JP3922354B2 - 空調システムの運転方法および空調システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の室内空調に用いられる空調システムの運転方法および空調システムに係り、特に夜間躯体に蓄熱を行い、昼間にその熱を取り出すことで昼間の空調負担を低減させる空調システムの運転方法および空調システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、省エネルギー対策などの観点から、ビルなどの空調には躯体蓄熱空調システムが用いられている。躯体蓄熱空調システムは、図5に示されるように、空調を行う空調対象室1と、この空調対象室1に供給する空調空気を調製する空気調和機2と、この空気調和機2から空調対象室1へと送られる空調空気の流路を形成する給気ダクト3と、空調対象室1から空気調和機2へと戻る還流空気の流路を形成する還気ダクト4と、から構成されている。このような構成において、夜間は、空気調和機2から給気ダクト3を通じて送られてきた空調空気は、供給ダクト3の途中に上階スラブ5方向に分岐して設けられた蓄熱用吹付けダクト6を通って蓄熱用吹付け口7から上階スラブ5に吹き付けられて蓄熱が行われる。このようにして上階スラブ5に蓄熱が行われた後、その翌日の昼間には、空調対象室1の天井部8に設けられた空調空気用吹出し口9に接続された給気ダクト3から室内10に空調空気が供給される。供給された空調空気は、室内10から天井部8に設けられた還気口11を介して天井チャンバ12に入り、天井チャンバ12内を通過する間に夜間蓄熱された上階スラブ5と熱交換を行うことで還気温度が低下(冷房時)また上昇(暖房時)し、還気ダクト4を通って空気調和機2へと循環する。これにより、非蓄熱時に比べて昼間の空気調和機2の処理負担の低減が可能となる。なお、空調空気の供給先は、供給ダクト3の空調空気用吹出し口9付近と、蓄熱用吹付けダクト6の蓄熱用吹付け口7付近に設けられた切換ダンパ13により行われる。すなわち、上階スラブ5に空調空気を吹き付けて蓄熱を行う場合は、切換ダンパ13を蓄熱用吹付け口7に開いた状態にし、室内10に空調空気を供給する場合は空調空気用吹出し口9側に開いた状態にすることにより供給先が変更される構成となっている。
【0003】
このような躯体蓄熱空調システムにおける蓄熱運転制御方法は、特開平11−223360号公報に提案されている。これは、空調運転・蓄熱運転などの各運転モードを空気調和機2と切換ダンパに接続されたタイマー14によりタイマー制御でこれらを制御して運転モードを切り替えるものであり、この方法では、一定時間だけ躯体への蓄熱を行い、蓄熱運転の開始時刻、時間、終了時刻は予め決められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のタイマ運転による蓄熱運転時間制御では、
▲1▼躯体に蓄熱した熱量を利用する通常空調時間帯では、躯体からの放熱量のコントロールができないため、躯体からの放熱量は空調開始時にもっとも多く、その後時間とともに小さくなってしまう。
▲2▼蓄熱終了後から空調運転開始までの間、躯体内に蓄えられた熱は放熱により次第に天井内に放出されてしまい、空調運転開始時には所定蓄熱量以下になってしまう。
▲3▼当日昼間の熱負荷状況や運転状況により変化する蓄熱運転開始時のスラブ内残存蓄熱量の多い少ないにかかわらず一定時間吹き付けることになる。そのため、残存蓄熱量が多い場合には、設計蓄熱量を満たしても蓄熱運転を継続し、消費エネルギーおよびランニングコストの増大を招く。
という問題点があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、前記従来技術の問題点を解消し、第一には、従来は制御が難しかった躯体からの放熱量を制御可能にし、空調の負担の程度に応じて蓄熱から受け取る熱量を調節可能とすることにある。また、第二には躯体に必要な熱量だけ蓄熱し、無駄なエネルギー消費をなくすことのできる空調システムの運転方法および空調システムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係る空調システムの運転方法は、空調システムの蓄熱運転時に、天井裏空間に空調空気を供給して第一の蓄熱部としての躯体に蓄熱するとともに、前記天井裏空間に設けられ空調空気を空気調和機に戻す還気経路に接続されたダクトを有する第二の蓄熱部に、前記天井裏空間に供給した空調空気を導いて蓄熱し、前記空調システムの空調運転時に、空調対象空間に供給した空調空気を、前記天井裏空間に導入して前記第一の蓄熱部である躯体と熱交換させて前記空気調和機に戻す第一空調運転モードと、前記空調対象空間に供給した空調空気を、前記天井裏空間に導入して前記第一の蓄熱部である躯体と熱交換させた後、さらに前記第二の蓄熱部に導いて熱交換させて前記空調機に戻す第二空調運転モードと、を選択可能である構成とした。
【0007】
このような構成とすることにより、躯体だけでなく還気経路に設けた蓄熱部にも蓄熱を行い、空調対象空間から空気調和機に戻される空調空気が蓄熱から受け取る熱量を、躯体の蓄熱のみとの熱交換により熱量を受け取る運転モードと、躯体および蓄熱部の蓄熱との熱交換により熱量を受け取る運転モードの二つの運転モードを切り換えることにより調節できるため、空調の負荷応じて蓄熱の放熱量の制御が可能である。これにより効率的に蓄熱を利用することが可能であり、空気調和機の負荷を大幅に低減することができる。
【0008】
また、上記空調システムの運転方法を実施するため、本発明に係る空調システムは、空気調和機からの空調空気を輸送する給気ダクトと、この給気ダクトにより輸送された空調空気を前記空気調和機に還流させる還気ダクトと、前記給気ダクトと天井裏空間とを連通し、天井裏空間を構成している第一の蓄熱体としての躯体に躯体蓄熱用空調空気を吹き出す蓄熱用吹出し口と、前記給気ダクトと空調対象空間とを連通し、空調対象空間に空調用空調空気を吹き出す空調用吹出し口と、前記空調対象空間と前記天井裏空間とを連通し、前記空調対象空間に供給された空調用空調空気を前記天井裏空間に流入させる還気口と、前記還気ダクトと前記天井裏空間とを連通し、天井裏空間内の空調空気を前記還気ダクトに流入させる吸込み口と、前記還気ダクトと前記天井裏空間とを連通するバイパス路に設けられ、前記天井裏空間に供給された躯体蓄熱用空調空気を導入通流させるダクトを有し通流時に蓄熱する第二蓄熱部と、前記給気ダクトにより輸送される空調空気を、蓄熱運転時に前記第一の蓄熱体の蓄熱用吹出し口に供給し、空調運転時に前記空調用吹出し口に供給する供給切換部と、蓄熱運転時に前記天井裏空間内の空調空気を前記バイパス路を介して前記還気ダクトに流入させるとともに、空調運転時における前記天井裏空間内の空調空気の前記還気ダクトへの流入を、前記吸込み口を介した流入と、前記バイパス路を介した流入とに選択可能な還気切換部と、を有する構成とした。
【0009】
上記のような構成において、空気調和機から給気ダクトを通じて輸送される空調空気は、給気ダクトに設けられた給気切換部を切り換えることにより、空調空気の供給先が蓄熱用吹出し口と空調用吹出し口の間で切り換えられる。これにより蓄熱運転と、通常の空調運転の切り換えを行うことができる。また、空調対象空間に供給された空調空気は、還気口を介して天井裏空間に流入し、躯体の蓄熱と熱交換を行った後、還気ダクトを介して空気調和機に戻される。このとき、還気ダクトに設けられた還気切換部を切り換えることにより、天井裏空間内の空調空気を吸込み口を介した流入と、蓄熱部を有したバイパス路を介した流入との間で流入経路が切り換えられる。空調空気がバイパス路を介して空気調和機に戻る場合は前記蓄熱部と熱交換が行われる。このため、天井裏空間の空調空気を空気調和機に戻す際の流入先を前記還気切換ダンパにより切り換えることにより、空調空気が躯体のみと熱交換を行う場合と、躯体と蓄熱部の両方と熱交換を行う場合とに切り換えることができる。これにより、蓄熱から受け取る熱量を調節できるため、空調の負荷応じて蓄熱の放熱量の制御が可能である。これにより効率的に蓄熱を利用することができ、空気調和機負荷の大幅な低減が可能である。
【0010】
また、前記第二の蓄熱部は、前記天井裏空間に配設されて蓄熱部材からなり、前記バイパス路を形成する蓄熱還気ダクトであるとよい。これにより、空調空気が蓄熱還気ダクト内を流通して空気調和機に戻る過程で熱交換が行われる。
【0011】
さらに、前記蓄熱還気ダクトは、内部が二重構造として構成され、中空部に比熱の大きい物質が保持された構成とした。これにより蓄熱還気ダクトの熱容量が大きくなり、より蓄熱量を増加させることができる。
【0012】
また、本発明に係る空調システムは、空気調和機からの空調空気を輸送する給気ダクトと、この給気ダクトにより輸送された空調空気を前記空気調和機に還流させる還気ダクトと、前記給気ダクトと天井裏空間とを連通し、天井裏空間を構成している第一の蓄熱体としての躯体に躯体蓄熱用空調空気を吹き出す蓄熱用吹出し口と、前記給気ダクトと空調対象空間とを連通し、空調対象空間に空調用空調空気を吹き出す空調用吹出し口と、前記空調対象空間と前記天井裏空間とを連通し、前記空調対象空間に供給された空調用空調空気を前記天井裏空間に流入させる還気口と、前記還気ダクトと前記天井裏空間とを連通し、天井裏空間内の空調空気を前記還気ダクトに流入させる吸込み口と、前記還気ダクトと前記天井裏空間とを連通するバイパス路に設けられ、前記天井裏空間に供給された躯体蓄熱用空調空気を導入通流させるダクトを有し通流時に蓄熱する第二蓄熱部と、前記給気ダクトにより輸送される空調空気を、蓄熱運転時に前記蓄熱用吹出し口に供給し、空調運転時に前記空調用吹出し口に供給する供給切換部と、躯体の蓄熱量を検出する躯体蓄熱量検出手段と、躯体蓄熱量検出手段の検出した躯体蓄熱量と、予め与えられた目標蓄熱量とから前記躯体に蓄熱する必要熱量を求める蓄熱必要量演算部手段と、この蓄熱必要量演算手段が求めた必要熱量と、予め与えられたアルゴリズムに基づいて、前記躯体に蓄熱する時間を求める蓄熱時間演算手段と、この蓄熱時間演算手段が求めた蓄熱時間と、予め与えられた蓄熱運転終了時刻とから、蓄熱運転の開始時刻を求め、この求められた蓄熱運転開始時刻に前記空気調和機を起動するとともに、前記給気切換部を制御して前記給気ダクトが輸送する空調空気を前記蓄熱用吹出し口に供給する蓄熱運転制御手段と、を有する構成とした。
【0013】
上記のような構成とし、躯体の蓄熱量に基づいて蓄熱運転の開始時刻を求めるため、躯体が必要蓄熱量を取得した後の無駄な蓄熱運転時間がなくなり、エネルギーの浪費をなくすことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る空調方法および空調システムの具体的実施形態を、図面を参照しつつ、詳細に説明する。なお、図5に示した従来の実施形態と同一の構成には、同一番号を符している。
【0015】
図1は本実施形態に係る空調システムの説明図である。図1において、空調を行う空調対象室1は、躯体である下階スラブ20と上階スラブ5の間に形成されている。上階スラブ5の下方には天井部8が形成されており、これにより下階スラブ20との間に空調対象空間である室内10と、上階スラブ5との間に天井裏空間である天井チャンバ12を形成している。
【0016】
天井チャンバ12には、空調対象室1の外部に設置された空気調和機2が調製した空調空気の空調対象室1への流路を形成する給気ダクト3が配設されている。供給ダクト3は、空気調和機2に一端部が接続され、他端部が天井部8に形成された室内10と天井チャンバ12を連通する吹出し口9に接続されており、給気ダクト3内を流通する空調空気はこの吹出し口9から空調対象室1の室内10へ供給される。また、給気ダクト3は、天井チャンバ12内で上階スラブ5方向に分岐して蓄熱用吹付けダクト6が形成されている。蓄熱用吹付けダクト6の先端には給気ダクト3と天井チャンバ12を連通する蓄熱用吹付け口7が形成されており、上階スラブ5に向けて空調空気を吹き付けて蓄熱を行うように構成されている。給気ダクト3の蓄熱用吹付けダクト6との分岐部分には、給気切換部である給気切換ダンパ22が設けられており、この給気切換ダンパ22を切り換えることにより、空調空気の供給先を吹出し口9と蓄熱用吹付け口7との間で切り換える構成となっている。
【0017】
また、天井チャンバ12には、還気ダクト24が配設されており、この還気ダクト24により天井部8に設けられた室内10と天井チャンバ12を連通する還気口11を介して天井チャンバ12内に流入してきた空調空気を空気調和機2に還流させている。すなわち、還気ダクト24は、一端部が空気調和機2に接続されるとともに、他端部が天井チャンバ12に架設されて空気の流路を形成している。還気ダクト24の他端部には還気ダクト24と天井チャンバ12とを連通する吸込み口26が設けられており、ここから還気ダクト24に空調空気を流入させる。また、還気ダクト24は、天井チャンバ12架設部の空調対象室側壁付近から分岐している。この分岐には、バイパス路である蓄熱還気ダクト28が接続されており、還気ダクト24と天井チャンバ12を連通している。還気ダクト24の蓄熱用還気ダクト28との分岐部分には、還気切換部である還気切換ダンパ29が設けられており、この還気切換ダンパ29を切り替えることにより、天井チャンバ12内の空調空気の流入口を吸込み口26と蓄熱用還気ダクト28との間で切り換える構成となっている。
【0018】
蓄熱用還気ダクト28は図2(a)の斜視図に示されるように、外ダクト30の外周を断熱材32で覆った構成となっており、これにより蓄熱部を形成している。蓄熱用還気ダクト28の内部は、図2(b)の図2(a)のA−A線断面図に示されるように、外ダクト30の内部に内ダクト34を配置し、この内ダクト34の外壁と外ダクト30の内壁の間にサポート部材36を設けて内ダクト34を支持することにより二重構造とした構成となっている。外ダクト30の上部外壁面には水注入栓38が設けられており、ここから内ダクト34と外ダクト30の間に形成される外側中空部40に水を注入することにより、蓄熱量を増加させている。これにより、内ダクト34が形成する内側中空部42に還気が流通する際に、外側中空部40に保持された水と還気との間で熱交換が行われる。
【0019】
空調対象室1の上階スラブ5には、温度センサ44が埋め込まれており、これにより上階スラブ5の温度を検出している。この温度センサ44の埋め込み位置は躯体蓄熱の運転条件(吹付け温度、吹付け風量)を変化させた蓄熱実験と放熱実験により求められる。温度センサ44は、制御部46に接続されており、検出した温度のデータを制御部46に送るようになっている。制御部46は、温度センサ44とともに、空気調和機2、給気切換ダンパ22および還気切換ダンパ29に接続されており、温度センサ44から送られてくる温度を基に、これらを制御している。
【0020】
図3に制御部46の要部構成ブロック図を示す。制御部46は主に、上階スラブ5の蓄熱量を検出する躯体蓄熱量検出手段である蓄熱量検出部48と、この蓄熱量検出部48が検出した上階スラブ5の蓄熱量と予め与えられた目標蓄熱量が記憶された目標蓄熱量記憶部50に記憶される蓄熱量とを比較して必要な蓄熱量を演算する蓄熱必要量演算部52と、この蓄熱必要量演算部52が求めた必要熱量に到達するまでに要する蓄熱時間を演算する蓄熱時間演算手段である蓄熱時間演算部54と、蓄熱時間演算部54が求めた蓄熱時間をもとに、空気調和機2および給気切換ダンパ22を制御して蓄熱運転をコントロールする蓄熱運転制御部56と、を有している。
【0021】
蓄熱量検出部48は上階スラブ5に埋め込まれた温度センサ44と、蓄熱量を演算する蓄熱量演算部48aと、から構成されている。蓄熱量演算部48aでは、温度センサ44から送られてきたデータをもとに上階スラブ5の蓄熱量を求める。ここで得られた蓄熱量のデータをもとに、蓄熱必要量演算部52で必要熱量が求められ、この必要熱量に基づいて蓄熱時間演算部54で蓄熱時間が算出される。蓄熱時間は、空調空気温度、空調空気供給量、外気温、上階スラブ5に関するパラメータ(熱容量、放熱係数、面積、体積)等から予め与えられたアルゴリズムである蓄熱曲線を用いて算出される。
【0022】
蓄熱運転制御部56では上記のように求められた蓄熱時間に基づいて蓄熱運転の制御を行う。蓄熱運転制御部56は、蓄熱時間演算部54が求めた蓄熱時間と蓄熱運転終了時刻記憶部58が記憶する予め与えられた蓄熱運転終了時刻とから蓄熱運転の開始時刻を求める蓄熱運転開始時刻演算部56aと、蓄熱運転開始時刻演算部56aが算出した蓄熱運転開始時刻とタイマ60からの時刻とに基づいて空気調和機2および給気切換ダンパ22を制御する蓄熱運転開始指令出力部56bと、蓄熱運転終了時刻記憶部58が記憶する蓄熱運転終了時刻と温度センサ44が検出する上階スラブ5の温度または蓄熱必要量演算部が算出する値とに基づいて空気調和機2および給気切換ダンパ22を制御する蓄熱運転終了指令出力部56cから構成されている。
【0023】
次に、本実施形態に係る空調システムの動作について説明する。
図4は、本空調システムの運転フローチャート図である。まず、給気ダクト3に設置された給気切換ダンパ22を吹出し口9側に空気調和機2からの空調空気が流通するように設定し、吹出し口9から空調空気を供給して室内10の空調を開始する。そして、制御部46のタイマ60から1分ごとに時刻を取得し(S100)、空調終了時刻になったか判断する(S102)。ここでは空調終了時刻を21時55分としているので、この時刻に達していない場合は、ステップ100に戻り、時刻の取得と判断を継続する。21時55分になっている場合は、蓄熱運転開始部指令出力部56bから空気調和機2と給気切換ダンパ22に制御信号が送信され、空気調和機2が停止されるとともに空調空気の通流方向が蓄熱用吹出し口6側に切り換えられる(S104)。次に温度センサ44により上階スラブ5の温度を検出し、この温度データをもとに蓄熱量演算部48aで上階スラブ5の蓄熱量を求める。続いて求められた蓄熱量と目標蓄熱量記憶部50から取得した目標蓄熱量とに基づいて蓄熱必要量演算部52において目標蓄熱量到達に必要な熱量を求め、求められた熱量から、蓄熱時間演算部54において目標蓄熱量到達に必要な時間である必要蓄熱運転時間(TQ)を求める。そして蓄熱開始時間演算部56aで、蓄熱時間演算部54で求められた蓄熱時間と蓄熱運転終了時刻記憶部58から取得した蓄熱運転終了時刻から蓄熱開始時刻(TQS)を求める(S106)。続いてICOUNTを0とし(S108)、1分ごとに時刻を取得する(S110)。次にICOUNTに1を加え(S112)、ICOUNTが15より小さいかを判断する(S114)。ICOUNTが15以上の場合はステップ112に戻り、以降の手順を繰り返す。ICOUNTが15より小さい場合は、ステップ110で取得した時刻が蓄熱開始時刻であるかを判断する(S116)。蓄熱開始時刻でない場合はステップ106に戻り、以降の手順を繰り返し、時間経過とともに変化する上階スラブ温度に対して15分毎に最適な蓄熱開始時刻を算出する。蓄熱開始時刻である場合は、蓄熱開始指令出力部56aから空気調和機2に制御信号を送信して空調空気の供給を再開し、蓄熱運転を開始する(S118)。次に温度センサ44が検出する上階スラブ温度(TS)を蓄熱運転終了指令出力部56cに取り込む(S120)。続いて1分ごとに時刻を取得し(S122)、時刻が蓄熱運転終了時刻であるかを判断する(S124)。ここでは蓄熱運転終了時刻を8時としているので、取得した時刻が8時00分である場合は、蓄熱運転終了指令出力部56cから給気切換ダンパ22に制御信号が送信され、空調空気の通流方向が吹出し口9側に切り換えられる(S130)。取得した時刻が8時00分でない場合は、上階スラブ温度が設計最終温度より小さいかを判断する(S126)。上階スラブ温度が設計最終温度以上の場合はステップ120に戻り、以降の手順を繰り返す。上階スラブ温度が設計最終温度より小さい場合、または蓄熱必要量演算部52が算出した必要熱量がゼロの場合は、蓄熱運転終了指令出力部56cから空気調和機2に制御信号が送信され、空調空気の供給が停止される(S128)。そして、ステップ130において蓄熱運転終了指令出力部56cから給気切換ダンパ22に制御信号が送信され、空調空気の通流方向が吹出し口9側に切り換えられるとともに、空気調和機2に制御信号が送られ通常空調運転が開始される。
【0024】
上述したように、本実施形態に係る空調システムでは、温度センサ44が検出した上階スラブ5の温度をもとに、上階スラブ5の蓄熱量、必要蓄熱量、蓄熱時間を求め、これに基づいて空気調和機2および給気切換ダンパ22をコントロールして蓄熱運転を制御している。このように、上階スラブの温度に基づいて蓄熱運転の開始時刻を求めるため、躯体が必要蓄熱量を取得した後の無駄な蓄熱運転時間をなくすことができる。これによりエネルギーの浪費をなくすことができる。なお、蓄熱用還気ダクト28にも温度センサを設けて温度を検出し、上階スラブ5の蓄熱量と比較しながら両者の必要蓄熱量に達するまで蓄熱運転を行うように制御部46でコントロールしてもよい。また、蓄熱用還気ダクト28が設置されていない場合でも制御部46による蓄熱運転は適用可能である。
【0025】
次に、本実施形態に係る空調システムにおいて上階スラブ5の蓄熱を利用した空調方法について説明する。
まず、夜間に行われる蓄熱運転時の動作について説明する。図1において、空気調和機2で調製された空調空気は、給気ダクト3を通って空調対象室1に輸送される。蓄熱運転時は、給気ダクト3に設置された給気切換ダンパ22が蓄熱用吹出し口7側に開放され、空調空気が蓄熱用吹出し口7から供給されるようになされている。蓄熱用吹出し口7から供給される空調空気は、上階スラブ5に向かって吹付けられる。このとき、上階スラブ5は冷却または加温され、冷熱または温熱が蓄熱される。蓄熱を行った後の空調空気は、還気となって還気ダクト24を通じて空気調和機2に戻される。このとき、還気ダクト24に設けられた還気切換ダンパ29が蓄熱用還気ダクト28側に開放され、還気はこの蓄熱用還気ダクト28を通って空気調和機2に還流される。このとき、蓄熱用還気ダクト28の外側中空部40に保持された水は、内側中空部42を流通する還気により蓄熱が行われる。
【0026】
次に、第一空調運転モードである上階スラブ蓄熱利用運転モードの動作について説明する。この運転モードは、空調負荷が低い時間帯に使用される運転モードであり、上階スラブ5の蓄熱のみを利用して空調運転を行う。すなわち、還気ダクト24に設けられた還気切換ダンパ29が吸込み口26側に開放されており、昼間の空調運転時において室内10から還気口11を介して天井チャンバ12に流入した空調空気は、夜間に蓄熱された上階スラブ5と熱交換を行って冷却または加温された後、吸込み口26から還気ダクト24に流入し、空気調和機2に還流される。これにより、空気調和機2における冷房時または暖房時の冷却または加温のための負荷を低減することができる。
【0027】
続いて第二空調運転モードである上階スラブ・蓄熱用還気ダクト蓄熱利用運転モードの動作について説明する。この運転モードは、空調負担のピーク時に使用される運転モードであり、上階スラブ5および蓄熱用還気ダクト28の蓄熱を利用して空調運転を行うものである。すなわち、還気ダクト24に設けられた還気切換ダンパ29が蓄熱用還気ダクト28側に開放されており、昼間の空調運転時において室内10から還気口11を介して天井チャンバ12に流入した空調空気は、夜間に蓄熱された上階スラブ5と熱交換を行って冷却または加温が行われる。上階スラブ5と熱交換を行った空調空気は、蓄熱用還気ダクト28に流入し、ダクト内を流通する過程において外側中空部40に保持された水と熱交換を行って冷却または加温され、空気調和機2に還流される。このように、上階スラブ5だけでなく蓄熱用還気ダクト28の蓄熱も利用することにより、空調ピーク時の空気調和機2における冷房時または暖房時の冷却または加温のための負荷低減を図ることができる。
【0028】
上記のように、本実施形態に係る空調システムの空調方法では、上階スラブ5の蓄熱のみを利用した空調運転と、上階スラブ5および蓄熱用還気ダクト28の両方の蓄熱を利用した空調運転を空調負荷の大小に応じて切り換えることにより、放熱量の制御が可能である。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、躯体だけでなく還気経路に設けた蓄熱部にも蓄熱を行い、空調対象空間から空気調和機に戻される空調空気が蓄熱から受け取る熱量を、躯体の蓄熱のみとの熱交換により熱量を受け取る運転モードと、躯体および蓄熱部の蓄熱との熱交換により熱量を受け取る運転モードの二つの運転モードを切り換えることにより調節できる。このため、空調の負荷応じて蓄熱の放熱量を制御することができるため、効率的に蓄熱を利用することが可能であり、空気調和機の負荷を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る空調システムの説明図である。
【図2】 実施の形態に係る蓄熱用還気ダクトの断面図であり、(a)斜視図、(b)(a)のA−A線断面図である。
【図3】 制御部の構成ブロック図である。
【図4】 本発明の実施形態に係る空調システムの運転フローチャート図である。
【図5】 従来の空調システムの説明図である。
【符号の説明】
1………空調対象室、2………空気調和機、3………給気ダクト、4………還気ダクト、5………上階スラブ、6………蓄熱用吹付けダクト、7………蓄熱用吹付け口、8………天井部、9………吹出し口、10………室内、11………還気口、12………天井チャンバ、20………下階スラブ、22………給気切換ダンパ、24………還気ダクト、26………吸込み口、28………蓄熱用還気ダクト、29………還気切換ダンパ、30………外ダクト、32………断熱材、34………内ダクト、36………サポート部材、38………水注水口、40………外側中空部、42………内側中空部、44………温度センサ、46………制御部、48………蓄熱量検出部、48a………、蓄熱量演算部50………目標蓄熱量記憶部、52………蓄熱必要量演算部、54………蓄熱時間演算部、56………蓄熱運転制御部、56a………蓄熱運転開始時刻演算部、56b………蓄熱運転開始指令出力部、56c………蓄熱運転終了指令出力部、58………蓄熱運転終了時刻記憶部、60………タイマ。
Claims (5)
- 空調システムの蓄熱運転時に、
天井裏空間に空調空気を供給して第一の蓄熱部としての躯体に蓄熱するとともに、
前記天井裏空間に設けられ空調空気を空気調和機に戻す還気経路に接続されたダクトを有する第二の蓄熱部に、前記天井裏空間に供給した空調空気を導いて蓄熱し、
前記空調システムの空調運転時に、
空調対象空間に供給した空調空気を、前記天井裏空間に導入して前記第一の蓄熱部である躯体と熱交換させて前記空気調和機に戻す第一空調運転モードと、
前記空調対象空間に供給した空調空気を、前記天井裏空間に導入して前記第一の蓄熱部である躯体と熱交換させた後、さらに前記第二の蓄熱部に導いて熱交換させて前記空調機に戻す第二空調運転モードと、
を選択可能であることを特徴とする空調システムの運転方法。 - 空気調和機からの空調空気を輸送する給気ダクトと、
この給気ダクトにより輸送された空調空気を前記空気調和機に還流させる還気ダクトと、
前記給気ダクトと天井裏空間とを連通し、天井裏空間を構成している第一の蓄熱体としての躯体に躯体蓄熱用空調空気を吹き出す蓄熱用吹出し口と、
前記給気ダクトと空調対象空間とを連通し、空調対象空間に空調用空調空気を吹き出す空調用吹出し口と、
前記空調対象空間と前記天井裏空間とを連通し、前記空調対象空間に供給された空調用空調空気を前記天井裏空間に流入させる還気口と、
前記還気ダクトと前記天井裏空間とを連通し、天井裏空間内の空調空気を前記還気ダクトに流入させる吸込み口と、
前記還気ダクトと前記天井裏空間とを連通するバイパス路に設けられ、前記天井裏空間に供給された躯体蓄熱用空調空気を導入通流させるダクトを有し通流時に蓄熱する第二蓄熱部と、
前記給気ダクトにより輸送される空調空気を、蓄熱運転時に前記第一の蓄熱体の蓄熱用吹出し口に供給し、空調運転時に前記空調用吹出し口に供給する供給切換部と、
蓄熱用運転時に前記天井裏空間内の空調空気を前記バイパス路を介して前記還気ダクトに流入させるとともに、空調運転時における前記天井裏空間内の空調空気の前記還気ダクトへの流入を、前記吸込み口を介した流入と、前記バイパス路を介した流入とに選択可能な還気切換部と、
を有することを特徴とする空調システム。 - 前記第二の蓄熱部は、前記天井裏空間に配設されて蓄熱部材からなり、前記バイパス路を形成する蓄熱還気ダクトであることを特徴とする請求項2に記載の空調システム。
- 前記蓄熱還気ダクトは、内部が二重構造として構成され、中空部に比熱の大きい物質が保持されたことを特徴とする請求項3に記載の空調システム。
- 空気調和機からの空調空気を輸送する給気ダクトと、
この給気ダクトにより輸送された空調空気を前記空気調和機に還流させる還気ダクトと、
前記給気ダクトと天井裏空間とを連通し、天井裏空間を構成している第一の蓄熱体としての躯体に躯体蓄熱用空調空気を吹き出す蓄熱用吹出し口と、
前記給気ダクトと空調対象空間とを連通し、空調対象空間に空調用空調空気を吹き出す空調用吹出し口と、
前記空調対象空間と前記天井裏空間とを連通し、前記空調対象空間に供給された空調用空調空気を前記天井裏空間に流入させる還気口と、
前記還気ダクトと前記天井裏空間とを連通し、天井裏空間内の空調空気を前記還気ダクトに流入させる吸込み口と、
前記還気ダクトと前記天井裏空間とを連通するバイパス路に設けられ、前記天井裏空間に供給された躯体蓄熱用空調空気を導入通流させるダクトを有し通流時に蓄熱する第二蓄熱部と、
前記給気ダクトにより輸送される空調空気を、蓄熱運転時に前記蓄熱用吹出し口に供給し、空調運転時に前記空調用吹出し口に供給する供給切換部と、
躯体の蓄熱量を検出する躯体蓄熱量検出手段と、
躯体蓄熱量検出手段の検出した躯体蓄熱量と、予め与えられた目標蓄熱量とから前記躯体に蓄熱する必要熱量を求める蓄熱必要量演算部手段と、
この蓄熱必要量演算手段が求めた必要熱量と、予め与えられたアルゴリズムに基づいて、前記躯体に蓄熱する時間を求める蓄熱時間演算手段と、
この蓄熱時間演算手段が求めた蓄熱時間と、予め与えられた蓄熱運転終了時刻とから、蓄熱運転の開始時刻を求め、この求められた蓄熱運転開始時刻に前記空気調和機を起動するとともに、前記給気切換部を制御して前記給気ダクトが輸送する空調空気を前記蓄熱用吹出し口に供給する蓄熱運転制御手段と、
を有することを特徴とする空調システム。
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