JP3921510B2 - 既燃ガス排気自己循環バーナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空エンジンやガスタービンなどの連続燃焼装置の希薄燃焼、低NOx化を実現するための既燃ガス排気自己循環バーナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃焼ガス中に含まれる大気汚染成分の代表的なものは、COや炭化水素のような未燃焼成分とNOxとである。NOxは燃焼ガス温度が高いと盛んに生成される。従って、低NOx燃焼の基本は過剰空気燃焼(希薄燃焼)による火炎温度の抑制であるが、火炎温度が低いとCOや未燃炭化水素の排出が増えやすいという問題がある。空気温度が低い場合にはその傾向が特に顕著である。ほとんどの装置においては、燃焼成分の排出も抑制しなければならないのでNOxの排出低減は燃焼器入口の空気温度が高い場合よりも困難である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ピストンエンジンでは排気をシリンダーに戻す排気循環(EGR)がNOx抑制技術として実用になっている。この場合のEGRによるNOx抑制作用は、まず第一にシリンダ内の燃焼ガスよりも温度のかなり低い排気の混入によって燃焼温度が抑制されることによるものであるが、CO2 やH2 Oを含む排気の混入による燃焼室内の酸素濃度の低下やNOx生成反応に対する抑制効果によって説明される。
【0004】
ピストンエンジンではシリンダー内圧力は吸気行程で大気より低くなるのでシリンダーから一旦排出された排気の一部を新気とともにシリンダーに供給することは困難ではない。しかし、連続燃焼のバーナにおいては、送風機、圧縮機あるいはポンプ等によって排気を昇圧する手段を追加しない限り一旦燃焼室から排出された圧力の下がった既燃ガスの一部を燃焼室に新気とともに供給することは出来ない。高温空気を連続して昇圧するための機器は価格や所要動力等の点でデメリットが大きく、実用的ではない。
【0005】
そこで本発明は、バーナを構成する外側ダクト内に外側ダクトと略同心状に内側ダクトを配置して両ダクトの間に環状通路を形成し、内側ダクト内に発生する周囲より圧力の低い領域を利用して、燃焼室内の既燃ガスの一部を内側ダクト内を通して、前記環状通路に還流し、予混合気と既燃ガスとを混合するようにした。こうすることにより連続燃焼のバーナにおいても送風機、圧縮機あるいはポンプを使用せずに予混合気あるいは新気に既燃ガスを容易に混入することが可能となる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明が採用した課題解決手段は、
バーナを構成する外側ダクト内に、外側ダクトと略同心に燃料噴射器を配置するとともに、この燃料噴射器から離れた下流側に外側ダクトと略同心に環状通路を形成する内側ダクトを配置してなるバーナにおいて、前記内側ダクトを下流側に向かって内径が大きくなる円筒状として構成し、さらに前記外側ダクト内周と燃料噴射器との間の通路内にはスワーラを配置するとともに燃料噴射器の内側ダクトとの対向面は椀状の凹状曲面として構成し、前記スワーラを介して渦流となって供給された新気は燃焼噴射器から供給された燃料と、燃焼室で燃焼し内側ダクト内を逆流してきた既燃ガスと混合されながら、燃焼器内で燃焼すべく構成したことを特徴とする既燃ガス排気自己循環バーナである。
また、前記燃料噴射器からの燃料はスワーラの下流側に噴出するように構成したことを特徴とする既燃ガス排気自己循環バーナである。
また、前記燃料噴射器からの燃料はスワーラの上流側に噴出するように構成したことを特徴とする既燃ガス排気自己循環バーナである。
また、前記燃料噴射器のノズルに対応する部位に液膜形成リップを配置したことを特徴とする既燃ガス排気自己循環バーナである。
【0007】
【実施の形態】
以下図面を参照して本発明に係わる既燃ガス排気自己循環バーナの説明をすると、図1は同バーナの1実施形態としての模式的断面図である。
図において1は既燃ガス排気自己循環バーナを構成する外側ダクトであり、この外側ダクト1は、図に示すような下流に行くに従って内径が大きくなる円筒状として構成されており、大径部は燃焼室11として構成されている。外側ダクト1の上流側小径部の中心には外側ダクト1と略同心位置に燃料噴射器2が配置されており、燃料噴射器2に形成したノズル3から燃料4を外側ダクト1内に噴射できる構成となっている。
【0008】
燃料噴射器2と外側ダクト1との間には環状通路8が形成され、この環状通路8内には燃料4と新気を混合する渦流を発生するスワーラ5が配置されている。従って、新気はスワーラ5を通って燃料と混合され外側ダクト1内に供給される。
また燃料噴射器2からやや離れた下流には外側ダクト1内面と略平行な形状を備えた内側ダクト6が配置され、外側ダクト1と内側ダクト6との間には、前記環状通路8に連なる環状通路7が形成される。内側ダクト6の燃料噴射器2と対向する側は前記環状通路7に連通する開口部9として形成されており、また、燃料噴射器2の内側ダクト6と対向する面は、既燃ガスが環状通路7内にスムーズに流入するように図示のように椀状の曲面10として形成されている。
【0009】
上記構成からなる既燃ガス排気自己循環バーナの作用を説明する。
スワーラ5を介して渦流となって供給された新気は燃料噴射器4のノズル3から供給された燃料と混合されながら、外側ダクトと内側ダクトとの間の環状通路7を通って燃焼室11に入り燃焼する。燃焼室11の火炎は内側ダクト6の先端部近傍に保炎され、図に示すように環状通路7から噴流中に広がる。この時、スワーラ5により発生した渦流により内側ダクト6内には圧力の低い部分が形成される結果、火炎による既燃ガスの一部は内側ダクト6内を逆流し、環状通路7の混合気流の誘引作用によって内側ダクト6の開口部9から環状通路7に流入する。
【0010】
このため、環状通路7から燃焼室11に流入する混合気には、常に、高温であり、かつ、酸素濃度が低く、水蒸気と二酸化炭素を含む既燃ガスが混入されることになり、この結果、混合気の温度の上昇により燃料希薄側でも完全燃焼が可能となり、希薄燃焼によってNOxの低減も可能になる。
【0011】
図3は、図1に示すバーナの模型を用いた試験における、既燃ガスの循環がある場合と、無い場合(内側ダクト開口部を閉じたもの)の燃焼効率と排気中のNOx濃度比較図である。燃料はメタンである。明らかに既燃ガスの循環により、より希薄側まで高い燃焼効率が維持され、NOxも抑制されていることが分かる。図4は火炎の吹飛び限界流速と当量比との関係を示しているが、既燃ガスの循環により保炎限界は燃焼希薄側に拡がっている。
【0012】
また、排気の分析の結果、この既燃ガス排気自己循環バーナのNOx(NOとNO2 とからなる)は、NO2 で、NOは実質的にゼロであるというこれまでの燃焼方法では見いだされていない事実が明らかになった(図5)。NO2 は水に可溶性であるので水噴射による脱硝が可能になり、現在のアンモニアと触媒とによる脱硝設備の問題点である初期および運転コストを解決できるだけでなく、危険物であるアンモニアそのものの使用を排除できる、という点も実用上大きな意義をもっている。
なお、燃料と新気の予混合ガスをスワーラ5の上流から供給しても、同様に既燃ガスの再循環を生成することができ、同様な効果が期待される。
【0013】
つづいて、本発明の他の実施形態について説明すると図2は他の形態の既燃ガス排気自己循環バーナの模式的断面図であり、図1と同じ部材には同じ符号を使用している。
この実施形態は、図1においてノズル3から噴射される液体燃料が十分に霧化されない場合の改善案であり、その場合には、図2に示すように流路中に液膜形成リップ等を配置する。このリップを設けることにより、液体燃料がリップ上に衝突して拡がり液膜が形成され、この液膜によって効率的に燃料の微粒化が行われ液滴の蒸発が促進されるため、新気と燃料の混合が効率的に行われる。なお液膜形成リップは図3ではスワーラに設けてあるが、流路内において、ノズルからの燃料を受ける範囲であれば、どこに設けてもよい。またリップの形状も燃料液滴を膜状に形成できるものであれば、種々の形状を採用することができる。
【0014】
上記既燃ガス排気自己循環バーナでは燃料としてメタンを使用しているが、燃料として各種液体燃料(ガソリン、灯油等)あるいはガス燃料(天然ガス、プロパンガス等)を使用することもできる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内で種々の形態を実施することが可能である。
【0015】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明によれば、燃焼器を構成する外側ダクト内に、外側ダクトと略同心に燃料噴射器を配置するとともに、この燃料噴射器から離れた下流側に外側ダクトと略同心に内側ダクトを配置し、内側ダクトの外面と外側ダクトの内面との間に燃料と新気の混合ガスを流す環状通路を構成し、さらに、内側ダクト上流部を前記環状通路に連通したため、既燃ガスの一部は内側ダクトの中心軸に沿って逆流し、開口部9から環状通路に流入して混合気に混入し、燃焼室内に流入する。この結果、内側バーナの外周部の環状通路には温度の低い新気あるいは新気と燃料との混合気が流れるのでバーナ内では既燃ガスからの熱損失が無い、既燃ガスの触れる通路の壁面積が小さくなる、バーナの構造が簡単になるなど実用上きわめて好ましい特性が実現される。また、燃料を希薄にしないまでも、酸素濃度が低く、水蒸気と二酸化炭素の濃度が高いことから、NOxの生成反応を抑制、低減する効果も認められる、等々の優れた効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる既燃ガス排気自己循環バーナの模式的断面図である。
【図2】本発明に係わる既燃ガス排気自己循環バーナの他の形態の模式的断面図である。
【図3】既燃ガス循環ありとなしの場合の燃焼効率と排気中のNOx濃度のグラクである。
【図4】既燃ガス循環ありとなしの場合の吹飛び限界流速の比較図である。
【図5】既燃ガス循環ありとなしの場合の当量比とNO/NOxのグラフである。
【符号の説明】
1 外側ダクト
2 燃料噴射器
3 ノズル
4 燃料
5 スワーラ
6 内側ダクト
7 環状通路
8 環状通路
9 開口部
10 碗状の曲面
11 燃焼室
12 液膜形成リップ
Claims (4)
- バーナを構成する外側ダクト内に、外側ダクトと略同心に燃料噴射器を配置するとともに、この燃料噴射器から離れた下流側に外側ダクトと略同心に環状通路を形成する内側ダクトを配置してなるバーナにおいて、前記内側ダクトを下流側に向かって内径が大きくなる円筒状として構成し、さらに前記外側ダクト内周と燃料噴射器との間の通路内にはスワーラを配置するとともに燃料噴射器の内側ダクトとの対向面は椀状の凹状曲面として構成し、前記スワーラを介して渦流となって供給された新気は燃焼噴射器から供給された燃料と、燃焼室で燃焼し内側ダクト内を逆流してきた既燃ガスと混合されながら、燃焼器内で燃焼すべく構成したことを特徴とする既燃ガス排気自己循環バーナ。
- 前記燃料噴射器からの燃料はスワーラの下流側に噴出するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の既燃ガス排気自己循環バーナ。
- 前記燃料噴射器からの燃料はスワーラの上流側に噴出するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の既燃ガス排気自己循環バーナ。
- 前記燃料噴射器のノズルに対応する部位に液膜形成リップを配置したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の既燃ガス排気自己循環バーナ。
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