を経て、光化学系I(B)の反応中心であるクロロフィルa(P700:5)に到達する。還元されたP700(5)は光化学系I(B)における光化学過程によって酸化され、P700(5)からの電子はいくつかの電子伝達成分(10、11、12)を経て、最終的にはNADP+に渡される(D)。また、光化学系II(A)から光化学系I(B)への電子伝達および光化学系I(B)のまわりの循環的電子伝達に共役し、光リン酸化が起こり、ATPが合成される(E)。
【0019】
植物は生成したNADPHとATPを用いて炭酸固定を行うが、植物は、リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(Rubisco)によって最初の炭酸固定を行うC3植物と、ホスホエノールピルビン酸カルボキシル化酵素によって最初の固定を行うC4植物に大きく分けられる。
【0020】
この出願の発明のバイオアッセイ法では、光合成機能を有する、または有さない植物部位としては、葉や茎が一般的には考慮されるが、根であってもよい。これらの光合成機能を有する、または有さない植物部位のクロロフィル量や伸長度に対する試験物質の影響を分析する場合、試験物質による光合成機能への影響や、光合成機能を有する生物と有さない生物での生物反応の違い等を幅広く検討できるように、このような植物部位が、従属栄養系、光混合栄養系、および光独立栄養系の各形態をいずれも取り得る単一の植物部位であることが好ましい。
【0021】
光従属栄養系植物部位とは、前記のような光合成機能を有さず、栄養形態が外部からの栄養分の吸収や植物内部に貯蔵された栄養分の利用に頼る植物の部位をいい、一般的には根部が例示される。また、光混合系植物部位は、前記の光合成I系の光合成機能のみを有するものであり、栄養分を従属栄養系と同様の形態で吸収、利用すると同時に光合成によっても得られるものである。さらに、光独立系植物部位は、一般に葉に代表されるような、光合成IおよびII系の両方の光合成機能により栄養分を合成できるものをいう。
【0022】
このように従属栄養系、光混合栄養系、および光独立栄養系の各形態を単一の植物部位が有する例としては、根が考慮される。根は一般に養分を土壌あるいは水中から吸収する働きを有する植物部位と考えられているが、発明者らの鋭意研究により、特定の植物の毛状根が光照射により光混合栄養系の緑色毛状根となることが明らかになっている(J.Ferment.Bioeng., Vol.77, No.2, pp.215-217 (1994))。また、CO2を唯一の炭素源として生育することにより、葉緑体機能のより発達した光独立栄養系の緑色毛状根が得られることも、発明者らの研究により分かっている(J.Biosci.Bioeng., Vol.89, No.2, pp.151-156 (2000))。根の中でも毛状根は、有機物などの吸収性に優れ、一次元に伸長し、その伸長速度が定量しやすいため、この出願の発明においてセンシングツールとして好ましく用いられる。毛状根は、イネ、ムギ等の単子葉類、タバコ、パックブン等の双子葉類等のものから適宜選択できる。中でも従属栄養系、光混合栄養系、および光独立栄養系の各栄養形態を有するパックブンの毛状根が好ましい。
【0023】
パックブン(Ipomoea aquatica)は、タイで一般的に食され、日本でも沖縄県等に生息する中国野菜である。前記のとおりに発明者らによって光合成機能を付与されたパックブン毛状根は、根および葉の機能が同一組織内に存在し、かつ葉機能の発達レベルが位置的に分布している多機能型根系組織であることが明らかになっている。パックブンにおける葉機能の特徴としては、光合成(炭酸固定)に関する機能発現を代謝的、構造的に有し、根の基部方向に向かうにつれて、完全な葉緑体を形成しており、位置によって分化の程度に違いが生じることが示されている。一方、根機能の特徴としては、水中および土壌中の物質に対し、吸収性に優れていることなどが挙げられる。
【0024】
この出願の発明のバイオアッセイ法では、植物部位として前記3種の栄養系のパックブンの毛状根を用いることにより、これらの間の機能的差異および毛状根における分化の程度の位置的分布をアナログ的かつ経時的に多変数解析できることから、環境汚染物質に対する応答の多様性が見込まれ、複数の環境汚染物質への応答を解析できると考えられるため、多種多様な植物部位の中でもパックブンの毛状根を選択することが好ましい。もちろん、同様の機能差異を有する各種の公知および新規の植物部位を用いてもよい。
【0025】
各種の植物部位について、その植物部位が環境汚染物質に対する応答素子(応答センサー)として適応可能かどうかは植物部位の形態的・代謝的特長から判断できる。例えば、毛状根では先端の分裂部位が伸長するため、先端から基部方向に年齢分布を生じ、その結果、分化位置的分布が生じる。そこで、種々の機能の異なる植物部位を用い、呼吸活性、光合成活性、クロロフィル生成量の、光強度や培地成分濃度などの外部刺激に対する応答性とその位置的分布を生化学的かつ工学的に評価し、その際、合わせて先端の伸長速度も測定することにより、毛状根分裂組織の活性も評価できる。さらに、透過型顕微鏡により葉緑体内の構造的成熟度(分化度)を、また共焦点レーザー走査型顕微鏡により細胞内に含まれる葉緑体の個数を測定し、毛状根の位置的分布との相関を求めることにより、バイオアッセイ法における応答センサーとしての植物部位を評価することができる。このようにして得られた結果は、複雑に絡み合った多変数データであるため、さらに、他の除草剤や薬剤の存在下における同様のデータを得ることにより、迅速な環境汚染物質に対するバイオアッセイシステムを構築することも可能となる。
【0026】
この出願の発明のバイオアッセイ法は、環境汚染物質に対して形態的に応答を示す植物部位を用いて、環境汚染物質の生物に対する影響を迅速に測定するためのものである。したがって、この植物部位の伸長および葉機能の指標であるクロロフィル生成量を測定項目として、位置的分布の経時的変化を解析することにより、各種環境汚染物質に対する植物部位の応答性が簡便に得られる。
【0027】
また、この出願の発明では、以上のとおりのバイオアッセイ法を用いて環境汚染物質の生物に対する影響を測定するための装置をも提供する。このような装置は、少なくとも、前記のとおりの植物部位として白色根と緑色根を設置し、培養するための培養ユニットと、試験物質を含有する培養液を前記培養ユニットに循環させるための送液手段と、前記培養液にガスを導入するための通気手段と、前記植物部位に光を照射するための光源と、前記植物部位におけるクロロフィル量および伸長度を測定するための測定手段を有することを特徴とするものである。
【0028】
図2にこの出願の発明のバイオアッセイ用装置を例示した概略模式図を示す。このようなバイオアッセイ用装置では、まず、前記のとおりの光合成機能を有する、または有さない植物部位(20)を培養ユニット(21)中に設置し、培養液タンク(22)から送液ポンプ(23)等の送液手段を用いて培養液(24)を循環させる。このとき、培養液はヒーター(25)を用いて保温したり、通気ライン(26)を通じて空気、O2、CO2等のガス(27)で置換したり、あるいは糖等の栄養分を添加して、温度、pH、O2またはCO2濃度、含有有機物等の条件を植物部位(20)の生存および生育にとって好ましいものに調整できる。また、とくに光合成機能を有する植物部位(20)を用いる場合には、光源(28)により光を照射して光合成を促進させてもよい。そして、培養ユニット(21)中の植物部位(20)におけるクロロフィル量および伸長度を測定すればよい。
【0029】
以上のとおりのこの出願の発明のバイオアッセイ用装置では、培養ユニット(21)の形状や材質はとくに限定されない。具体的には、クロロフィル量および伸長度測定手段によって培養ユニット(21)中の植物部位(20)に触れることなく、培養、試験物質の添加、および測定を行うことができる形状であり、培養液(24)や培養液(24)に含まれる物質によって劣化しない材質からなる種々のものが考慮される。とくに透明な樹脂製の培養ユニット(21)が好ましく適用される。また、培養液タンク(22)の容量についてもとくに限定されず、培養ユニット(21)に十分培養液(24)を送液できるものであればよい。さらに、培養液タンク(22)中の培養液(24)には測定対象となる環境汚染物質を添加してもよいし、培養液タンク(22)に測定対象である排水を導入し、前記の送液ポンプ(23)により培養ユニット(21)に送液されるようにしてもよい。
【0030】
この出願の発明のバイオアッセイ用装置においては、クロロフィル量および伸長度を測定するための手段としては、種々のものが考慮されるが、中でも可動式ステージ(29)に設置されたCCDカメラ(30)等が例示される。このとき、測定装置の測定精度は、とくに限定されないが、選択した植物部位(20)の伸長度よりも高い感度で測定できるものであれば、短時間で形態測定を行うことができ、好ましい。例えば、パックブンの毛状根では、標準時の伸長度が一日当たり数mmであるから、測定精度が数μmオーダーであるCCDカメラ(30)を選択すれば、一日以内に形態測定を終了することも可能となり、好ましい。また、クロロフィル量についても、直接的に観察、測定できることから、CCDカメラ(30)が好ましい。さらに、植物部位(20)を高倍率で広範囲にわたって観察し、精度高い測定を行うためには、CCDカメラ(30)は、可動式ステージ(29)上に固定するとよい。これによりCCDカメラ(30)を植物部位(20)の所望の位置に移動できるようになり、好ましい。一方、植物部位(20)に光照射するための光源(28)としては、白熱灯、蛍光灯、UVランプ等種々のものから選択されるが、光合成に必要な680〜700nmの光を照射できるものとする必要がある。
【0031】
この出願の発明のバイオアッセイ法では、植物部位の成長を、生長点での伸長度から、また機能発現の指標であるクロロフィル生成速度を測定項目とし、種々の環境汚染物質の作用部位や濃度効果などを検討できる。また、各種の環境汚染物質について同様の測定を行い、データベースを構築すれば、以降の測定がさらに簡便に、短時間で行えるようになる。
【0032】
この出願の発明では、3種の栄養形態の異なる植物部位をセンサーとして用いることにより、例えば、光合成I系で作用するメチルビオロゲン(Paraquat)、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)、光合成II系で作用するアトラジン、呼吸系に作用するビアラホス等の除草剤の影響を定量的に評価できるようになる。また、光合成I、II系に全般的に関係のある亜硝酸などの窒素化合物や重金属に対する応答性を調べることも可能となる。さらに、光合成能を支配する光強度、CO2濃度、また、呼吸活性能を支配する酸素濃度、糖濃度を操作変数として検討することにより、環境汚染物質による影響に対するこれらの変数の効果も解析できる。
【0033】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0034】
【実施例】
<実施例1> パックブン毛状根の伸長に対する除草剤(DCMU)の影響
〔準備〕3種のパックブン毛状根の作成
化学工学論文集, Vol.17, No.5, pp.1012-1018 (1991)記載の手法によりパックブン(Ipomoea aquatica)から従属栄養系白色毛状根を誘導した。さらに、J.Ferment.Bioeng., Vol.77, No.2, pp.215-217 (1994)に記載される方法に従い、この白色毛状根に光を照射して、光合成機能を一部有する光混合栄養系の緑色毛状根を誘導した。また、J.Biosci.Bioeng., Vol.89, No.2, pp.151-156 (2000)に従ってCO2を唯一の炭素源として前記白色毛状根を生育し、葉緑体機能のより発達した光独立栄養系の緑色毛状根を誘導した。
〔実験〕
(1)パックブン毛状根の培養
3種のパックブン毛状根のうち、白色毛状根の培養は、光無照射下25℃、2%スクロースを含むMurashige-Skoog(MS)液体培地にて、溶存酸素(DO)濃度8.1ppmで培養した。また、光混合栄養系毛状根に対しては、光照射下、25℃、2%スクロースを含む液体培地にて、DO濃度8.1ppmで培養した。さらに、光独立栄養系緑色毛状根に対しては、光照射下、25℃、糖を含まないMS液体培地にて5%CO2の雰囲気下で培養した。
【0035】
表1に各パックブン毛状根の性質をまとめた。
【0036】
【表1】
Figure 0003923358
【0037】
(2)パックブン毛状根の伸長速度測定
測定試験においては、上記に示した種々の培地に0.2%ゲランガム(固化剤)を添加した固体培地を用いた。準備した3種の毛状根を用いて光合成阻害型除草剤の3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU:化学式I(CAS No.330-54-1);東京化成工業株式会社)を共存させ、各毛状根の先端に存在する生長点の伸長速度(RG)をCCDカメラによる24時間の観察より求めた。
【0038】
【化1】
Figure 0003923358
【0039】
図3(a)にDCMU濃度と各毛状根の伸長速度の関係を示した。ただし、毛状根の伸長速度(RG)は、図3(b)に示した方法で求めた。
【0040】
図3より、緑色毛状根ではppbのオーダーでDCMU濃度に依存して伸長阻害が起こるが、光合成能を持たない白色毛状根ではまったく阻害が起こらないことがわかった。これより、これらの毛状根が、環境汚染物質応答センサーとして有効に作用することが確認された。
<実施例2> 光独立栄養系緑色毛状根に対する各種除草剤の影響
(1)光独立栄養系緑色毛状根の伸長速度測定
実施例1の方法で誘導した光独立栄養系緑色毛状根を11W/m2の光照射下、25℃、0.2%のゲランガムを添加したMurashige-Skoog培地にて5%CO2の雰囲気下、糖を添加せずに培養し、前記DCMUと、酸化ラジカル発生型除草剤の1−1’−ジメチル−4,4’−ビピリジニウムジクロリド(Paraquat :化学式II(CAS No. 1910-42-5);東京化成工業株式会社)、植物ホルモン撹乱型除草剤の2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D:化学式III(CAS No. 94-75-7);東京化成工業株式会社)を各々共存させ、この毛状根の先端に存在する生長点をCCDカメラにより培養開始から72時間目〜168時間まで観察し、実施例1と同様の方法により伸長速度(RG)を求めた。
【0041】
【化2】
Figure 0003923358
【0042】
図4に観察に使用した装置の概略模式図を示した。
【0043】
また、図5に、各除草剤による光独立栄養系緑色毛状根の伸長速度への影響を、除草剤濃度と伸長速度の除草剤無添加時に対する比(α=除草剤添加時の伸長速度(RG)/除草剤無添加時の(RG))の関係として示した。さらに、図5より、α=0.5となる除草剤濃度を半数影響濃度(EC50(μM))として算出し、表2に示した。
【0044】
【表2】
Figure 0003923358
【0045】
図5および表2により、いずれの除草剤も生物の伸長を阻害することが確認された。
(2)光独立栄養系緑色毛状根のクロロフィル含量測定
さらに、実施例1の方法で誘導した光独立栄養系緑色毛状根を22W/m2の光照射下、25℃、0.2%のゲランガムを添加したMurashige-Skoog培地にて5%CO2の雰囲気下、糖を添加せずに培養し、各時間(0〜96時間)におけるクロロフィル(Chl)含量を図4に示した装置を用いた画像解析により測定した。
【0046】
Chl含量は、まず、光独立栄養系緑色毛状根の蛍光画像においてChlが赤色蛍光を示すことから、毛状根面積あたりの赤色を数値化し、画像処理計算値FChlとして求めた。さらに、FChlとChl含量の実測値との関係を検量線として用い、画像解析からのChl含量の測定が可能となった。
【0047】
なお、Chl含量は、光独立栄養系緑色毛状根の先端から距離l0=2.5mmおよび35mmの位置について評価した。結果を図6に示した。
【0048】
また、図6(a)より、Chl生成速度(RA=dCChl/dt)を、図6(b)より、Chl減衰速度(RD=dCChl/dt)を算出し、表3に示した。
【0049】
【表3】
Figure 0003923358
【0050】
図6および表3より、除草剤の種類によって、光独立栄養系緑色毛状根においてChl含量が少ないことが知られている先端部でChlの生成を阻害するものとしないもの、光独立栄養系緑色毛状根においてChl含量が多い基部でのChlを減衰させるものとさせないものがあることが確認された。
【0051】
すなわち、表2および表3の結果をまとめると、表4に示したとおり、光独立栄養系緑色毛状根における種々の応答の有無が除草剤によって異なることが明らかになった。
【0052】
【表4】
Figure 0003923358
【0053】
したがって、この出願の発明のバイオアッセイ法において、植物部位の伸長度およびChl含量の変化を指標とすることにより、環境中に存在する薬剤を識別することも可能となることが示唆された。
【0054】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、未知の微量な環境汚染物質についても迅速かつ鋭敏に応答性高く測定できるバイオアッセイ法が提供される。このバイオアッセイ法は、特定の物質による生物反応を検知できるだけでなく、生物に影響を及ぼしている可能性のある複数種の物質の識別をも可能とする。また、このバイオアッセイ法を用いることにより、排水系だけではなく、従来適用困難であった土壌系における環境汚染物質についても、その生物に対する影響を測定できる。
したがって、この出願の発明の光合成機能を用いたバイオアッセイ法は、広範囲の分析に適用でき、有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】光合成の概略を示した模式図である。
【図2】この発明のバイオアッセイ用装置を例示した図である。
【図3】(a)この発明の実施例におけるDCMU濃度と各毛状根の伸長速度の関係を示した図である。(b)この発明の実施例における毛状根の伸長度の測定方法を示した図である。
【図4】この発明の実施例において測定に使用された装置の構成を示した概略模式図である。
【図5】この発明の実施例における各除草剤による光独立栄養系緑色毛状根の伸長速度への影響を示した図である。
【図6】この発明の実施例における各除草剤暴露時の光独立栄養系緑色毛状根のクロロフィル含量の変化を示した図である。(a)l0=2.5mm;(b)l0=35mm
【符号の説明】
A 光化学系II
B 光化学系I
C 水の酸化と酸素発生
D NADPH生成
E ATP生成
1 チラコイド膜
2 ストロマ側
3 光合成色素(Mn含有水分解錯体)
4 クロロフィルa−蛋白質複合体(P680
5 クロロフィルa−蛋白質複合体(P700
6 電子伝達成分(クェンチャー)
7 電子伝達成分(プラストキノン)
8 電子伝達成分(シトクロムf)
9 電子伝達成分(プラストシアニン)
10 電子伝達成分(直接電子受容錯体)
11 電子伝達成分(フェレドキシン)
12 電子伝達成分(NADPレダクターゼ)
20 植物部位、毛状根
21 培養ユニット、シャーレ
22 培養液タンク
23 送液ポンプ
24 培養液
25 ヒーター
26 通気ライン
27 ガス
28 光源、LED
29 可動ステージ
30 CCDカメラ
300 マクロレンズ
310 コンピューター

Claims (4)

  1. 試験物質存在下における白色根と緑色根の伸長度を各々測定してそれらの伸長度差から試験物質の存在を検知するとともに、毛の先端部および基部のクロロフィル含量を経時で測定して、その変化量から試験物質を識別することを特徴とする光合成機能を用いたバイオアッセイ法。
  2. 根が毛状根である請求項1のバイオアッセイ法。
  3. 根がパックブンの毛状根である請求項2のバイオアッセイ法。
  4. 請求項1ないし3のいずれかのバイオアッセイ法により試験物質の植物成長への影響を測定するための装置であって、少なくとも、植物部位として白色根と緑色根を設置し、培養するための培養ユニットと、試験物質を含有する培養液を前記培養ユニットに循環させるための送液手段と、前記培養液にガスを導入するための通気手段と、前記植物部位に光を照射するための光源と、前記植物部位におけるクロロフィル含量および伸長度を測定するための測定手段を有することを特徴とする光合成機能を用いたバイオアッセイ用装置。
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