JP3921926B2 - マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents
マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3921926B2 JP3921926B2 JP2000213101A JP2000213101A JP3921926B2 JP 3921926 B2 JP3921926 B2 JP 3921926B2 JP 2000213101 A JP2000213101 A JP 2000213101A JP 2000213101 A JP2000213101 A JP 2000213101A JP 3921926 B2 JP3921926 B2 JP 3921926B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- strength
- tempering
- stainless steel
- toughness
- steel
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法に関し、特に成形性および溶接性に優れたものの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶接部の靭性を改善するため、低C,Nとし、Ni等のオーステナイト生成元素を添加したマルテンサイト系ステンレス鋼が、シームレスパイプや溶接管として製造され、油井管やラインパイプに利用されている。
【0003】
マルテンサイト系ステンレス鋼は焼入れ性が高く、オーステナイト状態での熱間加工後、通常の冷却速度でも容易にマルテンサイト組織となり、強度が著しく高く、塑性加工が困難で、靭性も低下するため、圧延等の熱間加工後に、焼戻し処理が必須となっている。
【0004】
このようなマルテンサイト系ステンレス鋼の焼戻し熱処理方法の一つとして特開平05−112818号公報に、Ac1変態点+10℃〜Ac1変態点+100℃の2相域に加熱後、室温まで冷却し、その後、Ac1変態点直下に焼戻しする方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した方法によっても、強度の低下は少なく、YS:600MPa程度,TS:700MPa程度と電縫鋼管やUOE鋼管の製造には、支障の生じる場合があった。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、成形性を改善するため強度は低下させるものの、ラインパイプとして十分な強度であるAPI X65クラスの強度とし、溶接性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは、強度に及ぼす成分組成の影響について鋭意検討し、Alの添加量を多くし、鋼中の固溶Nを固定し、10〜50時間程度の長時間熱処理を行った場合、目的とする強度が得られることを知見した。
【0008】
すなわち、焼戻し過程における強度の低下はマルテンサイト組織中の転位の回復によるものであるが、固溶Nにより阻害される。従って、固溶NをAlによって、AlNとして固定した場合、回復は促進され、長時間熱処理によって強度が低下することを見出したものである。
【0009】
本発明は以上の知見を基に更に検討を加えてなされたものであり、すなわち本発明は、1.質量%で、C:0.008〜0.03%、N:0.008〜0.03%、Si:0.1〜0.3%、Mn:0.1〜0.3%、Cr:11〜15%、Ni:1〜7%、Al:0.05〜0.09%、Ti:0.005〜0.02%を含有し、且つ、C+N<0.04%を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼を熱間圧延後、180℃以下まで冷却し、その後、700〜800℃で10〜50時間加熱後、180℃以下まで冷却し、再度570〜660℃で10〜50時間加熱し、再び室温まで冷却することを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明における成分組成、製造条件の限定理由について詳細に説明する。
【0012】
1.成分組成
C
Cは、マルテンサイト組織とし、強度を確保するため添加する。0.008%未満ではその効果が無く、0.03%を超えると溶接熱影響部が過剰に硬化し、靭性が低下するため、0.008〜0.03%(0.008%以上、0.03%以下)とする。
【0013】
N
Nは、マルテンサイト組織とし、強度を確保するため添加する。0.008%未満ではその効果が無く、0.03%を超えると溶接熱影響部が過剰に硬化し、靭性が低下するため、0.008〜0.03%とする。
【0014】
C+N
本発明では溶接熱影響部の過度の硬化と靭性の低下を防止するため、C,N量各々の量の規定に加えて、更にC+N<0.04%とする。
【0015】
Si
Siは脱酸材として添加する。0.1%未満では、効果がなく、0.3%を超えて過剰に添加されるとデルタフェライトが晶出し、相バランスを保つためNiの増量が必要となるため、0.1〜0.3%とする。
【0016】
Mn
Mnは、製鋼上、脱硫材として添加する。0.1%未満では効果がなく、熱間加工性が低下し、0.3%を超えて過剰に添加すると、炭酸ガス環境下での耐食性が低下するため、0.1〜0.3%とする。
【0017】
Cr
Crは、耐食性を確保するため添加する。11%未満ではその硬化が十分でなく、15%を超えると他の元素を添加してもマルテンサイト組織が得られなくなるため、11〜15%とする。
【0018】
Ni
Niは、オーステナイト相を安定化し、靭性を確保するため添加する。上述したCrはフェライト相を安定化する元素であり、Cr量に応じてNiを適量添加することにより高温でオーステナイト相を現出させ、冷却後、マルテンサイト組織とする。
【0019】
1%未満では、オーステナイト相の安定に不十分で、溶接部の靭性が不足する。7%を超えると効果が飽和し、高価な元素であり生産コストも上昇するため、1%以上、7%以下とする。
【0020】
Al
Alは、脱酸元素であり、溶鋼中の酸素濃度を低く保つため、また、鋳造時におけるノズル詰まりを防止する。更に、窒化物を形成し、固溶窒素を固定し強度を低下させるため添加する。その効果を得るため0.05%以上添加する。0.09%を超えて添加すると靭性が低下するため、0.05〜0.09%とする。
【0021】
Ti
Tiは、鋼中のNとTiNを形成し、オーステナイト結晶粒の成長を抑制し、溶接熱影響部の靭性を向上させるため、0.005%以上添加する。しかし、0.02%を超えて、過剰に添加すると粗大なTiNを形成し、靭性を劣化させるため、0.005〜0.02%とする。
【0022】
2.製造条件
13%Cr系マルテンサイト鋼は、焼入れ性が高く、熱間圧延後、コイルに巻き取られた後の放冷によってもマルテンサイト組織に変態する。マルテンサイト組織は硬く、強度が過剰となり、靭性が低いため、焼戻し処理を必要とする。鋼帯を製造する場合、通常数トンから十数トンあるコイルをバッチ焼鈍炉でコイル内の温度が均一となるように10〜50時間程度かけて焼鈍される。本発明では、バッチ焼鈍として2回焼戻し処理を行なう。
【0023】
2回焼戻し条件:700〜800℃で10〜50時間加熱後、180℃以下まで冷却し、再度570〜660℃で10〜50時間加熱し、再び室温まで冷却。
【0024】
2回焼戻し処理における最初の焼戻し(2相域熱処理)では、コイル巻き取り後に得られるマルテンサイト組織を700〜800℃に加熱する。マルテンサイト組織を700〜800℃のα+γの2相域に加熱するとマルテンサイトのラス間や粒界から新たオーステナイト相が析出し、旧オーステナイト結晶粒に相当する結晶粒が分断され、実質的に微細組織が得られる。
【0025】
次に、最初の焼戻しにより、再析出したオーステナイトが焼戻し後の冷却によりマルテンサイト化し、強度が上昇するため、570〜660℃で再度焼戻しを行う。
【0026】
焼戻し温度はAPI X65規格 下限強度YS:450MPa,TS:530MPaを満足するように660℃以下とする。一方、溶接管等の成形が容易なTS<630MPaが得られるよう570℃以上とする。
【0027】
図1は、本発明範囲内の組成を有する鋼(後述する実施例表1鋼種A)を780℃×30時間で加熱し、150℃まで冷却後、引き続き2回目の焼戻しを行った場合の、加熱温度による強度変化の状態を示すものである。 上述した焼戻し温度の規定により、所望の強度特性が得られている。
【0028】
尚、何れの焼戻し処理においても保持時間は、目的とする強度が得られるよう10〜50時間とする。バッチ焼鈍炉により数トンから十数トンあるコイルをコイル内の温度が均一となるようにする場合、10〜50時間必要とする。
【0029】
また、熱間圧延後、及び、最初の焼戻し処理後の冷却停止温度はマルテンサイト変態を完了させるため180℃以下とする。 本発明において、熱間圧延の加熱温度は1100℃超え〜1200℃未満、仕上温度は900℃超えとするのが望ましい。
【0030】
加熱温度は高温となるとδフェライトがオーステナイト中に析出し、靭性を著しく低下させるため1200℃未満とするのが望ましい。低温となると仕上圧延温度が低下し、未再結晶組織となるため、1100℃超えとするのが好ましい。
【0031】
また、仕上圧延温度が、900℃未満となると、圧延後の再結晶が進まず、結晶粒が圧延方向に伸展した組織となり、機械的特性に異方性が生じるため、仕上圧延温度は900℃以上とするのが好ましい。
【0032】
【実施例】
表1に示す組成の鋼を溶解、鋳造し、熱間圧延後、巻き取り、コイルとした。鋼種A〜Dは、本発明範囲内の成分組成で、鋼種EはAl量が本発明範囲外となっている。これらのコイルを、室温まで冷却後、それぞれよりサンプルを採取し、実製造におけるコイルのバッチ焼鈍相当の熱処理(10〜50時間焼鈍後、徐冷)として2回焼戻しを行った。
【0033】
表2に、2回焼戻し条件と得られた機械的特性として強度、靭性を示す。本発明範囲内の成分組成、製造条件による実施例では、強度がAPI X65規格を満足し、十分な靭性が得られている。一方、成分組成、製造条件のいずれかが本発明範囲外となる比較例では、過剰な強度や靭性に劣っている。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、焼戻し過程における強度低下が容易で、適正な強度が得られるため、管等の成形性に優れ、且つ、実質的に結晶粒径が小さいマルテンサイト組織が得られるため、靭性に優れるマルテンサイト系ステンレス鋼が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2回焼戻し後の強度に及ぼす、焼戻し温度(2回目)の影響を示す図
Claims (1)
- 質量%で、C:0.008〜0.03%、N:0.008〜0.03%、Si:0.1〜0.3%、Mn:0.1〜0.3%、Cr:11〜15%、Ni:1〜7%、Al:0.05〜0.09%、Ti:0.005〜0.02%を含有し、且つ、C+N<0.04%を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼を熱間圧延後、180℃以下まで冷却し、その後、700〜800℃で10〜50時間加熱後、180℃以下まで冷却し、再度570〜660℃で10〜50時間加熱し、再び室温まで冷却することを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000213101A JP3921926B2 (ja) | 2000-07-13 | 2000-07-13 | マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000213101A JP3921926B2 (ja) | 2000-07-13 | 2000-07-13 | マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002030336A JP2002030336A (ja) | 2002-01-31 |
JP3921926B2 true JP3921926B2 (ja) | 2007-05-30 |
Family
ID=18708909
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000213101A Expired - Fee Related JP3921926B2 (ja) | 2000-07-13 | 2000-07-13 | マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3921926B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103014260B (zh) * | 2013-01-05 | 2013-12-11 | 北京科技大学 | 一种消除双相不锈钢低温时效脆性的方法 |
-
2000
- 2000-07-13 JP JP2000213101A patent/JP3921926B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2002030336A (ja) | 2002-01-31 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
RU2588755C2 (ru) | Стальная полоса с низким отношением предела текучести к пределу прочности и высокой ударной вязкостью и способ ее производства | |
KR101899670B1 (ko) | 저온역 버링성이 우수한 고강도 복합조직강 및 그 제조방법 | |
JP2002235114A (ja) | 大入熱溶接部靱性に優れた厚肉高張力鋼の製造方法 | |
JP2004514792A5 (ja) | ||
JP5089224B2 (ja) | オンライン冷却型高張力鋼板の製造方法 | |
JP2001115233A (ja) | 溶接性と耐応力腐食割れ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP2008075107A (ja) | 高強度・高靭性鋼の製造方法 | |
JPH0213007B2 (ja) | ||
KR101546154B1 (ko) | 유정용 강관 및 그 제조 방법 | |
JP2005281842A (ja) | 溶接部靭性に優れた低温用低降伏比鋼材の製造方法 | |
KR102544854B1 (ko) | 구멍 확장비가 높은 냉연 어닐링된 강판 및 그 제조 방법 | |
JP7076311B2 (ja) | Ni含有鋼板の製造方法 | |
JP3823906B2 (ja) | 耐水素割れ特性および靭性に優れる高強度ラインパイプ用電縫鋼管の製造方法 | |
JP3921926B2 (ja) | マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法 | |
JP4349732B2 (ja) | 溶接性および加工性に優れたばね用線材および鋼線 | |
KR101450177B1 (ko) | 저니켈-고질소 2상 스테인리스강의 제조방법 | |
JP6894515B2 (ja) | フェライト系ステンレス冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP3815190B2 (ja) | マルテンサイト系ステンレス鋼帯の製造方法 | |
JPS602364B2 (ja) | 低温靭性にすぐれた非調質高張力鋼板の製造法 | |
KR101523966B1 (ko) | 강판 제조 방법 | |
KR101505269B1 (ko) | 강판 및 그 제조 방법 | |
JP3815229B2 (ja) | マルテンサイト系ステンレス鋼帯および鋼管の製造方法 | |
JP3804087B2 (ja) | 熱間曲げ鋼管の製造方法 | |
JP2003342638A (ja) | 高強度ベンド管の製造法 | |
KR101505293B1 (ko) | 강판 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20061010 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20061208 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070130 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070212 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100302 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110302 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120302 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130302 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130302 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140302 Year of fee payment: 7 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |