JP3922127B2 - 組付不良判定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、組付設備の作動時に生ずる振動波に基いて、製品の組付不良、例えば嵌合不良を判定する組付不良判定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特開平10−300730号公報に記載されるように、対象物をハンマーなどで軽くたたき、そのとき発生する音または振動を検出し、この振動波の判定に基いて、対象物の内容の判別、構造物の割れの検査などを行う技術が知られている。なお、本明細書では、音と振動を総称して振動波という。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、打音等が発生する場合に、その動作スピード等により音圧レベルが変化する。そこで、上記公報では振動検出器のような専用のセンサを設置し、このセンサ出力を用いて音圧レベルの変化を補正しているが、そのための特別なセンサが必要となり、また判定システムが複雑化する可能性がある。
【0004】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであって、特別のセンサを用いずとも、組付設備の作動時に生ずる振動波に基いて、製品の組付不良を精度良く判定することが可能な組付不良判定装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1ないし請求項9に記載の技術的手段を採用する。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、製品の組付作業時に発生する振動波を検出することにより製品の組付不良を判定する組付不良判定装置において、
前記製品の組付作業時に生ずる振動波を検出入力する振動波入力手段と、入力された前記振動波から、前記製品から生ずる所定周波数帯域の第1の振動波を周波数分離、抽出する第1の手段と、入力された前記振動波から、前記製品を組付ける組付設備から生じ、前記第1の振動波と相関した出力レベルをもつ特定の周波数帯域の第2の振動波を周波数分離、抽出する第2の手段と、前記第1の振動波と閾値とに基いて前記製品の組付不良を判定する判定手段と、前記第2の振動波の出力レベルに基いて、前記判定手段に与える前記第1の振動波および前記閾値の少なくとも一方のレベルを調整する調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
それにより、特別なセンサを用いずとも、振動波入力手段に入力された振動波を利用して、第2の振動波の出力レベルから第1の振動波の出力レベルの大きさを判断できるようになる。つまり、第2の振動波の出力レベルに基づいて、第1の振動波もしくは閾値を適正レベルに調整することにより製品の組付不良の判定精度を向上させることが可能となる。
【0009】
請求項2,3記載の発明によれば、第1、第2の手段にウエーブレット変換手段を用いることで、組付時に製品から生じる所定周波数帯域の第1の振動波を効果的に周波数分離することができる。また、第2の振動波として組付設備の機械作動音を効果的に周波数分離することができる。
【0010】
請求項4記載の発明によれば、調整手段は、第2の振動波の出力レベルに基いて第1の振動波の出力レベルを補正する補正量を記憶したパラメータテーブルを有し、この補正量に基いて判定手段に与える第1の振動波のレベルを補正することで、判定装置のシンプル化、演算の高速化を実現することができる。
【0011】
請求項5記載の発明によれば、例えば組付スピードなど組付設備の動き度合に応じてエネルギー量が大きくなり両振動波の音圧も高くなることを利用して、調整手段は、第2の振動波の出力レベルに対して、逆比例の関係に第1の振動波のレベルを調整すると共に、比例の関係に閾値を調整することで、判定手段への入力レベルを安定させ、判定精度の向上に有効になる。
【0012】
請求項6、7記載の発明によれば、第1の手段、ウエーブレット変換手段により周波数分離した第1の振動波のノイズ除去を行う第1のフィルタ部を有し、また第2の手段、ウエーブレット変換手段により周波数分離した前記第2の振動波のノイズ除去を行う第2のフィルタ部を有することで、各振動波に含まれるノイズを低減可能になる。
【0013】
請求項8記載の発明によれば、組付設備は、製品の組付作動時に可動する可動部と、この可動部の動き度合に応じた第2の振動波を発生する音発生器とを有することで、機械作動音に頼ることなく、希望する周波数帯域や音圧レベルをもつ第2の振動波を得ることが可能となり、判定装置の適合がし易くなる。
請求項9記載の発明は、前記第1の振動波が、前記製品のスナップフィット機構の嵌合によって前記製品から発生することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について図を用いて説明する。
【0015】
以下の説明では、対象物として製品の組付作業時に発生する組付音(嵌合音)を検出することにより製品の組付(嵌合)不良を判定する例について説明する。しかしながら、本発明の振動波判定装置100は、この用途に限定されず、その他の用途にも適用可能である。また、音の代わりに振動の検出にも適用できる。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態におけるシステム構成を示す。
【0017】
ここで、対象物1として本例では樹脂製品の自動組付、特に組付時に大きな音が生じる例として、図3に示すようなスナップフィット機構を用い、図示しない組付設備等により樹脂部品101の孔部102に樹脂部品103の係合用突部104を嵌合させて両樹脂部品101、103を組付ける作業工程からの音発生例を挙げている。図4(a)、(b)は組付時に発生する振動波の一例であり、組付良否に応じて嵌合音の音圧レベルが変化することを示している。組付時の音発生の特徴として、組付設備等の動きに伴なう機械作動音と嵌合状況を伝える嵌合音(つまり判定したい目的作動音)とが発生し、両音は部品の組付スピード等の大きさに応じた音圧レベルを有すると共に、両音の音圧レベルは互いに相関して変化することである。
【0018】
マイクロホン2は、振動波判定の対象物1に発生した振動を音波として検出して電気信号に変換する。マイクロホン2から入力された音圧の電気信号は、振動波判定装置100の増幅器3に入力されて、A/D変換器4に出力される。このA/D変換器4では音圧信号をデジタル信号に変換して、後段の記憶装置5に出力され記憶処理される。
【0019】
ウエーブレット変換(Wavelet Transform)演算器6は、所定のタイミングにて記憶装置5に記憶されたデジタル音圧信号S0を取込み、このデジタル音圧信号S0を、予め設定された周波数帯域毎に分離し、時系列信号に変換する。一般にウエーブレット変換演算器6は、基底関数(ウエーブレット関数)を拡大あるいは縮小することにより、デジタル音圧信号S0を各周波数の時系列信号に分離する演算器である。本例では、組付音として1つ以上のスナップフィット機構より発生する目的作動音である嵌合音に合わせた第1の周波数帯域と、組付設備等の動きに伴なう比較的音圧レベルの高い特定の機械作動音に合わせた第2の周波数帯域とが設定されている。なお、これら第1、第2の周波数帯域は、対象とする嵌合音や機械作動音の特性に応じてそれぞれ1つまたは複数の周波数帯域の集合帯域からなる。
【0020】
フィルタ処理器7は、第1の周波数帯域の時系列信号から嵌合音以外の周波数帯域の信号をカットし、嵌合音信号S1として出力する第1のフィルタ部71と、第2の周波数帯域の時系列信号から特定の機械作動音以外の周波数帯域の信号をカットし、機械作動音信号S2として出力する第2のフィルタ部72とを有する。
【0021】
補正器8は、調整手段の一部を構成し、嵌合音信号S1を入力とする通常1つ以上の補正器81、82の集合体である。各補正器81、82は、後述するパラメータテーブル9から所定の周波数帯域毎に設定された補正係数であるゲインG(G1、G2、・・・)を受けて、嵌合音の中でもノイズの少ない周波数帯域を増幅してS/N比を向上させている。
【0022】
パラメータテーブル9は、調整手段の一部を構成し、一例として図2に示すようなテーブルを有し、機械作動音信号S2を入力とし、機械作動音S2の音圧レベルの大きさに応じて各補正器81、82に与えるゲインG(G1、G2、・・・)(テーブル91より選択)を調整し、後述する判定器10の判定精度を向上させる。それに加えて判定器10に与える判定処理のための閾値L(テーブル92より選択)も機械作動音S2の音圧レベルに応じて調整してもよい。
【0023】
調整の要領について説明する。組付設備等の動きに伴なう機械作動音と嵌合状況を伝える嵌合音は、部品の組付スピード等の大きさに応じた音圧レベルを有すると共に、両音の音圧レベルは互いに相関して変化する。このことに着目し、嵌合音の音圧レベルのバラツキは、機械作動音の音圧レベルを用いて検出することができる。そこで、判定器10において判定精度を向上させるためには、1つは嵌合音信号S1の音圧レベルを補正器8にて安定させること、もう1つは判定器10の閾値Lを嵌合音信号S1の音圧レベルに応じて変化させることが必要である。例えば、組付スピードが速くて組付設備の運動エネルギーが増加すれば、嵌合音も大きくなるため、それを機械作動音に基いて判断して、補正器8のゲインGを小さくするか、もしくは判定器10の閾値Lを大きくする。あるいは両者8、10の値G、Lとも調整してもよい。逆に、組付スピードが遅くて嵌合音が小さくなるときには、補正器8のゲインGを大きくするか、もしくは判定器10の閾値Lを小さくするか、両値G、Lとも調整すればよい。
【0024】
判定器10には、補正された嵌合音信号と閾値Lが入力され、製品の組付(嵌合)良否の判定が行われる。判定方法の一例を挙げると、第1の周波数帯域に対応する複数の周波数帯域毎の嵌合音信号レベルの総和を求め、閾値Lと比較し、閾値L以上であれば正常(嵌合良好)、閾値Lより小さければ異常(嵌合不良あり)と判定する。
【0025】
判定器10は、判定結果に基き、表示器11に結果を表示させ、不合格の場合は警報器12に出力し警報を発生させる。
【0026】
次に、上記構成からなる振動波判定装置100の判定フローをまとめると、図5のとおりである。図6は振動波の信号波形図である。
【0027】
装置100に判定開始が指示されると、対象物1から発生する振動波(図6(a))を、マイクロホン2〜記憶装置5によりデジタル音圧信号S0として録音(ステップ201)する。ウエーブレット変換演算器6では、このデジタル音圧信号S0を目的作動音である嵌合音に合わせた第1の周波数帯域(図6(b)の特性イ)と、組付設備の動きに伴なって発生する比較的音圧レベルの高い特定の機械作動音に合わせた第2の周波数帯域(図6(b)の特性ロ)をもつ周波数の時系列信号に分離、抽出(ステップ202〜204)する。図6の例では、デジタル音圧信号S0のサンプリング周波数を44KHzとし、第1の周波数帯域のうち周波数帯域11が11〜22KHz、周波数帯域10が5.5〜11KHz、周波数帯域9が2.8〜5.5KHzで嵌合音が顕著に表れている。また機械作動音は2.8KHzから下の第2の周波数帯域で現れており、周波数帯域毎のデータを区別することで分離が可能なことが分かる。次にフィルタ処理器7で、これらの時系列信号から嵌合音や機械作動音以外の周波数帯域をカットする。図6(c)は嵌合音に合わせた時系列信号をフィルタリングした嵌合音信号S1を示す。補正器8により、機械作動音信号S2の音圧レベルに応じたゲインG(補正係数)により嵌合音信号S1を補正してS/N比を向上(ステップ205)させる。この嵌合音信号S1とパラメータテーブル9で選択された閾値Lとを判定器10において比較することにより、製品の組付(嵌合)良否を判定(ステップ206)する。閾値L以上であれば合格表示(嵌合良好)、閾値Lより小であれば不合格表示(嵌合不良あり)かつ警報出力を行う(ステップ207、208)ことになる。
【0028】
(第2の実施形態)
本例では、対象物1から発生する振動波中の機械作動音相当音を、強制的に発生させるようにしている。組付設備の動き(嵌合スピード)に相関して音圧レベルが変化する機械作動音の選択には設備構造等による制限がある。そこで、図7に示すように、組付設備の動き度合に基いて発生する空気流の変化を検知し音を生じる笛等の音発生器1Aを、対象物1の嵌合用可動治具等の可動部1Bに設置した。この音発生器1Aの音特性として、目的作動音である嵌合音の周波数帯域とは区分可能でかつ後段処理(ウエーブレット変換から判定)において使い易い第3の周波数帯域が設定されている。そのためウエーブレット変換演算器6では特定の機械作動音に合わせた第2の周波数帯域に代えて、この音発生器1Aの音特性に合わせた第3の周波数帯域が設定される。第2のフィルタ部72からは嵌合スピード情報S3が出力される。この情報S3に基いて、パラメータテーブル9によりゲインGや閾値Lが第1の実施形態と同様にして選択される。
【0029】
なお、上記実施形態では、機械作動音信号S2により補正器8のゲインG、もしくは補正器8のゲインGおよび判定器10の閾値Lを調整していたが、判定器10の閾値Lのみを機械作動音信号S2に基いて調整するようにしても、判定精度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のシステム構成を示す構成図である。
【図2】図1のパラメータテーブルの内容を示す図である。
【図3】図1の製品の組付工程の一部を示す図である。
【図4】図3の工程において検出される音圧波形を示す図である。
【図5】図1に示す振動波判定装置100の処理フローを示すフローチャートである。
【図6】図1に示す振動波判定装置100の信号波形図である。
【図7】本発明の第2の実施形態のシステム構成を示す構成図である。
【符号の説明】
1 対象物
1A 音発生器
1B 可動部
2 マイクロホン(振動波入力手段)
5 記憶装置
6 ウエーブレット変換演算器(第1、第2の手段)
7 フィルタ処理器(第1、第2の手段)
8 補正器(調整手段)
9 パラメータテーブル(調整手段)
10 判定器(判定手段)
11 表示器
12 警報器

Claims (9)

  1. 製品の組付作業時に発生する振動波を検出することにより製品の組付不良を判定する組付不良判定装置において、
    前記製品の組付作業時に生ずる振動波を検出入力する振動波入力手段と、
    入力された前記振動波から、前記製品から生ずる所定周波数帯域の第1の振動波を周波数分離、抽出する第1の手段と、
    入力された前記振動波から、前記製品を組付ける組付設備から生じ、前記第1の振動波と相関した出力レベルをもつ特定の周波数帯域の第2の振動波を周波数分離、抽出する第2の手段と、
    前記第1の振動波と閾値とに基いて前記製品の組付不良を判定する判定手段と、
    前記第2の振動波の出力レベルに基いて、前記判定手段に与える前記第1の振動波および前記閾値の少なくとも一方のレベルを調整する調整手段とを備えたことを特徴とする組付不良判定装置。
  2. 前記第1の手段は、ウエーブレット変換手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の組付不良判定装置。
  3. 前記第2の手段は、前記ウエーブレット変換手段により前記第2の振動波として前記組付設備の機械作動音を周波数分離することを特徴とする請求項2に記載の組付不良判定装置。
  4. 前記調整手段は、前記第2の振動波の出力レベルに基いて前記第1の振動波の出力レベルを補正する補正量を記憶したパラメータテーブルを有し、前記補正量に基いて前記判定手段に与える前記第1の振動波のレベルを補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組付不良判定装置。
  5. 前記調整手段は、前記第2の振動波の出力レベルに対して、逆比例の関係に前記第1の振動波のレベルを調整すると共に、比例の関係に前記閾値を調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組付不良判定装置。
  6. 前記第1の手段は、前記ウエーブレット変換手段により周波数分離した前記第1の振動波のノイズ除去を行う第1のフィルタ部を有することを特徴とする請求項2に記載の組付不良判定装置。
  7. 前記第2の手段は、前記ウエーブレット変換手段により周波数分離した前記第2の振動波のノイズ除去を行う第2のフィルタ部を有することを特徴とする請求項3に記載の組付不良判定装置。
  8. 前記組付設備は、製品の組付作動時に可動する可動部と、この可動部の動き度合に応じた前記第2の振動波を発生する音発生器とを有することを特徴とする請求項1に記載の組付不良判定装置。
  9. 前記第1の振動波は、前記製品のスナップフィット機構の嵌合によって前記製品から発生することを特徴とする請求項1に記載の組付不良判定装置。
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